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Vol. 57 No. 1, members previously reported. A cluster analysis revealed that the patients could be subdivided into two groups. One group sh

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音声言語医学 57:18 ─ 26,2016 

原  著

日本語版 Overall Assessment of the Speaker’s Experiences of Stuttering

から見た「成人吃音相談外来」を受診した患者の特徴と臨床応用への示唆

酒井奈緒美1)  森  浩一1)  北條 具仁2)

坂田 善政3)  餅田亜希子2,4)

要 約:当センター「成人吃音相談外来」の 1 年間の新規患者 43 名中,合併症のない 27 名 に対し,吃音の困難を包括的に評価する質問紙 OASES(Overall Assessment of Speaker’s Experience of Stuttering: Yaruss and Quesal, 2006)の日本語版試案を実施した.4 セクショ ンからなる OASES の重症度は,セクション 3(日常のコミュニケーション)が「中等度」で ある以外は「中等/重度」と困難が高く,既報告の吃音自助団体参加者のデータと比較してそ の差は有意であった.患者群は,全セクションで困難度が「中等/重度」の高困難群と,セクショ ン 1(全般的情報)が「中等/重度」である以外は「中等度」で困難度が相対的に低い中等度 困難群に分類された.言語聴覚士(ST)の評価(発話重症度と心理重症度)は,それぞれセ クション 3 とセクション 4(生活の質)のインパクト得点と,また各セクションの一部の項目 と有意に相関していた.OASES が,ST の評価からは浮かび上がらない吃音の困難を把握し, 臨床的介入の観点を提供しうることが示唆された. 索引用語:吃音,OASES,評価,QOL,重症度

Features of the Stuttering Patient Based on a Preliminary Japanese

Version of the “Overall Assessment of the Speaker’s Experiences of

Stuttering”

―With Suggestions on Usage of the OASES towards Clinical Intervention―

Naomi Sakai1), Koichi Mori1), Tomohito Hojo2), Yoshimasa Sakata3) and Akiko Mochida2,4)

Abstract: The “Overall Assessment of the Speaker’s Experience of Stuttering” (OASES;

Yaruss & Quesal, 2006) was designed to measure comprehensively the overall experiences and impacts of stuttering, in four sections. We translated the OASES into Japanese (OASES-J) and administered it to 27 clinical patients who had no other disorders. The results showed a moderate impact of stuttering in Section 3, “Communication in Daily Situations,” and moderate/severe impacts in the other three sections and the total averages. The impact ratings in all sections were significantly higher than those of the self-help group

国立障害者リハビリテーションセンター研究所1),同 病院2),同 学院3):〒359-8555 埼玉県所沢市並木 4-1 東御市民病院(現在の所属)4):〒389-0502 長野県東御市鞍掛 198 番地

1) Research Institute, National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities (NRCD),2) Hospital, NRCD,3) College, NRCD: 4-1 Namiki, Tokorozawa, Saitama 359-8555, Japan

4)Tomi Civilian Hospital (current affiliation): 198 Kurakake, Tomi-shi, Nagano 389-0502, Japan 2015 年 4 月 8 日受稿 2015 年 7 月 1 日受理

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は じ め に 成人期の吃音(主に発達性吃音)は,その発話症状 が長年にわたり継続してきた結果,さまざまな心理的 反応や行動傾向を有しており,これらの二次的症状が 発話症状そのものよりも大きな問題となっていること が古くから指摘されている1).特に近年では,Quality of Life(QOL)への吃音の影響が調査され,吃音は生 活のさまざまな側面にマイナスの影響を与えうること が報告されている2-4).具体的には,社交不安の問 題5-7),雇用や昇進,職業成績など職場での困難8-10) そして吃音症状を示しながら話すこと,また常に吃音 をコントロールしようと発話をモニターしながら話す ことからくる身体的・感情的疲労11)などがある. Yaruss12)は,障害の「結果」,つまり障害がその人 の生活に与える影響をも含めて全体を捉える必要があ る と 主 張 し,WHO の 国 際 障 害 分 類(International Classification of Impairments, Disabilities, and Handicaps; ICIDH; WHO)13)のモデルを吃音へ適用し た.その後,国際障害分類から国際生活機能分類 (International classification of Functioning, Disability,

and Health; ICF; WHO)14)への改定に伴い,ICF のモ デルを反映させた吃音の捉え方のモデルを提案してい

る15).そして,吃音の治療的介入・治療効果の測定は

これら幅広い側面にわたって行われるべきだと述べ, 日々の治療や治療効果研究で使用可能な,吃音の問題 を包括的に評価する質問紙として,Overall Assess-ment of the Speaker’s Experience of Stuttering (OASES)を発表した16).OASES は ICF の構成要素 に部分的に対応する 4 つの領域(=section,以下セ クション)からなっており,セクション 1(20 項目) が「全般的な情報」(吃音の程度,発話能力,吃音に 関する知識,吃音者として同定されることに対する本 人の感じ方),セクション 2(30 項目)が「吃音への あなたの反応」(ICF の個人因子に相当),セクション 3(25 項目)が「日常の状況でのコミュニケーション」 (ICF の活動・参加に相当),セクション 4(25 項目) が「生活の質」(吃音が日常生活に及ぼす影響)につ いて尋ねている(全 100 項目).いずれも,5 件法に て回答するもので(例:「1.全くない,2.めったに ない,3.時々ある,4.しばしばある,5.いつもある」), 回答選択肢は頻度や程度など,質問に応じて異なる. 成人を対象とした OASES-A(成人版,18 歳以上用) は,OASES-T(中高校生版,13〜17 歳用),OASES-S (学齢版,7〜12 歳用)とともに,標準化の手続きをもっ て出版にいたっている17).それに伴い,同じ英語圏で の他国のデータが報告され18),他言語への翻訳とデー タ収集19,20)により,世界的に共通した吃音の包括的な 評価法として広がりつつある. 一方,わが国の吃音評価法には,観察可能な吃音症 状を捉えることを目的とした吃音検査法21)があるの みで,OASES のような発話症状から派生した生活全 般に及ぶ吃音の問題を捉えるような評価法で広く使わ れているものは存在しない.そこでわれわれは,成人 吃音の問題を包括的に捉え,介入内容の検討や介入の 効果測定に使用できる OASES-A の日本語版を作成す ることを目指し,作業を進めている22) 現在,吃音臨床の現場において,成人の吃音の相談・ 訓練を実施している医療機関・言語聴覚士が少ないこ とが報告されている23).しかし,成人の吃音訓練を担 当する複数の言語聴覚士がいる医療機関からは,9 ヵ 月間で 65 例24),ないし,1 年間で 55 例の新規受診患 者25)があったことが報告されており,支援に対する ニーズは少なくない.吃音の当事者団体である全国言 友会連絡協議会(以下,言友会)の会員を対象にした 調査26)においても,言語聴覚士等による治療を受け

members previously reported. A cluster analysis revealed that the patients could be subdivided into two groups. One group showed moderate/severe mean impact ratings in all sections and in the total average. The other group showed the same impact rating in Section 1, “General Information,” as with the other group, but moderate impact in the remaining three sections and in total. The impact ratings and certain items in Sections 3 and 4 were significantly correlated with the 3-point impression scales of stuttering severity and psychological impacts used by speech therapists. These findings demonstrate that the OASES-J provides extra information about impact of stuttering beyond what speech therapists gather during a routine assessment, and that the OASES-J also could present useful perspectives towards clinical intervention.

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たいと回答した者(40 歳代まで)が 40%存在するこ とから,支援に対する潜在的なニーズがうかがわれる. 当センターでは2011年6月より「成人吃音相談外来」 を開設し,吃音のある成人の診療・支援・相談に取り 組んでいる(それ以前は成人と小児を同じ外来枠で対 応していた).本研究では,外来成人患者を対象に日 本語版 OASES(試案)を実施した結果を分析し,① 外来患者の抱える問題の特徴を示すことと,②臨床実 施上の OASES の有用性について考察することを目的 とする. 方   法 1 .日本語版 OASES 試案の作成

Yaruss and Quesal16)に掲載されている OASES の 質問項目全 100 項目を,著者ら(吃音に関する研究者, 成人の吃音診療を行っている言語聴覚士,医師)が協 議のうえ,日本語に翻訳した22) 2 .対象 2012 年 4 月から 2013 年 3 月までに当センター「成 人吃音相談外来」を受診した患者 43 名のうち,児童 期までに発吃して発達性吃音と診断され,吃音以外の 障害を併せもたない者 27 名(男性 25 名,女性 2 名). 平均年齢は 28.9 歳(SD=9.0,範囲=21-51 歳)であっ た. 3 .データ収集 初診時に吃音に関する問診票と各種質問紙のパッ ケージへの記入を依頼した.それら質問紙の一つとし て OASES 日本語版(試案)を実施した. 医師や言語聴覚士(以下 ST)との面接場面,また ST が実施した吃音検査法27)の結果に基づき,担当 ST が患者の「発話重症度」と「心理重症度」を以下 のように 3 段階で評価した.発話重症度については, 流暢性の種類,頻度,持続時間,また随伴症状等を含 めて総合的な印象で「1.軽度」「2.中等度」「3.重度」 の 3 段階で評価した.心理重症度は,発言内容や態度 も含め,吃音について「1.気にしていない」「2.気 にしている」「3.悩んでいる」の 3 段階で評価した. 4 .分析方法

日 本 語 版 OASES 試 案 に つ い て は Yaruss and Quesal16)に従い,セクションごとと,4 セクションを 合計した総合の impact score(以下,インパクト得点) を算出した.計算方法としては,各項目の 5 件法の回 答の番号をそのまま点数として読み,a を[各項目に 対する回答の点数の合計],b を[有効回答数(回答 した項目数)に 5 を掛けたもの(その回答者が取りう る最高得点=全項目に 5 と回答した場合の得点)]と して, インパクト得点 =   ×100 である.インパクト得点の取りうる値は 20〜100 とな る.さらにインパクト得点に対し 5 段階の impact rating(以下,重症度評定)が割り当てられている(表 1).おのおののセクションの重症度と,全体の総合重 症度評定を,各対象者において算出した. OASES の結果から対象者の特徴を探るため以下の 分析を実施した. まず各質問項目への回答の偏りを確認するため,項 目ごとに平均得点と標準偏差を算出し,項目分析を 行った.項目分析では,平均得点−標準偏差<1 の際 に床効果あり,平均得点+標準偏差> 5 の際に天井効 果ありと判定した.次に,各セクションのインパクト 得点あるいは項目ごとの得点について,OASES のマ ニュアル17)や先行研究18)にあるアメリカの標準デー タや日本のセルフヘルプグループへの参加者を対象と したデータ22)と比較するため,t 検定(正規性と等分 散性を確認し,必要があれば Welch の補正をかける) を実施した. 各セクションのインパクト得点を用いて,対象者の 下位グループの存在を検討した.分析方法は,平方ユー クリッド距離を用いた Ward 法による階層的クラスタ 分析である.クラスタ間におけるセクション得点を比 較するため,得られたクラスタを独立変数,各セクショ ン得点を従属変数とした分散分析を行った.最後に OASESの臨床的有用性を検討するために,各セクショ ンのインパクト得点間の相関,ST の評価(発話面/ 心理面)と各セクションのインパクト得点,あるいは 各項目との相関を調べた. 結   果 1 .対象者の年齢 本研究の対象者の平均年齢と,アメリカの標準デー タ17),日本のセルフヘルプグループのデータ22)におけ a b 表 1 インパクト得点と重症度 インパクト得点 重症度 20.0-29.9 Mild(軽度) 30.0-44.9 Mild to Moderate(軽/中等度) 45.0-59.9 Moderate(中等度) 60.0-74.9 Moderate to Severe(中等/重度) 75.0-100 Severe(重度)

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る対象者の平均年齢を表 2 に示す.本研究対象者はい ずれの対象者よりも有意に平均年齢が低かった(p <.01). 2 .項目分析 全 100 項目について基礎統計量の算出を行った結 果,7 項目に天井効果,1 項目に床効果があると判定 された.天井効果はセクション 1 に 2 項目,セクショ ン 2 に 4 項目,セクション 4 に 1 項目存在した.床効 果はセクション 4 に 1 項目存在した(表 3). 3 .インパクト得点と各項目における有意差検定 各セクションにおけるインパクト得点の平均を表 2 に示す.平均得点に対する重症度は,セクション 3 が 「中等度」で,それ以外はすべて「中等/重度」に相当 した. 各セクションと総合の重症度評定の分布を表 4 に示 す.本対象者においては,全セクションと総合におい て「軽度」の者は存在しなかった.セクション 1 と 2 と総合に関しては,「軽/中等度」に相当する者も存在 せず,分布のピークは「中等重度」にあった.セクショ 表 2  3 つの調査における対象者の年齢と各セクションの平均インパクト得点 (標準偏差) 日本(外来) n=27 日本(言友会)22) n=30 アメリカ17) n=173 対象者の年齢 28.9(9.0) 47.9(13.7) 51.0(13.5) セクション 1  全般的な情報 67.7(8.9) 47.6(10.7) 53.4(13.7) セクション 2  吃音への反応 68.7(9.9) 53.8(14.8) 55.0(16.2) セクション 3  日常でのコミュニケーション 57.4(11.2) 42.9(13.6) 53.2(15.3) セクション 4  生活の質 63.5(15.3) 44.7(19.2) 47.8(17.7) 総合 64.2(9.0) 47.6(13.8) 52.0(14.7) **p<.01 ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** 表 3 天井効果と床効果が認められた項目 得点の偏り セクション 項目番号 項目内容 平均得点 SD 回答範囲 天井効果 1.全般的な情報 9 10 吃音の治療の選択についての知識 吃音の人のセルフヘルプグループについての知識 4.1 3.8 1.0 1.2 2〜5 2〜5 2.吃音への反応 25 38 41 48 心配・不安 より流暢にするために挿入のことばや助走を使う 自分の吃音についてほとんどいつも考えている 自分は他の多くの人々のようにうまくは話せない 4.3 4.2 4.0 4.3 0.7 0.8 1.1 0.8 2〜5 2〜5 2〜5 2〜5 4.生活の質 80 仕事において(吃音の干渉) 4.0 1.0 2〜5 床効果 4.生活の質 83 家族との関係(吃音の干渉) 1.9 1.0 1〜5 表 4 各セクションにおける重症度分布(人数) セクション 軽度 軽/中等度 中等度 中等/重度 重度 1.全般的情報 0 0 5 18 4 2.吃音への反応 0 0 6 13 8 3.日常でのコミュニケーション 0 4 13 9 1 4.生活の質 0 5 5 10 7 総合 0 0 10 15 2

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ン 3 と 4 に関しては「軽/中等度」〜「重度」の範囲 に対象者が分布し,それぞれピークは「中等度」と「中 等/重度」にあった. 各セクションと総合のインパクト得点について,本 研究対象者の値,アメリカの標準データ17),セルフヘ ルプグループ参加者のデータ22)を表 2 に示す.本研 究対象者のデータとアメリカの平均値を比較したとこ ろ,セクション 3 を除いて,本対象者の平均インパク ト得点が有意に高いことが示された(p<.01).また 本研究対象者とセルフヘルプグループのデータの比較 では,すべてのセクションにおいて本研究対象者の平 均インパクト得点が有意に高かった(p<.01). セクション 1 については,セルフヘルプグループに 関する知識や態度を問う項目(2 項目)が含まれるた め,それらの項目の得点差がインパクト得点の差へ反 映されているのか確認するため,項目ごとに外来患者 とセルフヘルプグループの得点を比較した.その結果 外来患者がセルフヘルプグループより有意に困難度が 高いことを示す項目が,20 項目中 15 項目(うち 12 項目が p<.01, 3 項目が p<.05)存在した.内訳は, 流暢性に関する 4 項目,吃音に関する知識の有無を尋 ねる 5 項目,吃音に関する感じ方に関する 6 項目であ り,セルフヘルプグループと関係のない項目にも差が 認められた. 4 .対象者の分類 27 名の対象者に対し,4 つのセクションのインパク ト得点を用いてクラスタ分析を実施したところ,2 つ のクラスタ(外来 1 群,外来 2 群)を得た.第 1 クラ スタ(外来 1 群)には 17 名(63%),第 2 クラスタ(外 来 2 群)には 10 名(37%)の対象者が含まれていた. 各クラスタにおけるセクション得点の平均を図 1 に実 線で示す.2 つのクラスタの分散分析の結果,セクショ ン(F(4, 100)=15.77,p<.01),クラスタ(F(1, 25) =54.10,p<.01)ともに主効果が認められ,かつ,交 互作用が有意であった(F(4, 100)=12.91,p<.01). 外来 1 群のインパクト得点の平均は,すべて「中等/ 重度」に相当し,外来 2 群については,セクション 1 のみが「中等/重度」,その他のセクションと総合は「中 等度」に相当した.クラスタ間の年齢に有意差は認め られなかった. 5 .各セクション得点間,また ST の評価との相関 セクション間のインパクト得点の相関を求めたとこ ろ,セクション 2 と 3,2 と 4,3 と 4 の間に有意な相 関が認められた(相関係数 r=0.599〜0.780,p<.01, 表 5).セクション 1 とその他のセクションには有意 な相関が認められなかった. ST の評価と各セクションおよび総合得点との相関 を求めたところ,発話重症度とセクション 3 との間(r =0.399 p<.05),心理重症度とセクション 4 との間(r =0.387,p<.05)に有意な相関が認められた(表 5). 相関は有意であるが相関係数が低かったため,セク ション 3 の各項目得点と発話重症度,セクション 4 の 各項目得点と心理重症度の相関も求めたところ,発話 重症度と相関が有意な項目はセクション 3 の 25 項目 図 1 平均インパクト得点のクラスタ間比較 平均インパクト得点 外来 外来 1 群(17 名) 外来 2 群(10 名) セルフヘルプグループ(日本)22) 重症度評定 重度 中等/重度 中等度 軽/中等度 軽度 セクション 総合 1.全般的な情報 20 30 40 50 60 70 80 2.吃音への反応 3.日常での 4.生活の質 コミュニケーション

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中 6 項目(相関係数 r=0.389〜0.520.うち 2 項目が p <.01,4 項目が p<.05)で,心理重症度と相関が有意 な項目はセクション 4 の 25 項目中 7 項目(相関係数 r=0.396〜0.490.うち 1 項目が p<.01,6 項目が p<.05) であった.反対に相関がない項目(|r| ≦ 0.2)はセクショ ン 3 では 14 項目,セクション 4 では 9 項目であった. 考   察 当センターにて開設している「成人吃音相談外来」 を受診した患者を対象に,日本語版 OASES 試案を実 施し,ST による発話/心理面の評価と併せて分析を 加えた. まず,本対象者の OASES による吃音重症度は,セ クション 3 において「中等度」である以外は,「中等/ 重度」と比較的困難度が高いことが示された.また, 各セクションにおけるインパクト得点の平均が,セク ション 3 を除いて,アメリカの標準データ17)より有 意に高いことから,日本で外来へ支援を求めて訪れる 患者は,アメリカの吃音成人より困難度が高いことが 示された.ただしここで記しておくべきことは,アメ リカの標準データは,主にアメリカのセルフヘルプグ ループに関与している人を対象にしている点である. また日本のセルフヘルプグループに関与している者の データ22)と比較した結果からも,外来患者は全セク ションにおいて有意に困難度が高いことが示された. 同時に,項目分析の結果,「吃音の人のセルフヘルプ グループについて」の知識を尋ねる項目に天井効果(ほ とんど知識がないことを意味する)が認められたこと から,本研究対象者はセルフヘルプグループへほとん ど関与していないことが推測される.このことからも, 本研究対象者が他データ17,22)と比較して高い重症度を 示していることには,国の相違ではなく,セルフヘル プグループへの関与の有無が関係している可能性があ ると考えられた. また,本研究対象者の平均年齢は,アメリカ17) 日本22)のセルフヘルプグループの研究の対象者より 有意に低かった.外来患者に比較的若い年齢層の者が 多いことは,40〜50 代にかけて治療に対するニーズ が低下することを示している調査研究26)の結果とも 一致する.また,年齢と QOL のある側面の高さが相 関するとの報告もあることから2,28),本研究対象者の 重症度が他のデータ17,22)に比して高いことは,年齢の 影響も反映されている可能性がある. 各セクションのインパクト得点を用いたクラスタ分 析の結果からは,患者群を 2 群に分類できることが示 された.分散分析の結果,2 群間のセクションごとの 得点に有意差・交互作用が認められ,全セクションで 困難度が「中等/重度」と高い群(高困難群)と,セ クション 1 が「中等/重度」である以外は「中等度」 で困難度が相対的に低い群(中等度困難群)に分かれ た(図 1).この結果から,外来患者については,全 員に共通してセクション 1 における困難度が高いが, それ以外の側面については,日本のセルフヘルプグ ループに関与している者と同じ程度,すなわち中等度 の困難度を示す一群が存在し,それが対象者の 4 割近 くを占めることが示された.セクション 1 の「全般的 情報」で測定する内容は,自身の身体機能に関する主 観的評価であり,自身の発話の流暢性や自然性に対す る自己評価,吃音に関する全般的な知識の有無,治療 で学んだテクニックの使いやすさ,吃音に対する全般 的態度(吃音が関与する現状について肯定的・否定的) を含む.特に,セクション 1 に含まれる「吃音の治療 の選択について」と「吃音の人のセルフヘルプグルー プについて」の知識を尋ねる項目については天井効果 が認められ,またセルフヘルプグループにおける調査 データとの比較では,20 項目中 15 項目において有意 に外来患者の困難度が高いことが示されたことから, 本研究対象者は自身の発話や吃音全般に対して否定的 表 5 各セクション得点間,および ST の評価との相関係数 項 目 ST 評価 インパクト得点 発話重症度 心理重症度 セクション 1 セクション 2 セクション 3 セクション 4 総合 ST 評価 発話重症度 ― 心理重症度 0.037 ― インパクト得点 セクション 1 −0.017 −0.160 ― セクション 2 0.095 0.352 0.193 ― セクション 3 0.399* 0.223 0.248  0.656** セクション 4 0.178 0.387* 0.056  0.780**  0.599** 総合 0.208 0.341 0.349  0.904**  0.820**  0.858** :p<.05;**p<.01

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に捉え,吃音そのものや治療に関する知識が乏しく, セルフヘルプグループなどのサポートが希薄であるこ とが示された.この結果から得られる臨床的示唆は, 患者の一部(中等度困難群)については,吃音に関す る知識の提供,セルフヘルプグループの紹介,客観的 に発話をモニターする指導(ST とともに吃音に直面 すること,吃音行動の理解とそれに伴う否定的感情の 軽減を含む)によって,吃音による困難がセルフヘル プグループに所属する者と同程度までに改善すること が見込めることである.顕在化する発話症状・随伴症 状のみならず,心理・認知面の問題も絡み合って日常 の困難が複雑に形成される吃音は,治療・支援も複雑 だと思われ,ST にも敬遠されがちである.しかし本 結果は,中等度困難群のような一部の患者については, OASES の重症度評定が特に高いセクションに焦点を 当てて介入することで,吃音の問題を大きく軽快化さ せうることを示唆している. 本研究においては,セクション 1 の「吃音の治療の 選択について」と「吃音の人のセルフヘルプグループ について」の知識を尋ねる項目以外にも,セクション 2 の 4 項目と,セクション 4 の 1 項目において天井効 果が認められた.しかし,セルフヘルプグループに関 与している者を主な対象とした先行研究17,22)や,治療 を希望している者を対象に含んでいる研究19)におい ては,天井効果が全く存在しない.この結果の相違は, 専門機関に支援を求めてくる吃音の患者が,吃音に対 する感情として「心配・不安」を頻繁に感じており(項 目 25),吃音に対する行動的反応としては「より流暢 にするために挿入のことばや助走を使う」頻度が高く (項目 38),考え方の傾向として「自分の吃音につい てほとんどいつも考えている」(項目 41),「自分は他 の多くの人々のようにうまくは話せない」(項目 48) と思っている,また仕事場面でのコミュニケーション に吃音が大きく影響していると感じている(項目 80) 傾向がある可能性を示している.このことから,吃音 の患者に対する支援の観点としてセクション 1 からの 知見に加え,①「心配・不安」の処理,②吃音につい ての考え方の検討,③発話面の工夫を行わないですま せるための心理教育や発話訓練,④仕事場面において コミュニケーション能力を高める訓練も重要であるこ とが示唆される. ST の評価については,発話重症度とセクション 3, 心理重症度とセクション 4 との間にそれぞれ弱いが有 意な相関が認められた.セクション 3 では具体的な場 面においてコミュニケーションがどの程度難しいかを 尋ねており,流暢かどうかは問うていない.しかし, ST による発話の重症度と相関が認められたことから, 流暢性そのものも本人のコミュニケーションの困難度 の感じ方と関連していることが示唆される.セクショ ン 4 は,いくつかの生活場面におけるコミュニケー ションの満足度や対人関係,また自身の人生を生きる 姿勢や自己信頼感などに対して吃音が影響を与えてい るかどうかを尋ねるものである.これが ST の評価に よる心理重症度と相関していたことから,生活上のさ まざまな側面に吃音がマイナスの影響を及ぼしている と感じている人に対し,ST は心理的重症度が高いと 判断しやすいことが示された. 一方,OASES のセクション 1,2 と ST の評価との 間には相関が認められなかった.つまり,セクション 1 の全般的情報(発話の流暢性や自然性に対する自己 評価,吃音に関する知識の有無,吃音に対する全般的 態度)や,セクション 2 の吃音への反応(吃音に対す る感情,行動,考え方)は,ST の評価からは浮かび 上がらない吃音の困難の側面であることが示唆され た.本研究の結果とセルフヘルプグループ会員を対象 とした研究との比較から,セクション 1 で測定される 困難は,外来患者が有しやすい困難であることが明ら かとなり,またセクション 2 は ICF の個人要因に相 当し,成人吃音の問題を考える際に客観的には捉えに くい重要な側面1)であることから,ともに介入の観点・ 方法を検討する際に必要で有益な情報である.このこ とから,OASES の特にセクション 1 と 2 は,問診や 発話の客観的評価,ST の評価のみでは拾えない情報 を提供する質問紙として有用であることが示された. セクション 1 の困難に対する介入観点については上に 述べたが,セクション 2 については,感情・行動・認 知に関する個々の質問への回答が,認知行動療法的介 入29,30)における介入の観点を提供しうると考えられ た. セクション 3,4 のインパクト得点については,そ れぞれ発話/心理面の ST の評価と有意な相関が見ら れたが,項目ごとの分析では相関のない項目のほうが 相関のある項目より多かった.つまりセクション 3, 4 には,ST の評価に反映されない困難を測定する項 目も多数含まれていた.セクション 3 においては,「大 勢の人の前で話す」「聞き手の反応にかかわらず話を 続ける」「レストランで注文する」などがそれに相当 するが,これらは ST が外来では実際に目にできない 場面である.そのため,セクション 3 は,ST の評価 では捉えられない,吃音のある成人が日常のさまざま

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な場面において直面している困難について情報を提供 しうるものであり,支援に向けた有用な情報源となる 可能性が示された.セクション 4 において,ST の評 価との相関が有意な項目は,「人生の全体的な展望」「自 分自身に対する自信」「人生に対する熱意」などに対 する吃音の影響を問う項目であった.このことから, 心理面に関する ST の評価は,自分に信頼をおき希望 をもって人生に参加する姿勢に,吃音がいかに影響を 及ぼすと本人が考えているかを反映していることが示 された.一方,相関が低い項目は,家族,友人,その 他の人々との交際関係や仕事における吃音の影響を問 う項目であった.これらのことからセクション 4 は, 生活の質の低下を感じる具体的側面について情報提供 しうるものであり,「人生への積極的参加」といった 包括的な QOL の土台に相当するような個別の側面を 評価できることが示された. ま と め 病院外来を受診する患者は全体として,OASES の セクション 3(日常でのコミュニケーション)以外の すべてのセクションで困難度が高く(中等/重度),ア メリカや日本のセルフヘルプグループ参加者のデータ と比較してその差は有意であるが,なかにはセクショ ン 1(全般的情報)を除くすべてのセクションで困難 度が比較的低い(中等度)一群が存在することが示さ れた.OASES の一部のセクション・項目は ST の評 価と相関が認められず,OASES は介入の観点をも含 む独自の情報を与える成人吃音の評価法として有用で ある可能性が示された. 付記 本研究の一部は第 59 回日本音声言語医学会総会・学 術講演会(2014 年 10 月,福岡)にて発表した.本研究は日本 学術振興会科学研究費,平成 26〜28 年度若手研究(B)課題 番号 26750216(第 1 著者)と平成 23〜26 年度基盤研究(B) 課題番号 23320083(研究分担者,第 2 著者と第 4 著者)の補 助を受けた.  利益相反自己申告:申告すべきものなし. 文   献

1)Sheehan JG: Stuttering: Research and Therapy, Harper & Row, New York, 1970.

2)Craig A, Blumgart E and Tran Y: The impact of stuttering on the quality of life in adults who stutter. J Fluency Disord, 34: 61-71, 2009.

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別刷請求先:〒359-8555 埼玉県所沢市並木 4-1       国立障害者リハビリテーションセンター       研究所感覚機能系障害研究部

参照

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