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中国と米国の企業観について : 思想的思索

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Academic year: 2021

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中国と米国の企業観について : 思想的思索

著者

桑原 秀史

雑誌名

エコノフォーラム21 : 学生と教職員のインターコ

ミュニケーション誌

23

ページ

37-37

発行年

2017-03-16

URL

http://hdl.handle.net/10236/00026285

(2)

Econo Forum 21/ No.23 37   日本は中国と米国とのあいだに、 古典を共有した思想と竜攘虎搏の歴 史をもっている。目の前にある現象 だけに幻惑されて、文化や経済や外 交関係の奥行きをさぐる努力を怠っ てはいけない。今回は中国と米国の 企業観について平明に思索したい。   中国の近代産業は国有企業ととも に産声をあげる。その素地は、すで に 1 66 1 年成立の清王朝期の文化 的な深さに求められる。 ﹃康煕事典﹄ や﹃四庫全書﹄にみられるように、 康煕・雍正・乾隆三代は、今日の学 芸や産業の基盤に資する多くの遺産 を残している。時代は折しも欧州産 業革命期、乾隆帝は英国使節団に対 し中華思想で望み、列強は武力によ る開国要求をなす。 1 8 4 0 年、第 一次アヘン戦争によって侵略は本格 化 す る。 ﹃ 原 道 救 世 訓 ﹄ を 著 し た 洪 秀全が太平天国の乱をおこす。天朝 田 畝 制 度 を 公 布、 ﹁ 三 綱 五 常 ﹂ を 厳 しく批判し、世界大同を目指す。こ の 原の火のごとく広がりに鎮圧を はかったのが曾国藩・李鴻章らで あ る 。この清朝政府の官僚であった曾 国藩・李鴻章らによって 1 860 年 代から始められた洋務運動は、国有 企業の設立を目的達成の政策手段と したのである。この思想は、一方で 欧 米 の 西 洋 科 学 の 吸 収 を 目 指 し つ つ、他方で、曾国藩の﹃曾文正公全 集﹄や康有為の﹃春秋薫氏学﹄にみ られるように、桐城派を継承し、護 教的な朱子学の立場をつらぬいてい る。わたしは北京大学やハーバード 大学の研究所で当全集などを勉学す るうちに、中国の士大夫の教養の根 幹である﹃詩経﹄のゆるぎない思想 が、脈々と流れていることに感銘を 受 け た。 政 治 運 動 に 徹 す る と き に も、 ﹁詩に興り、 礼に立ち、 楽に成る﹂ の姿勢であろうか。さらに李鴻章は 直隷総督兼北洋大臣となり、 2年間 清の外交を担当する。中国の近代工 場を建設し、艦隊を編成、江南機器 製造総局などを設立し、近代産業育 成政策の契機を固めていく。   この動きに対し﹁中体﹂から改革 をうながすものが康有為、梁啓超を 主 導者とする変法自強派である。康 有 為は前漢の今文学派の説を奉じ、 ﹁ 平 等 ﹂・ 民 権 思 想 を 孔 子 の 理 想 と してとらえる。中国の専制体制はフ ランスなど西洋にくらべてはるかに 温和であり、社会は本質的により平 等であると考えている。梁啓超はル ソーの民約論をひきながら、欧米諸 国の ﹁帝国性﹂ を強く警醒している。 この﹁大同﹂の流れをくみ、光緒帝 のとき政務に参画した譚嗣同は、 ﹃仁 学﹄のなかで礼にもとづく自己抑制 と他者への思いやりを、儒家道徳思 想の中心にすえる。気持を同じくす る龔自珍は﹃己亥雑詩﹄のなかで、 鋭敏な感覚で大変革の到来をうたっ ている。 ﹁九州の生気   風雷を恃み   万馬   斉しくおしだまり   ついに哀れむべ し。   我れ天公に勧む   重ねて抖擻 し て  一 格 に 拘 ら ず  人 材 を 降 せ と。 ﹂   変法体制は百日維新で終わるが、 康有為の変法運動は歴史の流れのな かで一定の進歩的な意味をもってい る。 ﹁ 官 督 商 弁 企 業 ﹂ な ど 知 る と、 もとより清朝政府に は国有企業を民 間 主導の資本主義の起爆剤とする意 図はなく、むしろ近代工業樹立の政 策目標を実現する手段でととらえて いたと思われる。   ここでの企業観は慧遠の思想に通 じ る。 ﹁ 子 夏 曰 く  君 子 信 ぜ ら れ て 而して後に其の民を労す。未だ信ぜ られざれ ば  則と以って己をやまし むと為す。信ぜられて而して後に諫 む。未だ信ぜられざれ ば  則ち以っ て己を謗ると為す。 ﹂   以上のように、郷鎮企業の発展や 放権譲利の改革など、その真意を検 討するとき、中国の企業観には、米 国とは異なる、 ふかく ﹃仁学﹄ と ﹁和 諧社会﹂の思想が根ざしていること を覚えておきたい。 ■

2016

6

月22

水曜日

参照

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