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読み書き障害 (1)

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Academic year: 2021

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2020年 3 月 31 日 (31)31 て左前頭葉皮質下に大きな出血病変があり,同日開頭血腫除

去術を施行。〔神経心理学的検査〕初回実施時に,運動性優位 の失語あり,時間経過で課題への意欲低下,集中困難,また多 重刺激に対して注意配分が不十分であった。MMSE 18 点, FAB 4点,TMT-A/B 陽性,Kohs IQ 68,BADS 総プロフィー ル 1 点,CAS 面接評価 22 点,質問紙法 71 点,SDMT 17.3%, PASAT 2秒条件 0%,CPT の SRT 課題 438msec。病棟では, ベッド上臥床して過ごしていた。〔介入経過〕受動性注意・遂 行機能・記銘力課題と並行して,職業の調理訓練を実施した。 1回目から作業は完遂できたが,作業時間・出来栄えに不満 があり,またやりたいと希望した。2 回目では,2 品目の同 時遂行を行い,作業完遂が可能であった。作業時間の短縮も でき,出来栄えにも満足が得られた。介入 23 日日では, MMSE 25点,FAB 11 点,TMT-B のみ陽性(240 秒),Kohs IQ 79,BADS 総プロフィール得点 11 点,CAS 面接評価 3 点, 質問紙法 46 点,SDMT 34.5%,PASAT 2 秒条件 20%,CPT の SRT 課題 325msec。生活場面ではコンビニに出かけたり, 活動性は向上し,介入 36 日目に自宅退院した。〔考察〕症例 は,意欲低下・注意障害によりベッド上で過ごす受動的な生 活であったが,基礎訓練と並行して生業にしていた調理作業 を積極的に取り入れたことで能動的な生活に転換されたとと もに,注意・遂行機能改善の一助につながったと考えた。 Ⅰ─D3─3 右大脳基底核病変患者における流暢性の障害特性 中山徹耶1,藤田郁代2 1国際医療福祉大学塩谷病院リハビリテーション室,2国際 医療福祉大学大学院医療福祉学研究科  流暢性は認知的柔軟性に関する機能であり,日常生活にお ける思考や行動に影響を及ぼす。流暢性障害は前頭葉病変に よって生じるとされるが,基底核病変との関係性は十分明ら かとなっていない。〔目的〕右基底核病変における非言語性・ 言語性の流暢性を分析し,障害の有無および障害特性につい て検討する。〔方法〕対象は,脳血管疾患による右被殻病変 患者 7 名で,病変部位は MRI にて右被殻 6 名,右被殻・尾状 核 1 名であった。対照群は年齢が対応した健常者 7 名。デザ イン流暢性(非言語性)と音韻流暢性(言語性)の課題を作 成し実施した。デザイン流暢性は,5 個のドットパタン(3 種 類)を提示し,2 個以上のドットをつないで 1 分間にできる だけ多くのデザインを産出してもらった。音韻流暢性は, 「あ」/「か」/「し」のそれぞれが語頭にくる単語を 1 分間 にできるだけ多く発話してもらった。評価は産出数とクラス ター数について実施した。クラスターは,同じ方略で産出さ れたデザインや語のグループである(例 デザイン:図形を 回転させて産出,音韻:第2音節について50音に基づいて産 出)。〔結果〕デザイン流暢性では,右基底核病変群はデザ イン数とクラスター数が健常群より有意に低下した(p < .05)。 右基底核病変群と健常群共に,デザイン数とクラスター数の 間に有意な正相関を認めた(r = .55,r = .55)。方略別のク ラスターの出現率は両群間に有意差を認めなかった。音韻流 暢性では,右基底核病変群は想起語数とクラスター数に低下 を認めなかった。検索方略別のクラスターの出現率は両群間 に有意差を認めなかった。〔考察〕右基底核病変は,音韻流 暢性は保たれるがデザイン流暢性が低下することが示され た。これには描画方略を産出する機能の低下が関与すると考 えられる。線条体(被殻・尾状核)は背外側前頭前野と視床 を介したループ回路を形成しており,このループ回路の機能 低下がデザイン流暢性の低下に関与したと考えられる。 Ⅰ─D3─4 他人の手兆候をはじめとする前頭葉症状を呈した 症例への理学療法の一考察 外舘洸平1, 2,牧野美里2,高見彰淑2 1総合リハビリ美保野病院リハビリテーション科,2弘前大 学大学院保健学研究科総合リハビリテーション科学領域  〔はじめに〕くも膜下出血および,前頭葉への脳内出血に よる左片麻痺,半側空間無視,Pusher 現象,他人の手兆候 を認めた症例に対し,基本動作を中心とした段階的に課題難 易度を設定した理学療法介入の結果,基本動作介助量軽減を 認めた為,考察を加え報告する。  〔症例紹介〕70 歳代,女性,右利き,診断名:くも膜下出 血,脳出血,34 病日で当院転院。JCS3 ~ 20,Br.stage(Lt) 手指 4 上下肢 5,表在・深部覚:中等度鈍麻疑い,HDS-R5 点,FIM25 点(運動 13 点,認知 12 点),基本動作・ADL 全 介助,全般的精神機能低下のため神経心理学的検査は困難だ が,左側からの刺激への反応少なく,姿勢修正に対する抵抗 や,左手が右手の動作を阻害する行動が認められた。  〔基本方針〕空間認知・定位障害に起因する基本動作介助 量増大に対し,種々の前頭葉症状をはじめとする様々な高次 脳機能障害が介入の大きな阻害となった。先行研究で報告さ れた介入が困難であり,現状の認知機能で理解できる課題の 提供,左身体・空間に対する再認識と左右身体の再統合を図 ることを基本方針とし,具体的な方法として,押し返させな い,左上下肢の積極的な使用,左右同時・交互運動の実施, の 3 項目を設定した。  〔介入(期間 174 日)〕基本動作の中でも,支持基底面との 接触面が広い起居動作練習から開始し,段階的に座位,立 位・歩行へと移行した。座位での課題として,課題理解を容 易にするために手遊びを選択した。  〔 結 果 〕JCS2,Br.stage 全 て 5,HDS-R19 点,FIM59 点 (運動 39 点 20 点),起居移乗動作軽介助,普通車椅子での離 床と抑速ブレーキ付き歩行器での歩行練習が可能となった。 いわゆる他人の手兆候は残存したが,一部の ADL は介助で 可能となった。  〔考察〕本症例は脳梁の障害による大脳半球間の連絡障害 と,一側肢優位の活動に伴う半球間抑制等によって各症状が 出現したと考えられ,両側肢の活動が求められる基本動作に 対する理学療法介入は有効だと思われる。

 第 1 日 D 会場:読み書き障害① 

座長:井堀 奈美 Ⅰ─D4─1 文字─音韻変換過程を障害機序と想定する音韻性 失読の一例 吉山つたえ1,水田秀子1,近藤正樹2 1藤井会リハビリテーション病院リハビリテーション部,2

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高次脳機能研究 第 40 巻第 1 号 32(32) 都府立医科大学大学院神経内科学  〔症例〕74 歳,男性,右利き,中卒。〔現病歴〕会話困難で受 診,左アテローム血栓性脳梗塞及び無症候性右内頚動脈狭窄 症と診断され加療。23病日に当院転院。〔MRI所見〕左下前頭 回~中前頭回の皮質及び皮質下に梗塞巣。〔入院時神経学的・ 神経心理学的所見〕意識清明,運動麻痺無し。RCPM 21/36 (年齢平均)。WAIS-3:符号 6,絵画配列 5。FAB 9/18。〔言 語症状〕自発話は常套句と指示代名詞が多い。SLTA 呼称 15/20,意味性錯語を認めたが音韻性の誤りは認めず。語列 挙 0 語。復唱 6 文節可。聴理解は単語 10/10,口命 6/10,仮名 一文字 8/10。音読は仮名一文字・仮名・漢字単語 10/10, SALA表記タイプ×モーラ数 90/90。仮名・漢字とも視覚性・ 形態性・意味性錯読(たわし→わたし,しゃもじ→ししゃも, 近道→みじかい,軍備→ぐんしゅく等)を認めた。仮名非語 は語彙化(おんさつか→おっさんか)や音韻性錯読(りゃく しけ→しゃくしけ等 /SALA 無意味語 41/56)が著明で語長効 果あり。非語の復唱は 3 モーラ語即全正答。語彙性判断は非 語を語彙とする誤り(音韻転置 11/20,子音置換 18/20)を 認めた。書字動作は字形崩れないが仮名一文字から障害。 [経過]82-87 病日:喚語困難改善し意味性錯語は軽減。 SLTA呼称 17/20,語列挙 5。仮名一文字の聴覚指示は清音 40/45,拗音 29/33。音韻操作は拍削除 7/15,逆唱 1/10 と低 下。仮名非語で音韻性錯読(44/56)。書字は仮名単語で改善 認めたが一文字は不良。〔考察〕本例は,仮名非語の読みに 語彙化や音韻性の誤りを認め音韻性失読の様相を呈した。一 方で,口頭表出では誤りに音韻性なく意味性であり非語の復 唱も可能だった。音韻性失読の機序として音韻障害が挙げら れるが音韻障害を認めない例も報告がある(Friedman 1995 ほか)。本例では文字に特化された,いわゆる文字-音韻変換 過程での障害が想定された。松田(1993)も指摘するように, この過程の背景には前頭葉機能が深く関わると推定される。 Ⅰ─D4─2 漢字に選択的な音韻失読と考えられた一症例 上間清司1,橋本幸成2,三盃亜美3,宇野彰4 1イムス板橋リハビリテーション病院リハビリテーション科, 2JCHO熊本総合病院リハビリテーション部,3大阪教育大学 教育学部,4筑波大学人間系  〔はじめに〕仮名非同音非語の音読はすべて可能であった が,漢字に選択的な音韻失読を呈したと考えられた症例を報 告する。〔症例〕80 歳代の右利き女性であり,左小脳梗塞発 症の 1 ヶ月後に左脳梗塞を再発し,超皮質性感覚失語が出現 した。頭部 MRI では左中・下前頭回に病変が認められた。 音読成績は,SALA 失語症検査(以下,SALA)-OR35 の仮名 単語と OR36 の漢字単語(一貫語,典型語,非典型語), OR37の仮名非同音非語のいずれも 100%正答であった。非 語の復唱成績はSALA-R31で100%正答,呼称成績はSALA-PR20で 61%正答であった。本例は,漢字列の語彙判断課題 時に非同音非語の音読を試みるものの不可能であったため, 音韻失読が疑われた。〔方法〕橋本ら(2018)の漢字文字列の 音読課題(単語 96 語,同音擬似語 64 語,非同音非語 64 語) を実施し,同課題の健常者成績と比較した。また,課題間の 正答率の差をフィッシャーの直接確率検定(有意水準 5%)を 用いて比較した。〔結果〕単語の音読成績は 95%正答であり 健常者の標準範囲内であった。同音疑似語の音読成績は 77%正答,非同音非語の音読成績は 45%正答であり,いず れも健常者の平均正答率-2SD 以下の成績であった。また, 単語に比べて非同音非語の音読成績が有意に低い語彙性効 果,同音擬似語に比べて非同音非語の音読成績が有意に低い 同音擬似語効果を認めた。非同音非語においては誤反応の 31%が語彙化錯読であった。〔考察〕本例は,仮名では単語と 非同音非語のどちらも音読が良好であった。一方,漢字では 一貫語や典型語,非典型語にかかわらず単語の音読が可能で あったのに対して,非語(同音擬似語と非同音非語)の音読 正答率は低く,語彙性効果および同音擬似語効果を認めた。 加えて,漢字非同音非語の音読では語彙化錯読が多いことか ら,本例は漢字に選択的な音韻失読であると考えられた。 Ⅰ─D4─3 英語のみのディスレクシアを呈した一例 丹治和世1, 2,加藤進昌2 1山形県立こころの医療センター,2昭和大学発達障害医療 研究所  〔症例〕19 歳両手利き男性。受診時大学 1 年生。始語は遅 く,2 歳までほとんど発語は聞かれなかった。2 歳 11 ヶ月か ら突然発話量が増え,1 週間ほどで二語文よりも複雑な文章 を話せるようになった。学校の成績は概ね良好であったが, 漢字の習得には時間を要した。中学からは英語の成績だけが 突出して悪く,常に最下位であった。〔神経学的所見〕脳神 経系,運動系に特記すべき異常なし。指鼻試験はやや拙劣。 〔神経心理学的所見〕逆唱 4,語頭音からの語列挙は 6/min と

低下あり。MMSE30 点 WAIS-Ⅲ:VIQ 119,PIQ 76(VC118 PO87 WM109 PS60),符合でプロフィール点 1 と著明な低下 あり。日本語の読み書きには問題なし。JART は 21/25。英 単語については,中学 1 年生レベルの英単語において音読可 能なものは半分程度。音読できない単語の読解ができること はなかった。ʻareʼ を「アレだからアー」のように,いったん ローマ字読みで日本語の音節に変換してから正解に近い読み 方に変換する場合や,ʻtheʼ について,「ティーエイチイーだ から,ザ」のように,アルファベットの系列と単語の読みを 結びつけて正解に至る場合もみられた。また,ローマ字を読 む際,仮想のキーボード上の位置情報,運動感覚を介して日 本語の音節に変換するという特殊なストラテジーを使用する 場合があった。英単語の書字は極めて不良であった。〔画像 所見〕脳 MRI 上明らかな異常なし。〔考察〕本症例では,単 語の視覚的特徴を読みに結びつける,Pre-alphabetic ステー ジ(Ehri 1995)において障害がみられ,英語の音韻認識は獲 得されていない。日本語の読み書きについても習得は困難で あったが現在は問題ないこともあり,英語のディスレクシア について正しく認識されず,多大な労力を費やし,特殊なス トラテジーを用いての英語学習を余儀なくされていた。 Ⅰ─D4─4 左外側後頭回の皮質下出血による逐字読みを伴う 失読失書 櫻井靖久1,古川恵美2,栗原正典3,三谷尚子4,杉本泉5 1三井記念病院神経内科,2東京大学腎臓内科,3東京大学脳

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2020年 3 月 31 日 (33)33 神経内科,4三井記念病院リハビリテーション部,5虎の門 病院神経内科  〔背景〕以前我々は,角回性失読失書における失読が,角 回に隣接した外側後頭回への病変の広がりによって生ずるの ではないかと主張した(Sakurai et al, 2000)。その後,角 回・外側後頭回の皮質下出血で逐字読み,異書性失書を呈し た失読失書の症例を報告した(Sakurai et al, 2010)。外側後 頭回のみの損傷でどのような症状が出るのかは不明である。 〔症例〕61 歳,男性,右利き。2016 年 2 月,頭痛とともに, テレビのテロップが読めない,携帯電話が操作できないこと に気づいた。脳出血の診断で当院に入院した。〔神経心理学 的所見〕1. 失読失書:失読は仮名に,失書は漢字に著明。な ぞり読みが有効でない仮名の逐字読み,1 文字漢字に比べ 2 文字漢字単語の読みが著明に低下。仮名の音韻性錯書・異書 性錯書,漢字の語彙性失書。2. 言語性短期記憶障害,3. 失 算,4. 視知覚弁別テストは正常。〔画像所見〕MRI:左中・ 下後頭回皮質下から側脳室後角周囲に及ぶ高信号。ECD-SPECT:左外側後頭回の局所脳血流低下。いずれも角回, 紡錘状回は損傷を免れていた。〔考察〕本例は外側後頭回の みの損傷でも逐字読み,失読失書が出現することを証明し た。本例の病巣は,外側後頭回損傷による仮名の純粋失読 (後部後頭葉型純粋失読)の病巣より上方に位置する(後部紡 錘状回を含まない)。本例における逐字読み(背側型逐字読み と呼ぶ)は,後部後頭葉型純粋失読や中部紡錘状回損傷によ る漢字に著明な純粋失読(紡錘状回型純粋失読,後部後頭葉 型と合わせて腹側型逐字読みと呼ぶ)と同様,1 文字仮名読 みが障害され,語長効果が見られたが,以下の 3 点で区別で きると考えた。1)なぞり読みが効かない,2)仮名の失書が 出現する,3)基本的視知覚は保たれている。なぞり読みが有 効でないのは,頭頂葉から語形情報が存在する紡錘状回・下 側頭回後部(いわゆる visual word form area)に運動覚情報 が伝わらないためと考えた。 Ⅰ─D4─5 軽度仮名音読障害の発症機序の検討 遠藤佳子1,飯塚統2,菅野重範2,鈴木匡子2 1東北大学病院リハビリテーション部,2東北大学大学院医 学系研究科高次機能障害学  〔はじめに〕軽症失読例において仮名の音読に置いて,単 語の呈示時間の影響と,読みの障害の発現機序を検討した。 〔症例〕20 歳代,右利き女性,大卒。〔現病歴〕乗用車と接触し 受傷。脳挫傷,外傷性クモ膜下出血,急性硬膜下血腫の診断 で開頭血腫除去術及び外減圧術が施行された。5 ヶ月後に自 宅退院し,外来リハビリを継続した。〔MRI 所見〕左側頭葉下 部~後頭葉,両側前頭葉底面内側に脳挫傷。〔現症〕神経学的 には右同名性半盲,言語としては失名辞失語で,漢字 / 仮名 の読み及び漢字の書字の障害を認めた。WAB「読み」は 9.4 で漢字で失点していた。仮名の読みは日常的に支障ないが 「形の似ている文字は間違えやすい」と自覚していた。〔短時 間提示による音読の検討〕PC を用いて以下の音読課題を実 施した。受傷後 3 年,0.1 秒提示で仮名 1 文字の音読は 20/20 正答。縦書きの 2 ~ 4 文字の仮名単語,無意味綴り各 10 個を 用い,0.1 秒,0.5 秒の 2 条件で 1 つずつ提示し音読させた。正 答数は 0.1 秒提示(仮名単語 受傷後 3 年,6 年 / 無意味綴り  受傷後 3 年,6 年):2 文字 8,10/8,10,3 文字 3,9/1,4,4 文字 1,3/0,0。0.5 秒提示:2 文字 10,10/8,10,3 文字 7, 10/2,7,4 文字 3,9/0,5。部分的な回答が多く「何文字ある かは見えるが全部は読めない」と述べた。文字列全てを認知 できているか調べるため,同じ文字を 4 つ並べたもの 10 個 と,1 文字を別の文字に入れ替えたもの 10 個を 0.1 秒提示し, 4文字が同じ文字であったか否かを尋ねたところ 17/20 正答 した。〔考察〕本例は仮名単語の短時間呈示による音読課題 で文字数効果及び語彙性効果を認め,word form はほぼ保た れていると考えられた。仮名 1 文字は 0.1 秒で音読可能だが 4文字の綴りは 0.5 秒提示しても全ては音読できず,複数の 文字を同時に音韻と照合する過程に障害があると思われた。 Ⅰ─D4─6 超皮質性感覚失語と失読失書で発症し,仮名優位 の失読に移行した 70 歳女性例 関美沙1,吉澤浩志1,畠中淳1,福嶋直弥1,星野岳郎1,白 井優香1,北川一夫1 1東京女子医科大学脳神経内科  〔症例〕70 歳女性,短大卒。X-6 月に歩行障害,言葉が出 にくい,テレビのリモコンが使えないと訴え,当院を受診。 脳 MRI で亜急性期脳梗塞を認め入院した。MRA にて両側内 頸動脈の高度狭窄を認め,回復期リハビリテーション病院を 経て,X 月バイパス術前評価目的に再入院した。〔神経学的 所見〕X-6 月,JCSI-2,軽度の右不全片麻痺を認めた。X 月 に再入院時には意識および右不全片麻痺は改善していた。 〔神経心理学的所見〕X-6 月 MMSE13 点。WAB 失語症検査 で AQ64.5,流暢だが空疎な自発話,聴覚理解の中等度障害, 復唱は保たれ,失行,失認は認めなかった。文字言語は漢字・ 仮名の失読失書を認め,小学 3 年生相当の漢字を含む読み書 きテストで漢字書字 9/100 個,読字 0 個,仮名書字 4/100 個, 読字 0 個であった。標準視知覚検査は言語を介する項目で失 点した。形や色の識別,相貌認知,触覚呼称は保たれてい た。以上より超皮質性感覚失語および失読失書と判断した。 X月再入院時は MMSE 17 点,WAIS-Ⅳでは FSIQ 68,VCI 90,PRI 78,WMI 67,PSI 57。WAB では聴覚理解障害の改 善を認めた。読み書きテストは漢字書字 62/100 個,読字 47 個,仮名書字 81/100 個,読字 19 個と漢字の失読失書は改善 したが,仮名の失読は残存した。〔画像検査〕脳 MRI では, 左前頭葉白質,左頭頂葉,左舌状回,紡錘状回から下後頭回 に散在する亜急性期脳梗塞を認め,脳血流 SPECT では脳梗 塞部位を超えて頭頂葉を含む左大脳半球全体の血流低下を示 した。〔考察〕急性期に超皮質性感覚失語と失読失書を呈し, 慢性期に仮名優位の純粋失読に移行した脳梗塞の 1 例を経験 した。当初は左頭頂側頭葉の血流低下を反映した症状を認め たが,その後仮名優位の純粋失読に収束し,左後頭葉後部お よび紡錘状回後部の梗塞が責任病巣と考えられた。

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