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人工現実感手術室:6.ハプティックデバイスの医療応用

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(1)6 [email protected]. ハプティックデバイスとは,(仮想空間内の)物体に 触れた時の感触を与える装置である.近年のコンピュ ータ技術と VR(Virtual Reality)技術の発達に伴い視覚. ィスプレイ)と呼び,これらを総合してハプティックデ バイスと呼ぶ.. (映像)および,聴覚(音響)のリアリティの向上には目 を見張るものがある.そしてさらなるリアリティ向上 のために登場したのがこの“触覚”を感じる装置である. 特に外科手術分野において,臓器の固さを確かめたり. テレビモニタとテレビカメラ,あるいはスピーカと. (触診),術具による切開の指先感覚再現等不可欠なも. マイクロフォンなど視覚情報,聴覚情報の入出力装置. のであり,手術シミュレータ等においては必須アイテ. の発達に比べると,力覚情報の入出力装置の開発は遅. ムといってもよい.本稿では,ハプティックデバイス. れている.その理由として,外界を知覚する上での情. の簡単な解説と,その医用 VR への応用および,今後の. 報量が少ないため開発が後回しにされたという点は否. 流れを概観する.. めないと思うのであるが,以下のような力覚情報の持 つ特殊性のために開発が難しかったことも一因である. • 視覚,聴覚が光や音による遠隔作用として情報を伝. “ハプティックデバイス”という言葉でピンとくる読. えるのに対し,力覚は物理的接触とそれに伴う変位. 者がどれくらいおられるであろうか? 情報処理学会. による近接作用により情報を伝える.したがって視. Web ページの検索機能を使い,「ハプティックデバイス. 覚,聴覚を提示するシステムがオープンループ系と. or 力覚 or 触覚 or フォースディスプレイ」 で検索すると,. して考えられるのに対し,力覚の場合,操作者まで. 70 件がヒットした.この数を多いと見るか,少ないと. を含め機械的要素を含んだクローズドループ系(フィ. 見るかは意見の分かれるところであろうが,本稿を読. ードバック系)として考えなければならず,非常に高. まれている読者の多くがハプティックデバイスと聞い. 速な処理が必要となる.. て,「ああ,あれか.」と思い浮かべていらっしゃるので. • 視覚,聴覚が入出力信号として同一の情報(光または. はないかと思う.あるいは,「PHANTOM™」という米. 音)をやりとりする(入力信号を出力信号としてその. 国センサブルテクノロジー(SensAble™)社の商品名を. まま出力しても情報は変化しない)のに対し,力覚は,. 出した方が分かりやすいかもしれない.ここで改めて. 入力信号(変位)と出力信号(力)が同一ではない.. いうまでもないかもしれないが,ハプティックデバイ. • 視覚,聴覚では単独情報から 3 次元空間情報の構成を. スとは,“(仮想空間内の)物体に触れた時の感触を与え. (無意識に)行っているが,力覚では単独情報をその. る装置”である.. まま利用している.このため情報処理は速いが,一 方 3 次元情報を構成するには,意識的な探索行動(能. 人間には触覚や圧覚,温度感覚,痛覚など,皮膚表 面付近に分布する感覚受容器によって知覚する皮膚感. 動触知)により情報の収集を行う必要がある.. 覚と,筋,腱,関節(の動き)などによって,重さや抵 抗感を知覚する運動感覚(固有感覚あるいは自己受容感 覚などとも呼ばれる.ここでは力覚という用語を用い. 「ハプティックデバイス」の用語が一般に使われるよ. る)がある.前者の感覚を表示する装置をタクタイルフ. うになるのは 1990 年代に入ってからと思われるが,そ. ィードバックデバイス(触覚ディスプレイ),後者を提. れ以前,触覚提示に関する研究として大きく 3 つの流れ. 示する装置をフォースフィードバックデバイス(力覚デ. を捉えることができる.1 つがロボットの遠隔操作(マ IPSJ Magazine Vol.43 No.5 May 2002. −1−.

(2) -1 SPIDAR http://sklab-www.pi.titech.ac.jp/about_us-j.html. -2 PHANTOM™ http://www.sensable.com/. (東工大 佐藤ら). (SensAble™). スタ・スレーブ)の研究である.人間が直接入りこめな. 開発」,東工大の佐藤らによる「モータ駆動による力覚. いような極限領域(宇宙空間や原子炉内など)における. 制御能力をもつ空間インターフェース装置の提案」であ. ロボットマニピュレータの操作などで盛んに研究され. る.これらが日本におけるハプティックデバイス研究. ている.その後のハプティックデバイスの研究もここ. の草分けといえるであろう.. から始まっているといってもよい.2 つ目が視覚障害者. 伊福部らのグループは,その後触知ピンを用いた視. 用の感覚代行装置としての触覚ディスプレイの研究で. 覚障害者用ディスプレイや,ペルチェ素子を用いた温. ある.ピングリッドアレイを用いて,図形や文字,6 点. 度感覚提示装置などを発表し,感覚代行を切り口にユ. 点字を提示する研究である.最後に,フライトシミュ. ニークな研究を進めている.福井らのグループはソフ. レータで用いられている操舵感覚発生装置(コントロー. トウェアからのアプローチに特徴がある.岩田らのグ. ルローディング)の研究がある.模擬操縦訓練時,操縦. ループは,パラレルリンク機構を用いた 6 自由度のデス. 桿から得られる感触を提示する技術で,フライトシミ. クトップ型デバイス「ハプティックマスター」を始め,. ュレータには不可欠な要素であり,成熟した技術とい. 複数のアクチュエータを格子状に配置した面型ディス. える.. プレイ「FEELEX」,ジャイロ効果を応用したデバイスと 精力的な研究を続けている.佐藤らのグループは,. -1. に示す,ワイヤ駆動方式による「SPIDAR」を提案.ス 1990 年代に入りヒューマンインタフェースおよび,. ケール変更によっても系の特性が大きく変化しない特. バーチャルリアリティ(VR)技術の進展に伴い,ハプテ. 徴から,卓上型から等身大スケールまでのデバイスを. ィックデバイスの研究も盛んになる.「計測と制御」. 用いてヒューマンインタフェースの研究を行っている.. 1991 年 6 月号特集に「ヒューマンインターフェース技術. PHANTOM. の新展開」が取り上げられている.この中で筑波大学の 岩田は,「フォースディスプレイ」1)と題して,Haptics. 当時 MIT の学生であった Mr. Thomas Massie が Dr.. の定義,装置の基本的な構成,応用分野などを解説し. Kenneth Salisbury と開発.1993 年に SensAble を設立,. ている.. PHANTOM は世界中のヒューマンインタフェースおよ び VR 研究者にセンセーショナルな話題を巻き起こした. また情報処理学会においても,ヒューマンインタフ ェース研究会の研究報告 No.042(1992 年)2)に 4 件の関. (. -2 参照).その後,1997 年にソフトウェアライブラ. 連記事が掲載されている.北海道大学の伊福部,井野. リ GHOST®,1999 年にモデリングソフトウェア. らによる「人工現実感における触覚ディスプレイのため. FreeForm™ を発表,ハプティックデバイスの代名詞と. の心理物理的研究」,製品科学研究所(当時)の福井らに. なっている.2001 年秋に 1000 セット目を出荷.ハプテ. よる「視覚と触覚・力覚の強調動作での課題」,筑波大. ィックデバイスとしては空前の大ヒットといえる.. 学の岩田らによる「広可動範囲フォースディスプレイの 43巻5号 情報処理 2002年5月. −2−.

(3) 幾何(形状)モデリング. 最近の動向として以下の研究が注目を集めている.. 仮想空間の表示. • タクタイルフィードバックデバイスの研究. 対象物体表示. 操作物体表示. • アプリケーションシステムの開発 仮想物体の パラメータ. 物理モデリング. • 力覚発生ソフトウェアの研究 タクタイルフィードバックデバイスの研究としては,. 干渉計算. 東大の舘らの研究が興味深い.彼らは表面弾性波を用. 反力計算. いた機械的刺激や,経皮電流刺激により皮膚感覚を提 デバイスドライバ. 示する手法を研究している 3).アプリケーションシステ ムの開発は多岐にわたっているが,今回の特集である. 3次元座標. 座標変換. 力指令 座標変換. 医療応用分野の研究はその中でも最も注目されている デバイス. 分野といえる.力覚ソフトウェアの研究では,正確さ と高速性を合わせ持ったモデリング手法の開発が競わ. リンク回転角 エンコーダ. トルク指令 モータ. れている.また,東大の廣瀬らのグループによる HIP (Haptic Interface Platform)の開発 4)は,デバイスに依. -3. 存しない触覚ディスプレイ用共通ソフトウェアを構築 したもので今後の展開が注目される.. 一般的な力覚ソフトウェアの構造は. -3 のようになっ. があり,リアルタイムでの処理は難しい. •. ている.幾何(形状)モデリング部は,仮想空間におけ る物体の形状,位置(配置)およびその性質(属性,パ. 仮想物体をいくつかの格子に分割し,格子点に質点. ラメータ)などを定義し表示する部分である.物理モデ. を配し,格子間をバネとダンパー要素で結んだモデル. リング部は,操作物体(3 次元座標情報がデバイスドラ. で定義される.ある格子点に力が加えられるとそれに. イバ部から送られてくる)と対象物体との関係(接触し. 対応した変位が発生し,その変位が他の格子点に伝わ. ているか否か,など)を計算(干渉計算)し,操作物体. り全体が変形する.精度は落ちるが有限要素モデルよ. と対象物体の属性により反力を計算する.デバイスド. り高速な処理が可能である.. ライバ部は,デバイスで得られたアクチュエータの位. 2. 置情報(リンクの回転角度など)からデバイスで定義さ れた 3 次元情報(位置,傾き角度)に変換するとともに,. デバイスを制御する方式には力主導型と位置主導型 の 2 つがある.. 物理モデリング部で得られた力指令情報を,アクチュ. 力主導型は,操作部の位置を測定し,モデルから加. エータの出力情報(モータトルク指令など)に変換する. わるべき力を計算,その力を指令値として与える方式. 機能を持つ.. である.多くのデバイスがこの方式で,図-3 もこの方式 を表している.力センサ/トルクセンサを必要としな 反力を計算する力覚計算は,変形計算と密接な関連. いことから機構が簡略化・軽量化される特徴がある.. を持っている.物理モデリング手法としてよく使われ. 位置主導型は,操作部に加わっている力を測定しモ. るのが以下の方法である.. デルから操作部がどこにあるべきかを計算,操作部を. •. その位置まで動かす方式である.前述の操舵感覚発生 対象とする物体を 3 次元のメッシュに分割して,有限. 装置や後述の「FEELEX」で採用されている.指先に加. 要素法(各メッシュに加わる応力から変形を求める)に. わっている力を測定するためセンサが必要となり,操. よってマトリックス方程式を解くことにより,物体の. 作部の質量・慣性が増加するとともに,操作部の構造. 変形運動を計算する.精密な計算が可能であるが,メ. が複雑になり,センサからのリード線の処理などの問. ッシュを細かく切る必要があり計算量が膨大になる.. 題点がある.しかしフリクションや質量・慣性の補正. また,切断などにおいてはメッシュを再構成する必要. が可能になる利点は大きい. IPSJ Magazine Vol.43 No.5 May 2002. −3−.

(4) VR 医用 VR へのハプティックデバイスの応用として,以 下のような分野が期待されている. • 手術シミュレータ,医学教育 • 遠隔手術支援ロボット • フィジカルトレーニング,リハビリテーション これらの応用では,映像情報とともに触覚情報の重 要性が指摘されている.触覚情報の付加によるリアリ ティの向上はいうまでもないが,医療分野での特徴と して以下の点が挙げられる. • 触覚情報が病気の解明に重要な情報となっている臨. -4 http://www.jikei.ac.jp/ihdmi/index.html. 床現場では,“触診”のように体を触ることにより,. (慈恵会医大 鈴木ら). 異常部位(しこりや組織の異変)を見つけ病因を探っ ている. • 手術などで切開や縫合を行う時の重要な情報源であ あろう.. る視覚情報のみから操作を行う場合,どうしても脳. -4にバーチャル手術システムの外観を示す.. 本システムの特徴は,両手(それぞれ親指,人差し指,. による高次情報処理が必要となり,危険状況でのす ばやい対応が難しいが,触覚情報に基づく高速処理. 中指の 3 本)により直接臓器に触れ,その弾力感,質量. によりすばやい対応が可能となる.. 感を得ながら手術作業を行い得ることである.このた めハプティックデバイスには, • 各指への反力を精度よく発生できること. このように,医用 VR では触覚情報が非常に重要な意. • 各リンク間の干渉が起きないこと • 術者の負担になるような質量の増加や摩擦による操. 味を持っているため,ハプティックデバイスの機能・ 性能への要求も高い.使われる分野により,その要求. 作性の悪さを低減すること. も異なるが,共通する要求として,. などが求められた.この要求を満たすために,術者の. • 力の表現範囲が広いこと. 各指先に力を発生させる「force control manipulator」と,. 骨のような硬い組織から,内蔵,脳などの柔らかい. これを支え持つ「motion control manipulator」の複合体. 組織までを扱う必要がある.このためハプティック. として装置を構成することでこれを解決した.. デバイスとして,最大出力が大きい,最大摩擦力が. また反力計算方法として,単一球の集合体として臓 器を表現する「sphere filled model」を提案している.こ. 小さい,機械剛性が高いことなどが要求される. • 空間分解能,精度が高いこと. れは,CT や MRI などから得られた患部の 3 次元情報か. 微妙な指先の動きを再現するために必要である.特. ら臓器の輪郭を抽出,サーフェスモデルを構築し,そ. に遠隔手術支援ロボットでは非常に重要である.. の内部に単一直径の球を面新立方格子状に配置するも. • 周波数応答性が高いこと. のである.臓器に力が加えられると各層の球群が順次. • 自由度が多いこと. 移動し変形を起こす.そして移動した球群が元に戻ろ. などの点が挙げられる.. うとする復元力を反力として各マニピュレータに与え. 以下に実用化された医用ハプティックデバイスの例. ている.. を紹介する.. 本特集記事で詳しく紹介されているが,慈恵会医大. 筆者らは,センシブルヒューマンプロジェクト(SHP). 鈴木らによる「バーチャル手術システム」5)は,各メデ. や,本特集で紹介されている眼球手術シミュレータ. ィアにも広く取り上げられておりご存知の方も多いで. (ESS)で用いられているハプティックデバイスの開発を. 43巻5号 情報処理 2002年5月. −4−.

(5) 3自由度ジョイン 2自由度ジョイン. 回転リンク. ワイヤ/プーリ伝達 DCモータ&エンコーダ. ベース -6 3. -5 6. • 予張力をかけたワイヤ/プーリ伝達によるバックラ. 行った.本開発における特徴として, • 肝臓や乳房,眼球など一部臓器を対象とした低侵襲. ッシ(機械的なガタ)を極力抑えている.. 手術を目的としており,可動範囲は狭く(手先の動き. などの特徴を持っている.開発したデバイスのハード. に対応),術具の使用を前提としている.. ウェア仕様を. • 微小な領域を扱うために,空間分解能が高い. -1 に示す.この表を見ると最小摩擦力. (バックドライブフリクション)と 6 自由度タイプの操作. (0.1mm 以下).. 部質量が要求を満足していない.最小摩擦力について. • 出力範囲(力のダイナミックレンジ)が大きい(0.1N. はモータ軸受け部の摩擦の影響が大きくこれ以上の低. ∼ 10N 程度:約100 倍).. 減は難しい.また質量についてはリンクとジョイント. • ESS においては,眼球に設けたポート(切開創)を通. の重さが影響しており,強度や剛性を維持するために. して手術を行うため回転に対する自由度が必要で. はやはりこれ以上の低減は難しい.この問題を解決す. ある.. るため,ソフトウェアにより摩擦力や重力の補償を行. • 操作部が軽量(100g 以下)で,全体にコンパクトで. っている. また,ネットワーク経由により複数のデバイスを接. ある.. 続し,協調作業や遠隔提示も可能となっている.. などが挙げられる.これらの要求を満たすために,機 構にパラレルリンクを採用し,駆動部分はワイヤ/プ ーリ伝達による回転リンク方式を用い,SHP 向けには 3 自由度タイプ,ESS 向けには 6 自由度タイプの卓上型. 患者の負担軽減につながる低侵襲手術は今後さらに 発展していくであろう.しかしそれに伴い手術を行う. (対向型)ハプティックデバイスを開発した. -6 のように. 医者の負担(手技の高度化・複雑化による技能修得,ス. アクチュエータ(マニピュレータ)を並列に配置し可動. トレス)は増加していくと考えられる.これを軽減する. 部を支持する構造である.これに対し産業用ロボット. 手段が手術の代替を行う手術支援ロボットであり,訓. や前述の PHANTOM で用いられている機構はシリアル. 練による技術向上を可能にする手術シミュレータであ. リンク機構と呼ばれている.パラレルリンク機構は,. る.そこで用いられるハプティックデバイスに関し,. パラレルリンク機構とは,. -5 および,. • 駆動部(モータ)をベース部に配置するため操作部の. 筆者の願い(夢)もこめて 2 つのアプローチについて述. 質量を低減できる.. べる.. • 複数のリンクで並列に支持するため剛性が高く,ま た各アクチュエータの誤差が分散され精度が高い. などの特徴を持っている.また,駆動部は,. 医師の負担を軽減する目的で導入された手術支援ロ. • 回転リンクにより,摩擦を軽減している.. ボットを使いこなすために,複雑な操作や高度な訓練 IPSJ Magazine Vol.43 No.5 May 2002. −5−.

(6) 3 自由度 作業領域 最大呈示力 バックドライブ フリクション 指先部質量 指先部仕様 デバイスの サイズ PC との インタフェース. 10N 以上. 6 x, y, z, roll, pitch, yaw の6自由度 15 cm ×15 cm ×10 cm (x)×(y)×(z) 各回転角は 100 °以上 10N 以上. 0.3N 以下. 0.6N 以下. 90g 球形 2chのスイッチ付き (交換可能) 25 cm ×26 cm ×32 cm (W)×(D)×(H) 32bitPCIバスインタフェース ×2枚 差込. 170g 右手用ペン型 1chのスイッチ付き (交換可能) 30 cm ×34.5 cm×28 cm (W)×(D)×(H) 32bit PCIバスインタフェース ×3枚 差込. x, y, z の並進3自由度 15 cm ×15 cm ×10 cm (x)×(y)×(z). -1. が必要となるのでは意味がない.これを解決する 1 つの 手法として,高度な VR 技術を用いたマン・マシンイン. -7 FEELEX I http://intron.kz.tsukuba.ac.jp/vrlab_web_index.html. タフェースの実現が考えられる.医師はロボットの操. (筑波大 岩田ら). 作を気にせずに VR 空間において仮想の患者を相手に手 術を行う.ロボットは医師の行動情報をもとに再構築 された最適行動により実際の患者に対し手術を行うの である.前述の「バーチャル手術システム」の考えを発 る発展が期待される.. 展させたもので,やはり装着型のハプティックデバイ ス(外骨格型)が有効である.現状の外骨格型の問題点 としては,装着の煩わしさ,暴走時の危険性,アクチ ュエータの干渉などが挙げられる.将来的には手術着. さらにその先,となると感覚受容器,神経あるいは. や手袋をする感覚で装着が可能で,触感や温度までも. 脳の知覚部位を直接刺激する,ということも考えられ. 感じられる「ハプティックスーツ」の登場を期待したい.. るだろう.たとえば視覚に関しては,失明した人に視 力を与える人工眼,人工網膜の研究が始まっているよ うに.今後,さらに医学,生物学,工学など幅広い連. 複数の医師による協調動作や集合教育では参加者が. 携が必要となるのは確実である.. 同時に VR 空間を体験できることが望ましいが,装着型. 最後になるが,本稿を読まれた若手研究者・技術者. では体験できるのが装着者に限られてしまう.救急救. がハプティックデバイスに興味を抱かれ,本分野の研. 命訓練や注射・点滴訓練で使われているダミー人形を. 究が盛んになり,視覚や聴覚と肩を並べるほどに社会. 発展させ,自由に病巣を作成し,触診や切開・摘出な. に浸透し貢献することを切に願っている.. どの動作が可能な人形「ハプティックダミー」はできな いものであろうか.筑波大の岩田らにより開発された 面型ハプティックディスプレイ「FEELEX」6)はその可能 性を持つ装置である.これは. -7 に示すように格子状に. 配置した複数のアクチュエータを用いて仮想物体の形 状を表示するとともに,検知した接触圧に応じてアク チュエータを動かして弾力を提示している.「ハプティ ックダミー」を実現するためには,密度(空間分解能) が低い,信号数が多い,映像表示が難しい,などの点 を克服しなければならないが新たなテクノロジーによ 43巻5号 情報処理 2002年5月. −6−. 1)岩田: フォースディスプレイ, 計測自動制御学会学会誌「計測と制御」, 30-6, pp.472-477(1991). 2)研 究 報 告「ヒ ュ ー マ ン イ ン タ フ ェ ー ス 」, No.042, 情 報 処 理 学 会 , (1992). http://www.ipsj.or.jp//members/SIGNotes/Jpn/11/1992/042/ 3)奈良他: テーパー膜上の弾性波動を用いた皮膚感覚ディスプレイ, 日本 VR 学会論文誌, 4-2, pp.467-473(1999)他. 4)廣瀬他: 触覚用共通ソフトウェア(HIP)の開発, 日本 VR 学会論文誌, 33, pp.111-119(1998). 5)鈴木他: 触覚を伴った手術作業が可能なバーチャル手術システムの開 発, 日本VR 学会論文誌, 3-4, pp.237-243(1998). 6)岩 田 他 : Project FEELEX: Adding Haptic Surface to Graphics, Proceedings of ACM SIGGRAPH 2001, pp.469-475(2001). (平成14 年4 月2 日受付).

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