美術科の主張
著者 萩原 彰彦
雑誌名 研究紀要 : 共に創りあげる授業
巻 20
ページ 74‑74
発行年 2020‑03
出版者 静岡大学教育学部附属静岡中学校
URL http://doi.org/10.14945/00027151
静岡大学教育学部附属静岡中学校 研究紀要(第20号)
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美術科の主張
萩原 彰彦
1 教科で育みたい人間像
表現や鑑賞の創造活動の喜びを味わっていくためには,喜びを感受できる豊かな感性が必要だと考えま す。美術科では特に,対象のもつ美しさや生命感,心情,精神的・創造的価値といったものについての感 性を中核としています。道端に咲く花を見て,美しいと感じたり,美しいと感じたことを表現してみたり,
感性は人間の生活に根ざしており,生きることと深くかかわっています。
感性を豊かにしていくためには,心を大きく揺り動かされるような感動を経験することが重要だと考え ます。表現では,主題(表現したいこと)をもち,創造的な技能を働かせることによって,納得のいく表 現ができたときなどに実感できるでしょう。鑑賞では,想像力を働かせて対象を見ることで,見方が深ま ったり,新たな価値が発見できたりしたときに味わうことができます。このような営みは,美術の創造活 動の喜びそのものであり,その感動は時に,自分の生き方に大きな影響を及ぼすこともあるでしょう。
そのような感動体験を重ねた人は,さらなる美への欲求を強めていくのではないでしょうか。この探求 には終わりがなく,人間の成長に伴って変容し続けていくものであると,美術科では捉えています。その ような人であれば,美術の創造活動の中で,対象を深く理解しようとしたり,よりよい表現を求めたりし て,探求心をもち続け,感性豊かに生きていくのではないでしょうか。以上のことをふまえ,美術科で育 みたい人間像を「感性豊かに,創造していく人」としました。
2 教科ならではの文化
美術文化というのは,時代や地域によって多様であり,変容し続けてきたものであり,これからも変容 し続けていくものです。私たちは今に残る様々な作品や造形物から,人々の美意識や創造的な精神を感じ 取ることができます。過去から現在,国や地域,人からの影響を受け,そこに生きる人間が創造的な何か を生み出していくことが美術の表現であり,それらがまた新たな文化を形成していきます。
目に見えるものや,目に見えない想像や感情といったものを可視化・可触化することができ,それらを 表現や鑑賞できることは美術文化の特徴です。美術科ならではの文化を味わうとは,主題をもち,意図に 応じて材料や用具,表現方法を創意工夫して表現することや,作者の心情や思いを感じ,対象に対する自 分なりの理解を深めていくことだと考えます。
表現する材料や鑑賞する対象があれば,自分一人でも楽しむことができるでしょう。しかし,自分以外 の誰かと共に,感じたことを伝え合い,表現方法や対象について考えていくことは,美術や美術文化に対 する見方や感じ方をより深め,豊かな感性を育むことにつながるでしょう。
3 授業づくりで大切にしていること
子ども一人一人が主体的,個性的に自己を発揮し,創造活動の喜びを味わうことができるように,子ど もたち同士が自分の考えを発信したり,受信したりすることができる環境を大切にしていきます。子ども たちが必要感をもって対話ができる題材を設定することで,造形的な見方・考え方を働かせ,美術や美術 文化に対する見方や感じ方を深めることができる授業づくりを考えていきます。
表現では,自分の作品に表現しようとした考えや思いを伝えたり,他の人の作品から感じた印象などを 伝え合ったりすることで,作品への考え方や表現方法の工夫について理解を深めていくことをめざします。
構想段階におけるかかわり合いや制作後の相互鑑賞など,考えたことを自分の表現に生かしていくことが できるようなかかわり合いを大切にします。鑑賞では,一人一人が感じ取った作品のよさや美しさなどを 伝え合うことで,自分一人では気づかなかった作品のよさを発見するなど,多様な見方や感じ方から鑑賞 を深めていけるようなかかわり合いをめざします。