氏 名 池田 直子 博士の専攻分野の名称 博 士 ( 看護学 ) 学 位 記 番 号 医工博甲 第 276 号 学 位 授 与 年 月 日 平成26年3月20日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当 専 攻 名 ヒューマンヘルスケア学専攻 学 位 論 文 題 名 認定看護管理者教育課程受講者の専門的能力育成のための教育 課程展開と課題
(The problem of the educational method for the encouragement of nurse’s professional competence by Certified Nurse
Administrator course) 論 文 審 査 委 員 委員長 教 授 相原 正男 委 員 教 授 中村 美知子 委 員 教 授 水野 恵理子 委 員 教 授 中本 和典 委 員 教 授 小林 哲郎
学位論文内容の要旨
(目的) 認定看護管理者教育課程受講者の教育課程受講による専門的能力(専門家気質・専門的実践力)の変化 を分析し,受講者の専門的能力育成のための教育課程展開と課題を提言する。 (方法) 《予備調査》3 回の調査を通して,32 名を対象として行った結果,専門家気質 25 項目(Cronbach’sα =0.700),専門的実践力 52 項目(Cronbach’sα=0.960)を用いることとした。《本調査》1. 受講者の教 育課程開始時から終了時の専門的能力(専門家気質・専門的実践力)の変化:受講者 27 名と非受講者 43 名を対象に,教育課程開始時(以下Ⅰ期),終了時(以下Ⅱ期)の 2 期に渡り,専門的能力調査票を用いて 調査を行った。2. 受講者の教育課程開始時から終了後 3 ヶ月時の専門的能力の変化:受講者 17 名を 対象に,教育課程開始時(以下Ⅰ期),終了時(以下Ⅱ期),終了後 3 ヶ月時(以下Ⅲ期)の 3 期に渡り,専門的 能力調査票を用いて,縦断的調査を行った。 (データ分析) 1. 受講者の教育課程開始時から終了時の専門的能力(専門家気質・専門的実践力)の変化:基本属性は 記述統計,受講者群,非受講者群のⅠ期からⅡ期の専門家気質・専門的実践力を比較するために Wilcoxon の符号付順位検定を用いた。2. 受講者の教育課程開始時から終了後 3 ヶ月時の専門的能力(専門家気質・専門的実践力)の変化: 基本属性は記述統計,受講者群のⅠ期からⅢ期の専門家気質・専 門的実践力の変化をみるために,Wilcoxon の符号付順位検定(Bonferroni 法による多重比較)を用いた。 専門家気質と専門的実践力の関係をみるために,Spearman の順位相関係数を用いた。 (結果・考察) 1.受講者の教育課程開始時から終了時の専門的能力(専門家気質・専門的実践力)の変化:専門家気質は 両群ともⅠ期からⅡ期には有意に変化せず,専門的実践力は受講者群がⅡ期に有意に高値を示したの は,「自分の実践に責任を持つことができる」(MeⅠ期 4.0,Ⅱ期 4.0,p<0.01)他 29 項目であった。非受 講者群のみ有意な高値を示したのは,「実際の知識と的確な判断力を活かして判断を下すことができ る」(MeⅠ期 3.0,Ⅱ期 3.0,p<0.05)であった。2. 受講者の教育課程開始時から終了後 3 ヶ月時の専門 的能力の変化:専門家気質はⅠ期からⅢ期にかけて有意な変化はなく,専門的実践力は「対立している ことを建設的な方法で解消できる」他 7 項目でⅡ期およびⅢ期に有意に高値であったことから,受講 による影響を示す結果であった。低値で有意な変化がみられなかったのは,「ヘルスケア体制に関す る最新情報を把握できる」(MeⅠ期 3.0,Ⅱ期 3.0,Ⅲ期 3.0)であり,研修中から自己の問題意識,現状の 問題を改善するために必要な情報量と情報の質の選択力等を育成するための,主体的な学習方法を身 につける機会を増やすことが必要であると考える。 (結論) 教育課程開始時から終了後3 ヶ月時に回答の得られた認定看護管理者教育課程受講者 17 名を対象に 教育課程受講による専門的能力(専門家気質・専門的実践力)の変化を分析し,受講者の専門的能力育成 のための教育課程展開と課題を検討した。専門家気質は,受講による有意な変化はなかった。専門的 実践力の「自分の実践に責任を持つことができる」 などは受講後有意に変化したが,「ヘルスケア体 制に関する最新情報を把握できる」は低値で有意な変化はなかった。今後,教育課程展開,評価方法の 見直しと検討を行っていくこと,全国の教育課程実施機関に向けて,教育課程の展開,評価方法につい て提言していくことが課題である。
論文審査結果の要旨
1)本論文の学術的意義 医療の急激な変化に伴い国民の医療従事者に対するニーズは高度化、多様化して、医療に対する質 の確保が重要視されてきている。看護職においても高い専門的能力、社会的使命感、自尊心を持った 実践が求められてきている。そのような社会的背景から、認定看護管理者制度が発足し20 年以上経 過しているが、その教育課程の評価と教育展開に関する量的研究に関する報告はきわめて乏しい。本 研究成果は、認定看護管理者制度教育課程受講者の専門的能力育成評価と改善に学術的根拠を与える ものと考えられる。 2)本論文の問題点と新たな視点 本論文における専門的能力の評価軸は、専門的実践力と専門家気質の 2 軸である。受講後の専門 的実践力の変化においては、「自分の実践に責任を持つことができる」他29 項目、「対立しているこ とを建設的な方法で解消できる」他7 項目であった。低値で有意な変化がみられなかったのは「ヘル スケア体制に関する最新情報を把握できる」であった。研修中から自己の問題意識、現状の問題を改善するために必要な情報量と情報の質の選択力等を育成するための主体的な学習方法を身につける 機会を増やすことが必要であると結論付けられた。一方、専門家気質はⅠ期から II 期、Ⅲ期にかけ て有意な変化はなかった。気質という生得的な要素を短期間において評価項目としていたことが原因 と考えられる。今後、評価期間に応じた項目設定を期待したい。
3)データの信頼性
専門家 気質測 定尺度(Hall’s Professionalism Scale)、専門的実践力測定尺度(Competency Inventory Registered Nurses)を十分な信頼性をもって運用し、統計処理も妥当である。
4)本論文の改善点
認定看護管理者教育課程において受講者が実践能力を高めるために、今後自己啓発力を含めた自己 評価や他者からの評価の項目も加えていくことが必要である。