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システムデザイン研究科 博士前期課程 知能機械システム学域

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(1)

首都大学東京大学院

システムデザイン研究科 博士前期課程 知能機械システム学域

学修番号

17889546

湯浅 健人

指導教員 下村 芳樹 教授

2020

2

獣害問題対策のための

鳥獣観測システムの開発

(2)
(3)

i

⽬次

目次 ... I

図目次 ... III

表目次 ... IV

序論 ... 1

研究背景 ... 2

獣害被害 ... 2

獣害対策の取り組み ... 3

獣害対策の事例 ... 7

獣害対策における課題 ... 8

本研究の目的 ... 9

本論文の構成 ... 10

本研究の位置づけ ... 11

はじめに ... 12

あきる野市の現状 ... 13

あきる野市 ... 13

あきる野市の環境保護戦略 ... 14

あきる野市における獣害被害 ... 15

獣害被害 ... 15

対策と課題 ... 15

本研究のアプローチ ... 16

本研究の位置づけ ... 16

アプローチ ... 17

おわりに ... 18

獣害問題対策のための鳥獣観測システムの開発 ... 19

はじめに ... 20

システム開発 ... 21

開発の手順 ... 21

Step1: 情報収集 ... 22

Step2: レポート出力機能の決定 ... 26

実装 ... 30

システム構成 ... 31

(4)

ii

システムの構成図 ... 31

システムの構成要素 ... 32

システム運用 ... 34

おわりに ... 35

検証 ... 37

はじめに ... 38

検証方法 ... 39

従来手法の概要 ... 39

検証項目 ... 39

検証結果 ... 40

時間による評価 ... 40

コストによる評価 ... 40

おわりに ... 41

考察 ... 43

はじめに ... 44

本システムの有効性に関する考察 ... 45

所用時間の比較に関する考察 ... 45

コストの比較に関する考察 ... 45

システム全体の活用に関する考察 ... 46

統計解析のためのデータ蓄積 ... 46

他の獣種の調査 ... 47

人材育成 ... 47

おわりに ... 48

結論 ... 49

結論 ... 50

本研究の課題 ... 51

展望 ... 52

参考文献 ... 54

英語文献 ... 55

日本語文献 ... 56

審査会での質疑に対する回答 ... 59

謝辞 ... 63

(5)

iii

図⽬次

Fig. 1-1 農作物被害額及び獣種別被害額の推移(平成21〜28年度) ... 2

Fig. 1-2 鳥獣被害防止特措法に基づく被害防止計画作成市町村数 ... 4

Fig. 1-3 電気柵の成功例と失敗例 ... 6

Fig. 2-1人口と世帯数の推移 ... 13

Fig. 3-1トランジションシナリオ記述シート ... 23

Fig. 3-2各段階におけるステークホルダマップ ... 25

Fig. 3-3システム構成図 ... 31

Fig. 3-4 鳥獣が撮影された画像 ... 33

Fig. 5-1 1週間において日中と夜間に観測されたイノシシの頭数の推移 ... 46

(6)

iv

表⽬次

Tab. 3-1鳥獣識別AIの出力データの例 ... 22

Tab. 3-2各段階における設計目標 ... 24

Tab. 3-3調査文献一覧 ... 25

Tab. 3-4レポートの出力項目一覧 ... 29

Tab. 4-1 時間による評価 ... 40

Tab. 4-2コストによる評価 ... 40

(7)

1

序論

序論 ... 1

研究背景 ... 2

獣害被害 ... 2

獣害対策の取り組み ... 3

獣害対策の事例 ... 7

獣害対策における課題 ... 8

本研究の目的 ... 9

本論文の構成 ... 10

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

(8)

2

研究背景

獣害被害

近年,我が国において野生鳥獣による農作物や住民への被害が深刻な社会問題の一つ となっている.Fig. 1-1 に農作物被害額及び獣種別被害額の推移を示す.野生鳥獣によ る農作物被害額は平成

22

年度の

239

億円をピークに,平成

25

年度以降

5

年連続で減少 傾向にあり,

Fig. 1-1

には記載されていないが平成

29

年度の農作物被害金額は

164

億円 と,更なる減少傾向を示している.[農林水産省 2018]

鳥獣による被害のうち,シカ,イノシシ,サルの三種が被害の

7

割を占めている.ま た,前述のように全体的な傾向としては,鳥獣による被害は減少傾向であるものの,ハ クビシンやアライグマなどの中型獣による被害が増加傾向にある.これは,地球温暖化 などによって生息しやすい範囲が広がったとともに,シカ,イノシシ,サルなどに比べ 十分な対策をとれていないことが原因として考えられる.

Fig. 1-1 農作物被害額及び獣種別被害額の推移(平成21〜28年度)

[農林水産省 2018]

(9)

3

また,獣害被害の中でも森林被害も大きな問題となっている.直接的な農作物への被害 とは異なるが,山林は自然のダムの役割を果たしたり,土壌の安定化に寄与しており,その 山林が被害を受けることで,河川の氾濫や土砂崩れの危険性が高くなる.鳥獣のなかでも,

森林被害の8割をシカが占めている.シカは,特に食べ物に乏しい冬などに,木の枝や樹皮 を好んで食べるため,森林に重大な被害を与えている現状がある.特に北海道では,その土 地の広大さからエゾシカによる森林被害かかなり深刻化している.

このような獣害による被害は,ただ被害を被るだけでなく,高齢化が進む農山漁村に おいて,営農意欲の減退や耕作放棄,離農の増加をもたらすため,農作物への被害総額 以上に我が国に損害を与える.

獣害対策の取り組み

法律の制定

日本政府は,獣害被害が増加し始めた平成

19

年に,鳥獣による農林水産業等に関わ

る被害防止のための施策を総合的かつ効果的に推進し,農林水産業の発展及び農山漁村

地域の振興に寄与することを目的として,「鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止

のための特別措置に関する法律」(以下鳥獣被害防止特措法)を制定した.その後,鳥

獣の捕獲等を行う担い手の減少,少子高齢化の現状を鑑みて,鳥獣による農林水産業等

に係る被害の防止に関する施策の効果的な推進を目的として、平成

24

年及び平成

26

に「鳥獣被害防止特措法」の改正法が成立した.また,環境省及び農林水産省は,平成

25

年に策定した「抜本的な鳥獣 捕獲強化対策」において,ニホンジカ及びイノシシの

捕獲目標として生息数を平成

35

年度までに半減することとした.また,ニホンジカ及

びイノシシは平成

26

年に策定された「被害対策強化の考え方」において,平成

35

年度

までに,ニホンザルについては加害群の数の半減,カワウについては被害を与えるカワ

ウの生息数の半減を目指すこととした.これらを踏まえ,鳥獣被害対策を強化すること

が必要である.加えて,「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」が改正され,平

27

年に施行された.改正に伴い,法律の題名が「鳥獣の 保護及び管理並びに狩猟の

適正化に関する法律」(以下鳥獣保護管理法)に改められ,目的に鳥獣の管理の適正化

を図ることが追加されたほか、 都道府県及び国が実施する鳥獣の管理のための計画を位

置付けるなど,施策体系が整理されており,鳥獣被害防止特措法に基づく被害防止施策

との一層の連携が進められている

(10)

4

鳥獣被害防止特措法に基づく被害防止計画作成市町村数 ・実施隊設置市町村の推移を

Fig. 1-3

にしめす.この法律が施行されてから被害防止計画を作成している市町村,実

施隊設置市町村は,年々増加し続けている.平成

31

4

月時点では,被害防止計画を 作成している市町村のおよそ約

8

割が実施隊設置市町村を設置している.

Fig. 1-2 鳥獣被害防止特措法に基づく被害防止計画作成市町村数

・実施隊設置市町村の推移

(11)

5 具体的な獣害対策の指針

獣害対策の基本的な考え方として,(i)誘引除去,(ii)予防,(iii)捕獲の3つがある.(i)誘 引除去とは,野生動物の食料となるものを管理・除去すること,(ii)予防とは,農地に接近 侵入させないこと,(iii)捕獲とは,加害する野生動物を駆除することを指す.獣害対策と は,これらの3つを徹底して行うことで実現できる.

これら3つの中で直接的な効果を望むことができるのは,(ii)予防と(iii)捕獲である.

(ii)予防の具体例としては,防護柵の設置がよく行われている.

昔は防護柵とは農地を個別に囲むものが一般的であったが,農地によって防護柵の管理 不足などの差ができてしまうと,管理の甘い農地に獣害被害が集中してしまうなどの問題 が発生し,その結果,農地に侵入することを覚えた鳥獣を増やしてしまい,更なる被害を 呼ぶなどの事例が発生した.そのため,近年では集落全体を囲う集落柵を設置する地域が 増加している.また,防護策は,下記に示す2種類あり,使用できる予算や対策する獣種 によって適切なものを選択する必要がある.

(A) 物理柵 → 物理的な障壁によって侵入を防止

ワイヤーメッシュ柵/金網柵/トタン板/ネット柵など (B) 心理柵 → 学習効果によって侵入を防止

電気柵

特に使用されるのは,心理柵である電気柵である(Fig.1-3).その理由としては,初期 コスト,維持コストの安価さ,また設置の容易性である.物理柵と異なり,ポールと電気 の流れる細いワイヤーを設置することで完成するため,比較的容易に設置することができ る.

(iii)捕獲には,(a)はこ罠,(b)囲い罠,(c)くくりわな,(d)銃器による4つの方法が用い

られている.イノシシに対しては,(c)くくり罠が特に使用されることが多く,その理由と して,安価かつ設置が容易であることが挙げられる.しかしながら,他の罠にも通じるこ とであるが,人や対象鳥獣以外が罠にかからないように十分に注意する必要がある.

(12)

6

Fig. 1-3 電気柵の成功例と失敗例

(13)

7

獣害対策の事例

1.1.2

節で述べたように,様々な政策を通じて我が国は獣害対策に取り組んでいる.

本項では,それらの政策のもと,マクロレベルで近年行われている獣害対策の具体例を 紹介する.近年, 狩猟者の高齢化を省みて,より狩猟者への負担が少なくなるように様々 な商品が開発されている.特に,

IT

技術を活用した狩猟罠などが開発され, 活用され始 めている.

(i)

電気柵

柵に接触すると電気が流れる, 心理柵.獣種に合わせて, 適切に高さを調節 したり, 設置する必要がある. 柵としての強度はあまりないので,しっかりと メンテナンスすることが必要.

(ii)

捕獲罠

狩猟のために設置されることが多いが,行政からの依頼によって狩猟期間 以外に設置されることも多い.鳥獣に合わせ,さまざまな種類が存在する.

(iii)

追い払い

サルに限定されるが適切に実施することで,サルが人里に出没しなくなる.

(iv) ICT

を活用した自動捕獲罠

画像認識技術により,檻の中に鳥獣が入ったことを確認してから扉を閉め

る.そのため, 既存の罠よりも捕獲率が高い.また,捕獲後パソコンやスマホ

通知が行われるため,従事者の負担軽減も実現している.

(14)

8

獣害対策における課題

獣害対策における課題は多く存在する.農林水産省が整理した,全国における失敗事 例の一部を下記に示す[農林水産省 2018-3].

l

ハンターと農家の間の利害衝突

l

一部農業従事者の非科学的な思い込み

l

不明瞭な目標のものと,非計画的な捕獲

l

対策実施から対策効果が現れるまでのタイムラグによる評価の失敗

l

生息数の把握が不可能なことによる,効果測定の難しさ

獣害対策は,行政のみが取り組んで解決可能な問題ではなく,地域従事者, 場合によ

っては他の自治体とも協力して取り組む必要がある問題である.また,それらの問題解

決に必要な鳥獣の生息域,生息数の把握が困難であることも課題としてあげられる.

(15)

9

本研究の⽬的

以上の背景を踏まえ,本研究では以下の目的を設定する.

「獣害問題対策のための⿃獣の⽣息域,⽣息数が把握可能な

⿃獣観測システムの開発」

本研究では上記目的を達成するために,まずは鳥獣の観測とその分析が行うことが可

能なシステムの開発を目指す.

(16)

10

本論⽂の構成

本論文は,全

6

章から構成される.以下に,各章の概要について述べる.

1

章 「序論」では,獣害被害の現状と解決のための取り組み,そして課題について 述べた.これに基づき本研究の目的を明らかにした.

2

章 「本研究の位置づけ」では,あきる野市における獣害被害と実施されている対 策,課題について述べる.次に本研究の位置づけを整理し,アプローチを述べる.

3

章 「獣害問題対策のための鳥獣観測システムの開発」では,まずシステム開発の ための手順を説明し, 次にそれらを詳しく述べる.続いて,システムの構成についてシ ステム構成図を交えて説明する.

4

章 「検証」では,本研究で開発する鳥獣観測システムの有効性について, 時間と コストの観点から検証する.そのためにまず, 従来手法について簡単に説明し, 検証項 目の時間とコストについて説明する.次に実際に時間とコストついて検証を行う.

5

章「考察」では,第

4

章にて検証内容や,システムの運用について考察する.

6

章「結論」では,第

5

章で述べた考察の内容より,本研究の結論, 課題,展望に

ついて述べる.

(17)

11

本研究の位置づけ

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

本研究の位置づけ ... 11

はじめに ... 12

あきる野市の現状 ... 13

あきる野市 ... 13

あきる野市の環境保護戦略 ... 14

あきる野市における獣害被害 ... 15

獣害被害 ... 15

対策と課題 ... 15

本研究のアプローチ ... 16

本研究の位置づけ ... 16

アプローチ ... 17

おわりに ... 18

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

(18)

12

はじめに

2

章では,まず,あきる野市がどのような街かについて説明し, 次にあきる野市に

おける獣害被害と,その対策, 課題について述べる.そのあと,本研究の位置づけを明

らかにし,アプローチを説明する.

(19)

13

あきる野市の現状

あきる野市

あきる野市は,都心から

40km〜50km

離れており,豊かな自然に囲まれた都市であ る.あきる野市の人口の推移を

Fig.2-1

に示す.あきる野市の人口は

2012

年からほぼ横 這いで変化していない.しかしながら, 世帯数の増加は続いており核家族化が進行して いる.このような現象は,山間部での人口減少と,農林業従事者の減少に関与している と考えられる.

あきる野市の約

6

割が森林であり, 東京都において非常に緑の多い自治体となってい る.このような自然の多い環境であるため,環境保護,強いては生物多様性の保全に関 して積極的に取り組んでいる.

Fig. 2-1人口と世帯数の推移

(20)

14

あきる野市の環境保護戦略

あきる野市は,2019 年

1

月にあきる野市生物多様性戦略を制定している.基本理念 として,以下の

3

つを掲げている.

l

生物多様性や生物多様性の恵みを理解し, 保全と活用の循環により,生物多様性 の維持・向上を地域活性化を図る

l

生物多様性の取り組みは,あきる野市の生物多様性の恵みを享受する全ての主体 が連携して行う

l

豊かな自然と,その中で育まれてきた生活を, 可能な限り良い形で将来の世代に 継承する

このような理念のもと,生態系へ被害を生じさせている有害害獣の管理が必要となっ

ている現状がある.

(21)

15

あきる野市における獣害被害

獣害被害

まずあきる野市において,特に被害を生じさせている鳥獣について述べる.1.1.1 項 で述べた全国の農作物への被害を出している鳥獣と同様に,シカ・イノシシ・ サルが具 体的な割合は不明であるが, 有害鳥獣のうちの大きな割合を占める.それ以外にはカモ シカが挙げられ, 天然記念物であるために狩猟できない問題がある.また,近年クマが 目撃されるようになり,いまだ被害自体は出ていないが十分に注意が必要である.

対策と課題

対策としてあきる野市は, 猟友会への狩猟依頼や,農業従事者への低価格での電気柵 の貸し出しなどを行なっている.しかし,現状被害が発生してから対応するにとどまっ ており, 未然に防ぐような取り組みを積極的にできていない.そのような取り組みを行 うために鳥獣の生息域,生息数の把握に努めている.

具体的には, 猟友会の人員の目視による情報から山林における鳥獣の生息マップの作

成や, 赤外線センサーによって鳥獣を自動撮影することが可能なセンサーカメラの設置

とその画像データの確認による生息獣種・ 頭数の把握を行なっている.一方で,その画

像データは, 市の職員が各設置地点を巡回し,センサーカメラから

SD

カードを回収す

ることで収集しているが,カメラは複数地点に設置されており,また各設置地点の距離

が離れているためその収集は容易でない.さらに,その画像データは, 職員が目視によ

って判別しているため,鳥獣の撮影からその獣種, 頭数の把握までに多大な時間を要し

ている.また,現状では画像データから獣種・頭数を確認するのみに留まっており,こ

れらの情報を継続的に収集し活用出来る体制は整っていない.これらの現状から,獣害

対策において, 多大な人的コスト・時間コストを発生させている反面, 迅速かつ効果的

な対策を実施できていない.

(22)

16

本研究のアプローチ

本研究の位置づけ

以上の問題に対して,あきる野市では,野生鳥獣による深刻な農作物被害を抑制する ことを目的とし,産官学の連携により, センサーカメラを利用した獣害対策のための鳥 獣観測システムの開発に着手している.本システムは通信機能付きセンサーカメラを用 いることで,画像データの収集を自動化し,また

AI

を用いることで画像データによる 獣種・頭数の把握を自動化する.

本研究では,上記システムによって得られるデータを継続的に活用可能とするために,

鳥獣観測による分析結果をまとめたレポート作成を自動化するシステムの開発を行う.

本開発は画像解析技術を有する中小企業(以下

S

社)との共同により実施し, 具体的に

AI

を用いた画像データによる獣種・頭数の把握を同企業が担当し,本研究ではそれ

以降のレポート作成機能の開発を実施する.

(23)

17

アプローチ

本研究では,以下に示すアプローチのもと,鳥獣観測による分析結果をまとめたレポ ート作成を自動化するシステムの開発に取り組む.

【1】システムの構築に必要な情報の収集

【2】レポートの出⼒項⽬と,データ処理⼿法の検討

【3】実装に⽤いるソフトウェアの決定と実装

上記のアプローチをとることで,本研究の大目的である「獣害問題対策のための鳥獣

の生息域,生息数が把握可能な鳥獣観測システムの開発」の初期段階の「獣害問題対策

のための鳥獣観測システム」の一部である,「鳥獣観測による分析結果をまとめたレポ

ート作成を自動化するシステムの開発」が実現できる.そして,本研究により,獣害問

題対策のための鳥獣観測システムの構築が可能となる.

(24)

18

おわりに

本章では,あきる野市と獣害被害の現状について述べ,その対策方法と課題について

明らかにした.これをもとに,本研究の位置づけを明らかにし,本研究を実現するた

めのアプローチを説明した.

(25)

19

獣害問題対策のための⿃獣 観測システムの開発

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

獣害問題対策のための鳥獣観測システムの開発 ... 19

はじめに ... 20 システム開発 ... 21 開発の手順 ... 21 Step1: 情報収集 ... 22 Step2: レポート出力機能の決定 ... 26 実装 ... 30 システム構成 ... 31 システムの構成図 ... 31 システムの構成要素 ... 32 システム運用 ... 34 おわりに ... 35

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

(26)

20

はじめに

本章では,鳥獣観測システムを開発するにあたって, 実施した情報収集, レポート出

力項目の検討, 実装について説明する.続いて, 開発したシステムの構成とその構成要

素について図を交えて解説する.

(27)

21

システム開発

開発の⼿順

鳥獣観測システムの一部にあたる,鳥獣観測に関するレポート作成機能を開発するに あたり,以下の手順でこれを行った.

Step1:

情報収集

Step2:

レポート出力機能の決定

Step3:

実装

「Step1: 情報収集」では, レポートの出力として実現可能な機能を特定するために開 発に必要なシステムの入力や, 観測対象鳥獣について,また本システムの今後の展望に ついての調査を行う.

「Step2: レポート出力機能の決定」では,Step1: 情報収集より獲得された情報より,

レポートの出力として適当な項目を決定する.

「Step3: 実装」では,

Step2:

レポート出力機能の決定より特定された出力機能を実現 するために,Microsoft 社の

Microsoft Office Excel

を使用し,Visual Basic for Application を用いて記述し,構築を行う.

上記の手順により,鳥獣観測システムの一部にあたる,鳥獣観測に関するレポート作

成機能に取り組む.

(28)

22

Step1:

情報収集

本ステップでは, レポートの出力として実現可能な機能を特定するために, 開発に必 要なシステムの入力や, 観測対象鳥獣の特徴について,また本システムの今後の展望に ついての調査を行う.

まず,(i)システムの入力となる鳥獣識別

AI

の出力データについて調査する.

Table.1

に鳥獣識別

AI

の出力データの一例を示す.図に示すように,出力される項目

としては, 撮影データのファイル名, 撮影時刻,イノシシの観測数,クマの観測数であ り, ファイル名は撮影日時となっている. 含まれるデータはテキストデータのみとなっ ており,csv ファイル形式で出力される.

Tab. 3-1鳥獣識別AIの出力データの例

次に,(ii)鳥獣観測システムの展望について調査する.

この調査にあたり,平光らの提案する社会の持続可能化に寄与する

PSS

設計を支援 するシナリオ展開手法[平光 2020]に基づき,あきる野市職員, 画像解析技術を有する

S

社,東京都産業技術研究所からの各代表者の参画により,獣害問題をテーマとする

WS

を実施した.平光らの提案手法を以下に示す,4 つのステップで構成される.

ステップ

1:

現状の理解と分析

本ステップでは,PSS を実装する社会システムに属する主体の認知する問題の抽出,

共有とその分析を行う.まず, 各主体が抱える不満や問題視している事柄を抽出/表現

し,社会システムの現状と生じている問題を共有する. 次に, 抽出された多様な問題を

因果関係に基づき構造化し,それらを性質別(制度的,文化的, 技術的,組織的)に整

理する.これにより,生じている問題の構造を分析し,PSS 設計上の主眼として取り組

むべき根本的な要因を導出する.

(29)

23

ステップ

2:

ビジョン形成

本ステップでは, ステップ

1

で特定した根本的要因が,

PSS

の実装により解決された 未来の社会システムの状態を導出する.ここでは,バックキャスティング思考により,

現在の延長上にない新しい状態を考案し,それが実現された社会システムの制度的/文 化的/組織的/技術的状態を構想する.これにより,シナリオの最終的なビジョン(到 達目標)を獲得する.

ステップ

3:

シナリオ開発

本ステップでは, フォアキャスティング思考により, ステップ

2

で形成したビジョン の到達目標とそれに対する現状を理解した上で,現状からビジョンに至るために必要と なる具体的なアクションを展開する.

上記を実践するためのトランジションシナリオ記述シートを

Fig.3-1

に示す.まず,

将来の社会システムにおいて実現されているべき制度や組織,サービス, 製品/技術を 導出し,それに対する現状の状態をシナリオの起点として設定する. 次に,現状からビ ジョンに至るために必要となるアクションを抽出し,それらを各カテゴリ内に実行する 時系列で順序付ける.ここで,制度的,組織的,技術的な要素は,主体による能動的ア クションであるが, 文化的変化は他の制度的, 組織的, 技術的変化の影響を受ける受動 的イベントである.その為, 文化カテゴリには,アクションではなく状態変化を抽出す る.その後,アクション間や文化の状態との影響関係を記述する. 文化の状態変化を引 き起こす制度的, 組織的, 技術的アクションをそれぞれの状態に紐づけることで, 各ア クションと文化の状態との影響関係を記述する. 同時に,アクションを実行する際に達 成しなければならないハードルがある場合,ハードルとなる箇所とその解消に必要なア クションを記述する.

Fig. 3-1トランジションシナリオ記述シート

(30)

24

ステップ

4: PSS

の設計目標設定

本ステップでは, ステップ

3

の結果を踏まえ, 達成すべき

PSS

の段階的目標を設定す る.まず,文化の状態変化を軸として社会システムのトランジションの段階を設定し,

各段階におけるアクション(技術開発,制度制定,サービス提供など)やその実行によ る社会システムへの影響,効果などから

PSS

の設計目標を導出する.そして, 各目標が 実現された状態のステークホルダマップを記述し,社会システムの段階的変遷を展開す る.この一連のステップを通じて, 構想したビジョンまでのシナリオとその実現に寄与 する

PSS

の設計の段階的設計目標が導出される.

WS

を実施した結果,まず, ステップ

1

の結果として, 「自然環境の変化から, 突然,

住民の環境に対する関与や自主性を必要とする対策が前提になっていること」が根本的 原因として導出された.住民全体の意識改善を図り, 自主性を向上させることが困難で あることを受け入れ,その上で,「市民や農業従事者のみでなく市外の多様な主体が協 力/連携し,自然や動物と共存する」状態を

20

年後のビジョンとして設定した.

次に,上記を実現するための現在から

5

年後の到達目標として, 「鳥獣の生態系が把 握されている(文化) 」 , 「自然ボランティア育成制度の設立(制度) 」 , 「自然共生課の設 立(組織) 」 , 「鳥獣観測システム開発(技術) 」などを導出した.その後,それらに対応 する現状と現状からビジョンに至るために必要となる具体的なアクションを記述した.

その結果, 文化の状態変化に基づき

5

つのトランジションの段階が設定され,それに応

じて

Table

に示す段階的な

PSS

の設計目標が導出された.加えて,

Fig.3-2

に示すステー

クホルダマップの段階的変遷が展開された.

Tab. 3-2各段階における設計目標

時間 文化的状態 P S Sの設計目標

第1段階 現在~1年後 獣害の理解が進む 鳥獣観測システムの開発,試行

第2段階 1~2年後 環境問題についての理解が進む鳥獣観測システムの取得データの活用方

法(獣害対策)の確立,対象鳥獣種の拡大

第3段階 2~3年後 自然との共生が考えられる 鳥獣観測システムの導入により,獣害被

害額20%減少

第4段階 3~4年後 ジビエ等の狩猟後の活用方法が

浸透し始める

市の鳥獣生息地,個体数等の生態系の把 握が可能なシステムへ拡張(GIS利用)

第5段階 4~5年後

狩猟後の活用方法が定着する 生態系が把握され,バッファ ゾーンが整備される

生態系把握システムで取得されたデータ の応用(教育,生態系管理)

(31)

25

Fig. 3-2各段階におけるステークホルダマップ

続いて,(iii)観測対象鳥獣の特徴に関する調査を行う.

あきる野市の職員と猟友会のメンバーへのヒアリングの結果から,現在あきる野市周 辺ではイノシシによる被害が多く,クマはごく稀に観測されるのみであり,クマによる 実害は未だ発生していないことがわかった.よって,本研究ではイノシシに焦点を当て,

その特徴に関して調査を行う.

調査手法は,書籍, 雑誌,文献からイノシシに関するものを調査した.イノシシに関 する書籍,雑誌,文献は非常に少ないため,「イノシシ」を検索キーワードとして検索 し, 収集した.あきる野市周辺に生息するイノシシはニホンイノシシであるため, 主に 日本語の書籍等に限定して収集した.収集した文献の一覧を

Tab.3-3

に示す.

Tab. 3-3調査文献一覧

(32)

26

その結果,イノシシは以下に列挙する特徴を所有することが判明した.以下に列挙す る特徴は,一般的にイノシシが共通して持つと考えられるもののみを記述する.

l

平均寿命が

4

年程と短いが,その分早熟であり妊娠期間が短く,多胎妊娠し,多 くの交尾機会を持ちうるという繁殖特性を有するため, 他の大型獣に比べて高い 再生能力を持つ

l

生後

3

年間の死亡率が

47.7~69.2%と高いために生息数は数ヶ月単位で大きく変

動する

l

人間による影響が少ない地域では,イノシシは主に日中に活動し, 夜間には活動 性が落ちるが,狩猟圧が高い(積極的に狩猟に取り組んでいる)地域では,主に 日没から日出までの夜間に活動する

l

人間による影響の少ない夜間に農地を利用する

l

夏や乾期など気温の高い時期にはイノシシは日中にほとんど活動せず, 夜に活動 が活発になる

Step2:

レポート出⼒機能の決定

本ステップでは,

Step1:

情報収集より得られた情報からレポートとして出力すべき項 目を特定する.Step1: 情報収集で収集した,(i)システムの入力となる鳥獣識別

AI

の出 力データ,(ii)鳥獣観測システムの展望,(iii)観測対象鳥獣の特徴,それぞれから得られ た情報を説明し,ついでこれらの情報から特定されたレポートとして出力する項目につ いて説明する.

(i)システムの入力となる鳥獣識別AI

の出力データ

システムの入力となる鳥獣識別

AI

の出力データとしては, 撮影データのファイル名,

撮影時刻,イノシシの観測数,クマの観測数であった.これより,システムの入力とし て使用できるデータが,撮影時刻とイノシシの観測数であることが判明した.

(ii)鳥獣観測システムの展望

平光らの提案手法によって,鳥獣観測システムは将来的に鳥獣生息域, 個体数などの

生態系の把握が可能な地理情報システム(GIS:Geographic Information System)への拡

張が目標として導出された.すなわち, 長期的な運用や他のシステムへの活用も考慮し

システムの構築を行うべきであることがわかった.

(33)

27 (iii)観測対象鳥獣の特徴

観測対象鳥獣であるイノシシの特徴としては調査結果より,地域住民の活動習慣と気 温によって主な活動時間帯が日中か, 夜間かに変化することがわかった.また,上田ら によれば,果樹園・放置果樹園におけるイノシシの活動を観測した結果,果樹園・ 放置 果樹園を利用するイノシシの活動が,日出,日の入に集中していたことを報告している

[上田 2004].本研究では,イノシシの生態を把握するには,日中と夜間の分類で観測す

るのみでは不十分であると考えのもと,日出,日の入にも着目し,これも出力項目とし て設定することとした.

上述の(i)(ii)(iii)に基づき,決定したレポートの出力項目を

Table. 3-4

に示す.

レポートの期間は,1 日,1 週間,1 ヶ月,3 ヶ月,1 年,複数年(任意の年数)とし た. 「1 日,1 週間,1 ヶ月」ごとにレポートを出力する理由としては,短中期的に結果 を分析することで,獣害被害などが発生し, 早急に対策を講じる必要が生じた時に迅速 に対応可能とするためである. 「3 ヶ月,

1

年」 ごとにレポートを出力する理由としては,

調査結果よりイノシシの活動は, 人間の活動, 食物の有無, 気温に影響を受けることが わかっており,このなかでも食物の有無, 気温の

2

点は季節に依存すると考えられるこ とができる.この変化を分析するために「3 ヶ月,1 年」ごとにレポートを出力するこ ととした.3 ヶ月の期間としては,1 月から

3

月,4 月から

6

月,7 月から

9

月,10 月 から

12

月とした. 「複数年(任意の年数) 」でレポートを出力する理由としては,数年 単位でイノシシの変化を観測するためである.また, 「3 ヶ月,

1

年, 複数年」 ごとにレ ポートを出力することで,中長期的にイノシシの変化を分析することができる.

レポートの出力項目として, 大きな枠組みとしては観測数, 観測数の推移, 観測数の 平均と標準偏差が存在する.観測数には,1 時間の観測数,日中と夜間の観測数,日の 出・日の入前後

1

時間の観測数,1 日の観測数,1 週間の観測数,1 ヶ月の観測数,

3

ヶ 月の観測数,1 年の観測数が含まれる.観測数の推移には,1 時間毎の観測数の推移,

日中と夜間の観測数の推移,日の出・日の入前後

1

時間の観測数の推移,1 日の観測数

の推移,

1

週間の観測数の推移,

1

ヶ月の観測数の推移,

3

ヶ月の観測数の推移,

1

年の

観測数の推移が含まれる. 観測数の平均と標準偏差には,日中と夜間の観測数の平均と

標準偏差,日の出・日の入前後

1

時間の観測数の平均と標準偏差,1 日の観測数の平均

と標準偏差,

1

週間の観測数の平均と標準偏差,

1

ヶ月の観測数の平均と標準偏差,

3

月の観測数の平均と標準偏差,1 年の観測数の平均と標準偏差が含まれる.

(34)

28

出力項目は,レポートの期間によって変化する.例えば,1 日のレポートであれば,

出力項目が

1

時間毎の観測数,日中 ・夜間の観測数,日の出・日の入の前後

1

時間の観

測数,1 日の観測数であるのに対し,1 ヶ月のレポートであれば,1 ヶ月の観測数,日

中・夜間の観測数の推移(1 週間毎) ,日の出・日の入の前後

1

時間の観測数の推移(1

週間毎) ,1 週間の観測数の推移,日中・夜間の観測数の平均と標準偏差(1 週間毎) ,

日の出・日の入の前後

1

時間の観測数の平均と標準偏差 (1 週間毎) ,

1

日の観測数の平

均と標準偏差,

1

週間の観測数の平均と標準偏差となる.このレポートをもとに施策や

対策を実施する場合,その施策,対策が短期的なものなのか,中長期的なものなのかで

参考にすべきレポートの期間を適当に選択する必要がある.

(35)

29

(36)

30

実装

実装に当たり,あきる野市役所でも使用されており,また今後の変更やメンテナンスも容易な Microsoft Office Excelを使用し,Visual Basic for Applicationを用いて本システムを実装する.本システ ムは,鳥獣識別AI から出力されるcsvファイルを手動で取り込むことで,その分析結果をレポート形式 にしたものとテキストデータのものをxlsxファイルとして別々に出力する.

(37)

31

システム構成

システムの構成図

システム全体の構成図を Fig.3-3 に示す.本システムは,通信機能付きセンサーカメラ,通信機能付 きセンサーカメラから送信される画像データを受信するサーバー,画像データから獣種と頭数を判別し それらをテキストデータで出力する鳥獣識別 AI,そのテキストデータをグラフに処理し文書データとして 出力するレポート作成ソフトウェアによって構成される.本研究では,レポート作成ソフトウェアの開発を お行った.

Fig. 3-3システム構成図

(38)

32

システムの構成要素

本節では,3.3.1 節で説明したシステム構成図に基づきシステムの構成要素について 解説する.

(i)

通信機能付きセンサーカメラ

本システムでは,

Hyke

社のハイクカム LT4G クラウド対応 IoT 自動撮影カメ ラを使用する.このセンサーカメラは,乾電池式の自動撮影カメラに高速

LTE

通 信に対応したものとなっている.そして,最大解像度

1200

万画素の静止画を無 線にて送信することができる.実際に撮影された画像を

Fig.3-4

に示す.

(ii)

サーバー

本システムでは,共同研究しているS社が所有しているサーバーに画像データが 送信される.

(iii)

鳥獣識別

AI

S 社が開発したこの AI は,サーバーからデータを手動でダウンロードし,それ らのデータを取り組むことでcsv形式のテキストデータを出力する.

(iv)

レポート作成ソフトウェア

本研究にて構築したこのソフトウェアは,鳥獣識別 AIが出力したcsvファイル を入力として,その分析結果をレポート形式にしたものとテキストデータのもの をxlsxファイルとして個々に出力する.

(v)

レポート

開発したソフトウェアは,レポート作成に特化しており,データの保管の機

能を有していない.そのため,データの保管を目的として,レポート作成ソフ

トウェアにて作成された文書を紙媒体にて印刷する.

(39)

33

(a)

イノシシが撮影された画像

(b)

シカが撮影された画像

Fig. 3-4 鳥獣が撮影された画像

(40)

34

システム運⽤

本節では,開発したシステムの運用について解説する.

(i)

レポート作成までの運用

まず,通信機能付きセンサーカメラによって撮影され,サーバーに保存され た画像データを一度

PC

にダウンロードする.次に,ダウンロードした画像デ ータをカメラの個体,日付に注意して鳥獣観測

AI

にて,自動判別させ,

csv

フ ァイルを出力させる.その後,その

csv

ファイルをレポート作成ソフトウェア に手動にて取り込ませ,計算させ,グラフを作成させることで,レポートを出 力させる.

(ii)

データの保管

データの保管方法としては,データと紙媒体があり,冗長性を持たせるために,

両者で保管することが望ましい.特にデータにおいては,撮影期間に比例してデ ータ量が増加するため,データの保管には注意が必要となる.

(41)

35

おわりに

本章では,本研究にて開発したシステムの構築手順と,その構成,構成要素,また運

用について説明した.

(42)

36

(43)

37

検証

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

検証 ... 37

はじめに ... 38 検証方法 ... 39 従来手法の概要 ... 39 検証項目 ... 39 検証結果 ... 40 時間による評価 ... 40 コストによる評価 ... 40 おわりに ... 41

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

(44)

38

はじめに

本章では,

PSS

設計を支援する情報の非対称性分析のためのコンテキストモデル化手

法を提案する.本章ではまず,本研究で用いる要素技術について述べる.次に,第

3

にて定義したコンテキストに基づき,本提案手法で用いる

2

種類のコンテキストモデル

化ツールについて説明する.その後,具体的なコンテキストのモデル化手順について説

明する.

(45)

39

検証⽅法

従来⼿法の概要

従来のレポート作成について,簡単に説明する.

既存の設置済みセンサーカメラは通信機能を有してなく,あきる野市の職員が当該カ メラを設置場所に直接赴き画像データが保存されている

SD

カードを回収し,その撮影 データを目視で判別しレポート作成を行なっている.この作業は

1

ヶ月に

10

回ほどお こなわれており,およそ

3

日に

1

回ほど作業を行なっている.目視による判別作業を行 うため画像データの目視での識別からレポート作成まで約

2

時間要している.また作成 するレポートは観測された日付,獣種,頭数に関する情報のみである.

検証項⽬

本研究の有効性を検証するために,時間とコストの

2

つの項目について検証を行う.

(1)

時間

本研究は,市の職員が行っている画像データの目視での判別からレポート作成までの 時間を短縮し,負担を軽減することを目的としているため,従来手法と本研究で構築 したソフトウェアを利用する場合で比較する.またその期間は,従来手法が完全に一 定の期間で実施されていたわけではないため,1 月にかかる時間をそれぞれ計算し比 較する.

(2)

コスト

本システムの導入にあたり, 新規に通信機能を有するセンサーカメラの購入などによ

り,コストが発生している.このコストを踏まえ,従来手法と構築したソフトウェアを

利用する場合の人件費を含むコストを比較する.

(46)

40

検証結果

時間による評価

本研究で構築したシステムは,従来手法よりもレポートの作成頻度が増加しており,

鳥獣観測

AI

は限定的な獣種しか識別できず,レポートの内容も異なるため,単純な比 較が難しい.そのため, 比較が容易になるように, 同量の画像データを判別しレポート を作成するのに要する

1

月あたりに発生する時間を比較した.その結果を

Tab.4-1

に示

す.

Tab.4-1

に示すように,従来手法に比べて構築したシステムを利用した場合,所要時

間が

4

分の

1

程度になった.よって,時間に関して開発したシステムが有効であること を確認した.

Tab. 4-1 時間による評価

コストによる評価

コストに関しては,人件費のみの場合と,通信機能付きセンサーカメラの機材費を含む場合

(初年度),通信機能付きセンサーカメラの機材費を含む場合(次年度以降)の 3 パターンで 比較を行った.また,年間のコストを計算するにあたって,構築したシステムでのその結果を

Tab.4-2

に示す.Tab.4-2 に示すように,人件費のみを比較した場合,従来手法と比較し

てコストは半分になった.また,機材費込みで計算した場合,2 年間使用することで従 来手法と開発したシステムのコストが同程度となり,それ以降に継続して使用すること で年間約

12

万円の低減となる.以上より,継続して開発したシステムを利用すること により,コスト削減が実現できるため,コストに関しても開発したシステムが有効であ ることを確認した

Tab. 4-2コストによる評価

(47)

41

おわりに

開発したシステムが従来手法と比較して,有効かどうかを,時間とコストの観点で比

較することで検証した.その結果,開発したシステムが従来手法よりも有効であること

を確認した.

(48)

42

(49)

43

考察

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

考察 ... 43

はじめに ... 44 本システムの有効性に関する考察 ... 45 所用時間の比較に関する考察 ... 45 コストの比較に関する考察 ... 45 システム全体の活用に関する考察 ... 46 統計解析のためのデータ蓄積 ... 46 他の獣種の調査 ... 47 人材育成 ... 47 おわりに ... 48

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

(50)

44

はじめに

本章では,開発したシステムについての考察を記述する.まず,4 章で行った検証に

ついて考察し,次に本システムの活用について考察する.

(51)

45

本システムの有効性に関する考察

所⽤時間の⽐較に関する考察

4.3.1

項で述べたように,開発したシステムが従来手法の

4

分の

1

程度で業務を終え

ることができることがわかった.このように時間が短縮できることのメリットとして,

本来その業務に使用していた時間を他の業務に使用することができる点が挙げられる.

あきる野市の獣害対策に関する業務を行なっている環境課では, 人手不足が発生してお り,これを多少なり緩和することが期待される.

コストの⽐較に関する考察

4.3.2

項で述べたように,人件費のみを比較した場合,従来手法と比較してコストは

半分となった.また,機材費込みで計算した場合,2 年間使用することで従来手法と開 発したシステムのコストが同程度となり, それ以降に継続して使用することで年間約

12

万円の低減となった. 以上のように, 初期費用は若干かかるが継続して利用することで,

結果的に長期でコストを見た場合, 安価となる.また, 今後設置するセンサーカメラの 台数を増やしたい場合, 人件費が半額になっていることを考慮すると,通信機能付きセ ンサーカメラを設置し,開発したシステムを利用する方が,従来手法のまま通信機能の ないセンサーカメラを設置するよりもコストが安く済み,また人でも掛からなくなる.

センサーカメラの台数が増加するほど,開発したシステムの優位性が高まると考えられ

る.

(52)

46

システム全体の活⽤に関する考察

統計解析のためのデータ蓄積

開発したシステムは,イノシシの生態を把握するために中長期的にデータを比較可能 なように構築してある.

Fig. 5-1

にレポートの出力グラフの例として,

ある1週間におけ る日中と夜間に観測されたイノシシの頭数の推移を示す.例えば,Fig. 5-1 よりイノシシは主に 日中に活動していることがわかり,その原因としては観測地付近の農地が休耕中であることや,

冬で気温が低いことが挙げられる.このようにデータを長いスパンで見ることでより正確なイノシ シの生態を把握することができる.さらには,より長期にわたり 1

年や複数年継続してデ ータを取得し,それを統計的に分析することで,従来では考えられなかった発見が見つ かるもしくは,あきる野市周辺のイノシシの生態がより詳細に把握できることが期待さ れる.

Fig. 5-1 1週間において日中と夜間に観測されたイノシシの頭数の推移

(53)

47

他の獣種の調査

S

社が開発した鳥獣識別

AI

は,現状イノシシとクマのみ識別可能である.3.3.2 項で 述べたように, 今後本システムは多様な獣種に対応していく展望を持っている.それに 合わせて,レポート作成ソフトウェアも機能の追加が必要となり,特に今後追加される 鳥獣の特徴について調査が必要になる.特に,今回のイノシシに関する調査結果より,

人間の活動とその鳥獣の主食となる食物によって,その鳥獣の行動が大きく変化すると 考えられるので,今後,鳥獣識別

AI

が発展していくのに対応して,レポート作成ソフ トウェアのアップデートのために人間の活動とその鳥獣の関わりや,その鳥獣の食性の 調査は必須のものとなる.この調査は, 多大な労力がかかるため,このシステムをアッ プデートしていく中での課題として挙げられる.

⼈材育成

本システムの活用を考えた場合, 得られたデータから適切に実行すべき施策,対策を

取らなければならない.また,

1.1.4

項で述べたように効果的な施策,対策を取るために

は, 地域住民などの協力が不可欠である.すなわち,本研究で開発したシステムだけで

は,獣害に対して特に有効な施策,対策を用意することは難しい.そのため開発したシ

ステムを有効に活用するのであれば, 施策,対策の発案,実施に関して, 十分な知識な

知識を有する人材を育成することが必要となる.

(54)

48

おわりに

本章では,開発したシステムの有効性についての考察と,データ蓄積, 他の鳥獣の調

査, 人材育成について考察した.その結果,鳥獣観測システムの活かし方を知る人材を

育成する必要があることがわかった.

(55)

49

結論

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

結論 ... 49

結論 ... 50

本研究の課題 ... 51

展望 ... 52

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

(56)

50

結論

本研究では,

従来,多大な時間コスト,人的コストを要していたレポート作成業務を簡略化するため に,鳥獣観測による分析結果をまとめたレポート作成を自動化するシステムの開発を行い,その有効性 を確認した.今後は,鳥獣観測システムの展望を考慮しながら,軽量化などのソフトウェアの改良に取り 組む.

(57)

51

本研究の課題

本節,第

5

章にて述べた考察をもとに以下に本研究の課題を挙げる.

① 他の獣種の調査と,それに対応するソフトのアップデート

② 本システムを活用し,適切な施策,対策を行うことができる人材の育成

③ 他の獣種の追加や別ソフトウェアとの統合・連携を考慮した,システムの機能,使

用ソフトウェアの再検討

(58)

52

展望

本研究は,6.2 節で挙げたような課題を持つが,まずはあきる野市の周辺に生息し,

特に獣害を多く与えている,シカ・サルについての調査を行い,それをソフトのアップ

デートにて追加する.次に,このソフトとのアップデートと鳥獣識別

AI

のアップデー

トの内容を踏まえ,使用ソフトウェアや,システム全体の再構築などを検討する. 将来

的には,様々な鳥獣の生態を

GIS

上で確認可能なプラットフォームへの統合を果たす.

(59)

53

(60)

54

参考⽂献

(61)

55

英語⽂献

[Barbe 1986] Barber, D. W. and B. E. Coblentz. Density, home range, habitat use, and reproduction in feral pigs on Santa Catalina Island. J. Mammal., 67, pp. 512-525, 1986.

[Boitani 1994] Boitani, L., L. Mattei, D. Nonis and F. Corsi. Spatial and activity patterns of wild boars in Tuscay, Italy. J. Mammal., 75, pp. 600-612, 1994.

[Conley 1972] Conley, R. H. V. G. Herny and G. H. Matschke. European hog research project W-34.

Tennessee Game and Fish Comm., Nashville. Final Report, pp. 259, 1972.

[Jezierski 1977] W. Jezierski, Acta Theriol., 22, pp. 337-348, 1977.

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(62)

56

⽇本語⽂献

[あきる野市 2019] あきる野市 (2019) 生物多様性あきる野戦略

[伊藤 1998] 伊藤絵理子, 神崎伸夫近 (1998) 現代のニホンイノシシの個体群トレンド

Wildlife Conservation Japan, Vol.3, No 2, pp.95-105

[上田 2004] 上田弘則, 姜兆文 (2004) 山梨県におけるイノシシの果樹園・放棄果樹園の利

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[金子 2009] 金子弥生, 塚田英晴, 奥村忠誠, 藤井猛, 佐々木浩, 村上隆広 (2009) 食肉目の

フィールドサイン 自動撮影技術と解析 ―分布調査を例にして 哺乳 類科学, Vol.49, No 1, pp.65-88

[九鬼 2014] 九鬼康彰, 武山絵美, 岸岡智也 (2014) 獣害及びその対策に関する研究動向と

展望 農村計画学会誌, Vol. 33, No. 3, pp.362-368

[農林水産省 2017] 農林水産省 (2017) 鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための

施策を実施するための基本的な指針.

[農林水産省 2019] 農林水産省 (2019) 鳥獣被害の対策と現状(全体版).

[農林水産省 2018-1] 農林水産省 (2018) 革新的技術開発・緊急展開事業研究成果報告集

[農林水産省 2018-2] 農林水産省 (2018) 野生鳥獣被害防止マニュアル-総合対策編-

[農林水産省 2018-3] 農林水産省 (2018) 行政担当者が知っておくべき獣害対策の基本

[農林水産省 2014] 農林水産省 (2014) 【改訂版】野生鳥獣被害防止マニュアル-イノシシ、

シカ、サル(実践編)

(63)

57

[農林水産省 2013] 農林水産省 (2014) イノシシ被害対策の進め方~捕獲を中心とした先進

的な取り組み

[丸山 2005] 丸山直樹, 高橋英理, 神崎伸夫 (2005) イノシシの増減判定手法としての「足跡

カウント法」 ワイルドライフ・フォーラム, Vol.10, No 1, pp.9-13

(64)

58

Web

(65)

59

審査会での質疑に対する回答

Fig. 1-3  電気柵の成功例と失敗例
Fig. 3-4  鳥獣が撮影された画像

参照

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