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https://dspace.jaist.ac.jp/ Title 文理連携プロジェクトの推進に向けた大学内マネジメ ントのあり方 Author(s) 丸山, 浩平; 一之瀬, 貴; 伴内, 孝倫; 小林, 直人; 石山, 敦士 Citation 年次学術大会講演要旨集, 26: 651-654 Issue Date 2011-10-15 Type Conference Paper Text version publisherURL http://hdl.handle.net/10119/10203
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文理連携プロジェクトの推進に向けた
大学内マネジメントのあり方
○丸山 浩平, 一之瀬 貴, 伴内 孝倫, 小林 直人, 石山 敦士(早稲田大学) 1.はじめに 近年、日本のアカデミックな科学技術の研究は、諸外国と比べ、グローバル規模の社会的課題解決な どの面でインパクトを与えている状況にあるとはいえず、これまで以上に異分野の研究者による役割連 携が必要とされている。特に現在の科学は、物理学、化学、生物学などのように領域を分割し、真理を 追究することで現象の背後にある共通原理や知識を蓄積してきた。このような知識は、これまでの工業 製品の開発等に対して大きく貢献し、社会に豊かさをもたらしてきた。しかし、成熟する現代社会の多 様な期待に応えようとする場合、領域毎の個別の知識だけでは解決できないことが指摘されている。例 えば、地球環境問題などは、未来に起こりうる現象を予想することで、我々が今やらなければならない 課題を抽出し、さらに解決策までを考案しなければならない。しかし、政治、経済、法律、教育、科学 技術など多くの要素が複雑に関係する社会の中で、どのような手を打つことが有効であるのか、その全 体像を捉えることは難しい。ここは、領域に分割された異分野の科学知識をいかに統合し社会的期待に 貢献できるかを導くことが求められている。このような状況から 2011 年度からスタートした第 4 期科 学技術基本計画では、科学技術政策の課題設定・解決型への転換が謳われており、単なる科学技術の振 興のみならず、社会的な課題・期待に応じた研究開発戦略が図られている。異分野の連携には、芸術や 文学、法学、経営学などの人文社会科学系も、自然科学系と補完しあう存在として重要であり、文理連 携プロジェクトの推進は重要である。過去から文理連携の仕組みについての議論がなされてきているも のの、わが国では目立った成果が得られていない状況にあると言える[1]。 我々はこれまで、早稲田大学の研究者1を対象として、理系、文系研究者の研究環境、意識の違いを分 析し、基本的な研究活動に対する姿勢の違いを明らかにしてきている[1]。基礎研究志向が強く、基本的 には個人で研究を実施するため、研究時間の捻出に苦慮する文系研究者と、応用、開発研究を志向し、 連携研究を柱とするため、ポスドク・助手等の研究人材の不足を感じている理系研究者が文理連携プロ ジェクトを進めるためには、両分野の研究スタイルに沿ったインセンティブを与えることなどのマネジ メントが肝要であることを示した。また、文理が連携して取り組む研究課題の性格ごとに分類すること が極めて大切であることを強調し、その研究分類に合致したマネジメントを行うことの重要性を指摘し た。 本稿では、科学技術政策の課題設定・解決型への転換に関連した文理連携研究に関して、研究者の意 識・実態をより深く調査し、その連携研究の推進におけるマネジメントのあり方、さらに、文理連携の 研究開発が行われる際、その課題に対する研究評価のあり方についても考察する。 2.アンケート調査による研究者意識の分析 2.1 分析手法 アンケート調査は、「早稲田大学 研究活動に関する意識・実態調査 2010」として行ったものであり、 476 名からの回答を得ている。今回、特に文理連携研究に関する質問群を定め、意識・実態について調 査した2。この結果について、文系(244 名)、理系(232 名)の研究者ごとにクロス集計を行うことで、 文系研究者と理系研究者の意識の差を分析することとした。なお、文系と理系研究者の分類は、回答さ れた「現在の主たる研究分野」をもとに決定3している。 1 調査対象の早稲田大学は、10 の学術院(政治経済、法学、文学、教育・総合科学、商学、理工、社会科学総合、人間 科学、スポーツ科学、国際)と、各分野を横断した研究テーマを推進する研究機構等から構成される私立総合大学。所属 する約2,000 名の研究者の半数以上が文系研究者であり、文理連携プロジェクトを学内連携で推進できる大学の一つ。 2 「新たな文理連携研究を実施したいと思いますか」、「それはどうしてですか」、「どのような分野との文理連携研究を行 いたいですか」、「学内の研究者との文理連携研究を行いたいですか」「文理連携研究を推進する上で必要な支援は何です か」「ご自身が研究リーダーとして文理連携研究の構想を提案することが出来ますか」2.2 調査結果と考察 過去から現在において、文理連携研究 の実績について調査したところ、実績の ある研究者は全体の 12.8%と少なく、文系、 理系でも大きな差はなかった(図1)。一 方、文理連携研究の実施意欲については、 全体の 64.8%が実施したいと答えており (図2)、文理連携研究を実施したいのに 出来ないという現状が伺えた。その文理 連携研究を実施したい理由は、上位から 「 文 理 連 携 し な い と 解 決 で き な い 」 (62.0%)、「自分の分野に新たな概念を提 唱できる」(58.1%)、「成果の社会還元の 機会が増える」(41.9%)と続いていた(図 3)。また、リーダーとして文理連携研究 の構想が可能かどうかを聞いたところ、 文理連携研究を実施したい研究者の半数 は自分では構想ができないと答えていた (図4)。リードしてくれる者がいれば、 ぜひ協力したいというスタンスであるこ とが示唆された。最後に、文理連携研究 の実施に必要な大学からの研究支援とし ては、上位から「連携研究を行う時間確 保」(50.3%)、「契約や資金受入れ手続き 等の雑務支援」(42.5%)、「交流会など連 携先を見つける場と機会の提供」(41.2%) と続いた(図5)。 3.マネジメント手法に対する考察 これまでの研究において、文理連携研 究プロジェクトとは言っても一つに括る のではなく、その研究課題の性格ごとに 分類することが必要であり、我々は図6 に示すマトリクス4類型を提案している。 すなわち、縦軸には、その文理連携プロ ジェクトを牽引する研究リーダーの資質 を、文理連携人材、およびスペシャリス ト人材の混合に分けて示した。横軸には、 連携をスタートさせる際のビジョンや考 え方について、課題解決型と価値創造型 とに分けて示した。この4類型を、(1) 目標共有型、(2)文理一体型、(3)文 理協力型、(4)文理共存型としている。 また、図7には、その研究分類に応じて 必要となる事前・実施中におけるマネジ メント要素を示している。 実績あり 11.5% 実績なし 88.5% 文系 回答者244人 文理連携 実績あり 14.2% 実績なし 85.8% 理系 回答者232人 文理連携 図1 文理連携研究の実績 実施した い 62.7% 実施した くない 37.3% 文系 回答者244人 文理連携 実施した い 66.8% 実施した くない 33.2% 理系 回答者232人 文理連携 図2 文理連携研究の実施意欲 62.1 61.4 40.5 38.6 22.9 15.7 3.9 5.2 3.3 文理で連携しないと解決できない 自分の分野に新概念を提唱できる 成果を社会還元できる機会が増 社会的なニーズの把握ができる 自分のスキルアップに繋がる 公的資金の獲得機会が増 研究業績として評価される 連携先の機器、図書等を利用できる その他 文系 [%] 文理連携を実施したい と回答153人 のべ回答数388 (回答は3つまで) 61.9 54.8 43.2 37.4 23.2 12.9 7.1 3.2 5.2 理系 [%] 文理連携を実施したい と回答155人 のべ回答数386 (回答は3つまで) 図3 文理連携研究を実施したい理由 構想でき る 49.0% 構想でき ない 51.0% 文系 文理連携を実施したい と回答153人 文理連携の構想提案 構想でき る 47.7% 構想でき ない 52.3% 理系 文理連携を実施したい と回答155人 文理連携の構想提案 図4 文理連携研究の構想提案 48.4 45.8 45.8 37.3 39.2 35.3 25.5 24.8 9.2 3.3 連携研究を行う時間確保 契約や資金の受入手続きなど雑務 交流会など連携先を見つける場と機会 研究者へのインセンティブ付与 連携研究の資金獲得 連携研究スペースなどの拡充 メンター、コーディネーター支援 課題、政策、研究動向などの分析 トラブル防止のルール設定 その他 文系 [%] 文理連携を実施したい と回答153人 のべ回答数481 (回答は3つまで) 52.3 39.4 36.8 44.5 35.5 31.6 29.0 25.2 13.5 5.2 理系 [%] 文理連携を実施したい と回答155人 のべ回答数485 (回答は3つまで) 図5 文理連携研究の実施に必要な支援
図6の(4)文理共存型のマネジメントとして、価値を押し上げる「評価システム」を課題として挙 げている。文理連携プロジェクトへの政策的な取組みが、これまで目立っては進められてこなかった背 景には、研究評価の問題、いわゆる文理連携研究に対するビジョン、期待、価値、可能性などの議論が、 共有されてこなかったことと無縁ではない。実際、文理連携プロジェクトというディシプリンを越えた 評価についての先行研究は、非常に少ない状況である。 その中でも、馬場ら[2]は 2003 年の研究・技術計画学会にて、「文理融合研究に対する評価は可能か、 そして可能とすればどのような評価手法が用いられるべきか」について考察している。また「文理融合 研究を内包した高等研究教育機関で研究評価を行う場合、文系分野、理系分野、文理融合分野などの評 価結果の比較は可能か」などの問題意識に基づき、実際に文理連携を推進している研究者への聞き取り 調査を行っている。結果的に「文理融合研究は他分野との比較が困難であるだけでなく、評価そのもの が困難」とまとめている。このように文理連携研究は、科学技術政策の重要な方向性であるにも関わら ず、その評価に関する議論があまり進んでいない。 今回のアンケート結果における研究評価に対する研究者の意識を見てみる。過去からの文理連携研究 の実績は、約8人に1人の割合と少ないながらも存在する。この実績を持つ研究者のうち、さらに新た な文理連携研究を実施したいと回答した研究者は 88.5%であり、過去に実績のない研究者のそれ (61.2%)と比べると、実績を積むことで更なる研究者ニーズは高まり、実施の満足度も高いことが伺 える(図7)。また、文理連携研究を実施したい理由として、「研究業績として評価される」からという 回答は非常に少なく(5.5%)、研究者にと って外部からの評価よりも、「文理連携し ないと解決できない課題がある」という本 質的なモチベーションを重視しているこ とが伺える。今後、文理連携研究を行う研 究者の評価の仕組みを確立していく努力 は継続しつつも、研究者全体の6割以上が 希望する文理連携研究に対する大学内マ ネジメント・支援のあり方、さらには我が 国の科学技術政策における文理連携研究 の戦略的な推進を充実させることが求め られる。 (1)目標共有型 ・もともと文理一体となって大きな社会的 課題の解決へと向かい続けている。 応用脳科学など (2)文理一体型 ・もともと文理一体となった分野・人材に よる新たな価値創造へと向かっている。 表現科学など (3)文理協力型 ・将来にリスクが大きくなる社会的課題に 対して、先鋭化した文理がお互いの足り ない所を補足して協力を進める。 サステナビリティなど (4)文理共存型 ・個人的な繋がりから、全く連携のなかっ た文理分野の共存が始まり、新たな価値 創造へと向かっている。 バイオ・アートなど スペシャリスト人材(混在) 文理融合人材 課題解決型 価値創造型 共通の要件 「研究資金」 ◇有効な 「実験設備・計測機器」 ◆共通の 「データベース」 ◇強力に推進する 「研究リーダー」 ◆トラブルを避ける 「ルール」 ◇異分野トピックスを知る 「交流会」 ◆「研究コーディネーター」 ◇「研究者の素養(好奇心など)」 ◆価値を押し上げる 「評価システム」 ◇事前 ◆実施中 図6 文理連携研究プロジェクトの類型と必要なマネジメント 64.7% 88.5% 61.2% 35.3% 11.5% 38.8% 0% 50% 100% 全体(n=476) 実績あり(n=61) 実績なし(n=415) 実施したい 実施したくない 図7 文理連携研究の実績と希望
4.今後の検討について 文理連携研究プロジェクトの具体的なフィージビリティを実施することで、類型ごとに必要となる研 究環境(人、物、金、情報など)を含めたマネジメント要素を精査していく。これらの検討結果を通し て、大学という研究現場レベルにおける文理連携研究プロジェクトの推進と、そのマネジメント手法に ついて提言をしていく。 参考文献 [1] 丸山、一之瀬、小林、中島:文理融合プロジェクトの推進に向けた研究者の意識~アンケート調査 に基づく分析~, 研究・技術計画学会 第25回年次学術大会予稿集, pp199-202, 2010.10.09 [2] 馬場、小林:高等研究教育機関における学際領域研究者の研究評価に関する一考察(独立行政法人 化), 研究・技術計画学会 第18回年次学術大会予稿集, pp75-78, 2003.11.07 [3] 小林、中村、大井:研究戦略形成とそれに基いた構成的研究評価モデル, 研究・技術計画学会 第 24回年次学術大会予稿集, pp537-540, 2009.10.24