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「内分泌かく乱物質」の特集によせて

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Academic year: 2021

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特 集 序 文

「内分泌かく乱物質」の特集によせて

宮 本  和 久

KAZUHISA MIYAMOTO 大量生産,大量消費に支えられた産業経済の発展にともなって,多種多様な有害化学物質が環境中に放出 され,都市・産業公害や国境を越えた環境問題を引き起こしている。我々が便利に使ってきた農薬,工業用 薬剤,重金属などの化学物質の中には,残念ながら,ヒトの健康に直接害を与えるものも多く含まれている。 生態系への影響を介した被害も無視できないことから,ヒトに有害な化学物質を規制する目的で制定された 「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」の一部が2003年に改正され,環境中の動植物へ の被害防止の観点からも審査・規制が行われることになった。 きわめて低濃度でもヒトと生態系に重大な影響を与える化学物質も無視できない。とくに,1996年にコル ボーンらが「奪われし未来」を発表して以来,内分泌かく乱物質(いわゆる環境ホルモン)に対する社会の 関心が急速に高まっている。生活環境に存在する微量成分がホルモン様の作用を示し,野生動物に対して様々 な異常現象,機能障害をもたすことが報告されてきた。人類に対しても健康影響を与える可能性があり,世 界各国で影響評価やリスク管理など様々な検討がなされている。環境バイオテクノロジー学会でもこの問題 に注目し,2001年には「内分泌かく乱物質(環境ホルモン)研究の最前線」を主題にした第14回シンポジウ ムを企画・開催した。 本特集では,環境バイオテクノロジー学会の特徴を前面に出すように編集方針を立てたつもりである。ま ず,バイオ技術による内分泌かく乱物質の分析法,生物影響評価法の開発に関する総説をお願いするととも に,これに関連した一般論文を取り上げることにした。つぎに,廃水処理現場における内分泌かく乱物質の 動態,関与する微生物,下水処理工程での除去特性について,実態把握のための豊富なデータをもとに総説 して頂いた。さらに,内分泌かく乱物質が既に環境中に広範囲に拡散し,きわめて低濃度で作用している点 を考慮し,光独立栄養微生物による分解処理についても展望することにした。 大量の排水を定常的に処理する必要のある下水処理工程においては,微生物動態の解析に基づく運転条件 の最適化や新規バイオ技術による処理装置の開発研究が重要な課題となろう。内分泌かく乱物質を環境に放 出しない努力である。また,広範囲の環境に拡散した内分泌かく乱物質に対しても,これを放置しておくこ とはできない。例えば,廃プラスチックや焼却灰を含む廃棄物の処分場から排出される「浸出水」には多種 の内分泌かく乱物質が含まれることが知られているが,多くの場合,浸出水にはバクテリアなどの従属栄養 生物の増殖を支える有機基質が少ないので,光独立栄養生物である微細藻類の代謝・分解能に期待がかかる。 さらに,これらの処理技術の開発,環境中での動態把握など,今後の研究課題の早期解決を図るには,内分 泌かく乱物質ならびにそれらの代謝産物の簡便な分析・評価技術の開発が先行しなければならないだろう。 今回の特集で相互に関連する分野における研究の現状が紹介されている。内分泌かく乱物質の処理に関わる バイオテクノロジーの進展に寄与できれば幸いである。 (本誌編集委員,大阪大学大学院・薬学研究科 教授)

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