デリバディブ取引の法的問題について : 最高裁平 成25年3月7日判決を中心として
著者 石尾 賢二
雑誌名 静岡大学法政研究
巻 18
号 1‑2
ページ 1‑103
発行年 2014‑01‑31
出版者 静岡大学人文社会科学部
URL http://doi.org/10.14945/00007663
デリバティプ取弓Iの法的問題について ―最高裁平成25年3月7日判決を中心として
笏
デ リ バ テ イブ 取 引 の法 的 問 題 に つい て
︱最 高裁 成平 二五 年 月二 七日 判決 中を 心と てし 石 尾 賢 二
は じ め に 平成 二五 年 月三 七 日︑ 同年 月三 二六 日 の最 高裁 判 決 にお い て︑ デ リ バ テ イブ 取 引 に よ てつ 損 失 を 被 たっ 者 よに る 販 売 たし 金 融機 関 対に す る説 明 義 務連 反 のた め の不 法行 為 責 任 主の 張が 否定 さ れ た
︵こ の金 融 商 品 に つい て 優は 越的 地 位 の濫 用 よに る行 政処 分 が 問題 とさ れ て るい
︶︒最 高 裁 の判 示事 項 と し ては
︑ 単純 な 商 品 であ り︑ 仕組 み に つい て の説 明 は あ り︑ 中 途 解 約
・ス タ ー 時ト 期 の相 違
・固 定 金 利 水 準 に つい もて 説 も明 あ たつ と す るも ので あ り︑ 損 失 自を 己責 任 とす る も の であ る︒ 金 融商 品 将は 来 変の 動 が 予測 し くに い商 品 であ り︑ こ のこ と 株は 式 債︑ 券自 体 にも 当 ては ま る︒ た だ し︑ 商 品 によ つ ては 複 雑 な仕 組 み のも のが あ り
︵デ リ バ テイ ブ 投︑ 資 信託
︶︑
リ スク を軽 す減 るた め 複に 雑な 仕組 みを と るも のも あ る が︑ 仕 組 み自 体 が 不 明確 な 点 が多 いと 考え ら れ る︒ 即 ち︑ 誰 当が 事 者 であ る のか
︑ ど のよ う な商 品 であ る かの が 不明 確 であ り︑ 内容 の公 正さ 判の 定 手段 が 不 明確 であ る
︵商 品 よに てつ 損は 失 に対 応 した 利得 存が す る︶︒
さ ら に︑ 金 融 機
法政研究 18巻1・ 2号(2014年)
関 が 当事 者 であ る場 合 に は信 認義 務 を ど のよ う に考 え る のか
︑ 優越 的 地 位 用濫 はな い のか と いう 問 も題 あ る︒ 従 てっ
︑ こ のよ う な商 品 に つい て︑ 商 品性 の問 題 が 存す る ので あ り︑ 商 品性 の問 題 は錯 誤 詐︑ 欺 の問 題 と 考え ら れ る のか
︑ 債 務 不 履行
・瑕 疵 担 保 の問 題 と 考え ら れ る のか の問 題 が あ り︑ さ ら に 別個 不に 法 行 為 の問 題 があ る
︒ これ ら の問 題 に つい て︑ 自 己責 任 の前 提 と し て説 義明 務 が問 題 さと れ る の であ るが
︑ 同様 そに の責 任内 容 も 問題 と さ れ る︒ 従 って 金︑ 融 商 品 に つい ては
︑ 商 品自 体 の適 格性 がま ず 問 題 とな り︑ そ の後
︑ 説 義明 務 が 果た さ れ た のか 問が 題 と な る︒ そし て これ ら の問 題 の判 断 の際 金に 融 機 関︑ 金 融 商 品 取引 業 者 が受 認者 的 地位 に立 つこ と
︑ 優越 的 地位 に立 つこ と さが ら に問 題 と な る︒ 一連 の取 引 経 過 問が 題 と な る ので あ り︑ 様 々な 規制 が 考え ら れ る ので あ る が︑ 結 局 は個 人 の 権 利を 強 く 認 め るし かな い︒︲ 金 融 商 品 が資 本 市 場 に お いて
︑ 自 己 責任 のた め の適 正 な状 況 確を 保 す る規 制 手 法 に よ てつ ど のよ う 規に 制 さ れ る の か︑ 当該 規 制 手法 で足 り る のか に つい て は︑ 金 融 商 品 取引 法 が 考察 さ れ 発︑ 行 市 場 規制
︑ 流 通市 場規 制 な ど総 合 的 規 制 制 度 の中 で の位 置 づ もけ 考 察さ れ な け れば なら な い︒ こ のよ う に︑ こ の問 題 に つい ては 契 約 規制 商︑ 品 規 制 地︑ 位 規制
︑ 市 場 制規 が問 題 なと る ので あ る︒ さ ら に︑ それ と 共 に金 融 商 品 の拡 大 の問 題 も あ る︒ 金 融拡 大 を 是と す べき か︑ 金融 を 拡 大 し続 け な い限 り成 り立 たな い経 構済 造 を 認 め る きべ であ る のか あで る︒ こ のた め に金 融 取引 関に し て事 前 の業 者 規 制︑ 市 場 規制 を 主 と し︑ 基本 的 に契 約 の自 由 に委 ね る姿 勢 が望 ま し い
︵金 融自 由 化
︶ と す る こと の是 非 が問 わ なれ け れば なら な い︒ 以上 の新 た な金 融 商 品 の問 題 に つい て︑ 最 近 出さ れ た 最高 裁 判 決 を 手が かり に検 討 す る︒
デリバテイブ取弓の法的問題について 一最高裁平成25年3月7日判決を中心として
一 デ リバ テ ィプ の仕 組 みと 問 題点 デ﹁ リ バ テイ プ はに
︑
① 先 渡 取引
︵フ ォ ワー
︶︑ド
② 先 物 取引
︵フ ーュ チ ーャ ズ︶︑
③ ス フ プッ 引取
④︑ オ プ シ ンョ 取引 な ど の種 類 が あ る︒
﹂2 先 物 取 引︑ 先 渡 取 引 と は 将﹁ 来 の 一定 の期 日に 一定 の商 品を 一定 の価 格 で受 渡 すし る︑ ま た は指 数 の差 額 で決 済 す る こと を も前 って 約定 す る取
﹂引 のこ と であ る︒ 鋼先 渡 取 引﹄ は
﹃あ る金 融 商 品を 将来 の 定一 期 日 に 一定 の価 格 で受 け 渡す こと を 前も てっ 約 定 し てお く取 引
﹄ であ る
︵将 来 のあ る時 点 で の売 買 契約 の現 時 点 で の合 意
︶︒
店頭 取 引 と し 行て わ れ て いる
﹂︒ 先渡 取 引 の代 表 的 なも のと し て為 替 先物 予約 があ る︒ 輸出 入な ど にか わか る企 業 が︑ 為 替 ーレ ト が変 動す る リ クス を ヘ﹁ ジツ
﹂
︵回 避
︶ す る めた に 行わ れ る︒
3 月先 物 引取
﹄ は
﹃あ る金 融 商 品を 将来 の 一定 の期 日に 一定 の価 格 受で 渡け す こと を 前も てっ 約定 し てお く﹄ 取引 で︑ 取引 所 取 引 であ る︒
﹂ 先﹁ 物 取 引 に は︑
① 債 券 先 物
②︑ 金 利 先物
③︑ 株価 指 数 物先 な ど が あ る︒ 債 券 先 物 は︑ 長 期 国 債 先の 物 取を 引 す るも ので あ り︑ 東 京 証券 取 引 所 取で 引 が行 わ れ る︒ 金 利 先物 は︑ 円 の短 期 金 利 に つい て の先 物 取 引 で あ り︑ 東京 金 融取 引 所 上に 場さ れ て いる ま︒ た︑ 価株 指数 物先 のう ち︑ 日経 平均 先物 は大 阪 証券 取 引 所 で︑ T O PI X 先物 東は 京 証 券 引取 所 で取 引 が行 わ れ る︒
﹂4 先﹁ 物 取引 利の 用形 態と し ては
①︑ ヘッ ジ︑
② 投機
③︑ 裁 定 の三 種 類 があ る︒
﹂ ヘッ ジ と は 価格 変動 リ スク の回 避 で あ り︑ す﹁ でに 国債 を 保有 し て るい 投資 家 が︑ 将 来 の国 際相 場 の下 落 よに る損 失を 回避 す るた め に︑ 債 券 先物 を 売 り建 てる よう な行 為
﹂ であ る︒ 投 機と は︑ 将﹁ 来 の国 債 の価 格 が値 上 が りす る
︵金 利 が低 下す る︶ と の予 想を も と に︑ 債 券
法政研究18巻1 2号(2014年)
先物 を 買 い建 て るよ う な 行 為 であ る︒
﹂ 裁定 と は
︑ 先﹁ 物 相 場 と現 物 相 場 と の間 や 先物 市 場 相 互間
︵異 な る 限 月間
︶ の 価格 差 の変 動 利を 用 し て利 益 得を る行 為 であ る︒
﹂我5 が 国 の先 物 取 引市 場 に は 一〇 年 国債 先 物︑ 二〇 年 国債 先物
︑ TI BO N D先 物︑ 中 期 国債 先 物 など の債 券 先 物取 引︑ 株 価 指 数 先物 取 引 な ど の株 式 先物 引取 ︑ ユー
ロ円 金 利先 物 ︑ ユー ロド ル金 利 先物
︑ 円 ド ル通 貨 先物 など の金 融先 物 引取 があ る︒ ス ワ ップ 取 引 とは
︑ 月キ ャ シッ ュ
・フ ロー
﹄
︵お金 の流 れ︶ を あ︑ ら か じめ 定 めた 法方 相で 互 に交 換す る取 引 のこ と を いう
︒ 典 型的 な スワ プツ 引取 と し ては
①︑ 定固 金 利 で の支 払 いと 変 動金 利 で の支 払 い の交 換 を行 う
﹃金 利 ス ワ ップ
﹄︑
② ド ル建 て の支 払 いと 円建 て の支 払 い の交 換を 行 う など
︑ 異 な る通 貨 間 の交 換 を 行 う
﹃通 貨 スワ プツ
﹄ な ど があ る︒
﹂ スワ プッ 取 引 店は 頭 取引 と し て行 わ れ る︒ 我6 が 国 の スワ ツプ 市 場 は︑ 固 定金 利 と ュー ロ円 L I BO R等 の変 動 金 利 を 交 換す るも の︑ 新 株 引受 権 付社 債 の社 債 部 分 に通 貨 ス ワ プッ 付を け た も の︑ 経日 平均 等 の株 価 指数 を 基 準 と し て算 出 たし 金 額 と金 利と を交 換 す る クエ ィ ティ スワ プッ な ど があ る︒ オ プ シ ンョ 取 引 と は︑ 金 利
・為 替等 の金 融資 産 や そ 先の 物 引取 を 一定 の価 格 で︑ 将 来 のあ る 期 日
︵ま で の間
︶ 買に う あ︑ る いは 売 る権 利を 売 買す る取 引を
いう
︑ 買う 権 利 を コ﹁ ー ル
・オ プ シ ンョ
﹂ ︑ 売 る権 利 を
﹁プ ツト
・オ プ シ ンョ
﹂ と いう
︒ スワ ツプ 取 引自 体 を 行使 す る権 利 売を 買 す 取る
引
︵ス ワ ツプ シ ンョ
︶ も あ る︒ ま た
︑ 最近 では 原資 産 が 特定 の価 格 に到 達 す るな ど あら か じめ 決 めら れ た条 件 を 充 足 たし 場合 行に 使 す る権 利 消が 滅
︵あ る いは
︑ 発生
︶ す る タ イ プ もの のな ど経 路 依存 型オ プ シ ンョ の開 発 すが す めら れ て いる
︒7 我 国が
のオ プ シ ョ 取ン 引 はに 債︑ 券 店頭 オプ シ ンョ 取引
︑ 株価 指数 オプ シ ンョ 取引 に始 ま り︑ 債 券 先物 オ プ シ ンョ 取 引︑ 円 短期 金 利先 物 オプ シ ンョ 取引 個︑ 別株 オ プ シ ョ 取ン 引 があ る︒
デリバテイブ取弓Iの法的問題について ―最高裁平成̲95年3月 7日判決を中心として
ま た
︑ デ リ パ テ イプ のプ イラ シ ング に はプ ラ クッ シ ーョ ルズ な ど の難 解 な 方 程式 用が いら れ る︒ デ リ バ テイ プ を 活 用す る理 由 と し て以 下 のよ う 述に べら れ る︒ 一︑ 市﹁ 場 で取 引さ れ て いる 商 品 だ け なで く︑ 市 場 そ の他 で継 続 的 に 公表 さ れ て いる 指 標
﹂
︵日 経 均平
︑ T O P I X︶ も 商 品 と な る
︵指 標 が金 銭 換に 算 さ れ る︶︒
二︑ 少﹁ な 資い 金 で原 資 産 の取 引 と 同様 の経 済 効 果 が 得ら れ 資︑ 金 を 効 率 的 に活 用 きで
﹂る
︵レ バ レ ジツ
︶︒
三︑ 株 価 下 落 利で 益 を得 ら れ る 先物 の売 り︑ プ ット オ プ シ ンョ な ど
︑ 原則 禁 止 さ れ て いる 空 売 りを 回 避 す る こと が でき る︒ 変 動 し な い場 合 に 利益 を 得 るプ ット オプ シ ンョ と コー ルオ プ シ ンョ の同 時 売の 却 手 法も あ る︒ 四︑ 最終 的 等に 価 と な る現 物 と 先物 の裁 定 取 引
︵現 在割 安 の現 物 を買 い︑ 先 物 を得
︶︒る 等 価 と なら な いも の でも 利 益を 得 る こと が でき る
︵国 債 先物 と現 物 の間 のベ ー シ ス取 引︑ 経日 平 均先 物と TO PI X先 物 の間 の スプ レ ッド 取引
︶︒
五︑ 原 資 産 の取 引 が でき な いと き のリ スク ヘツ ジ
︵株 価 の下 落 が 予 測さ れ る 場合 保に 有 し て るい 株 式 の先 物 を 売 り 建 てる
︱売 リ ヘッ ジ︶︒
原 産資 のリ クス を 引 き 受 け る スペ キ レュ ー ト が いな け れば な ら な い︒8 双方
のメ リ ット は︑
① 金資 の流 れ を変 え る こと な く
︑ リ スク 効を 率 的 に コン ト ロー ル でき る
②︑ 信﹁ 用 リ スク が想 定 元本 の 一部 な の で︑ 資本 効 率 高が く︑ 少額 の コス ト で収 益 のレ バ レ ツジ 効 果 期が 待 きで
﹂︑る
③ 関連 市 場 裁で 定 機 能 が強 化さ れ 金︑ 融市 場 の効 率 化 が 期待 さ れ る と いう 点 であ る とさ れ る︒ 銀 行 メの リ ット は︑
① 取﹁ 引 先 の財 務 ーニ ズ に合 致 たし 付 加 価 値 の高 い商 品 提を 供 す る こと 商で 品提 供 力 の差 別 化 を 図
﹂︑る
②多 額 の資 産 を 使う とこ なく 自 ら のデ イ リー ング 収で 益 を追 及 でき る︑
③ 銀 行資 産 負債 総合 管 理 おに いて も