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「ひとりでいられなさ」と「つながり感」の関連 −青年期の友人関係をめぐって− [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)「ひとりでいられなさ」と「つながり感」の関連 −青年期の友人関係をめぐって− key word:「ひとりでいられなさ」 , 「つながり感」 ,友人関係,青年期. 人間共生システム専攻心理臨床学コース修士課程 2 年 吉田 加代子 Ⅰ.問題と目的. り感」をどのようなときに人とのつながりを感じるかとい. 「ひとりでいられること」が個人の精神成熟にとって意. った,個人の人とのつながりの捉え方と定義する。また、. 味を持つこと,またそれに耐えうる能力自体が成熟を意味. 先述したように「ひとりでいられる能力」は,一方で人と. するといったことが,小此木(1979)や Winnicott(1958). のつながりを前提としていると考えられることから、ひと. によって論じられている.特に Winnicott は“ひとりでい. りでいられなさとの関連を検討していくこととする.. られる能力(The Capacity to Be Alone) ”を提唱し,母親. 本研究では人とのつながりを検討する際、青年期の友人. と一緒にいて「ひとり」でいるという体験を基礎にして確. 関係を取り上げる。青年期は親から第 2 の分離・個体化の. 立されるこの能力を,情緒発達の成熟度を示す重要な指標. 時期と言われ,親から分離すると同時に「個」の獲得が重. であるとした.また,実証的な研究においても,特に青年. 要な課題となる.しかしながら,親という依存対象を失っ. 期においては「ひとりでいられること」がポジティブな意. た青年は,親に代わる依存対象を探し求める.親離れは内. 味を持つことが明らかとなっている(Larson.R.W.,1990) .. 的対象喪失であり,その辛い体験の克服と,課題の達成を. このことから,逆に「ひとりでいられないこと」は何らか. 支えるのは,親に代わる新しい依存対象,同一化対象とな. の問題を孕んでいると考えられ,筆者は,空間・物理的に. る友人の存在であろう.そのため,青年にとって重要な対. ひとりでいることに耐えられないことを「ひとりでいられ. 人関係のひとつである友人関係をとりあげ, 「ひとりでい. なさ」と定義し, 「ひとりでいられなさ」と精神的な自立の. られなさ」 「つながり感」との関連を検討していく。. 関連を検討した。その結果、ひとりでいられない者はそう. 以上のことから, 第1研究にでは, 質問紙法を用いて, 「ひ. でない者に比して精神的に自立が達成されていない状態に. とりでいられなさ」と「つながり感」の関連, 「ひとりでい. あることが明らかになった. (吉田,2001) .. られなさ」と友人関係の関連について検討する.更に,第 2. しかし,Winnicott の「ひとりでいられる能力」とは,単. 研究では,内省力があり,その結果の言語報告が可能であ. に孤立した状態にひとりでいられることを意味しているわ. ると思われる大学生を対象に面接法を実施し,彼らの「つ. けではない.内的な対象が確立された後に,一時的に外界. ながり感」 「ひとりでいられなさ」 ,そして友人関係が相互. の対象や刺激がなくても安心して休むことができることを. にどのように関連しているかについて検討していく.. 意味しているのである.そして, 「ひとりでいる状態」とは,. Ⅱ.第 1 研究. 誰か他の人がそこにいることであり,その誰かとは,心的 現実にいる誰かと,現実にいる誰かという両方を意味して. 1.目的. いる.そして,そういう誰かといながらにして「個」にな. 「ひとりでいられなさ」 , 「つながり感」の心理的背景を探. れることを意味していると言えるだろう.それは,誰かと. 索的に検討する.また,それらが身近な対人関係である友. のつながりを保ちながらも「ひとりでいる」ことを表現し. 人関係とどのように関係しているのかについて検討する.. ていると考えられのではないだろうか. 「ひとりでいるこ. 第1研究の仮説:. と」を支えると考えられる「つながり」とはいったいどう. 1)場面や状況の要因によって「ひとりでいられない」と感. いったものであろうか.. じる人は目に見えるつながりを求める傾向があるだろう.. 心理学における人とのつながりを意味する概念として,. 2)1)から,場面や状況の要因によって「ひとりでいられ. Bowlby,(1996)のアタッチメントや Erikson(1989)が. ない」と感じるものは,身近な対人関係である友人関係に. 提唱している基本的信頼感が考えられるだろう.一方で,. おいて一緒にいることを求めるだろう.. 『つながる』という言葉は①切れていたり,離れていたり. 2. 方法. するものが結ばれて,続きのものになる,結びつく②離れ. 調査対象:4年制国立大学生 74 名(男子 25 名,女子 49. ずに続く③関係がある,関わるといった意味で使用される. 名) .平均年齢は 18.89 歳(SD=1.88) .. ( 「小学館 新選国語辞典」 ) .そこで,本研究では「つなが. 調査時期:2002 年 6 月中旬∼下旬.

(2) 手続き:授業時間に一斉配布し,集団で実施した. 調査内容:自由記述形式の質問紙であった.分析対象とな る質問内容は以下の通りであった. 1) 友人関係における考え方に関する質問. Table2 「 つながっているとき」 の分類カテゴリー 「 つながっている」 と感じるとき. 1) [他者からの受容・ 共感] 2) [信頼と相互サポート] 3) [同じもの( 場面、気分、話題) の共有]. 「友人関係に求めることは?」 「友人関係で心がけている ことは?」の 2 項目で構成された.. りがあり(Χ2(2)=34.55,p<.01) ,多重比較の結果, [同. 2) 「つながり感」や「ひとり」に関する文章完成法. じ(場面,気分,話題)の共有]が[他者からの共感・受. 「友人とつながっていると感じるのは」 「友人とつながっ. 容] , [信頼と相互サポート]よりも多かった.. ていないと感じるのは」 「ひとりでいられないと感じるの. 小此木(1979)は,自分一人が、一人だけで満たすこと. は」 「ひとりでいられると感じるのは」の 4 項目について,. ができない、誰か他者との間でのみ満たされる欲求を対人. それぞれに続く文章を完成させるように回答してもらった.. 的欲求とし, 『一体感への欲求』 , 『親密さへの欲求』 , 『一. 分析の手順: 「ひとり」 「つながり感」と友人関係に関して. 致・協力への欲求』の 3 つに分類している. 『一体感への欲. 得られた自由記述回答を, 臨床心理学を専攻する大学院生 3. 求』とは,自分と他者との区別=境界を否認し,相手との. 名による KJ 法を実施, いくつかのカテゴリーを見出した.. 一体・融合の心理体験を得たいと願う欲求である.発達的. そのカテゴリーに,臨床心理学を専攻する大学院生 3 名が. に見れば,それは母と子の間,家族メンバーの相互間など. 独立に分類したところ,一致率は 86∼97%であった。. で満たされる. 『親密さへの欲求』とは,互いに分離し,自. 3. 結果と考察. 他の境界の確立した人間同士が,自分達 2 人の間だけで,. 1) 「ひとりでいられなさ」について. 精神的な何ものかを共有しあう心理状況で体験される.こ. 「ひとりでいられないとき」を[ネガティブな感情に言. れは一体感への欲求が子どもっぽいのに比べると,より青. 及したもの][場面や状況に言及したもの]に分類し. 年期的で,青年期中期に強まるといわれる.また, 『一致・. (Table1) ,Χ2 検定を行った結果,人数に偏りはなかった.. 協力への欲求』は,いわば成人的な欲求であり,所詮,自. 落合(2002)は自分がひとりだと感じることを孤独感と. 分と他者は,それぞれ互いに異なる欲望や感情,エゴイズ. 定義し,小学生は物理的に自分がひとりになったときに感. ムの持ち主であるといった認識をもった上で,お互いの間. じるが,自分の内面に目が向き始めた中学生頃からは,周. に何らかの一致や協力を体験することを求める欲求である.. りに人がいるからこそ,孤独感を感じるようになると記述. ある営みについての快楽や,利害,興味の一致を喜びとす. しており,本研究の場面や状況に言及したものはこれに類. るような欲求であり,成人の社会生活は,多くの部分をこ. 似していたため, 【周囲に人がいない場面でひとりのとき】. の種の一致・協力への欲求と連帯感を支えにしている.本. は小学生の孤独感が, 【周囲とかかわりをもっていないと. 研究で得られた「つながり感」はこの 3 分類に類似すると. き】は青年期の孤独感が背後にあるのではないかと考えら. 考えられるのではないだろうか.内面的な共感や受容され. れた.また,寂しさは,ひとりと感じるときの気分を表現. ることが含まれる[他者からの共感・受容]は『一体感へ. し,辛さは,抱えた問題をひとりで引き受けなければなら. の欲求』 ,同じ気分や話題,価値観の共有を強調する[同じ. ない孤独から生じると考えられた.. もの(場面,気分,話題)の共有]は『親密さへの欲求』. 以上のことから, 「ひとり」は多くの場合,孤独と捉えら. に当てはまるだろう.また, [信頼と相互サポート]は『一. れ,ひとりでいられないのはさまざまな形で孤独感を感じ. 致・協力への欲求』と類似していた。 従って, 「つながり. たときであろうと推測された. 感」は何らかの対人的欲求が満たされたときに感じられる. 2) 「つながり感」について. と考えられ, 「つながり感」をえるための方法は,個人の対. 「友人とつながっていると感じるとき」を3カテゴリーに. 人的欲求によって異なってくると推測される.. 分類し(Table3) ,Χ2. 3) 「ひとりでいられなさ」と「つながり感」. Table1. 検定を行った.その結果,人数の偏. 「 ひとりでいられないとき」 の分類カテゴリー 「 ひとりでいられない」 と感じるとき. 1) [negative な感情に言及したもの] 【 寂しい時】 【 辛い時】 2) [場所や状況に言及したもの] 【 周囲と関わりをもっていない時】 【 周囲に人がいない場面でひとりの時】. 「つながり感」を感じるときと「ひとりでいられなさ」 を感じるときとの間に関連は見出されなかった. 「つながり 感」は対人的欲求が満たされたときに感じられるもの, 「ひ とりでいられなさ」は孤独感によって生じるものと考えら れた.小此木(1979)によると,孤独感は,自分ひとりだ けで満たすことのできないような欲求,いわば対人欲求が 満たされないときに体験される特有なフラストレーション.

(3) 感覚,感情であると述べている.そのため, 「ひとりでいら. 平均年齢は 18.72 歳(SD=.68) .. れなさ」と「つながり感」の間には何らかの関連があるで. 調査時期:2002 年 8 月下旬∼11 月下旬.. はないかと考えられたが,本研究ではその関連は示されな. 調査手続き: 「面接調査の協力のお願い」を配布,協力の同. かった.本研究における対象者は青年であり,そのため小. 意を得られた学生に連絡をとった。分析対象となった調査. 此木(1979)が述べる対人的欲求が満たされなかったフラ. 内容を以下に記述する.. ストレーション感覚,感情といった孤独感ではなく,より. ①親友と,その他の友人との関係について,関係に求める. 個別性の気づきによる青年期的な孤独感が本研究の結果に. こと,心がけることについて尋ねた.. 反映されたためかもしれない.また,カテゴリー比較にあ. ②「つながり感」について、 「どんなときにつながっている. たってセルの人数を増やすために, 「ひとりでいられない. と感じるか」「どんなときにつながっていないと感じる. とき」のカテゴリーを大きくまとめたが,ここに何らかの. か?」について具体的な場面をあげて答えてもらった。. 問題があった可能性もある.そのため,今後この点につい. ③「ひとり」について, 「ひとりだと感じるとき」 「ひとり. て,より詳しく検討を行う必要があるだろう.. でいられないとき」 「ひとりでいられるとき」について具体. 4) 「ひとりでいられなさ」と友人関係. 的場面をあげて答えてもらった.. 「ひとりでいられなさ」と友人関係の間に関連は見出さ. 分析の手順:第 1 研究で得られたデータを下に, 「ひとりで. れなかった. この要因として,まず第1に,実際に「ひと. いられなさ」と「つながり感」が共通する被面接者,また. りでいられなさ」と友人関係に関連がないということが考. は「ひとりでいられなさ」が特徴的であった被面接者をグ. えられるだろう.先に本研究の「ひとりでいられなさ」の. ループにまとめ,6 群に分類した(Table3) .. 背景には孤独感があると考察した.青年期的な孤独感には. 3. 結果と考察. 個別性の気づきが伴うといわれている.青年が,たとえ「ひ. (1) A 群. とりでいられなさ」を感じたとしても,結局はそれをひと. A 群は,他者と様々な気持ちについて共有したいと考えて. りで引き受けようとするなら,それは友人との関わり方に. いるが,特に自分で抱えきれない辛い気分の時,それを他. は反映されないだろう.また,本研究では特に友人関係に. 者にわかってもらえないことで,ひとりでいられなさを感. 求めることと心がけることの 2 点について質問した.その. じる群だと考えられるだろう.友人関係では,たくさんの. ため,友人関係に求めることや心がけることとは関連がな. 友人の中で親友となる要因は,一緒にいて同じ体験をして. いが,他の点では関連がある可能性もあるが,その点につ. きたことであり,辛い時に辛さを共有してくれる友人を選. いては見当できなかった.. 択しているようであった.逆に,薄い壁があるように感じ る人とは,親友とはなりえないところがあり,親密さの欲. Ⅲ.第 2 研究. 求を満たしてくれることが親友の条件になっていると考え. 1. 目的. られる.. 第 1 研究を踏まえ、第 2 研究では,面接法を用いて, 「つ ながり感」と「ひとりでいられなさ」が友人関係と関連し. (2) B 群 B 群は,特に自分が話したことに対する共感を望んでおり,. ているか,また関連しているならば,どのような点に反映. たとえ表面的にでも同じ感情を共有してくれることで対人. されているかを、友人関係をより広い視点で捉えながら詳. 的な欲求が満たされ, 「つながり感」がえられると考えられ. 細に検討していくことを目的とする.. る.一方で,自分が「ひとり」であるとはあまり感じてお. 2. 方法. らず,自分の中に何らかの気持ちが生じたときには,それ. 調査対象:4年制国立大学生 15 名(男子 5 名,女子 10 名) ,. を誰かに伝えたいため「ひとりでいられない」と思う.友. 4 年制私立大学生 10 名(男子4名,女子 6 名) ,計 25 名.. 人関係では.友とその他の友達との間にはあまり差がない. Table3 6 群の「ひとりでいられなさ」と「つながり感」. ことが特徴的であった.両者は話す時間が長いかどうかと. 群. 「ひとりでいられなさ」. 「つながり感」. いう差だけであり,今は親友でない友達でも話す時間があ. A. 【辛いとき】. [他者からの受容・共感]. れば親友になれるとしている.従って,他者に対して自分. B. 【辛いとき】. [信頼と相互サポート]. の気持ちが分かってもらえる期待が前提としてあるようで. C. 【辛いとき】. [同じものの共有]. D E F. 【寂しいとき】 [同じものの共有] 「ひとりでいられないとき」を他者が干渉してくるとき と回答したもの [場面や状況] [同じものの共有]. あり,話すことで誰にでも理解してもらえると考えている のかもしれない.そこには, 『一体感への欲求』と「個」の 認識の薄さが反映されているといえるだろう. (3) C 群.

(4) C 群は場面や体験,気持ちの共有によってつながり感がえ られ,また, 「辛いとき」にひとりでいられないと感じる群. 考えられる. (6)F 群. であった. 「ひとり」ということに対して,別に寂しくない. F 群の「ひとりでいられなさ」は,1 名は物理的に孤立に. と答えたり,逆に恐怖や不安,焦りをたりと反応が極端で. よる孤独感,未成熟な孤独感から,また 3 名は周囲にいる. あり. 「ひとり」に対して潜在的,顕在的なネガティブな感. 人と関わりがないことによって生じる青年期的な孤独感か. 情が強いのではないかと考えられる.この群の友人関係に. ら生じるようである. 「つながり感」については, 「親密さ. おける心がけをみると,心がけていることはそれぞれであ. への欲求」が満たされることによって「つながり感」を感. る.しかしながら,関係のあり方もあわせて考察すると,. じるようであった.友人関係では,まず親友との関係にお. 自然体でいることを心がけていても,友人に恋人を世話し. いて場所,話題や趣味などの共有を求めており,またそれ. たいと思っていたり,ありのままの自分でありたいと思い. の有無が親友とその他の友人との違いであった.そこには. ながらあまりに友人が好きで言いたいことが言えなかった. 「つながり感」が関連しているのではないかと考えられる.. り等,ズレがあるようである.心がけでは,なるべくあり. また,その他の友達との関係で心がけていることは, より. のままを目指しながら,案外気遣いをしているところに. 深く関わっていくためのものと,その関係を表面的に済ま. 「ひとり」へのネガティブな感情を抱える C 群の特徴があ. せるためのものがあり,そこには「ひとりでいられなさ」. るのかもしれない.. の背後にある孤独感の違いが反映されているのではないか. (4) D 群. と推測された.物理的に離れている友人をあげたものを除. D 群は,ひとりでいるときに「ひとり」と感じ,寂しくな. き,大学生になってからの友達をあげた 3 名を比較した結. るためにひとりでいられないと感じられると推測される.. 果,未熟な孤独感を感じている者は,どこかで共感できる. 「つながり感」については,質問紙と面接の結果が異なり,. という期待をもっているようであるが,青年期的な孤独を. 「一致・協力の欲求」が満たされたときに「つながり感」. 感じ始めている者は,個別性の自覚から,どこかで共感す. を得ているのではないかと考えられた.. ることを諦め始めているように感じられた.. 友人関係では,親友は「ひとり」の寂しさを癒してくれ. Ⅳ.総合考察. る存在であり,ともにいるときの気楽さが特徴といえるだ ろう.友人との関係では,本音を言ったり,考えをぶつけ. 第 1 研究から、 「ひとりでいられなさ」とは,孤独から生. 合う,一方で相手を傷つけないよう気をつけていた.それ. じる「独りでいられなさ」であり、 「つながり感」は対人欲. は,それぞれ所詮違う人間であるという認識がありながら. 求が満たされたときに感じるのではないかと考えられた。. も,興味や関心,感情の一致を喜びとしている,つまり,. 対人的欲求が満たされないときにひとりでいられなさを感. その関係のなかで「一致・協力への欲求」が満たされ, 「つ. じるのではないかと推測されたが、本研究では関連は見出. ながり感」がえられるのではないかと考えられるだろう.. されなかった。友人関係との関連は、第 1 研究では関連は. (4) E 群. 見出されなかった。第 2 研究においてより友人関係を広い. E 群は「ひとりでいられなさ」を感じておらず,また「ひ. 視点で把握し、関連を検討したところ、友人関係に求める. とり」ということをあまり意識していなかった. 「つながり. こと、心がけること以外の点での関連があるのではないか. 感」については,質問紙の回答はそれぞれであったが,面. と考えられた。. 接調査の結果,回答のえられた 3 名は共通して「つながり. また,本研究では「ひとりでいられない」と感じている,. 感」背景に『一体感への欲求』があることが推測された.. つまり「ひとり」=「個」を感じており,周囲の対象との. 従って, 「ひとり」ということを意識しないまま,他者との. 自・他の区別が可能な能力が成熟したものが主な対象とな. 間で一体感をえたいと感じているのではないだろうか.ま. った.しかし, 「ひとり」を感じられないことは,自他の区. た,この群の友人関係は,親友との関係には満足している. 別機能(自我境界機能)の病理を持つことを意味する(小. が,その他大勢の友人との間では,怒りや罪悪感といった. 此木,1979) .第 1 研究の調査において,その他に分類され. 気持ちを強く抱いていることが特徴的である.親友以外と. た青年の中には, 「ひとり」に関する質問に回答できていな. の友達付き合いを極力避けたり,親友以外の友達とも付き. いものも,少数だが存在した. 「ひとり」を感じられないこ. 合いはあるものの,親友と同じように「つながり感」が満. とが,自我境界機能の病理に結びついていくとすれば,そ. たされないとき(相手が困っていることに気づかない)に,. れら少数の青年について,今後よりいっそう理解を深めて. 強い罪悪感を感じると答えた.従って,この群の特徴はつ. いくことが必要である.それは,適応した青年だけでなく,. ながり感が得られない対人関係に極端に反応することだと. 臨床の場を訪れる青年を理解していく上でも有用であろう..

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