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病院歯科口腔外科における障害者に対する全身麻酔下歯科治療症例の検討 ―当科開設後5年間の臨床統計をもとに―

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Academic year: 2021

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緒   言  障害者の歯科治療内容は,健常者に対するそれと大き く異なるわけではないが,通常の対応では困難を伴うこ とが多い.その理由として,知的能力障害による非協力 的行動,脳性麻痺などの不随意運動・異常緊張,歯科治 療に対する恐怖,異常絞扼反射などが挙げられる.この ような患者に対する歯科治療時の管理方法は,障害の種 類・程度,歯科治療の内容などにより,抑制法,行動変 容技法,精神鎮静法,全身麻酔法が選択される1).特に, 歯科治療に対する理解に乏しい非協力的患者や多数歯に う蝕が認められる患者の場合,行動調整法の一つとして 全身麻酔法は有用と考えられる1).当院では,開設当初 から地域の中核病院としての役割を担い,障害者に対す る全身麻酔下歯科治療を行ってきた.そこで今回,これ までの実態を把握することを目的に,開設当初から 5 年 間の全身麻酔の状況と歯科治療内容について調査を行い 検討したので報告する.

臨床集計

病院歯科口腔外科における障害者に対する全身麻酔下歯科治療症例の検討

当科開設後 5 年間の臨床統計をもとに

片 浦 貴 俊

1)

・伊 藤 正 樹

2) 1)社会医療法人宏潤会大同病院歯科口腔外科 2)医療法人徳州会名古屋徳州会総合病院歯科口腔外科 (原稿受付日:2020 年 6 月 8 日) (原稿受理日:2020 年 8 月 28 日) 対象および方法  対象は,2014 年 4 月から 2019 年 3 月までの 5 年間に 当科で全身麻酔下での治療(一般外科手術を含む)を 行った 1,165 症例のうち,全身麻酔下歯科治療を行った 障害者 275 症例(23.6%)である.これらの症例に対し, 1.症例数の経年的推移,2.性別および年齢構成,3. 障害の分類,4.入院日数,5.麻酔導入方法・気道挿管 方法,6.麻酔時間,7.手術時間,8.周術期合併症, 9.治療内容,10.紹介経路(紹介元と術後の口腔管理 先)の 10 項目について検討した.障害の分類は,①肢 体不自由(脳性麻痺,脳血管障害など),②発達障害(自 閉スペクトラム症,注意欠如・多動症(ADHD)など), ③知的能力障害,④精神障害(解離性障害,統合失調症, 認知症など),⑤その他(視覚障害,聴覚障害,心臓機 能障害,呼吸器機能障害,異常絞扼反射,歯科治療恐怖 症など)に分類した.肢体不自由と知的能力障害を併発 している場合は肢体不自由として集計し,発達障害と知 的能力障害を併発している場合は発達障害として集計し た.統計処理を行ったデータは平均値±標準偏差で表示 した.また,性別・治療内容については群間の比較にχ2 検定,平均麻酔時間と治療時間については分散分析およ び t 検定を用い,危険率 5%未満を有意差ありと判定し  要旨:当科は 2014 年 4 月に開設され,一般の口腔外科治療を中心に行っているが,障害者への歯科治療も積極的 に取り入れている.当院は,地域の中核病院として行動調整法に全身麻酔を用いた歯科治療を行っている.そこで今 回,開設後 5 年間の実態調査を行った.  2014 年 4 月から 2019 年 3 月までの 5 年間に当科で行った障害者に対する全身麻酔下歯科治療症例 275 症例(男性 166 症例,女性 109 症例)を対象とした.  5 年間の症例数の経年的推移は,2014 年度 38 症例(38.8%),2015 年度 58 症例(30.7%),2016 年度 60 症例 (23.9%),2017 年度 64 症例(22.7%),2018 年度 55 症例(15.9%)であった.障害の分類は発達障害 78 症例,知的 能力障害 75 症例,肢体不自由 29 症例,精神障害 3 症例,その他 90 症例であった.治療歯数は 5 年間で合計 2,894 歯であり,1 症例あたりの平均治療歯数は 10.5±6.8 歯であった.術後の口腔管理先は,かかりつけ歯科医院 131 症 例,地域障害者歯科センター 89 症例であった.  地域の中核病院として全身麻酔下歯科治療の需要はあるが,2015 年度で症例数は上限に達し,待機患者が生じた. また,8 割の患者がかかりつけ歯科医院で術後の口腔管理を行っていることがわかった.引き続き地域の中核病院と しての役割を担っていきたい.

(2)

た.なお,調査にあたり,診療録の閲覧は診療室内で行 い,個人情報に配慮し使用したデータは匿名化されてい る情報を用いた.本研究は令和 2 年 6 月 1 日付で社会医 療法人宏潤会大同病院倫理審査委員会の承認を受けてい る(倫許 ECD2020-013). 結   果 1.症例数の経年的推移(図 1)  5 年間の経年的推移は,2014 年度 38 症例(38.8%), 2015 年度 58 症例(30.7%),2016 年度 60 症例(23.9%), 2017 年度 64 症例(22.7%),2018 年度 55 症例(15.9%) であった. 2.性別および年齢構成(図 2)  性別の内訳は,5 年間で男性 166 症例(60.4%),女性 109 症例(39.6%)であった.患者の年齢は 3~86 歳に わたり,5 年間の平均年齢は 26.5±17.4 歳であった.年 齢構成は 5 年間を通してみると 20~29 歳が最も多く,72 症例であった.次いで 0~9 歳まで 57 症例,10~19 歳 が 45 症例の順であり,20 歳代までで 63.3%を占めた. 3.障害の分類(図 3)  5 年間の主な障害の内訳は,発達障害 78 症例,知的 能力障害 75 症例,肢体不自由 29 症例,精神障害 3 症 例,その他 90 症例であった. 4.入院日数  歯科治療の前日に入院し,翌日に退院する 2 泊 3 日の 入院が 147 症例(53.5%)であった.また当日入院・翌 日退院の 1 泊 2 日が 87 症例(31.6%),3 泊 4 日以上 29 症例(10.5%)で,入院日数の平均は 3.0±0.7 日であっ た.一方,日帰り全身麻酔症例が 12 症例(4.4%)で あった. 5.麻酔導入方法,気道管理方法(表 1)  麻酔導入方法は,5 年間の通算で緩徐導入 105 症例 (38.2%),急速導入 170 症例(61.8%)であった.気道管 理方法は,気管内挿管を行わなかった 8 症例(2.9%)を 除き,36 症例(13.1%)で経口挿管,231 症例(84.0%) で経鼻挿管が施行された. 6.麻酔時間(図 4)  麻酔時間は,5 年間の平均は 135±71.5 分で,最短 23 98 189 251 282 345 38 58 60 64 55 0 50 100 150 200 250 300 350 400 2014年度2015年度2016年度2017年度2018年度 全身麻酔を受けた総症例数 全身麻酔下歯科治療を受けた症例数 (例数) 図 1 症例数の経年的推移 全身麻酔の総症例数 1,165 症例(うち手術:890 症例,歯科治療:275 症例) 57 45 72 40 32 19 10 0 10 20 30 40 50 60 70 80 10歳未満 10~19歳 20~29歳 30~39歳 40~49歳 50~59歳 60歳以上 (例数) 図 2 年齢構成 発達障害 28.4% 知的能力障害 27.3% 精神障害 1.1% その他 32.7% 肢体不自由 10.5% 図 3 障害の分類(n=275)

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分,最長 476 分であった.2014 年度は,平均 199±82.6 分で,最短 69 分,最長 408 分であった.2015 年度は, 平均 138±55.6 分で,最短 23 分,最長 268 分であった. 2016 年度は,平均 151±68.1 分で,最短 29 分,最長 360 分であった.2017 年度は,平均 154±77.6 分で,最短 50 分,最長 476 分であった.2018 年度は,平均 149±64.6 分で,最短 31 分,最長 275 分であった.年度別で比較 すると,2014 年度と他の年度で有意差が認められ, 2014 年度は麻酔時間が有意に長かった. 7.治療時間(図 4)  治療時間は,5 年間の平均は 112±64.8 分で,最短 3 分,最長 432 分であった.年度別にみると 2014 年度は 平均 140±76.3 分,最短 38 分,最長 351 分,2015 年度 は平均 89±48.2 分,最短 15 分,最長 213 分,2016 年度 は平均 109±66.3 分,最短 11 分,最長 278 分,2017 年 度は平均 120±66.8 分,最短 15 分,最長 432 分,2018 年度は平均 109±59.7 分,最短 3 分,最長 223 分であっ た.年度別で比較すると,2014 年度と他の年度の比較 で有意差が認められ,2014 年度は治療時間が有意に長 かった. 8.周術期合併症  術中の合併症は特になかった.術後合併症は 5 年間で 嘔吐が 30 症例,シバリング 7 症例,頭痛 3 症例,鼻出 血 2 症例,不穏 1 症例,せん妄 1 症例,てんかん 1 症 例,肺炎 1 症例であったが,いずれも重篤な結果にはい たらなかった. 9.治療内容(図 5)  5 年間の全治療歯数は 2,894 歯であり,1 症例あたりの 平均治療歯数は 10.5±6.8 歯であった.年度別に比較す ると 2014 年度は,全治療歯数 661 歯で平均治療歯数は 17.4±7.6 歯であった.2015 年度は,全治療歯数 660 歯 で平均治療歯数は 11.4±6.7 歯であった.2016 年度は, 全治療歯数 532 歯で平均治療歯数は 8.9±6.9 歯であった. 2017 年度は,全治療歯数 605 歯で平均治療歯数は 9.5± 5.5 歯であった.2018 年度は,全治療歯数 436 歯で平均 治療歯数は 7.9±5.7 歯であった.  治療内容の内訳は,5 年間の通算で歯冠形成 75 歯, 補綴物装着 101 歯,充塡 1,761 歯,根管治療 301 歯,抜 歯 425 歯,智歯抜歯 201 歯であった.年度別の割合は図 5 に示す.年度別の処置内容の割合を比較したところ, すべての群間で有意差が認められた.歯周処置は全例で 処置前に行っているため処置数としては含めなかった. 10.受診経路(紹介元と術後の口腔管理先)(図 6,7)  5 年間の通算で紹介元はかかりつけ歯科医院 106 症例, 地域障害者歯科センター 92 症例,院外病院 31 症例,紹 介状なし(直接)25 症例,当院(院内紹介)17 症例, かかりつけ医院 4 症例であった.また,術後の口腔管理 先はかかりつけ歯科医院 131 症例,地域障害者歯科セン ター 89 症例,当科 28 症例であった. 考   察  当科開設以来,患者自身の身体的および精神的庇護2) または家族の負担を可能なかぎり軽減し,健常者と同レ ベルの内容の包括的医療が受けられるように,地域中核 病院として障害者に対し積極的に全身麻酔下歯科治療を 行ってきた.多くは,近郊の障害者施設や地域障害者歯 科センター,県内の開業医からの紹介患者である.この 5 年間で全身麻酔症例は総数 1,165 件で,うち手術 890 件,歯科治療 275 件であった.割合は,5 年間の通算で 23.6%,年度別にみると,2014 年度 38 症例(38.8%), 2015 年度 58 症例(30.7%),2016 年度 60 症例(23.9%), 2017 年度 64 症例(22.7%),2018 年度 55 症例(15.9%) であった.初年度から 2015 年度は症例数が増加したが, 2015 年度で上限に達した.全体の手術件数が増加して いるため歯科治療の割合は低下している.当院での全身 表 1 麻酔導入方法と気道管理方法 症例数 麻酔導入方法 急速導入 緩徐導入 170 症例(61.8%) 105 症例(38.2%) 気道管理方法 経鼻挿管 経口挿管 ※その他 231 症例(84.0%) 36 症例(13.1%) 8 症例 (2.9%) ※鼻咽頭チューブ 5 症例,経気管切開挿管 3 症例 0 50 100 150 200 250 300 2014年度 2015年度 2016年度 2017年度 2018年度 平均麻酔時間 平均治療時間 * ** 図 4 麻酔時間と治療時間の年度別推移 平均麻酔時間*p<0.01,平均治療時間**p<0.01:分 散分析,t 検定

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麻酔下歯科治療は週に 1 件のペースで実施しており,手 術枠や他の外科手術との兼ね合いを考慮すると年間約 60 件が上限となる.現状では 1~2 カ月の待機患者が生 じているため,今後の対応について検討していく時期に 迫られている.  当院では,原則的に 2 泊 3 日の入院下での処置として いるが,入院という環境の変化に堪えられない患者や 2 時間以内で終了する処置の場合は,日帰り全身麻酔での 対応も行っている.全身麻酔下での歯科治療症例が増加 傾向にあることは,一つには患者や家族の口腔内への関 心が高まり,全身麻酔下での治療に関する理解が得られ てきている現れと考えられる.一方で,全身麻酔法は, スムーズな歯科治療を行いうる優れた方法だが,単回で の全身麻酔では歯内療法などの複雑な歯科治療が困難な ことや3),術後の口腔管理により修復歯の予後が異なる4) など,問題点もある.  当科で全身麻酔下歯科治療を行った患者の性別では, 有意差は認められなかった(男性 166 症例,女性 109 症 例,p 値 0.54:χ2検定).各年度別で比較してもほぼ同 様な傾向がみられた.これは,他の施設の報告とは異 なった5~7).一般的には患者の体格,腕力の面からみる と,女性患者に比較して男性患者のほうが抑制下に治療 を行うことが難しいために,全身麻酔の適応となりやす い8)と考えられるが,当科では歯科治療恐怖症や異常絞 扼反射に女性患者が多かったため,一般的な結果と異 なったと考えられる.また,平均年齢は 26.5±17.4 歳で, 患者分布は 20 歳代が最も多かった(26.2%).障害別割 合をみると,発達障害が最も多く,次いで知的能力障害, 肢体不自由,精神障害と続いている.当院では他の施設 と比べるとその他(歯科治療恐怖症や異常絞扼反射)の 患者が多い.これらの患者も通法の歯科治療に難渋する ことが多いため,かかりつけ歯科での治療では限界があ る.これらの患者は障害者手帳などがないため地域障害 者歯科センターでは対象外となってしまうことや受け入 れられる施設が遠方であるため,当院への受診へとつな がっていると考えられる.  全身麻酔下での治療内容についてみると,一般的には 成形修復に比べ鋳造修復の比率が低いが,当院でも同様 な結果であった.これは,患者および家族の負担を最小 限にするため 1 回の治療で完結しようとする方針をとっ ているためである.障害者の全身麻酔下歯科治療は治療 内容や治療計画上の理由などから複数回全身麻酔を行う9) あるいは患者および家族の身体的・精神的負担を軽減す るため 1 回の全身麻酔下での治療を前提とする10~12) ど,それぞれの施設によって異なっている.当院は入院 施設を有しているため,1 回の治療で完結させることを 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 2018年度(436歯) 2017年度(605歯) 2016年度(532歯) 2015年度(660歯) 2014年度(661歯) CR・シーラント 補綴物 形成・印象 歯内療法 抜歯 その他 * 図 5 治療の内容の内訳 総計は 2,894 歯.( )内は年度総計. *p<0.001(すべての群間で有意差あり:χ2検定) かかりつけ歯科医院 38.5% 地域障害者歯科センター 33.4% 院外病院 11.3% 紹介状なし 9.1% 院内紹介 6.2% かかりつけ医院1.5% 図 6 紹介元(n=275) 1次医療機関 47.6% 2次医療機関 32.4% 当院 10.2% その他 9.8% 図 7 治療後の口腔管理先(n=275)

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基本方針としている.しかし,近年では,再治療の少な い鋳造修復の比率が増加している.処置内容の割合を年 度別で比較するとすべての群間で有意差が認められた. これは,当初 1 回の処置で完結する方針であったため, 充塡処置や抜歯処置を行うことが多かったが,複数回に 分けて処置を行う方針へと変更したことで歯内療法や形 成・印象および補綴物など鋳造修復に関わる一連の処置 が多くなったためと考えられる.今後,術後の口腔管理 や治療の予後についても検討していく必要がある.  麻酔時間および治療時間については, 5 年間の通算で みると麻酔時間は平均 135±71.5 分,治療時間は平均 112±64.8 分と,ともに他の施設からの報告と大差はな かった2,6,9,13).年度別では,2014 年度と他の年度の比較 で有意差が認められ,2014 年度の麻酔時間および治療 時間が長かった理由として,当初は 1 回の処置で完結す る方針であったため処置時間が長くなったと考えられ た.治療時間が 432 分の症例があったが,遠方からの受 診のため 1 回の処置で完結してほしいとの患者の強い要 望があったためである.  導入法については,緩徐導入が 105 症例(38.2%),急 速導入が 170 症例(61.8%)を占めていた.われわれの 施設では,小児科医や麻酔科医が在籍しているため病棟 で静脈留置することが多かった.導入方法については, 他科との協力もあるが,理解力が乏しい,あるいは恐怖 心が強いために非協力的である場合は,意識下での静脈 路確保も難しいことがあり,精神的庇護のためにも再検 討が必要である.気道管理方法は口腔内処置であるため に経鼻挿管が 231 症例(84.0%)を占めていた.補綴物 の装着のみや処置時間が短時間であった症例,気管カ ニューレに接続した 8 症例については挿管しなかった.  全身麻酔の周術期合併症については,術後 46 症例に 認められたが,いずれも重篤にはいたらなかった.健常 者に比べ,障害者に対する全身麻酔では嘔吐や誤嚥性肺 炎が起こりやすいといわれている14,15).鈴木ら6)は,麻 酔時間が長い症例ほど術後合併症が発生しやすいと述 べ,さらに藤澤ら16)は,麻酔時間が 2 時間を超えると 術後合併症の発生率が著しく増加し,入院下での細心の 管理が必要であると述べている.当院では治療の前日に 入院し,処置翌日に退院することを原則としている.し かし,日帰り全身麻酔を行っている報告6,8,17)も多い. 麻酔時間によっては日帰り全身麻酔のほうが入院症例に 比べて合併症が少なかったとの報告6)もあり,入院に関 わる環境の変化による精神的負担がかからない点でも有 利である.しかし,当日帰宅が前提となるため 2 時間程 度で処置を終える必要があり,治療内容に制約が加わ る.さらに,処置後と帰宅後の管理体制の整備が必須と なる6).当院では,患者の状態によっては日帰り全身麻 酔も対応しているが,麻酔時間が 2 時間を超えることが 多く,その場合は原則入院下での対応としている.  紹介患者の割合は一次歯科医療機関からが 106 症例で 38.5%,二次歯科医療機関(地域障害者歯科センター) からが 92 症例で 33.4%であり,それ以外からの紹介を 含めると 233 症例で全体の 84.7%を占めていた.ほとん どの患者は,一次医療機関や地域障害者歯科センターで 可能な範囲の治療を受けていたが,多数歯う蝕であるこ とが多く,意思疎通や抑制下での処置が困難であるた め,当院への受診へとつながった.また,直接受診の一 部,あるいは院内からの紹介は,これまで歯科受診の経 験がなく,重度のう蝕症であり,トレーニングによる不 適応行動の改善に時間を要するため局所麻酔での歯科治 療は不可能と判断し,全身麻酔で歯科治療を行った.特 定機能型の診療体制では,治療後の患者の口腔管理は居 住地域の一次あるいは二次歯科医療機関で行うことが求 められる.当院で全身麻酔下での歯科治療を受けた 220 症例(80.0%)の患者が治療後に地域歯科医療機関で口 腔管理をされている.このような現状から,当病院が地 域の歯科医療機関と連携を確立した中核病院としての役 割を果たしていると思われた.今後もこの地域の障害者 における幼少期からの歯科的管理の重要性の啓発と地域 連携体制のより一層の強化を図っていきたい. 結   論  2014 年 4 月~2019 年 3 月の 5 年間において,全身麻酔 法下に歯科治療を行った 275 症例(総患者数の 23.6%) を検討し,以下の結果を得た.  1.全身麻酔適応の理由となった障害としては発達障 害が最も多かった.  2.63.3%が 20 歳代までの患者であった.  3.当院では急速導入が 170 症例(61.8%),緩徐導入 が 105 症例(38.2%)であった.  4.術後合併症は,嘔吐 30 症例,シバリング 7 症例, 頭痛 3 症例,鼻出血 2 症例,不穏 1 症例,せん妄 1 症 例,てんかん 1 症例,肺炎 1 症例であったが,いずれも 重篤な結果にはいたらなかった.  5.紹介元はかかりつけ歯科医院 106 症例,地域障害 者歯科センター 92 症例,院外病院 31 症例,紹介状なし 25 症例,院内紹介 17 症例,かかりつけ医院 4 症例であ り,そのうち 229 症例(83.3%)が歯科医療機関からの 紹介であった.治療後は,220 症例(80.0%)の患者が 紹介元で口腔管理された.  当院歯科口腔外科では障害者歯科の高度医療を提供 し,地域障害者歯科センターや地域の歯科医院との病診 連携も定着した.

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 本論文に関して,開示すべき利益相反状態はない. 文  献 1) 森崎市治郎,緒方克也,向井美惠,他.障害者歯科ガイ ドブック.第 1 版.東京:医歯薬出版;1999.173-85. 2) 伊東隆利,山田貴之,岸田 剛,他.障害者等への全身 麻酔下歯科治療後の QOL の変化に関する研究―患者サイ ドの評価と受け止め方について―.障歯誌 2003;24: 128-35. 3) 大井久美子,原口尚久,嶽崎理英,他.大学歯学部附属 病院における障害者歯科治療について―長崎大学歯学部 附属病院開院後 11 年間の実態―.障歯誌 1996;17: 160-7. 4) 甲原玄秋,羽鳥文麿,佐藤研一,他.千葉県こども病院 における過去 6 年間の障害児に対する全身麻酔下歯科治 療の臨床的検討.障歯誌 1996;17:7-12. 5) 川野雅也,志田 亨,孫 弘樹,他.大阪歯科大学附属 病院における心身障害者歯科治療の全身麻酔法の検討. 日歯麻誌 1996;24:325-31. 6) 鈴木睦麿,五十嵐 治,杉山あや子,他.心身障害者に おける外来全身麻酔の臨床統計.日歯麻誌 1994;22: 446-54. 7) 小笠原健文,白川正順,坂井陳作,他.町田市民病院口 腔外科における年間の全身麻酔下集中治療の検討,日歯 麻誌 1995;23:446-7. 8) 高木 潤,渋谷敦人,瀧 邦高,他.大阪大学歯学部附 属病院における障害者の全身麻酔下歯科治療に対する検 討―主として外来全身麻酔について―.日歯麻誌 1998; 28:56-64. 9) 弘中祥司,堤 智紀,小島 寛,他.全身麻酔下におけ る障害児の歯科治療―計画的複数回の全身麻酔下歯科治 療に関する検討―.障歯誌 1997;18:226-32. 10) 鈴木正二,鈴木百代,濱尾 綾,他.障害者に対する入 院全身麻酔下歯科治療症例の検討.障歯誌 2000;21: 320-4. 11) 北村瑠美,西連寺央康,川瀬ゆか,他.重症心身障害者 に対する全身麻酔下集中歯科治療による修復処置の予 後―10 年間の観察―.障歯誌 2003;24:110-6. 12) 小野智史,本間将一,葛西良憲,他.当院における障害 者に対する全身麻酔下歯科治療症例の検討.障歯誌 2003; 24:186-91. 13) 岩上好伸,渡辺善久,大槻玲子,他.知的障害者の歯科 治療における日帰り全身麻酔―BIS モニター下プロポ フォール麻酔の有用性―.障歯誌 2002;23:562-70. 14) 茅 稽二,川島康男,沼田克雄,他.困難な症例に学ぶ 最新の臨床麻酔.第 1 版.東京:克誠堂出版;1986. 546-56. 15) 岡 憲史,太城力良,北村征治,他.脳性麻痺児の麻 酔.臨床麻酔 1980;4:185-9. 16) 藤澤俊明,窪田正裕.北海道大学歯学部附属病院におけ る心身障害者全身麻酔症例の検討.障歯誌 1987;8: 36-41.

17) Fukuta O, Raymond LB, Martin SB, et al. A survey of dental treatment, under general anesthesia, for pediatric patients treated on outpatient basis in a free-standing ambulatory surgery center in University of California, San Francisco. Part 1・characteristics of patients and nature of dental. Aichi-Gakuin Dent Sci 1998;11:63-9.

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A Study of Dental Treatment Cases of Disabled Persons under

General Anesthesia in a Dentistry/Oral Surgery

Based on the 5 Year-clinical Statistics after the Establishment of Our Department

KATAURA Takatoshi1) and ITOU Masaki2)

1)Department of Oral Surgery and Special Care Dentistry, Daido Hospital 2)Department of Oral and Maxillofacial Surgery, Nagoya Tokushukai General Hospital

 Purpose:Five years have passed since our department was established in April 2014. Since the early days of our establishment, we have been accepting difficult-to-treat disabled persons (children) from other dental clinics. We report our experience, with retrospective clinical and statistical reviews for the past 5 years.

 Method:The study examined age, gender, and treatment content for a total of 275 disabled persons who underwent dental treatment under general anesthesia at our institution for the 5 years from April 2014 to March 2019. The study also investigated the types of disabilities and routes of referral.

 Results:By gender, the study confirmed 166 male cases and 109 female cases. The average age for the 5 years was 26.5±17.4 years old. By disability, the study confirmed 78 cases of developmental disability, 75 cases of intellectual disability, 29 cases of physical handicap, 3 cases of mental disability, and 90 cases of other disability. The average anesthesia time and average treatment time were 135±71.5 minutes and 112±64.8 minutes, respectively. The total number of treated teeth for the past 5 years was 2,894 while the average number of treated teeth per case was 10.5±6.8. For oral care management after treatment, 131 cases were treated at family dental clinics and 89 cases were treated at a local dental service center for disabled persons.

 Conclusion:Although there was demand for dental treatment under general anesthesia due to cooperation with the local community, the number of cases eventually reached a ceiling in 2015 along with waiting patients. In addition, it was found that 80% of the patients received oral health management at family dental clinics after treatment. The present situation suggests that our hospital serves as a core hospital in establishing cooperation with local dental institutions. In future, we intend to expand the dental treatment system for disabled persons in the local community.

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