一般政府における財政赤字の 持続可能性について
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(2) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ −2−. 香川大学経済論叢. 202. ところで,財政赤字の持続可能性を分析する際に,分析対象とする政府の財 政赤字の範囲をどのように捉えるかは,政府の財政運営のあり方を検討する上 で重要となるであろう。国の一般会計レベルでの財政赤字は持続可能でないと しても,それに国の特別会計や地方政府,社会保障基金を含めて一般政府のよ うに広い範囲で政府を捉えた場合には持続可能であるかもしれない。もしその ようであるとすれば,財政赤字をめぐる今後の財政運営のあり方を検討する際 には,国の一般会計や地方政府における歳出削減や増税など,それぞれについ て財政赤字の削減を図るだけではなく,国の特別会計の整理・統合や中央政府 と地方政府をめぐる財政制度のあり方なども検討することが必要となるであろ !. う。近年,注目されている基礎的財政収支(プライマリー・バランス)では, 国と地方の基礎的財政収支を黒字化させることが政府の目標とされている。ま たさらに,今度の高齢化の急速な進展を背景に,社会保障基金における国庫負 担の増加が見込まれることをも考慮すると,政府の範囲を広く捉えて例えば, 一般政府全体で国や地方政府の財政収支改善の方向性を探ることが求められる であろう。 そこで,本稿の目的は,政府の範囲を一般政府レベルにまで拡張して,政府 収入,政府支出及び財政赤字に関する1 9 5 5年度から2 0 0 7年度までの時系列デ ータを使用し,わが国の一般政府における財政赤字の持続可能性を実証的に検 討することである。ここで,一般政府は,中央政府(国) ,地方政府及び社会 保障基金の3つの部門から構成されている。本稿での分析方法については,ま ず第1に,Hamilton and Flavin(1 9 8 6)をはじめ,Trehan and Walsh(1 9 8 8, 1 9 9 1) ,Wilcox(1 9 8 9)や Payne and Mohammadi(2 0 0 6)等による研究に基づ き,単位根検定を適用して財政赤字の定常性を検証する。さらに第2に, Hakkio and Rush(1 9 9 1)をはじめとして,Haug(1 9 9 5) ,Payne(1 9 9 7) ,Wu (1) 諸外国における財政赤字の持続可能性の実証研究では,政府の範囲の捉え方により,持 続可能性に関する結果が異なるということが示されている。例えば,Goyal, Khundrakpan and Ray(20 0 4)は,インドにおける中央政府と地方政府についてそれぞれの政府レベ ルでの財政は持続可能ではないが,両政府を統合した財政については持続可能との分析 結果を得ている。.
(3) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 203. 一般政府における財政赤字の持続可能性について. −3−. (1 9 9 8) ,Bravo and Silvestre(2 0 0 2) ,平井・野村(2 0 0 4) ,Kalyoncu(2 0 0 5) , Baharumshah and Lau(2 0 0 7) ,Payne, Mohammadi and Cak(2 0 0 8)や平井(2 0 0 9) 等と同様に,政府収入と政府支出の共和分検定に基づき持続可能性を分析す る。なお,上記の単位根検定や共和分検定では構造変化を考慮し,構造変化時 点を未知として内生的に特定できるような検定方法も採用する。 本稿の構成は,以下の通りである。まず第!節では,一般政府及びそれを構成 する3つの部門における財政赤字の推移について時系列データを用いて概観す る。次に第"節では,一般政府における財政赤字の持続可能性を検定するため の実証分析の方法を提示する。そして,第#節では,使用するデータを説明す るとともに,実証分析の結果を検討する。最後に,第$節において結論を述べ る。. Ⅱ.一般政府における財政赤字の動向 本節では,わが国の一般政府における政府収入,政府支出及び財政赤字の動 向を,『国民経済計算年報』 (内閣府経済社会総合研究所)による年度データに 基づいて概観しよう。これらすべての変数については,最近時点までのデータ が1 9 9 3年改訂の国民経済計算体系(9 3SNA)より求められる。ところが,こ の9 3SNA のデータは%及して1 9 8 0年度までしか公表されていない。一方, 国民経済計算における6 8SNA では,1 9 5 5年度よりすべてのデータを入手する ことが可能であるが,データの終期は1 9 9 8年度となっている。そのため,1 9 5 5 年度から1 9 9 8年度までの期間については6 8SNA のデータを使用し,1 9 9 9年 度以降は9 3SNA のデータを用いることにする。ここで,9 3SNA では6 8SNA の内容が変更されているため,データの一貫性に問題が生じるものの,長期に わたるデータを確保するために,6 8SNA のデータと9 3SNA のデータをその まま接続することにした。 表1と表2はそれぞれ,6 8SNA と9 3SNA における政府収入と政府支出の 内容が示されている。いずれにおいても,政府収入には経常受取額を,そして &. 政府支出には経常支払額と純資本支出の合計額を使用することとする。また,.
(4) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ −4−. 香川大学経済論叢 表1. 204. 一般政府の収入・支出項目(6 8SNA) (1 0億円). 取引の種類. 1 9 55年度 1 9 6 5年度 197 5年度 1 98 5年度 1 99 5年度. 間接税 直接税 財産所得(受取) 社会保障負担 損害保険金 罰金および強制的手数料 無基金雇用者福祉帰属負担 その他の経常移転(受取) 経常受取(a). 746. 7 589. 1 31. 7 229. 9 0. 1 12. 6 0. 5 15. 0 1, 625. 6. 2, 459. 4 2, 486. 4 236. 8 1, 345. 7 0. 7 57. 9 1. 5 16. 5 6, 604. 9. 645. 7 380. 6 39, 9, 846. 3 24, 868. 6 718. 4 48, 13, 586. 2 39, 671. 1 595. 9 15, 2, 072. 4 8, 334. 0 121. 4 50, 9, 252. 6 27, 11. 6 10. 1 4. 5 554. 4 348. 5 192. 9 11. 3 7. 9 4. 4 069. 2 487. 4 1, 103. 3 165. 9 670. 2 156, 35, 062. 6 100,. 最終消費支出 財産所得(支払) 補助金 社会保障給付 社会扶助費 無基金雇用者福祉給付 損害保険純保険料 対家計民間非営利団体への経常移転 その他の経常移転(支払) 経常支払(b). 852. 8 61. 7 40. 8 206. 1 173. 7 0. 5 0. 1 18. 3 2. 8 1, 356. 8. 2, 763. 9 136. 4 255. 4 1, 102. 3 479. 2 1. 5 0. 7 58. 8 20. 1 4, 818. 3. 15, 261. 5 1, 927. 5 2, 110. 5 9, 026. 5 2, 795. 1 4. 4 4. 4 467. 8 122. 8 31, 720. 5. 317. 6 44. 7 16. 1 37. 8. 1, 539. 8 150. 2 122. 2 140. 3. 8, 103. 2 698. 3 1, 080. 8 502. 9. 総固定資本形成(c) 固定資本減耗(d) 土地の購入(純) (e) 資本移転(純支払) (f) 貯蓄投資差額(a−b−c+d−e−f). −58. 1. 673. 5 31, 038. 0 47, 566. 3 14, 630. 4 18, 757. 1 3, 697. 1 3, 422. 5 29, 759. 5 57, 739. 1 5, 996. 6 7, 11. 3 7. 9 13. 4 10. 6 161. 5 1, 142. 8 2, 322. 0 391. 5 1, 664. 6 86, 674. 4 138, 15, 357. 8 2, 089. 9 2, 743. 8 470. 2. 32, 517. 4 3, 143. 3 6, 008. 0 1, 179. 4. 134. 7 −5, 653. 4 −2, 486. 1 −19, 062. 1. 出所: 『国民経済計算年報』 (内閣府経済社会総合研究所)より作成。. (2) 国民経済計算における6 8SNA では,資本移転について,純支払(または,純受取)と して公表されており,支払と受取のデータをそれぞれ入手することができない。そのた め,総固定資本形成,土地の購入及び資本移転の純支払の合計から固定資本減耗を差し 引いた金額を純資本支出とし,その支出と経常支払との合計額を政府支出としている。 一方,9 3SNA では,資本移転の支払と受取の各データが求められるが,6 8SNA のデー タに合わせて純資本支出を使用し,その支出を総固定資本形成,土地の購入,在庫品増 加及び資本移転の純支払の合計から固定資本減耗を差し引いた金額とした。.
(5) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 205. 一般政府における財政赤字の持続可能性について 表2. −5−. 一般政府の収入・支出項目(9 3SNA) (1 0億円). 取引の種類. 2 0 0 0年度. 200 5年度. 200 7年度. 生産・輸入品に課される税 所得・富等に課される経常税 財産所得 (受取) 社会負担 その他の経常移転 (受取) 経常受取 (a). 4 2, 6 20. 0 4 6, 2 62. 1 9, 9 61. 7 5 0, 5 57. 9 1, 3 18. 7 1 5 0, 7 20. 4. 4 3, 11 7. 9 4 3, 78 4. 6 9, 05 9. 3 5 3, 40 5. 2 1, 26 6. 3 15 0, 63 3. 3. 43, 35 2. 9 49, 67 4. 4 10, 24 2. 6 57, 08 9. 2 1, 61 7. 4 16 1, 97 6. 5. 現実最終消費 (集合消費支出) 現物社会移転 (個別消費支出) 現物社会移転以外の社会給付 財産所得 (支払) 補助金 その他の経常移転 (支払) 経常支払 (b). 3 7, 9 69. 3 4 7, 7 69. 7 5 1, 1 22. 2 1 7, 0 38. 9 4, 2 84. 8 5, 2 33. 7 1 6 3, 4 18. 6. 39, 73 6. 3 5 0, 84 2. 6 5 6, 98 4. 7 1 2, 34 5. 6 3, 29 7. 4 6, 62 9. 1 16 9, 83 5. 7. 4 0, 80 4. 9 5 2, 32 1. 2 6 0, 37 5. 1 1 3, 16 1. 3 2, 97 7. 8 7, 69 5. 9 17 7, 33 6. 2. 2 5, 9 61. 5 1 3, 3 06. 6 4, 0 76. 5 62. 2 4, 9 87. 2. 17, 94 2. 5 1 5, 56 6. 0 1 1, 36 1. 0 69. 0 −2, 15 2. 6. 1 5, 66 1. 1 1 6, 23 7. 0 1, 82 5. 3 66. 1 −1, 11 2. 5. −3 4, 4 79. 0. −30, 85 6. 3. −15, 562. 7. 総固定資本形成 (c) 固定資本減耗 (d) 土地の購入 (純) (e) 在庫品増加 (f) 資本移転 (純支払) (g) 純貸出 (+) /純借入 (−) (a−b−c+d−e−f−g). 出所: 『国民経済計算年報』 (内閣府経済社会総合研究所)より作成。. 一般政府の財政収支は貯蓄投資差額(または,純貸出/純借入)として示され ており,財政赤字は貯蓄投資差額(または,純貸出/純借入)の符号を正負逆 !. 転した値で表される。すなわち,上記の政府支出と政府収入との差額はこの財 政赤字額に一致する。図1には,そのような一般政府の収入,支出及び財政赤 字の1 9 5 5年度から2 0 0 7年度までの推移が描かれている。財政赤字は1 9 7 0年 代の第1次石油危機以降,増加する傾向にあるものの,1 9 8 0年代半ばには財 政収支は黒字に向かうことになる。しかし,19 9 0年代に入りバブル崩壊後, 財政収支は再び大幅な赤字に転じていることがわかる。本稿の以下の分析で は,一般政府に関する時系列データを使用して,このような財政赤字の持続可 (3)「貯蓄投資差額」という用語は, 『国民経済計算年報』では平成18年版より,「純貸出 /純借入」に名称が変更されている。.
(6) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ −6−. 香川大学経済論叢 図1. 兆円 250. 206. 一般政府における政府収入,政府支出及び財政赤字. 200 150 100 50 0 −50. 1955. 1960. 1965. 1970. 1975. 1980. 政府支出. 1985. 1990. 政府収入. 1995. 2000. 2005 年度. 財政赤字. 出所: 『国民経済計算年報』 (内閣府経済社会総合研究所)より作成。 図2. % 12. 一般政府における財政赤字の対 GDP 比率. 10 8 6 4 2 0 −2 −4 −6 1955. 1960. 1965 一般政府. 1970. 1975. 1980. 中央政府. 1985. 1990. 地方政府. 1995. 2000. 社会保障基金. 出所: 『国民経済計算年報』 (内閣府経済社会総合研究所)より作成。. 2005 年度.
(7) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 207. 一般政府における財政赤字の持続可能性について. −7−. 能性を実証的に検討したい。 ところで,一般政府は,中央政府,地方政府及び社会保障基金の3つの部門 から構成されている。『国民経済計算年報』では,1 9 7 0年度より,部門ごとの 財政赤字のデータも公表されている。そこで,図2は,一般政府とそれを構成 する3部門のそれぞれの財政赤字の対 GDP 比率の推移を示している。とりわ け,3つの各部門に関する近年の動向をみると,もともと財政収支が黒字で推 移してきた社会保障基金は,高齢化の進展を反映してその黒字幅が急速に縮小 する傾向にあることがわかる。しかもごく最近では,財政収支は赤字に転じて いる。一方,地方政府では,バブル崩壊以降,増加した財政赤字は,政府支出 の削減により縮小していることもわかる。また,中央政府の財政赤字は,1 9 9 8 !. 年度をピークとして最近は増減を繰り返しながら縮小する傾向にある。 ここで,財政赤字の持続可能性を検討する場合,近年,政府が目標とする基 礎的財政収支(プライマリー・バランス)黒字化の問題との関連でいえば,一 般政府から社会保障基金を除いて中央政府と地方政府を分析対象とすべきであ るかもしれない。しかし,その場合,利用できるデータが19 7 0年度からとな り,次節以降の分析において長期の時系列データを確保できないという問題が 生じる。さらに,現時点では,社会保障基金の経常受取には巨額の国庫負担が 含まれていることからも,社会保障基金を除外することは必ずしも望ましいと ". はいえないであろう。今後の更なる高齢化の進展を考慮すると,社会保障基金 も含めた一般政府における財政赤字の持続可能性を分析することは意義のある ことと考えられる。. (4) 1 9 9 8年度の財政赤字の拡大はとりわけ資本移転支払の増加が主な要因であるが,これ は国鉄清算事業団及び国有林野事業特別会計から一般会計(一般政府)への債務継承(約 2 7兆円)によるものである。ここで,図1では,99年度の財政赤字は9 8年度に比べて 好転しているようにみえるが,上記の引き継ぎ分を除いた場合には,一般政府の財政収 支は9 9年度も悪化している。 (5)『国民経済計算年報』では,一般政府内の経常移転の支払と受取のデータが1 996年度 分より公表されている。それによれば,2 0 0 7年度における社会保障基金の収入のおよそ 2 0%は中央政府からの経常移転の受取(いわゆる国庫負担)となっている。ここで,社 会保障基金の主な収入項目である社会負担と国庫負担の比はおよそ3対1である。.
(8) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ −8−. 香川大学経済論叢. 208. !.実証分析の方法 1.財政赤字の持続可能性 政府の財政赤字の持続可能性に関する実証分析の多くは,異時点間における 政府の予算制約が満たされるかどうかを検証している。その理論的枠組みは, 次のように提示されている。いま,+時点における政府の予算制約が,次式で 与えられるとする。 ""' !+!"#$+"!+! "+"% +&. ". ここで,"+は政府の財・サービス購入と移転支払い(または,債務に対する 利払いを除く政府支出) ,$+は政府の租税収入,!+は政府債務の残高,そし +は実質利子率である。この"式を前向きに解くと,政府の異時点間の予 て'. 算制約式, $. # %) $+"*!"+"*& !+#! ) "$ + "*% + "*! + "*" *#". *' $. #. * !" ""' + "*#" (#"$ + "(" + "(& である。#式にお 及び $+"(#% が得られる。ここで,). いて,財政赤字の持続可能性の条件は,無限先の将来における政府債務残高の # %*' $ ) + "*! + "*#!が成立す 割引現在価値がゼロに収束すること,すなわち,$ ることである。このとき,#式は,政府の債務残高が将来にわたる基礎的財政 余剰(primary surplus)の割引現在価値の合計に等しいことを意味する。 そこで,Hamilton and Flavin(1 9 8 6)や Trehan and Walsh(1 9 9 1)は,財政 赤字の定常性が異時点間における政府の予算制約と整合的であることを示して +が定常であ いる。これに対して,Hakkio and Rush(1 9 9 1)は,実質利子率 '. ることを仮定して,持続可能性の条件を検定するために,次式のような政府収 入と政府支出の長期の関係式を導いている。 $+#%"& ""+"# +!. $. #"+"' +! + !"&は債務に対する利払いを含めた政府支出であり, ここで,""+% +は誤差項である。これより,$ +と ""+がともに非定常で #" %&過程に また #. 従うとすれば,$式に基づいて,財政赤字の持続可能性の検定は,政府収入.
(9) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 209. 一般政府における財政赤字の持続可能性について. −9−. ',と政府支出 %%,が長期的な均衡関係にあるかどうかを検定することであ る。そのため,もしこれら2つの変数間で共和分関係が存在しないならば,財 政赤字は持続可能とはいえない。 #$過程に従う さらに,Quintos(1 9 9 5)や Martin(2 0 0 0)に従って,もし &" 2変数,',と %%,が共和分関係にあり,かつ )""であるときには,財政赤 字について強い意味での持続可能性(strong sustainability)が成立するといえ る。また,もし ',と %%,が共和分関係にあり,かつ !")""であれば,財 政赤字は弱い意味での持続可能性 (weak sustainability)のみを有するとされ ている。 2.単位根検定 財政赤字の持続可能性を実証的に検討するために,まず,Hamilton and Flavin (1 9 8 6) ,Trehan and Walsh(1 9 9 1)や Payne and Mohammadi(2 0 0 6)と同様に, "%%,!',$について単位根検定を行うことにする。さらに, 財政赤字 "$,# Hakkio and Rush(1 9 9 1)をはじめ,Haug(1 9 9 5) ,Payne(1 9 9 7) ,Wu(1 9 9 8) , Bravo and Silvestre(2 0 0 2) ,Kalyoncu(2 0 0 5) ,Baharumshah and Lau(2 0 0 7)や Payne, Mohammadi and Cak(2 0 0 8)と同様に,政府収入と政府支出の共和分検 定に基づき持続可能性を検討するために,政府収入 ',と政府支出 %%,の各変 数についても単位根検定を行う。そのため,単位根検定では,Dickey and Fuller (1 9 7 9, 1 9 8 1)による ADF(Augmented Dickey-Fuller)検定と Phillips and Perron (1 9 8 8)による Phillips-Perron 検定を適用する。 しかしこのとき,政府収入 ',,政府支出 %%,及び財政赤字 "$,の各系列で は,分析の対象期間において構造変化が生じているかもしれない。そこで次に, そのような構造変化を考慮に入れ,本稿では,Zivot and Andrews(1 9 9 2)の単 位根検定(Zivot-Andrews 検定)を行うことにする。この検定は,対象となる 系列における構造変化の存在を内生的に扱っている。構造変化の時点 (" と拡 張項の次数 +が与えられたとき,Zivot-Andrews 検定は,次の3つの回帰式に #"!!"!#$を検定する。 おいて,#*""*.
(10) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ −10−. 香川大学経済論叢. 210. モデル A: -. ! ! ! / ( "&!. "%!/ .#) "* $(.&' ." . !""! ) . !,"* , %/ ,#". !. モデル B: -. " " " / ( "&". "%"/ .#) "' $' .&' ." . !""! ) . !,"* , %/ ,#". ". モデル C: -. # # # / ( "'#$'.&' ( "&#. "%#/ .#) "* $(.&' .! . !""! ) . !,"* , %/ ,#". #. .は誤差項であ ここで,% は1階の階差演算子であり,.はタイムトレンド,*. る。' をサンプルサイズ,'" を構造変化時点(ブレーク点)の候補として, ' で あ る。ダ ミ ー 変 数 $(.&' (#'"# ( に つ い て は,も し .$'(で あ れ ば ( #!,.$'(であれば $(.&' ( #"となる。そして,変数 $'.&' ( につ $(.&' ( #!,.$'(であれば $'.&' ( #. !'(である。 いては,.$'(であれば $'.&' 時点 '" で,$(.は定数項の構造変化を,$'.は傾きの構造変化を表してい ' から ,#& # ' ' までを範囲とする (#'"# '!" # ' る。3つの各モデルは, ,## について通常最小自乗法(OLS)により推定される。 また,!,",#式では,拡張項の次数 -と真のブレーク点は未知である ため,この両者を推定する必要がある。まず,拡張項の次数 -については, 上記の ADF 検定の場合と同様に,Ng and Perron(1 9 9 5)に従って,最大次数 -%$& から始めて順番に次数を1だけ減らして,回帰係数 )+& +#!"""#'が有 意になるところで次数 -を選択する方法を採用する。次に,ブレーク点の候 &#!"""#'の .統計量を最小化するように 補 '" は,回帰係数の制約 %+#"+ 選択される。これより,もしこの .統計量が Zivot and Andrews(1 9 9 2, pp.2 5 6− 2 5 7)の臨界値よりも小さければ,非定常の帰無仮説は棄却されることになる。 3.共和分検定と共和分ベクトルの推定 政府収入 &.と政府支出 %%.がともに1次の和分過程に従うと判断されれ ば,次に,これら2変数が長期的な均衡関係にあるかどうかを検定する。その.
(11) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 211. 一般政府における財政赤字の持続可能性について. −11−. ため,共和分検定として,Engle and Granger(1 9 8 7)の検定方法(Engle-Granger 検定)と Johansen(1 9 8 8, 1 9 9 1)の検定方法(Johansen 検定)を適用する。 しかし,これらの検定では,共和分ベクトルは分析の対象期間において不変 であることを仮定している。そこで次に,共和分ベクトルにおける構造変化を 明示的に考慮した共和分検定として,Gregory and Hansen(1 9 9 6)による検定 方法(Gregory-Hansen 検定)も適用する。Gregory-Hansen 検定では,次の3つ のモデルを考える。 モデル1:レベル・シフト(C) # %! " *" ' "" &" & " "!& #( # &"& &!$ & '!$ '. !. モデル2:トレンド付きのレベル・シフト(C/T) %! ' " *" & "" !$#' &" & " "!& #( # &"& &!$ & '!%. ". モデル3:レジーム・シフト(C/S) # # %! ' " *" "" &" & " "!& #( # # &"& &!$ &( & '!$ & '!$ "' #'. #. &と !!&である。また,&は " # &と ' &は,本稿の分析ではそれぞれ " ここで, ' &は誤差項である。ダミー変数 ( ! "" $& 'を タイムトレンド,$ & 'については,'. %' )であれば (&'"!, 構造変化時点を表す未知のパラメータとして,もし &#( &#( %' % は整数部分を示している。!, )であれば (&'""となる。ただし,() ",#式の各モデルについて,レベル・シフトは構造変化時点での定数項の変 化を意味しており,レジーム・シフトは定数項と傾きが構造変化時点で変化す ることを意味している。 この検定では,'のそれぞれの値について,上記のモデルを OLS で推定し, 得られる残差ごとに単位根検定を実行する。そのため,単位根検定として ADF 検定を適用し,実際の検定においては Gregory. and. Hansen(1 9 9 6)に従い,. ! % $ ! " $ % $ ! " $ %) %) "( ! ! "! ! ! '$& 'の範囲で各ブレーク点について検 ( 'として,& 定統計量を計算する。なお,このとき,ADF 検定における拡張項の次数は, 既述のように,Ng and Perron(1 9 9 5)に従って拡張項の回帰係数の推定値に関.
(12) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ −12−. 香川大学経済論叢. 212. する &値に基づいて選択される。そこで,このような単位根検定の結果から, 構造変化時点の候補は,単位根の検定統計量を最小化するように選択される。 これにより,構造変化時点の候補が決定されると,検定統計量が Gregory and Hansen(1 9 9 6, p.1 0 9)の臨界値よりも小さければ,共和分関係は存在しない という帰無仮説が棄却されることになる。 最後に,政府収入と政府支出の2変数が共和分関係にあると判断されると, #式において %!!であれば,財政赤字は強い意味で持続可能であるといえ る。そのため,政府収入 $&と政府支出 ##&の長期の関係式は,とりわけ構造 変化の存在も考慮して,Stock and Watson(1 9 9 3)による動学的 OLS(DOLS) を適用して推定される。. ".データと分析結果 1.データ 本稿の実証分析では,わが国の一般政府を分析対象として財政赤字の持続可 能性を検定する。そのため,一般政府における政府収入 $&,政府支出 ##&及 (内閣府経済 び財政赤字 !"&の各データ(名目値)は,『国民経済計算年報』 社会総合研究所)より求められる。また,上記のすべてのデータは実質値で表 示されるため,各変数の実質化には GDP デフレーターを使用する。この GDP デフレーターも『国民経済計算年報』 より得られる。本稿で使用するデータは, すべてのデータが利用可能である1 9 5 5年度から2 0 0 7年度までの年度データで ある。 すでに第!節で述べたように,9 3SNA において,最近時点までのデータは 1 9 8 0年度からしか入手することができない。一方,6 8SNA では1 9 5 5年度か らのデータを得ることができるが,その終期は1 9 9 8年度となっている。そこ で,データの一貫性に問題が生じるものの,長期にわたる時系列データを確保 するために,1 9 5 5年度から1 9 9 8年度までの期間については6 8SNA のデータ を,そして1 9 9 9年度以降のデータについては9 3SNA のデータをそのまま使 用する。ただし,GDP デフレーターについては,6 8SNA より1 9 9 0暦年基準.
(13) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 213. 一般政府における財政赤字の持続可能性について. −13−. のデータに基づき,6 8SNA における1 9 9 8年度のデータを9 3SNA の当該デー タの伸び率により延長して推計することとした。ここで,まず,財政赤字 !"'は,6 8SNA(または,93SNA)における貯蓄投資差額(または,純貸出 /純借入)の符号を正負逆転した値で表示される。次に,政府収入 %'と政府 支出 ##'について,表1と表2に基づき,%'には一般政府の経常受取額を, そして ##'には一般政府の経常支払額と純資本支出の合計額を用いることに する。なお,これらの支出 ##'と収入 %'との差額は,上記の財政赤字額 !"' に等しくなる。 2.単位根検定の結果 政府収入 %',政府支出 ##'及び財政赤字 !"'の各変数に関する単位根検定 の結果は,表3に示されている。まず財政赤字 !"'に関する結果をみると, レベル変数において,Phillips-Perron 検定では単位根をもつという帰無仮説を 棄却できないが,ADF 検定では1 0%の有意水準で帰無仮説を棄却できること がわかる。そのため,さらに構造変化を考慮して Zivot-Andrews 検定を行う と,モデル A において1%の有意水準で単位根の帰無仮説が棄却されてい 9 9 7年度である。したがって,この結果と ADF 検 る。構造変化時点 &! は,1 定の結果から,財政赤字の変数 !"'は定常である可能性が大きいと判断され る。すなわち,単位根検定の結果は,一般政府における財政赤字が持続可能で あることを示唆しているといえる。 そこで,上記の結果を政府収入 %'と政府支出 ##'の共和分検定に基づき検 討するために,次に %'と ##'の各変数について単位根検定を行う。表3よ り,収入 %'について,レベル変数では,ADF 検定及び Phillips-Perron 検定に おいて単位根の帰無仮説を棄却できず,また,Zivot-Andrews 検定により構 造変化を考慮しても帰無仮説を棄却できない。一方,階差変数については, ADF 検定及び Phillips-Perron 検定の結果から,単位根の帰無仮説はいずれも !"変数であると判断でき 5%の有意水準で棄却される。したがって,%'は $! る。さらに,支出 ##'についても,レベル変数では,構造変化を考慮しても.
(14) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ −14−. 香川大学経済論叢 表3. 214. 単位根検定,1 9 5 5−2 0 0 7年度. A.ADF 検定,Phillips-Perron 検定 ADF 検定 変. 数. レベル変数 $' ##' !"' 階差変数 "$' "##' "!"'. Phillips-Perron 検定. トレンド項なし. トレンド項あり. トレンド項なし. トレンド項あり. −0. 0 5 7 2 7 (1) −0. 5 0 0 5 5 (3) −2. 8 6 7 8 4 (5) *. −2. 2 8 7 8 2 (1) −2. 5 0 8 4 3 (4) −3. 4 5 3 2 0 (5) *. 0. 18546 0. 2260 6 −1. 77601. −1. 76315 −2. 90537 −2. 42436. 0 8 5 8 3 (0) *** −4. 1 0 2 4 6 (0) *** −4. −2. 4 2 9 7 9 (5) −2. 5 3 9 1 8 (5) 8 3 7 0 7 (0) *** −8. 9 3 3 1 6 (0) *** −8.. −4. 15349*** −12. 08456*** −8. 92204***. −4. 13871** −11. 96961*** −8. 82645***. B.Zivot-Andrews 検定 変. 数. $'. ##'. !"'. モデル. 構造変化時点 %!. '! # !! $. ラグ数 &. A B C A B C A B C. 1 9 8 4 ("=0. 5 7) 1 9 8 9 ("=0. 6 6) 1 9 8 6 ("=0. 6 0) 1 9 8 6 ("=0. 6 0) 1 9 6 7 ("=0. 2 5) 1 9 6 6 ("=0. 2 3) 1 9 9 7 ("=0. 8 1) 1 9 8 7 ("=0. 6 2) 1 9 9 7 ("=0. 8 1). −3. 36585 −2. 90640 −3. 4 2390 −3. 44306 −3. 32241 −3. 22478 −5. 36492*** −3. 57017 −4. 29550. 5 1 1 5 5 5 5 5 5. 注:ADF 検定と Phillips-Perron 検定において,トレンド項なしは定数項のみを含むモデル, トレンド項ありは定数項とトレンド項を含むモデルによる検定である。ADF 検定におけ る括弧内の値は,回帰式における拡張項の次数 &を示している。この次数 &は,最大次 9 9 5)に従い,標準正規分布(漸近正規分布)の両 数 &$#% !"として,Ng and Perron(1 側検定の1 0%有意水準を用いて拡張項の回帰係数の推定値に関する '統計量に基づき選 択されている。また,Phillips-Perron 検定におけるラグ数は1としている。ADF 検定と Phillips-Perron 検定に関する分布の臨界値は,MacKinnon(1 99 6)より得られる。さらに, Zivot-Andrews 検定におけるモデル A,B 及び C は,それぞれ!,"及び#式の回帰式 によるモデルである。回帰式における拡張項の次数 &は,Ng and Perron(1 99 5)に従い, # !! $は,!,"及び#式の回帰式よる各モデル ADF 検定と同様にして選択される。'! において !!!を検定するための '統計量を表示している。この分布の臨界値は,Zivot 5 7)より求められる。ラグ数 &は,選択された拡張項の次 and Andrews(19 9 2, pp.2 5 6−2 数を示している。 ***は1%水準で有意,**は5%水準で有意,*は1 0%水準で有意であることを示す。.
(15) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 215. 一般政府における財政赤字の持続可能性について. −15−. 単位根の帰無仮説は棄却されない。しかしここで,階差変数では,PhillipsPerron 検定により単位根の帰無仮説が1%の有意水準で棄却されるものの, ADF 検定においては棄却されないという結果が得られている。そのため,以 %& 下では Phillips-Perron 検定の結果に基づき,支出 !!)も収入 #)と同様に "! 変数であるとして,共和分の分析を進めることにする。 3.共和分検定の結果と共和分ベクトルの推定 政府収入 #)と政府支出 !!)の2変数間で の 共 和 分 検 定 に つ い て,ま ず Engle-Granger の共和分検定の結果が表4に示されている。表4の ADF 検定の 結果から,2変数間で共和分関係が存在しないという帰無仮説は 5%の有意 水準で棄却されることがわかる。そのため,#)と !!)の2変数は共和分関係 にあると判断できる。この結果を確認するために,併せて Johansen 検定も行 うことにする。Johansen 検定の結果は,表5に示されている。表5には,検定 "" "#である場合について,トレース検定と における VAR のラグ数 (が (#! 最大固有値検定の結果がそれぞれ報告されている。検定では,データに確定的 トレンドがなく,共和分の関係式に定数項が含まれる場合を想定している。検. 表4 変. Engle-Granger の共和分検定,1 9 55−2 007年度. 数. ) 被説明変数 ,. ) 説明変数 +. 推定値 $. 推定値 %. ADF 統計量. ラグ数 '. #) !!). !!) #). 1. 5 7 5 3 5 0. 0 0 3 1 0. 0. 9 4 7 18 1. 0 3 2 80. −3. 74423** −3. 88618**. 3 3. ) を被説明変数, + ) を説明変数として,共和分回帰は次式で示される。 注: , , + "% )#$ )")! ) は残差である。Engel-Granger 検定は,次の ADF ここで,$と %は OLS 推定量であり,回帰, '. $)#$ )" ) !!"! # &$) !&"* &#!. における $について ADF 検定を行う。ラグの次数 'は,最大次数 '&%' #$として,Ng and Perron(19 9 5)に従い,標準正規分布(漸近正規分布)の両側検定の10%有意水準 を用いて拡張項の回帰係数の推定値に関する )統計量に基づき選択された次数である。 Engel-Granger 検定に関する分布の臨界値は,Engle and Yoo(1 987)より求められる。 **は5%水準で有意であることを示す。.
(16) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ −16−. 香川大学経済論叢. 216. 表5 Johansen の共和分検定,1 9 5 5−2 007年度 検. 定. トレース検定. ラグ数 #. 帰無仮説. 対立仮説. 検定統計量. 95%臨界値. 1. $!! $"" $!! $"" $!! $"". $#" $!# $#" $!# $#" $!#. 6 2. 59511*** 6. 46348 3 9. 76236*** 3. 50100 2 1. 11227** 4. 97275. 19. 96 9. 24 19. 96 9. 24 19. 9 6 9. 24. $!! $!" $!! $!" $!! $!". $!" $!# $!" $!# $!" $!#. 5 6. 13163*** 6. 46348 3 6. 26136*** 3. 50010 1 6. 13913** 4. 27975. 15. 67 9. 24 15. 67 9. 24 15. 67 9. 24. 2 3 最大固有値検定. 1 2 3. !# !$の場合の検定結果がそれぞれ示さ 注:検定における VAR のラグ数 #について, #!" れている。検定では,データに確定的トレンドはなく,共和分の関係式に定数項が含ま れるケースを想定している。帰無仮説と対立仮説における $は,共和分ベクトルの数を 示している。Johansen 検定に関する95%の臨界値は,Osterwald-Lenum(1 99 2)より求 められる。 ***は1%水準で有意,**は5%水準で有意であることを示す。. 定結果より,トレース検定と最大固有値検定のいずれの場合においても,"% $!! %という帰無仮説は5%の と !!%の2変数間で共和分関係が存在しない $ 有意水準で棄却されている。したがって,"%と !!%の2変数間ではやはり共 和分関係が存在することが確かめられる。 ここで,さらに本稿では,共和分ベクトルに構造変化がある場合も考慮して 共和分検定を実行する。表6には,未知の時点で発生する構造変化の存在を容 認して,Gregory-Hansen の共和分検定の結果が示されている。表6より,レベ ル・シフトのモデルでのみ2変数間で共和分関係はないという帰無仮説が 1 0%の有意水準で棄却されることがわかる。そのため,さらに構造変化を伴う 共和分関係の存在が支持されるという結果が得られている。構造変化の時点 は,1 9 9 1年度である。 そこで最後に,上記の1 9 9 1年度の時点における構造変化の存在を考慮した 上で,政府収入 "%と政府支出 !!%の共和分の関係式を,Stock. and. Watson.
(17) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 217. 一般政府における財政赤字の持続可能性について 表6. −17−. Gregory-Hansen の共和分検定,1 95 5−2 007年度. モデル レベル・シフト (C) トレンド付きのレベル・シフト (C/T) レジーム・シフト (C/S). 構造変化時点. ADF*統計量. ラグ数 (. 1 9 9 1 1 9 9 1 1 9 7 8. −4. 53038* −4. 26644 −3. 79064. 5 5 5. 注:Gregory-Hansen 検定において,ADF*統計量は, .+ ADF &' # ADF* # , #$& "! #'!"! (''. として表される。ADF 検定における拡張項の次数 (は,Ng and Perron(1 995)に従い, 標準正規分布(漸近正規分布)の両側検定の1 0%有意水準を用いて,最大次数 (-*/ #' として拡張項の回帰係数の推定値に関する *統計量に基づき選択される。ラグ数 (は, 選択された拡張項の次数を示している。ADF*統計量の分布の臨界値は,Gregory and Hansen(19 9 6, p.1 0 9)より求められる。 *は1 0%水準で有意であることを示す。. 表7 Stock-Watson の DOLS 推定 $*#%"%#!*"& ""*"' * #%""* $%""* %%""* &%""* !#"' !$"' "#"' "$"" %. %#. −3. 3 2 3 9 3 2 (2. 7 9 1 3 78). −1 8. 2 9 3 1 4 (8. 1 8 3 8 5 5) **. & 0. 9 5 4 7 3 3 (0. 0 5 4 7 6 0) ***. #")&## 0. 683350 (0. 408 4). 9 9 1年度までは !*#",1 9 9 2年度以降は !*##である。各係数の 注:ダミー変数 !*は,1 推定値における括弧内の数値は,推定値の標準誤差を示している。この標準誤差の値は, Newey and West(1 9 8 7)の共分散行列を用いて求められている。また,#")&##の欄 には,帰無仮説 &##を検定するための Wald 統計量の値が示されている。この統計量 は,自由度1のカイ自乗分布に従う。Wald 統計量の下段の括弧内の数値は )値である。 ***は1%水準で有意,**は5%水準で有意であることを示す。. (1 9 9 3)の動学的 OLS(DOLS)を適用して推定する。その推定結果が表7に !. 示されている。ここで,推定結果より,次のような点が明らかにされる。まず 9 9 1 第1に,ダミー変数 !*の係数は5%の有意水準で統計的に有意であり,1 年度の時点における構造変化の存在を支持しているといえよう。さらに第2 に,2変数間での共和分関係式における傾きの係数 &も,1%の有意水準で 統計的に有意であることもわかる。そして第3に,その傾きの係数 &の推定 (6) DOLS は,定数項,ダミー変数 !*,""*,%""*!#,%""*!$,%""*"#及 び %""*"$に 関する $*の動学的(dynamic)OLS 回帰である。ここで,変数 !*は,199 1年度までは !*#",1 9 9 2年度以降については !*##である。.
(18) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ −18−. 香川大学経済論叢. 218. 値が1であるという帰無仮説は棄却されないという結果が得られている。した がって,一般政府における収入 "$と支出 !!$は共和分 関 係 に あ り,か つ #!!であると判断されることから,一般政府の財政赤字は強い意味で持続可 能であると結論づけられる。. !.む す. び. 本稿では,わが国の一般政府を分析対象とし,1 9 5 5年度から2 0 0 7年度まで の年度データを使用して財政赤字の持続可能性を実証的に検討した。とりわけ 実証分析においては,未知の時点で発生する構造変化をも考慮して単位根検定 と共和分検定を行った。まず,単位根検定の結果から,財政赤字の定常性が確 認された。この結果は,財政赤字が持続可能であることを示唆しているといえ る。次に,政府収入と政府支出に関する共和分検定からは,収入と支出の2変 数は共和分関係にあると判断された。そして,2変数間の共和分関係式につい ての推定結果からは,傾きの値が1であるとする帰無仮説は棄却されなかっ た。このことは,無限先の将来における政府債務残高の割引現在価値がゼロに 収束する傾向にあることを意味する。 したがって,わが国の一般政府における財政赤字は強い意味で持続可能であ ると結論づけることができる。ただし,本稿の分析結果は,一般政府全体とし て財政赤字に関する今後の財政運営に問題がないという意味ではない。これま で一般政府では,中央政府(国) と地方政府の財政収支は赤字で推移する一方, 社会保障基金の財政収支は黒字で推移してきたという構図がある。ところが, 近年は高齢化の進展を反映して,社会保障基金の収支は赤字の状態になりつつ ある。今後の更なる高齢化の進展を考慮すると,社会保障関係を中心に支出の 増大が見込まれており,それに対する国庫負担も増えると予想されることか ら,財政運営に楽観的になることは危険である。 そこで最後に,本稿の分析結果から導かれる今後の財政運営のあり方につい て,次のように述べることができよう。平井・野村(2 0 0 4)や平井(2 0 0 9)で 示されたように,現時点での財政赤字の持続可能性が疑問視される国の一般会.
(19) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 219. 一般政府における財政赤字の持続可能性について. −19−. 計などについては,これからも歳出削減や増税の実施の検討により,財政収支 の改善を図る必要がある。さらに,それと同時に,一般政府においては財政赤 字が持続可能な状態を維持しつつ,国の特別会計の整理・統合,中央政府と地 方政府をめぐる財政制度や社会保障制度における給付と負担のあり方などを検 討することを通じて,一般政府全体でも国や地方政府の財政収支改善の方向性 を探ることが求められる。. 参 考 文 献 Baharumshah, A. Z., and E. Lau,(2 0 0 7) , Regime Changes and the Sustainability of Fiscal Imbalance in East Asian Countries , Economic Modelling, Vol.24, pp.878−894. Bohn, H.,(19 9 8), The Behavior of U. S. Public Debt and Deficits , Quarterly Journal of 6 3. Economics, Vol.1 1 3, pp.9 4 9−9 Bravo, A. B. S., and A. L. Silvestre,(2 0 0 2) , Intertemporal Sustainability of Fiscal Policies : Some Tests for European Countries , European Journal of Political Economy, Vol.18, pp. 2 8. 5 1 7−5 Dickey, D. A., and W. A. Fuller,(1 9 7 9) , Distribution of the Estimators for Autoregressive Time Series with a Unit Root , Journal of the American Statistical Association, Vol.74, pp.427− 4 3 1. Dickey, D. A., and W. A. Fuller,(1 9 8 1) , Likelihood Ratio Statistics for Autoregressive Time Series with a Unit Root , Econometrica, Vol.4 9, pp.1 0 5 7−1072. 土居丈朗,(20 0 0), 『地方財政の政治経済学』 ,東洋経済新報社。 Engle, R. F., and C. W. J. Granger,(1 9 8 7) , Co-Integration and Error Correction : Representation, Estimation, and Testing , Econometrica, Vol.5 5, pp.2 5 1−276. Engle, R. F., and B. S. Yoo,(1 9 8 7) , Forecasting and Testing in Co-Integrated Systems , Journal 5 9. of Econometrics, Vol.3 5, pp.1 4 3−1 Goyal, R., J.K.Khundrakpam, and P. Ray,(2 0 0 4) , Is India’s Public Finance Unsustainable ? Or, Are the Claims Exaggerated ? , Journal of Policy Modeling, Vol.26, pp.401−420. Gregory, A. W., and B. E. Hansen,(1 9 9 6) , Residual-Based Tests for Cointegration in Models with Regime Shifts , Journal of Econometrics, Vol.7 0, pp.99−126. Hakkio, C. S., and M. Rush,(1 9 9 1) , Is the Budget Deficit ‘Too Large?’ , Economic Inquiry, 4 5. Vol.2 9, pp.4 2 9−4 Hamilton, J. D., and M. A. Flavin,(1 9 8 6) , On the Limitations of Government Borrowing : A Framework for Empirical Testing , American Economic Review, Vol.76, pp.808−819..
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