工場敷地に設置した高圧ナトリウム灯と水銀灯の
飛来昆虫に対する影響
稲 岡 徹1
宮 田 弘 樹
2 1. (株)竹中工務居 先端製造施設プロデユース本部 干104-8182東京都中央区銀座8ー幻ーl 2. (株)竹中工務居技術研究所 〒270-1395千葉県印西市大塚1-5-1 (受領 2004年4月 30日)A
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sodium lamp and mercury
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MIYATA21. Advanced Manufiαcturing FacilityDepartment, Takenaka Coゆoration,21-1, Ginza 8, Chuo-ku, Tokyo, 104-8182]i
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2. Research
&
Develoρ
ment 1nstitute, Takenaka Co~ρoration, 5-1, Otsuka 1, 1nzai shi, Chiba, 270-1395 Jaρ
anAbstract: Attractiveness of a high-pressur巴 sodium lamp to photo-positive flying insects in
comparison with a mercury lamp was investigated ina factoryyard. The ultra-violetemissionfrom the high-pressuresodium lamp was about 1/60toasmuch asthatof themercury lamp. The lamps
were mounted on the tips of4 pillarsof5.7 m heightand located more than 28 m away from each
other.The differenceof attractivenesswas measured by the number ofcaptured insects on the sticky traps set closely near and 5 m below to the lamps. The high-pressure sodium lamp was about
50% less attractivethan the mercury lamp. The number of insectsaround the entrances of the factorybuildings was alsodetermined by sticky traps under illumination of themercury or high-pressuresodium lamps. The trapcatches ofinsectsdecreased when illuminationwas changed
from the mercury tohigh-pressuresodium lamp目 Nocompetitioninattractivenessto insects among the lamps was observed even when thetwo kinds of lamps were used atthe same time. The e百ect of thechange of the lamps was different among insectgroups.The trap catches of Lepidoptera,
Hymenoptera, Hemiptera and Coleoptera insects more remarkably decreasedthan those ofDiptera insectswhen mercury lamps were replacedtohigh-pressure sodium ones.
Key words: flying insects, ultraviolet light, high-pressure sodium lamp, mercury lamp
は じ め に 建築物には様々の昆虫が侵入してくるが,中でも飛 知性見虫は種数・個体数とも群を抜いて多く, 生産施 設においては製品への異物混入の原因としてきわめて 重要な位置を占めている.それらの中でも夜間に飛来 するものは,照明に強く誘引されるため,異物混入の 許されない製品を扱う食品・医薬品工場などの施設で は,昆虫に対する誘引性の低い(低誘虫性)光源への 要求が高まっている.昆虫の可視波長域は一般にヒ卜 のそれより約100nm短波長域に偏り,赤を見ること ができず, 350 nm前後の紫外線に高感受性であると いうのが定説になっている(松本,1998).昆虫の視
稲 岡 徹 宮 田 弘 樹 覚の特性に基づく紫外線域カットフィルムの利用や照 明光源の選択は,夜行性昆虫の建物への飛来を抑制す る手段として定着し,防虫対策の解説書にも扱われ (緒方・光楽, 2000),これに関わる製品も多数市場を 賑わしている.工場外構照明には,従来,水銀灯が広 く使われてきたが,最近ではそれより紫外線放射量の 少ないナトリウム灯が推奨され,使用されることが多 くなってきている. しかし, このような照明光源の変 換が,飛来昆虫の減少にどの程度効果があるのか,そ れによって施設内に侵入する虫の数が本当に減るの か,外構照明の配置が毘虫の誘引にどう影響するの か,というような実証的研究は十分にはなされていな い.今回,ある工場の協力を得て,水銀灯からナトリ ウム灯への光源変換が飛来昆虫数に与える影響を調べ た. 方 法 1. 調査期間 2000年7月24日から8月4日まで.
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調査場所 関西地方の都市近郊にあり,製造棟,事務棟・倉庫 など数十の建物, 30基以上の外構照明灯(以下外灯) を有する大工場で実施した.敷地内外には緑地が豊富 で,近くを河川が流れている.図1に調査エリアの概 略を示す.光源変換の飛来見虫数に対する影響を調べ るため,工場敷地の北西の角に設置された 4本の外灯 図 1 調査場所略図:照明灯の配置と捕獲ポイン卜 A~D: 外灯, G:製 造 棟 玄 関 (A灯から7 m),S
田倉庫出入口(
C
灯から2
5
m)(
A
・B
・C
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)
に水銀灯,ナトリウム灯を交互に点灯し て飛来する昆虫を粘着トラップで捕獲した.同時に光 源変換が外灯に近い建物出入口への飛来数への影響を 調べるため,A
灯から7 mの製造棟玄関(G)およびC 灯から2
5m
の倉庫出入口(S)で飛来した昆虫を粘着 トラップで捕獲した.そのほかに,外灯と施設出入口 の位置関係が,出入口周辺の昆虫密度にどのような影 響を与えるかを知るための補足調査として,C
灯から 16mとD灯から24mの距離にある出入口(図lに ×印で示す)および図1の範囲外で外灯からの距離が 10m, 13 m, 17m の 3 箇所の玄関で 3~4 日間の粘 着シートによる捕獲調査を実施した.さらに,調査期 間内の捕虫数の変動をチェックするために,上記 4灯 とは別に工場敷地内の外灯1基を定点として,光源を 既 存 外 灯 へ の 設 置 状 況 光 源 直 近 の 粘 着 シ ー ト (ナトリウム灯点灯時) 図2 水銀灯,ナトリウム灯および粘着シートの設置状況 支 柱 基 部 の 粘 着 シ ー ト表1 水銀灯,ナトリウム灯の点灯スケジュール
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7月 8月 火 24 25 26 27 28 29 30 31 2 3 4 A 水 銀 ナ ト リ ウ ム 水 銀 ナ ト リ ウ ム 水 銀 ナ ト リ ウ ム 水銀 ナトリウム*
水銀 ナトリウム B 水銀ナトリウム水銀ナトリウム7.k室長ナトリウム 水銀 ナトリウム 水銀 ナトリウム C 水 銀 ナ ト リ ウ ム 水 銀 ナ ト リ ウ ム 水 銀 ナ ト リ ウ ム ナ ト リ ウ ム 水銀 ナトリウム 水銀 D 水 銀 ナ ト リ ウ ム 水 銀 ナ ト リ ウ ム 水 銀 ナ ト リ ウ ム ナ ト リ ウ ム 水銀 ナトリウム 水銀 *8 月 1~2 日は羽蟻群飛のため,調査を中止した. 水銀灯に固定して飛来見虫の捕獲調査を実施した. 3.外灯の光源変換 工場内の外灯は,普段はすべて水銀灯を光源として いる. 図 l に示した 4 灯 (A~D) に二またに分かれた アームを取り付け,それぞれに水銀灯(松下電工製 HF400X)と高圧ナトリウム灯(同NH270FD.L-4, 以下ナトリウム灯と表記)をセットした(図2).波長 域がさらに狭く,見虫に対する誘引性が最も低いとさ れる低圧ナトリウムは,演色性が悪いために工場敷地 の外灯に使われるケースほとんどなく,水銀灯と安定 器が共用できないという理由もあり,今回は扱わな かった.各調査日において水銀灯またはナトリウム灯 のいずれか一方を夕刻(18:30前後)から翌朝(8:30 前後)まで点灯した. 4灯の点灯スケジュールを表1 に示す.調査期間の始めの6日聞は,光源変換が見虫 の誘引に与える影響を調べるため全灯を水銀灯または ナトリウム灯のいずれかに統一し,その後の4日間は 異種光源混在下の昆虫の反応を調べるため半分を水銀 灯,他をナトリウム灯とした.4
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飛来昆虫の捕獲方法 A~D 灯の光源の直下(水銀灯, ナトリウム灯両光 源から等距離で約40cm離れた位置)と, A~D 灯の 支柱基部(光源から約5 m下方)に40X13 cmの粘 着シートを設置した.光源、直下では粘着シートを二つ 折りにして表裏に粘着面を露出させて吊るし,支柱基 部では 1枚に広げて板に貼りつけ支柱に固定した(図 2). 玄関等の出入口では,扉の両側に l枚ずつ支柱基 部と同様の方法で粘着シートを置いた.定点の外灯で は支柱基部に粘着シートを設置した.毎日夕刻の点灯 と同時に粘着シートを設置し,翌朝の消灯時に付着し た 昆 虫 と と も に 回 収 し た . 捕 獲 さ れ た 見 虫 は10倍 ルーペで観察し大まかに分類し(大部分目レベル,一 部科レベル)カウン卜した. 5. 照度およびUV-A域紫外線放射量の測定 水銀灯・ナトリウム灯の照度はミノルタデジタル照 度 計T-1Mを用い,地上1.2m の位置に照度計セン サーを真上に向けて,光源の真下,前方・側方へ2, 4, 6 mの地点で測定した.UV司A域紫外線放射量は, 英弘精機製 UVMonitorMS-211-1を用い, センサー をランプに密着およびランプの直下30cmの位置に おいて測定した. 6. 気象条件の観測 毎日点灯直後の 19:00前後に気温・湿度をアスマ ン温湿度計で,風速をデジタル風速計で計測し目視で 天候を記録した.また大阪管区気象台発表の月齢を記 録した. 結 果 と 考 察 1. 調査結果に影響する気象条件のチェック 見虫を対象とした野外実験では,天候など気象条件 の違いにより,毎日の昆虫の活動量に大きな変動があ り,それが実験結果に反映することが考えられる.今 回の調査では全期間を通じて天候は安定し,夏らしい 晴天が続いた.実験初日のみ曇りがちで,夜間に降雨 があったが,昆虫の飛珂活動を妨げるほどではなく, むしろ他の調査日より昆虫捕獲数は多かった,毎日 19: 00前 後 の 観 測 で , 調 査 期 間 中 の 最 低 気 温 は 25.20C,最高2
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,湿度は最低67%,最高79%, 風速は最低0.5m/秒,最高3.7m/秒であった.灯火 への昆虫の誘引に影響を与えるとされる月明かりに関 しては,調査第6日 の 新 月 を 挟 み 期 間 中 の 月 齢 は稲 岡 徹 宮 田 弘 樹 表2 水銀灯とナトリウム灯の照度 (lux) 直下 前方 側方 光源種別 2m 4 m 6m 2m 4 m 6m 水銀灯 52.2 41.7 21.3 8.7 45.4 38.7 25.3 ナトリウム
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57.0 39.3 14.0 5.9 51.8 44.8 23.3 光源位置は地上5.7m,照度測定位置は地上1.2m. 表3 水銀灯とナトリウム灯の紫外線放射量(w/m2) 測定位置 光源種別 水銀灯 ナトリウムn
ランプに密着 ランプ直下30cm 136 7.3 2.3 測定限界以下 23.3から 5.0で,昆虫飛来数に影響するほどの月明か りはなかったと考えられる.これら条件の影響を チェックするため,調査期間中の飛来数変動を,工場 敷地内の定点の外灯基部の粘着シート上の捕虫数で記 録した.最多(147個体)と最少 (61個体)では2.4 倍の差があったが,水銀灯点灯日の捕虫数(平均±標 準偏差:86.7:
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32.1)とナトリウム灯点灯日のそれ (82.1士31.1)の聞にほとんど差はなく, 実験結果を撹 乱するほどの影響はないと判断した. 2. ランプの照度と紫外線放射量 実験に用いたランプの照度, UV-A域紫外線放射量 の測定結果を表 2および表 3に示す.照度は水銀灯, ナトリウム灯間で顕著な差はなく,紫外線放射量は約 60倍の違いがあった.3
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照明光源の違いによる昆虫の飛来数の変化 図3に調査期間のうち,始めの6日間の捕虫数を示 した.この期間は全灯の光源を統一し,水銀灯,ナト リウム灯のいずれかを 1日ごとに交互に点灯した.ま ず照明の影響が直接現れる光源直下の粘着シート上の 捕 虫 数 (パネルA)を比較すると,水銀灯からナトリ ウム灯への変換により, 4灯全体での減少率は 53.0% で,各外灯聞のばらつきも小さく,この差は統計学的 に 有 意 で あ っ た (Mann-Whi tneyのU検定,ρ
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0.05).一方,外灯支柱基部(パネルB)では, 4灯全 体では63.2% 減少し光源直下を上回る減少率であっ たが, 各外灯聞のばらつきが大きく統計学的には有意 ではなかった.支柱基部においては, 4灯のうちD灯 A光 源 直 下 A灯 B灯 場測定所 C灯 D灯 合 計 日 外 灯 支 柱 基 部 測定場所 園水銀灯口ナトリウム灯 20 40 60 80 100 120 A町 B灯 C町 39。
~43 88 103 152 630 3119 866 123 58 D灯 A-D灯合計 20 40 60 80 100 120 捕虫量(同) 図3 光源統一下の水銀灯, ナトリウム灯点灯時の 捕虫数の比較 水銀灯点灯時の捕虫量を 100%とした. ヒス トグラム端の数値は捕虫数を表す.A:光源 直近 B外灯支柱基部と近傍の建物出入口 (G, S) の水銀灯点灯日に他の日の5倍もの昆虫(主にユスリ カ類)が捕獲される異常日があり.D
灯のみでは減少 率75.9%と極端な価を示した.この日の夜間には降 雨があり,それが D灯基部の植栽への潜み個体を増加 させ,その近傍に設置した粘着トラップの捕虫数を増 加させたのかもしれない.これを除いてA-C
灯で集 計すると減少率は29.2%であった.水銀灯からナ ト リウム灯への変更によって,光源直下・支柱基部ともA-D
灯すべてで例外なく減少したことから, ナトリ ウム灯の飛珂昆虫誘引抑制効果は明らかである. 各外灯別に捕虫数を比較すると, D灯が他の 3灯の 合計を上回るほど多く,逆に B灯は少なかった.この 理由の一つは,上述したとおり D灯の支柱基部の低木圏水銀灯口ナトリウム~ 鱗週目 トー J 5 昆 ル
事
プ 膜週目 半遡目 鞘麹目 28 34 12 コパエ類 78 ユスリ力類 221 20 40 60 80 100 120 捕虫量(同) 図4 昆虫のグループ別にみた水銀灯, ナトリウム 灯点灯時の捕虫数の比較 水銀灯点灯時の捕虫量を100%とした. ヒス トグラム端の数値は捕虫数を表す. 植栽が昆虫のj替み場所となっていたためと考えられ る.他の外灯では光源直下の捕虫数が支柱基部より多 いのに対し.D
灯ではこれが逆転していることも上記 の考えを裏づけている.またD灯が,ユスリカの発生 源となっている川に最も近い位置にあったことも影響 していたと思われる(図 1). B灯の捕獲数の少なさ は,外灯の近傍に高木 1本が植栽されており,これが 光を部分的に遮ったためであろう. なお,パネルBの最後に示したとおり. A灯から7 mの製造棟玄関およびでC灯から25mの倉庫出入 口でも,光源変換により捕虫数は減少したが,減少率 はそれぞれ25.2%および17.2%と軽微で, 統計学的 に有意な差ではなかった. この6日間の昆虫グループ別に見た光源変換の影 響を,光源直下の捕虫数に基づいて図4に示した.水 銀灯からナトリウム灯への変換による捕虫数の減少率 は,鱗題目 73.7%.膜麹目(大部分はコパチ類などの 寄生蜂)73.1%.半麹目71.4%.鞘題目 69.2%.コパ エ類35.0%.ユスリカ類32.2%で,双麹日に属する2 グループの反応が鈍かった.捕獲された昆虫の内訳 は,ユスリカ類が最多で37.5%を占め,コパエ類が 13.6%とそれに次いだ.そのため,図3に示した昆虫 全体の光源変換による捕虫数の減少率も,この2グ ループが,ナトリウム灯への変換に鋭く反応しないこ とに強く影響を受けている. 少なからぬ昆虫のグループで,紫外線域外の波長に 感度のピークを持つ視細胞の存在が証明され,それに より異なった色覚を有する(Starkand Tan. 1982)こ とから,見虫のグループによって光源変換の影響が一 様でないことは当然予想されたことで,さらに言え A光源直下 A灯 B灯 測量
c灯 所 D灯 合計 園水銀灯口ナトリウム灯 72 9 226 434 20 40 60 80 100 120 H外灯支柱基部 一 … … … ……γ一 山 ι A灯 41 B灯 測量
叩
所 D灯 386 合 計 一問問自一同四 一晶晶晶晶晶晶ーー一一~ー~ー_...1.._ 冒 司・一 539 m ~ H ~ 100 1m 捕虫量(%) 図5 光源混在下の水銀灯, ナトリウム灯点灯時の 捕虫数の比較 水銀灯点灯時の捕虫量を100%とした. ヒス トグラム端の数値は捕虫数を表す ば,近縁の昆虫であっても種が違えば様々の光刺激に 異なった反応を示すと考えられる.Hirabayashi et al. (1993)はオオユスリカとアカムシユスリカでは,各干重 光源に対する反応がかなり相違すると述べている.今 回の調査では,ユスリカ類やコパエ類が紫外線放射量 の変化を伴う光源変換に対して反応が鈍し、という結果 であったが,これらのグループの種全般に共通する傾 向であるかどうかを決定するには,より多くのデータ の蓄積が必要であろう. 4. 水銀灯,ナトリウム灯混在時の昆虫の飛来数 図5に調査期間の内,水銀灯,ナトリウム灯を混在 して点灯した4日間の捕虫数を示した.この 4日間の 調査の目的は,全灯同一光源の条件下での結果(図 3) と比較することによって,誘虫性の異なる光源混在時 の昆虫の照明への飛来行動を推定することである.実 験前の予想では,昆虫を強く誘引する(高誘虫性)の 水銀灯に大部分の昆虫が飛来し,同時に点灯している 低誘虫性のナトリウム灯には,光源を統ーした場合に 比べて,飛来数がさらに著しく減少すると期待した. もし,この予想が当たっていれば,高誘虫性ならびに富田弘樹 100 10 1000 補 虫 数 ( 匹 ) 徹 30 25 水銀灯またはナトリウム灯から建物出入口ま での水平距離と捕虫数の関係 直線はそれぞれの回帰直線を表す.実線:水 銀灯(y
=
34.567 e 00779" R 2=
0.4064),破 線:ナトリウム灯(y=
20.013e-00678,
x
R2=
0.3976). 灯点灯時に水銀灯点灯時より少ない傾向が認められ た.また,外灯から出入口までの距離が大きくなるに つれて施設出入口周辺の昆虫数が減少する傾向も認め られた. これらの事実は,外灯照明の存在が出入口周 辺の飛矧性見虫の密度に影響を与えていることを意味 ししたがって,工場外周の照明,特に飛来昆虫の侵 入口となる施設開口部付近の照明光源を,誘虫性の低 いものに変換することの防虫対策上の意義を示唆する ものと考えられる.ただし,光源から 5m下の外灯支 柱基部でも,光源直下に比べて変換の効果は明らかに 減 少 し 上 述 のA灯近傍の製造棟玄関や C灯近傍の 倉庫出入口の例からみても,その効果は20%前後に とどまり,それほど大きいものではないように思われ 低誘虫性光源、を工場敷地内にうまく配置することに よって,全体を低誘虫性光源に統一するより,建物へ の見虫の接近をさらに効率よく抑制する手段となる可 能性があるからである. しかし,この期待は外れた. もともと捕虫数の多いD灯は,ナトリウム灯点灯時に おいても,同時に水銀灯を点灯したA.B
灯よりはる かに多くの昆虫を誘引した.また,全灯の光源を統ー した 6日間における水銀灯からナトリウム灯への変 換 に よ る 光 源 直 下 の4灯 全 体 で の 捕 虫 数 減 少 率 53.0%に対して,異種光源混在下では54.8%とほと んど差がなく,一方,支柱基部では同一光源下での減 少率63.2%に対して混在下26.6%で, 減少率は低下 した.それぞれの外灯毎に比較しでも,異常値を示し たD灯支柱基部を除いて,光源統一時と混在時におけ る,光源変換の影響に大きな違いは見られなかった. すなわち,高誘虫性の水銀灯が点灯されていても,低 誘虫性のナトリウム灯への昆虫飛来数が格別に抑制さ れることはなかった.これらの事実は,各外灯は,相 互に干渉することなく独立して昆虫を誘引しているこ とを示している. Hartstack et al.(1971)は複数のライトトラップを 用いたヤガの誘引試験において, トラップが30m以 上離れていれば,相互の干渉による捕獲数の減少はな いと報告している.本実験では外灯問の距離は 28~ 45 mであり,対象となった昆虫も光源の種類も巽 なっていたが, Hartstackらの報告を追認する結果と 稲岡 20 15 光源からの距離(m) 10。
図 6 る. 今回の実験で使用したナトリウム灯のUV-A域 紫 外線放射量は水銀灯の約1/60と大差があったが, 誘 虫性は光源直下でも約1/2の減少という結果で,両光 源の紫外線放射量の違いから期待されるほど顕著な差 は見られなかった.羽原(1992)は紫外線放射量を異 にする各種蛍光灯の誘虫性を実験的に検証し,白色蛍 光灯に対して純黄色蛍光灯は約1/3になるが,消灯 (無灯)に比べればなお誘虫性のあることは歴然で,嫌 虫灯や防虫灯の名称が誤解を生む可能性を指摘してい る. とは言え,紫外線をカットした低誘虫性照明によ る防虫対策は,環境汚染を惹起せず,比較的低コスト で実施できる優れた方法である.また,外灯の照明を 低誘虫性に変換することは,正の走光性を持つ多くの なった. 今回の限られた調査結果から,誘虫性の異なる光源 の配置によって,昆虫の建物への接近を回止しようと する試みを全面的に否定するには無理があるが,この ような試みを成功させるには,異種光源相互の距離, 建物と光源の距離,光源の紫外線放射量・照度の違い など,昆虫の飛来に影響する要因の綿密な検討と実証 実験が不可欠であろう.5
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外灯照明光源の種類と位置が施設出入口の飛来虫 数に与える影響 図6は外灯からの種々の距離にある出入口におけ る飛来昆虫の捕獲数を,水銀灯・ナトリウム点灯時に 分けて片対数グラフにプロットしたものである(距離 が Om のデータは A~D 灯の支柱基部のものを使用 した).外灯近傍の出入口周辺の昆虫数はナトリウム昆虫の無益な殺裁を軽減する.そのような観点から も,屋外照明を水銀灯からナトリウム灯に変換すべき という主張(小野, 1995)は尊重されなければならな い.ただし,建築物への侵入防止という側面では,低 誘虫性の照明を採用するだけでは,十分な効果があが らないケースが多いと恩われる.建築物の防虫対策の 基本である遮蔽性の向上,飛期性昆虫の大きな侵入要 因である室内空気圧の調節(辻, 2003)などを含めた 総合的防虫技術のーっとして,照明光源対策の効果を 正しく認識した上で,適切な使用が望まれる. ま と め 工場敷地内の外灯の照明光源を水銀灯から高圧ナト リウム灯に変換したときの飛来昆虫数に与える影響を 調べた. l. 実験に用いた高圧ナトリウム灯の紫外線放射量 は水銀灯の約 1/60,水銀灯から高圧ナトリウム灯へ の変換によって外灯への誘虫性は約 1/2に低下した. 2. 外灯に近い施設周辺では,外灯照明の誘引作用 により,建物との距離に応じて昆虫の密度が高まり, そのため施設内への昆虫の侵入数は,照明のない場合 に比べ増加していると思われる. 3. 外灯の光源を水銀灯からナトリウム灯に変換す ると,その周辺の施設内への昆虫の侵入数も減少する が,減少率は外灯自体への飛来数ほど顕著ではなく, 20%前後であった. 4. 外灯聞の距離が 28-45m という実験条件で は,各外灯は独立して昆虫を誘引し,水銀灯とナトリ ウム灯を同時に点灯した場合にも,各外灯聞の相互影 響は認められなかった. 5 水銀灯から高圧ナトリウム灯への変換によっ て,鱗麹日・膜麹目・半麹目・鞘題目では飛来数は約 70%減少したのに対し,双麹目のユスリカ類やコパ エ類では 30-40%の減少率であった. 引 用 文 献 羽原政明(1992)各種光源の誘虫性.ベストロジー学会 誌, 7(1): 37-38. Hartstack, A. W., Jr., J. P.Hollingsworth, R. L.Ridge -way and H. H. Hunt (1971) Determination oftrap spacing required tocontrol an insect population. J. Econ. Entomol,.64: 1090-1100.
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研究窓やドアの隙聞からの出入 ベストロジー学会