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ユビキタス情報環境の展開 : ユビキタスな情報技術と事業展開に関する考察(<特集>新しいMBA教育の展望)

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(1)特別寄稿. ユビキタス情報環境の展開 ユビキタスな情報技術と事業展開に関する考察. 守. 屋. 1.要 旨. 康. 正. フトウエア,ネットワーク基盤,ネットワーク. 機器,ネットワーク管理ソフトウエア,各種サ.  1970年代前半,ラジカセやポケット電卓が市. ービスプロバイダなど,コンピュータやネット. 場にでまわり,電子機器のポータブル化が浸透. ワークのアーキテクチャを構成するベンチャー. を始めていた.当時急速な進化を遂げつつある. 企業の固有技術を統合するマルチベンダ型の事. 半導体技術の賜物であり,その中核は情報技術. 業モデルをさす.すなわち,メインフレーマと. を劇的に進化させるマイクロプロセッサである.. その傘下の企業が提供するクローズドなシング. マイクロプロセッサはまさに産業の米ともいえ. ルベンダシステムの対極である.このシリコン. る存在で,それまで空調設備の備わった快適な. バレー型モデルに参加する企業群は,デファク. 部屋に鎮座していたメインフレームの存在を脅. トスタンダードに沿ったオープンシステムの一. かし,一方では人の目に触れずに電化製品や産. 翼を担うだけではなく,各層内での競争と協調. 業機器の中へと浸透を開始した.. を繰り返しながら,情報技術の進化を加速した..  しかしながら,人々が今日のように携帯電話.  インターネットを中心とした情報技術分野で. を持ち歩き,ワイヤレスでかつてのメインフレ. は,市場受容への適合の力学が存在する.すな. ームの何万倍もの処理速度をもつパソコンを利. わち,優れた技術が市場に適合するとは限らず,. 用する姿を,当時誰が想像できたであろうか.. 市場内の顧客数の閾値,判りやすい商品技術の. いつの世にも将来の予測は極めて難易度が高い.. 訴求力,あるいは市場操作能力が適合の条件と.  バトラー・ランプソン,チャック・サッカー,. なる場合が多い.インターネットが商用公開さ. ボブ・メトカルフ,アラン・ケイをはじめとす. れた当時には,多くのプレーヤーがポータルポ. るゼロックスPARCの著名な研究者たちは,30. ジションの獲得のためのワンストップ化にしの. 年以上も前に今日の情報化社会を展望し,自ら. ぎを削り,外部の技術とコンテンツを呑み込ん. の夢の実現に向けた研究成果としての技術的な. で質量を高めるブラックホールさながらの様相. 礎を築いた.. を呈していた.ユビキタスな社会環境が浸透し.  これらが技術の進化の過程であるとするなら. 始めた今日ではこのようなココンペティション. ば,米国西海岸のシリコンバレー型モデルとで. の激しさが増している.本書では,このような. もいうべき新しい産業構造の興隆が,情報技術. ユビキタスの技術と事業の相関と競争原理の考. の進化にもたらした影響も計り知れない.シリ. 察に関する報告である.. コンバレー型モデルとは,半導体,コンピュー. タ本体,周辺機器,OS,アプリケーションソ. レ.

(2) 横浜経営研究 第24巻 第4号(2004). 84(358). 2.ユビキタスの定義.  ワイザーはこのように,ユーザーがその存在 を意識せずに情報支援を行うコンピュータチッ. 2.1 ユビキタス・コンピューティング. プと,遍在した情報環境の実現をはかるべきで.  今日,ユビキタスという言葉は,ユビキタス. あると主張していた.. ネットワークあるいはユビキタス社会などとい う呼称でも使用されている.米国のサイトでの. 2.2 ネットワーク. Ubiquitousのキーワード検索からは,殆どが Ubiquitous Computingであるため,ユビキタ.  一方同じ機会に,ユビキタス・コンピューテ. 言葉は,日本における造語なのかも知れない.. ィングの研究成果物を見学した.そこでは, PARCの研究者や職員が胸に着けて認証や位置 情報サービスを受けるバッジ,手のひらに乗せ.  言葉の発展がユビキタスの理解の促進となる. て簡単にメモができるタブ,研究発表を行なう. のなら好ましくはあるが,提唱者のモチベーシ. ときにメモをとるノート型のパドなどが試作さ. ョンへの回帰もまた大切である.. れ,研究所内のLANに無線接続されていた.. スネットワークあるいはユビキタス社会という.  1993年,ユビキタス・コンピューティングの. この無線通信には自作の赤外線ハブが用いられ,. 提唱者である,ゼロックスパロアルト研究所の. 研究室,会議室,廊下などの天井に設置され,. マーク・ワイザ博士と研究情報の交換を目的と. 基本的にPARCのビル全体をカバーする空間的. した面談の機会を得た.その数日間の滞在期間. なネットワークを構成していた.空間的ネット. 中に,彼とその研究グループのメンバーから, 次の比喩を用いてユビキタス研究の概要を紹介. ワークとは,有線では困難な位置情報の検出や. された..  『一昔前の多くの町工場には,大きなモータ. ある.ワイザ同等はこの空間的ネットワークに 接続された情報機i器をUbicom1)と呼び,1ユー. ーが中央にすえられて,けたたましい音をたて. ザーにその存在を意識させない支援を行うデバ. ながらその存在感を誇示していた.今ではもは. イスの実現を目指していた.この実験の一例と. やこうした光景を,見ることはできないが,モ. しては,誰かが出社すると,バッジとハブが自. ーターは今でも工場のどこかで稼動している.. 動交信を行い,陰日ミングサーバが所在の追跡. 現代の自動車もまた同様に,ワイパーや窓の開. を開始して,その人の顔写真をライブボードと. 閉,ステアリングなどに多くのモーターが利用. 呼ばれた対面型のコラボレーション用スクリー. されているが,ドライバはモーターの存在を意. ンやパドにマップ上の位置情報として表示して. 識することはない.』. いた.また廊下で出会った研究者に,自分のワ.  すなわち,活用の主権がモノから人へと移り,. ークステーションのデスクトップ上にある情報. 人がモノを支援することの必要性を示唆してい. を,携帯したタブを使って送付するなどである.. る.そして当時の(おそらく今日も)コンピュ.  イーサネットの語源は,アイザック・ニュー. ータに対して『現在のコンピュータは,ユーザ. トンの光のエーテルである.ラテン語のエーテ. ーに対してマニュアルの熟読と多くの操作を強. ルを英語読みすればイーサとなるが,光のエー. 要してくる.今日のモーターが果たす役割の透. テルと同様に情報を澱みなく伝播させ,遍在的. 明化を考えれば,コンピュータも自らがユーザ. な情報アクセスを可能とするという意味を込め. ーに歩み寄り,日用品などの中に隠れて存在を 誇示せず支援を行うべきだ.さらには,様々な. てボブ・メトカルフらが命名した.ユビキタ ス・コンピューティングもこのような遍在的な. 情報資源も遍在化され,コンピュータチップを. ネットワークを意識していたことが,これらの. 通じて,有益情報やサービスを提供すべきだ.』. 実験を通してわかる.. ローミングが行なえる情報ネットワーク環境で.

(3) ユビキタス情報環境の展開(守屋康正). (359)85. 2.3 ユビキタスの定義. の概念の理解も進みつつあるが,5年∼10年先.  ワイザーによるユビキタス提唱の骨子は以下『. から現時点を振り返れば,インターネットへの. 2点と考えられる.. 認識がなかった時の状況に類似すると思われる.. 1)Tacit(暗黙的)に行なうコンピュータの  利用者への支援:.  このようにユビキタスのカテゴライズは,未 知の要素を多々包含せざるをえない.したがっ. 2)オフィスなどに敷設されたLANの近傍だ. て本論文では,このような不確実性があること.  けではなく,あらゆるところで必要な時に利. を前提としてワイザーが提唱するユビキタス・.  用できるネットワーク環境. コンピューティングとネットワークとの関係を.  ITすなわち,情報技術という言葉の定義も. 考察する.. 情報と技術の比率や重み付けの解釈が時間的に 変化するように,ユビキタスの定義も同様の変. 3.2 デバイスとエネルギー区分. 化が考えられる.それらは今後大いに議論され.  ワイザーは後にキーチェイン(キーホルダー). るべきであろうが,本論文においては提唱者の. にチップを埋め込み,様々なアプリケーション. 主旨に沿った解釈を行うこととする.. を提供するベンチャー事業を立ち上げようとし.  更に付け加えれば,上記1)2)の条件は ANDが理想であるが,現段階では1)2)が. たことがある.その内容は現在の携帯電話やIC. それぞれに発展段階にあり,本論文ではOR条. 一つは既知の製品に付加価値をつけて提供する. 件と解釈した論述を行なう.ワイザーは速度の. 方法であり,一つは製品の中にコンピュータが. カードの多機能化に一脈を通じる部分がある.. 遅い赤外線HUBの採用理由を,ワイヤレスこ. 隠れているということを人に意識させない方法. そが重要であり通信速度はそのときの情勢で決. である.. めれば良く,通信が可能か否かが重要であると.  ビットとアトムのパラダイムを提唱し,ウエ. 述べ,ワイヤレスの重要性を指摘していた. MITのニコラス・ネグロポンティもまた,ユビ. アラブル・コンピュータの研究の第1人者であ. キタスとブロードバンドは同一視すべきではな. デバイスの進化を図表1に示す3つの形状区分. く,9600ボー程度の通信環境でもメール通信が. で捉えている.. 出来るか否かが重要と述べている.本論文はこ.  第1の区分は,デジタル家電など既存製品へ. れら2つを拠り所に,ユビキタスはブロードバ. の組み込みで,インターネット接続により付加. ンドのような高速通信手段や,地上波デジタル. 価値を提供するアプローチである.第2の区分. 野送がユビキタスであるという拡大した解釈と. は,ユーザーが携帯して持ち歩く製品の中に実. は一線を画している.. 装され付加価値を提供しようとする分野であり,. るニコラス・ネグロポンティは,ユビキタスの.  ユビキタスそのものの日本語訳は遍在である.. カードリーダー/ライターなどとの近傍施設と. しかし最近,時空自在という言葉が用いられる ようになったが,時空自在という言葉も遍在同. の交信を中心としたアプローチである.第3の 区分では,基本的には可視化されず,体内への. 様に理解しやすい言葉である.. 埋め込みなどにより全くその存在を人間に意識. 3.ユビキタスを支える技術. させずに,自律性の高い支援業務を行なうよう な分野である.更に様々に形を変えて製品の中. 3.1ユビキタス技術のカテゴライズ  情報技術への社会認識は,そのときの情勢で. 活用には,エネルギーの供給方法が問題である.. 大きく変化する.すなわち情報技術は,常に進. 上記の分類の場合,1のようなデジタル家電分. 化を伴いそのイメージが変貌する.ユビキタス. 野,あるいはカーナビゲーションの応用製品な. に埋め込まれてゆくコンピュータチップの有効.

(4) 横浜経営研究 第24巻 第4号(2004). 86(360). 図表1 ユビキタスを支えるデバイスの形状区分. 形状区分 1. 電源供給. 利用形態. 既存製品のネッ. デジタル家電. ・電灯線. ・家電製品のリモートな故障診断. トワーク接続. ・冷蔵庫や電子レンジのレシピ提供 ・携帯電話からのエアコン操作 2. 小型化. コンピュータによる組込みサービス. ・乾電池. ・話しかけるぬいぐるみ. ・充電. ・健康状態のボイス通知,病院への報告. ・電磁誘導. ・携帯電話でのチケットの購入 ・ウオレット,プリペイドカード 3. 超小型化. ・電磁誘導. ICチップなど ・ビタミン剤や薬剤のミクロカプセル. ・熱伝対. ・体内センサ・モニタ ・商品物流追跡や食材情報表示の支援:. 図表2 ロケーションの違いによる通信環境基盤の広がり 活動区分 1. 企業・集団活 動の場. 2. 個人・集団活 3. 動の場. 4. 通信手段. 工場・倉庫・. サプライチェーンなど企業間連携システムの. 無線LAN・近傍通信. 物流. 導入. 携帯電話. オフィスのフリーアクセス化とパソコンの導. 無線LAN(DHCP型). 入. 携帯電話(内線・外線). 商業・公共施. ネット取引と金融サービスの多機能化,通信. 無線LAN・近傍通信. 設. サービスの提供. インターネット. 携帯電話の普及とeメールなどのモバイル通. 無線LAN. 信. 携帯電話. インターネット・パソコンの普及と一家もし. ブロードバンド+無線. くはひとり1台の情報環境の出現. LAN. オフィス. モバイル. 個人活動の場 5. ユビキタスな進化の特徴. ロケーション. 家庭. どでは,製品本体からの電源供給,2の小型化. 3.3 ロケーションによるネットワーク区分. 区分ではバッテリーなどによる電源供給が主体.  ワイザーによるユビキタスの提唱からすでに. となり,充電などによる持続時間が重要となる.. 15年あまりが過ぎ,情報技術も目覚しい進化を. 3の超小型区分では電力を何らかの形で自給し なければならない.このために,外部からの電. とげた.この期間の通信領域の広がりを考える. 磁誘導や体内温度を利用した熱電対など新たな. 施設),中間的活動の場(オフィス),個人的活. 技術が利用されている.. 動の場(モバイル,家庭)において,それぞれ. と,企業・集団的活動の場(工場,商業・公共. に図表2の様な展開となっている..

(5) ユビキタス情報環境の展開(守屋康正). (361)87. 図表3 ユビキタス技術コンフィグレーション. (デバイス). 超 小 型. 化. ICタグ 棚管理 商品追跡 (通信). 無線LAN 近傍通信. (デバイス). ID用タグ 認証設備 (通信). 無線LAN 携帯電話 専用線. (デバイス). (デバイス). ICタグ 認証・決済 棚仕分け管理. ID用タグ 認証・決済 電子ペーパー. 樋信). (デバイス). 体内センサ ペット追跡 車盗難防止 樋信). (通信). 無線LAN 近傍通信. 無線LAN 近傍通信. 携帯網 GPS.       雪 (デバイス). 小 型 化. 工業用ロボット. ト視センサ [Cタグ. (デバイス). i魏. i通信). (デバイス). 既 存 製 品. 工業用ロボット. (デバイス). i甥ζ/照明. ト視モニタ ICタグ. 複写機. i通信). i通信). 無線LAN. ゚傍通信. 工場・倉庫. F証・決済 d子ペーパー. g帯電話. ウ線LAN 専用線. 無線LAN hP・携帯電話. オフィス. (デバイス). ICカード. i通信). ウ線LAN 近傍通信. (デバイス). カードリーダ. 専用線. iデバイス) ペットロボットi位置追跡. 穴薰hDカード. i通信). マ議ポットi. i通信). uロードバンドi 携帯網・GPS. 携帯網. (デバイス). ICタグ hCカード. i繍ページ. (デバイス). (デバイス). ノートPC oDA カーナビ. パソコン. fジタル家電 ICカード. i通信). i通信). 識濤ポット灘網 ホットスポット 商業・公共. 3.4 コンフィグレーションの区分.  図表3は前述の形状進化区分とロケーション. ブロードバンドi 奄hP電話. モバイル. 家庭. 4.固有技術. のマトリクスであり,それぞれのデバイスと通. 4.1注目される技術分野. 信の採用技術を示した..  本項では情報技術のユビキタス化をさせてい.  すなわち,ユビキタスという観点で各ロケー. る主要技術の概要を紹介する.ここでは,技術. ションの特色を考えると,コンピュータチップ. を論じることを目的とはしていないため,詳細. が存在するロケーションの違いにより,利用す. は他の技術系の文献を参考にしていただき,紙. るネットワークも異なっている.これはパソコ. 面の関係上その特色のみを述べる.区分方法は. ンでも無線LANやBluetooth2)など,通信手段. これまでの論述展開にそって,デバイス技術と. それぞれに用途が異なるように,ICカードや. ネットワーク技術に加え,新たに電力供給技術. ICタグなどのデバイスの違いで通信手段も異な. を入れて説明をする。. ってくる.ここでいう近傍通信とは,ICカード やICタグ全般をさす広義の通信であり,データ. 4.2 デバイス技術分野. を呼び出すリーダー側からの電磁誘導で電力を. 1)ICタグ, ICカードの種類と利用. 供給する方式である..  デバイス技術では非接触型のICカードがその.

(6) 88(362). 横浜経営研究 第24巻 第4号(2004). 代表例であり,距離と通信方式の違いにより. りつけ入出退や心拍数のチェックを行なう用途. ISO−10536密着型, ISO−14443近接型, ISO一. や,溶剤と一緒に製品に塗りつけ製品の情報管. ユ5693近傍型,さらには遠隔型が存在する.. 理が行なう用途があるという.安価なチップな.  こうしたデバイスは,電源供給ならびに電波. ので一度に複数のチップを塗布して,チッ、プ問. の送受信を行うコイルとICチップより構成され. で情報交信を行なわせることも考えているとい. ており,ICカードの分野では対タンパー性とし. う.. てCPUを介在させ,セキュリティのための手続 きを設けて機密保護の対策を付している.特に.  しかし,トレーサビリティという追跡機能に. ICカードは,メモリー容量が比較的大きいので,. を受けたり,ヨハネ黙示録の獣の刻印であると. 多目的用途として利用されている.. の宗教団体からの指摘を受けるなど,プライバ.  またICタグの分野では0.4ミリ角の微細なIC. シーとのかかわりの面で課題を抱えていること. チップに最大38桁の数字が記録可能であり,ア. よって常に誰かに居場所を知られるなどの監視. も事実である.. パレルメーカと印刷メーカが共同で導入を開始 するなどの例がある..  ICカードの応用面では,クレジットカードへ. 4.3 ネットワーク技術分野. 1)IPv6. の電子マネー機能の付加,JR,パスネット,.  1P v 6とはlnternet Protocol version 6の意味. バスカードなどの統合化の動きが見られる.こ. であり,IPv4との対比で語られる.両者の相違. のようなデバイスは基本的に自らの表示能力を. 点は,インターネットに接続される機器を識別. 持たないパッシブな利用であるため,IPアドレ. するネットワークのIPアドレス表現長の違いで. スを必ずしも必要とせず,クレジットカードや. ある.すなわち,IPv4が32ビット長であるのに. 駅の改札機のような自動読み取り機との互換性. 対してIPv6では128ビット長となる.これは IPv4が232すなわち43億のアドレス数であるの. が重要となる.. に対し,IPv6では340澗(カン)個すなわち 2)埋め込みチップの利用. 340×1036個ものアドレスを付与することが出来.  一方,体内などへの埋め込み型のチップが登. る.これを世界人口60億人で換算すると,現在. 場している.米ADS社の製品であるベリチッ. は1人あたり1個に満たない付与能力が,IPv6で. プは,米粒大のチップにコイルが内蔵され,近. は5.6穰(ジョウ)個すなわち5.6×1028個ものア. 傍のリーダーから内容が読み取ることができ,. ドレス付与が可能となる.5)すな.わち事実上無. 個人IDや血液型などや緊急時の治療方法の記 録が可能という.GPS機能内蔵のもめもあり, 動物の生態観測,家畜の管理,あるいは誘拐が. 限であり,たとえばテレビやエアコンとリモコ 生鮮食料品や医薬品カプセルに至るまでIPアド. 頻発する中南米での要人追跡など用途は広いと. レスの付与が可能となるが,バーコードに代わ. いう3).125KHzの周波数を印加し,1.2mの近. り生産履歴の追跡も可能となるなど,IPアドレ. 傍からリーダーで読みとる.. スの利用方法如何によっては大きな差別化要因.  英国のエジンバラ大学など5大学4)は溶剤に. となる.. ンチャネル,携帯電話に始まり将来的には書籍,. 混ぜて壁に塗れるような微細半導体チップを 2007年までに開発するという.開発するのはス. 2)802.11b/gとローミング. ペックと呼ばれる1?の微細チップで,マイク.  802.11bおよび802.11gは共に無線LANに関す. ロプロセッサ,メモリー,各種センサー,自給. るIEEEの規格であり,CSMA/CA(Carrier. 用の太陽電池などを内蔵するという.人体に塗. Sense Multiple Access with Collision.

(7) ユビキタス情報環境の展開(守屋康正). (363)89. 図表4 1Cタグ, ICカ「ドの特色. 特  徴. 非接触カード形式. 通信距離. 周波数. 密着型(ISO10536). 1mm付近. 4.9MHz. 対機密性 テレカ,パチンコカード. 近接型(ISOI4443). lcm以上. 13,56MHz. ICカード. ^イプA(欧州型CPUなし)1KB ^イプB(住民台帳 米国型)1KB ^イプC(フェリカ 日本提案)4KB 近傍型(ISOI5693). 10cm以上. 13,56MHz. 個別製品(盗難防止)用ICタグ. P25∼500K:Hz. Aンチコリジョン機能(複数同時) W96bit∼2,048 bit. 遠隔型(一). lm以上. 2.45GHz. 在庫,棚卸など梱包用ICタグ Aンチコリジョン機能(複数同時). Avoidance)という通信方式を用いている.基. 情報の自動取得方式を採用しているため,端末. 本的にはIEEE802.13に基づくイーサネットの. の入れ替えが自由である.通常ネットワーク利. 送受信方式であるCSMA/CD(Carrier Sense. 用においては,DNS(Domain Name Service). Multiple Access with Collision Detection)と. と呼ばれる登録方式によりドメインの管理を行. 相違はないが,CSMA/CDがケーブル内の電圧. なうが,組織活動の利便性を高めるために,ド. 変化と端末自身が発した信号との差異を検知し. メイン問でDNSに登録された端末のデータベ. て衝突回避を行うのに対して,CSMA/CAでは. ースを共有しあうローミングと呼ばれる連携が. 端末が送信前に乱数を無線空間に向けて発信し,. 可能であり,出張時にパソコンを持ち歩く利用. 他の端末に対しての情報送受信の自粛を促す方. 者には便利なサービスである.802.11でもルー. 式である.802.11bの最大通信速度は11Mbpsで. ター同士の連携により,ローミングサービスが. あるのに対して,802.ユ1gでは54Mbpsの通信. 行なえる.しかし,無線LANは空間的ネット. 速度が得られる.. ワーク環境であり,有線によるネットワークと.  この無線LANは通常インターネットと接続. は利用方法が全く異なる.たとえば隣…接するル. された無線ルータと端末間の交信がなされるが,. ータ同士の連携によ.り,ネットワークゾーンの. 有線の場合はルータが台あたり提供できるハブ. 拡大が可能である.ニコラス・ネグロポンティ. のコネクタ数に接続台数の限界があるが,無線. は,自らが毎年数ヶ月間すごすギリシャのパラ. ルータではコネクタの制限がないため,一度に. モス島では,島中に802.11bの基地局が設置さ. 30から50の端末が接続できる.したがって,有. れ,島中どこからでもインターネットへのアク. 線方式の802.3とは比べ物にならないほどの機. セスが可能であると述べている6).同種のアプ. 動i生があり,オフィスのレイアウト変更時にお. ローチは,大学キャンパスでも採用され,米国. けるネットワークの配線や再登録などのわずら. テキサス大学オースチン校,千葉大学が先駆的. わしい作業を大幅に軽減する.まさに時空自在. 事例として有名である.また,最近では既存施. である.. 設を利用してセキュリティを保障しながら都市.  さらにこの接続は,DHCP(Dynamic Host. 空間に安価なネットワークゾーンを確保する試. Configuration Protocol)と呼ばれるアドレス. みもある..

(8) 90(364). 横浜経営研究 第24巻 第4号(2004). 図表5 802.116(g)無線LAN 802.11b(g)の.     60mの通信範囲. 無線ルータ.    1メガビット/秒(54)の. 凪. 懸 通信速度. 1風 \\ \ヤ・. /レン. /. /. 鱗 零   アへ. 桟. 曝欝 「、. 無線ルータを連携させることで通信領域を拡大.  一方では,インターネットを介在して遠隔の. 米国電気電子学会IEEEが2003年6月に802.11g. ゾーン同士の連携を試みる事例もある.いわゆ. を公式の無線LAN規格7)として承認したこと. るホットスポットであるが,コーヒーショップ. などがあげられる.2002年度の無線LAN内蔵. やハンバーガーチェーン,駅構内のスポットオ. のパソコンの国内出荷台数は228万6000台であ. フィスなどでは,契約加入者は何の手続きもな. ったが,2007年には905万8000台の出荷が見込. く契約ゾーン内でパソコンやPDAからのイン. まれるという.8). ターネットの利用が可能となる.最近では大手 のネットワークプロバイダがこれらのショップ. 3)携帯電話. と契約し,家庭内でADSL(Asyrnmetric.  今日の携帯電話の普及と機能の進化には目を. Digital Subscriber Line)の契約獲i得の販促. 見張るものがある.いまや日本のみならずアジ. 策として,街中のホットスポットサービスを提. ア諸国においても,その普及は著しい.そして. 供する例もある.これにより,オフィス,家庭,. アナログからデジタルへの通信方式の移行やi. 街中,さらには携帯電話回線を利用したアドホ. モードの出現を契機に,パケット通信による,. ックなインターネットアクセスが可能となる.. 電子メールやゲーム利用が活発化し,パソコン. 図表5に802.11の概念ならびにローミングのイ. による利用をもしのいでいる.携帯電話の方式. メージを示す.. は次世代携帯電話規格であるIMT2000.  一方ノートパソコンでも無線LAN実装機種. (lnternational Mobile Telecomrnunications−. が飛躍的に増加している.この背景にはインテ. 2000)と呼ばれる第3世代の移動通信方式が国. ルが802.11bの機i能を内蔵したセントリーノと. 際標準として制定され,主には日欧の WCDMA方式と米国のCDMA2000方式(現在. 呼ばれるマイクロプロセッサを発売したこと,.

(9) ユビキタス情報環境の展開(守屋康正). (365)91. 図表6 携帯電話の技術標準 IMT2000.            IMT2000   1nternational Mobile Teleco㎜unications−2000 次世代携帯電話規格 第3世代の国際標準な移動通信方式.      ノ. 灘.      PDC−P.   GPRS. Personal  Digital  Cellular  General. Packet  Radio.   セタおヰヰ ヌけぽおくウヰヰタや. 幾…載 Service. CDMAone. IMT20002MHz最大2Mbps. WCD甑 日欧          CDMA2000米日. はCDMAIx)に分かれているが,国際標準化. ③国内あるいは国際間での業者同士の市場. により利用者はその区別をあまり意識せずに利.  競争が激しい. 用が可能となっている.図表6に規格の流れを. ④上記3つの条件を利用すべく付加価値機. 示す..  能の提供者が携帯電話網をビジネスのプラ.  ユビキタスからの視点では,通信方式もさる.  ットフオームとして,サードパーティが集. ことながらアプリケーションの広がりを分析す.  まり,情報技術を押し上げている. ることが重要であるが,これらは多機能化とし ての進化である.多機能化に関する最近の業界. ⑤動画像,高解像度静止画像の送受信のた  め,パケット通話料の低定額化が浸透して. 動向の一例を図表7に示す..  いる.  これをみても決済機能やセキュリティ機能な どの技術開発や統合が活発に行われている一端. 4.4 電力供給技術. が伺える.最近では200万画素のカメラ付携帯 が発売され大きな話題を呼んでいるが,デジカ.   ユビキタスな情報環境においては,従来の. メのヒット商品の販売合計が70万台であるのに. ような電灯線からの電力供給やバッテリーから. 対し,カメラ付携帯は200万台であるともいわ. の電力供給だけではなく,用途や形状に合わせ. れ,R&D投資もデジカメからカメラ付携帯へ. た様々な方法が検討されている.. とシフトしている.これらをまとめれば,次の.  ここでは特に下記3つの電力供給方法を検討. 様な動きが読み取れる.. する..  ①携帯電話サービスの市場を限られた業者.  ①下線やバッテリーなどにより外部から継.   が占有し,多くの利用者を抱えている. 続的に電力供給を受ける方式.  ②その通話料請求を兼ねた決済機能をこう.  ②自らが電力を発電し継続的に電力をまか.   した限られた業者が持っている. なう方式. 1)電力供給の多様化.

(10) 横浜経営研究 第24巻 第4号(2004). 92(366). 図表7 最近の携帯電話をめぐる動き 記事の見出し(読みづらい部分は多少アレンジした). 年月日. メディア. 2003/08/12. 日本経済新聞. 2003/09/15. 日本経済新聞. UCカード,携帯電話をクレジットカードに. 2003/09/21. 日本経済新聞. KDDI,音声・地図で歩きながらGPS道案内. 2003/10/15. 日経産業新聞. ボーダフォン,携帯電話でテレビ. 2003/10/17. 日経産業新聞. 沖電気工業,携帯電話を使った現金決済サービス. 2003/10/22. 日本経済新聞. ドコモ.ICカード内蔵携帯電話+電子マネー,ソニーと提携. 2003/11/01. 日本経済新聞. 2003/12/16. 日経産業新聞. ドコモ,携帯がクレジットカードに,ICカード端末. 2004/Ol/20. 日経産業新聞. レスキューナウ,GPS携帯で応答,災害本部の端末に表示. 2004/01/24. 日本経済新聞. KDDI,住所の音声入力による地図情報の提供. ドコモ,コンビニでネット通販を携帯で代金支払い. 松下,ドコモ,FOMAで声紋認証.  ③非接触により外部から一時的に電力獲得. チップを内蔵させ,下敷きのようなパドの上に.   を行なう方式. 乗せるだけで電磁波による電力供給がえられる.  ①はこれまでパソコンや携帯電話で行なわれ. 方式を提:唱している.これにより,電源コネク. ていた一般的な電力供給方式である.②はアル. タが機種ごとに異なってもパドの上に情報機器. コールなどの供給により,自らが電力を発生さ. を載せておくだけで,充電が可能となる.. せる方式である.また③は電磁誘導などにより 一時的にデバイスに電力供給される方式である.. 3)自ら発電機能を備え電力をまかなう.  この典型例は太陽電池である.しかし太陽電 2)外部からの継続的な電力供給. 池は電卓など比較的電力の少ない製品に向いて.  この方法は従来からあるが,ユビキタスを促. いる.ドイツのブラウンフォーファー研究所10>. 進するにあたり,旅行先,新幹線,飛行機,自. では高効率太陽電池の開発に成功し,理論限界. 動車など,いわゆるモバイルにおける電源供給. 値28%に近い23%の太陽電池を実現した.弱光. をどのよう確保するかが重要である.たとえば,. でも1wの充電が可能でPDAの駆動が可能であ. 現状ではノートブックの電源コネクタが各社ま. るという.一方,米コロンビア大学機械工学科. ちまちであったり,街中での電源コンセントが. のリュック・フレシェット助教授は,超小型の. 見つけづらかったりする.一般的には,パソコ. ガスタービンエンジンを開発した11).この極小. ンの駆動周波数のスローダウン,モニタや周辺. 発電機の大きさは普通の発電所に比べて約1000. 機器の節電など副次的な手法により,バッテリ. 分の1の体積1cm3のユニットで構成されている.. ーの給電時間を延ばす方法が多い.松下電器は CD−R/W型にもかかわらず実に7.5時間のバッテ. 発電能力も約100万分の1で毎分240万回転で20 ワットの電力を生み出すことが可能であるとい. リー給電時間が可能で,東京一大阪間の往復の. う.通常はパソコンの底部に化石燃料タンクを. 移動に耐えるノートパソコンを発売し,発売以. 設け,その中に発電ユニットを入れるという.. 来生産が追いつかない状況となっている.. 発電能力は通常のリチウム電池の10倍で,燃料.  英国のスプラッシュパワー社9)は,スポット. も24時間の連続運転に耐えうるという.素材は. オフィスなどでのパソコンや携帯電話に電磁用. シリコンの薄板8枚からできており,高温ガス.

(11) ユビキタス情報環境の展開(守屋康正). (367)93. 図表8 燃料電池パソコン(NEC). 、期齢糊軸働i. 欝鐸1 ’毒. 燃料カートリッジ. メタノールタンク. らコンプレッサーにエネルギーが伝わり,発電.  NECの燃料電池の出力は平均出力14w,最大 出力24wであり5時間駆動が可能である.一方,. 装置を駆動するという.給油方引きの為,充電. 東芝は平均出力12w,最大出力20wで5時間駆. 時間などが必要なく燃料補給ですぐに使えると. 動である12).しかしながらこの燃料タンクの供. いう.. 給方式が各社ばらばらでは,スケールメリット.  現在最も実用性の高い技術は燃料電池である.. が出ず,各社パソコン電源のコネクタ形状の違. 燃料電池の開発は,自動車,店舗などのコジェ. いと同様の問題が起きかねない.2003年10月,. ネレーション,パソコンや携帯電話のバッテリ. このような問題を解決するために,日立,東芝,. ーの3分野に大別されるが,いずれも基本原理 は同じである.すなわち,水の電気分解は電気 を印加することで酸素と水素に分解されるが,. NECなど16社が集まり,日本電機i工業会内に 燃料電池規格に関する委員会を設置した.この 委員会では,燃料電池の出力,燃料消費率など. 逆に燃料電池は酸素と水素を融合させて,電気.. 基本性能の規格や,メタノール容器と機器との. と水を作り出す.このとき酸素は空気中から採. 接続方式などを検討する13).メタノールが医薬. 取するが水素は別途供給する必要がある.この. 品であること,危険物であるため機内持ち込み. 水素の供給には,高圧で水素を供給する方式と. ができないこと,メタノールの携帯は高濃縮が. メタノールを供給する方式がある.パソコンや. 望ましいのに対し,水素還元時の濃度は薄い方. 携帯電話の場合はメタノールを供給する方式で. がよいことなどの課題も多い.. をタービンに噴射することにより,タービンか. ある..  図表8はNECが発表した燃料電池パソコンの 試作機である.. 4)一時的な電力獲得. 前出の米ADS社の関連会社であるデジタル.

(12) 94(368). 横浜経営研究 第24巻 第4号(2004). 図表9 非接触型ICカードの電力供給 ●・匿■■■■... ■昌置■.■嘘■口職■顧■薩8.6■..■・日曹.. 蕊:ご」温惜器盟唱===器==瑞二=:::、.       ゆゆう. ’”. 1三‘ 1≡≡. CPU. ===. 1≡≡. ll≡ ≡1≡ ≡1≡ ≡1≡ =≡l. l≡1.  アンテナコイル (電源供給とデータ交換). ≡≡≡. 総監. □□ □□.        iii.        iii.    注)実際のデバイス形状は;聾 鞄 機lll言lllllll翻藷無ll三三1……響. エンジェル社14)は体温を利用して電力に変換. 5.ユビキタスにおける事業的展開. する超小型発電装置を開発した.これは体の熱 から3ボルト,10μwの電圧が得られるという.. 5.1姿をあらわしたユビキタス事業. これは熱電変換物質の端と端に温度差が生じる.  ワイザーがユビキタスを提唱してから15年あ. と電流が発生するような物質を利用している.. まりの時間が経過し,情報技術の進化とともに. この物質はセラミック材料で形成され体積は. ユビキタスな事業展開が各所で見られるように. 1cm3であり,充電が不要である.用途として. なった.もちろん,ワイザーが理想と描くユー. は,時計やカプセルチップの電源が考えられる. ザーインターフェイスが実現されたわけではな. という.. い.むしろ老若男女をとわず,利用者の情報リ.  一方,非接触のICカードやICタグは,カー ド本体に電源は持たない.その代わりに図表9. 適切と思われる.. のように電磁誘導兼データ交信用のアンテナを.  この15年間にインターネットやパソコン,携. カードの中に実装している.. 帯電話やカーナビゲーションなどが普及し,更.  実際に実装されるデバイスは数ミリ角のチッ. にはホットスポットと呼ばれるインターネット. プであり,図表とは異なる.また搭載するチッ. 接続サービスが出現するようになった.こうし. プの種類によっても消費電力は異なる.電力は. て我々の周りでは,ユビキタスな情報環境基盤. リーダー/ライターと呼ばれる親機とカードの. をベースとした日常生活が営まれるようになっ. アンテナから供給されるが,基本的には励起,. てきた.かつては電車内での携帯電話の自粛の. テラシーや操作能力が向上したといったほうが. 周波数印加,暗号処理,デーダ読出し,再書込. アナウンスなどは想像することさえ出来なかっ. みといった一連の処理を瞬時に行なう必要があ. た.. る..  ユビキタスな情報環境が出現した今日では, 携帯電話事業やICカード事業などを中心とした 新たな事業展開方法の骨格が形作られるように なってきた.本項ではこうした事業展開につい.

(13) ユビキタス情報環境の展開(守屋康正). ての考察を行なう.. (369)95. ョンにある事業に,多くの情報技術が組み込ま れつつある.これは,前述のように決済機能を. 5.2 ワンストップ化. もち,サービスを行なう拠点を提供するコンビ.  かつてインターネットビジネスが出現したと. ニエンスストアと,各家庭の玄関口へのリーチ. きに,ポータルサイトという呼称が使われ,ネ. をもち,宅配と代引きという決済機能を提供す. ットビジネス各社はその顧客獲得にしのぎを削. る宅配事業のように付加価値を高めるサービス. った時期もあった.ポータルとは玄関口のこと. 展開が,携帯電話やICカードの分野において同. であり,利用者がインターネットへのアクセス. 様に展開されつつある.かつて地域情報化の一. 時に最初に訪れるサイトで,そのポジション確. 環として自治体とメインフレーマが中心となっ. 保はインターネットの事業展開上きわめて重要. て進めたICカードによる公共サービスの展開と. な位置づけである.. は性質を異にしている.もちろん,こうした公.  ネットバブルあるいはITバブルといわれた. 共サービスでもワンストップ.化への政策がなさ. 時期には,サイトを訪問するネットユーザの数. れなかったわけではないが,各種のコンテンツ. がサイトの運営会社の評価価値であるとの認識. を巻き込んで成長する構図には至っていない.. が高まり,各サイトがさまざまな手法を考えて. 集客と設備投資に二進した時期もあったが,収. 5.3 事業的連携の動き. 益の源泉が不明確なサイトは自然淘汰的に消滅.  NTTドコモなど携帯電話3社は,ネット通販. していった.ビジネスモデルに関する研究は. でオーダーした品物の代引きをコンビニエンス. 多々あり,本稿で論じるつもりはないが,生き. ストアで行うサービスを開始した.この方式は,. 残ったサイトの成功要因にサービスのワンスト. ネット通販会社が利用者の携帯電話に料金情報. ップ化があげられる.. を二次元バーコードとして送り,顧客が店頭の.  これは何もネットビジネスに限ったことでは. 読み取り機にかざせば料金などが表示させ,支. なく,たとえばコンビニエンスストアにおいて. 払いを済ませる.これにより,払込書送付など. は,決済機能がある店舗をベースとして,ネッ. の面倒な手続きが省け,利用者も携帯一つで決. ト注文の書籍の代金引換や,公共料金の払い込. 済ができる.対象店舗はエーエム・ピーエム・. みや宅配の受付代行,さらには銀行ATMなど. ジャパンやローソン,ミニストップである.. が設置されている.すなわち,コンビニエンス.  ソニーと三井住友銀行は,電子マネーエディ. ストアが販売者と消費者の仲介をするマッチン. の展開を行っている.通常電子マネーには,ネ. グ機能の提供がこれに該当する.. ット上で展開するものと,カードにプリチャー.  これらを,ユビキタスという観点で注視すれ. ジをして展開する形式があるが,エディは後者. と大きく2つの分野でその傾向がみられる.. である..  一つは携帯電話であり,もう一つは電子マネ.  エディと従来のクレジットカードの根本的な. ー付のICカードである.. 違いは,利用限度額の違いであり,基本的には.  いずれも個人が常時携帯し,決済機能を有す. 利用者の銀行口座への自動引き落としの連携が. る点が共通事項としてあげられる.さらに前述. ないため,紛失時の被害を最小限に留めること. のコンビニエンスストアによるワンストップ化. ができる.小銭を持ち合わせなくとも買い物が. との類似点として,仮想的なテナントを通じて. できる電子マネーの入った財布である.. 商品やサービスを提供するサプライや機能を取.  一般に電話や乗車のプリペイドカードの債権. り込んで,ワンストップ化を強める点である.. 者は単一の商品・サービスへの債権を有するが,. すなわち,決済機能のサービスを行なうポジシ. エディは債務者が複数のサービスへの債権を有.

(14) 96(370). 横浜経営研究 第24巻 第4号(2004). する形となる.. している.第2段階は2006年∼2009年の化粧品.  エディの利用者はエーエム・ピーエム・ジャ パンの店頭で,アポインツと呼ばれる情報端末. など比較的高額な商品への導入であり,自動検. 品や万引き防止を狙いとしている.第3段階は. にエディをかざしてタッチパネルを操作して残. 2010年以降の導入であり日用雑貨などの一般商. 高を確認したり,航空機利用や買い物でためた. 品への適用や,商品単位での会計自動化の実現. ANAのマイルを現金に換えてエディに取り込. を狙いとしている.同社は,既にジレットと 「スマート・シェルフ」計画と呼ばれる剃刀単. むことができる.従来ポイント管理のみを行な シュ化は新たな付加価値の提供である.. 品に対する適用実験を行ってきたが,2003年7 月に停止した.実験の結果,現状のICタグのコ.  このサービスにより,専用読み取り機付きの. スト高と読み取り装置など工程上の課題が判明. 自宅のパソコンや航空会社の専用端末でしかで. したという.. きなかった残高照合が,外出先でも気軽にでき.  世界最大の小売である同社の導入実施計画は,. るようになる.今後は,クレジットカードから. 他の小売や製造業者の製造・物流プロセスへの. エディへの入金も可能となり,来店時の利用で. 多大な影響が予測される.このような展開を考. ポイントをためる事も可能という.. 察すれば,現在製造から販売にいたるサプライ.  一方UCカードは,2003年10月から, NTTド コモの携帯電話を利用したクレジット決済サー. チェーンマネジメントの方式が大幅に改善され,. 一品単位での管理や,保守・リサイクルといっ. ビスの商用化実験を開始した.この方式は携帯. た消費者サイドでの追跡への展開が予想される.. 電話に付加された,Bluetoothを用いて,提携 先店舗のレジ端末と交信してクレジットカード. 5.5 事業連携の活性化. 機能の提供を行なうものである..  以上のようにユビキタス事業の連携の特徴は,.  2003年4月から開始されたNTTドコモ, UFJ. 携帯電話や定期券・乗車券など,利用者の必須. 銀行,JR東日本,エーエム・ピーエム・ジャ. 携帯物をキャリアとして利用し,その決済機能. パンが開始した携帯電話のウオレットサービス. を利用して新たな付加価値を提供しようと・して. は,携帯電話に非接触型のICチップを組み込む. いる点である.さらには,前述のように航空会. ことで駅の改札やコンビニエンスストアでの決. 社のマイレージなどが参加することで,従来航. 済を自動化している.. 空券との引き換え機能しかなかったポイントを.  JR東日本が展開しているスイカは,駅の改. 換金機能により,一種の電子マネーとして取り. 札に行かないと乗車券購入用のプリペイドマネ. 扱うことを可能とした点も特徴としてあげられ. ーのチャージができないが,銀行機能と携帯電. る.. 話機能を組み合わせることで,24時間どこでも.  コンビニエンスストアやスーパーマーケット. この作業が可能となる.同サービスの適用箇所. にとっても,購入時の手続きに時間のかかった. は,首都圏の駅470と,エディが利用可能なコ. クレジット決済が,カードをかざすだけで電子. ンビニエンスストア1300店舗が対象である.. マネーを引き落とすメリットは大きい.. っていたマイレージに比べ,ポイントのキャッ.  図表10に携帯電話とICカードへのワンストッ 5.4 サプライチェーンでの連携. プ化に向けた事業連携の概念図を示す.両者共.  2003年6月,ウォルマート15)はICタグの3段. 決済機能とそのベースとなる顧客数が強みとな. 階の導入計画を発表した.第1段階は2003年∼. り,各種機能を吸収する傾向にある.携帯電話. 2005年での商品のパレットやケースでの管理で. は今後アドホックな中継機能を有することによ. あり,配送ミスの防止,工程管理などを目的と. り,企業情報へのアクセスや組織的なコラボレ.

(15) (371)97. ユビキタス情報環境の展開(守屋康正). 図表10 ユビキタスにおけるワンストップ化.        クレジット         カード. 無線LAN. キャッシュ  カード. ITS. 住民基本  台帳. GPS. ユビキタス情報環境. 医療カード. プリペイド  カード. (新規事業領域)  各種 IDカード. ポイント カード.  携帯電話 企業情報 システム連携. ・顧客数 ・決済機能 ・中継機能. 相互作用. ICカード ・契約店数 ・契約者数 ・決済機能. 電子マネー. ーションが可能となる.一方ICカードも身分証. コ・コンペティションを引き起こしている.こ. 明,キャッシュカード,クレジットカード,ポ. れらに共通することは,人々が常に持ち歩き利. イントカード,プリペイドカード等を統合した. 用するコモデティなデバイスである点と,決済. 認証と決済のプラットフォーム化が進んでいる.. 機能があるために他のサービスを巻き込み易い. 6.結 言. という点である..  図表11に現状のプレーヤーの関係を示す.今.  ユビキタス環境が進展する中で,各社の強み. 後こうした現象は更に顕著になると考えられる.. を生かした事業提携が活発化している.. 紙面の関係上本論文ではあまり取り上げていな.  そのベースは,携帯電話の普及台数(ドコモ. いが,ICタグの分野でも物流コスト削減や,マ. はすでに2002年で国内4500万台)と料金徴収機i. ーケット調査のための商品別管理が促進され,. 能をさらに拡大し,マイクロキャシュ機能16),. 共通管理に向けて連携の動きが活発化すると思. などの多機能化,JR東日本のスイカ(2003年 で300万枚)による定期券機能とオレンジカー. われる..  ユビキタス情報環境の浸透は,個々の神経細. ドのプレチャージ化などキャッシュサービスか. 胞が結合されるような,マクロ的な結合からミ. らの多機能化,ソニーのようなフェリカの標準. クロ的な結合へのアーキテクチャの変化でもあ. 化プロモーション(2002年国内1700万枚)のた. る.すなわち,利用者の意識の有無にかかわら. めの多機能化と,一見異なる入り口からの事業. ず,計算機資源が利用者や商品に密着し,それ. 参入であるにも関わらず,競争と協調という. ぞれをネットワークと結合させることにより,.

(16) 横浜経営研究 第24巻 第4号(2004). 98(372). 図表11ユビキタスのコ・コンペティション. ㊥、一. コンビニ. OATM   。携帯のク.  〇新幹線スイ.             私鉄バス スーパー            (パスネット       ○カード             バスカ)       相互運用. キャッシュカード化.   検討中.    /.               ↑.  ○カード.   ○エディのプリチャージ.   ○携帯の.     ○利用網拡大. キャッシュカード化 JR東西. ドコモ. ○改札引落と. フオーマ. (スイカ. ○駅中禾1. イコカ). ○ビュー. ○フォーマ普及   ●異なる電子マネー ○エディ共有  /○フェリカの普及協調. ・シェア争い/ スイカ.  「  ソニー  エディ. CDMA 1. x. ○ホットスポット. カード. ●路線対決. ビットワレット.  au. ○カード. ○マイレージ キャッシュ化.  AM マイレージ. ●競争. NTT東西. VISA. スイカ. ○協調. マスター カード (mondex).  01.x普及 ○フェリカ共有 ●電子マネー. 鰯 ○住 カード.  NTTCOM オールイン ワンカード. .かド規格_一ノ. リテールな事業機会が創造されている.こうし.  また,満員電車の中でカードリーダーを乗客. た背景を踏まえセキュリティに関わる次の2点. の胸にあて,銀行のキャッシュカードの番号と. を課題として取り上げたい.. 暗号を読み取る犯罪が起きている.今後クレジ.  第1は,個人のモビリティ向上がもたらす企. ットカード,キャッシュカード,電子マネーに. 業セキュリティへの影響である.すなわち,従. 加えて住基の個人情報などの統合化が予測され. 来はインターネットの接続時のファイアーウォ. るが,このような個人情報や財産の保護,ある. ール,ネットワークの暗号化,デスクトップや サーバーセキュリティの確保が企業セキュリテ. いはICタグやマイクロカプセルに収められた固 有情報が極めて安易に呼び出せるようになった. ィの基本政策であった.しかし,個人が様々な. ときの防止策をどうするかが今後の課題となる.. 場所でモバイル機器を活用して行動するように. 技術面だけでなく運用面での対策が必要となる.. なると,監視対象範囲が拡大する点である. 注.  第2は個人情報の保護策である.アルビン・ トフラー17)はカメラ付携帯がもたらす超壁視. 1)Ubicom:Mark Weiserが提唱したUbiquitous. 社会の到来を危惧している.これによれば,子.  Computingの略であり,1993の彼の論文は. 供の喫煙現場やイスラム教徒の断食時の飲食を.  ACM&IEEE,lnternational Conference on  Software Engineering “Best Paper Ten Years. 盗撮し,告発や脅しなどの犯罪行為が多発する.  Later” award for “Pr6gram  slicing.”に選ば. 恐れがあるという..  れた..

(17) ユビキタス情報環境の展開(守屋康正). 2)http://www.bluetooth.com/. 3)2004年1月6日『ユビキタス前進』 日本経済   新聞朝刊 4)2003年11月19日『溶剤に混ぜて塗る微細半導   体』日経産業新聞 5)野村総合研究所著『ユビキタス・ネットワーク   と市場創造』野村総合研究所,2002.1 6)Nicholas Negroponte『being wireless』Harvar4   Business Review,2001.12,ダイヤモンド 7)http:〃standards.ieee。org/announcements/   80211g伽al.htm1. 8)2003.09.19「国内無線LAN,昨年の出荷台数,   2.1倍増』日経産業新聞 9)http://www.splashpower.com/ 10)http・〃www.h・twi・ed.・・jp/・・w・/・・w・/t・・h・・1・gy/. (373)99. ユ6)コンビニなどでの小額商品購i入の電子決済 17)2003.12.16『カメラ付携帯 監視社会生む恐れ』   読売新聞朝刊. 参 考 文 献 〔1〕マイケル・フィルフイック著 鴨沢眞夫訳『未   来を作った人々』2001.10毎日コミュニケーシ   ョンズ 〔2〕ニコラス・ネグロポンチ『ビーングワイヤレス』   「ハーバードビジネスレビュー」2001.12 ダイヤ   モンド社 〔3〕河原敏朗,仲 信彦,岡川隆俊『次世代携帯電   話におけるVolP』「情報処理学会誌Vol.42 No.02」   2001,3,情報処理学会.   story/20010713301.html. 〔4〕星徹『VolPの最新動向』「情報処理学会誌. n)http:〃www.wired.com/news/photo/(λ1860,48400,00.htmI.   VoL42 No£2」2001.3,情報処理学会. 12)日経BP『燃料電池2004』,2003.10,日経BP社 13)2003/10/20『電機各社,小型燃料電池,規格を. 〔5〕森川博之,南 正輝,青山友紀『ユビキタスネ   ットワーキングへの道』「情報処理学会誌Vol.43.   統一へ』日本経済新聞.   No.06」2002,6,情報処理学会. ユ4)http:〃www.digitalangeLIlet/. 〔6〕・野村総合研究所『ユビキタス・ネットワークと   市場創造』2002.1 野村総合研究所 〔7〕川又英樹『ICタグウォルマートが採用』「日経   情報ストラテジー」2003.9日経BP. 15)2003/09/23 『ICタグ,物流2005年実用,ウォ.   ルマート副社長が講演』日経流通新聞. 〔もりや やすまさ 富士ゼロックス(株)日本ファシリティマネジ メント推進協会ベンチマークデータセンター事業部長(出向中)〕.

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