航空機機体保険約款に関する一考察 (2)
その他のタイトル Analysis of Aviation Hull Insurance Policy (2)
著者 羽原 敬二
雑誌名 關西大學商學論集
巻 31
号 2
ページ 159‑178
発行年 1986‑06‑25
URL http://hdl.handle.net/10112/6615
関 西 大 学 商 学 論 集 第31巻第2号 (1986年6月) (159)79
航空機機体保険約款に関する 一考察 (2)
目 次
(前号より続く)
w.機休保険の各種免責条項について (1) 飛行危険
(2) 規則または法律に遮反する運航 (3) 墜落または衝突に因る火災 (4) 地上走行
(5)移動中の航空機(屋外駐機)
羽 原 敬
(6) 特別の許可を必要とする方式による航空機の運航 (7)格納庫外に置かれた航空機
(8) 被保険者による被保険航空機の販売または被保険利 益の移転以後に発生した損害
(9) 被保険者がもはや単独または無条件の所有者ではな くなった以後に発生した損害
(10) 除外される受寄者,賃借人および類似の者 (ll) 戦争危険(戦争,市民戦争,反乱,革命,反乱,捕
獲拿捕,暴動,騒擾等,免責条項)
四機械的故障または破損
(以下次号)
w. 機 体 保 険 の 各 種 免 責 条 項 に つ い て
航 空 機 械 休 保 険 証 券 に お け る 免 責 条 項 は , 不 明 瞭 な 点 に つ い て は , 可 能 な 限 り 被 保 険 者 に 有 利 に 解 さ れ る と い う 一 般 的 な 原 則 に 従 っ て , し ば し ば 免 責
第 31 巻 第 2 号 (1)
とはならないと解釈される例がある。
典型的な例は, UnitedStates対 EagleStar Ins.. Co.事件において,(2)
相当なる注意が被保険航空機の損害を回避するためになされることを求めて いる約款規定が,過失運航 (negligentoperation)に起因する損害の填補 を除外していると解釈されるべきではないとされた再審理における策9巡回 裁判所の判決である。本件で,制限的担保 (negativecov‑erage)に対する 決定要因は,保険証券の「一般条件」 (GeneralConditions)のもとにおけ る条件 (Condition)であり,それは,「被保険者は,相当な注意をなし,同 保険によって付保された財産の一切の減失または損傷を回避または軽減する ために合理的に実行可能なあらゆることをなすに際して,実施・協力するも のとし,航空機が同保険証明書およぴ/または保険証券によって担保された 損害を被むった場合には,被保険者またはその信任代理人 (accredited agents)は,直ちに損侮航空機およびその装備と付属品の安全を確保するた めに必要であると考えられる手段を講ずるものとする」という内容であっ た。これに関し,再審理裁判所は,その見解として, くり返して約款を読ん だ後でも,当該条件が,航空機の運航における過失に因る担保を除外するを 企図しているのか,または減失もしくは損傷を軽減することに関する被保険 者の義務を規定することだけを意図しているのか,不明確さは残ると判示し
尽
)
保険証券における一切のあいまいさや不明確さは,保険者に不利に解され るべきであるという原則は,保険証券の一般的な担保条件などからの免責事 項を考慮する際に'も,同様に適用されるものである。万一,保険者が主要な 担保条項の一般的な意味に対する例外としている場合には,この免責事由を
(4)
明確で誤りのない文言で明記する責任は保険者の側にある。
航空機機休保険証券上の免責条項 (exclusions)ま た は 排 他 的 な 約 款 (exclusionary clanses)に関する挙証責任の問題について,判例の数は多 くはないが,免責を立証する挙証責任が機体保険業者 (hullinsurer)にあ
(5)
るという一般的合意があると考えられる。これらの判決は,米国保険法
航空機機体保険約款に関する一考察(2)(羽原) (161)81 (American insurance law)における除外事項や免責条項に関する挙証責
(5)
任についての基本的な原則に一致している。また英国の判例でもこのことは
(6)
謡められると思われる。
保険者が免責条項に基づいて填補責任の免除を求める宣言的判決訴訟を提 起し,保険者が多発機の全損に対して機体保険証券による反訴を要求した Schwab対 RangerIns. Co.事件において,テキサスの中間裁判所は,保(7)
険証券による填補責任を立証するのは,被保険者の責任であると判決した。
同裁判所は,保険者が契約上の担保を争点とする特定の免責条項を理由とし て抗弁すること,およびテキサスの訴訟手続に従って,損害が申し立てられ た除外危険に起因していないことを示す証拠を提出する責任は,被保険者に
(8)
あることを強調している。
(9)
(1) 飛行危険 (flightrisks)
航空機機体保険証券には,しばしば運航中の担保範囲から「飛行中」 (in flight)を特別に除外する条項が挿入されていることがある。当然ながら,
このように航空機の減失または損傷に対する保険証券が,実際に明示的に飛 行危険を除外している場合には,被保険航空機が,減失,損傷または重大な
(10)
事態の発生時に飛行中であったか否かを決定することが必要となる。
予想されうるように,判例には,得られた個々の判決について,特定の事 情により決定されたものがいくつかある。それら判例の中には,裁判所が,
除外された飛行危険と担保危険を区別する限りにおいて,状況により航空機 の減失または損傷は飛行中に発生していないと結論して担保の判決を下し,
(11)
免責を否認したものもある。また,他の特別な事情のもとでは,裁判所が,
被保険航空機の減失または損傷が実際に飛行中に発生し,したがって,当該 危険は除外されており,保険証券の担保範囲内にはないと結論すると同時に
(12)
事実駆定等を確認した場合もある。
機体保険証券において,「地上走行中」 (taxiing)およぴ「飛行中」の文 言が,地上走行中の減失または損傷を担保するが飛行中は担保しないという 条件で用いられている場合に,マサッチューセッツ州の連邦裁判所が,これ
らの文言を区別した事例として Jackson対RoyalIndem. Co.事椙ぶミあ る。本件では,被保険者は,欠陥プレーキにより,航空機を着陸させたが,
コントロールを失ったと気づき,ェンンジを停止したが,着陸時に被むるカ のために操縦困難な状態で前進してしまった。裁判所は,マサッチューセッ ツ州の法律を適用して,飛行は着陸速度が通常の地上走行速度にまで減速さ れた時に終了することも規定している保険証券に基づき,事故により飛行中 または着陸中に損害が発生し,地上走行中に生じた損害ではないと判決し た。裁判所は,速度においてかかる減速ができず,さらに重要なことは,欠 陥プレーキによって始まった損害の連鎖関係が,すでに飛行または着陸によ って開始しており,その結果安定を失っている間の結果として生じる破壊 は,単なる不可避的な究極的結果であり,これは最終的な災害の瞬間に単に 減速によってその本質が変わるものではない。したがって,被保険者の担保 範囲は,地上走行中を含んでいるが,飛行中を除外していたので,保険証券 に基づく填補は否認された。
英国における初期の判例では,保険証券が,その条件によって,航空機の
(14)
初飛行を除外していた事例もある。
(2) 規則または法律に違反する運航 (operation in violation of
(15)
regulation or of law)
航空機が政府の法規に遮反して運航される場合の明示的な免責条項または 実質的に同じ意味内容の表現が含まれている航空機機休保険証券がみられ る。 Millerは,通常FAA規則の 14CFR Part 91の一部に法律上厳密に 遮反していないような種類の事故が起ることは事実上不可能であると,はっ
(16)
きり指摘している。この種の広範囲にわたる免責条項は,裁判所および航空 保険に関与する弁護士にとって,いくつかの問題を引き起こしている。しか し,数が少なく雑多な判例からこれらを概括することは,極めて困難である。
判決の中において,被保険者が米国連邦航空庁 (FAA=Federal Aviation Agency)の規則に遮反して航空機を運航したり,または航空機が規則に遮 反して運航されることを黙認している場合には,明示された担保条件の適用
航空機機体保険約款に関する一考察(2)(羽原) (163)83 を受けられないことを規定している保険証券の免責条項は,契約上有効な規 定であり,被保険航空機が規則に反する・操縦士によって運航されている場 合に,生じた減失または損傷は,填補されないという主張を実際に支持して
(17)
いる事例がみられる。
航空保険の初期の時代における準備的な段階での問題として, West Memphis Flying Service, Inc.対 AmericanAviation & General Ins.
(18)
Co.事件では,航空機が,当時商務省 (Departmentof Commerce)の民 間航空局 (CivilAeronautics Administration)と呼ばれていた監督官庁の 施行規則 (rules)の規定に進反して運航されている間は担保されないとい う免責条項に関し,操縦士に対して安全規則 (safetyregulations)を公布 する権限を与えられている行政当局 (administration)はどこであるかとい うことについて問題が生じた。安全基準を公布する権限を与えられているの は,民間航空委員会 (CivilAeronautics Board)だ け で あ る と 機 休 保 険 証券で強調されていたために,同保険証険に基づき,被保険者が行政当局者 (administrator)は制限的規則 (restrictiveregulations)を公布するため に存在しているのではないと主張したが,不成功に終った。上級裁判所は,
政府が民間航空の行政当局者 (Administratorof Civq Aeronautics)と民 間航空局 (CivilAeronautics Administration)を相互に同じ意味で用いて おり,施行規則は,委員会(board)によって制定され,当局者 (admini‑ strator)によって実施されることを強調して,略式に主張を処理した。保 険証券において使用されている当局者 (administrator)という語は,委員 会 (board),当局 (authority)および当局者 (administrator)を含む航空 の統制をなすワシントンの機関を意味すると判断され,被保険者および保険 者は,安全規則およびその情報源に精通していると明確に推定され,当局者 (administrator)およぴ規定 (provisions)という文言は,保険契約当事 者により同じ意味で理解されていると判決された。保険者勝訴の判決が支持
(19)
され,免責条項は,規則規定に遮反した飛行に対して有効であるとされた。
(20)
また, ViscoFlying Co.対Hansen& Rowland, Inc.事件においては,
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航空機が政府の規則に進反して運航されている間を広範囲に免責する規定 は,特定の事実により損害填補を排除する効力はもっていないと判断され た。この機体保険証券は,被保険者の承諾を得て,被保険航空機が飛行中に 当時の民間航空局 (CivilAeronautics Administration)の規則に遣反して 運航されている間を免責としていた。被保険者が,事故発生時に,同航空機 が燃料クンクの蓋を処理するかまたは実際に求められた効果を満たすために―
示された同等の改修を要求している耐空性改善命令(airworthinessdirec‑ tive)に合致していなかったことを承知していない限り, 担保条件は適用さ れると判断された。裁判所は,被保険者勝訴の判決を確認して,被保険者の 航空機に使用されている燃料クンクの蓋が同型式の他の航空機に使用されて いる平均的な燃料クンクの蓋においてなされた処理に要求される効果を達成 しているという証拠に基づき,被保険者は同等の蓋の使用が耐空性改善命令 に遮反していないと考える資格を有していたという認定事実を支持した。
(21)
Hedges Enterprises, Inc.対 Fireman'sFund Ins. Co.事件の場合,
ニューヨークの下級裁判所の判決は,反対の批判を生む問題となったが,被 保険航空機が不法な目的のために使用されている間の損害を除外するという 保険証券の規定に基づいて,二つの別個の抗弁が検討された。本件では,被 保険者は,被保険航空機の物的な損害をオール・リスクス条件で担保し,被 保険者の同意を得て,航空機が一切の不法(unlawful)な目的のために使用 されている間に生じた減失または損傷を免責するという条件の保険証券に基 づき,偶発的に墜落した航空機の損傷に対する回復を求めた。裁判所は,法 律に遮反して操縦練習生によって操縦されていた間に,飛行機が乗客を収容 していた場合には,不法な利用が立証されるという抗弁の仮定的な有効性を 認識していたが,それにもかかわらず,事故の発生時に,飛行機に乗客が搭 乗していなかったという認定事実を確駆した。しかしながら,裁判所は,上 記の同じ免責条項に基づいて別個の抗弁を支持した。したがって, 裁 判 所 は,新規の所有者(原告)による飛行機の登録申請は少くとも事故以後二日 間提出されていなかったということを確認して,事故発生当時に, 飛 行 機
航空機機休保険約款に関する一考察(2)(羽原) (165)85 は,連邦および州の制定法ならびに連邦航空庁(FederalAviation Agency) の法規 (rulesand regulations)に従う同機の所有者によって正規の登録 をされずに運航されていたという点で,不法な目的のために使用されていた と判決された。裁判所は,たとえ飛行機登録の事情が墜落やその結果として 生じる損傷の原因でないとしても,この判決が得られなければならないと指
(22)
摘し,したがって,保険会社勝訴の判決を記録した。
(23)
(3) 墜落または衝突に因る火災 (firecaused by crash or collision)
(24)
Paul Foshee Dusting Co.対Byron事件が例として挙げられる。同事件 では,航空機の衝突または墜落に因って生じるかまたは起因する火災による 損害を除外する保険証券の規定に基づき,航空機の損害に対する填補が否認 された。ルイジアナの中間裁判所は,次のごとく指摘しており参照に値す る。すなわち,「墜落」(crash)という語は, Webster'sNew International Dictionaryの第2版で,航空における意味として,「降下中または着陸中に,
機体が損傷を受けるような方法で飛行機を落下させること」と定義されてい る。「衝突する」 (collide)という語は,「墜落すること」 (tocrash)を意味 している。「衝突」 (collision)は,「共に打つこと」 (strikingtogether)ま たは「対して打つこと」 (strikingagainst)である。保険証券を解釈する場 合,この「衝突」の定義を用いてきた。免責条項の正確な字句は, 「衝突ま たは墜落によって生ずるかまたは起因する」 (causedby or resulting from collision or crash)となっている。「起因する」 (resultingfrom)という語 句の使用は,免責条項の意味をかなり強めている。一般人は,この火災は,墜 落に起因しているというであろう。辞書は, resultを帰結 (consequence), 結果 (effect),または結論 (conclusion)を意味すると定義していると考え
られる。なにかが,結果 (result)であると言う時には,人はそれがある過 程または一連のでき事の終了 (termination)または結果 (effect)であるこ
とを意味していると考えられる。
(25)
(4) 地上走行中 (taxiing)
ある特定の状況下において,少くとも,地上走行中の航空機の減失または
86(166) 第 31巻 第
損侮を明示的に免責している保険証券が,担保を否認していないと解釈され た事例としては, NationalIns. Underwriters対 Walker事件が挙げられ
(26)
るが, PecosVally Flying Service, Inc.対 Brayley事件においては,機 休保険証券に地上走行中被むった損害に対する高額の免責金額規定が含まれ ている場合に, 自由な解釈原則が適用されている。保険証券は,「地上走行」
を「航空機が実際に離陸滑走 (takingoff run)を行うか,または着陸滑走 (landing run)を終了する目的で移動中 (inmotion)である以外の,地面 または水面を自力またはそれから生じる推力により移動している間」と定義 していた。また,当事者は,次のように事実を明記している。すなわち,「被 保険航空機は,二つの主脚と一つの飾脚から成る三つの着陸装置を持ってい た。同機は,空港に駐機されていた。免許保持操縦士Mは,保険証券によっ て認められており,同機に乗り込んだ。同操縦士の目的は,離陸するために 地上走行し,それから飛行を継続することであった。同機は,数日の雨によ って軟化した平坦な芝地に駐機されていた。操縦士Mは,ェンジンを始動し,
暖機運転を行った。 Mは,軟弱な地面の上を走行することは困難であると予 想し,地上走行中補助するために各翼端に空港の従業員を付けた。 Mはスロ
ットルによって出力を作動させ,同機は3, 4フィート前進した。 Mは,そ の時に彼の弟のJを見て手を振ったが,この合図を理解できず,同機を完全 に停止させた。 Jは,同機が泥淳んだ場所を避けるために右へ方向を変える よう指示を与えた。 Mはプレーキを綬るめ,同機を地上走行させる目的でス ロットルを前方へ進めることにより出力を作動させた。出力の作動によっ て,前輪に下向きの力が加えられ,その結果汚れ溜め跡の地面に減り込み,
プロペラと前輪装置の部品に総額1388.25ドルの損害を被むった。推力が働 いたとき,航空機は,認知できるほどには地面に沿って前進していなかった が,増大した推力の勢いおよび結果として航空機に生じた下向きの力によ り,前輸が地面に減り込み,真下に約16ィンチの穴をあけ,そのためプロペ ラが地面に当った」と述べた。
再審理裁判所は,以下のとおり記述した。「この事件においては,操縦士
航空機機体保険約款に関する一考察(2)(羽原) (167)87 が地上走行することを意図しており,地上走行することは,操縦士の要望で あったが,停止した後,飛行機は,推力によってその主要な部力を地面に減 り込ませ,古い汚れ溜めの覆いを突き破ったことを別にすれば,移動してい なかった。これは,地上走行とは考えられないといえる。したがって,事実
(27)
審理判事によりもたらされた結論に同意する」とされた。
(28)
(5) 移動中の航空機 (aircraftin motion)
移動中の航空機の損害等を除外する保険証券の規定は,特定の事実のもと での損害填補を免除することには効力をもっていないとされるが, Dillard 対 ContinentalIns. Co.事昇
I )
こよれば,被保険者は,「航空機が自力また は反動力 (resultingmomentum)により移動している間の火災または爆 発」に関する免責条項を含むォール・リスクス条件の保険証券に基づいて損 害を填補される権利があると判断された。この場合,離陸後短時間で,被保 険者は,明らかに電気系統の欠陥によって生じた航空機内の煙に気づいた。そして,安全な着陸を達成して約二分後,火災が機体全体を焼き尽した。
裁判所は,航空機が静止するまで損害が発生しておらず,火災の原因(電 気系統の機能不全)が飛行中に発生したという決定的な証拠がないので,こ の損害は,移動中の航空機に固有の危険に因って生じたのではないと結論を 下した。
(30)
(6) 特別の許可を必要とする方式による航空機の連航
裁判所が,地上であると否とを問わず, FAAから特別の許可を必要とす る方式による被保険航空機の運航を保険証券によって除外された危険として
(31)
有効であるとした判例として, Jarman対 ExportIns. Co.事件が挙げら れる。
本件では,空輸の許可が被保険航空機に対して得られ,許可が出された当 該飛行中に同機が墜落した場合に,かかる事故に対する担保を否認する免責 条項が適用された。裁判所は,航空機が特別の許可を必要とする条件に基づ いて運航されており,当該運航は,保険者が問題の免責条項によって特別に 保護される付加的危険であり,当面の事実に適用されるこのような免責条項
第 31 巻 第 2 号 は,曖味ではないことを確認した。
(32)
(7) 格納庫外に置かれた航空機(屋外駐機) (unhangered aircraft) 格納庫多に置かれているときを除き,暴風損害を担保する機体保険証券 が,特定の損害 (particularloss)を担保していないと解釈された事例とし
(33)
て, NationalFire Ins. Co.対 McCoy事件が挙げられる。
本件では,裁判所は,担保に関する書面による保険証券の契約当事者の相 互の誤りの明白で有力な証拠または免責条項に反しない過失から被保険者が 免れているという証拠が欠如しているため,保険証券を変更することを拒否 し,航空機が暴風によって破壊されたときに,格納庫に収納されていなかっ たので担保は否認された。
(8) 被保険者による被保険航空機の販売または被保険利益の移転以後に
(34)
発生した損害
被保険者の同意なくして,被保険者の航空機における被保険利益の移転に 関する事例および被保険者の航空機の販売または条件付販売に関する事例に つき,数少ない判例において,裁判所は,保険契約の終了に関係する航空機 機体保険約款の規定を担保条件に有利なように解釈してきた。
Aeroline Flight Service, Inc.対 InsuranceCo. of North America
(35)
事件で,アイオワ州の最高裁判所は,飛行クラブが被保険者の飛行機のうち 二機を試用し,それからそれらのうちー機を購入する予定であった事例にお いて,裁判所は,次のように指摘した。
飛行機は,明らかに販売宣伝における使用に関する通知事項(declaration) の範囲内で使用されていた。一般人には,試用する飛行クラプに飛行機を預 けることが,保険を無効にするような法律上の占有権放棄(surrenderof the legal possession)であると考えるのは正当と思われない。法律上の占有 権放棄ということばは,保険契約が終了する個別の状況を構成するためにそ れ単独には決して区別されるものではない。この語句は,付保財産が販売に より処分されたときまたは占有権が販売により引渡されたときに,保険契約 が終了することを意味する他の規定により一層理論的に結び付けられると思
航空機機体保険約款に関する一考察(2)(羽原) (169)89 われる。法律上の占有という語が用いられた状況および方法によって,さま ざまな意味が考えられる。この語は,必ずしも保管 (custody)と同義語で はない。結局,被告により決定されるこの語は,販売または販売契約に言及 しているとして解釈されねばならないことになる。したがって,原告は,そ れに関する保険担保を終了するためにセスナ 172のかかる法律上の占有を放 棄していなかったということになる。
(9) 被保険者がもはや単独または無条件の所有者ではなくなった以後に
(39)
発生した損害
Hedges Enterprises, Inc.対 Fireman'sFund Ins. Co.事鼻晶よび
(38)
Newman対 NorthRiver Ins. Co.事件の二つの判例においては,機体保 険証券に基づき,被保険者は単独または無条件の被保険航空機の所有者であ るため,被保険者が無条件または単独の所有者でない限り担保を無効とする 保険証券の規定は適用されないという結論が,提示された特定の事実により 導き出された。
一方,他の判例では,被保険者が無条件または単独の航空機の所有者でな い限り担保を無効にするという機体保険証券の規定が,定められた状況にお ける保険担保を否認するために適用できると判断または認定された事例があ
匁
? (40)
(10) 保険証券による担保から除外された受寄者,賃惜人および類似の者 硯代の航空機機体保険証券または複合保険証券 (combined policy)の機 体保険部分には,機体保険が,あらゆる受寄者,賃借人および類似の者の利 益に寄与するものではないという規定が含まれている場合がある。いくつか の訴訟事件の激しい論争は,事実審理および上訴の両段階において,このよ うな免責条項から生じている。一般化が確実であるとされる範囲において,
裁判所がかかる免責条項を解釈する場合に問題が起っており,事件の調停は 容易ではないといえる。
ハグランドとアーサー (Hagglund& Arther)は,この点について,「現 在の航空産業における主要な問題の一つは,典型的な航空保険証券において
90(170) 第 31巻 第 2 号
見出される賃借人操縦士免責条項 (renterpilot exclusion)のさまざまな 形式をいかに取り扱うかである。多くの不注意な操縦士は,自分自身が事故 に関与してはじめて航空機所有者の保険証券では全部または一部分を担保さ
(41)
れていないことを発見するのである」と指摘している。.
大部分の航空保険証券の印刷書式は,賃借人操縦士が航空機に損害を与え た場合,保険者による代位訴訟から同操縦士を保護するために,賠償責任の 担保も機体の担保のいずれをも有しないように作成されている。上述したよ うに,航空保険証券は,決して完全に標準化されているとはいえないが,賃 借人操縦士は通常被保険者一括条項 (omnibusclause)の範囲から一切の 賃貸契約 (rentalagreement)の条件に基づいて航空機を運航する者を除外 する規定によって,賠償責任を免除されている。また,「条件」 (conditions) の項は,保険証券によって提供された保険は,航空機の損害に対して責任を 負う一切の運送人または受寄者の利益には直接・間接に寄与しないという旨 の機体保険にのみ適用される条項を含んでいる場合がある。他の保険証券で は,同保険証券によって提供された担保は,航空機がそれに対して記名被保 険者が直接・間接に第三者に代金の請求を行う目的のために使用されている 間には適用されないと明記することによって同じ結果を生じている。
他に類のないこの種の規定は,賃借人操縦士を担保から除外するという意 図において比較的明確で,あいまいさがないといえる。
機休保険の判例のなかには,受寄者,賃借人およぴ類似の者に関する免責 条項が,有効とされ,かかる者は保険証券に基づいて付保されないと判断さ れた事例もある。
いくぶん異なるが,修正された保険証券の規定について反対の結果に達し たのは,賃貸契約に基づいて航空機を運航する者が保険に付されていると結 論されたミシガン州の二つの判例である。
すなわち,保険会社は,かかる者が飛行機を運航している(滑走路まで地 上走行している)間に,同機は緑石にぶつかって,機首を突いてひっくり返 り,損害を受けた事件では,一つの結果に対して被保険所有者に支払った後
航空機機体保険約款に関する一考察(2)(羽原) (171)91 に被代位者として,損害を被むった当該被保険者より航空機を賃貸している 者から損害填補を受けることはできないとされた。
こうした判例は,保険証券が全体として検討されねばならず,「被保険者」
の定義を修正し,賃借人操縦士にまで担保を拡張しているタイプ打ちの部分 が有効とされなければならないことを強調していた。
保険証券の担保範囲が「航空機がリース契約を条件とする間」には適用さ れないものとするという免責条項は,当然航空機が損傷を受けたときに(着 陸を試みることによって,飛行機が雪の吹きだまりに衝突した), そ れ に 基 づいて運航されていた取り決めが,たとえ,航空機が事前にリースを条件と
していたとしても, リース契約が双方の同意によって終了した後になされた 取り決めであることが確認された場合には適用されない。問題の飛行に対し て飛行機の使用に対する責任がないことが了解されていたことは明らかであ る。
訴答および関連する法手続上の観点により決定されたフロリダの二つの判 例では,破損航空機の賃貸の時間および場所において航空機に関する機体保 険の担保条件には,その自己の単純過失によって航空機を損傷した操縦士,
賃借人,受寄者に対して保険を付けるというフロリダの慣習が存在し,航空 機の賃貸契約の当事者は,このような業界の慣習に依存することを意図して いたことにより保険金の請求が提示された。
(11) 戦争危険〔戦争 (war),内乱 (civilwar),謀反 (rebellion),革 命 (revolution),反乱 (insurrection), 捕 獲 (capture), 拿 捕
(42)
(seizure),騒擾 (riot),暴動(civilcommotion)等,免責条項〕
戦争危険等の免責条項について文献でしばしば注釈されたり解説されてい る主要な判例には, Pan American World Airways, Inc. 対 Aetna
(43)
Casualty & Surety Co.事件に関する第2巡回控訴裁判所の審査委員会に よる非常に豊富な内容の徹底的な分析に基づく見解がある。本件の概要は以 下のとおりである。
プルュセルのアムステルダムの仲継地からニューヨークまでの定期便飛行
第 31 巻 第 2 号
のため,航空機が離陸した後ロンドン上空における乗っ取りに引き続いて,
カイロで乗客が避難して以後,バレスチナ解放人民戦線 (PopularFront for the Liberation of Palestine.以下 PFLPと略称する)により爆発物
を用いて破壊されたパン・アメリカン航空のボーイング747型機の損害に対 し,オール・リスクス担保の保険引受業者 (allrisk insurer)は 責 任 を 負 うと判断された。すなわち,具体的には,空中での航空機乗っ取り後,同定 期航空会社は,乗っ取り犯人が爆破の専門家と爆薬を乗せるため,ベイルー トヘの飛行を強要された。それ以後続いて PFLPの管理下で, 同航空会社 は航空機をカイロまで航行させ,そこで乗客が避難した後に同機は完全に破 壊された。責任は次のように判決され,上訴の結果確認されたが,ォール・
リスクス担保の保険引受業者は,次の免責条項を主張した。
本保険証券は,次の事由に因るかまたは起因する滅失または損傷に妨げら れることなく,同保険証券において反するものを一切担保しない。
1. 被保険財産の捕獲,拿捕もしくは占有奪取または前記のいずれかが徴 用またはその他の手段によってなされたか否か,また平和時か戦争時を 問わず,合法・非合法にかかわらず,一切の軍事力もしくは奪取した権 力による同財産の損傷または破壊。
2. 宣戦の有無を問わず,戦争,内乱,革命,謀反,反乱,または軍事的 行動。
3. 騒擾,暴動。
連邦控訴裁判所は, contraproferentemの原則を適用した。すなわち,
保険会社が免責条項によって利益を得るためには,保険会社はそれを有利に 解釈することが,少くとも一つの関連する免責条項の唯一の正当な解釈であ ることを立証しなければならない。つまり,損害が免責とされている正当な 解釈を証明するだけでは不十分である。裁判所は,免責条項の意味を詳細に 検討し,免責条項のいずれもが当該事例の特定の事実に適用できないと結論 した。裁判所は,航空機の乗っ取りは,保険が引受けられた時点では認知さ れた危険であり,保険会社は航空機乗っ取りを保険証券により特定の免責条