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新時代の学校音楽教育

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Academic year: 2021

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(1)共同企画Ⅲ ラウンドテーブル. 新時代の学校音楽教育 企画・司会:齊 藤 忠 彦(信州大学) 話題提供:菅 裕(宮崎大学) 高 見 仁 志(佛教大学) 津 田 正 之(国立音楽大学) 1.企画趣旨. 「私」の有り様について現象学的に考察する「内部. 令和時代の幕開けにあたり,本企画では,昭和,. 観察」だと結論づけた。つまり外側の「正しさ」に. 平成という時代を経て,学校音楽教育で発展してき. 向かういわば「しつけられた」主体的な学びと,可. たことは何か,逆に課題となっていることは何かに. 能性としての自己に向かって価値創造する主体的な. ついて明らかにし,新時代における音楽科教育のあ. 学びの二つがあり,菅会員は,これからの音楽科教. り方を展望したいと考えた。本企画は,話題提供者. 育は後者を目指すべきと主張した。. 3名による提言,参加者からの質疑及び意見等,参. 高見会員は, 「音楽科における教師研究」 (課題①). 加者に協力を依頼してのアンケート調査(その場で. と「学校音楽文化の定着」(課題②)の二点に関し. 実施)の3つの内容で90分を構成した。本稿では,. て課題を提示した。課題①に関しては,音楽科にお. 話題提供とアンケート調査の集計結果の概要を記. いて教師そのものに焦点を当てた研究が少ないこと. し,本企画の報告とする。. や,教師教育を志向した研究が少ないことを指摘し た。併せて,音楽科授業中の教師の実践知を解明し. 2.話題提供. て,教師教育を発展させる必要性を強調した。高見. 菅会員は,我が国における平成の教育を象徴する. 会員のこれまでの研究を基盤として,音楽科教師の. キーワードとして「主体的な学び」に焦点を当て. 実践知モデルを提示し,その抽出方法を紹介し,教. た。我が国の「主体的な学び」は,自己調整学習の. 師の力量形成を目指す提言を試みた。その提言とは,. 概念と関連が深い。この自己調整学習を進める上で. 「児童・生徒と教師の間に即興的相互作用が起きた. 重要となるのが,生徒のメタ認知能力である。菅会. 状況の省察が重要であること」,「児童・生徒の状況. 員ら(2019)は歌唱授業における中学生のメタ認知. だけでなく,授業者自身の教授行為の省察に心がけ. 方略使用状況や有効性の認知の調査を行っている。. ること」,「信念・価値観,特に音楽科授業観が外在. その結果,中学生は「正しく歌うこと」や「真剣に. 化した授業を省察すること」,「授業者自身の気づき. 取り組むこと」を重視し,自律的な学習姿勢や自己. を重要視したメンタリングを行うこと」の4点であ. 評価,あるいは自身の心情への注目度が低いことが. る。課題②に関しては,「音楽科は授業展開につい. 明らかとなった。このことから,中学生が外側にあ. てアドバイスできる教師が少ない教科である」,「で. る正しさを志向し,外形的技能の稼働状態や行動を. きなくてもいいような雰囲気もある」といった新人. 測定する傾向,すなわち実体論的・名詞的身体の主. 教師の報告を基にして,問題を顕在化させた。「音. 題化が行われていると推論した。ここに欠如してい. 楽科の必要性が学校内にどれほど浸透しているの. るのは,歌の「本来性」を実現させる可能性として. か」,「音楽科の存在意義を,音楽を専門としない教. の自己と既在の自己との差異に注目し,歌っている. 育関係者らにどれほど発信してきただろうか」,と. -55-.

(2) 音楽教育学第49−2(2020). いった話題を提供した。また音楽文化を学校に定着. 校音楽教育で課題と感じていることについての記述. させる要因として,①「新しい教育理念の出現」,. 式のアンケートを実施することができた。その結果. ②「校長,音楽専科教員のリーダーシップ」 ,③「先. を次図に示す4)。アンケート回答者は61名であった. 輩の知的財産の活用と人材育成」の3点を指摘し,. が,複数の内容を記述している回答者があり,記述. それに取り組んできた学校の事例を紹介した。. 内容別に分けて整理した回答の延べ件数は121件と. 津田会員は,各種調査等から平成時代の音楽科教. なった。次図に示している割合は,その延べ件数に. 育の成果と課題について総括した。成果については,. 対する割合を示している。課題と感じていることで. 平成時代を経年比較した「好きな教科・活動ランキ. 最も多かったのが,「学習指導要領」(21.0%)に関. ング」から,「音楽が好き」と回答した子供の割合. わる内容であった。本稿では紙面の関係で,アン. が平成2年と平成27年では10%以上向上しているこ. ケートの考察ができないが,また別の機会にと考え. とを示した〔小5の例:57.6%→71.5%(ベネッセ. ている。. 1). 第5回)〕 。この背景として,「新学力観」(平成3 年)を嚆矢とした子供主体の指導観が徐々に定着し. ていったこと,同時に提起された「音楽的な感受」 と,その趣旨を継承した〔共通事項〕ア(平成20年 改訂)の定着が授業改善につながり,子供主体の教 育へと転換してきたことを指摘した。課題について は,次の諸課題を指摘し,その発展的な解消が令和 時代に課せられた課題であることを提起した(抜粋) 。 ①音楽づくりの指導の改善:「音楽をつくることは 好き」と肯定的な児童の回答は約5割,音楽づく りの指導内容について「児童が身に付けやすい」 2). と肯定的な教師の回答は2割以下(国研調査) 。. 主要引用文献 菅裕・藤本いく代・阪本幹子・浦雄一・酒井勇也・. ②授業場面に即した教師の働きかけの充実:「子供. 甲斐真理子・長谷場由久子・穴井瑞紀(2019) 「歌. の工夫した表現や,音楽を聴いて感じ取ったこと. 唱領域における中学生のメタ認知的方略の使用と. 等について,子供の学習の充実に資するよう,適. 有効性認知─小学校・中学校音楽科における『深. 切に価値付けたり具体的にアドバイスをしたりす. い学び』の実現に向けて─」 『宮崎大学教育学部附. 3). ることが十分でない傾向が見られる」 (論点整理) 。. 属教育協働開発センター研究紀要』27,pp. 47-62.. ※本企画に参加していただきアンケートにご協力い. 3.アンケート集計結果より. ただいた皆様に心より御礼を申し上げます。. 本企画に参加していただいた方の協力により,学. 文責:齊藤 忠彦(信州大学). 1)ベネッセ教育総合研究所(2015)「第5回学習基本調査報告書」。 2)国立教育政策研究所「学習指導要領実施状況調査 小学校音楽」(平成24年度)。 3)教育課程企画特別部会教育課程企画特別部会「論点整理」補足資料(3)平成27年8月26日。 4)本企画時に発表した後,結果を再分析した。 -56-.

(3)

参照

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