5 月 27 日の近代・戦後・現代美術セールは、3,671 万 880 香港ドル( 約 5 億 1,175 万円 )、対落札予想価格下値の出来 高率 104% と、まずまずの成績を収めた。前回のような立 ち見こそ出なかったものの会場には多くの参加者が訪れ、 なかには 10 年前、初回の香港セールから参加している顧客 も訪れるなど、エスト・ウェストが香港進出から 10 年の歴 史の中で少しずつ、しかし着実にこの香港に根を下ろして いることを感じさせるセールであった。
草間人気 変わらず、1 ロット目から伸び
2017 年にで高額で取引された女性アーティスト世界第 1 位の草間彌生。本セールの最初のロットは草間の「思い出 の女」であった。黄緑色の紙にドットやネットをちりばめ ながら描かれたこの珍しい作品が落札予想価格を大幅に超 える 330 万 4 千香港ドル( 約 4,606 万円 )で落札されると、 続くサムホールの「かぼちゃ」と「レモンスカッシュ」も 落札予想価格上値を超える金額で落札された。次いで登 場したのが草間彌生の 100 号のアクリル画、「INFINITY-SILVER-NETS [TWHERO]」。鮮やかなピンクの背景にシ ルバーのペインティングで無限の網の目が描かれた大変珍 しいこの作品は、802 万香港ドル( 約 1 億 1,180 万円 )で 落札され、今季セールにおけるトップロットを飾った。 変わらぬ世界的人気といえば、奈良美智も同様だ。今回ド ローイング、写真、版画とバラエティに富んだ 4 点の作品 が出品されたがいずれも順調に落札され、この作家の安定 した人気を裏付けた。日本戦後作家の存在感
香港セールでは日 本戦後作家の作品 が常に注目を集め るが、今回は特に 珍しく良質な作品 が 多 く 集 ま っ た。 その中でも群を抜 いていたのは中西 夏之の「韻」。 中西の極めて初期 の作品であり、カー ルハインツ・シュ トックハウゼンの 電子音楽に由来す ると言われる本作 品は、中西の熱狂的なコレクターですら類似の作品を 1 度 見たことがあるかないかという大変珍しい作品である。カ タログが公開されるや否や問い合わせが殺到した本作品は、 落札予想価格下値の 5 倍に迫る 94 万 4 千香港ドル( 約 1,320 万円 )で落札された。 また、今回はヴェニス及びサン・パウロのビエンナーレにも 出品された山口長男の代表作ともいえる「二つの組合せ」が 登場。黒地に赤褐色で大胆に描かれた、有機的な幾何学模様 が印象に残る本作品は、下見会の時点で多くの愛好家が注目香港セール、優品揃うも分かれた明暗
草間彌生「INFINITY-SILVER-NETS [TWHERO]」 130.3 × 162 cm 落札予想価格700 万 - 1,200 万香港ドル 落札価格 802 万香港ドル 約 1 億 1,180 万円 * 日本円は 1 香港ドルを 13.94 円とした参考価格 にぎわいを見せる日本戦後作家の展示室100 号の草間アクリル画
1億 1,180万円
で
今季トップ
-近代・戦後・現代美術-
中西夏之「韻」 53.3 × 45.8 cm* 日本円は 1 香港ドルを 13.94 円とした参考価格 しており、最終的に 578 万香港ドル( 約 8,060 万円 )と落札予想価格上値を超える金額で落 札された。 奇抜な象徴的作品で現代社会に警鐘を鳴 らし続けた工藤哲巳の作品も注目をあつ めた。パリに在住しヨーロッパを中心に 活躍したこの作家の作品が香港のオーク シ ョ ン に 出 る こ と は 非 常 に 稀 で あ る が、 出品すると欧州や日本だけでなく、中華 圏からも問い合わせがあり、オークショ ン 当 日 は 下 値 の 3.5 倍 で 落 札 さ れ た 鳥 籠 の 立 体 作 品 を は じ め と し、 出 品 さ れ た 3 点全てが順調に落札。 有元利夫の作品「海のある部屋」も、その 珍しさが話題を呼んだ作品である。イタリ アのフレスコ画に影響を受けた独特の画風 で一世を風靡したにも関わらず、38 歳で夭 折したこの作家の作品がオークションに出 されることは滅多にない。下見会でも大き な注目を集め、事前に複数のビッドが入っ た 本 作 品 は 106 万 2 千 香 港 ド ル( 約 1,480 万円 )で落札され、死後 30 年以上経った今 もこの作家の愛好家が多数いることを裏付 けた。 日本戦後美術の代表的な動向である具体・もの派の作家の人気も堅調だ。田中敦子のパステルの 2 作品は会場での激しい競 りの末、それぞれ落札予想価格を超える金額で落札された。もの派を代表する菅木志雄の作品は、ここ近年海外からの評価 も高まっており、今回の出品作品群も海外からの問い合わせが非常に多く、立体作品は全作品が順調に落札された。
人気爆発のロッカクアヤコ 落札予想価格下値の 4 倍を達成
一方でロッカクアヤコの躍進ぶりは特筆すべきものがあっ た。かつて道行く人を相手に拾ってきた段ボールにペイン ティングをしていた彼女は、今からさかのぼること 11 年前 の 2007 年、弊社ギャラリーにて展覧会とライブペインティ ングを行っていた。弊社ギャラリーにゆかりのある作家が今 日活躍している姿を見ることは大変喜ばしい。 これまでは日本でのオークションに出ることが多い作家で あったが、海外で活動の多い作家なだけあり、香港セールに 出品されると世界各国から問い合わせがあった。今回ロッカ クの作品は 3 点出品されたが、25 号の作品が落札予想価格下 値の 4 倍近くとなる 38 万 9,400 香港ドル( 約 543 万円 )で落 札されると、次の正方形の作品 2 点もそれぞれ落札予想価格 上値を大幅に超える 11 万 8 千香港ドル( 約 164 万円 )、10 万 300 香港ドル( 約 140 万円 )で落札された。堅調な韓国作家、明暗わかれる中国作家
エスト・ウェストが今から 27 年前の 1991 年から取り扱ってきた L. ウーファン。四半世紀の時を経て、今や韓国を代表する 作家となった彼だが、今回は 74 年の「From Point」、87 年の「With Winds」、そして 93 年の「Correspondence」と、徐々 に削ぎ落とされ、余白が重要な意味を持っていく彼の作風の系譜を辿ることができる 3 点の作品が出品された。下見会でも落札予想価格350 万 - 550 万香港ドル 落札価格 578 万香港ドル 約 8,060 万円
ロッカク アヤコ「無題」 60 × 90 cm
2016 年より、オークション会場のホテルに併設されたアーケー ド内に事務所を構えるエスト・ウェスト香港オフィス。 今春より、同じアーケード内の、より広い一角に移転いたしました。 こちらの部屋は「ギャラリー 1」。昨年春の香港オークションの際、 ジュエリーと一部の絵画・彫刻を展示し、下見会会場としても使 用したことのある場所です。 廊下側が全面ガラス張りの開放的なこの空間は、横に長く設計され ているため、仕切りを設け、応接スペ-ス、オフィススペースそし て倉庫スペ-スと役割を分けることで使いやすく、そしてご来社い ただくお客様にとってわかりやすく居心地の良い空間となることを 意識しています。 事務所のあるワンチャイ( 湾仔 )には、多彩な美術関連のイベント やオークションが開催される香港コンベンション&エキシビジョン センターがあり、H QUEEN'S や タ イ クゥン( 大館 )など、近年 新しいアートスポットが次々と開館したセントラル( 中環 )からも 近い地域となっています。 2019 年には、美術館「M+」が九龍に開館予定。香港はもと もと、アートフェアやギャラリー、オークションハウスが進出し、 美術作品を購入する土壌が整っており、ここに「収集・研究・展示」 を旨とする美術館が整えば、新たなコレクターが情報を得て、よ り美術市場が活性化される好循環が期待されます。皆 様、 香 港 にお越しの際は、ぜひエスト・ウェストをお気軽におたずね下 さい! 開放感ある応接スペース デザインを施したオフィス及び倉庫スペース 香港オフィス : Gallery 1, ART ONE, M/F, Convention Plaza,1 Harbour Road, Wan Chai, Hong Kong 3 点をじっくり見比べる愛好家の姿が見られたこれらの作品は全て 順調に落札され、中でも 4 号の「From Point」が 76 万 7 千香港ド ル( 約 1,070 万円 )の高値で落札された。 同じく韓国の作家、L. カンソ。L. カンソは今年のアートバーゼル香 港で注目の作家として紹介され、オークション開催時にも香港のギャ ラリーにて展示が行われており、昨今急速に人気が高まっている作 家である。今回出品された 90 年代の代表シリーズの 1 つ「From an Island」はアジア圏のコレクターから問い合わせが殺到し、落札予想 価格上値を超える 14 万 1,600 香港ドル( 約 200 万円 )で落札された。 中国漆藝の父とも呼ばれる喬十光は、ここ数年で人気が急上昇。最 初の作品が落札予想価格下値の 3 倍近くの 44 万 8,400 香港ドル( 約 625 万円 )で落札されると、続く「南海の落陽」は下限の 4 倍近く、 76 万 7 千香港ドル( 約 1,070 万円 )で落札され、会場を大いに盛り 上げた。また、Z. ウーキーの版画 2 点も落札予想価格上値をそれぞ れ 3 倍以上上回る金額で落札された。 その他、ウォーホル、へリング、オピーなどの欧州現代作家の作品 が好調に売れた一方で、欧州近代作家は不落札も目立ち、厳しい結 果となった。今回高値で売れたものは、エスティメーションが適切 であったことからも、我々の今後の課題の 1 つとして、良質な作品 を集めるだけでなく、適切な価格を提示することが挙げられる。 喬 十光「南海の落陽」 90 × 180.8 cm 落札予想価格20 万 - 30 万香港ドル 落札価格76 万 7 千香港ドル 約 1,070 万円
L. ウーファン「From Point No.221」 24.7 × 33.5 cm
落札予想価格60 万 - 90 万香港ドル 落札価格76 万 7 千香港ドル 約 1,070 万円
リニューアル! 広くなった香港オフィス
一極集中のマーケットへの懸念
スター作家に群がる市場
今回のオークションは良質な作品が揃ったにもかかわらず盛況とは言い難い結果に終わった。 ロッカクアヤコのように急激に評価の上がった作家がいる一方で、これまで定期的にオーク ションに出品され、地道に評価されていた作家の作品が精彩を欠く結果となった。また、同時 期に開催された他のオークションも含め、落札予想価格下値より下で売れるもの、落札予想価 格上値より高値で売れるものの振れ幅が大きく、直近で注目度の高い作家に入札が集中し、そ れ以外の作家が置き去られている印象を持った。 このような一極集中型の売買がされる背景には、アジアなどにおける新興国の美術市場におい ては短期的視野での投資の決定が先行し、美術市場における売り手・買い手ともに未熟である ことがある。美術市場が一部の華々しいスター作家やスター作品ばかりをとりあげ宣伝する体 質は、かねてから問題視されている。とある作品が 100 億で売れた、などといったニュースは 話題となるが、このようなニュースが独り歩きすることで美術の多様性が見失われると同時に アートをますます一般人にとって敷居が高い市場にしてしまっている弊害もある。今年のアー トバーゼル /UBS の美術市場レポート * においても直近 10 年で 100 万 US ドル以上のスター 作品の市場のみが拡大、スター作品とそれ以外の作品の売上のギャップが拡大していると発表、 市場のスター作品への偏向性に懸念を表している。 アートは投資であると同時に、人生を豊かにし、愉しむためのものである。買い手の興味がスター 作家やスター作品に集中してしまう現状は、自分のものさしで美を愛で作家を支えるという、純 粋な意味での愛好家が減っていることの表れである。これは、オリジナリティが重視される美術 市場において極めて矛盾した状況であり、長期的視点での市場そのものの衰退を意味する。 この問題の一因として、新しく参入を考えるコレクターにとって絵画を購入する上で基準となる 情報が十分に存在しないことが挙げられる。株を購入するにあたっては、どこで情報を入手しど こに行けばいいかは想像に難くない。一方で、美術品を購入する場合、信頼できる情報源、評価 軸を見つけるのは非常に難しい。どこに行けば自分の好きな作家の作品に出会えるのか、どのよ うに作家の市場価格を調べるのか。この情報入手の難しさが一般人の美術市場への参入の障壁と なっており、一部の華々しい情報に踊らされる構造を生み出しているのではないかと考える。健全な市場形成のための情報提供
美術品の市場価格を理解する上で、参考になるのはオークションである。この公開された売買 を通して、我々は個々の作家を評価しうるのである。このように、オークションは落札結果を 公表することによってその作家、作品の価値に対する情報を与え、購入層のすそ野を広げる役 割を担っている。エストにおいても、香港進出から 10 年の時を経て着実にアジア・ヨーロッ パの顧客が増え、顧客が国際化している実感がある。弊社のライブビッドも年々参加者を増や しており、今回のセールでは 22 人が参加、若年層を中心に好評を得ている。また、香港と日 本の 2 カ所で開催することにより、日本の顧客が香港セールに、アジアの顧客が東京セールに も参加することで、顧客の裾野が少しずつ広がっていることを実感している。 また、今回のセールでは浅野弥衛のように、実力があるが認知度が十分でない作家作品や、平 賀敬のように地道に評価されてきた作品も厳しい結果となった。しかしこれは市場の一時的な 反応であり、これらの作家作品を敬遠することは早計に過ぎる。エスト・ウェストは草間彌生、 山口長男、山田正亮など、戦後の作家の多くを 1990 年代からオークションで扱い、世界に紹 介してきた。今回のオークションでは約 2,470 万円で落札された草間彌生のサムホールの「か ぼちゃ」、約 430 万円で落札された山田正亮の 60 年代のストライプ作品も、2000 年代初頭は 10 万円を超えるか超えないかの値で取引されていた。厳しい時代を乗り越えてこのように評 価される日がくることに感慨を覚えると同時に、作家の本質的な評価は一朝一夕で決まるもの ではないことを痛感している。 情報を提供していくこと、そして作家と顧客をつないでいくこと。美術市場を創造する立場で ある責任を忘れず、刹那の結果に踊らされることなく長期的視野を持って、今後も作家やコレ クターなどの美術市場のプレイヤーを支えていきたい。このところ、インターネット経由でオークションに参加する「エ スト・ウェスト ライブビッド」にてご参加、ご落札いただくお客 様が増えています。 さて、そんなライブビッドですが、新たな機能「考え中ボタン」 が登場しました。オークション中、別の参加者に落札権を取られ ているものの、まだ入札を検討している場合、オークショニアに 「まだ入札するかもしれない」という意思を伝えることができる ボタンです。クリックすると黄色く点灯し、一定の秒数が過ぎ ると元に戻ります。 ライブビッドのお 客 様 は 会 場 にはいらっしゃらないため、オー クショニアには「まだ入札するか迷っている」のか、「もう入札 しない」のかが分かりません。オークショニアが終盤に「落札し ます!」と発声した時、もし、まだ迷っている場合、この考え中 ボタンがライブビッダーの意思を伝える唯一の手段となります。 ぜひ、ご活用ください。 考え中 考え中 考え中ボタン NEW! 一定の秒数、黄色く点灯 ※「考え中」ボタンは、一度は入札ボタンを押し、競りに参加することで有効となります。 ※「考え中」ボタンは、入札価格が上がるごとに一度ずつ押すことが出来ます。 詳細はウェブサイトで!
ライブビッドに登場!「考え中」ボタン
近年、宝飾品のコレクターは購入する商品の選別が慎重に なっているといえる。宝石の品質、産地、鑑定書の有無だ けではなく、デザイン性と実用性も購入時の大きな判断材 料となり、価格だけが主要な指標ではない。香港、中国、 台湾を含む中華圏の市場は、コレクション( = 財産 )として 宝飾品を購入する層が多くを占めているが、昨今の政治変 化に起因する経済の鈍化を受け、市場全体は活発ではなく、 故に愛好家の興味は主に投資価値とコストパフォーマンス の高い宝石の購買に集中している。今回の春季オークショ ンはそれらの煽りを受け、残念ながら理想的ではない結果 となったが、ある意味で現在のコレクターの購買行動を把 握する良い機会となった。高品質カラーダイヤモンドに注目集まる
東京オークションでは、デザイン性の 高いジュエリーが人気を集めており、 歴史を感じるアンティークジュエ リーは多くの来場者の目を惹いた。 香港オークションでは、市場にお ける需要の増加に伴い、過去数年 間で出品されることが少なかったカ ラーダイヤが注目を集めた。今回のオー クションで 2.99ct ファンシーディープグレイッシュイエ ローイッシュグリーンダイヤモンドリング( 左写真 )が 30 万 6,800 香港ドル( 約 428 万円 )で落札、2.95ct ファンシー イエローダイヤモンドリングは 16 万 5,200 香港ドル( 約 230 万円 )で落札されるなど、輝きの美しいイエローダイヤ に人気が集まった。カラーダイヤの中でもとりわけイエロー ダイヤは市場に一定数供給されており、かつ価格は魅力的 なので、コレクションの対象として最適である。ブランド品、質の良い色石はおおむね堅調
また、安定した人気のブランドジュ エリーであるブシュロンの華や かなグラン・ド・レザンシリー ズダイヤモンドゴールドネック レス & イヤリングセットは 15 万 3,400 香 港 ド ル( 約 214 万 円 )での落札となった。ま た、優美なヴァンクリーフ & アーペルのダイヤモンド ゴールドネックレスは落札予想価格 5 ~ 8 万香港 ドルに対して上値を超える 11 万 8 千香港ドル ( 約 164 万円 )でライブビッドからの参加者の 手に渡った。質の高い宝石では、「ムゾーグ リーン」と呼ばれる 3.87 ct コロンビア産 ビビッドグリーンエメラルドリングは 25 万 9,600 香港ドル( 約 362 万円 )で落札。 また、美しく貴重な 2.301ct ブラジル 産パライバトルマリンネックレスは 38 万 9,400 香港ドル( 約 543 万円 )で 日本の愛好家によって落札された。 引き続き、現在の経済状況における コレクターの好みと購買傾向を研究し、価格設定や出品募 集等に工夫を凝らしつつ、より質の高い魅力的なジュエ リーを集めていきたい。会場にぎわうも慎重な競り
-ジュエリー&ウォッチ-
落札率 83%、落札総額 約 1 億円 西洋装飾美術
香港セールに先立ち、4 月 21 日に開催された東京セール。 ガレ・ドーム等のアール・ヌーヴォーのガラス作品、ルネ・ ラリックや J. デュナンを始めとしたアール ・ デコ期の作品、 そして陶磁器や家具等の装飾美術という構成で迎えた今季 の装飾美術部門。東京セールの出品総数 475 点のうち半数 以上の 240 ロットを西洋装飾美術が占めており、その結果 によってセール全体の雰囲気や評判を左右する。結果とし て、落札率は 83%、落札総額は約 9,800 万円、落札予想価 格下値からの出来高率は約 112%と、好調な結果を収める ことが出来た。コレクター垂涎、ラリックカーマスコットコレクション
R. ラリックのカーマスコットコレクションから幕を開けた 東京セール。ガラス彫刻としての優美さに加え、バリエー ションの豊かさや時代性を併せ持ち、ラリックファンだけ でなくカーマニアをも虜にするコレクターズアイテムであ る。ファーストロットという重要な役割を担ったラジエー ターキャップ「勝利の女神」は車社会が率いるスピードの 世紀を具現化したラリックのカーマスコットの代表作。 競りが開始されるや否や瞬く間にパドルが上がり、落札予 想価格 120 万円~ 170 万円に対し 299 万円で落札され、こ の後に続く競りの活況さを予見するような幸先の良いス タートであった。ラリック人気はカーマスコットだけでは ない。大きなティアラ型の栓が大変優美な香水瓶「ユーカ リ」が始まると、欧米からの入札に会場とライブビッドに よる入札が応戦し、落札予想価格下値の約 5.4 倍となる 322 万 円 の 落 札 価 格 を 記 録 し た。 そ の 他 アール ・ デコ期の家 具 デ ザ イ ナ ー で あ る J. デュナンのエッ グ シ ェ ル の テ ー ブ ルが 632 万 5 千円で 欧 米 の 愛 好 家 に 落 札されるなど、現代家屋のインテリアや現代美術との親和 性が高いアール ・ デコ期のデザインは今後より一層の伸び が期待される。トップロットはガレの悲しみの花瓶
1900 年のパリ万博出品モデルである E. ガレのアーティス ティック作品「こうもりと芥子文花瓶」は事前の問い合わ せが最も多かった作品。本作のような黒ガラスを用いたシ リーズは「悲しみの花瓶」と呼ばれ、哀愁や孤独といった 人間の深い感情を主題にするなど、ガレの創作物のなかで も一線を画す存在である。決して華やかではなく玄人好み の耽美的作品であったのにもかかわらず、フランスやロシ アを含む世界各国のコレクターから入札が集まり、落札予 想価格下値の約 3 倍の 805 万円で落札された。続く古代エ ジプト風のデザインが印象的な「蝉と蜻蛉文花器」が 460 万円、サリシュールの装飾が美しいチューリップ文花瓶が 552 万円で落札されるなど、ガレのアーティスティック作 品は軒並み高額落札を記録し、本セールに彩りを添えた。成り行き品に集まる熱視線、最大伸び率 1,006%
アール・ヌーヴォーやアール・デコ期以外の装飾美術では、 バリエーションの豊かさに加え、手の届きやすい価格帯の作 品やリザーブの設定がされていない「成り行き品」が占める 割合が多い。成り行き品は「安価に入手することができるか も!?」という期待感をビッダーに与え、入札への呼び水と なる。今季は 132 ロットのうち約 8 割が成り行き品であっ たが、落札予想価格下値からの平均伸び率は 148%、最大で 1006%を記録するなど活況を呈したセールとなった。なか でも、パリ・オルセー美術館にも同型作品が収蔵されてい る H.M.A. シャピュのブロンズ彫刻「青春」は主に国内のコ レクター間で競り合い、落札予想価格下値の 2.6 倍の 103 万 5ガレ、ラリック堅調に落札
-スプリングセール東京-
J. デュナン「ローテーブル」 h37.5 × w53.5 × d35.0 cm E. ガレ「こうもりと芥子文花瓶 」 h13.5 ×φ 11 cm 落札予想価格280 万 - 380 万円 落札価格 805 万円李朝コレクションはじめ東アジア古美術揃う
日本、中国の古美術品・工 芸品をはじめ、韓国の白磁 を中心とした李朝陶磁器コ レクションで構成された東 洋部門。 中国美術からは唐代から清 代の古陶磁器、筆筒などの 文房具、獅子や白菜が彫ら れた玉器、銅鏡などの青銅 器、仏像などが出品された。 全体的にバランスよく落札 となったが、中でも唐代の 加彩馬や明・清代の陶磁器 にビッドが集まった。追加出品され、多くの問い合わせを 受けた「青白釉水月觀音坐像」は 494 万 5 千円で落札され ている。やはりこの分野は中国系コレクターからの人気が 圧倒的に高く、点数ベースでは約 6 割強のロットを落札、 次いで日本人コレクターが約 3 割を占めている。 日本美術からは煌びやかな蒔絵の箱、象嵌や片切彫りなど 高度な技法を用いた金工作品をはじめとする日本伝統作品、 古九谷や古伊万里などの古陶磁器、北大路魯山人や藤本能 道などの近代陶芸が出品。国内外からの良質な日本伝統作 品に対する評価の高まりを受け、前回、前々回同様に蒔絵、 金工作品が注目を集め落札となっている。 セ ー ル の 終 盤 に 登 場 し た 日 本 人 蒐 集 家 に よ る 李 朝 陶 磁 器 コ レ ク シ ョ ン で は 白 熱 し た 競 り 合 い が 展 開 さ れ た。 コ レ ク シ ョ ン の ス タートを切った「李 朝白磁壺」から多く の 電 話 回 線 が 繋 げ られた。会場では日 本、韓国、中国と各 国 の 愛 好 家 た ち が パドルを挙げ、30 万円から競りが始まった「李朝白磁壺」 は瞬く間に競りあがり 299 万円で落札された。 コレクションの中でも良質な作品にビッドが集中した。良 品を求める愛好家のパドルの応酬により、続いたロットも 半数以上が落札予想価格の上値を超えての落札となり、良 い流れのままオークションを終えた。 今季の東京セールの結果を見ると、予想価格を超えて落札 された作品のそのほとんどが技巧を凝らした良質かつ秀麗 な作品である。これは、エスト・ウェストのオークション に参加するコレクターたちの審美眼の高さ、あるいは良い ものと出会いたいという欲求の強さを物語っている。言い 換えれば、質の高い作品には世界のどこからでもコレクター が見つけにくる、ということである。それほどに情報網は 発達しており、それを目指してくる人々の行動力には目を 見張るものがある。来年で創立 35 周年を迎えるエスト・ウェ ストは国内・国外市場の間でヒトとモノをつなぐことはも ちろんのこと、美術市場の活性化にむけて更なる歩みを進 めて行きたい。 千円に。また、ナポレオンの 進軍風景を描いたセーヴルス タイルのペア飾り壷は欧米の ビッダーを迎え、落札予想価 格下値の 2.3 倍である 402 万 5 千円で落札された。その他、 マイセンやフォルクシュテッ トの陶磁器、グラスウェア、 テーブルウェア、銀製カトラ リー等、主に国内の愛好家か らの入札によって順当に落札 されていった。 絵画部門も落札率 91.5%、落札予想価格下値からの出来高 率 149% と、非常に好調な結果を残した。ファーストロッ トは千住博の「小鹿と夜空」。鮮やかなコバルトブルーの 背景に佇む小鹿を描いた静謐な本作品はオークション前か ら国内外の人気を博し、落札予想価格上値を超える 379 万 5 千円で落札され、幸先のよいスタートを切った。その他、 東郷青児の「バラと少女」が 161 万円で売れるなど日本の 作家も好評だったが、A. デュノワイエ・ド・スゴンザックの 作品が落札予想価格下値の 4 倍、伝 P. マティスの「バッ カス祭」が落札予想価格下値の 3 倍近くの 138 万円、喬十 光が落札予想価格下値の 3 倍以上の 437 万円で落札される など、海外作家の作品も会場を多いに湧き立たせた。焼き物、日本工芸
が
健闘
-東洋美術-
李朝陶磁器コレクションより白磁壷 青白釉水月觀音坐像 コバルト金彩ナポレオン文蓋付飾り壷 h135.6 ×φ 37.5 cm etc. ロット 作家名 作品名 予想価格下値 予想価格上値 落札価格 伸び率 079 E. ガレ こうもりと芥子文花瓶 280 万円 380 万円 805 万円 288% 106 J. デュナン ローテーブル 580 万円 880 万円 632 万 5 千円 109% 081 E. ガレ チューリップ文花瓶 500 万円 800 万円 552 万円 110% 404a ー 青白釉水月觀音坐像 500 万円 800 万円 494 万 5 千円 99% 080 E. ガレ 蝉と蜻蛉文花器 350 万円 550 万円 460 万円 131% 2018 スプリングセール東京 落札額 TOP 5アドヴァンスシステム
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営業時間 月-金:10 時-18 時 土:10 時-16 時 日祝 休査定無料
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