高齢者との世代間交流に対する子どもの意識に関する研究
A Study on Children’s Attitudes Regarding Interaction
with the Elderly
永 嶋 昌 樹
1)Masaki Nagashima
抄録:高齢者と交流することへの意識や意向は、高齢者と交流した経験が関連していると仮定し、これを検証するた めに、小学校 5・6 年生の児童を対象に高齢者に関する意識調査を実施した。 その結果、単に高齢者との交流経験があったり、同居していたりするだけでは、高齢者との交流意向があるとは限 らないことが明らかとなった。ただし、祖父母と現在交流していることと、高齢者との交流の意向の関係については、 さらなる検証の必要があると考えられる。 また、高齢者との交流を積極的に望まない子どもは、高齢者に対してネガティブな感情を抱いているというよりも、 高齢者への関心が低い傾向にあることが伺えた。高齢者との交流の意向がある子どもは、そうでない者よりも世代間 交流活動への参加意向も高かった。 これらの結果より、子どもの高齢者に対する肯定的な感情を育むためには、まずは高齢者への関心を高めるための 働きかけが必要であると考える。Abstract:In this study, it was assumed that children’s attitudes and intentions regarding interaction with the elderly were related to their past experiences. To verify this, a survey was conducted among elementary school students in grade 5 and 6 to gauge their attitudes toward the elderly.
Results found that past encounters and experience of living with elderly people do not necessarily relate to children’s willingness to interact with them. However, the relationship between children’s current interaction with their grandparents and their intention to interact with other elderly individuals needs further verification.
It was also found that children who do not actively want to interact with the elderly do not necessarily have negative feelings toward them, but simply tend to have little interest. The survey also found that those who wanted to interact with the elderly were more interested in participating in intergenerational activities than those who did not.
Based on these results, in order to nurture positive emotions toward the elderly in children, it is first necessary to raise their level of interest in the elderly.
キーワード:世代間交流、祖父母-孫関係、擬制的親族関係
Keywords:Intergenerational interaction, Grandparent-grandchild relationship, Fictive kinship
Ⅰ.はじめに
2018年 4 月より、改正介護保険法による共生型サービ スが開始された。これは、高齢者、障害児者などの多様 な利用者に対して、同一の事業所で一体的にサービスを 提供する、いわゆる「富山型デイサービス」を参考に、 介護保険と障害福祉サービスとの連携を想定して導入さ れたサービスである。異なる年齢層の人々が利用すると いう意味においては、世代間交流という側面を有してい るといえる。 さて、世代間交流活動は「高齢者の生きがい促進総合 事業」(文部省,1984年)において、高齢者の生きがい対 策の一つとして位置づけられた。その後、「健康で心豊 かに生きるための住宅・社会資本整備を目指して-生活 1)日本社会事業大学福祉空間づくり大綱-」(建設省,1994年)を受けて、福 祉施設や学校等を中心に世代間交流活動が各地で行われ るようになった。若い世代への文化継承や子どもの発達 的課題への効果が期待され、現在では全国でさまざまな 形態による世代間交流活動が行なわれている。 また、高齢者デイサービスセンターと保育所とを併設 し、一体的な運営を行うような幼老複合施設や宅幼老所 (地域共生型サービス)においても、高齢者と幼児等子 どもとの異世代の交流を図る取り組みが行われ、一部は 国庫補助等による公的な資金により運営されている。形 態は異なるが、このような世代間交流事業や幼老複合施 設における高齢者と子どもとの互恵的な効果について は、高齢者側と子ども側のどちらの立ち位置からも先行 研究が蓄積されている。特に小学生の世代間交流意識に 関する研究では、岡村ら(2011)による小学校 1 年生を 対象としたふれあい活動に対する児童の評価等に関する 報告1 )、内田ら(2013)による小学校 4 ~ 6 年生を対象 とした児童養護施設入所児童の高齢者イメージに関する 報告2 )、溝邊ら(2017)による小学校 4 ~ 6 年生と中学 生を対象とした高齢者の聴講生制度に関する報告3 )等が 散見される。 しかしながら、「そもそも異世代と交流したいという 意向があるのか」という視点からの、世代間交流事業・ 活動への参加者あるいは施設を利用する者の意識や意向 に関する調査は多いとはいえない。特に子どもの側の意 向についての調査・研究は、小学校 5・6 年生を対象と した斉藤ら(2001)による意識調査の報告など少数であ る。利用者本位が原則である今日の社会福祉のあり方を 鑑みれば、効果についての検証とともに、利用者の意識 や意向を検証することがさらに重要である。本研究で は、社会的な必要性という視点ではなく、利用者の個別 のニーズと自己決定の観点から、世代間交流のあり方を 考察する。
Ⅱ.目的
子どもの高齢者との交流体験の現状と、今後の世代間 交流活動に対する意識、交流活動参加への意向を明らか にする。世代間交流に関するこれまでの各種の先行研究 では、世代を隔てた両者の相互理解を促す効果があるこ とが報告されている。しかしながら、実際に子どもに高 齢者と交流する意向があるかは必ずしも明らかであると はいえない。そこで、個別的かつ継続的な世代間交流活 動である里孫活動の先行研究(永嶋,2011)より得られ た知見4 )をもとに、里孫として活動する事例が多い小学 校 5・6 年生を対象とした調査を行うこととした。Ⅲ.研究方法
1 .対象者 都内A区の青少年委員会が主催するジュニアリーダー 養成講習会の参加者(小学校 5・6 年生)を主たる対象 とした。 2 .調査方法 都内A区の青少年委員会が主催するジュニアリーダー 養成講習会の都内会場にて、参加者に対して、高齢者と の世代間交流活動に関する調査票の記載を依頼した。な お、調査については、主催者であるA区青少年委員会に 事前に依頼し、承諾を得たうえで、同委員会担当者( 3 名)の立会いのもとで実施した。調査票の配布と回収は、 調査日に会場に集合してもらい行った(集合調査)。 なお、調査票の主な項目は次のとおりである。 ①性別・学年 ②祖父母あるいは曽祖父母(以下、祖父母等)との 同居の状況 ③祖父母等との交流の状況 ④祖父母等以外の高齢者との交流の状況(年齢層、 内容、頻度等) ⑤高齢者との交流の意向 ⑥高齢者と交流したい内容 ⑦祖父母等以外の高齢者との交流企画への参加意向 3 .調査時期 2018年10月 4 .分析方法 調査票の選択式の項目については、項目ごとに単純集 計により結果を記載した。変数間の関係については 2 × 2 クロス集計表を作成し、独立性の検定を行った。すべ てのクロス集計表において期待度数 5 未満が含まれてい たことから、Cochran のルールに従い Fisher の正確確 率検定を採用した。なお、統計解析には R(x64 3.6.1) を使用し、分析に係る有意水準は 5 %とした。また、記 述式項目についてはカテゴリーに分類し、質的に分析 した。 5 .倫理的配慮 作成したアンケート用紙は事前に調査協力機関である A区青少年委員会に提出し、内容について承諾を得た。 回答に際しては無記名とし、個人が特定されないように 配慮した。また、集合調査にて記入を求める前には、全 体に対し口頭で趣旨を説明し、協力は任意であること、 途中で協力を中止することも可能であること、調査に協 力しなくても何ら不利益は生じないことを伝えた。Ⅳ.結果
ジュニアリーダー養成講習会の参加者40人のすべてか ら回答を得た。 1 .属性 回答者の性別・学年は以下のとおりであった(表 1 )。 全体の半数は小学 5 年生の女子児童であった。 2 .祖父母等との同居の状況 調査日現在で祖父母等 1 人以上と同居している者は40 人中 4 人であった。そのうち 1 人は、曽祖父曽祖母との 同居であった。また、現在同居していない者のうち、以 前に同居した経験のある者は10人いた。これらのうち、 曽祖父母と同居していた者はいなかった。 現在同居している者と以前に同居した経験のある者と を合わせると、祖父母等との同居経験者は全体の35%で あった。 3 .祖父母等との交流経験 同居の有無に限らず祖父母等との交流の状況を尋ねた ところ、結果は以下のとおりであった(表 2 )。 同居の有無にかかわらず、自分の祖父母等と交流した ことのない者はいなかった。ただし、交流の頻度は不明 である。 表 2 祖父母等との交流経験 なお、現在も祖父母等と交流していると回答した者以 外は、たとえ祖父母等が健在であったとしても、現在は 祖父母等と交流していないとも考えられる。そのため以 前に交流したことがあると回答した者を「現在交流なし」 とみなし、現在の交流状況が性別、また同居・非同居の 別によって差異があるか否かについて検証するためにク ロス集計表を作成した(表 3,表 4 )。その際、欠損値の ある者については度数に加えず、分析からも除外した。 表 3 ・表 4 に関して、それぞれ Fisher の正確確率検 定を行ったところ、表 3 については p=.71、表 4 につ いては p=.55であり、どちらにも有意差は認められな かった。したがって、祖父母等との交流には、孫の性別 は影響していないことが示された。 宮地ら(2005)による調査では、祖父母に対する意識 として、孫の性別では女子の方が男子に比べて情緒的な 世話からの親密性を持ちやすいことが示唆されている が、必ずしもそれを支持する結果とはならなかった5 )。 また、宮地らは、同調査の結果から、遠居に比べて同 居、近居である祖父母を身近に感じているとしている6 )。 今回の調査では祖父母等と一緒に暮らしているか否かと いう点のみを問うたため、居住距離により交流の現状に 差異が生じる可能性については不明である。同居・非同 居の別が交流状況に影響を与えないという結果ではある が、さらなる検証が必要である。交流していない理由と して、祖父母等が他界していることも考えられるため、 交流がない場合でも子ども本人の意向によって行われて いないとは限らない。反対に、たとえ同居していても、 家庭内での交流がない場合も想定されたが、そのような 状況が推測される回答は見られなかった。 表 3 男女別祖父母等との現在の交流状況 表 4 同居・非同居の別による祖父母等との現在の交流状況 4 .祖父母等以外の高齢者との交流経験 祖父母等以外の高齢者との交流の状況を尋ねたとこ ろ、結果は以下のとおりであった(表 5 )。「以前に交流 したことがある」と「現在も交流している」と回答した ものを合わせると全体の80.0%であった。 表 5 祖父母等以外の高齢者との交流経験 「以前に交流したことがある」の交流の頻度について の回答では、年 1 回以下である者が17人中10人いた。つ 表 1 回答者の属性 (人) 男 女 合計 小学 5 年 9 20 29 小学 6 年 3 8 11 合計 12 28 40 (人) 現在も 同居 過去に同居 同居経験なし 合計 以前に交流したことがある 0 5 6 11 現在も交流している 3 5 20 28 これまでに交流したことがない 0 0 0 0 未回答 1 0 0 1 合計 4 10 26 40 (人) 現在交流あり 現在交流なし 合計 男 8 4 12 女 20 7 27 合計 28 11 39 (人) 現在交流あり 現在交流なし 合計 同居 3 0 3 非同居 25 11 36 合計 28 11 39 (人) 現在も 同居 過去に同居 同居経験なし 合計 以前に交流したことがある 0 5 12 17 現在も交流している 4 4 7 15 これまでに交流したことがない 0 1 6 7 未回答 0 0 1 1 合計 4 10 26 40まり、祖父母等以外の高齢者との交流経験がある者でも、 実際にはほとんど高齢者と接していない場合が多いとい える。そのため、「以前に交流したことがある」と回答 した者を「現在交流なし」とみなし、現在の交流状況が 性別、また同居・非同居の別によって差異があるか否か について検証するためにクロス集計表を作成した(表 6,表 7 )。その際、欠損値のある者については度数に加 えず、分析からも除外した。 表 6・表 7 に関して、それぞれ Fisher の正確確率検定 を行ったところ、表 6 については p=.71、表 7 につい ては p=.12であり、どちらにも有意差は認められなかった。 5 .高齢者との交流の意向 これから「お年寄り」と交流したいと思うかを尋ねた ところ、結果は表 8 のとおりであった。その理由につい ては表 9 に示したとおりである。 「交流したい」の回答については、その理由として「楽 表 9 高齢者との交流に対する意向の理由 NO. 回答 記述内容 分類 1 交流したい 交流するのは楽しいから 楽しい 2 楽しいから 3 遊んでいて楽しいから 4 キャッチボールをした時、楽しかった。 5 お年寄りと交流すると色々なことを教えてもらえたり、楽しくおしゃべりができるから 6 色んな楽しい遊びやたくさんの知識を持っているから 7 私が知らないことを知っていて、好きな物なども一緒な時があるから(盆踊りなど) 8 お年寄りと交流することで、昔のことを聞いたり便利なこととかが聞きたい 学ぶ 9 文化を知りたいから 10 昔の様子を学習したい 11 昔の話などを聞いてみたい 話したい 12 お話をしたいから 13 色々なお話をしたい 14 聞きたいことが色々あるから 15 自分の事を知ってくれるし、仲良くしてくれるから 話しかけてくれる 16 会った時に話してくれたり、「もし家にだれもいなかったらいつでもおいで」と言ってくれたり、知らない人でも話しかけてくれるから。 17 看護師さんになりかいから 支える 18 今日の交習でお年寄りの大変さを分かって支えてあげたいと思った 19 お手伝いをしたい 20 お年寄りと交流することで、お年寄りの目線になる 21 お年寄りの人たちと元気に過ごすため 22 おばあちゃんやおじいちゃんがいるから。違う人でも交流したい。 交流機会を求めて 23 したことがないから 24 学校の行事でお年寄りとの交流などがないから 25 あまり交流する機会がないから 26 どちらともいえない やってもいいし、やらなくてもいいから どちらでもよい ・関心がない 27 分からないけど、なんとなく 28 どちらでもいいから 29 交流しても交流しなくても、どちらでもないから 30 交流したいとも、交流したくないとも思わないから 31 交流したいとも、交流したくないとも思わないから 32 交流したいときも、したくないときもあるから 33 たくさん交流したので、交流したくないまでとはいかない アンビバレンス 34 ニコニコしてる人もいるけど、怖い顔そしている人もいるから。父の働いている老人ホームに行ったとき、かをを半分覗かせていた。 35 話が長い。でも会うと楽しいから 36 色んなごとが分かったかそれを使ってやってみたいけど、大変そうだから 嫌な思い・大変 37 記述なし 記述なし 38 記述なし 39 記述なし 40 交流したくない 面倒くさい 面倒 (人) 現在も 同居 過去に同居 同居経験なし 合計 交流したい 2 6 17 25 どちらともいえない 2 4 8 14 交流したくない 0 0 1 1 未回答 0 0 0 0 合計 4 10 26 40 表 8 高齢者との交流の意向 (人) 現在交流あり 現在交流なし 合計 男 3 8 11 女 11 17 28 合計 14 25 39 (人) 現在交流あり 現在交流なし 合計 同居 3 1 4 非同居 11 24 35 合計 14 25 39 表 6 男女別祖父母等以外の高齢者との現在の交流状況 表7 同居・非同居の別による祖父母等以外の高齢者と の現在の交流状況
しい」「知りたい」等のポジティブな表現が多く見受け られた。あるいは、高齢者を「支える」ことを理由に挙 げていた。 反対に、「交流したくない」と回答した者は 1 人だけ であったがその理由は「面倒くさい」であり、高齢者の 側の視点は感じられない。 また、「どちらともいえない」と回答した者の理由を 見ると、実際には交流を望んでいないような記述も散見 された。理由の記述のない者を除くと、そのほとんどは 高齢者との交流に興味・関心がなかったり、また、高齢 者に対してネガティブな感情を抱いているといえる。つ まり、「どちらともいえない」との回答は、その理由を 見る限りはどちらかというと「交流したくない」に近い と考えられる。 そのため、「どちらともいえない」との回答を「交流 の意向なし」とみなし、現在の交流状況が性別、また同 居・非同居の別によって差異があるか否かについて検証 するためにクロス集計表を作成した(表10,表11)。表 10・表11に関して、それぞれ Fisher の正確確率検定を 行ったところ、表10については p=.74、表11について は p=.62であり、どちらにも有意差は認められなかっ た。よって、交流の意向については子どもの性別、同居・ 非同居の別による差異はないと考えられる。 表10 男女別交流の意向 表11 同居・非同居の別による交流の意向 また、祖父母等と現在交流しているほうが、高齢者と の交流に対する意向が強いとの仮説のもと、祖父母等と の現在の交流状況と、高齢者との交流の意向とについて クロス集計表(表12)を作成し、Fisher の正確確率検 定を行ったところ、p=.07であり有意差は認められな かった。 表12 祖父母等との現在の交流状況×高齢者との交流の意向 同様に、祖父母等以外の高齢者と現在交流しているほ うが、高齢者との交流に対する意向が強いとの仮説のも と、祖父母等以外の高齢者との現在の交流状況と、高齢 者との交流の意向とについてクロス集計表(表13)を作 成し、Fisher の正確確率検定を行ったところ、p=.73 であり有意差は認められなかった。 表13 祖父母等以外の高齢者との現在の交流状況×高齢 者との交流の意向 6 .祖父母等以外の高齢者との世代間交流活動への参加 意向 前項において、高齢者との交流の意向がある者に対し、 祖父母等以外の「お年寄り」と交流する企画があった場 合に参加したいと思うかを尋ねたところ、結果は以下の とおりであった(表14)。自分の祖父母等以外の「お年 寄り」と交流する行事や活動(交流会・ボランティア活 動)に参加したいと回答した者は、高齢者との交流意向 がある者の76.0%であった。今回の調査対象者40名の中 では47.5%である。 表14 祖父母等以外の高齢者との世代間交流活動への参加意向
Ⅴ.考察
祖父母等との同居の状況については、祖父母等と同居 している者の割合が10%であり同居していない者のほう が多いという状況であった。過去に同居していた経験が ある者を加えても、祖父母等との同居経験者は35%で あった。また、これまでの祖父母等との交流経験は、同 居経験のない者も含めて100%であった。過去に同居経 験がなくても、現在も交流している者は50%いる。この ことから、祖父母等と同居していることが交流経験の有 無に影響を与えているとは必ずしもいえないと考えられ る。居住形態による交流の頻度については、神川ら (1996)が、小学生・中学生・高校生を対象とした調査 の結果から、別居祖父母との接触頻度が、小学生・中学 生・高校生の福祉・高齢者観と有意な関連があったこと を報告している7 )。 (人) 意向あり 意向なし 合計 男 7 5 12 女 18 10 28 合計 25 15 40 (人) 意向あり 意向なし 合計 同居 2 2 4 非同居 23 13 36 合計 25 15 40 (人) 意向あり 意向なし 合計 現在交流あり 20 8 28 現在交流なし 4 7 11 合計 24 15 39 (人) 意向あり 意向なし 合計 現在交流あり 10 4 14 現在交流なし 15 10 25 合計 25 14 39 (人) 参加したい 19 どちらともいえない 4 参加したくない 1 未回答 1 合計 25本研究では、高齢者と交流することへの意識や意向は、 祖父母等や祖父母等以外の高齢者と交流した経験が関連 していると仮定し分析を行った。しかしながら、分析の 結果として、単に高齢者との交流経験があったり、同居 していたりするだけでは、高齢者との交流意向があると は限らないことが明らかとなった。具体的には、これま で高齢者と触れ合ったという経験があったとして、それ が日常的でなければ高齢者と交流したいという意識が高 まったり、高齢者と交流したことによる互恵的な効果を 感じることが希薄になる可能性がある。これについて は、高橋(2017)が、核家族化やコミュニティの縮退に 伴って、子どもの高齢者像は希薄化しつつあるといえる こと、そのような状況においては、高齢者疑似体験の導 入のみでは、かえって児童生徒に高齢者に対するネガ ティブな印象ばかりを与えてしまうという懸念があるこ と、今後はボランティアなどを通じて地域社会で活躍す る高齢者との交流等が必要であることを指摘してい る8 )。つまり、一過性の交流ではなく継続的なかかわり を持つことが重要であり、そのことがさらに高齢者への 親和性を高めることにつながると推測される。 なお、「祖父母等との現在の交流状況」と「高齢者と の交流の意向」との関連については、Fisher の正確確 率検定の結果により否定されたが、神川らの先行研究 (前掲)の結果を踏まえれば、さらに精緻な検証が必要 と考える。本研究の調査項目では、祖父母等と同居して いない理由を問うていないことから、「非同居」が「別居」 していることを示すのか、あるいは「死別」のためなの かを確認できないためである。 また、斉藤ら(2001)は、小学校 5・6 年生235名を対 象とした高齢者との交流に関する意識調査の結果から、 高齢者とのふれあいの有無は交流活動への参加希望の有 無に反映していると報告している9)。これは、家族以外 の高齢者とのふれあい活動を想定し、回答者の人数の割 合を比較した結果の報告である。本研究においては表13 に実人数を示したとおりであるが、「祖父母等以外の高 齢者と現在交流あり」で「高齢者との交流意向あり」の 者の割合は14名中10名で71.4%、「祖父母等以外の高齢 者と現在交流なし」で「高齢者との交流意向あり」の者 の割合は25名中15名で60%である。つまり、割合の単純 な比較では斉藤らの結果を支持するものであった。ただ し、検定では有意差が認められなかったことはすでに述 べたとおりである。 最後に、世代間交流活動への参加意向であるが、回答 者の47.5%は世代間交流活動への参加の意向があること が示された。世代間交流活動に参加する子どもたちへの 効果として、竹内ら(2012)は、小学校 6 年生を対象と した高齢者ボランティアによる世代間交流授業が、児童 のストレス緩和に与える影響について検討している。こ れに拠れば、交流授業による介入の結果、交流授業後に 心や体に関するストレス症状が緩和することが示唆され ている10)。世代間交流活動に参加する子どもたちへの長 期的な効果ではないが、特に小学校の卒業と中学校への 入学を控えた学年であることを鑑みれば、発達的課題へ の対処についてもその効果が期待される。 ところで、山田(2011)は「児童は高齢者と交流しな いと高齢者は腰が曲がって体が弱いといった一般的な高 齢者のイメージが強くなる。また、高齢者はやさしい、 好きといった精神面において評価が低くなった」と報告 している11)。世代間交流活動への参加意向がない子ども については、そのような傾向であることが、今回の調査 からも確認されたといえる。 なお、本研究では世代間交流活動に参加する子どもと して、小学校 5・6 年生を対象とした。これは、個別的 かつ継続的な世代間交流活動である「里孫活動」の対象 が、小学校においては 5・6 年生としている事例が最も 多いからである。里孫活動とは、血縁関係にない高齢者 と子どもとが擬制的な祖父母-孫関係を結び、原則とし て 1 対 1 で継続的に交流する活動である。現在、里孫と して活動している小学校 5・6 年生の時期には、渡辺 (2011)が指摘するように「具体的な考え方から抽象的 な考え方に変わるとき」「親子関係から友達関係が大事 になるとき」「第二次性徴の始まるとき」「複雑な感情に 気付くとき」などさまざまな変化がある12)。この時期に 社会性と道徳性の発達の基盤をつくっておくことは、子 どものその後の人生において大変重要な意味を持つ。そ のためにも、たとえ今は高齢者との交流を望まないとし ても、子どもが高齢者とかかわることを肯定的になるた めの仕組みづくりが急務であると考える。まずは高齢者 への関心を高めるための働きかけが必要であり、学校教 育の場や地域での意図的な取り組みが望まれる。
Ⅵ.本研究の限界と今後の課題
今回の調査の対象者は東京都内にあるA区の青少年委 員会が主催するジュニアリーダー養成講習会の参加者で あった。調査のために集まったのではなく、講習会へ参 加するために集まった小学生に対し、調査票の記入を依 頼した。調査のサンプル数が少なく、また、東京都A区 内の小学校に通う 5・6 年生という、非常に限られた範 囲で行われた調査であった。たとえば、都市部と中山間 部とでは社会環境や伝統文化が異なることから、その地 域で暮らす子どもの意識も環境的な要因からの影響を受 けている可能性がある。さらに、重要なことは、今回の 調査の対象者は、ジュニアリーダー養成講習会に積極的 に参加している子どもたちであったということである。 対象者の小学生が参加したジュニアリーダー養成講習 会では、調査日当日に高齢者等の疑似体験が行われてい た。そのような講習に参加する子どもであるため、もと もと高齢者に対する親和性が高い者が多いと推測され る。したがって、本研究の成果は、そのまま一般化することはできないと考える。今後はより広範な地域で、さ らに多くの子どもを対象とした調査を行い、検証するこ とが必要である。 謝 辞 今回の調査は、東京都A区青少年委員会のご担当者の 皆様に、企画の段階からご協力いただきました。また、 当該調査は、日本社会事業大学社会事業研究所平成30年 度共同研究費の助成研究の一環として行われました。A 区のご担当者の皆様と、共同研究者である日本社会事業 大学の壬生尚美・森千佐子の両氏に深く感謝申し上げます。