アメリカにおける文学を核にした国語科指導
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(2) 'M. 「文学を核にした指導」の重視は国語科教育の領域での変革であるが、それが起こる要因 は、国語教育界だけではなく、大きく見れば社会全体の動きとも関係している。ここでは、 その要因を「a社会的要因」 「b教育界全体の要因」 「C国語教育界の要因」 「d周辺領域 の研究成果の要因」の4つにわけて整理してみた。 【a社会的要因】 aの① 〔総合的な指導への転換の要求〕 1980年代前半に、 「危機に立っ国家(Nation at Risk)」 「ボイヤー報告(High School:A report on Secondary Education in America)」の2つの報告書が出され、日 本、西ドイツなどの台頭により、アメリカという国家が(経済的に)危機に瀕しており、 国家を救うためには、すぐれた人材を生み出す教育を実現させる必要があることが指摘さ れた。アメリカの経済を立て直すことのできるすぐれた人材を育てるには、国語科の指導 としては、細かい言語技能ではなく、言語によるコミュニケーションに重点を置き、コア・ カリキュラムによる総合的な指導をおこなうべきであるという提言がなされた.拝2) aの② 〔英語を「母語」としない児童の増加〕 学校では英語を習うが、家庭では違う言語を使う、いわゆるバイリンガルの児童が増え てきた。そうした児童の多くは英語の能力が低いために、能力差が如実に現れるスキル中 心の指導には、興味を持って参加することができにくいQそうした児童でも、意味世界を もった文章を味わうという学習には、ある程度興味を持って参加することができるという 利点がある。注3) 【b教育界全体の要因】 〔さまざまな形態の指導によってきめ細かな教育を維持しようという努力〕 アメリカの教師は、 70年代に推進された児童中心の教育への取り組み、つまり「個別指 導」によるきめ細かな指導を体験したが、 80年代になると文教予算が削減され、多くの予 算を必要とするそうした指導が維持できなくなった。しかし、きめ細かな指導の良さを一 番良く知っていたのは、教師たちである。個別指導を前面に押し出した指導はできないと しても、個別、一斉、グループというさまざまな形態を組み合わせながら、できるだけき め細かな指導をおこなおうと教師たちは考えていた。 【 C国語教育界の要因】 Cの① 〔基礎読本(basal reader)を用いたスキル中心の方法に対する不満〕 細かく分けたスキルを、基礎読本を用いて、小さなステップを踏みながら指導していく 伝統的な方法に、教師たちも児童たちも飽きてきていた。作品全体を読み味わうことが中 心となるもっとダイナミックな方法を求めていたのである。 Cの② 〔「基礎-帰れ」運動へのアンチ・テーゼ〕 70年代後半から80年代にかけて「基礎へ帰れ(Back to Basics)」運動がおこり、スキ ル中心の指導をもう一度強化しようとしたが、 Cの①のような問題を感じていた教師たち は、それに対して反旗を翻した。 【 d周辺領域の研究成果の要因】 心理言語学、認知心理学などの教育の成果が蓄積され、これまでと違った面を持つ国語 科指導法の出現を支えたo例えば、 「ホ-ル・ランゲージ」の提唱者であるGoodmanの 「読みの過程の心理語学的モデル」などが基礎理論として多くの教師たちに影響を与えたo注4) 本論では、こうした要因により起こった< 「文学を核にした指導」の提唱>が持っ意味、 特にその提唱が求める変化の3つの柱を明らかにするために、 「文学を核にした指導」に.
(3) アメリカにおける文学を核にした国語科指導. 41. ついてわかりやすくまとめてあるDonnna L. WisemanのLearning to Read with Literature.16を取り上げ、そこに示された具体的資料を引用、活用する。 (本論で示す 資料は、本書からの引用、または本書の一部をまとめたものである。) 2. 「文学を核にした指導」で言う「文学」とは何か 「文学を核にした指導」では、児童が読んで楽しめるという意味で「児童文学」作品が 取り上げられることが多い。 Wisemanは、 「文学を核にした指導」の中で取り上げる児 童文学作品のジャンルを次のように分類している。注6). 1.伝統的文学(traditional literature) *昔話、伝説、伝承歌など長い間伝えられて、読み継がれてきたもの0 「グリム 童話」なども含む。 2.ファンタジー(fantasy)とサイエンス.フィクション(science fiction). 3.歴史小説(histrical fiction) 4ノンフィクション(nonfiction). * (日本で言う「ノンフィクション文学」とは異なっている) 「情報を与えてく れる書物(informational books)」という意味であり、いわゆる「説明的文 章」もこの中に含まれる。. 5.請(poetry) 6.現代のリアリスティックな作品(contemporary realistic fiction) この分類において、 6.の「現代のリアリスティックな作品」は、 1.の「伝統」文学に対 して「現代」であり、2.の「ファンタジー」に対して「リアリスティック」であるものと いう意味であろう。また、4.の「ノンフィクション」は、いわゆる「ノンフィクション文. 学」という意味だけではなく、例えば写真や絵を多用して生物や社会の仕組みを解説した 図鑑のような書物をも含むジャンルである。その意味で、わが国の国語教育で言う「説明 的文章」もこの中に含まれると考えてよいであろう。つまり「文学を核にした指導」で言う 「文学」とは、 「文芸作品」だけではなく、あらゆるジャンルの「書物」を含むものなのである。 ではなぜ「書物」という言葉を使わないで、 「文学」という言葉を用いるのであろうか。 そこには従来の指導に対する批判が隠されている。従来の国語科指導においては、次のよ うな文章によって指導がおこなわれていた。 ・文脈を持たない語嚢群や短文 ・文脈を持ってはいても、短いために非常に弱い文脈しか持たない文章 ・ある程度長いが、作品の一部だけを切り取っているため、作品全体との関係 で文脈をとらえることのできない文章 こうした「分断」され、 「自己完結」しない、 「意味世界を構築」できない文章の対極に あるものとして、 「文学」という言葉が使われているのである。したがって、 「文学」とい う言糞を読みかえると、 「分断されていない、自己完結した、意味世界をしっかりと構築 できる作品・書物」ということになる。 3. 「文学を核にした指導」と「基礎読本による指導」との比較 「文学を核にした指導」は、 「分断され、自己完結しない、意味世界を構築できない文 章」を用いた指導から、 「分断されていない、自己完結した、意味世界をしっかりと構築.
(4) 42. できる作品・書物」を核に展開する指導への転換を求めている。 「分断され、自己完結し ない、意味世界を構築できない文章」を用いた指導の代名詞ともいうべきものが、 「基礎 読本(basal reader)」による指導である。 ァメリカの教師たちが直面している課題は、この「基礎読本による指導」から「文学を 核にした指導」への転換なのである。これが、 < 「文学を核にした指導」重視の提唱>が 求める変化の第1の柱である。 それが具体的にどういう変化であるかを明らかにするために、 「基礎読本を用いた指導」 と「文学を核にした指導」とはどう違うかを整理する必要がある。 Wisemanはその違い を次のようにまとめている。注7) 「基礎読本による指導」 「文学を核とする指導」. 「読本を用いた指導」と「文学を核にした指導」とは、同じように見えながらもかなり の面で違いがある。特に重要な違いは、 bのように児童がある程度自分で作品を選択す ることが許されており、また、 Cのようにそれを読むことが活動の中心であるところであ る。 「文学を核にした指導」は、 dのように、教師が、 「管理者」としての立場から「支援.
(5) アメリカにおける文学を核にした国語科指導. 43. 者、ガイド役」への立場へと、自らの姿勢を改めることを求める。このことが、 <「文学 を核にした指導」重視の提唱>の求める変化の2番目の柱である。 4. 「文学を核にした指導」の学習活動の時間設定 では、 「文学を核にした指導」をおこなうために、実際の教室ではどのような学習活動が 用意されているのであろうか。 「文学を核にした指導」の学習活動の時間設定の例を次に掲げるO注8) 活動第1-2学年第3-4学年第5-6学年. a読み聞かせ毎日毎日毎日 10-20分15-30分15-30分 b児童と教師とが一緒に315週間に場合に応じて 声を出して読む10-30分 (気にいった部分を繰り返す) C教師が指導するミニレッスン毎日毎日毎日. 5-10分5-10分30-40分 d教師の指示によって毎日毎日毎日 読む20-45分30-45分30-45分 e児童が自分で選んだ本を毎日毎日毎日 自分で読む10-20分15-30分15-30分 f児童と教師とで書く315週間に場合に応じて 15-30分. g児童が自分で書く毎日毎日毎日 1 5-30分30-40分30-40分 h分かち合い-口頭表現毎日毎日毎日 10-20分5-10分5-10分 i各教科での学習内容に関する毎日毎日毎日 本を読む 「a読み聞かせ」 「b児童と教師とが一緒に声を出して読む」という項目があることか らわかるように、話しことばを用いた活動が用意されている。話しことばを用いて、作品 世界を集団で共有しようというねらいを持っているのである。 児童が自分で読む本を選択するというのが、 「文学を核にした指導」の基本方針である が、では読むことに関する基本技能をどこで指導するかという大きな問題が一方で存在す る。実際の授業においては、 「C教師が指導するミニレッスン」がおかれ、あるスキルに 焦点を当てた指導がなされる。続いて、 「d教師の指示によって読む活動」においては、 そのスキルを用いて読む練習をおこなう。こうした技能中心の指導がはさみこまれている のであるが、それはあくまで児童が自分で読む学習をおこなわせるためのものである。し たがって、 Cとdの活動は、 「e児童が自分で選んだ本を自分で読む」と3つで1セット になっているものととらえる必要がある。 文学を核にした指導は、読みを中心にした指導であるが、書く活動、つまり表現活動を.
(6) 44. もその中に包み込んだ総合的国語科学習である。ここでも、 rf児童と教師とで書く」 「g 児童が自分で書く」というように、教師がスキルを焦点化した指導と児童が自分でおこな う活動とが1セットになっている。 さらに、話し言葉での表現活動も用意されている。それが「h分かち合い-口頭表現」 である。 a、 bと同様、作品世界や意見を集団で共有するための手だてである。 児童の興味関心を生かして、自分で書物をひもといていかせる活動を実現するために、 「i各教科での学習内容に関する本を読む」活動が置かれている。教科を越えた学習活動 が含まれているという意味の総合学習でもある。 5.文学を核とした指導の指導過程の例 では、 「文学を核にした指導」は、具体的にはどのような指導過程をとるのであろうか。 ある作品を中心に展開する指導という意味では、さまざまな指導過程が考えられるのであ るが、ここでは「表紙を用いた予測」 - 「文脈による語句の理解」 - 「本文の理解」 「要約や相互質問などによる理解の確認」 - 「発展的活動」という筋道をとる、 「文学を核 にした指導」の1つの典型的指導過程の具体例を示すことにする。注9) 中心となる作品は、オールスパーグ(Cris Van Allsburg)の『2匹のいたずらアリ (Two Bad Ants)』である。題名が示すように、 2匹のアリが主人公であり、彼らが人間 の食卓の上の砂糖を食べようとして、さまざまな「冒険」をおこなう物語である。 【1日目の活動】 t") 1 -(かこの物語について予測をするO 教師は本の表紙を見せて、この物語にはどんな生き物が出て来るのか予測させる。表紙 を用いて、この物語にはどんなことが描かれているのかについての予測を、教師が引き出 す。児童の予測は、後で使えるようにすべて記録しておく。 ll②アリを観察して、記録をとる。. 1 1③観察を報告し合う。 予測が終わったら、児童と教師はノートと鉛筆を持って、アリを見つけに運動場に出る。 アリを観察して記録する。アリが木に登る様子、パンを運ぶ様子、穴に入る様子などを観 察する。教室に戻り、観察を報告し合う。教師はその観察報告を黒板に記録する。 1 1④語句を理解する。 教師は語句を黒板に書き、その語句の意味を児童に予測させる。 deemed (「思った」の 文語的表現) hovered (宙に舞った) rocketed (飛び出した) battered (へとへとになっ た)などは充分に話し合わせる。 【2日目の活動】 21①物語本文を読み、文脈によって語句の意味を考え、予測が合っていたかチェックす 旦o 教師がこの物語を朗読するのを聴きながら、アリを観察したことを振り返り、また、話 し合った語句の意味を確かめる。 2 -②物語本文の場面を理解する。. この物語の3つの場面について理解させ、その場面に語句を関係させる。 21③ edのついた動詞を理解する。 この本文を用いて、接尾辞edについて理解させる。 2 1④同義語を理解する。.
(7) 7メリカにおける文学を核にしたEg語科指導. 45. 【3日目の活動】 3-ョこの物語本文の中から、接尾辞のついた語を見つける。 31②この物語本文のプロット(出来事)を要約する。 ペアを組んでいる相手に自分の言葉でこの物語を話すよう、児童に指示する。出来事の 順番が正しいか確認するために、ペアが書いた要約を集める。それぞれのペアの要約を集 めて、オーバーヘッドを用いて、クラスの要約を作る。 31③この物語本文について質問をすることによって、児童の理解を深めるO 児童と教師がお互いに質問をする「リクエスト活動(Request activity)」をおこなう。 【4日目の活動】 4-(丑要約を用いて、この物語の出来事の順を確認する。 3日目に作成した出来事の順に整理した要約を印刷して配布する。児童はそれを-サミ で切り、順番をばらばらにし、そして、それに番号をふりながら物語を再び作り上げる。 41(塾絵を描かせることによって、この物語を要約する。 この物語を1文でまとめ、そのまとめを表す絵を描く。 41③接尾辞edのついた言葉に下線を引く。 【5日目の活動】 5-(》アリについてのさまざまなことがらについて調べる。 51②アリについての情報を分類する。 51③指示に従いながら、配布されたものを用いてアリを作る。 教師はアリについての他の本を示し、アリについてのさまざまなことがらを黒板に書く。 「どんな姿をしているのか?」 「どこに住んでいるのか?」 「何をしているのか?」という 疑問について答えをみつける。クラスでアリについてのことがらシートを作り上げる。教 師が用意したアリの体の各部分を描いた紙などを配布し、それを用いてアリを作る。 【6日目の活動】 6-(彰インタビューのための質問を作る。 61②インタビューの答を記録する. 6-③自分の思っていることを文章にする。 6-④インタビューの中に出てきた説明的な語句に注目する。 アリについて説明した本をもう一度示し、児童がお互いに与え合うための質問を作る。 ペアで質問(インタビュー)をし合い、その答を書いていく。インタビュー用の用紙を文 ごとに切り、 「どんな姿をしているのか?」 「どこに住んでいるのか?」 「何をしているの か?」という3つの基本的カテゴリーに分類する。そうした分類表は、児童がアリについ ての説明的文章(descriptive writing)を書くための基礎となる。それぞれの質問に対し て答えることは、説明的文章を書く活動における文章化の基盤となる。自分の書いた説明 的文章に絵を描かせる。 このように、本文を読むために、予測をさせ、観察をさせ、文脈を用いて語嚢の意味を 考えさせる。さらに、本文を読んだことを生かすために、発展的活動として、さまざまな 情報を集め、作文へ結びつけていく。つまり、 「内容理解を中心にした総合的国語学習」 であり、その中に要素の学習(語嚢、文法などの学習)が包み込まれているのである。.
(8) 46. 6. 「文学を核にした指導」を支える指導 指導過程の典型を示したが、実際の授業では、ある作品を読むことを中心に、さまざま な活動を組み合わせて、授業が構成される。ここでは① 「語嚢・語句に関することがら」、 ② 「理解に関することがら」、 ③ 「自分で読む活動に関することがら」、 ④ 「評価に関する ことがら」の4つの面から指導方法を整理してみた。 先に、 < 「文学を核にした指導」重視の提唱>の求める変化が、 (1) 「基礎読本の指導」 から「文学、つまり、分断されていない、自己完結した、意味世界をしっかりと構築でき る作品・書物を核にした指導」への変化、 (2) 「管理者」としてゐ立場から「支援者、ガ イド役」への教師の姿勢・立場の変化、の2つの柱を持っことを指摘した。さらに、これ から示す指導法によって、 3番目の柱を兄い出すことができよう。それは、 (3)学習の 「結果」ではなく「過程」を重視する、ということである。 これから具体例を提示する、 ① 「語嚢・語句に関することがら」、 (塾「理解に関するこ とがら」においても、知識を身につけたかどうかという「結果」ではなく、言葉を(文脈 などを用いて)どのように理解するかという「過程」が重視されている。また、 「過程」 に関する活動をより充実させるために、 ③ 「自分で読む活動に関することがら」が用意さ れている。さらに、 ④「評価に関することがら」にはまさに、 「結果」ではなく、児童の 学習の「過程」をとらえる方法が示されている。 【6-① 「語嚢・語句に関することがら」 】 「文学を核にした指導」では、綴りと発音の関係の規則性を指導するフオニックス11)に よる指導を、意味と結びついた指導法ではないとしてほとんど用いない。 先の指導過程の例にもあったように、語嚢・語句の指導を知識の注入としておこなうの ではなく、作品世界を支える要素の1つとして、作品と結びっけた形で指導をおこなおう とするo lつ1つの語嚢・語句は、孤立した意味を持っのではなく、必ず作品世界との関 係によって意味が決定されるのである。 6-①-1聞くことを通しての語嚢の学習 教師が読み聞かせをしている途中で、難しい単語については、立ち止まってその意味な どを確認するO読み聞かせているストーリーの文脈を用いて、語嚢の意味をとらえさせよ うというものである。 61①12ブレインストーミング(brainstorming)とマッピング(mapping) 文章中Iのある単語から連想した単語をどんどん言わせていく.ブレインストーミングと 組み合わせて、出てきた単語を結びつけて、分類する。読んだ後の活動では、下の例のよ うに、作品の中の語嚢を関係づけて整理するマッピングをおこなう。 さまよう(meander) さまよい歩く(wander)風吹きすさぶ道(winding road). /〈、 r\ 白昼夢(daydream)無意識(unthinking)迷う(lost)はぐれる(stray) 6 1①1 3単語の関係を用いる方策(word association strategies) いくつかの方法があるが、例えば次のようなものがある。 ア)教師が、文章中の児童が知らないと恩われる単語を示す。.
(9) アメリカにおける文学を核にした国語科指導. 47. イ)教師は、その単語に関係のある児童が知っている単語を2つ示す。 ウ)児童は、教師が示した知っている単語それぞれについて、小グループでプレインスト -ミングをして、関連する単語を出す。 エ) 2つの単語についてのプレインストーミングによって出てきた単語を並べ、それぞれ から5つの単語を選ぶ。 オ)それをもとに、元の難しい単語を説明したり、意味を予測したりさせる。 6 -①1 4語嚢の予測(vocabulary prediction) 文章の中に、児童の知らない単語が出てきた時に、それを黒板などで示し、その意味を 予測させる。文章を学習した後で、その予測を検証していく。 6 1①- 5読み手が語嚢を選択する活動(RSVP -ReadeトSelected Vocabuary Procedures) 下のようなワークシートに、児童が自分で記入していく。 読ん だ後意 味が. 意味 がわか らない. わか った単 語. 重要 な単語. 意味の推測. 調 べた結果. ■ ■ ■ 【6-② 「理解に関することがら」 】 「課題をもとに読んで考える活動(DRTA-Directed Reading-Thinking Activity)」、 つまり、文章をいくつかに分け、それぞれの部分について、教師が課題や質問を与えて児 童に活動させる指導は、小さなステップを踏む点で利点もある。しかし、読み手それぞれ の異なった反応を取り上げることができないために、 「文学を核にした指導」ではあまり 用いられない。それよりも、次に示すような相互交流をおこなわせる学習活動が活用され る。 6 -②- 1相互指導方策(RTS-Reciprocal Teaching Strategy)と相互質問活動(Request) 教師と児童とが、相互に質問とそれに対する解答とを繰り返していく活動。予測 (predicting)疑問(questioning)説明(clarifying)まとめ(summarizing)などにつ いて、教師が投げかけた質問に関して児童が答えたり、児童どうLで話し合ったりする。 6-②- 2物語の構造把握(Story Structures) 次のようなプリントに記入させることによって、プロット・登場人物・舞台背景・出来 事・事件・問題・テーマ・など、文章の流れを構成する要素を意識させるO この 物 語 に は ( (. ) と い う理 由 か ら、 そ れ は問 題 とな って い ま した○. そ の 問 題 は結 局 ( 最後 には (. ) と い う問 題 が載 り上 げ られ て い ます ○ ) した時 に、 解 決 され ま した0 ) とな り ま した○. 6-②-3再話(Retelling) 自分が読んだ物語の内容について、教師や同級生に話して聞かせる。 61②14ヒント再話(Cured Retelling) 児童はペアになって、同じ本を読み、どちらかが話し手になって、その物語の内容につ いて話す。聞き手の児童は、話し手の話を聞いて、話の中にチェックリストのどの項目が 出てきたかをチェックする。話し手が話し終わったら、チェックされていない項目につい.
(10) 48. て「( )についてはどうですか?」というように質問し、思い出させる。 自由再話ヒント再話ヒント. それは春のことでした。 the junior cakewalkにいる仲間 Brother Windを捕まえる 不器用な少年Ezel Brother Windは草地をさまよう 魔法使いMrs. Poinsettia. 【6-③ 「自分で読む活動に関することがら」 】 先に「基礎読本による指導」との比較をおこなったところで述べたが、 「文学を核にし た指導」においては、教師は<支援者・ガイド>の役割を演じ、あくまで主役は児童であ る。したがって、児童が「自分で読む活動」が重視される。 「自分で読む活動」を支える 工夫として、黙読、グループ活動、面談が用意されている。 6-③1 1黙読活動(SSR-Sustained Silent Reading)注12) ・教師を含むクラス全体で、それぞれが自分の読みたい本を選んで、黙読する。 ・父兄や校長、養護教諭などに参加してもらってもよい。たくさんの人が、読むことを 大切なことだと思っているというモデルを児童に示すことになるからである。 61③-2小グループ活動(Literature Group) ・本を読んで感じたことなどを、クラス全体ではなく、小グループで気楽に話し合うO ・異なった本に共通するテーマ、シリーズになっている作品、同じジャンルの作品、同 じ作者の作品などによって、グループを分けることが可能である。 6-③-3面談(Conference) 教師と1対1、または教師を含む小グループでの話し合い。これらは教師が設定する。 ア)自分が読んでいることを他の人と分かち合うことによって、面談が始まる。児童が 「読書記録」をっけていれば、そこに書いてあることを話させる。 イ)教師は、児童の話すことを聞き、作品について質問を投げかける。小グループでの面 談の場合は、児童どうLで互いに質問させる。 ウ)面談の中で、 (質問への)答の部分や好きな部分などを、声に出して読ませる活動を おこなわせる。後で使えるように、教師は児童のその音読の様子を記録しておく。 エ)児童と教師は読みの計画について話し合う。児童が次に読んでみたいものを示し、教 師はそれに合った作品や本を示す。こうした面談の結果、児童は次の数日間の読みの活 動についての計画を得ることができる。 6 -③1 4読みの個別化指導(Individualized Reading Instruction) ア)図書館や学校の図書室と同じくらいの良質の書籍をクラスに用意する。 イ)教師があるテーマや課題を与えるが、読む本は児童が自分で選択する。 ウ)教師と1対1、または小グループでの面談をおこなう。児童は本を読んで考えたこと を話す。教師は、どのくらい理解しているかをチェックしたり、どのくらい読むのが難 しい様子であるかを判別したり、作文を書くように励ましたり、さらに読み進めるよう に指示を与えたりする。 エ)読んだことを分かち合う活動をおこなうC.
(11) アメリカにおける文学を核にした国語科指導. オ) (次のような) 「読書記録」をっける。 (書名) (著者) (ページ数) Title. Author. #of Pages. 49. (開始B)読了日) Start Date. Finish Date. 6-③1 5読みの研究会(Readers'Workshop) 自分で読む活動をおこなった後、例えば「対話ノート(dialogue journals)」に、登場 人物や他の人に話しかけるような感じで、本を読んで感じたことを記録する。そして、そ れをもとに、児童どうし、または教師と話し合いをする。 61③-6リーディング・センター(Reading Center) 教室の中にリーディング・センター、つまり図書コーナーを設ける。リーディング・セ ンターでは、児童が自分で読む活動の中で選択したテーマや作家の本を展示するo 【6-④ 「評価に関することがら」 】 「文学を核にした指導」においては、児童の観察や、児童との面談(conference)の記 録を積み重ねていき、それを用いて児童の状態を把握するという評価が中心となる。 61④11チェックリスト(Checklists). 例えば、 「音読」 「作品を読んでの話し合い」 「詩を読んで意見を言う」 「作品を映画と比 較する」 「あるトピックについて意見を言う」 「自分が読んでいる本について意見を言う」 などの、項目を持ったチェックリストを教師は事前に用意しておく。教師は児童の学習活 動を観察しながら、そこに記号や数字でチェックしていく。 6 -④12活動の記録(Anecdotal Records) どのような活動をおこなったか、児童個々について、またグループやクラス全体につい て、エピソードなどを交えながら、記録していく。 61④-3面談の記録、児童が興味を持っていることがらの一覧表(Interview and Interest Inventories). 児童と面談した内容や、その際に児童が興味を持っていると話したことがらを記録して おく。個人ファイルにとじておき、必要な時にそれを参考にしながら、指示を与える。 61④-4個人ファイル(Reading Portfolios) ひとりひとりの学習した作品、作文、読書記録などを個別にファイルして活用する。 61④15自己評価(Children's Evaluation) 自分で自分の読みの学習を評価する。注13) 7.まとめ-3つの桂一 本論では、 「文学を核にした指導」の目的、従来の方法との違い、指導過程、指導方法 などについて論じながら、 < 「文学を核にした指導」重視の提唱>の求める変化が、次の 3つの柱を持っことを明らかにしてきた。 (1) 「基礎読本の指導」から「文学、つまり、分断されていない、自己完結した、意味 世界をしっかりと構築できる作品・書物を核にした指導」への変化 (2) 「管理者」としての立場から「支援者、ガイド役」への教師の姿勢・立場の変化 (3)学習の「結果」ではなく「過程」を重視することへの変化 こうした転換を単なる御題目に終わらせないようにするために、指導過程の整備がなさ れていることに加え、 「語嚢・語句の学習」 「理解の学習」 「自分で読む活動」 「評価」など.
(12) 50. に関するさまざまな指導方法がしっかりと用意されているところに注目したい。 本論の冒頭において述べたように、こうした「文学を核にした指導」がアメリカ全土を おおってしまったわけではない。現在でも、フオニックスを用いた指導、基礎読本を用い た指導をおこなっている学校もある。むしろ、そうした多様な指導法が共存しているとこ ろにアメリカらしさがあるといえよう。 アメリカの国語科教育の流れを大きく見ていくと、多様性を持ちながらも、読みの指導 において、フオニックスや基礎読本を用いた栂導に代表される<読みの基礎スキルを重視 した指導>と、 「文学を核にした指導」のような<作品全体を読むことを重視した指導> とどちらを重視するかということにおいて、 10数年間隔で、ちょうど振り子のように行っ たり来たりしている。 <読みの基礎スキルを重視した指導>とく作品全体を読むことを重 視した指導>のどちらも、長所と短所を持っており、その時代の求める方向に振り子が振 れていくのである。 E]本の国語科教育においても、今、この時代としては、 <読みの基礎スキルを重視した 指導>とく作品全体を読むことを重視した指導>のどちらがふさわしいのかを、さらに議 論する必要があろう。言語、文化、制度いずれも異なったアメリカの事例であるが、そう した議論をおこなう場合に少しでも示唆を与えるものとなれば幸いである。 <注> 1 ) literature-based instruction-instruction based on literatureに「文学を核とし た指導」という訳語を当てた例としては、松山雅子「イギリスの文学教育一文学を核 としたGCSE国語科カリキュラム(第4・5学年) -」 (大阪教育大学紀要、第40巻、第 2号第Ⅴ部門、 1992、副題の英訳はA study of GCSE English Curriculum based on literary works)がある。本論では、 「文学を核とした指導」ではなく、 「文学を 核にした指導」と訳すことにした。 2) aの①の要因については、拙論「書くことの教育」 (森田信義編、 『アメリカの国語 教育』、渓水社、 1992)において詳述した。 3) 「ホール・ランゲ-ジ」が、メキシコなどからの移民の教育の問題をかかえるアメ リカ合衆国の西南部の州(中心的提唱者であるK. Goodmanはアリゾナ大学教授 である)から広がり、バイリンガルの問題を多くかかえている沿岸の州、メキシコに 近い州にいち早く受け入れられていったことも、 aの②の要因に関係している。 4) Goodmanの理論は、往9にまとめた。 5) Ally and Bacon, 1992. Wisemanは、 Texas A&M Universityの教授である。 6) Wisemanのまとめを堀江が整理したもの。 *印の部分は堀江が書き加えた。 7) Wisemanの表の項目の配列を堀江が一部入れ替え、一部語句を加えた。 8)堀江が活動の順を一部入れかえた。 9) Goodmanは、 1960年代後半から、次のような指摘をおこなった。 ①読み手の思考 (thought)とテクスト(language)の相互作用が読みを可能にする。 ②読み手は積 極的に予測をし、その予測にしたがって読む。 ③すぐれた読みの過程とは、テクスト から予測に適合した言語情報のみをいち早く効率的に選択することである。 Goodmanは、こうした過程を「心理言語学的予測ゲーム(psych0-linguistic guesssing game)」と呼んだ。そして、読みの過程のモデルとして、 ①文章を読む (sampling)、 ②予測する(predicting)、 ③予測を検証する(testing)、 ④確認する.
(13) アメリカにおける文学を核にしたEg語科指導. 51. (confirming)という4つの段階にまとめた。ここで示した指導過程は、こうした言 語心理学の成果を応用したものである。 10)下線部は指導過程がわかりやすくなるように引用者が書き加えたものである。 ll)フオニックスとは、入門期の児童に、綴りと発音の関係の規則性を指導するための 方法である。例えば、 aiの発音を教える時には、 nail, tail, sail, train, chainな どの単語を示して発音させ、綴りと発音の関係を学ばせる。 ①1回の授業では、 1文 字だけを扱う。 ②順序性のあるステップを踏んだ指導をおこなう。 ③既習単語のみを 使用。などの特徴を持っている。テレビ番組「セサミストリート」の中での単語の学 習はこの方法に基づいている。 12)この他、 DEAR-drop everything and read、 WEIRD-we're engaged in independent reading daily、 SQUIRT-super quiet undisturbed individual reading time、 DIRT-daily independent reading timeなど、さまざまな呼び方がある。 13)残念ながら、 wisemanの著書には「自己評価」の具体例は載せられていない。 <主な参考文献> California State Department of Education. (1991). English-Language Arts Model Curriculum Standards: Grades Nine through Tweleve. Goodman K. (1982). Language and Literacy Vol.1 and Vol.2. RKP. Harris, A.J. and Sipay, E.R. (1990) How to Increase Reading Ability. Longman. Pearson, P.D. and others. (1984). Handbook of Reading Research. Longman. Scharer, P.L. and I⊃etwiler, D.B. (1992). Changing as Teachers: Periels and Possiblities of Literature-based Language Arts Instruction. Language Arts. 69(3) ,186-92. Wood, M. and others. (1991). Directions of Change in the Teaching of Reading. Reading Improvement. 28(2) ,100-103.. 津田塾大学教育学部言語文化研究所読解研究グループ編、 1992年、 『学習者中心の英語読 解指導』、大修館 ※本論は、 1992年10月10日におこなわれた第83回全国大学国語教育学会(鳥取大会)に おける口頭発表をもとにまとめたものである。.
(14) 52. A Study on Literature-based Language Instruction in the United States.. Yuji HORIE. During last decade, many American teachers made efforts to change their stance toward reading instruction; from their existing basal-oriented approach to literature-based approach. The literature-based approach has a philosophy that is aimed towards totalunderstandmg of the contents. In literature-based instruction reading, writing, listening, and thinking are interwoven, and the teacher is the critical facilitator for providing an interactive language environment. This is a valuable approach for learners to experience meaningful and authentic language learning opportunities. This article describes the literature-based instruction to reading which includes the whole-language learning approach. Three trends are discussed: (1) the move from basal to literature-based instruction; (2) the trend away from teacher as a basal plan manager toward teacher as a facilitator; and (3) the move from emphasis on product to emphasis on process. Several tables and learning activity examples from Learning to Read with Literature (D.L. Wiseman, allyn and Bacon, 1992) are shown to represent a comparison of literature and basal programs, genres of children's literature and sample laming activities and records for evaluation..
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