秋 永 晴子 :MIDI機能付き自動演奏ピアノと映像およびコンピューターによる学習支援シ ステム の活用
MIDI機能付き自動演奏ピアノと映像およびコンピュー ターによる学習支援システムの活用
一音階演 奏の ベ ロ シ テ ィ と拍子拍の タイ ミン グー
秋 永 晴 子
・ は じめに
「耳に 心地よいピア ノ演奏」をす すめ るの に、次の よ うな点が考 え ら れ る。 強 音 も弱 音 も 美し い (音がよい )。 フ レージ ング とア ーテ
ィキュ レ ーシ
ョン に か なっ た表情の あ る打 鍵 (音 楽的である)。 洗 練 された リズム感と テンポ 感 (の り が よい)。
した がっ て耳ざ わ りな演奏と は、き た ない音で、不注意なフ レージング とアーテ ィキ
ュ レー
シ ョ ン の ため ば らつ きのある打鍵をし、波長にあ わない リズ ムと テ ンポに なっ た と き で あ る。
そ し て、これら は お お むね、ピア ノ演 奏 法に おけ る学 習 者の克 服 すべ き課 題となっ て い る。 現 代の ピア ノの打 弦機構は、1700年代初め に発明され た当時の打 弦機構その ま までなく、長 年にわたっ て改 良 を重 ねた結 果の産 物である。それは、各 時 代の社会的背景や機械技術の発達
と関わっ た もの で、そ れ ぞ れ の時 代に お け る 最良の打弦機構と し て 用い ら れ て き た の で あ る。
それに ともない ピア ノ演 奏 法 も、これ らの進 歩にそっ た奏 法 を求めて時 代とと もに歩ん で きた もの といえ る。
コ ンピュ ーターや MIDI (Musical lnstUrument Digital lnterface) 規 格 とい うデジタ ル技 術の 進 歩 してい る今 日で は、楽器とコ ン ピュ ーターを連携させ た使い方が普及しつ つ あ る。 例えば、
アコ ース テ ィ
ッ ク ・ピ アノを 母 体 とする MIDI 機能付き自動演奏ピアノ (以下、 自動演奏ピァ ノ と略す)か ら、録音し た MIDI データ をDTM (Desk Top Music)シ ステム に送 り、その 内 容をすぐに、コ ン ピュ ーターのデス ク ト
ップ上 や 自動演奏ピアノ で再生する とい うこと が可 能
で あ る。 これは、今 送っ た演 奏 内 容 を客 観 的 な 「耳 」と 「目」で確 認で きる学 習 法 と なる。こ れ らの機器 とソ フ トウェ アを活 用するこ と で、ピ アノ学習の分か りやすさ が期待で き る。
本稿は、先に挙げた 「心地よい演 奏 」 を 目指 すべ く、数 年 前か ら本 学で も導入し て い る自動 演奏ピ アノの グ ラン ド型と、 今回 新た に加 わっ た映像と DTM シス テムな どを 用い て、ピア ノ 演奏技術の うえ で軽 視で き ない音 階 演 奏 を、学 習 者の MIDI データ を基に探
っ て み る。音 を揃 え て弾 くと はど うい う ものなのか、リズム にのると はど うい うこ と なの か等、コ ンピュ ーター
のデス ク トッ フ゜
上に何 がみえて くる かを 調べ て、ま たMIDI データ は グ ラフに し て提示 する。
とりあげるデータ は、1997年 1月か ら 8月ま での分 を抜 粋し たもの で あ る。
自動演奏ピア ノ のベ ロ シ ティ の信頼度につ い て
自動 演 奏ピ アノは、アコ ース テ ィ
ッ ク ・ピア ノ を母 体と し て MIDI に対 応さ せ た楽器で あ る。
換言する と、アナロ グ とデジ タル が共存し てい る楽器である。 そこで、ア ナロ グ の打弦機構か
ら送られた MIDI データ が
、 電 子鍵盤楽器の ように信頼度の高い もの で あるか否か を、 アコ ー
ス テ ィ ッ ク・ピア ノ の タ
ッ チによ く似た 2種 類の電 子鍵盤楽器 を使い、そ れ ぞ れの楽器の MIDI データ の ベ ロ シ テ ィで検証するこ と に した。
ベ ロ シテ ィ (Velocity[速度])とは、ピ ア ノ演奏技術の 音の強弱に相 当する意味であ り、ピ
ア ノ の打鍵の強弱は、打鍵の速度で決 ま る、MIDI で は これをベ ロ シ ティと言い 、音の強 さ か げんは、1か ら127まで の数値であ ら わす。そし て、こ のベ ロ シテ ィの標準偏差 を、2種類の電 子 鍵 盤 楽 器 と比 較 す ることで、自動 演 奏ピ アノ の信 頼 度の検 証 がで き る と考 え た。標 準 偏 差 は、 ば らつ き かげんを示 す 数値である。 同 じ人が同じ テ ン ポ と同じ弾き方で、自動演奏ピア ノ、2
種類の電子鍵盤楽器 を演奏し た場合、 ベ ロ シテ ィ のばらつ きか げん が、 ほ ほ洞 じ だ と仮定する と、自動演奏ピ アノ の打鍵のベ ロ シテ ィ に対 す る信 頼 度 は、自 動 演 奏 ピ アノ の標 準偏差 が 電 子 鍵盤楽器に十 分 近けれ ば、信頼で き る と考え られる (図一1)。
な お、演奏者は、本稿で とりあげる熟達者2名 (A 、 B )と学習者3名 (C 、 D 、 E )に よ
る。 演奏 内容は、ハ 調長音階の 4オ ク ターブの上 行形と 下 行形を、両 手 と片手ずつ 、4分の 2
拍 子の M .M .1=60で弾い たものである。そ れ ぞ れの楽器に よ るベ ロ シテ ィ の MIDI データは、 紙幅の関係で割愛する が、データ の 必要な場合は、 公表が可能で あ る。
図一1 MIDI機 能 付 き自動 演奏ピア ノと電子鍵盤 楽器のベ ロシ ティの標 準 偏 差 グ ラフ 両手 片 手ずつ
演 奏者 PP DGP CVP
A 5.77 5.16 6.36
B 4.61 4.08 5.05
C 6.26 5.77 6.84
D 3β3 2.76 4.48
E 3.75 2.94 4,03
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演 奏 者 PP DGP CVP
A 4.72 3,77 493
B 4.44 2.54 452
C 4,77 3.85 638
D 4」7 2.81 444
E 3,07 2.82 4.20
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PP Cビ7ノプレーヤ1:Ml団鏡能 付き自動 演 奏 ビ アノ
OGP 〔グランタンチ,:電子鍵盤楽器 CVP 〔ク ラ ビ ノーバ} :電子鍵盤 楽器
秋 永 晴 子 ;MIDI機能付き自動演奏ピアノと映像およびコンピュ ーターによる学習支援システムの活用 こ の結 果によ れば、PP (自動 演 奏 ピア ノ)の標準偏差は、 DGP (電 子鍵盤楽器)とCVP (電 子鍵盤楽器)の間をとっ てい る こ と が分か る。 つ まり、DGP と CVP のベ ロ シテ ィが信頼でき
る な らば、 その間にあるPP の ベ ロ シテ ィの値も信頼で き る と考え、 これ よ り以下、自 動演奏
ピ ア ノ の MIDI データ を基に分 析 を行
っ て い く。
・コ ンピュ ーターのデス ク トッ プ上 で見る学 習法
バ ッハ (1685〜1750)の息子で ある C.P. E.バ ッ ハ (1714〜1788)をは じ め、ベ ー トーヴェ
ン (1770〜1827)の弟子で リス ト (1811〜1886)の師で あるツエ ルニ ー (1791〜1857)、シ ョ
パ ン(1810〜1849)の草稿および弟 子 達の証 言、世 界 的な ピアニ ス トであっ たギーゼ キ ング (1895
〜1956)の 師の ラ イマ ー (1858〜1944)、同じ くリ ヒ テ ル (1915− 1997)の師の ネ イ ガウス
(1888〜1964)、アメ リ カ の ジュ リアード音楽院の共同 創 立 者で あ り、またツエ ル ニ ー式の指 を鍵盤に垂直に下 ろ す奏法と異な り、現代の ピア ノ の打弦機構をふ ま え て、指のつ け根の関節 を軸に し た奏法 を唱え たレ ヴ ィーン (1874〜1944)など、 ピア ノ演奏法に関する書籍類は、 数 多 く出 版 さ れて い る。例 え ば 音 階 演 奏につ い て、シ ョパ ンは、初 心 者が練 習 する場 合、手の生 理学的な見 地にもと ついて、調性の練習順番を示し て指導し た (エ ーゲル デン ゲル著 『弟子か ら見たシ ョ パ ン』、 1979、 米谷治郎 ・中島弘二訳、 1983、257頁)とい うこ とな ど、そ れ ぞ れの 書 籍 類に ピア ノ演 奏 法が示されて い る。
デ ィ ッ ヒラー (1912州 )は、著 書 『ピアノ演奏 法の芸 術 的 完 成 』 (1948、渡 辺 護 ・尾 高 節 子 訳、1957)で、ピ アノ の 一つ の音の 強 さ を100段 階に分 けて打 鍵 す るとい う試 み をし てい る。
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