1 人 工 知 能 35 巻 1 号(2020 年 1 月) 2020年を迎え,自動運転,業務効率化,商品推薦なども高度化し,これまで思い描いていた未来想像図がじわじわ と現実のものとなりつつあります.筆者が大学の学部時代に AI の 1 分野である機械学習の研究室の門をたたいたの は約 20 年前,冬の時代が長くて AI という言葉自体が禁句とまでいわれるほどの時期もあり,連日,新聞・各種メディ アでも AI 関連の話題には事欠かないことに大変驚いています.シンギュラリティの議論などもあって,AI はすっか り身近な存在となっており,いわば, みんなの AI となりつつあります.一方で,AI に雇用を奪われるのではない か,といった不安や,AI が暴走するのではないかといったリスクについても多く語られるようになりました.このよ うな背景の中,筆者は現在,本学会総務理事を担当させていただき 2 年目になりますが,さまざまな方との議論の中で, (1)実社会において AI をどう 手なずける か,(2)初学者や他分野の方にいかに興味や関心をもって AI 分野に入っ ていただくか,(3)次世代の AI 技術の創出を担う子供達にいかにしてアウトリーチしていくか,の 3 点が切実な課 題であることを身に染みて再認識しています. AIを手なずけるには,AI をどのように訓練・学習・強化させていくか,AI に法整備や倫理観といった人間社会の 掟 おきて をいかに守らせるかがますます重要になってくると思います.各種 AI のもつ得意・不得意の両面を良く知ること も肝要です.AI にもさまざまな種別があり,それぞれの利用上の制約や技術的な限界とこれからの発展可能性,適用 先の技術面やコスト面とのすり合わせも大事な側面です.特に,日本では,少子高齢,人口減少のトレンドにおいて, 今後,仕事や日常生活で,AI を良きパートナーにするスキルが求められていくでしょう.情報リテラシー,データリ テラシーに続く,AI リテラシーなる教養が,一般の方にも求められてくるように思います. また,本学会では,初学者や他分野の方々が AI 分野に入りやすいように,堤 富士雄理事をリーダーとして AI マッ プタスクフォースを立ち上げ,学会ホームページにて AI 技術の俯瞰図を作成・公開しています.さまざまな発展を 遂げてきた AI 分野の技術を四つの観点から作成した AI マップβ版は,まだまだ改良の余地がありますが,おかげさ まで,2019 年度の全国大会にて大変ご好評いただきました.他分野との融合が AI 分野で進んでいることを考えると, これまでの AI の歩みと,これまで数十年にわたり培ってきたさまざまな AI 技術を俯瞰しマップに収めることが真に 求められていることを痛感しました.筆者が作成に関わった,基礎∼手法∼応用の技術分野を俯瞰的に示したマップ Cは,初学者の方が何をキーワードに勉強を進めていけばよいかのヒントになるだけでなく,既知の AI 技術では対 処しきれない場合に,実務者が,応用から基礎に向かって周辺や根っこにどのような AI 技術があるかを れるよう になっており,コスト低減や新価値創造の実現に向けて,新たな AI 技術を生み出すヒントを得るためにもご活用い ただけるのではと考えています. 子供達がすでにディジタルネイティブであることを考えると,AI との付き合い方については,幼少期から学ぶ必要 があるかもしれません.本学会では,アウトリーチの活動の一環として,編集委員長の市瀬龍太郎理事が主導する連 載「教養知識としての AI」という漫画を連載しておりますが,これにとどまらず,大学の一般教育はもちろん,高校・ 中学・小学校,幼稚園に至るまで,AI を人間社会のより良いパートナーにするための AI ネイティブの育成に向けた 教育プログラムが必要かもしれません.今後,学会としても,各機関ともぜひ連携しながら,人間社会における協働パー トナーとしての AI について議論を深め,提言などに結び付けていければと考えております. 2020年は,東京オリンピック・パラリンピックの開催のみならず,人工知能分野では,国際人工知能会議 IJCAI-PRICAI 2020が横浜にて開催される予定であり,立て続けに日本が世界から注目を浴びています.課題先進国である 日本が最初のグッド AI パートナー推進国となるべく,学会としてもさまざまな角度から貢献できればと考えており ます.ぜひ,今後とも,学会活動へのご理解・ご協力のほど,どうぞよろしくお願いいたします.
巻頭言「みんなのAI:より良きパートナーとなるために~AI for Everyone~」
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