MathematicsEducation : 2014/3/3(9:18) (3/264)
はじめに
本書は,中・高等学校(数学)の教職を目指す学生,学校教育現場で数学 を指導しておられる先生,さらには広く数学教育に関心のある方々を対象に 編纂したものである。先の拙書『数学科教育法入門』(共立出版)が理論編で あるのに対して,本書は実践編となっている。 学習指導要領が改訂され,数学的活動や表現力の育成が重視されるように なった。本書は,これまでの研究成果,教育実践をもとに,数学の現実事象へ の活用能力や,問題解決過程の記述・表現能力を育成するための方法を,具 体的な実践の中で取り上げている。また,各学年で取り上げる教育内容にお いても,学年間での移行や,新しいトピックスが入るなど,大きく様変わり した。こうした改訂についても,概観できるようにした。併せて,評価につ いては,表現力の育成を踏まえたバランスの取れた評価を行うための方法に ついて記した。本書の内容を参考に,生徒の数学の力を,より向上させるた めの教育実践につなげていってほしい。 以下,各章で扱っている内容の概略を紹介する。 第 1 章では,数学教育の目標,内容,評価,実践について論じている。目 標と内容については,学習指導要領で示された目標と内容の概略とともに, これまでの数学教育研究の中で培われてきた目標と内容について解説してい る。評価については,評価の時期,評価の内容と方法について,行為動詞や チェックリストの活用を踏まえ述べている。実践については,授業形態や授 業進行スタイルの特徴,フローチャートによる授業記述,接続詞を活用した 表現力の育成などをもとに,具体的な授業づくりにつなげている。 第 2 章では,代数教育を対象に,目標,内容,実践について論じている。目MathematicsEducation : 2014/3/3(9:18) (4/264) ii はじめに 標と内容については,数の拡張,文字の持つ意味,文字式の種別と特徴,代 数的構造などについて,系統的な指導のあり方を踏まえ論じている。実践に ついては,中学校での取り組みにおいて,プログラム電卓やコンピュータを 活用し,現実的な場面を取り入れた授業について解説している。 第 3 章では,幾何教育を対象に,目標,内容,実践について論じている。目 標と内容については,図形の種別,図形の位置する平面・空間,図形の移動・ 変換,論証,計量などについて,系統的な指導のあり方を踏まえ論じている。 実践については,折り紙を用いたオリガミクスを積極的に取り上げ,証明を 実際の折り紙で確認するなどの活動場面を取り入れた授業について解説して いる。 第 4 章では,関数・解析教育を対象に,内容,実践について論じている。内 容については,変化と対応,変化の割合,各種関数,微分・積分などについ て,系統的な指導のあり方を踏まえ論じている。実践については,中学校,高 等学校での取り組みにおいて,多様な現実場面を対象に,関数の特性を利用 して,未来を予測するなどの授業について解説している。 第 5 章では,確率・統計教育を対象に,目標,内容,実践について論じて いる。目標と内容については,確率の概念,確率変数,記述統計,推測統計 などについて,系統的な指導のあり方を踏まえ論じている。実践については, 確率の取り組みにおいて,様々な試行を行い,計算によって求まる確率と実 験による確率の関係を扱ったり,統計の取り組みにおいて様々なグラフを活 用し,現実的な場面を取り入れた授業について解説している。 なお,本書は,テキストのみでの学習も可能となるよう,各項目とも出来 る限り解説に頁を割き,自学自習で学習をすすめていけるよう心掛けた。ま た,全体を平易な記述表現で統一しながらも,内容については,最新の実証 的な研究成果を踏まえているため,現在の学校教育現場において役立つもの となっている。 本書の分量は「数学科教育法」の 4 単位分を想定している。具体的な使用 方法としては,第 1 章の目標と評価,第 2 章の代数教育を前期 2 単位,第 3 章の幾何教育,第 4 章の関数・解析教育,第 5 章の確率・統計教育を 2 単位 というものが考えられる。本書と併せて理論編の『数学科教育法入門』では,
MathematicsEducation : 2014/3/3(9:18) (5/264) はじめに iii 理論部分を 2 単位,数学教育の歴史,コンピュータの利用などを 2 単位で学 習し,2 冊併せて「数学科教育法 1∼4」までの 8 単位分を網羅することがで きるようになっている。 各章の最後には,数題の研究課題を載せている。テキスト内容だけでなく, 実際に紙と鉛筆,様々な器具を用いて,実証的に数学を学ぶ姿勢を身に付け ていただきたい。また,章末に記された参考文献なども積極的に活用し,豊 富な数学の知識を吸収したうえで,数学教員として活躍していただく人が一 人でも多く輩出することができれば,本書の目的は達せられたといえる。 最後に,本書の執筆に際し,出版の機会を与えていただいた共立出版㈱寿 日出男氏に,この場を借りて感謝の意を表したい。 2014 年 2 月 編 著 者