奈良教育大学学術リポジトリNEAR
中学校における自然学習・環境学習の事例研究 : (3) 野生動物のロードキル問題を中心に
著者 人見 功
雑誌名 奈良教育大学附属自然環境教育センター紀要
巻 6
ページ 39‑54
発行年 2004‑03‑31
その他のタイトル A Case Study on Nature Study and Environmental Education in High School : (3) Environmental Education through Roadkill of Wildanimals URL http://hdl.handle.net/10105/284
中学校 における自然学習・ 環境学習の事例研 究 (3)野生動物 のロ ー ドキル問題 を中心 に
人 見 功 奈良教育大学 附属 中学校
A Case Study on Nature Study and Environmental Education in High School
(3)Environmental Education through Roadkill of llrildanilnals
Tutomu HITOMI
Junior High Scool attached to Nara University of Education
本報 では、 これ まで十年以上調査 して きた筆者 の通勤路 にお ける野生動物 の交通 事故遺体 の出現状況 につ いての結果 を示 した。そ して、 ロー ドキル問題 を本校入学 試験 問題 に取 り込み、その解答事例 を通 して、野生動物 に対 す る子 どもの関心・態 度について、受験生 と中学 1年生 を比較考察 した。
[キー ワー ド]自 然学習,環境学 習,野生動物,ロ ー ドキル は じめに
第1報 (人見,1998)では、 中学校での 自然学習 。環境学習の取組 について、奈良教育大学教 育学部 附属 中学校 (以下、本校 とい う)での長年の 自然学習・環境学習の取組 の ようす を取 り上 げた。 また、実践事例 としては、世界生物保護基金 日本委員会 (以下、WWF日 本 とい う)の教 材 を使 った、生徒達の野生生物 に対す る
10項
目の価値観の重みづ けに関わる事例 を報告 して きた。第2報 (人見,2001)では、主 に近畿地区国立大学附属学校各校 の報告 よ り、中 。高校 におけ る授業実践 の中での フイール ドワー クの取組の ようす を取 り上げた。 また、実践事例 としては、
本校 の臨海実習 の漁家訪 間の インタビュー調査 における聞 き取 り内容 と、漁師 さん と生徒 たち と の意識のずれについての事例 を報告 して きた。
本報 では、筆者が長年観察 して きた、通勤路上 における野外動物 の交通事故死 (いわゆるロー ドキル)の観察結果 を取 り上 げた。 また、実践事例 としては、本校入学試験 問題 にキ ツネの ロー ドキル事件 を話題 に取 り入れた出題 を し、受験生の記述 による自然や野生動物 に対す る解答事例 か ら自然学習・環境学習の観点か らの考察 を行 った。 同問題 を本校 1年生 に実施 した結果 と受験 生 との比較 した結果 について も報告する。
1.野生動物 との関 わ り
(1)ロー ドキル問題 と野生哺乳類 との出会い
筆者 と野生動物 との関わ りは、長年 にわた る毎 日約26kmに お よぶ大和 高原 と呼ぶ 中山間地域 か ら奈良盆地 までの通勤 に源があ り、その途上での多 くの野生哺乳類 の交通事故遺体 に遭遇す るこ とか らは じまっている。最初 はイタチの遺体で、 しか も季節 は秋 の稲刈 り後の時期 に限 られてい
39
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奈良教 育大 学
‑22
O N 1 0 1 一
図‑1 筆者の通勤路 (人見,1995,P37よ り引用
)
た。 さっそ く、 この遺体 を拾 って きて土中に埋 め、生徒 たち と半年後 に掘 りあげ骨格標本作 りを した。現存す る骨格標本 のラベルか ら見 ると、1979年 の出来事 であった。 この発見事例 とそんな に違わない時期 に、道路上でテ ンの交通事故遺体 を拾 い、業者 に剥製標本の作成依頼 をしている。
その後 も、道路上 の野生動物 の遺体発見時 には、その遺体 を学校へ持 ち込 む こ とが基 本 とい う 形で、筆者 は行動 した。 ただ し最近では、遺体 よ りも多 くの哺乳動物 の生態活動 を車上 よ り観察 で きることが多 く、その哺乳類 の種類数 も個体数 も増加 して きた。それ らの動物 は、テ ン・ タヌ キ 。キ ツネ 。イノシシな どであ る。
交通事故遺体の発見 位置の確認 をは じめたのは、国道369号 線 の拡幅 による切 り通 し部での タヌ キの事故遺体 を発見 した時か らで、 しか も日数 をそんなにおかず に連続 して見いだされた時か ら である。道路の拡幅工事に伴 う「 け もの道」の遮断・破壊 に原因があるのか と考 えたわけである。
そ して、 タヌキの遺体発見位置 を2万 5千分の1の地形 図上 に、 ま とめは じめだ した。その後、
この地図上 にプロッ トしてい く過程 で、野生動物遺体の発見位置の記録が、通勤経路のほぼ全域 に しか も均等 に分布す るように思 えるような結果 とな り、特定地域 ではな く連続 的に分布す るよ うな状況になった (図‑1,人見,1995,P37よ り)のである。初期の「けもの道」の遮断 。破壊 という考えが誤 りであることを知 らされた。 しか もその経過の中で、野生動物の遺体の種 も、ウ サギ 。テン 。キツネ・ムササビと種類数 も増加 し、個体数 も増加の一途をたどるようになってき た。
表‑1は、筆者の通勤路 における過去
10年
にわたるタヌキのロー ドキル個体発見数を示 したも近鉄な ら
JRなら
N N
︲ ゛ 1 0 0 0 N
︐ ︲ 一 o
91‑11‑6
91‑11
● タ ヌキ遺 体
☆ テ ン遺体
● ゥサ ギ遺体
▲ イ タチ遺体
▽ キッ ネ生存
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月
8月
9月 10月 11月 12月 合 計19924F
1
119934F
1
1 1 3 l 1 81994年
1
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l 4
1995乙F 1
1 1
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1
2 1 61997年 1 1 2
1998年
1
2 61999年 2
1
l1 1
31
22000年 l 1 2 3
1 1
120 13
2001̀F 2 3
1
2 3 11
20024F 2 2 2 2 1
20
1 5 1 19
2003̀F 1
1
I1
2 3 04 4 18表‑1 通勤路 にお け る タヌキの遺体発見数
のである。初期 は年間数体程度であった ものが、最近 は年 間10体 を超 える数 になって きている。
続 いて、表‑2に、 同様 に筆者の タヌキ以外 の哺乳類 の遺体発見数が示す。合計欄の先の左 の 数値 はイ タチの個体 数 を、後 の右 の数値 はそれ以外 の哺乳類 の数が示 されている。
ただ し、学校へ持 ち込 まなかった遺体 については、車窓か らの確認の もであるため種名のわか らない個体数 もかな りあ り、それ らはそれ以外 に含めた。 この中には、奈良公園のシカの交通事 故遺体 を1体、 ムササ ビの遺体 1体も確 認 してい る。 キツネは疑 いのあ る個体 を含 めて4体、 ノ ウサギが疑 いのある ものを含めて7体、首周 りの黄色 の特徴があるテ ンの疑 いのある個体 を含め て16体 である。
発見 した遺体 につ いて、初期 はで きるだけ学校へ持 ち込み、生徒 たち とともに解剖 を した り皮 剥 を し、内臓観察や毛皮 。骨格標本 として利 用 した。先 に述べ た ように、最近で は種数 も増 えテ ン 。キ ツネ 。ムササ ビの遺体 までが、学校 の小 さい冷凍庫 の中にいつ も保存 されてい る ように なって きた。解剖 や皮剥 の処理がおいつか な くなったので、最近 では道路上の痛 みの大 きい野生
表‑2 通勤路 におけるタヌキ以外 の遺体 の発見数 1月 2月 3月
4月
5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月ハ 計
イ タチ それ以外
1992年 /// /// ///
1 1
l1
1993̀F 1 2 2
1
1994年 2 1 1
1
1 51
1995年 2 2
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51
1996年
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1997年 l 1 0
19984F
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1
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1 1
3 1 6 620004F 4
1
2 2 41
6 92001年 1
1 1
21
20024F l 1
1
1 21
1 1 5 62003̀F 0´ 1
1
3 υ241
動物遺体 (経験 的 に雨天時 に被害 を受 ける個体が多 く、汚 れているケース も多い)につ いては、
学校へ も持 ち込 まない ようになって きた。
(2)学校 ビオ トー プ活動
野生哺乳類 に注 目した学校 ビオ トー プ構想 は、 この ような野生 哺乳類 の交通事故 に関連 して、
学校 の裏 山を利用 した活動がで きないか と考 えては じめた。本校 の校地の北東部 には、里 山 とし ての 自然がその ままで残 されお り、潅木 もだんだん大 きくなって きていたので、その伐採か ら活 動 をは じめてい る。そ うす る と、 ノウサ ギの糞の発見 をは じめ として、 アカネズ ミの トラ ップ採 集での捕獲、 イタチの 目撃へ と、次か ら次へ と拡大 してい き、最近 では授業 中に タヌキの歩 いて い るようす を教室か ら眺め られる状況 に となって きた。
裏 山の環境整備 につ いては、1988年 か らの「 自然史・ 自然誌 クラブ」 の クラブ活動 か らは じま り、 クラブ員が女子 のみで裏 山に入 ることはため らわれたが、彼女 らは積極 的 に裏 山に入 って多 くのキノ コの発見 を している。 その後、 クラブ員が集 ま らず に休部 とい うこともあった りして、
クラブ としての活動 としては断続的な もの となったが、主たる活動場所 としての裏山の利用 をめ ざ した本格的な整備活動 を進 めて現在 になってい る。
先 に述べ た野生哺乳類の発見 の拡大、 そ して校 内の裏 山の野生動物 の観察設備 の整備へ と進み、
これ らの「動物 たち との共存」 を合い言葉 に、伐採 な どの出入 り容易 な形への整備 に も熱が入 っ てい った。林 に入 ると哺乳類 だけでな く、キノコの存在 も気 にな りは じめた。1988年 のクラブ員 の女生徒 たちがすでにその端緒 を開いていたので、本格的な採集 をは じめだす と、ほんの1〜 2
年 の間に百種以上 のキ ノコの採集がで きた。 また、 このキ ノコ取 りのため に裏 山に入 る と、急 に 地面か らキ ジの飛 び出す姿 に出会 った り、枯 れた赤松 に コグ ラが ドラ ミングを した り、地面や潅 木 に鳥の巣 を発 見 した りと、鳥の種 につ いては十分 わか らなか ったが、鳥類へ の観察へ の興 味 も 広が ってい った。
裏 山に入 って準備室 に戻 る と、潅木 を通 り抜 ける過程 で着 いた木の枝 や葉 。蜘蛛の巣 に混 じっ て、服 に毛虫が着 いていることもよ くあった。 この毛虫は何か とい うことで幼虫図鑑 で調べ た り して、次 に林 にはいる時には、 自然 と木や葉 に着 いている毛虫が気 にな りだす とい うことで、 も ともと生物種 に興味が強 くあったわけではないが、次か ら次へ といろいろな生物種へ の興味が広 が っていった。
この ように興味関心か ら、生物種 を広げなが ら自然環境 についての知識 も拡大 した とい うこと が で き、それが今 まで活動継 続 を して きた もとで あ る と思 ってい る。 これ らにつ いて は、既 に
「 自然環境教育教材 としての学校 園づ くりとその利用」(人見,1995)お よび「豊か な学校 ビオ トープの形成 をめ ざす学校園の整備 とそれを利用」(本校,2000)の「私の学校 ビオ トープ論」 に 報告 しているので、それ を参照 されたい。
(3)考察 とまとめ
ロー ドキル問題 とは、哺乳類 は本来夜行性 の ものが多 く、平常 の生活 を してい ると普段 あ ま り 目に もしなか った ことか ら、最近 の私 たちの生活時間帯 の早朝 ・夜 間へ の拡大 とい う社会情勢 の 変化 に伴 って、 自動車社会 となった活動範 囲の拡大 。高速化 とも相 まって、哺乳類 との遭遇機 会 の増大 とともに生 じて きている。先 に示 した、表 ‑1、 表‑2の結果 の ように、野生動物 の死ヘ とつ なが っているわけである。
これには、人間の開発 による森林破壊行為 によって、生活域 を脅か された野生動物の うちで、
人 間の生活行動域へ の接近 と協調性 を高めた特 別 な種 (た とえば、昔のスズメや ツバ メ、最近の カラスな どの例)を除いて、大 きな影響 を受 けている。
毎 日新聞の環境面に、 これ らに関わった「生 き物たちのシグナル」 というシリーズが、2003年 5月 〜 9月、週1回の割で
22回
の連載が行われている。 この第1部「都会に住んで」で取 り上げ られてた動物群の中には、哺乳類ではタヌキ、イノシシ、クマネズ ミの3種がある。鳥類が一番 多 く取 り上げられ、カワセ ミ、スズメ、ツバメ、フクロウ、ウミネコ、カラスの6種がある。鳥 類が もっとも敏感な反応 を示す ものか も知れない。た とえば、道路上での野生動物の遺体 を私た ちが発見する機会の増大について も、カラスが野生動物の遺体を狙 って、早朝か ら遺体 をつつ き に来ることなどで、車窓か らの遺体の発見に寄与するなどということは少な くない。学校 ビオ トープについては、独 自な活動 をしてきたが、 日本生態系協会の第1回学校 コンテス トに参加 したところ、本校 も第二次審査に残 り、審査に来 られた協会の堂本理事 との懇談で、私 たちの進むべ き方向に誤 りのないことを感 じた。 この懇談の中で、この人間の生活域への適用状 況か ら、現在ではノウサギの方が タヌキよりも自然度が高い動物であるという話にな り、そ うい
う観点か らの野生動物の簡便な自然度比較表がほしいもの と思 うようになった。
また、現在のタヌキの交通事故死などは、人間の生活に依存 じす ぎて増 えす ぎた個体数を、 自 然界における間引 き作用に相当する働 きで調整 しているという意見 もある。校地内ではイノシシ はまだ全 く目にしないが、他地域では最近では見る機会が増 えていることや、田畑 を荒 らして困 るという報告 も少な くない。
2日
本校入学試験問題 の解答事例(1)問題 の設定
2001年 度の本校の入学試験 の理科の問題 に、怪我 を したキツネの手当 とそのキツネの逃亡 に関 わ る事象の文 を話題 に作 問 し、一部記述 を含 めた野生動物 との関わ りについての解 答 を求 めた
(資料1)。 この ような設間がで きたのは、 この年 よ り理科 と社 会の2つの教科 の中か ら1つの 教科 を選択 して答 える とい う選択制 を取 り入れ ることになった こ と、 またその問題 には「総合的 な問題」 とい う趣 旨で教科書記述 の範囲 を越 えて出題す るこ とが可能 になった こと、生徒 たちは 2つの教科 の問題 を見て当 日教科選択がで きることな ど、新 しい試みの導入による ところが大 き か った。
したが って、理科 とい う教科 の学習内容 だけでな く、総合 的 な学習 としての環境教育 とい う観 点か ら、野生動物 との関わ りを問 う記述式 の出題が可能 とな り、採 点上 の問題 な どい ろいろな意 見や難点が一方で は生 じるであろ うが、得 られ る記述情報 が 今後 の教科指導や生徒指導上 か らも 有効 な内容 であろ うとい うことで、従来の問題形式 を継承 しつつ新 しい問い に踏み出 したわけで あ る。
ね らいは、小学校卒業時点での野生動物 に対す る子 どもたちの関心 。態度 に関わ る文章表現、
小学校段 階での環境学習 の取 り組 みの傾 向性 を見 る とい う観点か ら、考察 を進めた。過去 に も入 学試験 の結果 を利用 した受験生の解答傾 向につ いて、結果 を整理報告 (人見,1990,1994)して
きてい る。
ここでは、次 に考察す る関連の問題文 を示 し、 この問いに対す る受験生の解答
(2001年
2月 19日 実施)と、その少 し後 に行 った本校1年生の解答(2001年
3月18日)資料 を使 って、以下 に結果 の 考察 を行 う。なお、受験生 の資料 は、男子
72名
、女子90名
であった。本校の1年生の資料 は、当 日欠席者 を 除 く男子78名
、女子69名
であ った。(2)結果 の考察
O υ
И 争
1)キ ツネのその後について (問題 (8)の①②の解答)
設間は、実体的に逃亡 しているキッネの例であ り、 自分たちの周 りの自然環境の現実的状況を 鑑みて、答えを導 き出すことを期待 している。
小学生では、かつての4年生の国語教材 に「ごん ぎつね」があ り、最後の場面でのゴンが鉄砲 で撃たれた時でさえ、子 どもたちの中には「死んだ」 という考 えが多い中にも、「まだ生 きてい る」 という感想 を寄せる者 も少な くないという事実 も念頭に置 きつつ、考えを進めている。
① キツネの生死
まず、間①の (あ
)(い
)の「キツネの生死」についての受験生の解答 は、男子71名
中、「死ん だ」が36名 (51%)、
「生 きている」が33名 (46%)、
無解答が2名であった。同 じく女子91名
中、「死んだ」が
41名 (45%)、
「生 きている」が48(53%)名、無解答が2名であった。本校生徒では、男子
78名
中、「死んだ」が25名 (32%)、
「生 きている」が47名 (60%)、
無解答 が6名であった。同 じく女子69名
中、「死んだ」が28名 (41%)、
「生 きている」が39名 (57%)、
無解答が2名であった。
受験生が「生 きている」 と「死んだ」がほぼ半々であるのに対 して、在校生では「生 きている」
が6に対 して「死んだ」力'4の割合である。
「生死」に関わっての記述 について、受験生のものだけを拾 って、以下にあげる。
「生 きている」 と答 えた者 については、現在の生息場所 として、資料に地図を入れていたので それを元 にして、「元棲んでいた所」。「水間峠」。「コギツネの遺体の見つかった所」 などの記述 が、男子
14名
、女子15名
であった。続いて、別資料の「山添村」などの記述が、男子3名、女子 9名あった。「学校の裏山」。「奈良山」などの記述が、男子2名、女子5名であった。 これ以外 に、「森や林」 という特定の場所でない記述が、男子3名、女子6名、「山の方」の記述が、男子 6名、女子2名、「山の近 くの川や池」が女子2名、「小 さい巣穴の中」が女子3名、「えさの豊 富な場所」が、女子2名であった。「助けた人の家」力S男子3名、「ゴミ収集所」が男子 1名 など であった。「死んだ」 と答えた者は、答えの重複はあるが、「ケガ」によるが、男子
11名
、女子18名
、「食 べ物がない」。「空腹」が、女子7名、男子11名
、「寒 さ」によるが、男子4名、女子8名、「交通 事故死」が、男子8名、女子6名、「人に育て られたため」力S男子2名、「単独行動」が男子 1名 であった。「小キツネを求めて長距離の移動 をした」や「他の動物 に見 られるのがいやがる」 と いう野生生物の習性 にふれるような記述 もあるが、最終的に死んだにしている。②生死の結論を下 した理由
「生死」問題についての解答は、(あ)と (い)に特に矛盾が無い限 り、結果が どちらで も許容 している。むしろ問②の①の結論になった考え方が、① を含めた一連の統一性のある記述内容で あることを、採点の考慮事項 としてすすめている。
これも受験生の解答記述のみを以下に示す。この間になると、白紙解答が 目立ちだ し、男子
13
名(18%)、
女子6名 (7%)あ らわれている。「生 きている」
。野生のキツネだったのだか ら、そのキツネは生まれた時か らすんでいた山に本能的に帰って いって しまったのだとぼ くは考える。(男子
)
一度人間になついた りす ると、食べ物 な どが な くなった りす る と、食べ物 を くれた人間の元 に 『食べ物がほ しい』 と戻 って くると思ったか ら。(男子)
動物 は 自己再生能力が優 れてい るか ら、逃 げ られ るほ どまで回復 させ ておいた ら、後 は勝手 になお ってい くか ら。(男子)
このキツネは餌 も食べ られる し、 ダンボールを破 る力がある。だか ら生 きていると思 う。(女
子
)「死んだ」
。他の野生動物が人間のにおいが着いていたら、仲間外れにされると聞いたため (男子)
。足 にケガをしていたため、うまく歩けずにいて、道路に出たときに、車か ら逃げ遅れてひか れて死んで しまう可能性が高いために、死んでいると思った。(男子)
。まだ足のケガが完治できず、厳 しい寒さの上に食料が捕獲出来ずに力つきて死んでしまった。
(男子
)
2)野生動物 とのつ きあい方について (問題 (8)の③の解答
)
問③の「野生動物 とのつ きあい方についての考え」では、同様に受験生の記述 を、い くつかの 鍵語 。鍵概念をもとに、次のように整理 してみた。一人で、二項 目以上の項 目を記述 した もの も あるが、項 目ごとにそれぞれ別々に数え、延人数で表 している。項 目の後にあげた記述例 も、 2
つ以上の項 目の記述を含むものもある。
①「木を切った り森を破壊 してきた」。「野生動物の生活域 を人間が奪ってきた」 という、人間 が野生動物のすみかを奪って きたという実態 を述べたもの
受験生では、男子9名、女子
24名
が書いている。在校生 (1年生)では、男子24名
、女子23名
が書いている。[受験生]・ なるべ くた くさんの自然を残 してお く。人間だけの地球 じゃないという事 をわかっ ておいて、 自然を破壊 しない。(男子)
。僕は野生動物 と人間が一緒に暮 らすのは難 しいと思 う。それは、人間が野生動物が住んでい る森などの本を切 り倒 し、野生動物が出て くるとその動物 を殺 した りするためだ。そ して も う一つの理由は、野生動物 を観光などの目的に使 ってエサを与えておいて、少 しのいたず ら をすると殺す。このように人間は野生動物 を道具 としか見ていないためだ。(男子
)
。野生動物の被害が出るのは、野生動物の住む所がないためだと思います。野生動物は住むと ころがないため、食べ物がないので農作物 を食べ るのだ と思います。今、 自然破壊が進んで います。野生動物は自然がな くて困っていると思います。だか ら、まずは自然破壊 をな くし てい くべ きだと思います。(女子
)
。人間は森の中の木を切 り、動物達の住みかをなくしていっています。食べ物だってそうです。
そのため野生動物は都市に下 りてきて人間達に被害を与 えています。 じゃあ人間達が森に入 らなければいいのです。 自然はそのままにしてお くのが、一番 よい と思います。(女子)
[在校生]・ 野生動物 と暮 らしてい くには、人間が まず野生動物の住んでいる場所の環境 を壊 さずに守っていかな くてはならない。野生動物は住んでいる所が壊 されたと、 どうして も住 める所がな くなって、人の住んでいる都会に出て きて しまう。そ して人の迷惑になるのだか ら、森や林を壊 さずにする事が大事だ と思います。それ と野生動物の密猟 もやめなければい
45
けない と思 い ます。 どち らに して も人間が どうす るか に よって、野生動物 の生 き方が左右 さ れ る と思 い ます。(男子)
。シカは悪気があってその ようなことをす るのではな く、生 きてい くために食べ るので、人が 責 め るこ とはで きない。そ もそ も民家へ野生動物が来 る とい うの は、近年 山野が荒 らされ、
住 む場所、 食料が少 な くなって きたため なのだか ら、 人が 自分 でその原因 を作 っておいて動 物 ばか りを責 め るの は、す ご く自己中だ と思 う。人間 も自然 を大切 に した ら、 きっ と人 と動 物 は仲良 く暮 らせ るだろ う。お互 い を思いあわない と。(女子)
② 「柵 を作 る」 とかの野生動物 と人 間 との隔離 的な方法 を述べ た もの
受験生 では、男子
10名
、女子19名
が書 いている。在校生では、男子9名、女子9名が書いてい る。[受験 生]。 どち らも被害のでないほ どで、付 き合 えば よいです。それは、人間や人間の作 っ た作物 にはネ ッ トをすればよい し、人間 も必要以上 に野生動物 を飼わない ようにすればいい と思 うか ら。(受験 生男子)
。野生動物が入れないように大 きな柵 を作 ることや、野生動物が人間に被害 を与 えようとして い る時 に、野生動物が ここは恐い所 なのでいかない方がいい と思 わせ るために、野生動物 を 驚かす こ とをす る。(受験生男子)
。畑 とか木 を取 り囲むように して、金網 を作 リシカが入って くるのを防 ぐ。(受験生女子)。 野 生動物 と人が仲良 くつ き合 えるためには、被害が出ない ように柵 を した りして、農作物 とか
に被 害の出ない ように した らいい と思い ます。(受験生女子
)
[在校生]・ 農作物 が食べ られ るな らシカが入 れ ない フェ ンス を作 れ ば よい。 また木 をか じら れ るな ら木 に何か しっか りした物 を巻 き付け、削 られない ようにすればよい。互いに智恵 を 絞 り出 して、動物 も人間に も損 のない ように しなければな らない と思 う。 人間だけの 自己主 張 だけでは動物 が傷ついた り絶滅 した りして しまうし、逆 に動物 だけ尊重すれば人間が損 を して しまう。 人間 と動物 は両方 ともに利益のある付 き合い方 を し、 どち らも欠けてはいけな い存在 となれるように もしなければな らない と思 う。(男子
)
。野生動物 と人間は仲良 く付 き合ってい くべ きだ と思います。野生動物が被害を起 こすのなら、
柵 な どを張 り、範囲 を決めた らいい と思い ます。 そ してそ こか ら見物すればいい と思 い ます。
僕 は生 き物 が生 きていけるか ら、人 間 も生 きていける と思 い ます。生 き物 とい うのは相 当周 りが豊か じゃなければいけませ ん。 だか ら人 間は動物 のそばにい る事が大切 だ と思 い ます。
(男子
)
③ 「野生動物 は 自然 の ままに してお く」 と述べ た もの
受験生で は、男子
12名
、女子19名
が書いている。在校生では、男子9名、女子8名であった。[受験生]。 今の まま野生動物 と人 間の関係 を保 ってお く方が良い と思 い ます。 なぜ な ら、野 生動物がた くさんいる中で数匹で も甘やか した りす ると、 人間をこわが らな くなって、市町 村 を襲 って しまう可能性 が 出て くるか らです。 ただ人間が一つ だけ手助 け してや らなければ
な らない ことがあ ります。それは森や林 を守 ってあげることです。(男子
)
。人間と野生動物は危険な関係がいい。 シカも人間がエサを与 えるか らエサを求めて くるのに、
エサ を求めて くるシカを悪 く言 う前 に人間が悪い と思 う。サルが店 を襲 うことも観光客が食
べ物を与えるか らだ。人間は可愛いだけでエサをやった り飼った りしてはいけない。(女子
)
私は野生動物はほっとく方がいいと思 う。シカとかは人間がエサをあげるか ら、人間を恐れ ず農作物 を食べてしまうと思 うか ら、人間のせいだと思 う。ただ道路でひいて しまったシカ は、 シカも悪い し、人間も悪いので しょうがないと思 う。だか らやっぱ り野生動物 とかは、ほっとくべ きだと思 う。(女子
)
[在校生]・ 山などで見つけた時は捕 まえた くて も我慢 して見ているだけに して、そっとして おいてあげて、 もしケガをした り野生動物 にはどうしようも出来ない時は、本当はほっとい てあげるのがいいけど、やっば りかわいそ うだか ら人の手をかけて、治 してあげた りして、
そ してそのまま捕 まえておかないで、発見 した元の場所に帰 してあげるのが一番いいと思い ます。(女子
)
④「野生動物 との共生 。共存共栄」に関わった内容を述べたもの
受験生では、男子 5名 、女子 6名 が書いている。在校生では、男子
12名
、女子12名
であった。[受験生]・ 私は、人間が 自然を壊すか ら、野生動物 も居場所がな くな り、人間の住みか まで エサを探 しにきているのだと思います。だか ら私は、動物の住みかを壊 さないように、 自然 を大切 にするようにして、動物達にあまりかまわないのが、一番人間にも動物達にもいいこ とだと思います。それか ら野生生物 を決 して悪いことをしない限 り、絶対に殺 さないことで す。 このままだと野生動物達が全部絶滅 して しまうか も知れないか らです。私の考え方だと、
ちょっと無理があるか もしれませんが、 こういうふ うに野生動物達 をもうちょっと大切 にし ていきたいと思います。(女子)
。人間はやはり野生動物 との共生が必要だと思 う。 しか し今の状態 じゃきっと野生動物 との共 生は無理だと思 う。だか ら人間は人間だけの所、野生動物は野生動物だけの区域 というのを 作 り、今のような状態でな くなった時、 また共に生 きてゆけばいいのではないだろうか。(女
子)
[在校生]。 人間だって山林や海などを奪 って きたのに、野生動物が里に来ただけで野生動物 を処分 した りするのはあんまりだ と思 う。野生動物はエサをやると、 また もらえると学習 し てまた里へお りてきてしまうか ら、人間一人一人が協力 してエサをや らず山林に追い返せば、
里は恐 ろしい場所だ とまた学習 して、 もう里へは来ない と思います。だか ら人間が野生動物 と共存 し生 きてい くためには、決 して人里 を動物 にとってよりよい場所 と学習させることは しないようにしてほしいと思います。(男子
)
。動物が人里に下 りてきて菜園の物を食べるのは、山や森に食べ物や住みかがなくなったとい うことです。動物の食べ物や住みかを奪っているのは人間です。人間が森や山の木をどんど ん伐採 して、多 くの動物達が住めない環境 を作っています。私は自分たちの生活のために森 を切 り開いて しまうのは、仕方がないと思います。だか らここまでは動物のために自然を残 して置こうとか、 ここまでは私達が使お うと、決めたらいいと思います。それが動物 と人間 が共存す るための道ではないで しょうか。(女子)
⑤「野生動物の絶減の危機」 に関する憂いを述べた もの
受験生では、男子3名、女子8名が書いている。在校生では、男子5名、女子4名であった。
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[受験生]・ 動物で も人間で も生 き物なので、 自分勝手な行動 を取 らず、皆仲間とい う自覚を 持って生 きてい くべ きであると思 う。 シカに農作物 を食べ られても殺 した りせず、柵 を張っ た り、来ないようにする方がいい と思 う。 もし殺 して しまうと、食物連鎖が崩れ環境破壊 に つなが り、それこそ地球は破・
in人
類滅亡の危機にさらされるか も知れない。それ とか、 どこ かの動物園 とか保護出来るところへ連れてい く。(女子)
[在校生]。 今人間 と野生動物 とのつなが りが悪 くなっている。様 々な環境破壊で野生動物が 絶滅 しそ うになっている。 これ らの環境破壊 をしないで絶滅の危機 を防 ぐ必要がある。(男 子)
⑥問題の背景 と記述文の総括
受験生 と在校生 を含めた出現数の多い鍵語 。鍵概念か ら順に並べたが、受験生 と生徒の間には 大 きな違いがある。① と② は、受験生 。在校生 ともに比較的あげている。③ と④では、③の「自 然のままにそっとしてお く」は受験生に多 く、④の「共存・共生」は在校生に多い。⑤ は出現数 は少ないが、他 との重複 した記述 となっている。「生態系」は、受験生では1、 2見られたのみ であるが、在校生ではかな りの数あ らわれている。
奈良公園は、わが国でも例外的に野生動物の大型ほ哺乳類 (シカ)と住民 との共存共栄 してい る地域である。 しか し、以上の記述内容か ら見ると、子 どもたちには、 これ らのシカを野生生物 ではな く、飼育下にある動物 (家畜・ペ ッ ト)と見ているのか も知れないと思われるものがかな
りの頻度で出現 している。
近年の機械化による造成工事には森林破壊だけでな く、野生動物の生活根拠 を破壊するという、
野生動物 と人 との関わ りを激変する実態があった。 しか し、中世の都市周辺の森林破壊の規模
(これを里山と呼んでいる)も大 きく、これがかえって野生動物 との遭遇 を増や し、これが人と 野生動物 との安定的なつ き合いを生み出 した一面 もある。この理解がないことには、人 と野生動 物 とのつ き合いについての理解 は得 られない。実際、子 ども達の記述の中には、春 日大社・興福 寺の中世か らの観光資源的なシカの誘い出 しと、その観光資源 としての利用 という長い共存関係 が図 られてきているという事実の理解 は、全 く考慮の外 ということがで きる。
このシカと人との間には、柵 を設けない といろいろな問題が生 じ、維持で きないという考えも ある。奈良公園におけるシカを巡る問題は、いろいろなことが多 くあるけれ ども、現状の最小限 の規模の柵による隔離状況 という、野生動物 と人 との関わ りとして模範的に継続 してきている実 状がある。隔離の意見の多さは、 シカ害の経験のある奈良市内在住者には、ある意味で率直な気 持ちの表現であるという側面があるか も知れない。
環境問題 として野外動物 と人 との関係 を考えると、基本的には共存共栄の形 を考えるべ きであ ろう。 自然環境 を現状維持あるいは少 しで も改善をはかろうとすると、何 を基本に置 くべ きか と い う問題はなかなか難 しい問題である。棲み分けを含めた共存の形には、子 ども達にとっては、
次の「自然のままにそっとしてお く」 という意見 とあまり違わないところもあ り、子 ども達の持 つ語彙 とその思考の間のギャップが存在 しているのか も知れない。そ して、私たちが持つ基礎知 識 というものが、その問題解決をはかるために十分持ち得ているか どうか という問題がある。そ れが、これ らの記述の中に表れている。受験生 と中学1年生 とい う年齢 としての1年の違いが、
文章表現上に大 きく出ているという事実がある。
一方 自然界には、保護 しなければ保存 もおぼつかない生物種 もあ りうる。いわゆる絶減危惧種 である。 しか し、全ての生物がそういうわけではない。多 くの生物種は、子 ども達の意見にある、
へたにい じるよりは「そっとしてお く」方が確かに良いことも多いか もしれない。 しか し、現状
はそのようにしていてよい時期であろうか。ただ、この「そっとしてお く」の記述者の中には、
やや身勝手 と思われる記述が多いことも気になる。
人類文明の進歩が野生動物の生息域 を減 らしてきたことは事実であろう。 また、人類の文明発 展が多 くの種 を絶滅 させてきたことも事実である。地球上に生息する生物種は多 く、中には現在 では手厚い保護の元にしか生息維持出来ない絶滅危惧種 もいるのは確かである。それらは私たち の正 しい科学的認識 と英知で、その保護に努めなければならないが、生物種全体か ら見るとそう 多 くはない。
(3)小学校の環境教育の実態 を推測するための資料 とその解釈
本校の附属小学校の受験生の記述 を、次にあげる。特徴的なことは、「 自然のままにほってお く」 という記述が他に比べても多いことである。最初の男子の記述は、シカを巡る糞虫などの食 物連鎖の記述があるので、おそ らく北川の研究 (北川,1989)を 受けた指導が行われていること が推測で きる。次の女子の記述は、 自然保護活動の必要性 を述べてお り、最後の記述は、人の開 発 に関わる営みの一般的な羅列 をしている。
・僕は出来れば放っておきたい。下手に保護するとかえって生態系が狂ってしまう。そ してど うしても農作物荒 らしや木の皮 を剥が された りすると困る、 と訴えが出て くるだろう。その 時は困った人達で保護グループを作 って、皆で金を出 し合えばいい。そ してシカに関係 (シ
バや糞虫などなど)する生態系 を全て保護すればいいと思 う。 シカも仕方なしに食べている のだか ら、たとえばシバを増やせばいい。(男子)
。むやみに野生動物に関わるのは良 くないと思います。よく「自然を守る」 とあ りますが、あ れは「人間の手か ら」 ということなので、「守 る」ではな く「そっとしてお く」 とい うこと になると思います。 またよくある保護活動は、人間が立ち入 り、壊 して しまった自然界のバ ランスを少 しで も元に戻そ うとする活動であって、やって当然のことであ り、せめて もの償 いになると考えています。だか らもっと多 くの人間が「自然保護活動」をやるべ きだと思い ます。やって当然 という世の中になるべ きだ し、成ってゆけばいいと思っています。(女子
)
。今まで動物が絶命 してきたのは、人間の責任です。山を切 り開き、木を燃や し、海を汚 した りしてきました。だか ら動物の住む場所がな くな り、死んで しまうのです。人間と動物が協 同で生 きてい くなら、木や山などの切 った り。海を汚 した りせず、 自然破壊 を止めることが 第一歩だと、私は思います。(女子)
その他の小学校出身受験者の記述 を、次にあげる。選んだ ものは、段階的な記述やいろいろな 内容の羅列的なものが多い。 したがって特徴的なことを述べ ることは難 しい。最初の男子は、 自 然やエネルギーの独占を廃 し、循環 を考えようと述べている。次の女子は、生態系の概念か ら状 況の把握が必要であることを述べている。最後の女子は、植生 と食糧確保の観点か ら、植林の必 要性 をいい、温暖化 と動物の問題解決になると述べている。
人間が車 に乗 った り、工場 の有毒 ガスで、出た排気 ガスのせいで、た くさんの野生動物が死 んでい るので、人間ばか りが 自然や化石燃料 を独 占す るのはいけない ことで、元 々あったシ カが食べ るエサを人間が壊 したか ら、人間にしっぺ返 しが きたと思 う。これか ら人間はリサ イクルや排気 ガスの出ない物 を一番に開発 した らいい と思 う。(男子)
野生動物 とうまく生 きてい くためには、まず彼 らの生態系 を知ることが大切であると思 う。
今、沖縄ではカブ ト虫が害虫 として扱われいると聞いたことがあ ります。これ も生態系を考
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えない人間が、カブ ト虫を沖縄に入れたのだ と思 う。彼 らの生態系を知 り、一番人間にとっ ても彼 らにとって も良いことを考えることが、野生動物 にで きない人間のよい ところだと思
う。(女子)
・シカが木の皮を食べるのは生 きてい くために仕方のないことだし、そもそもそうなったのは、
人間が山を切 り開 き動物の住みかをな くしたか らだと思 う。シカも元は山に住んでいたんだ か ら、山や森 を切 り開 き食べ物の木 を伐 らなければ、 こち らにはそんなに迷惑 には成 らな かったと思 う。 もちろん木を伐 らなければ、シカもそれでよかったと思 う。シカが農作物を 食べるというのは、食べ きれてない、お腹がいっぱい じゃない、えさが少ない。その結果農 作物 を食べた り木の皮を食べ られた りするのだと思 う。森や山を切 り開 きす ぎ、本を減 らし た結果、 こんなことになったと思 う。今は木を植 えた りした りするのが一番いい と思 う。こ ういうことが、温暖化 などの問題や動物の問題を解決する方法だと思 う。(女子)
小学校での指導内容 までを推 し量ることので きる資料は、 シカと糞虫 とシバの関係の附属小学 校の資料のみであった。少な くとも同 じ学級では同 じ内容の授業が進め られているはずだが、記 述 されているのは、 この例ただ一人であった。個人としての知的な定着の問題 と、その文章表現 という情報発信で きるという点は、別の営み ということがで き一致するものではない ということ がで きるか も知れない。
一般的な環境問題 として取 り上げ られる、地球の温暖化などのエネルギー問題や、生態系 など の食物連鎖や生物同士のつなが りか らの共生問題 を取 り上げているものは、(2)でも述べてい るようにかな りの数がある。ただし、これ らの問題は幅広い知識が必要であることか ら、十分な 理解 を得るまでにはなってお らず、表現 もいまだ上手な記述になっていない ということがで きる のであろう。沖縄でのカブ トムシの事例の情報源は、 この資料か らはテレビ。雑誌・授業のどれ であるかは定かでないが、エ ピソー ド型の情報定着 という点か ら考える材料 となるであろう。
まとめ
本報 の (1)〜 (3)報まで、一つ は、 中等学校段 階での 自然学習・環境学習 としての姿勢・
考 え方 。学習 内容 につ いて、その取組 を概観 して きた。 もう一つ は、本校 での 自然学習 。環境学 習実践 の事例 につ いて報告 して きた。
本報で は、 ロー ドキル問題 として野生生物 の遺体数 の動 きを、 ここ十年以上 にわたつて記録 し た もの を、表 ‑1、 表‑2の資料 として示 した。 また、人 と野生動物 の関わ りとして、 これ まで 学校 ビオ トー プ とい うことで、別報で示 した学校裏 山での生物 との接 す る機 会の創 出につ とめて
きた事例 との関わ りを述べた。
実践事例 としては、本校 入学試験 問題 の作 問形式 の変更 に よ り、 キツネの ロー ドキル を題材 に して、子 ども達の野生動物 に対す る考 えを、適切 な量 の記述文 に して得 ることがで きたので、本 校1年生 に も実施 して、受験生 。在校生の比較 を しなが ら整理 ・考察 した。
本文中に示 した資料では (受験生で全体の
14%、
在校生で全体の5%の文 を示 した)、 まだ十分 に示 し得 ない部分があるか も知れないが、受験生 。在校生の野生動物 に対す る考 え方が素直に出 て きていることがわかった。記述文 はキー ワー ドに よる出現項 目数 にま とめたが、出現数 において受験生 と在校生 の間に、
① 受験生 。在校生 ともに同 じ傾向 を示す もの (森が破壊 された とい う記述、野生動物が絶減す る という記述)、 ②受験生に多かったもの (柵などで隔離するという記述、自然にほってお くとい う記述
)、
③在校生に多かったもの (共存・共生という記述)が認められた。また、個人による差 も大 きい といえるが、一年 という暦年齢の違いだけで、在校生の方が①文 の記述が平均的に多いこと、②前の文 と後の文 との間の矛盾的記述が少ないことなどが認め られ、
一年の違いで大 きな成長の後 を残 していると思えることである。
参考文献
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