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日英語アスペクトに関する一考察

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(1)

日英語アスペクトに関する一考察

A study on Aspect:An English −Japanese Contrast

大 里

Yasuhiro Osato

泰 弘

長崎ウエスレヤン大学現代社会学部紀要

10巻1号

Bulletin of Faculty of Contemporary Social Studies

Nagasaki Wesleyan University

(2)

Abstract This paper attempts to give a description of the controversial Japanese aspectual form

te-iru in comparison with the assumed English counterpart, the progressive form(Be+Verb-ing).Comrie (1976)defi nes "Aspect" in typological terms, which infl uences the author to take a new stand on the analysis of the long-discussed enigma: the conditions under which the te-iru form takes different meanings. Rather than getting deeper into the classifi cation of verbs, the author aims to focus on the methodology of verb classifi cation. Namely, the way in which the verbs are respectively categorized in English and Japanese.

キーワード:類型(論)、アスペクト、進行(形、相)、動詞分類、結果相 1.序  動詞が表す動作過程のありようをどのようにとらえるかという意味論的範疇をアスペクトという。本稿 では、日本語のテイル形式を取り上げ、類型論的観点から英語における進行形を表すアスペクト形式(V +ing)の用法との比較対照を試みる。進行相をあらわす形式と意味の対応が両言語においてどのように同 じでありどのように異なっているかを記述する。それは、言い換えれば、 ԅȁȁȁȁȁ!Ԇȁȁȁȁȁ!ԇ ܳ൲௖ȁȁȁ!ૺ࣐௖ȁȁȁ!ਞࠫ௖ 図1 という意味的側面がそれぞれの言語においてどのような表現として実現され用いられているかを調べるこ とである。  アスペクトは発話時との関連において時間軸(あるいは空間軸)をとらえるものではないという意味で、 コソアドやワレ・ナンジと同じく直示性を有するテンス(現在・過去・未来)とは異なる意味範疇をなし ている。すなわち、図1の図式は汎時間的に(現在・過去・未来に関係なく)時間軸上に布置される性格 を有する。  Comrie(1976)はそのような汎時間的なPerfective(完了相)/ Imperfective(未完了相)という対立 を一義的アスペクトと定義する。図2のProgressiveをあらわす表現形式が本稿での主たる対象となる。

Classification of aspectual oppositions Perfective Imperfective

Habitual Continuous

Nonprogressive Progressive 図2

* Received January 30,2012

** 長崎ウエスレヤン大学 現代社会学部 外国語学科、Faculty of Contemporary Social Studies,Nagasaki

Wesleyan University,1212 1 Nishieida,Isahaya,Nagasaki 854 0082,Japan

日英語アスペクトに関する一考察

*

大 里 泰 弘 **

A study on Aspect:An English - Japanese Contrast

(3)

日英語アスペクトに関する一考察

2.先行研究

 先行研究における進行形(Progressive)の取り扱いをまず概観する。進行相(Progressive)というア スペクトを基準にして動詞分類が行われてきたことがわかる。

2.1 Qu i r k and G reen bau m(1973)

 ‘I --- with a special pen'という言語文脈を取り挙げ、Tense(Present, Past)との関連においてAspect を取り扱っている(3.27 Tense and aspect)。

SIMPLE COMPLEX

progressive

present write am writing present

was writing past perfective present

have written (present)perfect past wrote had written past(or plu-)perfect

perfect progressive

have been writing (present)perfect

had been writing past(or plu-)perfect

 さらに、Quirk and GreenbaumはV+ing形式が可能な動詞をDynamic Verbs(動態動詞)、V+ing形式 が不可能な動詞をStative Verbs(状態動詞)としたうえで、Dynamic Verbsの下位分類をおこなっている (3.35 Verbal meaning and the progressive)。

DYNAMIC

(1)Activity verbs

abandon, ask, beg, call, drink, eat, help, learn, listen, look at, play, rain, read, say, slice, throw, whisper, work, write, etc.

(2)Process verbs: change, deteriorate, grow, mature, slow down, widen, etc.

Both activity and process verbs are frequently used in progressive aspect to indicate incomplete events in progress.

(3)Verbs of bodily sensation(ache, feel, hurt, itch, etc)can have either simple or progressive aspect with little difference in meaning.

(4)Transitional event verbs(arrive, die, fall, land, leave, lose, etc)occur in the progressive but with a change of meaning compared with simple aspect. The progressive implies inception, ie only the approach to the transition.

(5)Momentary verbs (hit, jump, kick, knock, nod, tap etc) have little duration, and thus the progressive aspect powerfully suggests repetition.

2.1.2 Vend ler(1967)

 「時を表す副詞句との共起可能性テスト」を基準として次のように動詞を分類する。 (1)States For how long did you love her? -- For three years.

How long did you believe in the stork? – Till I was seven. 進行形をとらない1)

(4)

(2)Activities How long did you walk?

Fred walked for /* in two minutes.

進行形は動作が進行中であることを表す。起動相が完了したことを含意する is walking-> has already started to walk

(3)Accomplishments How long did it take to write the letter? Fred painted a picture for / in two minutes.

(1)Activitiesと(3)Achievementの両形態で用いられる (1)is wrting the letter -> has already started to write the letter (3)is wrting the letter -> has not yet started to write the letter (4)Achievements How long did it take to fi nd the answer?

Fred won a race* for / in two minutes.

進行形は終結相への接近を表し、起動相が完了したことを含意しない is winning a race -> has not yet won a race

 Quirk and Greenbaumの(1)Activity verbs、(2)Process verbsおよび(4)Transitional event verbsはそれぞれVendlerの(1)Activities、(2)Accomplishmentsおよび(3)Achievementsに相当 する。

  動 作 性 動 詞(Activity verbs, Activities) の 進 行 形 は 図 1 の 進 行 相 < Ⅱ > に 言 及 し、 瞬 間 性 動 詞 (Transitional event verbs、Achievements)の進行形は終結相<Ⅲ>(への接近)に言及するという特徴 を有する。変化性動詞(Process verbs、Accomplishments)は文脈により進行相<Ⅱ>あるいは終結相 <Ⅲ>(への接近)を表す。 2.2 金田一(1954)  テイル形式での用法を基準に類型化を試みている。 (Ⅰ)第一種動詞 状態動詞 テイルがつかない ex「ある」「いる」「できる(可能)」 第二種動詞 継続動詞 テイルがついた場合、動作が進行中であることを表す。「読む」「書く」「笑 う」「泣く」「しゃべる」「歌う」「見る」「聞く」「食べる」「飲む」「歩く」「走る」「泳 ぐ」「勉強する」「工夫する」など 第三種動詞 瞬間動詞 テイルがついた場合、動作・作用が終わってその結果が残存していること を表す。「死ぬ」「(電燈が)点く」「消える」「触る」「届く」「決まる」「結婚する」「卒 業する」「入学する」「知る」など 第四種動詞 テイルがついた形でのみ用いられ、状態を表す。「そびえる」「すぐれる」「おもだつ」 「ずばぬける」「ありふれる」「にやける」「ばかげる」など。  金田一の分類の状態動詞、継続動詞、瞬間動詞はVendlerのStative、Activity、Acheivementにそれぞ れ対応すると考えられる。  進行形を表すアスペクト形式との共起を見ると、日本語の継続動詞と英語のActivitiesは「進行中」 (<Ⅱ>指示)を表す典型用法としての対応を示していることが分かる。ところが、日本語瞬間動詞と英語 Achievementsは進行アスペクト形式をとるという点は共通であるが、その意味解釈は大きく異なる。日本 語瞬間動詞のテイル形は動作・作用の終結相が完了したこと(結果相)を表すが、英語のAchievementsの V+ing形は終結相あるいは起動相への接近を表している。(文法書では「V+ing形で未来の予定を表す」 と記される。)

(5)

日英語アスペクトに関する一考察 3.テイル形の解釈  藤井(1976)は「動詞そのものの意味」を基準に動詞を図3のように分類したうえで、「動詞+ている」 の意味を考察し次のような分類を行っている。 ౙඊ͉́ဥ̞͈ͣͦ͆͜ ӱຈ̴ȶ̞̀ͥȷ̫ͬ̾̀ဥ̞͈ͣͦͥ͜ Ӳຈ̴ȶ̞̀ͥȷȶ̀ြͥȷ̫ͬ̾̀ဥ̞͈ͣͦͥ͜ ൲ैȆैဥͬນ̯͈ͩ͆͜ শۼ಼ͬק̱̹ેఠͬ ນ̳͈ͩ͜ শۼ͈ಎͅȂ̜ͥેఠ ̦੄࡛̳̭ͥ͂ͬນͩ ̳͈͜ ӷࠑ௽̳ͥ൲ैȆैဥͬນ̳͈ͩ͜ Ӹ੊ۼ͈൲ैȆैဥͬນ̳͈ͩ͜ ӹ൲ैȆैဥͅచ̳ͥȶບثȷͬ͜܄͚͈͜ ӳஆहෝႁͬນ̳͈ͩ͜ Ӵ໤͂໤͈͂۾߸ͬນ̳͈ͩ͜ ӵ૽͈ఠഽͅ۾̳͈ͥ͜ Ӷ੭ș͈་ا͈ࠫضͬນ̳͈ͩ͜ ൲ैȆैဥͬນ̳͈ͩ͜ ౙඊ́͜ဥ̞͈ͣͦͥ͜ 図3 「動詞+ている」の意味 1.動作の進行  「動作がある時間内継続すること、または現在継続中であることを表す」  〇今読んでいる 〇いつも読んでいる 〇長い間読んでいる 〇いつからいつまで 〇読んでいる間  〇読んでいる最中 〇読んでいられる 〇読んでいよう  ⑦の継続する動作・作用を表す動詞すべてに用いられる 2.持続  「同一状態の継続」  〇今じっとしている 〇いつもじっとしている 〇長い間じっとしている  〇いつからいつまでじっとしている 〇じっとしている間 ×じっとしている最中  〇じっとしていられる 〇じっとしていよう 「(電燈が)点いている」も同類の動詞として記されているが無意志動詞であるため、   +いられると    +いようは不適格。  ⑦の結果動詞の一部、⑧の結果動詞の一部、①の一部(じっとする、黙る)から作られる。 3.結果の残存  「過去の動作・作用の結果が現在に残っていることを表す」  〇今は結婚している ×いつも結婚している ×長い間結婚している  ×いつからいつまで結婚している ×結婚している間 ×結婚している最中 ×結婚していられる  ⑦の結果動詞、⑧の結果動詞、⑥のそれぞれから作られる。 4.経験  「‘すでに’‘今までに’‘以前’‘その時’などと共起し、個々の動作・作用を現在から眺めて表す」  〇今知り合っている ×いつも知り合っている ×長い間知り合っている 〇すでに知り合っている  〇今までに知り合っている 〇以前知り合っている 〇その時知り合っている  動作・作用を表す動詞(⑦、⑧、⑨のすべて)から作られる。

(6)

5.単純状態  「現象の起こり終わりは関与的ではなく、ある状態にあることという形容詞的意味を表す」  ×今すぐれている  ×いつもすぐれている  ×長い間すぐれている  ×いつからいつまですぐれている  ×すぐれている間  ×すぐれている最中  ×すぐれていられる ①のほとんど(「じっとする」「黙る」等を除く)、②、④、⑤の全部、⑧の結果動詞の一部からつくられ る。 6.反復  「瞬間動作のくりかえしが続くことを表す」  〇今有名人がどんどん死んでいる  ⑧のすべての動詞から作られる。 藤井の分類のアスペクト相指示の類型を下表のようにまとめ、図4を参照しつつ考察してみよう。 動作の進行 持  続 結果の残存 経  験 単純状態 反  復 ① △(一部) * ○ ② * ○ ③ * ④ * ○ ⑤ * ○ ⑥ △ * ○ ⑦ ○ △ △ * ⑧ △ △ * ○ ⑨ * ԅȁȁȁȁȁ!Ԇȁȁȁȁȁ!ԇȁȁȁȁԈ ܳ൲௖ȁȁȁ!ૺ࣐௖ȁȁȁ!ਞࠫ௖ȁȁࠫض௖ 図4  「1.動作の進行」は図4<ⅠⅡ>指示型、「2.持続」と「3.結果の残存」は  じっとする 〇長い間じっとしている 〇いつからいつまでじっとしている 〇じっとしている間  結婚する ×長い間結婚している ×いつからいつまで結婚している ×結婚している間 という差異はあるものの、関与的アスペクトの相という点では<ⅠⅡⅢⅣ>指示型である。表中アステリ スクを付した「4.経験」は「現在から眺めた」というテンスおよびムードを含んだ英語の現在完了に対 応する問題であり、従ってすべての動詞に適用される。両義語テイルを用いるがゆえの経験を表す完了形 Have+PP学習上の語学的関門というべきもので類型論的アスペクトそのものを取り扱ったものではない とも考えられる。 (1)3歳のときにはすでに25メートル泳げていた。(藤井分類で「泳げる」は③種)    ‘He had learned to swim 25 meters when he was three years old’

 「5.単純状態」は<Ⅳ>指示型である。「6.反復」の意味は動作主体の複数性によって特徴付けられ たものであり、文脈によって生じる意味であり、一義的には文法的他動性の問題としてとりあつかわれる べきであろう2)

(7)

日英語アスペクトに関する一考察  動詞がその用いられた文法形式において起動、進行、終結、結果のいずれの相を表現しうるかが動詞分 類の基準であるが、同分類される動詞も個々の内在的特徴によりその用法に差異を生じたり、他動性パラ メーター2)の違いにより別分類動詞として用いられたりするということがある。金田一で同じ継続動詞に 分類された「しゃべる」と「読む」は「その終結相を設定しやすいかどうか」という点において次のよう な違いがある。 しゃべる:しゃべり始めるⅠ->しゃべっているⅡ->*しゃべり切るⅢ->*しゃべっているⅣ 読  む:読み始めるⅠ->読んでいるⅡ->読み切るⅢ->読んでいるⅣ  それゆえ、「読む」のテイル形は本をまるまる1冊読み切った結果の残存という意味でも用いられる。 (3)a 昨日買ったばかりの本をもう読んでいる。(=読んでしまっている)    b 先週の宿題ちゃんと読んで(い)る?(=読んで来ている)  無論、他動性パラメーターの問題として目的補語をしたがえた「しゃべる」は (4)a 内緒にしてと言われたことをもうしゃべっている。    d (内緒にしてと言われたことを)もうしゃべっとる。(進行/完了対立方言における完了形) のように結果の残存を表すことができる。が、「言語をあやつる」という意味で用いられた「しゃべる」は、 自他の用法に関係なく、進行/完了対立方言においても (5)1歳のあの子はもう(日本語を)しゃべりよる/* とる のように<Ⅱ進行相>を指示する形だけが用いられ、その進行形で「言葉が話せる」状態にあることを表 現する。 3.まとめ-動詞分類の再考  「1.先行研究」において、テイル・V+ingが日英語の動詞分類に大きく関与していることを見た。日 本語については、動詞を細かく分類することもできるが(藤井(1967)図3)、動作・作用であるか状態で あるかという基準と、および動作・作用であれば時間に巾があるかないか(<Ⅱ>言及型か<Ⅳ>言及型 か)という基準の二つによる分類が類型論的アスペクトという視点で動詞をとらえる場合には有効であろ う。その意味では、金田一の先駆的分類は類型論的に論じられたものであったとも言えよう。  藤井の意味分類について「1.動作の進行」は<ⅠⅡ>指示型、「3.結果の残存」は<ⅠⅡⅢⅣ>指示 型、「5.単純状態」は<Ⅳ>指示型であることを見た。綾部(1982)は、動詞は「動作動詞」「結果動詞」 「状態動詞」という三つに分類されると考えられるとしたが、これはテイル形式の意味を図5のようなかた ちでとらえて結論付けたものと推測される。 ൲ैૺ࣐Ȫ൲ै൲তȫ ȟΞͼσȟ ۖȁȁၭ ࠫضȪࠫض൲তȫ ેఠȪેఠ൲তȫ 図5 綾  部 金田一 動作動詞 継続動詞(第二種) 結果動詞 瞬間動詞(第三種) 状  態 第一種 第四種  綾部(1982)は第一種動詞と第四種動詞を一類にまとめるにあたり「テイルがつかなければ付かず、一 方付いていれば分離できなくて、活動を表さない(下線筆者)」と指摘する。上述したように、同分類され た動詞間で統合型の差異などは生じる。

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(4)a その地には山がそびえていますか?(テイル形)      -いいえ、* そびえません/そびえていません。(テイル形)    b 山田さんを知っていますか?(テイル形)      -いいえ、知りません/* 知っていません。(ル形) 綾部分類のアスペクト相指示は次のように表されるであろう。 動作動詞 ԅȁȁȁȁȁԆȁȁȁȁȁȪԇȫ  しゃべる しゃべり始めるⅠ->しゃべっているⅡ->

{

しゃべり終えるⅢ->×しゃべっているⅣ×しゃべり切るⅢ 結果動詞 ԅȁȁȁȁȁԆȁȁȁȁȁ!ԇȁȁȁȁȁԈ  読む 読み始めるⅠ->読んでいるⅡ->

{

読み終えるⅢ->読んでいるⅣ 読み切るⅢ 状態動詞 ȪԅԆԇȫȁȁȁԈ  知る ×知り始める->×知っているⅡ->×知り終えるⅢ->知っているⅣ  「知る」はテイルとともに用いられてⅡ進行相を言及することはなく、(Ⅰ-Ⅲという抽象的局相を経て) Ⅳの結果相を状態として表現する。  進行相と完了相とを区別する方言においては  読む:Ⅰ読み始める->Ⅱ読みよる->Ⅲ読み切る->Ⅳ読んどる であるが、このような進行相/完了相対立方言においても「知りよる」が用いられることはない。「5.単 純状態」で言われる「起動相および終結相が関与的ではなく」というのはⅡの進行相が取り立てられてい ることを意味しない。進行相は起動相および終結相との対立によってのみ意味を有することが分かる。 「知る」は[+結果相]と特徴付けられる。  日本語テイル形の基本的な用法は動きの継続の状態を表す用法と動きの結果の状態を表す用法である。 英語のV+ing形の基本的な用法は動きの継続の状態を表す用法と起動相(あるいは終結相)への接近を表 す用法である。  両言語の動詞分類は進行相形式が基準として用いられる。しかし、Perfective / Imperfectiveのアスペ クト的対立が英語においてはhave+PP(完了形)とV+ing形によって職能分担されているが日本語にお いてはテイル形式ひとつが両アスペクトを表現する職能を担っているということから、両言語の動詞分類 における内在的特徴の捉え方が異なっていると考えられる。すなわち、 ԅȁȁȁȁȁ!Ԇȁȁȁȁȁ!ԇȁȁȁȁԈ ܳ൲௖ȁȁȁ!ૺ࣐௖ȁȁȁ!ਞࠫ௖ȁȁࠫض௖ において、英語ではⅣの言及は完了形(Have+PP)によって表され完了相というアスペクト(図1の Perfective)の問題となるため動詞の内在的特徴の意味研究(動詞分類)においてⅣは、日本語ほど直接 の、関与性を持たない。

(9)

日英語アスペクトに関する一考察

(5)a I have known him for three years.    b I have read that book for three years. (6)a *I have been knowing him for three years    b I have been reading that book for three hours

のような差異はあるものの、形容詞述語も含め動詞はすべて完了形(Have+PP)でPerfective(完了相) を表現する。動詞分類は  ⅰ)動詞+ING=>動作性動詞 * 動詞+ING=>状態性動詞 の二項大分類  ⅱ)「時を表す副詞句との共起可能性テスト」による動作性動詞の下位分類 の基準に基づいて行われ、Ⅰ起動相、Ⅱ進行相、Ⅲ終結相までが有意義な内在的特徴として捉えられてい る。States(状態動詞)は[-起動][-進行][-終結]という素性指定で定義される。  Vendlerが英語動詞分類の一つのカテゴリー名としたAccomplishmentsが金田一分類(あるいはその後 の各研究)においてカテゴリー間を横断する他動性の問題として取り上げられているというのもこうした 内在的アスペクト指示のとらえ方が影響していると思われる。

 英語はPerfective / ImperfectiveをemicのレベルでHave+PP / V+ingとして分節・文法化する。一 方、日本語では、「-したことがある」や「-したところだ」等の文法的完了表現があることはいうまでも ないが、音素レベルでl / rの対立を呈さず/ R /音素のみが認められるのと同様に形式素/テイル/の異 形式として[進行]と[完了]が実現されていると解される。one form, one meaning(あるいはone meaning, one form)という意味論的前提もemic / eticという視点でとらえる必要があるということをあ らためて実感させられる。  Perfective(完了)とImperfective(未完了)の分節がアスペクトの普遍的ありかたであるとするなら ば、たとえば英語のHave+PP / V+ing、ドイツ語「現在」/「現在完了」、「過去」/「過去完了」、「未来」 /「未来完了」等に比べて、日本語のテイル形式素は類型的に見て特異な(idiosyncratic)な用法を有して いるといえるのかを調べることが今後の課題ともなろう。 註 1)状態が一時的であることを強調する場合には進行形が使われることがある。 I am living in this town /I live in this town(永続的)

2)Hopper and Thompson(1980)参照。Quirk & Greenbaumの英語動態動詞分類のMomentary verbsは ‘punctuality’というパラメーターに関して、内在的に起動相と終結相にのみ特徴付けられた動詞の

動きの複数性をとらえたものである。 参考文献

綾部裕子(1982)日本語とタイ語における「時間」の諸相『言語文化論集』12 179 201

Comrie, Bernard(1976)“Aspect: an introduction to the verbal aspect and related problems” Cambridge University Press

藤井 正(1966)「動詞+ている」の意味『国語研究室』5 金田一編(1978)『日本語動詞のアスペクト』 むぎ書房に再録 97 116

Hopper, P. J. and S.A. Thompson(1980)Transitivity in grammar and discourse Language 56 2 251 299 金田一春彦(1950)国語動詞の一分類 『言語研究』15 金田一編(1978)『日本語動詞のアスペクト』む

ぎ書房に再録 5 26

Quirk, Randolph and S. Greenbaum(1973)“A University Grammar of English”Longman

Shirai, Yasuhiro(2000)The semantics of the Japanese imperfective – teiru: An integrative approach

Journal of Pragmatics 32 3 327 361

参照

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