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荒川中流部における広大で植生の多い高水敷上の

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(1)

2015

年度 中央大学理工学部都市環境学科修士論文発表会要旨集(2016 年

2

月)

荒川中流部における広大で植生の多い高水敷上の 氾濫機構に着目した洪水流解析に関する研究 Flood Flow Analysis Focused on the Inundation Mechanism on Wide and Vegetated Flood Channels of the Arakawa River

14N3100038C 福田 匠太 Shota FUKUDA

Key Words : Arakawa River, Laser Profiler, Filtering, Flood Flow Hydrograph

1.はじめに

荒川は埼玉県と東京都を貫流するため,大規模氾濫等の 洪水被害が生じるとその被害は計り知れない.洪水被害か ら人命や資産を守ることを目的として,荒川中流部河道に は広大な高水敷上に荒川第一調節地や横堤などの洪水調 節施設が設けられている.荒川水系河川整備基本方針では,

荒川岩淵地点における基本高水のピーク流量は

14,800 m3/s

であり,このうち上流ダム群および中流部の遊水地に より

7,800 m3/s

を洪水調節し,河道では

7,000 m3/s

を受け 持つことになっている. 図-1 に示すように,寄居(94.7km) と岩淵(21.1km)における計画高水流量は

7,000 m3/s

とされ ており,この間に流入する市野川と入間川の洪水流が下流 に影響を与えないよう中流部で洪水を調節する機能が求 められている.中流部河道が有する洪水調節機能を定量的 に把握することは今後の荒川全体の計画を考える上で重 要であり,このためには荒川中流部河道における洪水流解 析モデルの構築が求められている.

これまで福岡ら

1)

は,洪水時の抵抗,河道貯留,流量ハ イドログラフの変形などの影響が観測水面形の時間変化 に現れているとの考えから,主に低水路沿いで測られた縦 断水面形の時間変化に基づいて二次元不定流解析から粗 度係数等の流れの抵抗を決定することで,精度の良い流量 ハイドログラフを推算する手法を提言している.本研究が 対象とする荒川中流部河道は,図-2 に示すように最大幅

2.5km

に達する広大な高水敷を有しており,その高水敷上

には 図-3 に示すような植生域が広がっていることから,

低水路から溢れた水が高水敷全域に広がるまでに時間を 有する.そのため,低水路の観測水位を再現するように抵 抗を決定しても,高水敷上の氾濫機構を適切に再現できな ければ,流量ハイドログラフを正しく求めたことにはなら ない.洪水流の高水敷への氾濫のタイミングや広がり方を 再現するために,高水敷上の起伏や道路などの微地形を解 析メッシュに取り込む必要がある.このことは,低水路か ら高水敷までほぼ一気に洪水が広がるこれまで扱ってき た従来の洪水流解析(以下従来法)とは荒川は大きく異な ることに注意しなければならない.

本論文では,平成

19

9

月洪水を対象に荒川中流部河 道の非定常平面二次元解析結果から明らかとなった,広大 な高水敷を有する大河川洪水流解析のための地盤高の評 価方法と,それによる高水敷上の氾濫機構の変化と解析結 果への効果を示す.

図-2 堤防天端から撮影した広大な高水敷の風景(治水橋付近)

図-1 計画流量配分図

入間川

図-3 高水敷上に密に繁茂する植生(菅間付近)

(2)

2015

年度 中央大学理工学部都市環境学科修士論文発表会要旨集(2016 年

2

月) 2.高水敷地盤高の評価方法

(1) レーザプロファイラを活用した高水敷地盤高の評価 荒川中流部の高水敷は地形の起伏があり,横堤や道路等 の構造物が設けられているため,高水敷地盤高を評価する ためにはレーザプロファイラ(LP)の利用が不可欠である.

一般に河川の洪水流解析では

LP

のオリジナルデータから 建物や樹木群を除去したグラウンドデータが利用される が,植生が密に繁茂している領域やオギ等の比較的植生高 の低いものは植生高も含めて地盤高として評価されてい るケースが見られる.

LP

データと定期横断測量成果の比 較から,植生が繁茂する領域では

LP

データの方が高い標 高値を示し,標準偏差が比較的高いことがわかった.ここ で,LP データから高水敷地盤高のみを抽出するフィルタ リングの方法を 図-4 に示す.まず,対象区間を

10m

幅の 格子に分割し,格子内の

LP

データ群の標準偏差から植生 域と思われる範囲のデータを除去する.さらに,ある領域 内で最も標高の低い

LP

データが高水敷地盤高を捉えてい る可能性が高いため,各格子内で最も標高の低い

LP

デー タを抽出した.解析メッシュに取り込む時は,メッシュ格

子内の抽出された

LP

データ群の平均値を適用し,メッシ ュ格子内に

LP

データが存在しない場合は上下流のメッシ ュから距離の逆数で平均した値を適用する.横断測量成果,

フィルタリングを行う前の

LP

データの横断分布,フィル タリングを行った後の

LP

データの横断分布を 図-5 に示 す.フィルタリングを行った後の

LP

データは,横断測量 成果とよく一致しており,地盤高を捉えている.低水路際 や堤防等の斜面部はフィルタリングにより低く評価され てしまうが,低水路と堤防は横断測量データに置き換える ため問題は無い.

(2)航空写真や地形図,樋管等を活用した高水敷地盤高の 評価

メッシュ形状により取り込むことができない道路や窪 地等の微地形は

1/5,000

地形図を参考に与える. 図-6 に平 成

27

9

月洪水直後の高水敷上の水溜りを撮影した航空 写真を示す.水田や窪地に水が溜まっている様子から,解 析で考慮すべき起伏や畦道等の微地形を明確にし,地形図 を参考に微地形を解析に取り込む.例えば,河道中央に縦 断的に設けられた道路は,河道を左右に分断し水田や運動

LPデータ 平面図

最小値

デ ー タ 除 去 デ

ー タ 除 去 植生

幅10m

LPデータ

ー タ除 去 断面図

最小値

12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22

25 75

125 175

地盤高[A.P.m]

横断距離[m]

定期横断測量成果 LP

LP(フィルタリング後)

図-4 LP データのフィルタリングのイメージ図

図-5 横断測量成果と LP の比較

図-6 洪水後に水田や運動場に溜まる水(平成 27 年 9 月) 図-8 微地形を考慮することで変化する氾濫機構

治水橋

水田の畦道

治水橋 道路

地形の起伏

(b) 微地形を考慮する本解析モデル (a) 微地形を考慮しない従来法

治水橋

道路 低 水 路

水田 運動場

堤 防 堤

6 7 8 9 10 11 12 13

15 20 25 30 35 40 45 50 55 60

宝来(観測値)

宝来(解析値)

前回の結果

9月6日0時からの経過時間 (hour)

水位(A.P.m)

図-7 堤防沿いの樋管の観測水位を用いた

氾濫水の到達時間の検証

(3)

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年度 中央大学理工学部都市環境学科修士論文発表会要旨集(2016 年

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月) 場に水を貯留させている.このことから道路が途切れな

いように地形メッシュに道路高さを与える.

解析水位と堤防沿いの宝来樋管で測られた水位の比較 を図-7 に示す.洪水経過時間 32~33 時間において観測水 位が不連続になっていることから,その時間帯に宝来樋 管へ氾濫水が到達したと考えられる.高水敷上の観測水 位を用いて氾濫プロセスが再現できているか検証し,地 盤高や植生域での抵抗評価の修正を繰り返すことで正し い地盤高を評価する.

微地形を取り込む前と取り込んだ後の解析結果を図- 8(a)(b)に示す.両者の治水橋地点における解析水位が同 じ時の結果を比較しているが,微地形を考慮している(b) では道路により流れが阻害され,氾濫域が変化している ことがわかる.氾濫域が変化すると流下する流量も変化 し,この現象が河道全体で連動する.

3.解析概要

実測データを用いて水面形の時間変化を解とした非定 常平面二次元解析を適用し,平成

19

9

月洪水の再現を 試みる.平成

19

9

月洪水は,熊谷水位観測所において 氾濫危険水位を越え観測開始以来の最高水位を記録し,

支川では都幾川の野本水位観測所,高麗川の坂戸水位観 測所でも氾濫危険水位を越えた.対象区間は 図-9 に示す 熊谷(76.5km)から西新井(13.5km)とし,区間内には市野 川,入間川,小畔川,越辺川,都幾川の流入,岩淵水門か らの隅田川への分派,高水敷上の荒川第一調節池と横堤 群,排水機場や樋管等からのポンプ流入,第一調節池のさ くらそう水門の開閉を考慮する.境界条件は,各河川の上 流端に観測水位ハイドログラフを,下流端は西新井の観 測水位ハイドログラフを与える.抵抗は粗度係数と樹木 群透過係数で考慮する.

荒川中流部の河道内に繁茂する植生は,ヨシやオギ等の 高茎草本が大半を占める. 洪水時は流れによってヨシ・オギ が倒伏し, 流れの抵抗が時間的に変化することが考えられ,

本検討ではヨシ・オギの倒伏による抵抗の変化を考慮する.

ヨシ・オギが繁茂する範囲を植生図と航空写真から特定し,

その範囲の粗度係数を

n=0.1

とする.その範囲内の計算点 の水深が

2m

を越えた場合は,ヨシ・オギが倒伏したとして 粗度係数を

0.05

程度に変化させ,倒伏高さの

0.7m

だけ地 盤高を高くする. 一度倒伏したヨシ・オギは洪水中倒伏した ままとする.減水期に水深が

0.3m

以下となった場合は地 盤高を0.7m 低くし元の地盤高に戻す.

洪水が低水路から溢れ,小さい水深で高水敷を広がる 時,地形の凹凸や植生により流れを阻んだり貯留したり することが考えられる( 図-10) .解析ではメッシュ以下の スケールの微地形を評価することができないため,最低 水深(本検討では

30cm)以下の水深である場合は計算を

行わないことで,これらを考慮する.

5 10 15 20 25 30 35

52.0 56.0 60.0 64.0 68.0 72.0 76.0

痕跡左岸 痕跡右岸 15 18

21 24 27 30

15 18 21 24

27 30

縦断距離(km)

水位(A.P.m)

-6 -5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16

13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 41 43 45 47 49 51 53

21 24 27 30 33

36 39 42 45 21

24 27 30 33 36

39 42 45 低水路平均河床高

縦断距離(km)

水位(A.P.m)

入間川合流点

-12 太郎右衛門橋-西新井間の水面形

図-9 解析対象区間 熊谷

太郎右衛門橋 大芦橋

菅間

治水橋

笹目橋 荒川第一調節池 市野川

荒川

入間川 小畔川 越辺川

都幾川

岩淵 西新井 隅田川

落合橋

宝来樋管

30cm

計算 実際の現象

貯留 死水域

図-10 水深の浅い流れの取り扱い

図-11 熊谷-太郎右衛門橋間の水面形

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年度 中央大学理工学部都市環境学科修士論文発表会要旨集(2016 年

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月) 4.解析結果と考察

図-11 及び 図-12 に荒川本川の水位縦断分布の時系列を 観測値はプロットで,解析値は実線で示す. 図-11 の熊谷 -太郎右衛門橋間の水位観測地点は大芦橋のみであるが,

解析ピーク水位は痕跡水位を縦断的に概ね捉えている. 図 -12 の太郎右衛門橋-西新井間の解析水面形は観測水面形 を概ね再現している.

主要な地点の水位ハイドログラフの比較を観測値はプ ロットで,解析値は実線で 図-13 から 図-15 に示す.点線 で示す従来法とは,フィルタリングや地盤高の修正を行わ ない場合の解析結果である.荒川本川の太郎右衛門橋や治 水橋では従来法からの変化は無く,解析は観測水位ハイド ログラフを説明している.笹目橋より下流では水位上昇期 に変化が見られた.従来法では解析水位ハイドログラフの 立ち上がりが急になる傾向にあったが,本解析モデルでは 解析の水位の立ち上がりが観測値に近づいた.観測水位と 解析水位に差がある時間帯は,洪水が高水敷上を広がる時 間帯であるため,今後も高水敷地盤高を修正することでさ らに改善されることが見込める.支川では越辺川の落合橋 における水位ハイドログラフが,従来法では観測値を再現 することができなかったが,本検討では水位ハイドログラ フの波形が変化し,水位上昇期が改善された(図-15) .全 域に植生が繁茂する越辺川は,フィルタリングにより地盤 高が大きく変化し,水位ハイドログラフの変形に至った.

高水敷の氾濫機構を再現することで,対象区間全域におい て水位上昇期に改善が見られたが,水位下降期の解析水位 は観測水位を説明できていない.解析では水位ピーク時か ら水位下降速度が速いため,高水敷地盤高の評価方法が原 因ではないと考えられる.観測値よりも速く水位が下降す る傾向は,対象区間の下流部と入間川流域に見られ,特に 越辺川が顕著である.解析結果から,越辺川で速く水位が 下降しているために,入間川と荒川においても水位が速く 下降していると見られる.越辺川における河道内貯留量を 過少に見積もっていると考えられ,河道内の大部分に繁茂 する植生の抵抗評価を検討することが課題である.流量ハ イドログラフは対象区間全域において観測値を概ね説明で きているが, 図-16 に示す荒川本川の太郎右衛門橋におけ る流量ハイドログラフは,観測値と解析値に差がある.し かし,低水路流量を比較すると解析は観測値を説明できて いる.太郎右衛門橋は横堤の直下流で浮子流量観測が行わ れており,横堤を回りこむ流れがあるため高水敷上の浮子 流量観測に観測誤差が生じたと考えられる.

4.結論

従来法では説明できない広大で植生の多い高水敷を有する 河川における洪水流解析法を構築した.そのためのLPデー タ及び洪水時の航空写真や樋管等の水位を活用した地盤高 の評価方法を示した.これにより幅が広く植生が多い高水 敷を有する特異な河道構造を持った荒川における洪水流の

変形・伝播を説明出来た.

参考文献

1) 福岡捷二,渡邉明英,原俊彦,秋山正人:水面形の時間変化 と非定常二次元解析を用いた洪水流量ハイドログラフと貯 留量の高精度推算,土木学会論文集,No.761,Ⅱ-67,pp.45- 56,2004.

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000

20 25 30 35 40 45 50 55

太郎右衛門橋(53.63k) 太郎右衛門橋(53.63k)

従来法 低水路流量

低水路

9月6日0時からの経過時間(hour)

流量(m3/s)

図-16 流量ハイドログラフの比較(荒川・太郎右衛門橋)

10.0 11.0 12.0 13.0 14.0 15.0 16.0

15 20 25 30 35 40 45 50 55 60

落合橋(越辺川-0.4k) 落合橋(越辺川-0.4k) 従来法

高水敷高

9月6日0時からの経過時間(hour)

水位(A.P.m)

9月6日0時からの経過時間(hour)

水位(A.P.m)

2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5

25 30 35 40 45 50 55 60

笹目(28.5k) 笹目(28.5k) 従来法

9月6日0時からの経過時間(hour)

水位(A.P.m)

岩淵水門オープン 岩淵水門全閉

図-14 水位ハイドログラフの比較(荒川・笹目橋)

4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 10.0 11.0

20 25 30 35 40 45 50 55

治水橋(41.83k) 治水橋(41.83k) 従来法

9月6日0時からの経過時間(hour)

水位(A.P.m)

図-13 水位ハイドログラフの比較(荒川・治水橋)

図-15 水位ハイドログラフの比較(越辺川・落合橋)

参照

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