• 検索結果がありません。

技術と歴史と国際と(PDF:509KB)

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "技術と歴史と国際と(PDF:509KB)"

Copied!
1
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

提 言

No. 692/Feb.-Mar. 2018 1 今月の特集テーマは「学界展望―労働経済学 研究の現在」である。 さかのぼると本特集は,1982 年(昭和 57 年) から始まっている。その後3年ごとに企画され, 今回が 13 回目となる。 毎回4名の労働経済学者が登場,過去3年の日 本人著者等による経済学の論文を取り上げ,その 評価を縦横無尽に語り合ってきた。座談会の様子 を収めた写真も掲載されており,今や重鎮となら れた方々の初々しいご尊顔も拝見できる。 内容的には当時の研究者がどのような労働経済 問題を重視してきたかが一目瞭然にわかる他,問 題に迫ろうとする論文の切り口が興味深い。大部 分は実証研究だが,いかなる技術(テクニック) に注目が集まっていたかが理解できる。 特集は,日本の実証労働経済学史の様相を呈し ているともいえる。 労働経済学の実証技術は 40 年弱の間に飛躍的 に進歩した。別言すれば,現在は顧みられなく なった技術も当然ある。最新技術による先駆的な 研究手法もいつの日か常識的なものとなり,陳腐 化する運命がときに待っている。厳しいが,それ も学問進歩の一側面なのだろう。 一方,展望に取り上げられてきた論文のなかに は,今も色あせることなく輝きを示し続けるもの も少なくない。一体,そのような研究は何が違っ ているのだろうか。 「クリスマス・イブ」「DOWN TOWN」など 数々の名曲を手がけてきたミュージシャンの山下 達郎。長く愛され続ける曲に共通する特徴とし て,彼が「アレンジ」の素晴らしさを挙げていた のを思い出す。 アレンジとは編曲を意味する。曲調を整えた り,ハーモニーを考えたり,それに合った楽器を 編成し,アンサンブルを組み立てる総合芸だ。作 詞や作曲が魅力的だったり,歌唱が優れていれ ば,永遠に残る名曲になるとは限らない。流行を 追うだけのアレンジも,じきに古びたものとな る。 論文も理論仮説や実証技術が秀でてさえいれば 読み続けられる研究となる保証はない。ここでも やはりアレンジが重要になる。だとすれば研究に とって,時代を超えた普遍的なアレンジとは何な のだろう。 独断で言うならば,技術に歴史と国際の観点が 程よく調和されている論文ほど,息の長い研究に なっているように感じる。 ある労働法学者は官僚時代,国会待機で時間を 持て余した時,過去の審議会の議事録を読み返 し,政策決定プロセスの勘どころを学んできたと いう。氏は後に国際機関に出向,各国の法律や制 度の理解を深める機会も得た。ゆえに今どんな新 たな労働問題が出てきても,自身に定まった歴史 軸と国際軸に位置づけることで,説得力のある議 論を常に展開できるのだ。 ただそれと同じ経験をすべての研究者に求める のは無理である。適度なアレンジを施すべく,や れることをやるしかない。ならばさしあたり過去 の学界展望の様子を覗いてみるのもよいのではな いか。 良い論文は研究上の歴史的な意義づけがきまっ て明確だ。日本に固有のシステムを理解すべく国 際比較に挑んだ研究は,今も参考になる。97 年 以降の学界展望なら,雑誌ホームページのバック ナンバーからも読める。 将来も,すぐれた技術だけでなく,歴史と国際 の観点が見事に組み込まれた論文が,経済学のみ ならず,あらゆる分野の労働研究にとぎれなく登 場することを期待している。 (げんだ・ゆうじ 東京大学社会科学研究所教授)

玄田 有史

技術と歴史と国際と

参照

関連したドキュメント

昭和62年から文部省は国立大学に「共同研 究センター」を設置して産官学連携の舞台と

この説明から,数学的活動の二つの特徴が留意される.一つは,数学の世界と現実の

経済学研究科は、経済学の高等教育機関として研究者を

  BT 1982) 。年ず占~は、

経済特区は、 2007 年 4 月に施行された新投資法で他の法律で規定するとされてお り、今後、経済特区法が制定される見通しとなっている。ただし、政府は経済特区の

2018年 1月10日 2つの割引と修理サービスの特典が付いた「とくとくガス床暖プラン」の受付を開始 2018年