大学生の首尾一貫感覚と知覚されたストレスおよび健康に関連
する生活の質との関連
○曹家瑋・王一然・加藤佳子(神戸大学大学院人間発達環境学研究科)
キーワード:SOC,ストレス,HR-QOL 目 的 「健康日本 21(第二次)」(2012)では、健康寿命の延伸が めざされている。そこで、生活の質(Quality Of Life:QOL) の向上に注目し QOL を促進する要因ついて検討する必要があ ると考えた。 HR-QOL に関する研究では,ストレスが心身の健康状態や機 能などの低下に繋がり、HR-QOL にも影響すること明らかにさ れている(上田,2006;労働者健康福祉機構,2013)。そして 現代の大学生は、日常生活における目標が不明確であったり、 進路への不安を感じているなど、さまざまなストレスイベン トに遭遇していることが報告されている (日本学生支援機構, 2018)。しかし、同じようなストレスイベントを経験していて も、個人によってその知覚のされ方は異なる。そのためスト レスへの知覚を和らげることで、ストレス反応を低減でき、 HR-QOL を維持増進できると考えた。 本研究では、ストレスへの知覚を和らげ、ストレス反応を 低減し、HR-QOL につながる要因として、ストレスレジリエン スである首尾一貫感覚(Sense of Coherence:SOC)を仮定し 検討することとした。SOC は、ストレスに対処する能力の一 つとして、アントノフスキー(1979)が提唱した概念であり、 SOC の高い人ほど、ストレスへの知覚を緩衝でき、さらに高 い HR-QOL を維持することができると考える。 以上の点を踏まえて、本研究では、SOC が知覚されたスト レスを規定する要因として、さらに SOC と知覚されたストレ スが HR-QOL に影響すると仮定し、三者の関係性を検討する ことを目的とした。 方 法 1)調査対象者: 大学生 290 名(男性 204 名、女性 86 名、平均年齢は 19.8 ±1.5 歳)を対象に調査を行った。 2)調査内容 ①Sense of coherenceAntonovsky(1979)が開発した SOC-29 の短縮版 SOC-13 の 日本語版(山崎, 1999)を用いた。7 件法で尋ねた。 ②知覚されたストレス
Cohen ら(1983)が開発した 14 項目から構成される知覚され たストレス尺度(Perceived Stress Scale)の日本語版(鷲 見,2006)を用いた。5 件法で尋ねた。
③Health-related quality of life(HR-QOL)
Ware ら(1996)が開発した SF-36(MOS 36-Item Short-Form Health Survey) の 短 縮 版 SF-12V2 ( Short-Form 12-Item Version 2 Health Survey)の日本語版(福原, 2004)を用い て HR-QOL を測定した。 3)倫理的配慮 本調査は事前に神戸大学大学院人間発達環境学研究科倫理 審査委員会の承認された内容に従って調査を行った。 結 果 SOC、知覚されたストレスと HR-QOL の関連について、共分 散構造分析を行った結果を図 1 に示した。有意であった標準 化係数についてみてみると、SOC は知覚されたストレス(β =-.675,p<.001)と HR-QOL(β=.385,p<.01)に影響し、知覚 されたストレスは HR-QOL(β=-.449,p<.001)に影響してい た。モデルの適合度は GFI=.958、AGFI=.916、CFI=.963、 RMSEA=.056 であった。 図 1. SOC、知覚されたストレス、HR-QOL の関連 注:カッコ内の数値は重相関係数の平方を表す。 考 察 SOC はストレスへの知覚に強い影響を与え、そのストレス への知覚は HR-QOL に強く影響していた。つまり、SOC はス トレスへの知覚を緩衝し、HR-QOL を維持増進する可能性が 示唆された。 SOC は、ストレスへの知覚を媒介として、HR-QOL に影響す るとともに、直接 HR-QOL に影響していた。しかしながら、 その直接的な影響は、ストレスへの知覚を媒介とした間接的 な影響より弱いと考えられることから、別の要因が媒介要因 として介在する可能性があると考えられる。 また、知覚されたストレスは認知評価によって生じるストレ スであるので、今回の結果から、SOC が一種の認知要因とし てストレスの知覚に影響を与えるととらえることが出来ると 考える。 利益相反開示;発表に関連し、開示すべき利益相反関係にあ る企業などはありません。