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博 士 学 位 論 文

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Academic year: 2021

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博 士 学 位 論 文

15

5

2018

(2)

本号は学位規則(昭和28年4月1日文部省令第9号)第8条の規程による公表を目的として、平成 30年3月18日に本学において博士の学位を授与した者の論文内容の要旨および論文審査の結果 の要旨を収録したものである。

学位番号に付した甲は、学位規則第4条1項(いわゆる課程博士)によるものである。

創価大学

(3)

名 金 明姫

教育学 155

平成 30年 3月 18日

学位規則第4条第1項該当

創価大学大学院学則第場31条第2項該当 創価大学学位規則第3条の3第1項該当

目 韓国における高等教育改革下の大学開放

―「名誉学生制度」と大学の「知」の変容―

文学研究科委員会

主査 坂本 辰朗

本学文学研究科教授 委員 鈎 治雄 本学文学研究科教授

委員 中野 毅

本学文学研究科教授

(4)

論文題目

韓国における高等教育改革下の大学開放

―「名誉学生制度」と大学の「知」の変容―

1.論文内容の要旨

韓国の高等教育は、政府主導の大学拡大政策によって、高等教育のマス化、ユニバーサル・ア クセス化が急速に進展し、21 世紀の初めに、早くも、いわゆる大学全入時代を迎えた。また、

高等教育改革の一環として推進された「高等教育の門戸開放」政策によって、在来型の大学がも つ閉鎖的な構造が原因で高等教育へのアクセスを妨げられていた成人学習者のために、仕事と学 習を連携する「開放大学」、いつでも、どこでも、誰でもアクセスできる遠隔形態の「放送通信 大学」など、高等教育レベルにおけるオルタナティブ教育制度が拡充されてきた。

他方で、近年においては学齢期人口の激減に直面し、「定員減縮」と「競争力確保」のための 政府主導の大学構造改革が断行されるなか、「大学倒産」という実態に対応するために、入学者 を確保するための生き残りをかけた諸戦略が策定されつつある。また、知識基盤社会、生涯学習 社会、急速な高齢化の進行に従い、従来の学齢期学生のみの大学から、成人、高齢者などを含む 非在来的学習者をも視野に入れ、大学を開放していくことが生き残りの一選択肢として採用され ており、このような状況は入学者を確保できず経営難に陥る地方の私立大学と専門大学を中心に 熾烈化している。

そうした状況から浮かび上がる問いは、従来の伝統的な大学教育の対象ではなかった人々を大 学に招き入れた結果、大学のキャンパスにおいて、実際にどういった影響が起きているのか、あ るいは大学はこうした影響をどのように受け入れたのか、すなわち大学の「知」の環境はどのよ うに変わっていくのかというものである。しかしながら、これに関する実証的な研究の蓄積はほ ぼ見られない。

「名誉学生制度」は、韓国の地方国立大学である慶北大学が

1995

年に、地域連携を掲げて取 り組んだ高齢者のための大学開放(University Extension)プログラムである。制度が創設されて から

20

年以上経ち、高等教育レベルの高齢者教育として最も長期間にわたる大学開放プログラ ムである。これまでの先行研究においては、大学の豊富な教育資源を活用し、地域社会に高等教 育の機会を提供すると同時に、高齢者と大学生が同じ講義室で一緒に学ぶことによって、世代間 の対話を広げ、世代共同体の教育ができる高齢者教育の一プログラムとして高く評価されてきた

(ホ・ソネ

2004、ジョン・ジュンモ 2009、ハン・ジョンラン 2015)

本論文は、韓国における大学開放研究の一環として、地方国立大学における大学開放プログラ ムである「名誉学生制度」に着目して、(1)「名誉学生制度」創設の直接的契機とその経緯を、

韓国の高等教育改革政策の変遷過程に位置づけて検討を行い、それまでの大学開放との相違点を 明らかにする、(2)7校における「名誉学生制度」の実態分析をもとに、非在来的学習者である 高齢者を大学に受け入れることでもたらされた、大学の「知」の変容と諸課題を明らかにし、大 学開放の在り方への示唆を得ることを目的としている。

以上の研究目的を達成するために、以下のように

3

つの研究課題を設定した。

(5)

1

の課題は、韓国における大学開放の成立過程とその概念を確認するため、今日の大学開放 の起源とされるイギリスとアメリカ合衆国における大学開放の成立過程と展開を概観したうえ、

韓国の大学開放は、イギリスとアメリカ合衆国におけるそれとはどのように異なっているかを整 理する。その上、地方国立大学である慶北大学が高齢者のために「名誉学生制度」を創設するよ うになった直接的契機とその経緯を辿っていくため、韓国における高等教育改革が本格的に推進 された

1980

年代以降の高等教育政策の変遷過程を検討し、韓国のこれまでの大学開放は高等教 育政策とどのように連動されてきたのか、それらが今日に残した課題とは何かを明らかにする。

(第

1

章・第

2

章)

2

の課題は、韓国の高等教育において非在来的学習者とは何か、また、彼らは高等教育の中 でどのように位置づけられているかを検討する。とりわけ、「名誉学生制度」の対象であり、韓 国において教育機会が最も乏しい高齢者のための教育は、これまでどのように展開されてきたの かを考察しつつ、高齢者のための大学開放の諸様相と課題を検討する(第

3 章)

3

の課題は、7校の大学における「名誉学生制度」の実態分析をもとに、非在来的学習者で ある高齢者を大学に受け入れることでもたらされたの「知」の変容と、キャンパスに生み出され た新たな課題とは何かを明らかにし、これからの大学開放の在り方への示唆を探るものである

(第

4

章・第

5

章)

本論文の目次は以下のとおりである。

序章 研究の所在と研究の意義

1

節 問題の所在

2

節 研究の目的と方法

3

節 先行研究の検討と本研究の意義

4

節 本研究の構成

第1章 韓国における大学開放の成立過程と概念

1

節 イギリスとアメリカ合衆国における大学開放の起源

1.イギリスにおける大学開放

2.アメリカ合衆国における大学開放

2

節 韓国における大学開放の起源と展開

1.韓国の大学開放の起源

2.

「平生教育法」制定と大学開放

3.韓国における大学開放の諸概念

3

節 今日の韓国における大学開放の諸様相

2

章 高等教育改革下の大学開放の変遷過程

1

節 韓国の高等教育の現在

2

節 高等教育改革下の大学開放政策の変遷

(6)

1.全斗煥政権(第 5

共和国、1980-1988)

2.盧泰愚政権(第 6

共和国、1988-1993)

3.金泳三政権(文民政府、1993-1998) 4.金大中政権(国民の政府、1998-2003)

5.盧武鉉政府(参与の政府、2003-2007)

6.李明博政府・朴槿恵政府(2008-2016)

3

節 高等教育改革下の大学開放政策の諸課題

3

章 韓国の大学開放と非在来的学習者

1

節 高等教育における非在来的学習者

2

節 韓国における非在来的学習者のための大学開放事例

1.遠隔大学形態の大学開放

2.開放大学の設立

3.

学点(単位)銀行制度(Credit Bank System)

4.時間制学生登録制 5.大学附設「平生教育院」

3

節 高齢者のための生涯学習の展開と大学開放の課題

1.韓国の高齢化と高齢者

2.近年の高齢者のための生涯学習政策と課題

3.高齢者のための生涯学習の課題と大学開放の役割

4

章 大学開放と「知」の変容―「名誉学生制度」の事例を通して―

1

節 「名誉学生制度」の創設背景と理念

1.

「名誉学生制度」の創設背景

2.

「名誉学生制度」の創設目的と意義

2

節 「名誉学生制度」の事例検討

1.調査概要

2.他大学における「名誉学生制度」の実態 3.慶北大学の「名誉学生制度」の実態

3

節 「名誉学生制度」と「知」の変容

5

章 これからの大学開放への展望と課題

1

節 高齢者のためのエンパワーメント教育としての大学開放

2

節 世代間の統合のための学習共同体の構築と「知」のイノベーション

終章 結論と今後の課題 参考文献

(7)

2.論文審査結果の要旨

本論文の独創性と評価すべき諸論点は以下のとおりである。

第一に、大学開放を、高等教育改革ないしは高等教育の構造改革との関連で理論的に捉えてお り、しかもそれを、具体的できわめて詳細な実証研究によって裏付けることを試みたことである。

この分析の視角、実証研究のいずれもが、本論文独自のものであり、高い独創性をみることがで きる。この研究の結果、大学における「知」の変容、高齢者のエンパワーメントに果たす大学教 育の役割といった、筆者が導き出した諸論点も、傾聴に値する独創性を有している。

第二に、韓・日・英(米)の三ヶ国語を駆使して、先行研究を丁寧にレビューした上で書かれ た論文であることである。大学開放、高等教育改革のいずれもが、現在、一国の中で完結するこ とはありえず、国際的な文脈で考察することが必須となっているが、この点、筆者がトライリン ガルであることは、論文の叙述に厚みを加えることになっている。むろん、筆者も認めているよ うに、英米の事例、あるいは韓・日の高等教育事情という点で、さらに渉猟しなければならない 文献は多いわけであり、この点、筆者のさらなる精進が期待されるところである。

第三に、実証研究の部分は、韓国の七つの大学の訪問調査によって構成されており、これは、

ひとりの研究者だけでおこないうる調査の限界ともいうべきものである。とりわけ、いわゆる成 功事例だけを取り上げているのではないという関係上、必ずしも調査に協力的な大学ばかりでは ないため、その中で聞き取りと情報収集をおこなうという厳しい状況の中での調査研究であった ことを評価したい。

以上のように、本論文は、比較・国際教育学、生涯学習論のいずれにおいても、高い独創性を もった論文として、学会へ貢献するものと評価できる。事実、本学位請求論文の一部はすでに、

日本比較教育学会および日本生涯教育学会のジャーナルに投稿し、採択された査読付き論文であ る。両学会とも、日本学術会議協力団体として認められている学会であり、ここでの論文の採択 は、若手研究者の登竜門ともいうべきものである。本論文は、博士(教育学)の基準を十分に満 たす論文と認められ、論文審査について合と判定した。

3.最終試験結果の要旨

2017

12

10

日に本論文についての公開発表会および最終試験が行われた。

審査委員から、①本論文における章の構成、特に、「序章 研究の所在と研究の意義」と「終 章 結論と今後の課題」との対応関係をもっと明確にすべきである、②用語、特に、筆者の言う

『知』の変容」の「知」の概念の適切さ、③欧米の大学史、大学論の基本文献についての理解、

等の質問がなされた。委員からのこれらの質問や指摘に対して、筆者はきわめて真摯かつ誠実に 応答し、適切な回答をした。

慎重に審査を行った結果、審査委員会の結論として、最終試験を合とすることとした。

以上

参照

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