変形 ハ ー フブ リ ッジ形 イ ンバ ー タにお け る
自励発振 回路の解析
清水 恵一*'**,松尾 博文*
Analysisofaself‑Oscillatorinthemodified halfJbridgetypeinverter
by
KeiichiSHIMIZU*'**andHirofumiMATSUO*
lnordertodecreaseInputharmoniccurrentsofswitchingconverters,acombinedcircuitconfigurationthattheswitching convertercircuititselfhasthefunctionoftheinputcurrentactivefilterandoutputvoltageregulatorhasbeeninvestlgated.Inthis paper,aself‑excitedoscillatorasacontrollerappliedtothiscombinedcircuitfortheelectronicballastofthenuorescentlampwith highfrequencyisanalyzed.As aresult,therelationshipbetweenthepeakcurrentandtheconductiontimeintervaloftheswitch deviceisclarified.Thisrelationshipisusefultoreducetheinputharmoniccu汀enteffectively.
1. まえがき
数百Wまでのス イッチ ング電源, イ ンバー タな どの 主ス イッチ素子 として,MOS・FETを用いることが一般 的であるが,バ イポー ラ トラ ンジス タ (以下BJTと略 す)は比較的高耐圧の素子 において もオ ン電圧が低 い 特徴が あ り,照明用の インバ ー タにおいては採用 され る場合 も多い。 ところで,BJTは電流駆動素子であ り, かつ高耐圧の ス イ ッチ ング動作 用素子で は電流増幅率 hFEが特 に低 いため,大 きな駆動電流 を必 要 とす る。
駆動 のための電力 は概略駆動 回路 の電源電圧 と駆動電 流の積で決 まるため,駆動 回路 の電源電圧が高い場 合 は装置の総合効率 を低下 させ る。総合効率 を高 く保 ち, 駆動電力 を低減す るため に,駆動電流 を安定 に維持 し た状態 で,駆動 回路 の電源電圧 を最小 限 にす るこ とが 求め られる。最小 限の駆動 回路電圧で安定 に駆動電流 を得 る方法 として,カレン トトランス (以下CTと略す) を用い る方法が知 られている (1)0cTの1次 側 を トラ ン ジス タの コレクタ電流の流 れ る枝路 に接続 し,2次 側 をベ ースーエ ミッタ間に接続 す るこ とで,回路定数 の バ ラツキやペ ース ーエ ミッタ間電圧の温度特性 な どに よって影響 を受 けることの ない,巻数比 に よって決 ま るコ レクタ電流 に比例 したベ ース電流 を得 る ことがで る。 またこの とき,駆動回路 の電源電圧 は,主 トラ ン ジス タのベ ースーエ ミッタ間順電圧 に相 当 し,駆動電 力 を最小限 とすることがで きる。
BJTを高速 にスイ ッチ ングさせ るため には,遮断時 に逆方向 にベ ース電流 を流す駆動 回路 を設 け,ベ ース 領域 に蓄積 された過剰電荷 を速 やか に放 出 させ る方法 が とられ る。 ここで扱 う自励発振 回路 は,可飽 和特性 のCTを用 いた駆動 回路 を用いてお り,最小限の電力で 安定 に駆動電流 を確保す る とともに,遮断時 には十分 な逆方向ベ ース電流 を流す こ とので きる特徴 を持 った 駆動回路方式である。
また, この駆動方法 を入力電流 の高調波歪 み低減機 能 を有す る変形 ハーフブ リッジ形 インバー タ回路 に適 用 した場合, ス イッチ素子 の動作電流 に応 じて ス イッ チの オ ン時 間が変化す るこ とが,高調波低減 に対 して 有効 に働 くことが分か っている(29(:i). また,突入電流 を 抑制する効果 に も関連す る もの と考 えられる。
ここでは, まず,変形ハ ーフブ リッジ形 イ ンバー タ における 自励発振 回路 の動作 を示 し,続 いて,解析の 基礎 となる 自励発振 回路 のモ デル化 について述べ る。
次 に,モデルに基づいた解析結果 を示 し実際の 回路動 作 との比較検討 を行 う。 さらに, 自励発振 と電源投 入 時の突入電流の関係 について も言及す る。
2.自励発振 回路とその概略動作
自励発振 方式 の駆動 回路 を使 った変形ハー フブ リッ ジ形 インバー タの基本回路 を図1に示す。商用交流電圧 源Eacと高調波 ノイズフ ィル タ, ブ リッジ形 の仝波整
平成12年10月27日受理
*大学院生産科学研究科 (GraduateSchoolofScienceandTechnology)
**東芝 ライテ ック株式会社 研究所 (LampandLightingLaboratory,ToshibaLighting良TechnologyCo咋.,Kanagawa)
64 清水 恵一,松尾 博文
流 回路 ,ハ ー フブ リッジ形 インバー タ部 を形成す るよ うに接続 された主 ス イッチQl, Q2,キャパシタCl,C2 お よび リーケージ形の トランスTを介 して接続 された負 荷か ら構成 される。負荷 は蛍光 ランプであ り,Coは予 熱用 のキ ャパ シタである。通常 のハ ー フブ リッジイン バー タと異 な り,キ ャパ シタC1は比較的大 きなキ ャパ シタンスを持 ち商用周波成分 に対 して平滑作用 を有す るが, C2のキ ャパ シタンスは極端 に小 さ く選 ばれてお り,入力電流 の高調波歪 み を低減 させ ることがで きる 特徴がある。
駆動 回路 は,2個の主 ス イッチQl, Q2の接続点 と負 荷の間に直列 にカ レン トトランスCTの 1次巻線が接続 され,2個の2次巻線がQl,Q2のベ ースに正帰還がか か る ようにそれぞれ接続 されてお り, 自励発振動作 を 行 う。 Ql, Q2のベース ・エ ミッタ間に接続 されたダイ オー ドと抵抗,CTの2次側 に接続 されたキャパ シタは, カ レン トトラ ンスの磁気飽和特性 を利 用 して,所 要の 動作周波数で適切 な駆動電流が得 られ るように設定 さ れてお り,以下 に具体的内容 を記す。
図2に図1の 自励発振 インバー タ回路 の うち,Ql,Q2
図1 変形ハーフブ リッジ型 インバー ターを 用いた電子安定器回路
図2 可飽和cTを用いた自励発振 回路
のベ ース回路部分 を示す。 cTは可飽和特性 を持 たせた カ レン トトラ ンスで あ り,外 形10mm内径5mm厚 さ 2.5mmの トロイダル形の フェライ トコアを用いている。
コア材質は,Mn‑Zn系の通常 のパ ワーフェライ トであ り,初透磁率 :2500,飽和磁 束密度 :0.45丁, コア損 失 :1000kW/mB(◎f=50kHz,Bm=0.4T)内外 の材料特 性 を持 っている.b l,CB2はCTの2次側 に直列 に接続 されたキ ャパ シタであ り,0.1LJFか ら1pF程度の容量 である。 これ らのキ ャパ シタはCTに対する負荷 インピ ー ダンス として飽和 の タイ ミングを決定す る とともに トランジス タのベ ースーエ ミッタ間に逆バ イアスをか けるための電圧源 の役割 を果 たす。ベースーエ ミッタ 間に並列 に接続 された ダイオー ドDlと抵抗Rlの直列回 路 はお よびD2とR2の直列 回路 は,対応する主 トランジ ス タが オ フの期 間にキ ャパ シタに蓄棟 された電荷 を放 電 し初期値 にリセ ッ トす る作用 を持つ。 Dclお よびDC2 は,それぞれ011, CB2と並列 に接続 され, 1)セ ッ トが 進行 してCBl, CB2の端子電圧がゼロを通過 し逆転 した 時点で,それ以上端子電圧が上昇 しない ようにクラン プす る作用 を持 つ。 なお,実際の回路 では,主電源投 入の際 に一方の トランジス タを一時的 にオ ンさせて 自 励発振動作 を開始 させる起動回路 を設けている。
3.可飽和 トランス と自助発振 回路のモデル 化 自助発振 回路 を解析 す るに当た って,可飽和 カ レン トトラ ンス と自励発振 回路 に対 して以下の仮定 を設 け る。
(1)Dl, D2, Dclお よびDC2は,オ ン状態 における順方 向電圧が ゼ ロ, オフ状態 における漏れ電流がゼ ロ, オンーオフの遷移時 間がゼロの理想 ダイオー ドとす る。
(2)主ス イッチQl, Q2には簡易化 した電荷制御 モデル を適用 し, オ ン状態 において過剰電荷 Qsがベ ース 領域 に蓄積 されている と考え,逆方向ベ ース電流 に よ りQsが放 出 された時点で オ フ状態 に遷移す る と 考 える。なお,オン状態 における順方向電圧 をゼロ,
オフ状態 において漏れ電流ゼロとす る。
(3)CTの磁心 は,図3に示す ように, ヒステ リシスが な く,非飽和状態 における透磁率が無限大,磁束密度 がBsにて飽和 す る理想B‑H特性 のであ る と仮定 す る。 す なわちCTは励磁 インダ ク タンスが無 限大 , 漏れ インダクタンスお よび飽和状態 における残留 イ
ンダクタンスはゼ ロの理想可飽和 カ レン トトランス とみなす。
(4)主回路 は,共振状態 に近い負荷が接続 されているの で,CTnl次側 に流れる電流 は振幅が Ipの正弦波電
流源 とお く。
(5)2個 の 2次巻線の巻数は等 しい と仮定 し,1次, 2 次の巻数 をNl,N2とお く。
以上の仮定条件 と実際の動作 の観測結果か ら,図2の 回路 は,主 スイ ッチQl,Q2のベ ースーエ ミッタ接 合,
リセ ッ ト回路の ダイオー ドDl, D2, クランプダイオー ドDcl, DC2のオ ン/ オフお よび可飽和 カ レン トトラン スCTの飽和 /非飽和 の組 み合わせ に よ り,表1に示 す 8つの動作状態 を とる。 また, これ らの動作状態 は, 図4の(a)‑(h)に示す等価 回路 で表 され る。 なお, これ
らの等価 回路 は便宜上2租 の2次 回路 を一括 して一つ の電流源 に接続 された状態で表現 した。 さらに,図5に 模式的 な動作波形 を示す。
to〜tl:状態1
(Ql:オ ン, Dl:オフ, Dcl:オフ, Q2:オフ, D2:
オン, Dc2:オフ,CT:非飽和)
コアが非飽和 の状態であって,CTの 1次 に流れる電 流 に対応 して, CT2次 回路のQlのベース‑エ ミッタ接 合 に順 電流が流 れ る期 間 を状 態 1とす る。 Qlのベ ー スーエ ミッタ間 に並列接続 された リセ ッ ト回路 はDlに 逆バ イアスがかか るため切 り離 された状態 にある。 ま た, 02のベ ースーエ ミッタは逆バ イアスがかか りオフ 状態で あ り, リセ ッ ト回路 のD2はCB2の電荷 を放 電す
るようにオン状態である。
Bs TB
0 →
‑BS H
図3 理想化 した可飽和 トランス磁心のB‑H特性 表1 自励発振回路の動作状態
State Q18E D1 Dc1 Q28E D2 Dc2 CT 1 On oq oft oq On off 井飽 和 2 On off oft off On 0∩ 募飽 和 3 0∩ off off off off off 飽 和 4 off On off off off off 飽 和 5 off On Ofー On off off 井飽 和 6 off On On On off off 井 飽 和 7 off oq off 0∩ off off 飽 和 8 off off off o什 On off 飽 和
(e)state5 (f)state6 (g)state7 (h)state8
図4 自励発振 回路の各動作状態 における等価 回路
状態 1において,CBlはQlの駆動電流 により充電 され, CBlに印加 される電圧の絶対値は増加す る。仮定 によ り ベースーエ ミッタ間順電庄 を無視するので,CBlの端子 電圧 はCTの2次電圧 に等 しく,CT2次電圧 も上昇す る。磁心の磁束密度 は巻線 に発生す る電圧の積分で与 え られるので,磁心の磁 束密度 も上昇す る。状態 1に おいて回路各部の電圧電流お よび磁心 の磁界 に強 さH, 磁束密度 Bの関係は以下の式で表す ことがで きる。
vcBlttI+icB2(t)・R2+tCB2(t)=O
icBl(tトicB2(t)‑豊㌘ sin(wt)
c Bl垂聖出 =icBl(t) dt
cB2重 竺些 =icB2(t) dt
BE⊥ JvcBl(t)dt N2A
H‡0
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
ここで, N2は2次巻線の巻数, Aは磁心 の断面積 を示 す。
t1‑t2:状態2
(Ql:オン, Dl:オフ, Dcl:オフ, Q2:オフ, D2:
オ ン, Dc2:オ ン,CT:非飽和)
状 態 1においてC82は放 電 し端子 電圧 はゼ ロになる が,電流源か ら供給 され る電流 に よ りゼ ロを通過 して 端子電圧は正 に向かお うとす る。ゼ ロ を通過 した時刻
66 清水 恵一,松尾 博文
tlにおいて, DC2が導通 して以降CB2の端子電圧はゼロ にクランプ される。状態2において回路各部の電圧電 流お よび磁心の磁界に強 さH,磁束密度の関係 は以下の 式で表すことがで きる。
vcBl(t)+iDC2(tいR2=O
icBl(t)・iDC2(t)‑豊 sin(wI)
cBl坐 1也 =icBl(t) dt
a‑志 JvcBl(t)dt H≡0
t2‑t3:状態3
(Ql:オフ, Dl:オフ, Dcl:オフ,Q2:オフ, D2:
オフ,Dc2:オフ,CT:飽和)
時刻t2において磁心の磁束密度がBsに到達 して飽和 領域 に入る と,磁束の変化が無 くなるために巻線 には 電圧が発生せず,巻線端子 間は壇絡 された状態 と等価 になる。従 って,充電 されたCBlの電圧 は, Qlのベ ー ス ーエ ミッタ間 に逆バ イアス電圧 と して印加 される。
この ときQlのベースーエ ミッタ接合は過剰電荷Qsを蓄 えてオ ン状態 を維持 してお り,逆方向にベース電流が 流 れる。 この状態 を状態3とする。 ここで,逆方向ベ ース電流は,飽和 を深める方向に起磁力 を発生 させる。
gEq 1 9 ・・・・・・} ・9 」打.也 悼
図5 自励発撮 回路の模式的動作波形
この状態 において,回路各部の電圧電流お よび磁心の 磁界 に強 さH,磁束密度の関係は以下の式で表すことが で きる。
vcBl(I)=O B=Bs
H‑竿 icBl(t)
ここで,= ま磁心の磁路長 を表す。
t3‑t4:状態4
(Ql:オフ, Dl:オ ン, Dcl:オフ, Q2:オフ, D2:
オフ, Dc2:オフ,CT:飽和)
時刻t3において過剰電荷Qsを放出 し終 えると, Qlの ベースーエ ミッタ接合はオフ状態 に戻 り,ベース‑エ ミッタ間に逆方向電圧が発生 し, リセ ッ ト回路 のDlが 導通開始す る。 この状態 を状態4とするo Dlに流れる 電流 は飽和 を続 ける方 向に起磁 力 を発生 させ てお り, この状態 において も磁心 は飽和 を継続する。 この状態 において,回路各部の電圧電流お よび磁心 の磁界 に強 さH,磁束密度の関係 は以下の式で表すことがで きる。
icBl(t)・Fh+vcBl(t)=O
cBl莞 p ‑icBl(t) B=BB
H‑竿 ticBl(t)
・
豊 sin(wt"(15) (16)
(17)
(18)
t4‑t5:状態5
(Ql:オフ, Dl:オ ン, Dcl:オフ, 02:オン, D2:
オフ,Dc2:オフ,CT:非飽和)
CTの 1次電流は正弦波状 に変化すると仮定 している か ら,時間の経過 によ り電流 向 きが状態 1に対 して逆 方向に変化する。 1次電流 ipによる起磁力が, リセ ッ ト 回路電流の作 る起磁力 を上回るようになる時刻t4にお いて磁心 は飽和状態か ら非飽和状態 に回復 する。磁心 が非飽和状態 となるので,1次電流の巻数比 に従 って Q2が順方 向に駆動 される。 この状態 を状態5とする。
なお, この状態はQl,Q2の関係が入れ替 わっただけで 状態1と同等である。 この状態 において,回路各部の 電圧電流お よび磁心の磁界 に強さH,磁束密度の関係は 以下の式で表す ことがで きる。
vcBl(t)+icB2(I)・Rl+VCB2(t)=O
icBl(t)‑icB2(tI‑豊 sin(wt) cBl些 空 也 =icBl(t)
dt
cB2塑 dt型 =icB2(t)
B孟 JvcBlft)dt H=0
(19)
(20)
(21)
(22)
(23)
(24)
t5‑t6:状態6
(Ql:オ フ, Dl:オ ン, Dcl:オ ン, Q2:オ ン, D2:
オフ, Dc2:オフ,CT:非飽和 )
Ql, Q2の関係が入 れ替 わ っただけで状 態2と同等 な 状態であ る。
iDCl(t)・Fh+vcB2(I)=O
cB2幽dt1也 =icB2tt)
iDCl(tトicB2(t)‑豊 sintwt) B=」」vc8'(t)dt
N2A H=0
(25)
(26)
(27)
(28)
(29)
t6‑t7:状態7
(Ql:オフ, Dl:オ フ, Dcl:オフ,Q2:オ ン,D2:
オフ, Dc2:オフ,CT:飽和 )
Ql, Q2の関係が入 れ替 わ っただけで状 態3と同等 な 状態で ある。
図6 動作状態 と可飽和 トラ ンス磁心 のB‑Hの関係
表2 自励発振 回路 の動作 モ ー ド Mode StateSequence
通常動作 モード 1 ‑ 2 ‑ 3‑ 4 ‑ 5‑ 6‑ 7‑‑ 8
cB2h t)=icB2(t) dt
B三一Bs
H‑竿 1‑icB2(t)
・
豊 sin(wt)‑ (32)t7‑tO:状態8
(Ql:オ フ, Dl:オ フ, Dcl:オ フ, Q2:オ フ, D2:
オ ン, Dc2:オフ, CT:飽和 )
Ql, Q2の関係が 入れ替 わ っただけで状態4と同等 な 状態である。
icBl(t)・Rl+VCBl(t)=O
cBl些 望坦)≡icBl(t) dt
B≡Ek
帖 竿 licBl(t)・思 psin(wty (36) 1次 電流iPに よる起磁力が, リセ ッ ト回路 電流icB2(t) の作 る起磁 力 を上 回 る ようになる時刻toにおいて磁心 は飽和状態 か ら非飽 和状 態 に回復 し,状 態1に戻 り以 降 は繰 り返 し動作 を行 う。以上 に示 した一連 の動作状 態 の遷移 を表2に動作 モ ー ドとして示す。 また,各動作 状 態 と可飽和 トラ ンス磁心 のB一日特性 の関係 を図6に示 す。
4.オン幅とピー ク電流に関す る解析
前節 に示 した等 価 回路 に基づ い た回路 方程 式 か ら, 可飽和 カ レン トトラ ンスCTに加 える 1次 側電流 を与 え れば,回路 各部 の電 圧,電流 お よび磁 束密度 な どを理 論 的 に求め られ る。本来CTの 1次側電流 は自励発振 回 路 と主 回路 の動作特 性 に よって総 合的 に決定 され る も ので あ るが, ここで は 自励発振 回路 の オ ン幅 と電流 の 関係 を調べ る こ とを 目的 と して,予 め設定す る こ とと す る。解析 に使用 した回路 パ ラメー タの値 を表3に示す。
図7に,正弦波 と仮定 した1次 電流の ピー ク値Ipを変 化 させ た場 合のQlについ て, 1次 電流が負か ら正 に変 化 した時点か ら磁 心 が飽和 して逆方 向ベ ース電流 が流
68 清水 恵一,松尾 博文
れ出す時点 までの時間TonQlと,逆方 向ベ ース電流が 流れだ した時点での1次電流IpQlの関係 を示す。国中 の実線 はこれ まで に述べ た手順で求めた計算結果であ る。□△○の シンボルを用 いてプロ ッ トした点 は実測 結果であるが,ロ印は入力電圧Eacを110Vか ら300Vに 変化 させた場 合,△印は ランプを模擬 した負荷抵抗 の 値 を700f)か ら無限大 に変化 させた場合,○は予熱 キャ パ シタCoを2200pFか ら22nFに変化 させた場合である。
なお, ここに示 した実測結果 は,商用周波の瞬時値変 化 に伴 うオ ン幅 や ピー ク電流 の変動 を避 け るた め,
Eacとして直流 を供給 して測定 した ものである。
計 算結果 と実測結果の カーブは並行 してお り,定性 的 にモデル化 お よび計算が正当であることを読 み とる こ とがで きる。 また,実測 に際 して3種の異 なる方法 で外乱 を与 えたが, ピー ク電流 とオ ン帽の関係 はほぼ 同一軌跡 を措 いてお り,少 な くとも定格動作点の近傍 においては, オ ン幅 とピーク電流 の関係は これ までに 検討 して きた 自励発振 回路 の特性 によって定 まる と見 なす ことがで きる。 この事実か らみて,オ ン時 間 とピ ー ク電流の関係 に大 きな影響 を及ぼす他のパ ラメー タ は存在 しな もの と考え られる。
10
8
3 6 1
盲
β 4
2
0 蕃・‑ 計算緒集I 軒
0 1 2 3 4 5
t)011A)
図7 自励発振 回路の ピーク電流 とオン帽の関係 (仮定 した理想条件)
08q}
(61)lDuO1
i
.̲̲̲̲..+ = ≡〒,I̲,̲̲̲̲̲̲̲ー̲
̲̲̲̲】 ̲̲̲̲̲JH̲̲I̲,̲̲̲.̲I̲̲I ̲
至」} 実jN(Eac嚢化 )
0 1 2 3 4
bQl(A)
図7 自励発撮 回路の ピーク電流 とオン幅の関係 (補正後)
表3 解析 に使用 した回路パ ラメータ
symbot 内 容 単位 数値
CB1 Q1側ベースキャパシタ pF 0.599 C82 Q2側ベースキャパシタ pF 0.47
R1 01側 リセ ッ ト抵抗 Q 4.1 R2 02側 リセ ッ ト抵抗 n 6.67
e 磁 路 長 mm 23.6
A 磁 路 断 面積 mm2 6.25 Bs 飽 和磁 束 密 度 T 0.4
N1 1次巻 数 ‑ 2
N2 2次 巻 数 ‑ 4
なお,結果 を定量的 にみ ると,同 じピー ク電流 に対 し てオ ン時 間が40%程度大 きく, ダイオー ドの順方向電 圧 をゼ ロ としたこ とや磁心の磁気特性 を理想特性 と仮 定 したこ とによる差異が生 じた もの と考え られる。図8
にこれ らについて補正 を試みた計 算結果 を示 す。補正 に対 して考慮 した事柄は, Ql,Q2のベースーエ ミッタ接 合お よびDl,D2,Dclお よびDC2の順方向電圧 を0.7V, 巻線お よびダイオー ドの順方向抵抗 を代表 して2次巻 線 と直列 に抵抗10,磁気特性 は理想的でな く材料特性 に記載 された飽和磁 束密度 よ りよ り低い億で透磁率が 低下す ることか らBsを先 に与 えたの値の80% とした。
結果 は図か らみて分 かる ように,計算値 と実測値の カ ープはほ とん ど重 な り,モデル化の際 に過度 に簡易化 したパ ラメー タを補正す ることでほほ完全 にフ ィッテ ィングすることがで きた。
回路解析 において動作状態 をを考 える場合,状態 は スイ ッチ素子のオ ンオフの組 み合 わせで決定 され,回 路方程式 で動作 を記述す る上でス イッチ素子 に流れる 電流の向 きによって状態 を分ける必要はない。従 って, スイ ッチの オ ン時 間 を扱 う場 合,逆電流が流 れている 時 間 も含 めてオ ン時 間 と扱 うことが一般的 と考 え られ る。 しか しなが ら,前節 に示 した動作状態4お よび7 か ら分か る ように,駆動 しようとするス イッチに逆方 向電流が流 れている期 間はcTの磁心は飽和 した状態で あ り,磁 気特性 に よって制御 され るオ ン時間は主回路 電流が順 方向に変化 してか らの期 間である。以上の解 析 に よ り, 自励発振 回路 の解析 においては,順方向に 電流が流 れている期 間をオ ン時間 として捉 える必要の あることが分かった。参考 として,図9に逆方向電流期 間 と順方 向電流期 間の和 をオ ン時 間 としてプロ ッ トし た結果 を示す。測定の条件 と表示の方法は図7同様であ る。図か ら明 らか な ように,外乱 の与 え方 に よって, オ ン時間 とピーク電流の関係 は変化 してお り, 自励発 撮 回路の特性 として一律 に記述で きないことが分かる。
なお,実際の 回路 では,toあるいはt5の近傍 で リセ ッ ト回路 に流 れ る電流 の値 は大 きくないので,磁心が 飽和状態か ら非飽和 に復帰す る点は近似的 に主回路電 流がゼロを横切 る点 と考えて よい。
以上 に示 した とお り,可飽和 CTを用いた自励発振 回路 の理論 的な解析 を行 った。 この結果,ス イッチ素子 に 流 れ る ピー ク電流 とオ ン時 間の関係が定量的 に明 らか になった。電流 の増加 に対 して, オ ン時間が減少す る 特性 を示 し,変形ハ ーフブ リッジ形 イ ンバー タにおい て, 自励発振 回路 の採用が高調波歪み を低下 させ る効 果があることに,理論的裏付 けが得 られた。
5.突入電流について
変形ハー フブ リッジ形 インバー タ回路 は,主回路構 成 において商用交流電源 か ら平滑 キ ャパ シタを充電す る電流経路 と直列 にス イ ッチ素子が存在す るため に, 電源投 入時 にス イ ッチ素子 を適切 に制御すれば本質的 に突入電流 を抑制 で きる特 長 を有 している。 さらに自 励発振 回路 は,前節 までの解析 で明 らかな ように回路 電流が増加す る とス イッチ素子 のオ ン時間 を短縮 する
88
(87J)LDuO1
【
l
l
I‑
l
l
1:ト 実潤(E一C嚢化 )
「ムー実JI(鼻蕎縫抗 変化)
0 1 2 3 4
bQl(A)
図9 逆方向電流が流れている期間 と順方向電流が 流れている期間の和 をオ ン時間 とした場合の
ピーク電流 との関係
I (hZZ○○h:一.SXV・一十【rtd.sxildrz
̲,i̲⊥
1 :入 力 電圧 200V/div.
2 :入 力 電 流 0.4A/diy.
時間軸 :4ms/div.
図10 突入電流波形
ように動作 す る特性が あるため,突入電流 の抑制 に有 効 に働 くと考 え られ る。 この節 で は,突 入電流 と自励 発振 回路の動作の関係 を検討する。
図10に実際の電子安定器 における突入電流波形 を示す。
突入電流波形 は以下の3つの期 間に分 けて考 えること がで きる。すなわち,(a)投 入直後の短時間 (1ms以下) の過渡現象 と、 (b)インバー タ発振 開始 までのお くれ時 間、 (C)発振 開始後の現象である。電源投 入試行 を繰 り 返 して観察 した結果, 剛の投入直後の過渡電流 は投 入 位相 と相 関があ り瞬時電圧が高 い状態で投 入す る と過 渡振動電流 も大 き くなる。 (b)の遅 れ時間は,4ms程度 か ら30ms程度 までにランダムに分布 し,投 入位相 と遅 れ時間に相 関はみ られない。 (C)の発振 開始後の入力電 流 は,投 入位相 や発撮 開始 までの遅れ時 間が変化 して も試行の度 にほぼ同様 な波形 を示 し,その ピー クは最 大0.5A程度であるこ とが分か った。 この ピー ク電流値 は,定常動作時の ピー ク値 (約0.5A)とほぼ同等であ り、実用上十分 に小 さ く抑制 されてい る もの と評価 で きる。
次 に,観測時間 を電源投入後100msとした ときの(a) 平滑キャパ シタ電圧, (b)入力電流, (e)Qlコレクタ電流 お よび(d)Q2コレクタ電流波形 を図11に示す。電源投入 か ら約0.85の期 間は予熱期 間であ り, この間は 自励発 振 回路の定数 を走常時 と切 り替 えてラ ンプ端 に印加 さ れる電圧 を制 限 して放電開始 しない状態 に保 ち陰極 を 加熱する期 間であ る。 入力電流が平滑 キ ャパ シタ電圧 の上昇 に ともない低減 してい く様子が波形か ら分かる。
投 入直後の電流 ピー クは大 きいが,その幅 は狭 くエ ネ ルギーが小 さいので通常間嵩 になることはな く, (C)の 期 間の平滑 キ ャパ シ タを充電す る電流 が抑制 されてい ることが実用上有用である。
図12に前節 と同様 の方法で,Qlお よびQ2についてオ ン時間 とピー ク電流の関係 を計 算 した結果 と,図11の (C)お よび(d)の波形 を拡大 して読み とった観測値 とを合 わせ て示す。計算 に当た っては,予熱時の回路 パ ラメ ー タとしてCBl…0.039pF,CB2=0.1LJFを代 入 し,前節 に示 した補正 を行 った。Qlについては観測値 と計算値 の カーブは1‑2tlSの差異で並行 してお り,比較的 よい 対応 を示 した。Q2については,計 算値 と観測値の差異 はQlの場 合 と大差 ないが, カーブの傾 向が異 な り,検 討が不十分 な点が あ るこ とを示唆 している。ベ ース に 逆方向電流 を印加 してか ら遮 断が完 了す る まで には, 蓄積時間が存在す るが,予熱動作状態 では,定格動作 に比べ逆方向電流 の占め る期 間が多 く,蓄積時 間に影 響が現れた可能性がある。
定常動作状態 について検討 したオ ン帽 とピー ク電流
70
10
8
7 6
、き 響.l
t
4
0
21:平滑キヤハ●シタ電圧250V/div. 2:入 力電流0.5A/diy. 3:Qlコレクタ電 流4A/diy. 4:Q2コレクタ電 流4A/diy. 時 間軸 :10ms/div.
図7 発振 開始時の動作
清 水 恵一,松尾 博文
◆き き
I
0
1 2 3 4ピークtit(A)
図12 始動時のス イッチの オ ン幅 とピーク電流の関係 の関係 を,発振 開始直後 の過渡的 な状 態 に拡 張 して適 用 した場合 において も, ス イ ッチ電流 を抑制 す る機能 をほほ定量 的 に説 明で きる こ とが分か った。 したが っ て, この回路 方式 は 自励 発振 回路 の採 用 と自励発振 回 路 定 数の切 り替 えに よって電源投 入時 の突入電流 を定 常動作時以下 にす ることがで きた もの と結論付 で きる。
6.むすび
以上,高耐圧 で オ ン電圧 が低 い とい うバ イポ ー ラ ト ラ ンジス タの特 長 を活 かす こ とが で きる可飽和 カ レン
トトランスを用 いた駆動 回路 について解析 した。
可飽和 カ レン トトランス に使用 した磁心 の特 性 を理 想飽和特性 , トラ ンジス タ とダイオー ドの順 方 向電圧 をゼ ロ と簡易化 したモ デ ル を用 い て, ス イ ッチ電流 の ピー クとス イ ッチのオ ン時 間の関係 を導 いた。簡易化 したモ デ ル を用 いた計算 値 と実 測値 の傾 向 は一致 し, 計算値の オ ン時 間は40%程度実測 よ り長い結果 を得 た。
トラ ンジス タ とダイオー ドの順方向電圧 につ いて考慮 し補 正 を施 した場 合,実測 と計算値 をほほ完全 に一致 した。定性 的 には,電流 の増加 に対 して, オ ン時間が 減少 す る特性 を示 し,変形ハ ー フブ リッジ形 イ ンバ ー
タにおいて, 自励 発振 回路 の採 用 が高調波 歪 み を低下 させ る効果がある ことに,理論的裏付 けが得 られた。
また,定常動作状態おいて求め たた オ ン幅 とピー ク 電流 の関係 を,発振 開始 直後 の過渡的 な状 態 に拡張 し て適用 した場 合 において も, ス イ ッチ電流 を抑制す る 機能 をほほ定量的 に説明で きる こ とが分 か った。 この 回路 方式 は 自励発振 回路 の採 用が突入電流 を低減す る ことに極 めて有効であることを示す ことがで きた。
参考文献
(1)清水恵一,伊藤俊樹 ,藤井活史 : "一石 自助型 イン バ ー タを用いた施設用電子安定器'',東芝 レビュー, Vol.45No.10,pp.819‑822(1990‑10)
(2)K.Shimizu,Y.TakahashiandN.Kitamura:HElectronic ballastcircuitfornuorescentlampsthatreducescircuit hm onics",∫.Illum.Engng.Soc.,Vol.26No.2,pp.26‑31 (1997‑7)
(3)清水恵一,松尾博文 : "変形ハー フブ リッジ形 イ ン バ ー タ回路 にお け る人力 電流 の解析 ",侶 学技 報 , EE2∝氾125,pp.25‑32(2(X沿‑9)