コロナ禍における個別最適化学習システムの実績
Achievements of Individual Optimization Learning System in COVID19
林 俊信
奥村 理子
Toshinobu Hayashi
Riko Okumura
株式会社すららネット
SuRaLa Net Co.,Ltd.
【要旨】 本稿では、2020 年 3 月から行われた全国の学校休校措置で生じた学習機会の損失について、デジタル教材を用 いることで、一定量の学習保証を行うことができたことを報告する。デジタル教材は、個別最適化の機能を持ち、 個々の学習記録を詳細に確認できるものである。調査対象者は、無学年式デジタル教材「すらら」を学校・学年単 位で導入した組織である。休校措置期間と通常期間における利用時間に関して、休校の時期でも一定の学習機会 を維持することができた。個別最適化機能を持った教材は、教員との密な時間確保がままならない休校期間中の 有効な打開策の一つとなった。今後、Society5.0 に向けた日本社会では、修得主義[1]やAI 活用を求められている ため、社会展開の一端として、児童・生徒へ還元される方法も模索していく。 【キーワード】 アダプティブラーニング 個別最適化 ゲーミフィケーション 家庭学習 1. はじめに 日本政府は,2020 年 2 月 27 日、全国の学校 の休校措置を要請した。学校によっては、学期 内 の 学 習 機 会 な ら び に 新 学 期 開 始 後 の 休 校 措 置解除までの期間、児童・生徒の学習に大きな 影響を及ぼした。 政府の呼びかけは、三密を避ける指示であり、 児童・生徒の学習において、他者との接触に制 限がなされた。結果、修得状況の把握や個々の 生 徒 へ の 学 習 対 応 に 問 題 が 現 れ た ケ ー ス が あ った。 本稿では、デジタル教材を利用したサービス によって、標準学習時間からの減少分である機 会損失時間を学習記録に基づいて報告する。 2. 無学年式デジタル教材(すらら) 無学年式デジタル教材のデータ作成には、株 式会社すららネットが開発・運営する「すらら」 を利用する学校の学習時間 データを利用した。 「すらら」は、すららネット社の前身となる ベ ン チ ャ ー リ ン ク 社 が 展 開 し て い た フ ラ ン チ ャ イ ズ シ ス テ ム の 教 育 ノ ウ ハ ウ を 活 用 す る と ともに、e ラーニングの研究を行う専門家との 共同開発の上、2007 年から提供を開始した個別 最適化機能を持つデジタル教材である。同教材 の特徴は、児童生徒の自発的学習を促すための ゲーミフィケーション[2]、懇切丁寧なアニメー ションのレクチャー、アダプティブなドリル等 により、多種多様な児童生徒に対して、個別最 適 化 さ れ た 学 び の 提 供 を 可 能 に す る も の で あ る。結果として、スキナーのティーチングマシ ーンの研究[3]等にもあるように個別最適化した 学びを行うための内容が盛り込まれている。 3. 対象となるデータ取得の方法 2018 年から 2020 年の 3 年間すららを継続的 に利用している 47 校(13138 人)の 1 人あた りの平均学習時間を利用した。対象月は、休校 措置期間の 3 月~5 月で、過年度比較した。対 象教科は、英数国の3 教科だが、利用実績の観 日本デジタル教科書学会 発表予稿集 Vol.9, 2020 (第9回年次大会(京都大会/オンライン開催)) 39
点から英数のデータに限定した。なお、利用平 均時間が「0」の学校は、除外している。 4. デジタル教材による学習保証 図1 は、過去 3 年における 3 ヵ月間の「すら ら」の学習時間の平均を表す。2020 年の学習時 間は、2019 年と比較して、休校期間にも関わら ず310.3%増加した。 図1.年度比較した平均学習時間 文部科学省は、標準学習時間を1 教科月約 10 コマとしている。これに基づくと2 科目で児童・ 生徒が必要とする時間は、登校していた場合約 13 時間となる。2020 年の「すらら」の利用時 間は、月平均4 時間程度のため、休校時におい ても約 30%程度の学習機会がデジタル教材を 利用することで補完できているといえる。家庭 学習については、オンライン授業[4](各校が行 う ZOOM などを使った同期型の授業)との併 用を想定すると、本教材がある程度学習時間を 保証したと考えられる。 図2 は、月毎の「すらら」の学習時間の推移 である。従来、学年が入れ替わる3 月と 4 月の 学習時間は、少ない傾向にあるが、2020 年につ いては、4 月から学習時間が増加した。休校に よ る 学 習 機 会 の 損 失 を デ ジ タ ル 教 材 で 補 完 し たものと考えられる。5 月の微減は、オンライ ン授業との併用によるものと見受けられる。 図2. 月別平均学習時間の過年度比較 5. 今後の展開 学習保証の観点では、オンライン授業と個別 最 適 化 の 組 み 合 わ せ を 検 証 し て い く こ と が 必 要と考えられる。また履修でなく修得できたか を 把 握 し て い く こ と が 重 要 視 す べ き で あ る と 考える。 6. 参考文献 [1] 中央教育審議会初等中等教育分科会教育課 程部会 書面審議(令和2 年 4 月) 京都大学石井英真准教授提出資料 https://www.mext.go.jp/content/200428-mxt_kyoiku01-000006884_1.pdf [2] 松本多恵(2012)『ゲーミフィケーションを 活用した e ラーニング教育の可能性について』 教 育 シ ス テ ム 情 報 学 会 研 究 報 告,Vol.27,No3,pp.35-40
[3] Skinner,B.F.(1950). Are theories of learining necessary? Psy-chological Re-view,57,193-216. [4] 文部科学省(2020) 『新型コロナウイルス感 染 症 対 策 の た め の 学 校 の 臨 時 休 業 に 関 連 し た 公 立 学 校 に お け る 学 習 指 導 等 の 取 組 状 況 に つ いて』 https://www.mext.go.jp/content/20200421-mxt_kouhou01-000006590_1.pdf 日本デジタル教科書学会 発表予稿集 Vol.9, 2020 (第9回年次大会(京都大会/オンライン開催)) 40