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IoTTT : IoT on Table Tennis ―卓球スキルの可視化―

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Academic year: 2021

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(1)可視化情報. Vol.40 No.157(2020 年. 月). 特集記事. IoTTT : IoT on Table Tennis* ―卓球スキルの可視化― 仰木 裕嗣 ,副島 宗高 ,川口 義之. IoTTT : IoT on Table Tennis ― A visualization of the table tennis skill ― Yuji OHGI, Munetaka SOEJIMA and Yoshiyuki KAWAGUCHI そこで高精度ジャイロセンサを用いて卓球ラケットの. 1. はじめに. IoT 化を試み,得られるデータが卓球のトレーニングの. 2020 年東京オリンピックに向けて熾烈な代表争いが 話題になった卓球は近年 T リーグというプロリーグも 設立され人気が急速に高まってきている種目である.卓. 新たな機軸になることを提案したい.. 2. 卓球ラケット用センサデバイス. 球はそれほど広い場所を必要としないことから,子供か. ラケットの動きを慣性センサによって観察するため,. ら高齢者までが生涯スポーツの一つとして楽しむことの. 軸加速度センサおよび. 軸ジャイロセンサをラケット. 出来るスポーツであるが,上達するにはラケットをうま. のグリップエンドに装着した.卓球ラケット用センサデ. く使ってボールに回転をかけるか?また相手からの打球. バ イ ス の 外 観 を Fiɡ.. の回転を読み,いかにして返球するか?が大変難しい. このラケットをどのように動かすのか?ということを. に 示 す.加 速 度 セ ン サ に は,. STMicro 社製 LSM9DS1TR を用いた.LSM9DS1TR 自 身はジャイロセンサ・地磁気センサも内蔵する. 軸セン. 指導するには,指導書や DVD などの映像素材が数多く. サではあるが,ここでは卓球ラケット用センサデバイス. 出版されてはいるものの,やはりまずは上級者の動きを. として,京セラ株式会社によって開発された「京セラ. 観察する必要がある.しかしながら,卓球ラケットの動. 軸水晶ジャイロ(以下京セラジャイロセンサ)」を用い. きは非常に高速であり,特にボールとラケットが接触す. た ).京セラジャイロセンサは従来のジャイロセンサ製. る打点前後の動きはそのなかでも極めて速く,肉眼でそ. 品群と比較して高角速度領域まで高い線形性を保つ製品. の詳細を捉えることは困難である.すでにスマートフォ. であり.ラケット競技のなかでも角速度が大きい卓球ラ. ンなどにも機能として付加されている高速度カメラを使. ケットの動きを観測するに向いているといえる.Table. う,という手法も考えられるが,懐深いところでの打点 を適切な角度から撮影することも,これまた難しいとい える. ところで,卓球選手の声に耳を傾けるとラケットをど のように振るのか,ということを述べていることに気が 付く.例えば,掌を振るように,あるいは掌を返すよう な動作によってボールを擦る(こする)様子を模擬しな. Fiɡ.. A photograph of IoT sensor device for table tennis.. がら,「下を擦る」, 「上を擦る」 , 「当てに行く」 ,と言っ た具合である.これらの発言は,すなわち選手が自分た. Table. A specification of the table tennis sensor.. ちの動きを卓球台に固定された座標系ではなく,ラケッ. ടㅦᐲ䮂䮺䭼䎃. LSM9DS1TR㧔9 ゲ㧕䎃. ト座標系で技を議論していることにほかならない.そこ. ടㅦᐲ⸘᷹▸࿐䎃. 䏳䎔䎙䎪䎃. で筆者らはラケットに装着したジャイロセンサが示す角. 䭼䭫䮁 䎃. 䎖䎑䎘䐙䎖䎑䎓䐙䎔䎑䎓䏐䏐 䎃. 速度情報が選手たちの感覚をうまく表現できると考えた.. 䭿䮪䭫䮴䮂䮺䭼䎃. ੩䮂䮰᳓᥏䭿䮪䭫䮴䎃. 䭼䭫䮁 䎃 *. 原稿受付 2020 年 月 日 慶應義塾大学 政策・メディア研究科 (〒 252-0882 神奈川県藤沢市遠藤 5322, E-mail:[email protected]) 京セラ株式会社 研究開発本部 先進マテリアルデバイス研究 所 けいはんなリサーチセンター. ― 10 ―. 䎘䐙䎖䎑䎕䐙䎔䎑䎓䏐䏐䎒䎔 ゲ 䎃 䯴੹ᓟห䭼䭫䮁䬶 䎖 ゲൻ䯵䎃. ⷺㅦᐲ⸘᷹▸࿐䎃. 䏳䎚䎕䎓䎓䎓䎃䏇䏓䏖䎃. ⸘᷹๟ᵄᢙ䎃. 䎓䎃 䯹䎃 䎔䏎䎫䏝䎃. ή✢ ᯏ ⢻ 䎃. 䎥 䎯 䎨䎗 䎑 䎕 䎃. ᠲ૞ ᒻ ᘒ 䎃. 䎤䏑 䏇 䏕䏒 䏌 䏇 ┵ ᧃ 䭗䭙 䯸 ⸘ ᷹ 㐿 ᆎ 䯂 ஗ ᱛ䯂䮇䭭䮺䮴䯃䮐䬺䭗䭚䎃.

(2) IoTTT : IoT on Table Tennis. 61. には今回用いたジャイロセンサの性能を示した. 慣性センサは,マイクロコントローラー,無線 IC な らびにバッテリ等と共に PCB 基板に実装され,これを 卓球ラケットに装着するための治具を介してラケットの グリップエンドに固定している.落下による破損を防ぐ ために,基盤はゴム製のカバーによって覆われ保護され ている.通信には Bluetooth Low Energy 4.2 (BLE4.2) を用いて Android 端末から計測開始・停止のコマンド を送り,計測後には自動的に端末側に計測された加速 度・角速度がダウンロードされる仕組みである.現在は 最大. Fiɡ.. 分間の計測を行うことができるが,これは将来的. A Local coordinate system on the table tennis racket.. には選手やコーチの意見を採用して,最もトレーニング において効果的な利用形態にあわせてチューニングして. 回転」をかける際に手首関節の橈尺屈運動によってラ. いく予定である.またセンサのサンプリング周波数は現. ケットを振る動きは,x 軸まわりの回転が顕著であろう,. 在のところ 1kHz を採用している.. と予想できる.回転を極端に抑えて返球する「ナック ル」であれば全ての軸まわりの角速度が小さいであろう,. 3. スイングの評価. ことも予想される.. 卓球には,サービス,レシーブ,ストローク,スマッ. ラケットセンサから得られる加速度および角速度を用. シュなどいくつかのスイングの形態が存在するが,なか. いてサービス前の静止時からの移動軌跡,姿勢角変化を. でもサービスによって試合が支配されることが数多く見. 算出した.Fiɡ.. られる.他のラケットスポーツと同様に相手に影響を受. ケットの移動軌跡と姿勢変化を表したものである.また. けることなく自らの判断で任意の打球を出せるのはサー. Fiɡ.. はモーションキャプチャによって得られたマー. Fiɡ.. An example of the trajectory and orientation of the racket in service swing.. Fiɡ.. A comparison of the angular velocity between gyro sensor and motion capture data.. はサービスの開始から打点までのラ. ビスをおいて他にはない.卓球の場合は選手は通称, 「下」,「横」,「上」などの呼び方でボールを擦る打点を 呼ぶが,それぞれ「バックスピン」, 「サイドスピン」, 「トップスピン」の回転を与える操作と思っていただけ ればよい.これらの回転を組み合わせ, 「横下」といっ た表現で練習中ではこれを習得する.また同じスイング, ここでは腕の振りや手首によるラケット操作は全く同じ であっても打点の高さによって,自在にその球種をコン トロールし,選手は相手を翻弄するわけである.さらに は回転を極端に控えた「ナックル」と呼ばれる打球も存 在する.. 4. ラケットセンサによる軌道・姿勢推定 サービスこそ選手自身が操作できる自由度が高く,回 転の良し悪しが直接パフォーマンスであることから,ラ ケットセンサを用いた卓球サービスの評価を行った.検 証のためにラケットには反射マーカーを取り付け,光学 式モーションキャプチャ(OptiTrack 社製)を用いて,ラ ケットマーカーを読み取り,ラケット上にローカル座標 系(以下,ラケット座標系)をつくり(Fiɡ.. ),このラ. ケット座標系での回転動作を論じることにした.慣性セ ンサの各軸はこのラケット座標系の軸と一致している. ラケット座標系でみれば,ラケットの長軸,すなわちグ リップの長手方向が z 軸に相当する.卓球台に固定され た絶対座標系を設定し,このラケット座標系各軸におけ る 単 位 ベ ク ト ル を 算 出 し た.x 軸(ロ ー ル),y 軸 (ピッチ) ,z 軸(ヨー)まわりの回転角度をオイラー角 によって算出した.この定義により,例えば選手が「横. ― 11 ―.

(3) 62. 仰木 裕嗣,副島 宗高,川口 義之. カー座標から算出したオイラー角から求められた角速度. しては向いていると筆者は考えている10).DTW は初期. とジャイロセンサからの出力である角速度との比較であ. の音声認識技術として知られた古典的な方法であるが,. るが極めて精度良く一致していることがわかる.. 動きの相似性を見つける以外にも,動作が似ている局面. すでに他のスポーツではこうしたウェアラブルセンサ による身体動作や道具の移動軌跡,姿勢変化などが報告. と似ていない局面を明らかにすることにも用いることが 出来るため応用が広い9).. されているが,未だ卓球のラケットスイングにおいて慣. より高度な技術トレーニングとしては,相手を騙すス. 性センサを用いた姿勢計測や軌道再現の事例は数少な. イングを生み出すためにもラケットセンサは利用できる. い1,2,5,6,8).筆者の提案同様,入江らは慣性センサを卓. と筆者は考えている.卓球の場合,ボール回転数でみれ. 球ラケットのスイング動作に応用して,すでに卓球指導. ば,世界トップレベルの選手がサービスエースを得るた. 5,6). 現場への応用と研究の応用について述べている. .. めには,単に回転数の大きいサービスを打ち出すのでは なく,例えば,対戦者にとって回転の判別が難しい打ち. 5. 卓球トレーニングへの IoT の導入. 方などが重要であると吉田は述べている. 11). .これは,. かくして,卓球におけるスイングの軌道,ラケット面. 一流選手であっても常に最大のスピンをかけて打球・返. の向きが可視化・定量化されると,これを実際のトレー. 球しているわけではない,ということを意味している.. ニングへと発展させなければならない.. つまりいかに相手に読まれない球を打ち出すか?という. 選手・コーチの視点からみれば, 「最適な動き」は何 3,4). ことが卓球にとっては非常に重要である.Fiɡ.. はサー. ,相手の打球を返球. ビスにおいて通常繰り出すスイング(横下回転)に対し. して勝負する卓球においては,その時々の相手の攻撃ス. て,やや横回転重視,やや下回転重視の指示のもと打球. タイル,立ち位置,利き腕など想定されうる要素が膨大. した際のラケット角速度を示している.時刻. か?という問いが思い浮かぶが. は打球の. であり,これを AI によって最適なスイング,ボール軌 道,ボールの回転まで導くことは容易ではないことは想 像に難くない. そこでより容易なアプローチとしては幾つかの応用事 例が考えられるが,その一つとして, 「他者,すなわち 自分よりも上級者の動きとの違いを可視化する」 ,と いったことがまず思いつく.Fiɡ.. は異なる二つの試技. をラケット軌道によって描いたものだが,全く異なる軌 道によってスイングがなされていることが明らかになる. さらに,同じように軌道を重ね描きしてみれば, 「同じ 運動が繰り返し行えるか?」という技の安定性を見極め る,ということにも転用できる.. 次元空間におけるラ. ケット軌道の相似性は,すなわち幾何学的な形の一致度 を見極めることになるが,ここでは時間軸が埋め込まれ ているため,動作の速さが見失いがちである.そこで, 時間-運動学変量を時間軸を伸縮することによって相似 性を見極める,時間軸伸縮法(DTW:ダイナミックタ イムワープ)を用いることが動きの一致度を測る尺度と. Fiɡ.. An example of the comparison between two different swings.. Fiɡ.. ― 12 ―. A comparison of the angular velocities on different service styles..

(4) IoTTT : IoT on Table Tennis. 瞬間を示している.xyz 軸のいずれを観察しても,にわ かにその違いを見出すことは困難であるが,詳細に観察. 63. 6. おわりに. すれば,x 軸(ラケット面に垂直な法線)まわりの角速. 筆者らは卓球ラケットに装着して用いる慣性センサデ. 度はほぼ同じであり,y 軸(ラケット面上の単軸方向). バイスを用いて卓球におけるスイングスキルの定量化と. の角速度には打点以前に下回転重視とと横回転重視の間. 可 視 化 を 行 っ た.検 証 に は 光 学 式 モ ー シ ョ ン キ ャ プ. に「わずかな差」が認められる.この場合,下回転重視. チャーシステムを用いてラケット軌道,姿勢角のそれぞ. の試技において y 軸角速度がわずかに大きい.z 軸角速. れを比較したが,極めて高精度に双方の運動学データが. 度(ラケットの長軸方向)については打点の 0.05 秒前の. 一致していることを確認した.従来高速で肉眼でボール. 時刻において,下回転重視>普段通り>横回転重視と,. の接触前後のラケットの動きを捉えるのが困難であった. わずかな違いがあるものの回転軸ごとに,打球の差が衝. が,慣性センサを用いることでスキルの可視化が実現し,. 突前の動きの差として観測できる.したがって, 「ほと. 様々な方向からの視点で見ることはもちろん,自らのス. んど同じ動きに見えるが,わずかな差がある」という相. イング再現性を確認したり,上級者との比較を行うこと. 手を騙すような動作の習得を確認することができるであ. が実現できる.こうした IoT を活用したトレーニング. ろう.これは高速度カメラを用いてスロー再生をしたと. 支援は卓球に限らず,他のラケット競技にも転用可能で. しても,なかなか見出すことができるものではなく,ラ. あり今後の応用が期待される.. ケットセンサならではの使い方であると言える. 実際のスポーツトレーニングの現場では,ラケットの. 参 考 文 献. 動きのみに注目しているわけではなく,そのラケット軌 道と姿勢を生み出した体全体の「フォーム」ももちろん 重要であることは言うまでもない.さらに打った後の ボールの軌道や回転にくわえて,もちろんボールの落下 点も重要であり,さらにはそもそもボールを落下させた 場所は相手選手の立ち位置といったものにも関係するこ とは容易に想像できる.こうした様々な状況,とそれに どのように対応して動いたのか?ということを掘り下げ るにはやはりラケットのみの動きでは難しく,映像の役 割が欠かせない. 近年,OpenPose を代表とする映像からの身体骨格モ デルを簡単に実現できるライブラリや API が広まって おり,スポーツの分野にも浸透してきている.この前段 階で普及した OpenCV などの画像ライブラリは各所で 用いられている.このような画像・動画をもとにした分 析とラケットセンサに代表されるウェアラブルセンサと の組み合わせが今後, 「個」としての選手のスキルを向 上させるために有効ではあろうと筆者は考えている. Fiɡ.. はこうした画像処理技術を使って,ボールの動き. をとらえた事例であり,いまだ試験的なものではあるが, ラケットセンサとの組み合わせでトレーニングを支援す るための一例である.. Fiɡ.. ) Peter Blank, Julian Hoßbach, Dominik Schuldhaus and Bjoern M. Eskofier, Sensor-based Stroke Detection and Stroke Type Classification in Table Tennis, ISWC '15,(2015), pp.93-100. ) Eric Boyer, et al., Low-cost motion sensing of table tennis players for real time feedback, The 13th ITTF Sports Science Congress, (2013), pp.1-4. ) Yoichi Iino, Teruaki Mori, Takeji Kojima, Contributions of upper limb rotations to racket velocity in table tennis backhands against topspin and backspin, Journal of Sports Sciences, February 1st 2008;26(3), (2008), pp.287-293. ) Yoichi Iino, Takeji Kojima,Kinematics of table tennis topspin forehands:effects of performance level and ball spin, Journal of Sports Sciences, 27:12, (2009), pp.1311-1321. ) 入江清,複数観測の統合に基づいた慣性運動計測の誤差修正, [No.18-15] 日本機械学会 シンポジウム:スポーツ工学・ ヒューマンダイナミクス 2018 講演論文集,(2018),B-1. ) 入江清,野中由紀,IMU を用いた卓球サービス動作計測のた めのラケット位置決め方法の検討,No.19-2 Proceedings of the 2019 JSME Conference on Robotics and Mechatronics, (2019), 1P1-Q04. ) 角速度センサ,センサ素子および多軸角速度センサ,国際公 開番号 WO2018/021166 A1. (2018). ) 野中由紀,入江清,安藤真太郎,山田幸雄,慣性計測装置を 用いた運動計測手法の卓球指導現場への応用(サービス動作 計測実験) ,[No.18-15] 日本機械学会 シンポジウム:スポー ツ工学・ヒューマンダイナミクス 2018 講演論文集,(2018), B-2. ) 仰木裕嗣,今村健一郎,丸山剛生,運動時間の変動をも考慮 した身体運動時系列データの比較法,第 20 回日本バイオメカ ニクス学会大会論集,(2008),p63. 10) Sakoe, H. and Chiba, S. Dynamic programming algorithm optimization for spoken word recognition, IEEE Trans. Acoust., Speech Signal Processing, ASSP-26,1, (1978), pp.43-49. 11) 吉田和人,山田耕司,玉城将,内藤久士,加賀勝,卓球にお けるワールドクラス選手のサービスの回転数,体育学研究 59, (2014), pp.227-236.. Image tracking of the ball trajectory.. ― 13 ―.

(5)

Table A specification of the table tennis sensor.

参照

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