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法学の講義: 沖縄地域学リポジトリ

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Academic year: 2021

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Author(s)

新城, 将孝

Citation

沖縄大学法経学部紀要(27): 47-63

Issue Date

2017-09

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/21855

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1.はじめに  今日は、主権国家と領土問題と称して、国際社会と主権国家、そして、国境の島、領土問題に ついてみていくことにします。  周知のところですが、国家(state;nation)とは、「一定の領土とその住民を治める排他的な 統治権をもつ政治社会」と定義づけされています(広辞苑)。これは、主権国家をも意味するも のですが、主権とは国家の対外的独立性とされています(1)  ただ、国家を法的にみていくと、各国家は相互に平等の地位にあり、対外的独立性を持つとさ れます。国家相互間においては、法的関係は勿論のこと、政治的・経済的・社会的関係等が平等 関係において存在することになります。  近年では、これら国家間の関係は地球規模となってきています。国際社会のボーダーレス化に よって、あるいはブロック化等から、地球共同体とかの言葉も出てきています。これらは、国際 社会に代置される言葉であるかも知れません。  加えて、今日の国際社会は新たな主体の発生をも伴っています。例えば、交戦団体、民族解放 団体、国際組織、そして、NGOのような非国家組織も現れてきています。今日において、これ らの組織等が国際法主体として取り扱われ、国家間関係に大きな影響を与えてきています(2)  繰り返しますが、主権は国家の対外的独立性を意味します。そこには、当然に、他の国家から の独立であり、内政不干渉の原則、そして、主権平等の原則を伴っています。  国家の要件として、一般には、①永続的住民、②明確な領域、③政府及び他国との関係を取り 結ぶ能力(外交能力)を求めています(3)  いわゆる、一般に、国家の三要素としては、⑴主権、⑵国民、⑶領域が求められています。⑴ 主権については、上記の通りですが、⑵国民といえば、国家を構成する人々のことです。多くの 国は、複数民族で構成されていると言ってよいと思います。また、⑶領域には、①領土、②領海、 ③領空があります。①領土とは陸上部分をいい、②領海とは陸上部の海岸線から12海里以内を言 います。そして、③領空とは、領土と領海の上空、大気圏内をいいます。加えて、④経済水域(排 【研究ノート】 専 門 分 野:法学 キーワード:主権と領域、国境の島、領土問題 An Introduction to Law 新 城 将 孝* Masataka SHINJO

法学の講義

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他的経済水域)がありますが、これは沿岸国が水域内の資源利用権を認められています。沿岸国 に、水域内の資源の保存、管理義務が課されています。排他的経済水域は、沿岸部の海岸線から 200海里以内とされています(4)。  この排他的経済水域(沿岸から200海里)を越える部分が、公海です。その上空を含む、宇宙 空間が国際公域となります。公海では、公海自由の原則があり、どの国の船舶、航空機とも、航 行・上空飛行が自由とされています。  今日、地球上の土地は、その多くはどこかの国ないし地域に属しているといって良いと思いま す。または、条約等に基づき国際管理下に置かれています。勿論、火山の爆発等があり、新島が 生じたとき、無主地の発生の余地は当然にあります。 2.主権と領域、経済水域、そして国際公域等 ⑴ 主権  主権については、前述の通りです。繰り返しますと、主権とは国家の対外的独立性のことを いいます。国家はそれぞれ対外的独立性を持ちますが、相互に平等の地位、平等関係にありま す。別称、主権国家とも呼ばれます。  主権とは、独立、そして、最高の統括権のことをいいますが、具体的には、対外的主権(独 立権)と対内的主権(領域権)とに分けてみることができます。わが国の場合、対外的主権(独 立権)の根拠は日本国憲法にあります。対内的主権(領域権)は、ポツダム宣言にあります(5)  日本国憲法の前文は主権国民を、平和主義、そして、国際協調主義を唱え、日本国民として、 国家の名誉にかけ、これら日本国憲法における理想の実現を世界に宣言しています。また、周 知のように、わが国は第二次世界大戦において、このポツダム宣言を受諾し、連合軍に対し無 条件降伏をしました。ポツダム宣言8項をみますと、「カイロ宣言ノ条項ハ履行セラルベク又 日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラレルベシ」と しています。  ここで留意すべきは、主権は他の国家権力の介入を排除する抵抗概念にはありますが、これ が国際法の適用および国際法による拘束を排除するものではないということです。  具体的に、国際連合憲章第25条は、「国際連合加盟国は、安全保障理事会の決定をこの憲章 に従って受諾し且つ履行することに同意する。」としています。また、同憲章第39条は、「安全 保障理事会は、平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略行為に関する行為の存在を決定し、並 びに、国際平和及び安全を維持し又は回復するために、勧告をし、又は第41条及び第42条に従っ ていかなる措置をとるかを決定する。」としています。すなわち、平和に対する脅威、平和の破 壊又は侵略行為に関する行為については国家の意思に関わりなく同憲章の適用を謳っています。  前述もしたように、国際法上、地球上(宇宙も含む)の空間には、⑴領域、⑵無主地、⑶国 際公域があります。⑴領域は各国家の主権が及ぶ領域のことで、⑵無主地はいずれの国家も主 権の及ばない空間のことをいいます。また、⑶国際公域は、領域(国家領域)、無主地以外の、 いわゆる、領域(国家領域)以外の空間をいいます。いずれの国家も原則として主権を及ぼし てはならない空間のことです。

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⑵ 領域  領域には、国家の領域主権が及びます。領域主権は国家がその領域を排他的に使用、収益、 処分をすることのできる権利です。これは、国家の領域に対する対物的権利、私法上の所有権 に類似する権利または領域内における人と物に対する排他的かつ包括的な支配権との理解にあ ります。すなわち、この領域主権の排他性と包括性は、一つの領域には単一の国家の領域主権 が及ぶとするものです。これは国家の対外関係においては領域を有する国家の使用収益処分権 のことで、領土の放棄、割譲等の権利のことです。  国家の対内関係においては、自国内の人と物に対する排他的、包括的な支配権、そして統治 権をも含むものです。これは、総ての土地を国有化するか(社会主義国家)、総ての土地の私 有化を原則とするか(資本主義国家)にもつながることとなってきます(6)  勿論、コンドミニウム(共同領有、共同統治)の形態のあることも留意すべきです。例えば、 米軍統治下の沖縄は、小笠原は残存主権(潜在主権)の理論で説明されてきました。つまり、 これは領域主権を分割可能なものと考え、沖縄という一つの領域に、小笠原という一つの領域 に複数の国家による領域主権を認めたものです(7)  ともあれ、領域とは国家が領域主権を及ぼす空間のことを言いますが、領域には、領土、領 海、領空があります。 ① 領土  領土は、国家が領域主権を行使できる陸地のことです。領土は領域の基本となるもので、 領海、領空は領土の従物のようなものといえます。すなわち、領海、領空は、独立に存在す ることはありません。領土なくしての領域の存在、これはあり得ないということです。  領水とは領域内の水域部分のことですが、これには内水と領海とがあります。内水は、河 川、湖沼、運河、内海、港等があります(8) ② 領海  領海は、基線から12海里の領水域のことです。基線には、通常基線と直線基線とがあります。 通常基線は、海岸線の低潮線に求められます。直線基線は、屈曲した海岸線、一連の島が海 岸線の至近距離にある場合で、適切な基点を結んだものです。領海は、軍事上および漁業上 の理由から設定されているといわれます。領海には、沿岸国の領域主権が及び、沿岸国は外 国船舶、外国人に対して属地的管轄権が認められています。そして、外国船舶は、無害通行 権を有するものとされます。無害通行権が認められる理由としては、沿岸近海を航行するこ とによる、船舶の安全の確保にあるとされます。言うに及ばず、船舶は燃料や水、食糧の補給、 船舶の整備、避難等のために入港等が必要となります。ただ、これは沿岸国の平和・秩序維 持を前提とするものです。有害となる場合、当然、通行権は制限されることになります(9)  また、沿岸国は領海内において国内法違反の船舶を発見したとき、その船舶の追跡・拿捕をす ることができます。追跡権は、領海内における追跡の開始、そして公海までの範囲となります(10)  群島水域は、地形が密接に関係してきます。一言で言えば、島の集団、群島が、その一部 が相互に連結する水域等のことです。一つの地理的・経済的・政治的単位を構成するものと されています。群島水域には群島基線があり、群島の外側の島、低潮時に水面上にある岩礁 の外側を結びます。その内側が群島水域となり、群島国の主権が及びます(11)

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③ 領空  領空は、前述のように、領土と領海の上空、そして、その大気圏内のことです。国家が領 域主権の行使できる空間となります。領空の飛行には、領域主権国の許可が必要となります(12) ⑶ 接続水域  接続水域は、沿岸から24海里まで設定することができます。領海内での違反行為の防止や取 締が行われる水域で、沿岸国による執行措置がとられます。換言すれば、沿岸国領域における 法令違反を防止し、処罰を行うための規制水域とされています(13) ⑷ 経済水域(排他的経済水域)  排他的経済水域ともいいます。沿岸から200海里まで設定できます。1945年の「大陸棚の地 下及び海底の天然資源に関する宣言」(トルーマン宣言)に起因するといわれます。具体的には、 大陸棚の短い沿岸国がその主権を200海里まで及ぶとする主張に基づくものといわれます。排他 的経済水域では水域の生物、非生物資源等、海洋資源の利用等について、その独占が認められ ます。沿岸国に水域の排他的管轄権、例えば、漁業、エネルギー資源の開発等の経済活動、環 境保全等に関する主権的権利が認められます。人工島、施設、構築物等の設置も認められます(14)  大陸棚は、陸地から海底への自然な延長のことです。元々は、公海の海底部分といえるとこ ろです。すなわち、大陸棚は沿岸国の領土の自然な延長を辿り、大陸棚の外縁までとなります。 ただ、大陸棚が200海里に満たないときは200海里までとされます。200海里を越えるときは大陸 棚限界委員会の勧告を受け、大陸棚延長を350海里まで図ることができることとなっています(15) ⑸ 国際公域  国際公域は、前述のように、いずれの国家も原則として主権を及ぼしてはならない空間のこ とです。  領土、領海は、領域国の領域主権に服します。領土、領水の上空である領空も領域主権に服 します。領土、領海、領空以外の空間が、国際公域ということになります。ただ、接続水域、 排他的経済水域については、前述のように、沿岸国にその目的に沿った、海洋調査、海洋環境 の保護、保全等の管轄権が認められます。そして、公海は、内水、領海、接続水域、排他的経 済水域、群島水域以外の水域で、国際公域となります(16) ① 公海  公海には公海自由の原則があり、積極的には①すべての国が公海を自由に利用できるとす る意義と、消極的には②いずれの国も公海に主権を設定することができないという意義とが あります。  公海利用の自由は、船舶の航行、航空機の上空飛行、海底電線やパイプラインの敷設、人 工島の設置等、自由利用が原則認められます。ただ、公海は人類の平和目的利用に限られる べきであるとされますし、また、他国の利用への配慮を必要とします。具体的には、公海の 秩序維持には、旗国主義がとられます。また、海賊等の行為に対しては船舶や航空機に対す る拿捕、人の逮捕、財産の押収等の執行権の行使が、そしてさらには裁判権の行使が認めら れることになっています(17) ② 深海底  深海底については、1970年に深海底原則宣言が国連総会において決議されました。深海底

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(深海資源)は人類の共同財産であるという考え方から、深海底を公海海底との理解から外 し、深海底に対する領域主権および主権的な権利の行使が禁止されることになりました。そ の結果、深海底は平和目的のために利用されることとなりました。そして、国際海底機構の 事業体による開発と国際海底機構の承認を受けた国による開発方式がとられています。しか し、今日においては、深海底制度実施協定が締結され、各国の企業による深海底の開発も認 められるようになっています(18) ③ 空域  空域では、領空以外が国際公域となります。そこで、領空以外の空域は、すべての国にお いて自由に利用できることになります。ただ、領空には、無害航空の自由が認められていま せん。そこで、領域国の事前の許可等のない領空への浸入は領空侵犯となります。  今日、多くの定期国際航空がありますが、原則、各国が個別に航空協定を締結しています。 これまでは二国間航空協定が殆どで、諸国による網の目のような協定にありました。ただ、 今日においては、路線や運賃等、企業の経営判断に委ねられるところも出てきています。オー プンスカイ協定、オープンスカイ合意国も増加してきています(19) ④ 宇宙空間  宇宙空間については、「月その他の天体を含む宇宙空間の探査および利用における国家活 動を律する原則に関する条約」(宇宙条約:1967年発効)により、宇宙の地位と利用の基本 原則が定められました。宇宙条約によると、宇宙活動の自由は保障されますが、特定国によ る領有は禁止されています。この意味で、宇宙はその利用がすべての国に開かれており、国 際公域となります。加えて、宇宙については平和利用の原則があり、月等の天体は専ら平和 の目的のために利用することが求められています。また、核兵器や大量破棄兵器等を軌道に 乗せたり、宇宙空間(天体)でのこれら軍事施設等の設置等は禁止されています(20) ⑹ 国際化地域  国際化地域は国家領域または国家主権の領域設定は可能ですが、領域主権の適用および行使 を制限されている空間です。例えば、①信託統治制度、②国際河川、③国際運河、④南極がそ の例とされています(21) ① 信託統治  信託統治は、国際連盟下での委任統治を継受した制度です。国際連合の監督の下に、その 信託を受けた国(施政権者)が一定の領土(信託統治地域)に対して行う統治のことで、国 際連盟の委任統治に相当するものといわれます(広辞苑)。具体的には、委任統治にある地域、 第2次大戦の結果、施政権を分離される地域等について、国際連合が施政権者である国家と 協定を締結し、国際連合の下で施政を行う形態にあります。信託統治は、国際平和や安全の 増進、そして、信託統治地域における住民の自治または独立をその目的としています(22) ② 国際河川  国際河川は、複数の主権国家を貫流する河川、または複数の主権国家の国境となっている 河川のことです。そして、その利用が条約等により国際的な規制に置かれている河川のこと です。例えば、ライン河はスイスのアルプスに源を有し、ドイツ、フランスの国境を流れ、 オランダを経て北海に流れる、西ヨーロッパの重要な内陸水路です。メコン河は中国、チベッ

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トに源を有し、ラオス、タイの国境を流れ、カンボジアを貫流し、ベトナムを通り、南シナ 海に流れ出る、東南アジア最大の大河です(広辞苑)。国際河川は、外国船舶の自由航行が 可能であり、複数国が海への出入りを可能とします。一般に、国際河川条約により、実施さ れることになります(23) ③ 国際運河  国際運河は、条約上自由航行が認められている海洋と海洋を結ぶ水路のことをいいます。 本来は領域主権の及ぶ内水となりますが、海上交通の重要航路であり、その重要性から条約 によって領域主権の行使に制限が行われています(24)  国際運河の例としては、地中海と紅海を結ぶスエズ運河と太平洋と大西洋を結ぶパナマ運 河を挙げることができます。 ④ 南極  南極は、南極(南極点)を中心とする大陸です。1961年に発効した南極条約により、南極 地域の領土権と請求権が凍結され、軍事的利用の禁止が行われています。領域の利用につい ては平和的利用の徹底と国際科学協力の推進がうたわれ、管轄と利用とに国際化が図られて います。すなわち、領域主権についての棚上げが行われ、南極は国家領域、無主地、国際公 域のいずれにも属さない領域となっています(25) ⑺ 国際海峡  国際海峡は、沿岸国の領海内における国際航行に使用されている海峡のことです。国際海峡 は海上通商の要衝がゆえということにもなりますが、(国際)海峡に特別な通航制度といえます。 領海内において無害の通過通航は認められますが、加えて、従来、国際航行の要衝である海峡 では停止できない無害通行権も認められてきています。これがさらに強化されたものが、この 国際海峡制度です。直接の動機は、領海の幅12海里への拡張にあります。結果、従来公海にあっ た国際海峡が領海となり、これがこれまで認められていた国際航行の阻害要因となりました。 これまでの公海通航権を、これまでと同様に自由に航行できるよう保障していくためのもので す。特色は、国際海峡での通過通行権はすべての船舶や航空機に認められている点です。勿論、 この国際海峡において、沿岸国は船舶等の通過通航を停止することはできません。しかし当然 のことではありますが、海峡利用国は航行の安全や汚染防止等、沿岸国との協力義務を持つこ とになります(26) 3.わが国における国境の島と領土問題、そして領域と実行支配 ⑴ わが国における国境の島  わが国において、国境の島といえば、北は択捉島で、北緯45度33分に位置しています。北方 領土として、領土問題のある島です。南は、沖ノ鳥島で、北緯20度25分に位置し、東京都小笠 原諸島に属しています。東京の南方向、1,700㎞にあり、満潮時に人が立てるくらいの(約70 ㎝位が海面上にでている)2つの島(東小島と北小島)があります。日本政府は、北小島(幅 5m)に、1987年から約300億円の費用をかけ、領土保全の工事を行っています。そして、そ の維持費は、年間約2億円といわれています。日本の国土面積は約38万㎢、世界で41番目の広 さにあるといわれています。排他的経済水域を含めた面積となると、世界で10位、沖ノ鳥島を

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失うと40万㎢の排他的経済水域を失うといわれています。沖ノ鳥島について、日本政府は「自 然に形成された陸地で、満潮時でも水面上にある」とし、「島」であるとの主張をします。こ れに対して、中国は、「岩」として異論を唱えています。国連大陸棚限界委員会は、2012年、 沖ノ鳥島を事実上「島」として認めています(27)  東の国境の島は、南鳥島(旧マーカス島)で、東経153度58分に位置しています。東京都小 笠原支庁の管轄に属し、父島の南東1,200㎞に位置する太平洋の孤島です。1896年(明治29年)、 日本人により発見され、1898年に日本の領土とされました。面積は1.5㎢、気象観測基地となっ ています(広辞苑)。西は、沖縄県の与那国島で、東経122度56分に位置し、八重山郡に所属し ています。台湾への距離は110㎞、那覇(沖縄島)への距離は530㎞、面積は28.8㎢にあるとい われています(広辞苑)。戦後の一時期、米軍からの援助がほとんどなかった頃、台湾との私 貿易(密貿易的な交易)でにぎわっていたといわれています(28)  これら国境の島は、前述のようにそれぞれに特性を持つことになりますが、択捉島は北方領 土として現在ロシア連邦の統治下にあります。他に、領土問題、領域主権に関わる問題として、 韓国との間に島根県の竹島問題があります。中華人民共和国・台湾との間には、沖縄県の尖閣 諸島問題があります。 ⑵ わが国の領土問題、そして領域と実行支配  (ⅰ)わが国の領土問題 ① 北方領土  まず、北海道の北、千島列島南に位置する択捉島、国後島、歯舞群島、色丹島の4島(群 島)についての領域帰属の問題です。これは、ロシア連邦との間における領土帰属の問題で す。第二次世界大戦後において、旧島民の引き上げ(日本帰国)が行われ、ロシア人の居住 が進んでいる領域です。  北方領土については、条約による規律の対象となってきた点を留意すべきと思われます。 北方領土は、1855年、日露間において、日露和親(通好)条約を締結し、択捉島以南を日本 領としています。その後、日露戦争後の講和条約、ポーツマス条約(1905年)で、北緯50度 以南の南樺太を日本領とするとしています。その後の、1945年、旧ソビエト連邦はヤルタ協 定に基づき対日戦争に参加し、樺太、千島、北方領土に侵攻し、樺太、千島の占領を行って います。1951年9月、サンフランシスコ条約(連合軍と日本との対日講和条約)が締結され、 1952年4月28日に発効しました。日本では第二次世界大戦による占領が終結し、主権国家の 回復が図られました。そして同時に、沖縄・奄美、小笠原は日本から分離されます。ただ、 この講和条約ですが、米ソの対立から、日本は連合国55ケ国中、48ケ国との調印となりまし た(後に、中華民国、インド、ビルマ等は調印)。この条約の発効によって、日本は南樺太 と千島の帰属を放棄することになります。しかし、旧ソビエト連邦はこの条約に調印をして いません。そこで、対旧ソビエト連邦・ロシア連邦との関係では、別途講和条約の締結の必 要性を残しています。その後の、1956年、日ソ共同声明が出されましたが、平和条約締結後、 歯舞群島・色丹島は日本に引き渡すことを明らかとしました。しかしながら、ロシア連邦の 大統領メトベージェフ(当時)が国後島を訪問し(2010年)、その後、ロシア連邦は北方領 土でのインフラ整備を進めています(29)

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② 竹島  竹島は、島根県の隠岐島北西157㎞に位置しています。東島、西島の島、そして、数十の 岩礁から成り立っています。総面積は0.23㎢で、東京の日比谷公園の面積に相当するといわ れています(30)  竹島の領有について、日本政府は①江戸時代(18世紀)の地図に「松島」と記載されてい る、②1905年、領土編入を閣議決定し、島根県告示で領有意思を示している、③カイロ宣言 の「略取した地域」には入らない、④連合軍指令は行政権の範囲を規定したもので、領土を 最終的に決定したものではない、⑤対日講和条約は日本が放棄する地域を明示していますが、 竹島はそれに含まれない、との主張をしています。これに対して、韓国は、①15世紀の文献 「東国興地勝覧」において「千山島」「三峰島」との記述をみることができる、②日本の領有 意思は地方庁(島根県)により秘密裡に行われたものである、③カイロ宣言の「暴力により 略取した地域」に該当し、④連合軍指令により、日本政府の行政権の停止があり、日本から 分離されたものである、⑤対日講和条約は、どちらの国に属するものであるかまでは言及し ていない、と主張しています。現在、竹島には韓国の警備地院が常駐し、接岸施設、有人灯 台の施設があります。いわゆる、韓国の「実効支配」が行われています(31) ③ 尖閣諸島  尖閣諸島は沖縄県の八重山列島、石垣島の北方160㎞にある小島群です。魚釣島、北小島、 南小島、久場島、大正島の5島で構成されています。沖縄県石垣市に属し、いずれも無人島 です。  1895年(明治26年)、日本政府は尖閣諸島の「無主」を確認し、沖縄県の所属とする閣議 決定をしています。そして、対日講和条約で、南西諸島の一部として沖縄とともに、米国の 統治下に置かれたとします。1968年、国連アジア極東委員会の学術調査で、この海域に石油 資源があるとの指摘があり、1971年、中国(中華人民共和国)、台湾(中華民国)がそれぞ れ領有権を主張するに至っています。この間、中国とのガス油田開発、漁業権についての協 力関係の話し合いが行われています(32)  加えて、この尖閣諸島問題については、沖縄の地位、そして、琉球処分と明治政府との関 係も理解しておく必要があるように思えます。  まず、琉球処分とは、明治政府による琉球(沖縄)の日本への強制併合の一連の過程のこ とをいいます。この琉球処分は、1872年(明治5年)、琉球藩の設置(藩王 尚泰。藩主で はありません。)に始まります。そして、1879年(明治12年)、沖縄県の設置、廃琉置県が行 われます。これにより、450年続いた琉球王国は滅亡し、日本に併合されました(33)  この後の経緯として、明治政府は、1880年(明治13年)、緊張関係にあった清国(中国)に対し、 日清修好条約の条項(最恵国待遇)の追加と引き替えに、①沖縄島以北を日本領とし、②先 島諸島(宮古群島、八重山郡島)を清領とする、③日本の商人が欧米諸国並みに中国で商業 活動ができるようにする、との先島諸島分島案(分島・増約案)を提案しています。これに 対して、清国は、①奄美諸島以北を日本領土とする、②沖縄諸島を独立させ、琉球王国を復 活させる、③先島諸島を中国領土とする案(琉球三分割案)を主張しました(34)  ただ、清国は、当時、ロシアとの国境紛争もあり、明治政府の提案する分島・増約案に合

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意(仮調印)しました。しかし、清国が調印をためらい、条約の正式調印は棚上げされてい ました。  結局、1894年(明治27年)の日清戦争後において、戦争に敗れた清国は台湾島等を日本に 割譲し、同時に琉球(沖縄)に対する日本の主権は自然解決の形(条約による規律の対象外) でおさめられています。そして前述もしていますように、日本政府は1895年(明治28年)、 尖閣諸島の「無主」を確認し、沖縄県の所属とする閣議決定をしています(35)  (ⅱ)領土問題と戦争 ① 日清戦争  日清戦争は、1894年(明治27年)7月から1895年(明治28年)にかけて行われています。 この戦争は、主に朝鮮半島をめぐる戦争です。朝鮮は、当時、近世の国際秩序において中国 (清国)の属国にありました(この点、琉球処分前の琉球(沖縄)も同じでした。)。日本は、 当時、明治維新により、近代的な国際関係に入っていました。日本は、朝鮮を中国から切り 離し、独立させようとしていました。日清戦争は、このように、いわば朝鮮という国の国際 的な地位をめぐる争いでした。  近代軍としての、日本軍は戦局を終始優勢に進め、朝鮮半島、遼東半島を占領しました。  日清講和条約は、下関において調印され、戦勝国である日本は①朝鮮の独立、②遼東半島、 台湾、澎湖諸島(ホウコショトウ:台湾島の西方約50㎞、台湾海峡上の島嶼群)の割譲、③ 多額の賠償金を認めさせました。しかし、三国干渉(ロシア、フランス、ドイツ)が行われ、 結果、日本は遼東半島を清国に返還しました(広辞苑)。  その後(1898年:明治31年)、ロシアは日本が返還した遼東半島の南端に位置する旅順、 大連を租借しました。そして、ロシアは旅順に太平洋艦隊を配置し、満州への進出を推し進 めていきました。また、日本は、次第に韓国(大韓帝国)の内政、そして外交権を掌握し、 1910年(明治43年)韓国併合条約を締結しています。そして、朝鮮総督府を置いて、日本は 朝鮮の支配(朝鮮の併合)をしました(広辞苑)。 ② 日露戦争  1904年(明治37年)から1905年(明治38年)、対ロシアとの間の戦争です。朝鮮半島、ロ シアの主権下にあった満州南部、そして、日本海を主戦場とした戦争です。日本側からいえ ば、ロシアの南下政策による脅威、日本の安全保障の堅持を主目的とした戦争ということに なります。  この日露戦争は、アメリカの仲介で、ポーツマス条約を締結し(1905年9月5日)、終結 しました。日露戦争の結果は、南樺太を日本領とし、ロシアが中国に対して有していた租借 地関東州についての租借権を日本が得ることとなりました(広辞苑)。  以下、北方領土に関連し、その歴史を概観します。ただ、ここで一言ですが、前述のよう に、北方領土については、条約による規律の対象となってきた点も留意すべきと思われます。  北方領土について、最初の国境確定の条約は、前述、日露和親(通好)条約です(1885年)。 同条約による国境線は、択捉島以南を日本領とし、得撫島以北をロシア領としています。こ のとき、樺太については、日露の雑居地(共有地・混在の地)としています。しかしその後、 この共有地で両国民は摩擦を起こしており、結局、1875年、日露間においては、樺太千島交

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換条約が締結されました。同条約では、占守(シュムシュ)島までの千島列島(クリル群島) を日本領とし、樺太全島をロシア領としています。そして、日露戦争におけるポーツマス条 約(1905年:明治38年)の締結となります。このポーツマス条約で南樺太が日本に割譲され、 この時点において、北方領土は南樺太、千島列島のすべてが日本領となりました(36) ③ 第二次世界大戦  その後は、第二次世界大戦となります。当時、日本と旧ソビエト連邦国間には「日ソ中立 条約(日ソ不可侵条約)」が締結されていました(1941年)。その内容は、相互に領土の保全、 不可侵を約束するものでした。いわゆる、締結国間で、締結国の一方が第三国から攻撃され たとき、他方は中立を維持するというものです。  この日ソ中立条約ですが、有効期限は5年(1946年)とされ、一方からの破棄通告がない 限り、5年間の延長を内容とするものでした。旧ソビエト連邦は日本に対し(1945年4月)、 延長のないことを通知します(事実上の条約破棄との見方もあります。)(広辞苑)。  ともあれ、旧ソビエト連邦は、この間に、米英とのテヘラン会談で、対ドイツ戦のため、 米英に対しヨーロッパ上陸の決行を求め、そして一方で、対日戦争を約束したといわれます。 ヤルタ会談では、対日参戦を、その条件として南樺太、千島列島の旧ソビエト連邦への帰属 を約束していたといわれます(広辞苑)。結果、旧ソビエト連邦は、1945年8月、中国北部、 南樺太、千島列島に進攻します。  その後、日本はポツダム宣言を受諾し、連合軍に無条件降伏をします。そして、前述のよ うに、このポツダム宣言により、日本の領土は四つの主要な島(北海道、本州、四国、九州) と連合軍の定める諸小島に限定されることとなりました。  1951年、日本は、対日講和条約を締結し、国家主権を確保することになります。この条約 で、日本は千島列島、ポーツマス条約で日本が主権を獲得した樺太の一部等、これらの諸島 に対するすべての権利、権限、請求権の放棄をしています。  ただ、旧ソビエト連邦は対日講和条約に参加(調印)していません。別途の、平和条約の 締結が必要との理解もあります。  1956年、日本と旧ソビエト連邦は、交渉の結果、「平和条約締結後、歯舞群島と色丹島を 日本に引き渡す」という共同声明を出しています(37)  しかし、今だ、領土問題は解決していません。 ⑵ 領域と実行支配  (ⅰ)領土、領域主権、領域権源  周知のように、領土は国家が領域主権(territorial sovereignty)を及ぼすことができる 陸地のことです。領域主権は領域を自由に使用、収益、処分を行うことのできる権能です。 いわば、領域内での排他的支配権と言い換えることもできます。  国家がある陸地を自国領土というには、領域主権を正当化する国際法上の根拠、すなわち、 領域権源(title to territory)の存在が必要となってきます。  領域権源は、国際法においては、領域主権を正当化する根拠とされています。  国際法は、複数の主権国家が誕生した近代欧州諸国において、その相互関係を規律する法 として発生したといわれています。そして、領域権源は、欧州諸国が世界各地で繰り広げて

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きた植民地獲得競争の中で生まれてきた概念ともいわれています。すなわち、領域権源の概 念、領域法の目的は、近代欧州諸国が新たな領域(植民地)の獲得について相互を規律する ところにありました。欧州諸国の、非欧州の地の支配(植民地化)を正当化し、その競争秩 序の確保にあったといわれています(38)  この領域主権の取得方式には、一般に、①先占、②添付、③割譲、④征服、⑤時効、⑥新 国家があるとされます(39)  先占は、無主地(どの国家にも属していない陸地)に対して、領有の意思をもって実効的 に支配することとされます。添付は、堆積等の自然の作用や埋め立て(人工造成)等によっ て新たな陸地が付け加わることとされます。この先占、添付は、原始的に陸地の領域主権を 獲得するという趣旨で、「原始取得」または「原始権源」といわれたりしています。  割譲は、合意に基づき他国の領土を譲り受けることを、自己の領土を譲り渡すことをいい ます。征服は、他国の領土を武力で奪うことをいいます。領域権源の承継取得に入るでしょ う(ただ、今日、武力支配、征服は認められていません。)。  時効は、他国の領土、領有主権の明確でない陸地の、領有の意思を持った主観的行為の継 続的発現、いわゆる一般に、実効的支配の継続による取得のこととされています。  新国家は、既存の国家からの独立、それから、複数の国家の合併による国家の成立等のこ とをいいます。新国家の成立では、一般に、領域権源は問われてきていません。むしろ、こ れは、これらの団体が国際法上の主権国家としての基準、国家要件を満たすものであるのか という、国家承認制度の整備に繋がってくるものです。  いずれにしても、領域主権の取得方式には、①先占、②添付、③割譲、④征服、⑤時効、 ⑥新国家があるとされますが、これらもまた、領土紛争、領域問題については限界を示すと いわれています。その理由として、領土紛争、領域問題の多くは、長期わたる多様な事実の、 複雑な事情の積み重ねがあるからといわれています。これはおそらく、類型化された領域権 源への当てはめに、そして、その困難さに起因しているものとも思われます。  (ⅱ)固有の領土と実効支配  「固有の領土」についての表現ですが、例えば、竹島について、日本は歴史的事実、それ から国際法上も固有の領土との主張をしています。また、韓国は、独島が歴史的・地理的・ 国際法的に韓国固有の領土であることを主張しています。尖閣諸島について、日本は、いま だかつて外国の領土となったことはなくわが国固有の領土と主張しています。北方領土(4 島)について、日本は固有の領土との主張を行っています。  北方領土、尖閣諸島について、日本の主張は「無主地先占」を意味し、「原始取得」の主 張となります。竹島の島根編入(1905年)については、江戸時代初頭にあたる17世紀半ばに は竹島で領有権を確立していた、すなわち明治政府による竹島の領有意思の再確認の措置と 理解されています。直接に、無主地先占を主張しているものではありません(40)  ともあれ、留意すべきは、今日、征服、武力による征服は認められていないことです。ポ ツダム宣言以降、征服による領有主権は認められず、征服による領有地域については返還等 が行われています。  北方領土、竹島、尖閣諸島については、日本はもちろん、ロシア、韓国、中国とも領域権

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源が有効に成立していることを主張するものです。少なくとも、確保された領域主権が放棄 や他国への移転(割譲)等によって失われることなく、現在も有効に存続していることを主 張するものです。  北方領土についてはロシアが、竹島については韓国が、尖閣諸島については日本が主観的 行為の継続的発現、すなわち、実効支配を行っています。もちろん、それぞれ固有の領土と の主張を行っています。ここでの実効支配の概念ですが、国際法上、実効支配の概念の説明 はかなり難しいもののようです。実効支配を時効とのかかわりで見ていくと、所持を占有権 の表示ととらえることが可能のように思えます。実効支配は、ある国が自らに領域主権があ ることの表示しているものとの理解を可能とします。民法でいえば、占有の状況であろうと 思えます。国際法理論として、確かに、主観的行為の継続的発現、すなわち、実効性の原則 を見ることができます。係争地域における平穏かつ公然とした、いわゆる継続的で平和的な 統治権の行使を基準とする考え方です。勿論、競合する主観的活動の実効性、その相対的強 さも考慮されうる余地もあろうとは思えます。加えて、黙認も当然に黙示的同意と解される 余地も出てきます。そして、この黙示的同意に対する禁反言則も成り立ちうるかもしれませ ん。この理解は征服の権限性の否認を基礎とした、国家による信義則の重視を求めるものに 繋がるものかもしれません(41) 4.むすびにかえて  本稿(講義)は、国家主権と国家領域、そして、領土問題についての概観をしています。趣旨 は、本学の法経学部法経学科の学生(法学概論Ⅰの受講生)に、沖縄を通して、地域に目を向けて、 法を少しでも理解してもらいたいとのところにあります。それにしても何故、国際法かというこ とにもなります。沖縄は、かつて琉球王国であったという歴史があります。また、米軍・米国に よる統治という時代もあります。沖縄のある民謡は、トゥーのユー(唐の世)から、ヤマトのユー (大和の世)、ヤマトのユーからアメリカユー(アメリカの世)、アメリカユーからヤマトのユー、 ヒルマス カワイサ クヌ ウチナー(目まぐるしく変わるこの沖縄)と唄っています。歴史の 変化を、住民の生活をある意味、鋭く風刺しているものと思えます。また、今も、米軍基地は沖 縄に集中しています。沖縄で良く言われていることですが、沖縄の今を、現状を、自らの足下を 理解することで、世界を、そして日本を知ることができる、ともいわれています。勿論、外から、 沖縄を見ることの必要性も強くいわれています。  また、領域主権ついては、周知のローマ法における所有権の概念についての類推適用等の考え 方を見ることができます。以下、触れることとします。  領域主権に関する法的性質については、所有権説(客体説)、空間説(主体説)、そして混合概 念をみることができます。所有権説は自国の領域(主として領土)について、排他的支配権があり、 領域を権利客体として使用・収益・処分する権利があるとします。歴史的に、戦争において、敗 戦国の領土の割譲、賠償金の支払い等は当然の如く行われてきています。また、自国領土の売買(譲 渡・購入)も行われたりしてきています。これに対して、空間説は、領域主権を領域内の人と物 に対する支配権と説明し、この支配権の及ぶ空間を国家領域と説明します。そして、領域主権は 他国家に対する独立、排他性を意味し、領域内の人と物に対する支配権(権限)のことであると

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説明します。ただ、国家間における領域(領土)の取引を認めることができるとすれば、領域(領 土)が国家の所有物として性質を有することを否定し得なくなります。今日では、領域主権につ いて、所有権としての性質を保有する、国家の対内的な支配権と理解するのが一般的のようです (上記、混合概念)。換言しますと、この国家主権の性質からして、国家は、対外的には自国領域 について、民法の所有権類似の権利、領域を排他的に使用・収益・処分することのできる権利を 有し、対内的には、領域内の人と物等に対し統治権を行使できることを意味することとなります。 ここでは、民法類似の一物一権主義ならぬ、原則、一領域一領域主権(一領域に一国家の領域主 権)も成り立つものと思えます(42)  ここで、近代市民法の三原則を思い出してみたいと思います。所有権の絶対性、契約の自由、 過失責任にあります。これは財産取引における三原則ですが、権利取得の方法としては、原始取 得と承継取得とがあり、原始取得として、無主物先占(民法239条)、取得時効(民法162条)を 見ることができます。また、不動産は付合しますし(民法242条)、民法においては共有の概念を 見ることもできます(民法249条以下)。ただ、国内法においては不動産登記法がありますが、国 際法において、不動産登記類似の領域の公示制度を見ることはできません。この点、周知のよう に、民法において、不動産については公示方法として登記制度があり、動産については引渡となっ ています。ただ、土地に定着している物(定着物:独立の物として扱われていない物)の公示方 法については、慣習上の公示方法、明認方法が認められています。例えば、立木、未分離の果実 等のように、実際に、土地とは別個の独立した物として取引の対象となっているものの存在があ るところからです(43)         *1 沖縄大学法経学部法経学科 教授 注 (1) 国家主権の対外的独立性が強調されると、国家は国際法に拘束されないとの理解に繋がる 可能性があります。しかし、各国が一定のルールに従い、安定関係を築くことは有益であ り、国家主権もその範囲での概念にあると理解していくべきと思われます。柳原正治・森 川幸一・兼原敦子編 『プラクテイス 国際法講義』第2版 新山社 2016年 114頁以下。 (2) 国家が国際法主体の中心であることに疑いはないが、今日、国家以外の行為体、非国家主体、 例えば、準国家団体、交戦団体、亡命政府、民族解放団体、国際組織、個人、NGO等も 国際法主体としての地位を認められています。柳原・森川・兼原編 前掲書82頁―112頁。 (3) モンテビデオ条約(国家の権利義務条約)は、1933年米欧州諸国で締結されたものです。 本文で示した定式化(国家の3つの要件)は、同条約1条で行われ、広く承認されている とされます。杉原高嶺 『国際法学講義』第2版 有斐閣 2013年 195頁。小寺彰・岩沢 雄司・森田章夫編 『講義 国際法』第2版 有斐閣 2014年 133頁。 (4) 浜島書店編集部 『新しい公民』 浜島書店 2014年 140頁。谷田部玲生 他 『高等学校  現代社会』 第一学習社 2015年 50頁―51頁。第一学習社編集部 『本質が見えてくる  最新現代社会資料集 新版』 第一学習社 2015年 161頁。

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(5) 井上秀典 『持続可能な社会を考える 法律学入門』 八千代出版 2016年 79頁。 (6) 領域主権の本質に関する学説としては、大きくは、①客体説と②空間説とがあります。① 客体説は私法上の所有権に類似する対物的権利とし、②空間説は支配権が行使される空間 ないし枠組みとします。今日、国家は自国の領域を排他的に使用・収益・処分する権利と、 自国内の人と物に対する排他的、包括的な支配権から構成されるとします。この排他性・ 包括性は、当然、他国の権利保護をもその趣旨の中に含めています。柳原・森川・兼原編  前掲書186頁―188頁。杉原 前掲書 279頁―280頁。 (7) 領域主権の排他性・包括性からは、原則、一地域(空間)一国家の領域主権(民法の一物 一件主義類似)がみられますが、一地域に複数国の領域主権の設定例もみられます(復帰 前の沖縄)。残存主権の理論は、主権を分割可能と理解するものです。柳原・森川・兼原 編 前掲書187頁。小寺・岩沢・森田編 前掲書 241頁。山形英郎編『国際法入門 逆か ら学ぶ』 法律文化社 2014年 121頁。 (8) 国家領域の核心は領土であり、領水は領土に付随し、領空は領土と領水に付随し、領水と 領空は領土の処分に従うものとされます。山形編 前掲書 107頁。杉原 前掲書 283頁 ―284頁。柳原・森川・兼原編 前掲書 212頁―214頁。 (9) 国際海洋条約7条では、以下の場合が有害となり、通行権が制限されています。 ①武力による威嚇・武力行使 ②兵器を用いる訓練又は演習 ③情報収集を目的とする 行為 ④防衛等に関する宣伝行為 ⑤航空機の発着又は積込 ⑥軍事機器の発着又は積込  ⑦法令に違反する物品、通貨、人の積込・積卸 ⑧故意かつ重大に汚染行為 ⑨漁獲行為  ⑩調査活動又は測量活動 ⑪通信系又は他の施設の破壊を目的とする行為 ⑫通航に直接 関係のないその他の活動(7条)。潜水艦は浮上し、旗を掲げ航行します(20条)。柳原・ 森川・兼原編 前掲書 209頁―214頁。小寺・岩沢・森田編 前掲書 267頁―274頁。山 形編 前掲書 134頁―140頁。 (10) 柳原・森川・兼原編 前掲書 218頁―220頁。小寺・岩沢・森田編 前掲書 285頁―287 頁。山形編 前掲書 158頁―163頁。 (11) 群島には、沿岸群島(ノルウェーの沿岸群島等)、沖合群島(ガラバゴス諸島等)、大洋群 島(インドネシア、フィリッピン、フィージー等)があるとされます。インドネシアは 1957年に群島水域宣言をし、フィリッピンは法制化を図っているようです(1961年)。杉 原 前掲書 317頁―318頁。柳原・森川・兼原編 前掲書 214頁―215頁。小寺・岩沢・ 森田編 前掲書 275頁。山形編 前掲書 142頁―143頁。 (12) 領空では、自由飛行(無害通行権)は認められていません。許可なく、浸入しますと、領 空侵犯となります。過去には、大韓航空機撃墜事件(1983年)もありました。民間航空機 である、大韓航空機が航路を外れ、当時のソビエト連邦の領空侵犯(サハリン上空等)し、 撃墜されたものです。計器故障又は操縦ミスによるものではないのかともいわれています が、冷戦時の頃の事件です。また、空には、安全保障、警察上の理由から、防空識別圈を 設ける国もあるようです。山形編 前掲書 173頁―174頁。井上 前掲書 87頁。 (13) わが国は、1996年、国連海洋法条約への加入に際し、接続水域を設けています。国内法と して、「領海及び接続水域に関する法律」(昭和52年法律第30号)があります。これは、密輸・

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密入国に対処するものともいわれています。山形編 前掲書 159頁―160頁。杉原 前掲 書 318頁―319頁。 (14) 他方、沿岸国以外の他国も船舶の航行、航空機の自由飛行、海底電線やパイプライン敷設 等を自由に行うことはできます。ただ、これらの行為も、沿岸国の主権を害さない限り 認められるということになります。井上 前掲書 84頁。柳原・森川・兼原編 前掲書  222頁―225頁。 (15) 東シナ海における、日本と中国間の距離は400海里に達しないといわれます。日本と中国 は経済水域と大陸棚が重なっています。両国とも、その境界主張には相違があります。日 韓においては、日韓大陸棚協定(1974年)が結ばれています。また、日韓漁業協定(1998年)、 日中漁業協定(1997年)が締結され、竹島周辺、東シナ海周辺に暫定水域が設けられてい ます。山形編 前掲書 149頁―152頁。柳原・森川・兼原編 前掲書 226頁―228頁。井 上 前掲書 85頁。小寺・岩沢・森田編 前掲書 288頁。 (16) 小寺・岩沢・森田編 前掲書 238頁―239頁。柳原・森川・兼原編 前掲書 186頁。 (17) 公海において、外国船籍への近接権は慣習法として認められています。臨検は、海賊、無 国籍船、外国旗を掲揚する自国船の嫌疑ある船舶等に認められます。また、追跡権は、公 海自由の原則の例外となります。ただ、追跡権の行使には、領海または管轄海域内におけ る追跡の開始、追跡の継続、法令違反等の要件が必要となります。井上 前掲書 83頁― 84頁。柳原・森川・兼原編 前掲書 216頁―220頁。小寺・岩沢・森田編 前掲書 284 頁―288頁。杉原 前掲書 336頁―344頁。 (18) 小寺・岩沢・森田編 前掲書 289頁―291頁。杉原 前掲書 345頁―347頁。柳原・森川・ 兼原編 前掲書 229頁―230頁。 (19) 杉原 前掲書 359頁―362頁。山形編 前掲書 173頁―176頁。小寺・岩沢・森田編 前 掲書 304頁―314頁。 (20) 小寺・岩沢・森田編 前掲書 314頁―324頁。山形編 前掲書 176頁―181頁。杉原 前 掲書 362頁―368頁。 (21) 国際化地域という概念は、今日必ずしも確立されたものではないといわれています。すな わち、従来、国家領域、無主地、国際公域という領域設定を基準とした分類が一般に行わ れてきています。しかし、領域の国際化、すなわち、国際法上の空間秩序が複雑多様化し ている今日、領域主権の制限等、国際公域とも異なる領域地域を見るに至っています。柳 原正治・森川幸一・兼原敦子編 『演習 プラクテイス 国際法』 信山社 2014年 94頁 ―95頁。柳原・森川・兼原編 前掲書 241頁―247頁。杉原 前掲書 351頁―359頁。小 寺・岩沢・森田編 前掲書 298頁―304頁。 (22) 今日、植民地領域はないといって良いと思えます。植民地支配の一形態としての租借地と して有名なものとして香港があり、1997年、その香港(香港島・九龍)は中国に返還され ました(マカオはその翌年)。また、第二次大戦後の信託統治地域は漸次独立をし(1994 年のパラオの独立は信託統治地域の最後の独立といわれます。)、信託統治理事会は活動停 止状態にあるといわれます。しかし、一方で、国際連合は平和維持活動の中で、一定の領 域の管理および統治に関与するようになっています。共同領有(残存主権)にあった沖縄

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は、1972年、日本へ復帰しています。小寺・岩沢・森田編 前掲書 298頁―299頁。柳原・ 森川・兼原編 前掲書 演習 94頁。柳原・森川・兼原編 前掲書 242頁―244頁。 (23) 山形編 前掲書 129頁―130頁。柳原・森川・兼原編 前掲書 246頁。杉原 前掲書  353頁―357頁。 (24)柳原・森川・兼原編 前掲書 246頁―247頁。杉原 前掲書 351頁―353頁。小寺・岩沢・ 森田編 前掲書 301頁―302頁。山形編 前掲書 130頁―131頁。 (25) 北極は、北極海、周辺島嶼、大陸沿岸で構成されています。陸地部分はアメリカ、カナダ、 ロシア、アイスランド、デンマーク、ノルウェー、フィンランド等の各領土となっています。 山形編 前掲書 181頁―186頁。柳原・森川・兼原編 前掲書 95頁。柳原・森川・兼原 編 前掲書 244頁―245頁。杉原 前掲書 357頁―359頁。 (26) 小寺・岩沢・森田編 前掲書 273頁―274頁。杉原 前掲書 319頁―323頁。山形編 前 掲書 140頁―141頁。柳原・森川・兼原編 前掲書 215頁―216頁。 (27) 浜島書店編集部 前掲書 140頁。第一学習社編集部 前掲書 164頁。 (28) 新城俊昭 『ジュニア版 改訂 琉球・沖縄史』 2014年 131頁。 (29) 浜島書店編集部 前掲書 141頁。谷田部 他 前掲書 134頁―135頁。第一学習社編集 部 前掲書 162頁―163頁。山形編 前掲書 115頁―116頁。柳原・森川・兼原編 前掲 書 199頁―200頁。小寺・岩沢・森田編 前掲書 256頁―259頁。 (30) 浜島書店編集部 前掲書 141頁。第一学習社編集部 前掲書 161頁。 (31) 浜島書店編集部 前掲書 141頁。谷田部 他 前掲書 134頁。第一学習社編集部 前掲 書 161頁。山形編 前掲書 116頁。柳原・森川・兼原編 前掲書 200頁―201頁。 (32) 浜島書店編集部 前掲書 141頁。谷田部 他 前掲書 134頁。第一学習社編集部 前掲 書 164頁。山形編 前掲書 116頁―117頁。柳原・森川・兼原編 前掲書 201頁―202頁。 小寺・岩沢・森田編 前掲書 257頁―259頁。 (33) 1868年、明治政府が樹立され、近代日本が誕生しました。その2年前の1866年、琉球では 琉球王尚泰の即位式が行われています。西欧諸国からの侵略を受け、弱体化していた清朝 から最後の冊封使を迎えての即位式です。1867年、明治天皇による王政復古の大号令、そ して、1872年(明治5年)の琉球藩の設置です。琉球藩の設置は、琉球を一旦藩として日 本に組み入れ、次の廃藩置県による県政移行への手続のためです。本土において、廃藩置 県は1871年(明治4年)に行われています。琉球での藩設置は、琉球の反発、清朝の反抗 への対応のためであったといわれます。新城俊昭 『教養講座 琉球・沖縄市』 東洋企画  2015年 207頁―214頁。新城 前掲書 ジュニア版 165頁―172頁。沖縄歴史教育研究会 編 『三訂版 高等学校 琉球・沖縄の歴史と文化』 東洋企画 2017年 86頁。 (34) 1879年(明治12年)、明治政府による沖縄の廃藩置県が行われましたが、清朝はこれを認 めていたわけではありません。しかし、一方で、清朝は国内情勢の混乱から、琉球の帰属 は気の重い外交問題であったとされていたようです。また、日本は、中国大陸の資源に目 を向けていたともいわれます。新城 前掲書 ジュニア版 172頁―176頁。沖縄歴史教育 研究会編 前掲書 88頁―89頁。新城 前掲書 215頁―219頁。 (35) 1895年、明治政府は無主地先占の権源に依拠し、尖閣諸島に標杭を建てる閣議決定をして

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いますが、これは1885年以降の再三にわたる現地調査の結果ともいわれます。新城 前 掲書 ジュニア版 172頁―176頁。沖縄歴史教育研究会編 前掲書 88頁―89頁。新城  前掲書 215頁―219頁。小寺・岩沢・森田編 前掲書 258頁―259頁。山形編 前掲書  116頁―117頁。柳原・森川・兼原編 前掲書 201頁―202頁。 (36) 柳原・森川・兼原編 前掲書 199頁―200頁。谷田部 他 前掲書 134頁―135頁。第一 学習社編集部 前掲書 161頁―163頁。小寺・岩沢・森田編 前掲書 258頁―259頁。山 形編 前掲書 115頁―116頁。 (37) 第一学習社編集部 前掲書 163頁。小寺・岩沢・森田編 前掲書 258頁。柳原・森川・ 兼原編 前掲書 199頁―200頁。 (38) 柳原・森川・兼原編 前掲書 190頁。 (39) 柳原・森川・兼原編 前掲書 190頁―195頁。小寺・岩沢・森田編 前掲書 241頁―255 頁。山形編 前掲書 108頁―111頁。杉原 前掲書 286頁―296頁。 (40) 森川幸一・森肇志・岩月直樹・藤澤巌・北村朋史編 『国際法で世界がわかる』 岩波書店  2016年 51頁、56頁―57頁、69頁―79頁。 (41) 杉原 前掲書 297頁―302頁。柳原・森川・兼原編 前掲書 195頁―199頁。小寺・岩沢・ 森田編 前掲書 259頁―264頁。 (42) 杉原 前掲書 279頁―280頁。山形編 前掲書 119頁―121頁。 (43) 原島重義・高島平蔵・篠原弘志・石田喜久夫・白羽祐三・田中整爾・新田敏 『民法講義 2 物権』 有斐閣大学双書 1977年 129頁―136頁。川島武宜 『所有権法の理論』 岩 波書店 1973年 272頁―273頁。 我妻栄 『物権法(民法講義Ⅱ)』 岩波書店 1956年  14頁、59頁、119頁―126頁。 *本稿は、本学法経学部法経学科1年次対象の「法学概論Ⅰ」(筆者担当:2017年度前期)の講義ノー トに加筆訂正等を加えたものです。

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