金沢大学十 全 医 学会 雑 誌 第9 4巻 第2号 3 4 3−3 6 9 く1 9 8 5う
マ ウス の 精嚢の構造と神 経 支 配
金沢 大学 医学 部 解剖 学 針一一講座 く主 任こ本 陣 良平 教 掛
武 藤 寛
く昭和6 0年2 月2 7日受 付ン
3 4 3
マウス の精 義の構 造と神 経 支配を, 光煩およ び電 顕 観察によって検 索した. 腺 細胞の分泌 顆粒には,
開口分泌 像が見ら れ る. 筋 層の平滑筋 細 胞 相互間には細 隙 結合 様の構 造が認め ら れ る. 無 髄神 経線 経机 固有 層 内.筋 層内一 動 脈周囲神 経網を形 成す る. 組 織化 学 的検 索によ る と, これ ら の神 経 網は カ テコ ー ル アミ ン螢 光 陽性の癒 状 線 経と アセチルコ リンエステラー ゼ活性 陽性の癌 状線 稚から な る. 電顕 検 索によ る と, 無髄 軸 索の膚状脛 大部は, 多 数の シナ プス小胞を含む軸索歴大 部と し て見ら れ る. 軸 索腰 大部の大 多
数は, その部でSchw a n n 細 胞 鞘を欠き, 腺 細 胞 あるいは筋 層お よ び動 脈の平滑 筋細 胞に対し て,0. 卜 1.0
声m の比較 的広い間隙を持つ遠距 離シナ プスを 形成して いる.
一部の軸索 腫 大 部は筋 層の平滑 筋 細胞の外 面に密接シナ プスを形 成して いる. そ れ らの軸 索腰大部は, 2 型に分 類さ れ る. す な わ ち, 小 額粘 性小胞 を有す る 工 型シナ プス終 末と, 無顆 粒 性小胞を有す る工I 型シナ プス終 末である. 工 型 と工王型終 末の数の 比 は, 固有 層 内神 経網で は1 ニ 10, 筋 層 内 神経 網では 5 こ3, 動脈周囲 神経 網では 7 こ3 で あった. 密接シ ナ プスは すべ て 工 型に属し た. 骨 盤 神 経節には, 多数の神経 細胞と少 数のクロム親 性細 胞が存 在す る. 神 経細 胞は, 2 型に区分さ れ る. す な わ ち, カ テコ ー ルアミ ン陽性の小顆 粒 性小胞を含む A d 郵 中経 細胞と,
そのよ う な小 顆粒 性 小 胞を含まず, アセチルコ リンエステラ ー ゼ惰 性 陽性を 示 す C h 型神 経細 胞である. 神 経 節には, アセチルコリンエステ ラー ゼ活 性 陽 性で, 多数の無頼 粒 性小 胞を含む神経 終 末が, 軸 索細 胞 体
シナ プスあ るいは軸 索樹 状 突起シナ プス の形で密 接シナ プスを形 成し ている. 下 腹神 経切 帆 骨 盤 内臓神 経切断およ び骨盤神 経節切除実験の結果 は次の こと を 示 して いる. 王 型神経 終 末は, ア ドレナ リン作 動性
の神 経線 維の シナ プス終 末で あ り, その大 部分は骨盤 神経 節の A d 型神経 細 胞に由来し,
一 部は腰.仙 骨部
の交 感幹 神 経節に由 来し, 骨盤 内臓 神経を経 由す る. 廿 型神経 終 末は, コリン作 動性の神 経線 推の シナ プ ス終 末であ り, すべて骨 盤 神経 節のC b 型神経 細 胞に由来す る.
Key w o rds s e min al v e sicle, adre n e rgic ne r v e fibe r,Cholin ergic ne r v efibe r,
pelvic ga nglio n
, m O u S e.
古典的な解 剖 学 的記 述によ る と, 胸 腰部の交 感 神経 系の節後ノイロ ン の大部分 は, その起 始細 胞が交感 幹 神経節や椎前 神 経節 く腹 腔神 経 節, 上腸 間膜 動 脈神 経 取 下腸 間膜動 脈神 経 節う に位 置し, 比較 的長い軸 索 突起を伸ば して支配 臓 器に達し,
一 部の少 数の節後ノ
イロン の起 始 細 胞が支 配臓器の近 傍に位 置す る小神 経 節 僻 末神 経 節う に存 在し, 短い軸 索が 支配 臓器に達 して いる と さ れている. こ の こと は 骨盤 臓 器に対して も適用 さ れ, 長く 上記の構 築が定 説と なっ ていた1 I.
しかし, 最 嵐 骨 盤臓 器に対す る交感 神 経 支 配に関
して, その大 多 数の節 前線 推が, 被 支配臓器の近 くに あ る 小神経 節に達し, こ の神経 節から節後 線 継が起 始 し末梢に達す ること が, 自 律 神経 節遮 断剤およ び自 律 神 経遮 断剤を使用 す る薬理学 的研 究1 ト 1 1恨 よっ て示唆 さ れ た. 一方, カテコ ールアミ ン螢光 検 出法によ る組 織 化学 的検 索に基 づ き, 精 管およ び精嚢 を支 配す る ア ドレナ リン作 動 性ノイロ ン の細 胞体が, 支 配臓器に隣 接す る骨 盤 神経 節 内に存 在して いる と す る報 告が な さ れ たり1 2 ト 1 7 I
. 古くから骨 盤神 経 節にはコリン作 動性ノ イロ ン の細 胞 体が存 在す る と さ れ ていた が, Bell ら1郎
A b br e viatio n s 二 A d, adr e n e rgi c三C h, Cholin ergic三F G S m eth od, fo r m aldehyde一gl uta r a− 1dehyde−S u CrO S e fix atio n m ethod 3 Ty pe T , Ty pe I syn ap tic e nding ニTy pe II, Ty pe II
Syn ap tic e nding.
は組 織 化学 的 検 索によ って, 骨 盤 神経 節にア ドレ ナ リ ン作 動 性ノイロ ン の細胞 体と, コリン作 動 性ノイロ ン の細 胞 体と が共 存して いること を明らか にし た. しか し, 骨 盤神 経 節 内のこれ ら両 種の ノイロ ン の細 胞 体の 差 異を, 微 構 造 的立場から論じ た ものは, いま だ報 告 が な く, ま た, これ ら両種のノイロ ン に対す る節 前線 推の シナ プス関 係に つ い て.も, 今日 ま で 不 明 な点が多
い
.
過 去の多くの研 究 者は, 骨 盤 内臓 神 経ま た は仙 骨神 経根を切 断し た後, 骨盤 神 経 節 内の シナ プス に 二次変 性が おこること を, 神経 染 色の可視 光 顕 微 鏡 く光 顕,
検 索1町2 4Iな ら びに電子顕 微鏡 く電 顕1 観 察2の2 6りこよっ て明らか にし た. 一 方, 交感 神 経 系に関し て は, M u s−
to n e n ら2 61が, 下腹 神経も含む交 感 神 経の広 範 囲な破
壊によ り, 骨 盤神 経 節 内の シナ プス に 二次 変性がお こ ること を, 電 顕観 察で指 摘し たにと ど ま る. 骨 盤 神経 節の微構 造に関して は, すで に電 顕 所 見が報ぜ ら れ て いる が瑚2 5ト2 91, 山田2 51と M u sto n e n ら2 61の も の を除 き,そ の多く はシナ プスの由来や性 格には触れ ないで,
単にそ の微 構 造を記 述す るにと ど ま るか, クロ ム親性 細 胞に焦点を あ わ せ た もの にす ぎ な かった.
一方, 精 嚢に関しては, その腺上皮細 胞と平 滑 筋細 胞の 正常時の微 構 造に関し て3 0ト3 2I, ま た, 去 勢, ホ ル モ ン剤 投与, 松 果 体切 除な どによ る微構 造 的 変 化に関 し て3 3ト 瑚, 電 顕によ る検 索 結 果が あ り, 分 泌 物の形 成
に関連してフ ルク トー スの組 織 化 芋川, 自律 神 経 系の 構 築に関連し ての神経 組織 化 挙り1 2H 4Jな ど が あ る. し か し, 精 嚢上皮 細 胞お よ び平滑 筋 細 胞と神 経 線推の シ ナ プス相 関を徴 構 造的 見地か ら検 索し た ものは, わ ず かにDe nt ら4 2Iと A l−Zuhair ら1 611 714 3Iのもの を見るに すぎず, 神経の シナ プス終 末の局 所 的微 構 造と その由 来に関し て は, な お 不 明 な点が多い.
今回, 著 者は, マウス の精 嚢の腺上皮 細 胞と平 滑 筋 細 胞に つ いて, その微 構造を光 顕な ら びに電顕 観 察に よって検 索し た. ま た, 精 義に分 布す る神 経の走 路を 連 続切 片の再 構 築 法によっ て検 索し, つ い で, 精 嚢 壁 内神経 終 末お よ び骨 盤 神経 節 内 神 経 要素の微構 造を,
神 経染 色, 組 織 化学 的 検索 法お よ び電頗 観 察によって
検 索し た. なお, 精 嚢に分布す る神経の由 来, 走 路お よ び終 末の性 格を確 認す る た め, 各種の神経 切 断あ る
いは神 経 節切 除によ る神経 変 性 実験を行なっ た.
材 料およ び 方 法 I . 実験 動 物
純 系 成 熟 雄E H −1種マ ウス く肋5 抑噂乃 e フィ v a r.
粛 奴如 を実験 動物と し て 用いた.
工工. 光顕再構 築 法
1 .
へ マ ト キシリン . エオジ ン染 色
精 嚢を周 囲臓 器を付し た ま ま 切 り取り, 10%ホ ルマ
リン で2 日間浸 潰 固 定し,パラフ ィ ン に包増 し,10 へ2 0 月m 連 続切片を作製し た.切 片には,
ヘマ ト キシリン.
エオ ジン染色を施し, 精 嚢の構 造と 周囲臓 器との相関
を描 画 再構 築 法によっ て検 索し た.
2 . 実体顕 微鏡観 察
外 部から精 嚢に入 る神 経の走 行を, 実体顕微鏡下に
観 察し た. 実 体 顕微 鏡 観 察に際し て は, 組 織の乾燥を 防ぐ と と もに組 織の固定を兼ねて, 1 %酢 酸を適宜観 察 部 位に滴 下し た.
3 . 神経 軸 索 染 色
下腹 神経, 骨 盤 内臓 神 経, 骨 盤 神経 節, 膀胱, 尿道 前 立 腺 部, 前立腺な ど を含め て,
一側の精 嚢を一括し
て取り出し, 本 陣写 真 銀 法 く写 真銀 温 photogr aphic Silv e r stainingl叫によ る連続切片を作 製し, 描 画再構 築 法を行なった. こ の方 法によ る と, 神 経細 胞体およ び神 経線 維 軸 索が, 黒色ないし褐 色に特 異 的に染色さ れ る.
4 . 神 経髄鞘 染色
髄 鞘の染 色は, オス ミウム髄 鞘染 色 法吋あるいは ト ルイ ジンブル ー染 色 法 くtoluid in e b lu e stainingl4 6 ,8こ よった. 前 者によ る と, 髄 鞘が 黒色に染 色さ れ, 後者
によ る と, 髄 鞘は濃 青 色に染 色さ れ る.
I王I. 組 織 化 学的 検 索法
精 嚢およ び骨 盤 神 経 節の組 織化 学 的 特性の検索は,
次の方法によっ た.
1 . カ テコ ー ル ア ミ ン螢 光 検出法
Fu rn e S Sら4 7りこよ る Faglu 法のN aka m u r a欄の改 良法で あ る, ホ ル ムアルデヒド. グルタ ー ルアルデヒ ド.シ ョ糖 固走 法くfo r m aldehyde−gluta r al dehyde−S u C. r o s efix atio n m ethod,F G S m ethodl を 用いた. こ の
方 法によ る と, 組織 中のカ テコ ールアミ ンは 黄緑色の 螢 光を発す る.
2 . ア セチルコリンエ ステ ラー ゼ 活性 検出 法 Ka r n o v sky ら欄のチ オコリン法を改 良し た,Naka, m u r a ら5 01によ るル ベアン酸増 強 法 くr ube a nic a cid.
e nha n c e m e nt m ethodl を 用いた. こ の方 法によ る と,
アセチルコリンエステ ラー ゼ活 性 陽性 部 位が 黒色に特 異的に検 出さ れ る.
I V. 電 子 顕 微鏡 検 索法
精 嚢の電 顕検 索には, 精嚢を摘 出し, 2 5 % グルター
ルアルデヒド 0.1 m 卜0.2 M リン酸緩 衝 液 くpH7.4う5
ml. シ ョ糖0.4 g .2 %オス ミウム酸5 ml から な る固 定 液 中で締切 し, 同 固 定液 中に4 0Cで2 時 間浸潰後,
エ タノー ル系 列で脱 水, エ ポック 812 に包理, L E B 20 88 ウルトロ トー ム によって薄切片を作 製し た.同時