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-中学校 第3学年 音楽科学習指導案
1 題 材 日本の舞台芸術 歌舞伎『勧進帳』 2 指導観 本題材は,我が国の伝統的な音楽文化について関心をもち,正しい理解を深め,そのよさや美し さを感じ取らせることをねらって,設定している。教材の歌舞伎「勧進帳」は,源義経や武蔵坊弁 慶,富樫左衛門などの登場人物による安宅の関の物語を,唄,三味線,囃子によって演奏される長 唄とともに上演する我が国の舞台芸術のひとつである。これまでの,我が国の音楽の学習内容との 関連を意識し,長唄の声の出し方や歌い方,使われる楽器の種類や音色,拍節や音程などを聴き取 らせ,物語の進行を理解させながら歌舞伎を味わわせることができると考える。 本学級の生徒は,明るい雰囲気で,音楽表現や合唱活動にも意欲的に取り組むことができる。日 本音楽については1・2年生で箏について学び,実際に演奏も経験している。しかし,現状として 「日本音楽」というと,「平坦な感じの曲」「お正月っぽい」「お面をかぶって踊る」などという 印象でしかない。能や歌舞伎,雅楽などの違いも曖昧で,自国の伝統的な文化を正しく理解してい るとは言い難い。 この題材をとおし,歌舞伎が生まれた歴史や背景を理解させて音楽とくらしのかかわりをとらえ て聴く姿勢や,我が国や郷土の音楽を大切にする態度,生涯にわたって音楽に親しんでいく態度を 育てたいと考える。 3 題材の指導目標と評価基準Bの概要 題材の指導目標(評価規準) 評価基準Bの概要 観点1 〔関心・意 欲・態度〕 ○ 歌舞伎の舞台構成や音楽に興味を 持ち,その特徴を発見しようとしてい る。 ① 歌舞伎の舞台構成や音楽に関心をもち, プリントに特徴や気づいた点を記入しなが ら視聴している。 ② 長唄で用いられる楽器や音楽の特徴に興 味・関心をもち,鑑賞により気づいた点を プリントに記入している。 観点2 〔音楽的な 感受・表現 の工夫〕 ○ 歌舞伎の中で用いられる音楽の特 徴(楽器・音色・諸要素の変化)を感 じ取っている。 ① 長唄で用いられる楽器の音色,演奏法, 表現の特徴を感じ取っている。 ② 長唄の特徴的な音楽表現を,音楽の諸要 素の変化や物語の進行と関連させて感じ取 っている。 観点4 〔鑑賞の能 力〕 ○ 日本の伝統音楽としての歌舞伎を 総合的に(①音楽②美術③文学や歴史 ④演劇等の側面から)鑑賞している。 ① 歌舞伎の舞台構成を理解し,楽曲の背景と なる歴史や文化とともに表現の特徴や多 様さを聴き取っている。 ② 「勧進帳」のあらすじをふまえて,登場人 物の気持ちを感じ取りながら鑑賞してい る。 ③ 「勧進帳」を歌舞伎の魅力を総合的に(① 音楽②美術③文学や歴史④演劇等の側面 から)感じ取りながら鑑賞している。2 -4 題材のめあて ○歌舞伎について正しく理解し,その①音楽表現の特徴を感じ取り,②日本の伝統音楽の魅力を 説明できるようになろう。 ① 音楽表現の特徴 ・音色の重視(和楽器それぞれに固有の音色がある) ・余韻を好む(音の終わりまでじっくり味わう) ・余韻の変化(微妙な音高の変化や音を出した後に味付けをする工夫がある) ・微妙な音(楽譜には表しきれない無限の音がある) ・歌い物・語り物(ほとんどの曲が声と結びついている) ・独特の発声法(西洋の発声とは違い喉をふるわせるような地声の発声) ・唱歌(楽器の楽譜は,音高譜より奏法譜が多く,それぞれの楽器には奏法に適した唱 歌がある) ・間(1音1バチを単位としているからこそ生まれる) ・拍節的でないリズム(伸び縮みが自在な自由リズムが豊富である) ・速度の変化(最初は遅くて,徐々に速くなる) ・単旋律・ユニゾンが基本(合奏も同一の旋律の装飾か変形の組み合わせが多い) ・序破急(雅楽や能楽などの形式で,箏曲や長唄にも影響を与えた) ② 日本の伝統音楽の魅力 ・静寂から生まれる音楽 ・独特の雰囲気(物静かな美しさ,洗練された動きに対する鋭い感覚をもっている) ・型の美しさ(姿勢や形式の美しさ,心洗われるような緊張感を大切にしている) ・和の精神(指揮者はなしで,呼吸を合わせて音楽を奏でる) ・礼にはじまり,礼で終わる(感謝や尊敬の念の表れ、謙虚な気持ちを大切にする) 5 指導計画表 本 時 時 各時の主眼と 評価基準 提示するめあて まとめの具体的表現 課題提示の工夫 1 歌舞伎の舞台や音楽につ いて理解し,『勧進帳』を鑑 賞することで,音楽表現の特 徴や歌舞伎の魅力を感じ取 ることができる。 関―①,鑑―①・② 歌舞伎の舞台や音 楽について知り,あ らすじを理解して, 歌舞伎『勧進帳』を 鑑賞しよう。 歌舞伎は特徴的な 音楽表現があり,惹 きつけられる魅力が ある。 ○ 題材のめあての 提示 ○ プロジェクター による図示 ○ 映像の活用 2 長唄で用いられる楽器を 理解し,その音色,演奏法, 表現の特徴を感じ取ること ができる。 関―②,感―①・② 歌舞伎「勧進帳」 の音楽である「長唄」 の表現の特徴を探ろ う。 長唄は楽器の組み 合わせ方や歌い方に 変化があり,そのこ とによって,舞台の 進行に劇的な効果を もたらしている。 ○ 楽器別小グルー プによる交流活動 ○ 問題解決的な学 習活動 ○ 部分鑑賞 3 歌舞伎が現在どのような 発展を遂げているのか理解 し,総合芸術としての歌舞伎 の魅力を説明することがで きる。 鑑―③ 現代の歌舞伎の発 展について知り,総 合芸術としての歌舞 伎の魅力を説明しよ う。 歌舞伎には江戸時 代から変わらぬ表現 があり,現代では世 界にも通用する芸術 として親しまれてい る。 ○ 舞台メイキング 映像の鑑賞 ○ 歌舞伎海外公演 映像の活用
3 -6 本時の展開(2/3) 主 眼 ○長唄で用いられる楽器を理解し,その音色,演奏法,表現の特徴を感じ取ることができる。 〔関・感・鑑〕 段 階 配 時 主な学習活動 形 態 指導上の留意点(評価基準・評価方法) 導 入 5 1. 前時を振り返り,本時は歌舞伎 の音楽である長唄について詳しく 鑑賞することを知る。 ○題材のめあてを確認し,前時鑑賞した内容を思 い出させ,演奏されている音楽についてはどの ような印象だったか振り返る。 展 開 10 10 15 2.長唄に使われる各楽器の説明を 聴き,名称・構造・発音原理・奏 法・音色について理解する。 ・説明の内容を学習プリントに記 入する。 3.①三味線,②小鼓・大鼓,③能 管の3つのグループに分かれ,そ れぞれの楽器に注目しながら,( 旅の衣は~着きにけり)の部分を 鑑賞する。 1回目の鑑賞は,自分の担当する 楽器が出てくるところには○を, でてこないところには×をつけ, グループで意見交流する。 ・1班2班~三味線担当 ・3班4班~小鼓,大鼓担当 ・5班6班~能管担当 4.2回目の鑑賞は「速度や音程( 楽器・声)雰囲気」のところを記 入する。担当する箇所の音楽的特 徴をグループで意見交流し,フラ ッシュカードに記入して拡大用紙 に掲示する。 ○VTRを見て各楽器の構造・発音原理・奏法・音 色について学習プリントに記入させる。 ○音色については擬音を使って記入させる。 ○音楽のみから聴き取らせ,楽器の音色に集中さ せる。 ○一つの楽器につき,二つの班が担当して行う。 ○班長を中心に班で意見交流させ,一つにまとめ る。その後全体で班長に手を挙げさせて確認を し,音楽が変化するところに気づかせる。 ○演奏を聴きながらメモを取らせる。「速度や音 程(楽器・声)雰囲気」の部分において感じ取 った特徴を単文でよいので沢山書いていくよ う指導する。 ○掲示終了後,全体で確認し,自分が記入した内 容との相違点を確認させる。 ○長唄で用いられる楽器の音色,演奏法,表現の 特徴を感じ取っている。(関・感・鑑,学習プ リントの記述・発言) 終 末 10 5. 映像付きのものを鑑賞する。先 ほど感じ取った特徴が舞台の中で どのような効果があるのか考え, 記入する。 ○場面による音楽の効果についてまとめる。 ○長唄の特徴的な音楽表現を,音楽の諸要素の変 化や物語の進行と関連させて感じ取っている。 (感・学習プリントの記述・発言) めあて 歌舞伎「勧進帳」の音楽である「長唄」の表現の特徴を探ろう。 まとめ 長唄は楽器の組み合わせ方や歌い方に変化があり,そのこと によって,舞台の進行に劇的な効果をもたらしている。