東 日 本 大 震 災 か ら の 商 業 復 興 に お け る 仮 設 商 店 街 の 果 た す 役 割
岩 手 県 沿 岸 南 部 3 市 を 対 象 と し て
The Role of the temporary mall in the Commercial revival from East Japan Great Earthquake Disaster
A case of 3 city in south coast of Iwate prefecture
平 成 2 5 年 度 修 士 論 文
首 都 大 学 東 京 大 学 院 都 市 環 境 科 学 研 究 科 都 市 シ ス テ ム 科 学 域 1 2 8 8 7 4 1 4 寺 澤 草 太 / 指 導 教 員 : 饗 庭 伸
目次
第1章 序論
1-1. 研究背景 1-2. 用語の定義 1-3. 研究目的 1-4. 研究方法 1-5. 先行研究
1-6. 本研究の位置付け 1-7. 調査対象都市概要 1-8. 仮設商店街の立地状況
第 2 章 行政による位置付けと中小機構の取り組み
2-1. 本章の目的
2-2. 復興ビジョンにおける商業の位置付け 2-2.1. 釜石市における商業復興ビジョン 2-2.2. 大船渡市における商業復興ビジョン 2-2.3. 陸前高田市における商業復興ビジョン 2-3. 中小機構による被災中小企業支援策
2-3.1. 仮設店舗整備概要
2-3.2. 店舗復旧・整備に対する資金支援策 2-4. 小結
第3章 岩手県沿岸南部3市における仮設商店街動向
3-1. 本章の目的と構成 3-1.1. 本章の目的 3-1.2. 調査の概要 3-2. 環境整備
3-2.1. 土地取得 3-2.2. ハード整備 3-3. 運営形態
3-4. テナントの動き 3-5. 今後の活動意向 3-6. 小結
第4章 JR 大船渡駅周辺地区における仮設店舗群動向
4-1. 本章の目的と構成 4-1.1. 本章の目的 4-1.2. 調査の概要
4-2. 仮設店舗入居者動向パターンごとの分析 4-2.1. 震災前の店舗立地状況
4-2.2. 仮設店舗入居以前の活動 4-2.3. 仮設店舗入居後の動向 4-3. 出店者活動の詳細実態 4-3.1. 支援について 4-3.2. 経営状況について 4-3.3. 商店街活動への意見 4-4. 小結
第5章 商業復興における仮設商店街に関する考察
5-1. 本章の目的と構成 5-1.1. 本章の目的 5-1.2. 研究の構成
5-2. 仮設期における商業環境整備 5-2.1. 仮設店舗整備
5-2.2. 資金援助
5-3. 仮設商店街と出店者の関わり
5-4. 商業活動実態と復興ビジョンとの関わり
第6章 結論
6-1. 各章の整理 6-2. 考察と今後の展望
参考資料一覧
資料編
1. 津波復興拠点整備事業について 2. ヒアリング調査結果
2-1. 3章におけるヒアリング調査結果 2-2. 4章におけるヒアリング調査結果
第1章 序論
1-1. 研究背景 1-2. 用語の定義 1-3. 研究目的 1-4. 研究方法 1-5. 先行研究
1-6. 本研究の位置付け 1-7. 調査対象都市概要 1-8. 仮設商店街の立地状況
1-1. 研究背景
2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災では、東北地方から関東地方の広範囲に おいて甚大な被害を受け、日本において観測史上最大の大規模自然災害となった。被 災地では、震災直後より多方面で復旧活動に取り組み、3年が経とうとしている現在 では復興事業が本格的に目に見えた形で始まろうとしている。復旧・復興へ向けて復 興事業は住宅整備が優先的に行われているが、住宅復興のみでなく商業復興も大きな 課題となっている。このような課題のなか、独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下、
中小機構)により、復興事業として仮設施設整備事業が被災6県で実行され、平成 25 年 9 月末時点において、建設中も含め被災地全体で 542 ヶ所・3336 区画もの仮設施 設が整備された。また本事業により、多くの被災地で仮設商店街や仮設飲食店街と呼 ばれる仮設店舗群が形成されており、復興へ向けた取り組みの一つとして大きな注目 を集めている。
以上のように被災地に建設された多くの仮設店舗は、震災による被害を受けた事業 者が復興へ早期に動き出すきっかけの場として機能しているだけでなく、商業復興を 先導する役割を果たしていると考える。また、その先にある本設営業再開は、商業復 興のみでなく今後の雇用確保など事業者だけでなく一般市民の生活再建にもつながる ため、復興の流れの基点となる仮設店舗での営業は、本設営業に向けた母体づくりの 準備期間となり、住民の生活に影響を与える重要な機能となりうるだろう。さらに現 状として、商店街形態を維持したもの・単独再開したものなど形態の差異や、事業者 もさまざま状況下に置かれていることから、どのような属性かによって本設へ向けて 大きく影響してくるだろう。加えて、被災地の多くは震災前より商店街の衰退が指摘 されている地方都市が多く、その観点からも商業再編を行う機会として仮設店舗での 営業は大きな役割を果たしていると考えられる。
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1-2. 用語の定義
本研究において、調査対象とする仮設店舗は原則として中小機構による仮設施設整 備事業によって整備されたものに限定する。
関連用語の定義は以下の通りとする。
仮設期 :仮設店舗での営業期間
仮設商店街 :中小機構による仮設施設整備事業において整備された仮設店舗におい て、複数の小売業やサービス業、飲食店等が入居・集積しており、且 つ団体名が付いているもの
個別仮設店舗:中小機構による仮設施設整備事業において整備された仮設店舗におい て、少数の店舗が集積しており、且つ上記の仮設商店街ではないもの 仮設店舗群 :上記の仮設商店街・個別仮設店舗が近接して立地している場所
1-3. 研究目的
本研究では、多くの被災地に形成された仮設商店街・個別仮設店舗、および商業復 興活動に大きく関わっている行政・中小機構の公共機関を対象として、各々の震災後 からの動向を把握した上で以下の 3 点を探ることを目的とする。
①仮設商店街・個別仮設店舗およびそれらに入居している事業者の震災後から現在迄 の動向、また今後の営業再開意向を把握することにより、団体としての動向・個人 としての動向を整理し、それらの背景にある要因を探る。
②行政・中小機構による商業復興の取り組みや、復興ビジョンにおける商業復興の方 針を把握・整理する。
③仮設商店街や事業者、行政といった商業復興に関わる各主体間の相関を検討すると ともに、仮設商店街が商業復興において果たす役割を検討する。
東日本大震災において初めて多くの被災地に形成されることとなった仮設商店街は、
商業復興において重要な役割を果たしていると考える。仮設商店街という新たな復興 活動モデルが、商業復興にいかに寄与しているか検討する。
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1-4. 研究方法
本研究の構成は図 1-4 の通りである。
本研究での大きな目的となる、商業復興における仮設商店街の果たす役割に関する 考察は第5章で行う。それに先立って第1章において、調査対象地の被害状況および 対象仮設商店街の立地関係を現地調査・文献調査より整理する。第 2 章では、行政に よる復興ビジョンにおける商業の位置付け、さらに中小機構による仮設施設整備事業 を始めとした被災中小企業者支援策を整理する。第3章では、研究対象地となる岩手 県沿岸南部3市(釜石市、大船渡市、陸前高田市)で活動している仮設商店街代表者 へのヒアリング調査より、仮設商店街の構成や形成プロセスなどの活動実態を把握し 整理する。第4章では、商業復興の動きをより詳細に把握するため、JR 大船渡駅周辺 地区における仮設店舗入居者に着目し、ヒアリング調査より震災直後から現在までの 動向および本設へ向けた意向を把握し、仮設店舗入居者の活動実態を整理する。以上 をもとに第5章では、第3・4章で把握した仮設商店街と仮設店舗入居者の関わり方 とそれぞれの動向より仮設商店街が仮設期において果たす役割を検討する。さらに、
第 2 章の行政や中小機構による商業復興活動と、仮設商店街と仮設店舗入居者の活動 実態をもとに、今後の商業空間に必要となる要素を検討する。
なお、被災地において仮設商店街は市内全体に点在しているが、本研究では同一の エリアに多数の仮設商店街・仮設店舗入居者が存在している点を考慮して、中心市街 地に立地している仮設商店街に対象を絞って調査を行うこととする。
第1章 序論 背景と目的 研究方法
既往研究・本研究の位置づけ 調査対象地概要
第5章 商業復興における仮設商店街の果たす役割に関する考察 第6章 結論
第2章 行政による位置付けと中小機構の取り組み 復興計画
中小機構による中小企業支援策
第3章 岩手県沿岸南部3市に おける仮設商店街動向
第4章 JR 大船渡駅周辺地区に おける仮設店舗群動向
図 1-4 研究構成
1-5. 先行研究
東日本大震災以前での日本における震災復興に関する研究論文において、仮設建物 に焦点を当てたものとしては主に仮設住宅に着目したものが多く、東日本大震災にお いて初めて仮設店舗・仮設商店街に対して多くの研究がされることとなった。商業復 興に着目したものは、阪神淡路大震災からの復興活動について多く研究されているが、
それ以降の能登半島沖地震等では研究論文としてまとめられたものはない。
よって以下において、阪神淡路大震災・東日本大震災ごとの商業復興・仮設店舗に 関する研究を整理する。
阪神淡路大震災に関する研究は、①商業復興の動向を全体的視点で検討したもの、
②復興事業に関するものに分類される。
①商業復興の動向を全体的視点で検討
蘭ら (1999) や吉田ら (2004) は、複数の被災商店街を対象とし、震災直後からの動 向や現状を比較・分析し課題点を明らかにしている。蘭らは主に業種別の動向、吉田 らは事業手法別・販売方式別での動向を分析し、それら要素ごとによる差異を明らか にしている。
②復興事業に関して
大谷ら (2003) や安藤ら (2003) は、研究対象を一つのエリアに絞り研究を行っている。
大谷らは、建物再建や土地所有権の動向および経営状況の変化を追跡調査し、自力復 興を強いられた飲食店街の実態・課題点を明らかにしている。一方、安藤らは大規模 再開発事業が指定された地区を対象に、経営・テナント動向および事業に対する経営 者の意向を把握し、復興事業としての再開発事業の課題点を検討している。
東日本大震災での商業復興に関する研究は、本設再開した店舗が少ないこともあり 本設までの過程に言及した研究論文は無いものの、それに至るまでの活動として仮設 店舗・仮設商店街に着目している。それらの研究は、目的ごとに①仮設商店街形成過 程に関するもの、②仮設商店街を構成する諸要素に関するもの、③仮設商店街の意義 に関するものに分類される。
①仮設商店街形成過程に関して
穂坂ら (2013) らによる陸前高田市における一連の研究では、市内の仮設店舗群形成 過程を把握し、仮設店舗整備段階での課題点や特徴点を明らかにしている。
②仮設商店街を構成する諸要素に関して
浦田ら (2013) による 49 仮設商店街を対象とした一連の研究では、仮設商店街形成 過程を把握する中で、整備段階における事業者関与関係、空間形成要素の抽出、運営 要素の検討を行い、全体的視点で仮設商店街の現状把握を行っている。
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③仮設商店街の意義に関して
塩田ら (2013) は、仮設商店街の運営主体および出店者へのヒアリング調査より、仮 設商店街開設動機や活動実態を把握し、復興過程における仮設商店街が担う役割を検 討している。また近藤ら (2013) は、コミュニティ形成の場として仮設商店街に着目し、
イベントやまちづくり検討会などの活動を通じて仮設商店街の役割を考察している。
既往研究一覧
阪神淡路大震災
①商業復興の動向を全体的視点で検討したもの
・蘭一喜 , 塚越功「神戸市の近隣商業の復興状況ー被災地域商店街の現況報告ー」地域安全学会梗概集 , pp.142-145, 1999.11
・吉田明弘 , 大西一嘉「阪神大震災における小売市場の復興過程に関する研究」日本建築学会大会学術講演梗概集 , 2004.8
②復興事業に関するもの
・大谷光一 , 角野幸博「飲食系商店街の復興の過程と課題―神戸市東門街における阪神・淡路大震災の復興過程を事例 にー」日本建築学科計画系論文集 , No.574 pp.99-104,2003.12
・安藤元夫 , 塩崎賢明 , 児玉善郎 , 浅野弥三一 , 竹山清明「商業機能からみた新長田駅南地区・大規模復興再開発事業に 関する研究」日本建築学会計画系論文集 ,564 99.243-250,2003.2
東日本大震災
①仮設商店街形成過程に関するもの
・穂坂彩乃 , 田村誠邦 , 織田真実 , 山本俊哉「陸前高田市における仮設店舗群の形成過程の特徴 - 津波被災地における仮 設店舗群に関する研究 (1)-」日本建築学会大会学術講演梗概集 ,2013.8
・織田真実 , 穂坂彩乃 , 田村誠邦 , 山本俊哉「陸前高田市における共同仮設店舗の整備課題とその対応 - 津波被災地にお ける仮設店舗群に関する研究 (2)-」日本建築学会大会学術講演梗概集 ,2013.8
②仮設商店街を構成する諸要素に関するもの
・浦田裕彦 , 若林可奈 , 千葉美幸「仮設商店街の形成過程における事業者関与の在り方について 東日本大震災被災地に おける 49 仮設商店街の分析を通じて - その 1」日本建築学会大会学術講演梗概集 ,2013.8
・千葉美幸 , 足立理恵 , 浦田裕彦 , 若林可奈「仮設商店街の空間形成要素と魅力創出の工夫 東日本大震災被災地におけ る 49 仮設商店街の分析を通じて - その 2」日本建築学会大会学術講演梗概集 ,2013.8
・若林可奈 , 浦田裕彦 , 千葉美幸「7つの運営要素に基づく仮設商店街の類型化 東日本大震災被災地における 49 仮設 商店街の分析を通じて - その3」日本建築学会大会学術講演梗概集 ,2013.8
③仮設商店街の意義に関するもの
・塩田卓也 , 川島和彦 , 池田智 , 吉野祐太 , 真部尚美「被災地の復興過程における仮設商店街の役割に関する研究ー宮城 県石巻市「石巻まちなか復興マルシェ」を対象として」平成 24 年度日本大学理工学部学術講演会論文集
・近藤将輝 , 脇田祥尚 , 竹内泰 , 寺川政司 , 森川真嗣 , 相澤啓太 , 中尾謙太 , 渡辺尚見「震災復興における仮設商店街の
1-6. 本研究の位置付け
前節より、阪神淡路大震災では本設の商業空間形成の過程、東日本大震災では仮設 期における商業空間形成の過程を追い、そこでの経営状況やテナントの入れ替えなど 商業の動向を把握している。また、その中で阪神淡路大震災では事業の有無による差、
東日本大震災では仮設商店街の構成諸要素、仮設期における役割を分析している。課 題点として、先行研究では仮設期・本設期を横断した視点が不足している点が挙げら れる。商業復興へ向けた取り組みの現状として、仮設期に着目することは重要である。
しかし震災から3年が経とうとしている現在、商業復興の通過点として位置付け、さ らに本設へ向けた検討を行うことが重要になると考える。
そこで本研究では、仮設商店街・個別仮設店舗およびそれらへの出店者へヒアリン グ調査を行うことで実態を詳細把握し、その結果をもとに行政による復興ビジョンと 商業の実状の相関を検討することで、本設と仮設を横断する視点をもつこととする。
さらに、東日本大震災で初めて実施された仮設施設整備事業の評価を行うことで、仮 設期の商業空間整備の必要性と本事業の課題点を検討することとする。
以上のような視点より、本震災で形成された仮設商店街という新たな商業復興モデ ルの知見を得ることに本研究の意義があると考える。
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1-7. 調査対象都市概要
本研究の調査対象地である釜石市・大船渡市・陸前高田市は、岩手県沿岸南部に位 置し隣接している。各市の東日本大震災被害状況は表 1-7-1 の通りである。
岩手県沿岸南部は、岩手県の被災地の中で浸水域が最も広く、その中でも3市は浸 水範囲が最も広い(表 1-7-2)。また、岩手県沿岸南部は沿岸北部に比べ中小企業の被 害状況・復旧状況が最も遅く、かつ仮設店舗での営業再開割合は北部よりも高いこと が県の被災事業者復興状況調査で分かっている。以上のことから、岩手県において震 災による被害が最も大きく、中小企業者の多くが仮設店舗で営業している岩手県沿岸 南部3市を対象として調査を行うこととする。
釜石市 大船渡市 陸前高田市
表 1-7-2 東日本大震災 市町村別津波浸水範囲面積 ( 暫定値)
表 1-7-1 調査対象地被害状況
最も北に位置する釜石市は、人口約 37000 人(平成 25 年 6 月末現在)であり、水 産業が盛んであるが製鉄所の企業城下町としても有名である。
当市は、水産業の繁栄とともに釜石湾の周囲にある東部地区を中心として徐々に西 へ進むように中心市街地が形成されていき、後に製鉄業も栄えるとより西側へ市街地 が形成された。東部地区は、震災前より市役所等の公共施設や商店街などが集約され ている地区であり、古くから継続して当市の政治経済の中心地として機能してきた。
東日本大震災では、その市の中枢機能を担ってきた東部地区は大きな被害を受けた が、次節の図 1-8 からも分かるように残存する建物は多く、特に後背地ではわずかな 浸水にとどまっている。
大船渡市は釜石市の南側に隣接する人口約 39000 人(平成 25 年 6 月末現在)の市 である。当市は典型的なリアス式海岸を持ち、釜石市と同様水産業が盛んであり、岩 手県最大規模の大船渡湾を有している。その他にもセメント工場や貿易など工業も盛 んである。
当市は、大正期は市北側に隣接する盛町が中心市街地であったが、水産業が盛んに なるとともに、大船渡湾側への移動が起こり周辺地区が徐々に都市化され、現在の JR 大船渡駅を中心とした市最大の中心市街地となった。
東日本大震災において、新市街地である JR 大船渡駅周辺地区では JR 大船渡駅を中 心として同心円的に被害を受け、当地区に形成された商店街は壊滅的な被害を受ける こととなった。しかし、釜石市同様に後背地である住宅地は残存するものも多い。
陸前高田市は、宮城県との県境にある人口約 21000 人(平成 25 年 6 月末現在)の 市である。水産業が主産業であるが、海水浴場など観光業も盛んである。
陸前高田駅北部に位置する街道沿いに形成された宿場町を起源として発展を遂げ、
震災前は街道沿いに商店街が形成され、市庁舎や学校等の公共施設も立地していた。
その後、観光業の繁栄や人口増加を要因として海側へも市街地が形成されることとな り、国道 45 号線沿いにロードサイド型の大型商業施設が多く立地していた。
東日本大震災では、平地が広がるため3市の中で最も大きな被害を受けることとな り、中心市街地を含めた市の広範囲が流失し、市の中枢機能が麻痺することとなった。
参考文献
・釜石市「釜石市復興まちづくり基本計画 スクラムかまいし復興プラン」2011.12.22
・大船渡市「東日本大震災による被害状況等について」2013.9.30
・陸前高田市「東日本大震災による本市の災害状況」2012.10.23
・国土地理院「津波浸水域の土地利用別面積(暫定値)について」2011.3.28
・岩手県復興局産業再生課「平成 24 年【第 1 回】被災事業所復興状況調査結果報告書」2012.3.27
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1-8. 仮設商店街の立地状況
以上の3市より中心市街地に立地している、以下の 10 仮設商店街を調査対象とする。
釜石市 :復興天神 15 商店街(以下、天神 15 商店街)・青葉公園商店街・釜石は まゆり飲食店街(以下、はまゆり飲食店街)
大船渡市 :おおふなと夢商店街(以下、夢商店街)・大船渡屋台村(以下、屋台村)・
大船渡プレハブ横丁(以下、プレハブ横丁)。
陸前高田市:陸前高田未来商店街(以下、未来商店街)・高田大隅つどいの丘商店街(以 下、つどいの丘商店街)・栃ヶ沢ベース・陸前高田元気会(以下、元気会)
調査対象仮設商店街の立地は図 1-8 の通りとなる。以下、各市ごとの仮設商店街の 立地状況を特徴点とともに整理する。
○釜石市:浸水域周縁部+公共用地立地
釜石市の対象仮設商店街である3仮設商店街は、震災前に商店街が立地していた東 部地区の浸水域周縁部において公共用地内に立地している。青葉公園商店街は、神社 の境内内にあり震災前の商店街が形成されていた道路沿いのエリアに立地している。
天神 15 商店街は、仮設住宅と同じ敷地内にあり、市庁舎など公共施設と近接し国道 45 号にも近く立地している。はまゆり商店街は、他の2仮設商店街と離れた場所の公 園内に立地している。釜石駅に最も近く周辺には住宅地が無く大型商業施設が数店舗 立地している商業地区となっている。
○大船渡市:浸水域+密集立地
大船渡市の対象仮設商店街は、他市と異なり浸水域内に立地しており、JR 大船渡線 と国道 45 号に挟まれたエリアにおいて近接して3つの仮設商店街が立地している。飲 食業が主となっている屋台村・プレハブ横丁は隣接する土地に立地しているが、小売 業やサービス業が主となる夢商店街は、北側へ少し離れて立地している。JR 大船渡線 東側は震災前の商店街立地していた場所であり、震災前後で商業空間の移動は小さい ことが分かるが、仮設住宅が山側に立地しているため他市と比べ仮設住宅と最も離れ ている。また、このエリアは震災後最も早く建物が建ち始め、現在は大型商業施設や 会社事務所などが建物再建を行い、密集している立地している。
○陸前高田市:幹線道路沿道+分散立地
陸前高田市は市街地が広範囲で被害を受けたこともあり、仮設商店街は平地に立地 できず住宅地とともに後背地へ広範囲に点在している。また、当市の対象仮設商店街は、
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釜石市大船渡市
釜石はまゆり飲食店街青葉公園商店街 復興天神 15 商店街
0 500m
0 500m
0 100m 0 100m 0 100m
おおふなと夢商店街 大船渡屋台村 大船渡プレハブ横丁
図 1-8 調査対象地別 仮設商店街立地図
仮設商店街 仮設住宅 商業施設 公共施設 浸水域
陸前高田市
陸前高田未来商店街
高田大隅つどいの丘商店街
栃ヶ沢ベース
陸前高田元気会
0 500m
0 100m 0 100m 0 100m
0 100m
道 340 号沿いにあり、周辺には震災直後から大型商業施設や金融機関などがまとまっ て立地している。つどいの丘商店街は、震災後より交通量の多くなった道路沿いに立 地し、その道路沿いには仮設住宅が複数立地している。栃ヶ沢ベースは国道 340 号沿 いにあり、2つの仮設住宅に近接している。元気会は、他の仮設商店街が内陸方面へ 通じる道路沿いに立地しているのに対し、唯一東側の大船渡市方面に通じる国道 45 号 沿いに立地している。
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第2章 行政による位置付けと 中小機構の取り組み
2-1. 本章の目的
2-2. 復興ビジョンにおける商業の位置付け 2-2.1. 釜石市における商業復興ビジョン 2-2.2. 大船渡市における商業復興ビジョン 2-2.3. 陸前高田市における商業復興ビジョン 2-3. 中小機構による被災中小企業支援策
2-3.1. 仮設店舗整備概要
2-3.2. 店舗復旧・整備に対する資金支援策 2-4. 小結
2-1. 本章の目的
本章では、行政および中小機構による商業復興の取り組みとして、行政による商業 復興の方針・位置付け、中小機構による仮設店舗に関わる復興活動を把握・整理する ことを目的とする。具体的には、調査対象各都市の復興計画や土地利用方針図等より 中心市街地の商業復興ビジョンを把握し、各市の特徴点を検討しながら整理する。また、
中小機構による取り組みとしては、本震災で初めて実施されることとなった仮設施設 整備事業や、店舗整備に対する資金援助策の内容および事業状況を文献より把握する。
2-2. 復興ビジョンにおける商業の位置付け
2-2.1. 釜石市における商業復興ビジョン
震災前から釜石市の中心市街地である東部地区は、その歴史性を踏まえ、引き続き 市の中心部として拠点性を有するまちづくりを目指すため、従来の中心的機能復旧に 加え、新たな機能の誘導を図りさらなる拠点性の向上を努める。このような方針に基 づいて、東部地区では主に商業・業務・住宅用地としての土地利用を行い、さらに公 共公益施設や津波防災拠点施設などを集約・整備を図る。
このような上位方針に基づき、東部地区では以下の3つの方針を示している。
①市復興計画に基づき、避難路・避難場所を着実に整備するなど、安全確保の最優先
②コンパクトな歩いて回れるまち、をキーワードに回遊性を確保しつつ、3つのプロ ジェクト(商業機能強化・公共施設集約・魚河岸再生)を核としたメリハリあるま ちづくりを推進
③元の街区を生かすなど、早期復興に向けスピード感を持って取り組む
方針2で挙げられた3つの核プロジェクトの商業機能強化(フロントプロジェクト 1)では、大型商業施設整備・既存商業集積を構想し、新たな商業空間の整備を進める。
また当プロジェクト構想地区では、津波復興拠点整備事業(*)において公共施設や
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図 2-2-1 釜石市東部地区 土地利用方針図
既存商業集積エリア 住居エリア
庁舎建設候補エリア 大型商業施設建設地 津波復興拠点整備事業検討エリア 商業現地再建エリア 飲食店集積エリア
業務系エリア
商業業務エリア ( 観光・交流 )
住居エリア 住居・商業・業務エリア
大型商業施設建設地
津波復興拠点整備事業検討エリア
商業業務エリア(近隣商業) 商業産業エリア 業務系エリア
ロードサイド型施設エリア 住居エリア
公共公益施設エリア 商業業務地区(住宅含む)
業務系エリア
復興公営住宅、公設店舗の建設を計画し、大型商業施設と商業地区をつなぐ結節点と して位置付けている。また方針3については、商業現地再建エリアを設けるなど、既 存の市街地空間を引き継いだ計画をしている。
参考文献
・釜石市「釜石市復興まちづくり基本計画 スクラムかまいし復興プラン」2011.12.22
・釜石市 , 岩手県「復興整備計画(第5回変更後)」2013.11.25
・釜石市「東部地区の復興計画について」
・釜石市「東部地区新商業拠点整備構想(概要版)」
・釜石市「施設配置計画(案)」
④
⑤ ① 450
③
②
図 2-2-2 東部地区 津波復興拠点整備事業 新商業施設配置図(案)
2-2.2. 大船渡市における商業復興ビジョン
震災前より大船渡市ならず気仙地域の商業業務の中心地として機能してきた大船渡 駅周辺地区は、さらなる広域商業業務拠点の形成、観光と交流の拠点としての機能の 強化を図ることをまちづくり目標として定めている。
土地利用方針では、震災前は店舗・住宅が混在していたが、災害危険区域(*)内 となる東側エリアにおいては、今後住宅の建設が規制されることとなり、復興事業後 は主として JR 大船渡線海側において広域的な商業機能、観光機能、近隣商業機能と 交流機能を重視した商業業務系土地利用を図る。大船渡駅前では、商業業務地区とし て観光や交流機能を重視した土地利用を図り、河川を挟んで南側は、日常生活を支え る商業地区とし近隣商業機能を重視し、商店街を形成する構想である。さらに西側で は商業機能をさらに強化するために、大型店の立地を想定した土地利用を図る。一方、
大船渡線山側においても、国道 45 号線沿いは店舗・住居・業務が混在した土地利用を 想定している。
また、大船渡市においても釜石市同様に、中心市街地における商業業務の早期再建 を図り今後の復興をけん引するため、津波復興拠点整備事業による市街地の形成を図 る。事業区域は、大船渡駅前商業業務地区および南側に隣接する近隣商業地域であり、
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図 2-2-3 大船渡市大船渡駅周辺地区 土地利用方針図
既存商業集積エリア 住居エリア
庁舎建設候補エリア 大型商業施設建設地 津波復興拠点整備事業検討エリア 商業現地再建エリア 飲食店集積エリア
業務系エリア
商業業務エリア ( 観光・交流 )
住居エリア 住居・商業・業務エリア
大型商業施設建設地
津波復興拠点整備事業検討エリア
商業業務エリア(近隣商業) 商業産業エリア 業務系エリア
ロードサイド型施設エリア 住居エリア
公共公益施設エリア 商業業務地区(住宅含む)
業務系エリア
商業・業務エリアの大部分において事業実施予定である。本事業における商業業務施 設の整備方針は以下の5つとなっている。
①様々な商品やサービスが提供されている、身近な商店街の形成 ・ 様々な商品、サービス等が提供される身近な商業地
・大小様々な店舗が立ち並び、店舗をめぐる楽しみが得られる商店街
②様々な交通手段で訪れることができる、利用しやすさの確保 ・近隣の住宅地から、歩いて行きたくなる快適な歩道空間 ・様々な交通手段で訪れやすい商業空間
③憩いの場となる空間の確保
④回遊が楽しくなる界隈性の再生
・多くの飲食店等が集積していたまちを再生し、回遊が楽しくなる商業空間
⑤海、食、歴史など大船渡の魅力に触れることができる観光商業地の形成
参考文献
・大船渡市「大船渡市復興計画」2011.10
・大船渡市「大船渡駅周辺地区まちづくりグランドデザイン(案)」 2013.8.28
・大船渡市「大船渡地区津波復興拠点整備事業基本計画 ( 案 )」2013.8.28
図 2-2-4 大船渡市大船渡駅周辺地区 商業施設イメージ図
2-2.3. 陸前高田市における商業復興ビジョン
低地部の被害が大きかった陸前高田市では、JR 大船渡線北側において、商業・業務、
公共・公益施設、住宅用地を配置した新しいコンパクトな市街地の形成を図る。商業 地区は市街地のメインストリートとなる新たな幹線道路沿いにおいて整備し、商店街 の形成を図るとともに、新設する道の駅と一体となった集客交流の場の創出を推進す ることが復興基本政策として計画されている。
土地利用方針図は今後も変更される可能性があるが、2013 年 11 月時点の計画では 新設される陸前高田駅北側に商業・業務施設、ロードサイド型施設が配置され、その 周辺に住宅街が形成される。また、JR 大船渡線北側・国道 340 号沿いに計画されてい た道の駅用地が、用地不足のため住宅用地として用途変更されている。
陸前高田市では、他の2市が中心市街地において計画している津波復興拠点整備事 業を山側の住宅地で計画している。また大型商業施設が中心市街地より東へ 2km ほど 離れた県道 45 号線沿いに建設されている。
参考文献
・陸前高田市「陸前高田市震災復興計画」2011.12
・陸前高田市「高田地区・今泉地区土地利用計画等 説明会」2012.10
・陸前高田市 , 岩手県「陸前高田市 復興整備計画(第 9 回変更)」2013.10.28
・陸前高田市 ,UR 都市機構「高田地区・今泉地区被災市街地復興土地区画整理事業等事業計画 ( 案 ) の説明会」
2013.11
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図 2-2-5 陸前高田市新市街地 土地利用方針図
既存商業集積エリア 住居エリア
庁舎建設候補エリア 大型商業施設建設地 津波復興拠点整備事業検討エリア 商業現地再建エリア 飲食店集積エリア
業務系エリア
商業業務エリア ( 観光・交流 )
住居エリア 住居・商業・業務エリア
大型商業施設建設地
津波復興拠点整備事業検討エリア
商業業務エリア(近隣商業) 商業産業エリア 業務系エリア
ロードサイド型施設エリア 住居エリア
公共公益施設エリア 商業業務地区(住宅含む)
業務系エリア
2-3. 中小機構による中小企業支援策
2-3.1. 仮設店舗整備概要
中小機構は東日本大震災直後より被災地での仮設店舗・工場等の整備(「仮設施設整 備事業」)を決定し、被災6県(青森県・岩手県・宮城県・福島県・茨城県・千葉県)
へ職員を派遣し、仮設店舗・工場等の需要調査や行政や関係機関との計画協議を行っ た。その後、青森県・岩手県・宮城県・福島県・茨城県・長野県において事業を進め、
平成 25 年 9 月時点で完成・事業中合わせて、542 カ所・3336 区画・215,531㎡もの 仮設施設を整備した。
本事業では、図 2-2-1 ような流れで実施される。市町村からの要望に応じて、市町 村より貸与された用地において仮設施設を市町村へ一定期間一括貸与し、その後に施 設は市町村へ無償移管される。市町村は、具体的な入居条件及び入居者を決定し、入 居者へ原則無料で賃借する(水道光熱費・共益費は入居者負担)、賃借期間は1〜2年 を想定しているが、具体的な期間は市町村判断となる。また、入居者は原則被災者と するが、復興に役立つことが期待される場合は、商工関係団体や農業・漁業協同組合、
大企業、非被災企業、NPO 等も入居可となる。建設用地は、原則として上水道、排水、
電力等のインフラが利用できる状態にあり、市町村保有の土地(市町村借上げ含む)
である。なお、県・国有地、中小機構所有地を利用できる場合もある。
その他、施設仕様や入居条件等は以下の表 2-2-1 の通りである。
図 2-3-1 仮設施設整備事業フロー
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・原則、被災中小企業者。
・必要な場合は、商工関係団体、農協・漁協、大企業、
無被災企業、公益法人、NPO 等の入居も可。
・システム建築方式。
・店舗・事務所は5 程度 /区 画。
・電 源:単相電力。必要時は三相電力。
・上水排水:各1カ所/ 区画。
・電 話:電話回線引込口。契約は事業者。
・トイレ :施設全体に1カ 所。
入居条件
施設仕様 建物形式 区画面積 装備
表 2-3-1 仮設施設整備事業概要
表 2-3-2 仮設施設整備事業 仮設施設タイプ
2-3.2. 店舗復旧・整備に対する資金支援策
店舗の復旧や整備に対する資金支援は、「中小企業等グループ施設等復旧整備補助事 業」・「中小企業組合等共同施設等復旧支援事業」・「商店街振興実践事業(災害復旧事 業)」・「高度化貸付」などがある。この中で支援が団体向けであるのは中小企業組合等 共同施設等復旧支援事業・商店街振興実践事業(災害復旧事業)であり、個人向けで あるのは中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業・高度化貸付である。
中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業は、中小企業等のグループによる申請 を対象とし、被害施設・店舗の復旧経費の 3/4 補助であり、高度化貸付は事業組合等 を対象とし被災施設備の整備に対し無利子貸与する。中小企業組合等共同施設等復旧 支援事業は、事業協同組合等に対し所有する共同施設整備費への 3/4 補助であり、商 店街振興実践事業は、商店街の共同施設撤去・整備費を 10/10 補助する。事業の詳細 は表 2-3-3 の通りである。
参考文献
・経済産業省中小企業庁 , 中小企業基盤整備機構「仮設施設整備事業ガイドブック」2011.5
・経済産業省中小企業庁「中小企業向け支援策ガイドブック ver.03(拡大版)」2011.5.2
表 2-3-3 店舗整備に対する資金支援策概要
2-4. 小結
3市の中心市街地のおける商業地区復興ビジョンより、以下のように特徴点を整理 することができる。
○釜石市:既存市街地復旧+大型商業施設誘致
釜石市の中心市街地である東部地区では、従来の中心市街地機能の復旧と新たな商 業の形成を方針に、従来通りの既存商業土地利用と大型商業施設の誘致を行っている。
さらに、それらの間には津波復興拠点整備事業による公共施設や公営住宅などを整備 し、さらなる拠点性を高めたコンパクトな中心市街地の形成を図る。
○大船渡市:既存市街地ベース
大船渡市の中心市街地である大船渡駅周辺地区は、広域的商業拠点として大小さま ざまな規模の商業施設を整備し、さらに業務地区とも合わせ観光・交流拠点としての 形成を図る。大船渡駅周辺地区では、商業業務地区の大部分を津波復興拠点整備事業 区域としており、市全体の復興を先導するため早期再建を図る。土地利用については、
災害危険区域の指定により線路を挟んで東側は商業・業務エリア、西側が住居エリア となる。
○陸前高田市:新市街地形成
陸前高田市では被害規模が他市に比べ大きかったことから、新たな中心市街地を形 成することとなる。幹線通り沿いに公共施設なども含めた商業業務地区を設定してお り、道の駅を中心とした商業地区形成を図る。また、他の2市とは異なり中心市街地 内では津波復興拠点整備事業を行わず、大型商業施設も中心市街地より離れた場所へ 立地することとなっている。
また中小機構により中小企業支援策として、仮設施設整備事業と商業施設整備事業 に対する資金支援策がされている。仮設施設整備事業では、現在までに 3336 区画も の仮設施設が整備されており、被災中小企業者を原則対象として無料賃借されている。
賃借期限は、原則として1〜2年とされていたが、市町村の判断と地権者との交渉に より延長可能となっている。
資金支援策は、震災前の事業組合等が所持している共同施設を対象としている事業 は、店舗の建物再建に適していないが、グループ補助金や高度化貸付は今後の建物再 建に対して補助を行うものである。また補助金の使用は個人ごとでの使用となるが、
申請に際しては団体を対象としているものが多い。
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注釈
【津波復興拠点整備事業】
東日本大震災において初めて創設された市街地形成を図る事業。津波防災地域づく りに関する法律第17条に規定している一団地の津波防災拠点市街地形成施設(、津 波が発生した場合においても都市機能を維持するための拠点となる市街地を形成する 一団地の住宅施設、特定業務施設または公益的施設および公共施設)の枠組みを活用し、
津波からの防災性を高める拠点であるとともに、被災地の復興を先導する拠点となる 市街地の形成を支援する。本事業は、津波災害の被災度等に応じた以下に示した採択 要件を満たす市町村を対象とする。
①浸水により被災した面積が概ね20ha以上であり、かつ、浸水により被災した建 物の棟数が概ね1,000棟以上であること。
②国土交通大臣が、イの要件と同等の被災規模であると認めるもの。
【災害危険区域】
今後の災害に備え、東日本大震災と同規模の津波に対して浸水が想定されるエリアに指定され、住居 の用に供する建築物、社会福祉施設、学校及び医療施設等の建築を制限する。
参考文献
・国土交通省都市局「東日本大震災の被災地における市街地整備事業の運用について(ガイダンス)」2012.6
・大船渡市「大船渡駅周辺地区まちづくりグランドデザイン(案)」 2013.8.28
第3章 岩手県沿岸3市における 仮設商店街動向
3-1. 本章の目的と構成 3-1.1. 本章の目的 3-1.2. 調査の概要 3-2. 環境整備
3-2.1. 土地取得・出店者募集 3-2.2. ハード整備
3-3. 運営形態 3-4. 店舗の動向
3-5. 今後の活動意向と活動実態の整理 3-6. 小結
3-1. 本章の目的と構成
3-1.1. 本章の目的
東日本大震災において、初めて実施された中小機構による仮設施設整備事業により、
多くの被災地で仮設商店街が形成されることとなった。この震災復興における仮設商 店街という新たな商業復興活動の実態を把握することを目的とする。具体的には、調 査対象都市において震災前より中心市街地に立地していた事業者が出店している仮設 商店街を対象として、各仮設商店街の震災直後から現在までの活動実態および仮設商 店街としての本設営業再開意向などを把握・整理する。その結果をもとにして、商業 復興・復旧活動の一つである仮設商店街の実態や課題点など知見を得る。
3-1.2. 調査の概要
平成 25 年 5 月 20 日〜 23 日に、1-8 で示した調査対象仮設商店街である 10 仮設商 店街へヒアリング調査を行った。ヒアリング対象者は、主に仮設商店街代表者(9名)
とし、不在の場合は仮設商店街出店者(1名)へ行った。ヒアリング項目は、主に仮 設商店街開設当初から現在までの活動実態、さらに本設再開へ向けた意向である。調 査当時の仮設商店街概要および調査結果は表 3 の通りである。
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表 3-1-1 ヒアリング調査概要
表 3-1-2 ヒアリング調査回答結果
調査対象者:復興天神 15 商店街・青葉公園商店街・釜石はまゆり飲食店街・
おおふなと夢商店街・大船渡屋台村・大船渡プレハブ横丁・陸前高 田未来商店街・高田大隅つどいの丘商店街・栃ヶ沢ベース・陸前高 田元気会の代表者(釜石はまゆり飲食店街のみ仮設商店街出店者)
調 査 日 時:平成 25 年 5 月 20 日〜 23 日 場 所:各店舗
質 問 項 目 : ①仮設商店街構想動機 ②出店者募集方法
③仮設商店街構成(業種・運営組織)
④外部支援
⑤店舗動向(業種転換の有無・入れ替えの有無)
⑥仮設店舗の継続利用意向
⑦仮設商店街としての本設営業再開意向
ヒアリング調査対象者
10
ヒアリング回答者
10
ヒアリング回答率
100%
3-2. 環境整備
仮設商店街の初動期として環境整備時では、土地取得・出店者募集の事前整備段階 と建物建設・内装外構整備といったハード整備の2段階が行われる。調査より、各段 階において事業者や行政・中小機構といった関係主体の関わり方は図 3-1 のように分 類される。
3-2.1. 土地取得・出店者募集
土地取得・出店者募集段階においては、関係主体の関わり方より【民主導型】・【公 主導型】・【公民恊働型】に分類できる。また出店者募集において、震災前より存在し ていた既存母体を中心としての環境整備が行われている仮設商店街もあった。
【民主導型】:未来商店街・栃ヶ沢ベース・つどいの丘商店街・元気会・プレハブ横丁・
屋台村
陸前高田市の調査対象仮設商店街は全て民主導型での土地取得・出店者募集が行わ れた。陸前高田市では、壊滅的被害を受けた行政機能の復旧が優先されたことに加え、
平地のほとんどが被害を受け建物建設可能な平地が極端に減少した状況で、公用地に は仮設住宅が優先的に建設された。以上のような状況より、仮設店舗整備においては、
土地取得・出店者募集において出店者地震で行うこととなった。民主導で行ったこと により、比較的小規模な出店者数・震災前の既存組織(商店街等)に関係しない出店者・
主要道沿い等といった好立地を選択している点が特徴的である。また、他市に比べ仮 ( 陸前高田市・屋台村民主導型
・プレハブ横丁)
土地取得・
出店者募集 建物
建設 内装外構 整備
(釜石市)公主導型
公民恊働型
(夢商店街)
中小 機構
︵仮 設施 設整 備事 業︶
外部 支援
︵民 間・
NPO
等︶ 出店 者負 担
(商店街・組合 等)既存母体
図 3-2 仮設商店街環境整備パターン
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表 3-2 仮設商店街概要
設商店街開設時期も遅くなっている。
プレハブ横丁においても、市内の他の仮設商店街とは異なり、個人の出店者代表が 主導して土地取得・出店者募集が行われた。土地取得は、仮設店舗が建設可能な民有 地を探し借地交渉を行い、出店者は代表者の知り合いを中心に募った。
屋台村は、大船渡地区飲食店組合を母体した新たな組織を設立しており、新組織が 主導して環境整備が行われた。土地取得は、プレハブ横丁と同じく民有地を借地し、
出店者は飲食店組合員を基本として構成されている。
【公主導型】:天神 15 商店街・青葉公園商店街・はまゆり飲食店街
釜石市においては、調査対象仮設商店街は全て公主導型で土地取得・出店者募集が 行われた。行政が主導して土地取得が行われたため、公園内や学校敷地内といった公 共的な敷地に仮設商店街が建設された。また出店者募集においては、市商工労政等に より業種のバランスを考慮した棲み分けが行われている。そのため、はまゆり商店街 には呑兵衛横丁を基本とした飲食業、青葉商店街・復興天神 15 商店街には、既存商店 街への出店した事業者を基本とした店舗が入居している。
【公民恊働型】:夢商店街
夢商店街は、市商工会議所が主導して環境整備が行われたが、土地取得交渉におい て出店者が地権者との交渉に関わった。また JR 大船渡線東側に広がっていた既存商店 街に出店していた事業者を中心に出店者構成が行われており、市商工会議所による募 集だけでなく仮設商店街代表者も出店者への声かえを行うなど、行政と出店者が恊働 して整備活動が行われた。
3-2.2. ハード整備
ハード整備において、建物整備は全て 2-2.1 で述べた中小機構による仮設施設整備 事業を利用しているため、出店者の初期投資負担は無い。一方、内装外構整備は、事 業による支援は無いため民間企業や NPO などの外部支援および出店者の自己負担と なっている。外部支援は、金銭の寄付や物品寄付、使用目的に対する資金負担に大き く分類される。仮設商店街ごとで外部支援の受け入れ数が異なるため、仮設商店街で 資金負担の割合は異なっているだけでなく、金銭力により出店者ごとでも整備状況に 差が生じている。
3-3. 運営形態
多くの仮設商店街では任意団体の形をとり、商店街内の自治運営を行っている。本 設まで現在の商店街形態を継続する意向はあるものの現実的には困難だという声が多 く、そのためいつでも組織を解体できるなど柔軟性を持たせ任意団体を設立している。
商店街といった団体形式は取ってはいるものの、あくまでの期間限定的な意味合いが 大きいことが分かる。
唯一、法人団体を設立した夢商店街は、仮設商店街構想段階から本設再開へ向け商 店街形態の継続意向を持って活動している。そのため法人団体を設立し本設再開へ向 けた土台づくりを行っている。夢商店街への出店者は、震災前より大船渡駅前周辺で 営業していたものを中心として構成されているが、震災前に存在した各商店街の協同 組合は消滅し新たに協同組合を設立している。
また屋台村は、有限責任事業組合(LLP)を設立している。LLP は法人・任意とは 異なる形式を持った組織であり、地元企業や県外の支援企業 6 社が共同出資し設立し ている。また、それら出資者は実際に出店しておらず、運営のみに関っている点が他 の仮設商店街とは異なる。
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3-4. 店舗の動向
仮設商店街に入居している店舗は、基本的に被災者を対象としている。しかし、例 外として夢商店街・屋台村・つどいの丘商店街・未来商店街では市外の被害者・非被 害者が入居している。これらの商店街は、民主導型または公民主導型の仮設商店街環 境整備を行っているため、出店者の募集において代表者との震災前のつながりを利用 したためと考えられる。
また、仮設商店街への入居時に震災前とは異なる業種で再開した者も見られた。そ れらの多くは飲食業への業種転換をしており、夢商店街・屋台村・つどいの丘商店街 で見られる。栃ヶ沢ベースでは、教育系への業種転換が見られるが、これら業種転換 後の業種の共通点として、専門的技術を必要としないため他業種より負担無く始める ことが出来る。
仮設商店街開設後においては、店舗の入替が夢商店街・屋台村・青葉公園商店街で 見られた。退出する店舗は自力再建を目指していた店舗であり、仮設商店街へ入居し ながら本設営業再開への準備を行い、環境が整った者が仮設店舗を退出し、また新た に営業の場を求めている営業者が仮設店舗へ入居する、といった流れで循環している。
3-5. 今後の活動意向と活動実態の整理
仮設商店街としての本設再開へ向けた活動意向および活動実態より、仮設商店街の 実態は【本設見通し型】・【暫定復旧型】の2つのパターンに分類できる。
【本設見通し型】:夢商店街・はまゆり飲食店街(呑兵衛横丁)・つどいの丘商店街 本設見通し型は、仮設商店街構想段階より行政または商店街代表者が団体での本設 再開を見据えて行政や出店者などの各関係主体と協議を重ねてきた。夢商店街やはま ゆり飲食店街の呑兵衛横丁は、震災前の既存団体を母体として行政などと恊働してい ることや、本設を見据えた運営組織を設立していることから、本設再開へスムーズに 活動することが可能になっていると考えられる。
また上記の仮設商店街では建物再建を伴っての本設再開を構想しているが、つどい の丘商店街は、仮設商店街構想当初より仮設店舗利用での本設再開を目指し活動して いる。土地所有者との借地交渉や出店者間での継続意向の意思疎通など、行政との恊 働関係が乏しい民主導でありながらも代表者を中心として活動している。
【暫定復旧型】:屋台村・プレハブ横丁・未来商店街・栃ヶ沢ベース・元気会・青葉公 園商店街・天神 15 商店街・はまゆり飲食店街(その他)
暫定復旧型は、仮設店舗での営業期間限定の営業形態となり、今後解散することが 予想される仮設商店街である。本設再開へ向け商店街形態の継続意向はあるものの、
本設再開前に借地期限が切れることや、出店者の資金負担などを考慮した本設再開意 向の不一致を理由に、全体として足並みを揃えるのが難しい状況である。また本設再 開意向が未定の仮設商店街は、土地利用方針などの行政による復興ビジョンの不透明 さを理由に、現時点では本設再開場所など判断が困難であるという意見が多い。しかし、
釜石市では、仮設商店街は解散となるものの、既存商店街を基本とした商店街構想を 持って活動している。
暫定復旧型の仮設商店街が形成された理由の一つとして、中小機構による仮設施設 整備事業が挙げられる。本事業は複数人での申請を原則としていることから、営業場 所の復旧意識が強いものの、形態として複数の店舗が集まる仮設商店街が形成された。