審 査 論 文 要 旨(日本文)
論文提出者氏名: 小野 紗耶香 審査論文
題 名:Increased wound pH as an indicator of local wound infection in second degree burns (Ⅱ度熱傷創における局所感染の指標となるpHの増加)
著 者:Sayaka Ono, Ryutaro Imai, Yukiko Ida, Dai Shibata, Takako Komiya, Hajime Matsumura
掲載誌:Burns (Accepted: October 24, 2014; Published Online: November 15, 2014)
(審査論文要旨:日本語論文の場合1,000字以内・英語論文の場合500 words)
<背景と目的>
成人および健康な子供では皮膚表面のpH は4.2 から5.6 と弱酸性に保たれている。 しかし ながら、外傷や熱傷領域における創傷のpH推移はいまだ明らかにされていない。本研究では
Ⅱ度熱傷の滲出液のpH測定を行い検討した。
<対象および方法>
対象は初診時に水泡膜を持ったⅡ度熱傷26例(平均年齢46.0歳、男性 62%)。12歳未満の 小児と、初診時に局所感染を認めた例は除外した。上皮化を認めた場合と、局所臨床感染徴 候(発赤、腫脹、疼痛、発熱)を認めた場合の2つを測定終了とした。滲出液の pH は、pH 測定試験紙 (MColorpHastTM, Merck KGaA, Darmstadt, Germany)を使用した。最初に水泡 膜内の浸出液のpHを測定した。初期測定の後、水泡膜を除去し、生理食塩水で洗浄後、透明 なハイドロゲル創傷被覆保護材(ビューゲル®、大鵬薬品、日本)を貼付した。臨床的必要性 に応じて週に2 3回交換した。交換の際にビューゲル®下の滲出液のpHを測定した。 pH測 定後、創傷を生理食塩水で洗浄し、ビューゲル®を交換した。創部培養検査は週1回実施した。
ビューゲル®のpHは4.0 7.0、生理食塩水のpHは4.5 8.5であった。統計分析は、t検定、
p値<0.05を統計的有意とした。
<結果>
初診時pHは6.5 9.0(平均8.55)。pH最大値は9.0、最小値は5.0。局所感染は6例(23%)
であった。非感染例と感染例との間において、初診時pHは有意差を認めなかった。非感染例 では、上皮化とともにpHは減少した。感染例の6例では、測定終了前と比較して、測定終了 時のpHは統計的に有意な増加(p <0.01)を示した。感染例の原因菌は4例が表皮ブドウ球 菌、2例が黄色ブドウ球菌であった。
<結論・考察>
現在、熱傷創管理は感染制御と創傷治癒向上の2つの方法を主軸に行われる。
感染制御は臨床における最大の課題の一つであるが、これまで局所感染の早期発見は医師の 経験に基づく判断に委ねられ、迅速、簡便で、かつ信頼性のある方法は存在しなかった。我々 の研究では、pH の増加を局所感染の臨床徴候発症前に確認することができた。pH 測定は、
局所感染やクリティカルコロナイゼーション(創感染に移行しそうな定着細菌をもつ創傷の状 態)の早期発見を容易にする重要な臨床的意義を持っていると考えられた。
東 京 医 科 大 学