Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
疑似口腔内環境下での硫化物濃度がチタンの腐食挙動に
及ぼす影響
Author(s)
原田, 麗乃; 染屋, 智子; 田中, 健介; 木下, 英明; 武
本, 真治; 河田, 英司
Journal
歯科学報, 116(3): 243-243
URL
http://hdl.handle.net/10130/4034
Right
目的:これまで硫化物がチタンの変色を誘引する可 能性が報告されてきているが,その詳細に関しては 不明な点が多い。そこで本研究ではチタンの腐食に 及ぼす硫化物の影響を明らかにすることを目的とし て,硫化物濃度および pH を変化させた溶液中での チタンの腐食挙動を調べると共に,その腐食機構に ついて検討した。 方法:ISO10271を基準として3種類の硫化物濃度 (0.0124,0.05,0.10mol/L)の硫化ナトリウム水 溶液を準備した。それぞれの水溶液には pH を調整 してないもの(11.6−12.3)をアルカリ性溶液,pH を塩酸で7.5に調整したものを中性溶液とした。こ れらの溶液に鏡面研磨したチタン試料を浸漬し,37 ℃に保持した恒温槽中で1,3,7日間静置した。 種々の期間経過後,各溶液から試料を取り出し,試 料の色調の変化(色差)および光沢度を測定すると ともに,走査型電子顕微鏡(SEM)で表面の観察 を行った。一方で,浸漬後の溶液は高周波誘導結合 プラズマ発光分光分析(ICP-OES)を用いてチタン の溶出量を測定した。また,一部の試料では X 線 回折装置(XRD)および X 線光電子分光分析装置 (XPS)を用いて表面分析を行い,硫化物溶液中で のチタンの表面反応について調べた。 結果および考察:アルカリ性溶液に浸漬した試料 は,いずれの硫化物濃度であっても浸漬時間が長く なるにしたがって,色差が増加,つまり変色し,光 沢度の低下も認められた。一方で,中性溶液に浸漬 した試料は,いずれの硫化物濃度であっても変色お よび光沢度の低下は認められなかった。中性溶液中 にはチタンの溶出は認められなかったが,アルカリ 性溶液中には僅かにチタンが溶出していた。変色が 認められた試料にはサンゴ様構造が観察されたが, XRD 分析では試料の基板(チタン)以外のピーク は認められなかった。このことから変色は新規の結 晶性の腐食生成物によるものではないと考えられ る。XPS 分析において,試料表面に硫黄は検出さ れなかったが,硫化物濃度が高いほど,また,浸漬 期間が長いほどチタンの酸化が進行し酸化膜の厚み が増加していた。これらのことから,硫化物含有ア ルカリ性溶液中でチタンは硫化物溶液の濃度と pH に影響され,チタン表面は酸化により変色すること が明らかになった。