【巻頭言】久留米大学教職課程年報 2017, 創刊号, 1-2.
「教職課程年報」の創刊に寄せて
安永 悟
(教職課程委員長・文学部教授)
日本の教育界は大きな変革期を迎えている。文科省および中教審が推し進めている現在の改革 は、明治維新および第2次世界大戦後に匹敵する大改革といわれることもある。世界のグローバ ル化に伴う極端に不確定で、先の読めないこの時代を力強く生き抜く力を身につけた人材育成が、
達成すべき喫緊の重要課題であると広く認められ、その実現にむけた努力が始まっている。
しかしながら、この観点から、これまでの日本の教育を眺めた場合、大学教育を含めて、必ず しも上手く機能してきたとはいえない。その反省が今回の大改革の根底にある。求める人材は、
変化の激しい社会にあっても、日本の歴史、文化、思想、信条を基盤とし、世界の人々と連携協 力しながら、すべての人が平和で幸せに暮らせる社会づくりに貢献できる人材である。民主共生 社会を担える、それぞれの現場で活躍できる人材ともいえる。この人材育成に関して、教育現場 の第一線で活躍する教師に直接的な責任が求められるが、教師の養成に関わる大学にも大きな責 任が求められている。
翻って久留米大学の教職課程を考えるに、これまた多くの問題を抱えていると言わざるを得な い。教員養成に対する明確なビジョンの欠如、権威主義的な組織運営、形骸化したカリキュラム と旧態依然とした教育方法、教職担当者の同僚性の欠如、地域社会との希薄な関係など、あげれ ば切りがない。これらの問題は、そこに参画している一人ひとりの教職員の問題ではない。まし てや学生の問題でもない。あくまでも組織としての教職課程の問題である。これらの問題を一つ ずつ解決し、乗り越えていくことで、組織としての教職課程を蘇らせ、地域社会に対する久留米 大学教職課程の役割と責任を果たす必要がある。そういう意味で本学の教職課程も大きな変革期 に直面しているといえる。
「現場で活躍できる教師の育成」、2015年度から教職課程が打ち出したスローガンである。教 員採用試験に合格するのが目的ではない。ましてや、単に教職免許を取るのが目的ではない。教 員採用試験に合格し、教職の現場で活躍できる教師の育成を久留米大学教職課程は目指すと高ら かに宣言した。このスローガンに沿った、ビジョンの策定、組織運営、カリキュラムの改変、教 育方法の改善、教職担当者の連携協力、地域との連携など、できるところから取り組んでいるの が現状である。
幸いなことに、これらの取組の成果が少しずつではあるが見え始めている。ここでは二つの例 をあげる。一つは、2016年度の教育実習中に「事件事故」が皆無であったことである。今年度の 教育実習生は75名であった。昨年とほぼ同じ人数を教育実習に出したが、実習校からのクレーム が1件もなく、特別な指導をおこなう必要がなかった。これまでの実習では、実習担当者を悩ま す出来事が少なからず起こり、その対応に追われてきた。特に、昨年度は積年の膿が吹き出した
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かのごとく、教育実習に関しては深刻な問題の連続であった。これらのことを考えると、今年度 の成果は特記に値する。
もう一つが教員採用試験の成果である。通信教育ではあるが小学校教諭の教員資格をとった学 生が、昨年度(2015年度)第1期生として卒業した。そのうち小学校教員採用試験に挑戦した5 名中2名が現役合格を果たした。不合格であった1名も今年度の採用試験に合格した。また第2期 生にあたる今年度の4年生は8名が受験して5名が現役合格した。これまで不十分であった採用試 験対策を反省し、教職課程として支援体制を充実した結果である。教職課程で学ぶ先輩が現役で 小学校教諭になれたという成果が一つのきっかけとなり、真剣に学ぶ学生が増えてきた。それと 共に、学校種を越えて、共に学び合う環境も整ってきた。小学校教諭のみならず、私立高校では あるが常勤講師の内定を受けている学生も今年度は2名いる。また、福岡教育大学の教職大学院 に2名が、九州大学の大学院に1名が合格している。
これらの望ましい変化を確実なものとし、教職課程のさらなる発展を実現するためには、教職 課程に携わる教職員はもちろんのこと、受講生も一緒に、協力協調し、いま成すべきことを見つ け、真剣に取り組むという姿勢が何よりも大切と考える。今回「久留米大学教職課程年報」を創 刊するのも、そのような試みの一つである。教職課程の多様な活動を記録し、省察し、新たな飛 躍の糧とする。この目的を達成するために、自らの実践や研究を投稿できる冊子を発刊すること にした。教職課程の関係者が一人でも多く「年報」という「舞台」に登場していただき、久留米 大学教職課程の充実と発展に向け、内容の充実した年報に育てていただければと思う。
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最後になりましたが、本創刊号の発刊に当たりましては大勢の皆さまにお世話になりました。
古い資料の掘り起こしや資料整理などをお願いした教務課の皆さん、限られた時間のなかで原稿 をお寄せいただいた執筆者の皆さん、そして編集委員会の皆さんに心よりお礼申し上げます。お 陰様で、立派な創刊号ができました。
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