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* エネルギー効率設計指標 (EEDI) 規制と対応技術動向 * エネルギー効率設計指標 (EEDI) 規制と対応技術動向 ** 荒木康伸 ** 荒木康伸 1. はじめに 2011 年 7 月に開催された IMO 第 62 回海洋環境保護委員会 (MEPC 62) において, エネルギー効率設計指

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1. はじめに 2011 年 7 月に開催された IMO 第 62 回海洋環境保 護委員会(MEPC 62)において,エネルギー効率設計指 標(EEDI) 及 び 船 舶 エ ネル ギ ー 効 率管 理 計 画 書 (SEEMP)の強制化に関する MARPOL 条約附属書 VI 改正案が採択され,2013 年 1 月 1 日に発効した.こ れにより,同日以降に新たに建造契約が結ばれる船舶 または2015 年 7 月 1 日以降に引渡しが行われる船舶 にあっては,一定サイズ以上の船舶に対し船種毎に設 定された EEDI の規制値を満足することが要求され, 第三者認証機関によるEEDIの認証が義務付けられて いる. 本稿では,IMO にて策定された規則及び関連ガイド ラインに基づき,EEDI 規制の概要,個船の EEDI 計 算の基本的な考え方,EEDI 規制への対応状況につい て解説する. 2. EEDI 規制の概要 2.1 EEDI の基本コンセプト 新造船のエネルギー効率評価指標として用いられる EEDI は,船舶のエネルギー効率のポテンシャルを表 す数値であり,概念的には(1)式のように表される.た だし,(1)式は本来の EEDI 算定式を簡略化した形で示 しており,実際の算定式は,これに省エネ機器搭載に よる排出量の控除項等を加えたもう少し複雑な式構成 になる(後述).        ton mile/h (1) DWT kW g/kWh CO mile g/ton 2 速力 機関出力 燃料消費率 換算係数      EEDI すなわちEEDI とは,規定されたある一定の条件下 において,1 トンの貨物を 1 マイル運ぶ際に排出され るCO2のグラム数として定義される.この値は,当該 船舶が有するエネルギー効率のポテンシャルを表す指 標として見なすことも可能であり,例えて言えば,自 動車のカタログ燃費に相当するものである. 2.2 EEDI 規制 EEDI に関する規定は,条約が指定する特定の船種 における新船のみが適用対象となり,各船について EEDI の計算が要求されるほか,さらに一定のサイズ 以上の新船には,EEDI 計算値(Attained EEDI)が規 制値(Required EEDI)以下となることが要求される. 改正MARPOL 条約附属書 VI における新船は,以 下のとおり定義される. (1) 2013 年 1 月 1 日以降に建造契約が結ばれる船舶 (2) 建造契約がない場合,2013 年 7 月 1 日以降に起 工される船舶 (3) 2015 年 7 月 1 日以降に引き渡しされる船舶 なお,EEDI 規制対象船種を自動車運搬船や LNG 運搬船等に拡大する条約改正がMEPC 66 において採 択され,2015 年 9 月 1 日以降に建造契約が結ばれる 船舶が適用対象として追加されている. EEDI の規制値は,船種毎に計算された過去 10 年 間(1999 年~2008 年)の建造船の EEDI 平均値(DWT またはGT の指数関数として表される EEDI の平均線 でリファレンスラインと呼ばれる)に一定の削減率 X(%)を考慮した値として式(2)のように与えられる. ) 2 ( 100 1 value line Ref. EEDI Required EEDI Attained           X また,EEDI 規制値は,建造契約日と完工日に応じ て段階的(フェーズ方式)に厳しい値となることが決 定しており,2025 年 1 月 1 日から適用されるフェー ズ3 においては削減率 30%の適用が予定されている. EEDI 規制値への適合が要求される船種について,リ ファレンスライン値を求める数式及び削減率を表1 に, また,一例として,ばら積み貨物船のリファレンスラ インを図1に示す. 2.3 EEDI 規制のレビュー MARPOL 条約附属書 VI 第 21 規則により,EEDI 規制フェーズ1 の開始時点(2015 年)及びフェーズ 2 の中間点(2022 年)において,EEDI の改善に寄与す る技術の開発動向をレビューし,必要と認めれば,フ ェーズ2,フェーズ 3 の開始時期,リファレンスライ ン算定パラメータ及び削減率を改正することが規定さ れている.

エネルギー効率設計指標(EEDI)規制と対応技術動向

* 荒木 康伸** *原稿受付 平成 29年 4月 20日. **正会員 一般財団法人 日本海事協会

エネルギー効率設計指標(EEDI)規制と対応技術動向

荒 木 康 伸**

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IMO の通信部会により実施された当該 EEDI 規制 レビュー(最初のレビュープロセス)の最終報告が MEPC 70 において審議され,Ro-ro 貨物船と Ro-ro 旅客船以外の船種については,フェーズ2 の開始時期, 削減率を維持することが合意された. 表1 リファレンスライン算式と削減率 1 ばら積貨物船のリファレンスライン 3. EEDI の計算方法 3.1 EEDI 計算式

EEDI の計算方法については,IMO から EEDI 計 算ガイドラインが発行されている.具体的なEEDI 算 定式は図2 に示す形で表される.省エネ装置搭載によ る排出量の控除項等が加わることにより一見複雑な式 構成になっているが,その考え方は先の式(1)で示した 基本的概念に基づいている. 3.2 EEDI 計算式の各要素 従来型の直結ディーゼル推進機関を対象として,以 下にEEDI計算ガイドラインで規定される各パラメー タの定義,考え方について述べる. 3.2.1 主機及び軸モータ 図2 中に示した数式の分子第 1 項は,主機に起因す るCO2排出量を見積もるためのものであり,機関出力 PMEとしては,主機最大出力MCR の 75%の値を使用 することが規定されている.燃料消費率 SFCMEにつ いては,海上試運転時の計測値ではなく,MARPOL 条約附属書VIにより従来から要求されているNOx排 出量確認時に試験台において計測された所謂親エンジ ンの燃料消費率を用いて,75%MCR 時の計測値を ISO 標準大気条件及び標準低位発熱量(42,700kJ/kg) に補正した値を採用する.CO2換算係数CFMEは,NOx 排出量確認時の燃料に対応する値を使用するため,一 般にはDiesel/Gas Oilに対応するCF = 3.206を用いる ことになる.なお,推進加勢用の軸モータが搭載され ている場合には,これに起因するCO2排出量を第3 項 で別途考慮する必要がある. 3.2.2 補機 分子第2 項は,補機に起因する CO2排出量を見積も るためのものであり,基本的な考え方は第1 項の主機 の場合と同様である.機関出力PAEについては,通常 航海中における推進及び居住区に関わる所要電力を賄 うための補機関出力として定義され,主機MCR の一 次関数として簡易的に見積もるよう規定されている. 燃 料 消 費 率 SFCAE に つ い て は , 主 発 電 機 関 の 50%MCR 時の値を用いる.ただし,実際の電力需要 が簡易算式により見積もられる値と著しく異なる場合 には,電力調査表に基づいてPAEを決定することが要 求される.この場合,燃料消費率SFCAEについては, 主発電機関の75%MCR 時の値を用いる. 3.2.3 革新的省エネ技術 分子第4 項と第 5 項は,省エネ装置を搭載した場合の CO2排出量控除項で,補機又は主機に起因する CO2 排出量からの省エネ効果による削減分をそれぞれ減算 することができる.これら第4 項又は第 5 項で考慮す べき省エネ装置の具体例としては,前者であれば補機 駆動用電力を供給するための排熱回収装置や太陽電池 等が,後者であれば風力推進システムや船体抵抗を減 じるための空気潤滑システム等が挙げられる.これら 省エネ装置については,個船毎にその効果を検証する ことが要求されており,その計算方法(第4 項及び第 5 項の算出方法)や認証方法について,IMO より関連 のガイダンスが発行されている(後述). 3.2.4 Capacity EEDI 計算式の分母における積載能力 Capacity に は,客船を除き,夏期満載喫水における載荷重量DWT を用いることが規定されている.ただし,コンテナ船 に限っては70%DWT の値を使用する.一方,客船の 場合には,DWT ではなく総トン数 GT を用いる. 3.2.5 船速(Vref) 船速Vrefに関しては,上記のEEDI 計算条件下,す なわち一般には主機出力 75%MCR,夏期満載喫水に おける平水中速力を用いることが規定されている.

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2 EEDI 計算式詳細 3.2.6 主機出力補正係数(fj) EEDI 計算式中で用いられる補正係数の内,分子に ある出力補正係数fjは,Ro-ro 貨物船,Ro-ro 旅客船, アイスクラス適用船舶や推進システムに冗長性を有す るシャトルタンカー等に適用されるもので,特殊な事 情により比較的大きな推進出力を有する船舶のEEDI が不利な値とならないよう,1.0 未満の係数を乗じる ことによりEEDI計算上の推進出力値を下方に補正す るものである. 3.2.7 Capacity 補正係数(fi,fl,fc) 分母にある積載能力の補正係数のうち,fiはアイス クラス適用船や共通構造規則(CSR)適用船舶に対して 適用されるもので,船体構造強化に伴う積載能力減少 分を補うために導入されている.また,船主要求等に より自主的な船体構造強化が行われる場合にも,一定 の条件を満たす場合,同補正係数の適用が認められる. 補正係数flは一般貨物船に対して適用されるもので, 荷役装置等の搭載に伴う積載能力減少分を考慮できる. 同じく分母にあるタンク容積の補正係数fcは,ケミ カルタンカー,チップ船,Ro-ro 旅客船等に適用され るもので,比重の小さな貨物を運ぶことにより,同一 船種の中で比較的小さなDWT を有する船舶の EEDI が不利な値とならないよう,DWT とタンク容積の比 に応じて積載能力を補正するものである. 3.2.8 実海域速力低下係数(fw) 実海域における速力低下係数fwは,平水中速力をベ ースとする通常のEEDI 値の計算とは別に,指定され た海象(風力階級6 相当)における速力低下を考慮し たEEDI 値(EEDIweather)を算出するための係数であり,

通常(平水中)のEEDI 計算においては fw=1.0 を用い る.なお,EEDIweatherの計算は任意であり,計算を行 った場合には参考値として,EEDI テクニカルファイ ルに記載することになっている. 3.3 二元燃料(Dual fuel)機関の取り扱い 二元燃料機関を搭載する船舶においては,関連設備 等の条件によりガス燃料が primary fuel とみなされ る場合,ガス燃料の CO2換算係数を使用して EEDI 値を計算できる.また,ガス燃料がprimary fuel とみ なされない場合であっても,ガス燃料の利用可能分を 考慮して,ガス燃料のCO2換算係数を重みづけにより EEDI 計算に反映することができる.EEDI 計算ガイ ドラインに,primary fuel の判定基準として fDFgas

(fuel availability ratio)が与えられている.EEDI 計算 式分子第1 項の主機を例に,具体的な取扱いを以下に 示す.

i) fDFgas ≥ 0.5 の場合(ガス燃料= primary fuel)

FMEgas MEgas FMEpilot MEpilot

ME 1.0 C SFC C SFC P      ii) fDFgas = 0.2 の場合(ガス燃料 20%相当が利用可能)

MEliquid FMEliquid MEpilot FMEpilot MEgas FMEgas ME SFC C 8 . 0 SFC C SFC C 2 . 0 P         3.4 革新的省エネ技術の EEDI 計算への反映 GHG 削減技術を適切に評価するための取扱いを定 めたガイダンス(革新的省エネ技術ガイダンス)が IMO において策定されている.本項では,当該ガイダ ンスに基づき,省エネ技術のEEDI への反映方法につ いて述べる. 3.4.1 革新的省エネ技術のカテゴリー 革新的省エネ技術は,以下の3 つのカテゴリーに分 類される. (A) 速力馬力曲線を向上させるもの   ref w l c i neff i ME FME i eff i eff AE FAE nPTI i neff i i AEeff i eff i PTI M j j AE FAE AE i ME i FME nME i i ME M j j V f capacity f f f SFC C P f SFC C P f P f SFC C P SFC C P f                                                                1 ) ( ) ( 1 1 ) ( ) ( ) ( 1 ) ( ) ( 1 ) ( 1 主機に起因す るCO2排出量 補機に起因す るCO2排出量 推進加勢する軸モ ー タ に 起 因 す る CO2排出量 省エネ装置による 「補機起因のCO2排 出量」の削減分 省 エ ネ 装置 によ る 「主機起因のCO2排 出量」の削減分 積載能力に関 する補正係数 船速 一般貨物船の荷 役装置に係る補 正係数 ケミカルタンカー, Ro-ro 旅客船,チップ 船等のタンク容積補 正係数 積載能力 実海域における 速力低下係数

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(B) 主機出力(PME)を低減させるもの (C) 電力を発生させるもの さらに,カテゴリーB と C については,それぞれ「航 海時に常に利用可能なもの」と「限られた状況におい てのみ,最大の効果が得られるもの」の2 つのサブカ テゴリーに分類される.各カテゴリーについて,具体 的な例とともにまとめたものを表2 に示す. 表2 革新的省エネ技術のカテゴリー 主推進出力低減 補機出力低減 A B-1 B-2 C-1 C-2 船舶の抵抗 推進性能と 分離不可能 なもの 船舶の抵抗推進性能と分離 して取扱い可能なもの 常時 利用可 限定され た状況で 利用可 常時 利用可 限定された状 況で利用可

feff = 1 feff < 1 feff = 1 feff < 1

低 摩 擦 塗 料,船尾付 加物等 空気潤滑 システム 風力利用(帆, 凧等) 排熱回 収シス テム 太陽光 発電 革新的省エネ技術ガイダンスの付録では,以下の省 エネ技術についてEEDI計算及び認証方法の具体例が 示されている.なお,新しい技術が開発された際には, 随時この具体例が追加される予定となっている. (1) 空気潤滑システム:船底前方部からブロワー等を 用いて注入する気泡により船体表面を覆うこと により,船舶の摩擦抵抗を低減するシステム (2) 風力利用:風の状態に応じて推進力を生み出す各 種の風力推進技術(帆,翼,凧など) (3) 排熱回収システム:排ガス,冷却水等の熱エネル ギーを回収して発電することにより,機関内での 燃料燃焼から生み出されるエネルギーを有効利 用するシステム (4) 太陽光発電:船舶の推進用電力または船内使用の ための電力の一部を供給する太陽電池発電シス テム 3.4.2 各カテゴリーにおける EEDI 計算方法 各カテゴリーの省エネ技術におけるEEDIの計算手 法の概略は以下のとおりである. (1) カテゴリーA 船体の推進性能自体を向上させる技術であるた め,単純に船速(Vref)の向上によりその効果が EEDI 計算値に反映される. (2) カテゴリーB 機器のOn/Off によって低減される出力(Peff)によ りEEDI 計算値への反映を行う.また機器を On にする場合に消費される電力等も考慮しなけれ ばならない.カテゴリーB-2 に分類される技術に ついては,Availability Factor (feff < 1.0)により稼

働効率が考慮される. (3) カテゴリーC 通常航海時において省エネ機器により生成され る電力分(PAEeff)を,EEDI 計算式における補機か らのCO2排出量(分子第2 項)から控除するこ とができる.カテゴリーC-2 に分類される技術に ついては,Availability Factor (feff < 1.0)により稼

働効率が考慮される. 4. 最低推進出力要件 4.1 概要 先に述べたとおり,EEDI 規制ではフェーズ 3 で従 来比30%の EEDI 低減が求められている.IMO にお ける審議において,EEDI 規制導入時より,EEDI 規 制値を満足するために安易に計画速力を落とした,過 度に出力の小さな船舶が建造される可能性があるとし て,一部の国や機関から荒天下における船舶の操縦性 (安全性)に対する懸念が示されていた.そのため, 改正MARPOL 附属書 VI の第 21 規則により EEDI 規制値への適合が要求される船舶にあっては,同21.5 規則により,荒天下における操船性を維持するため, IMO が策定するガイドラインに従って一定以上の推 進出力を有することが規定された. MEPC 65 において,船舶が備えるべき最低推進出 力を決定するための暫定ガイドライン(最低推進出力 暫定ガイドライン)が策定され,更にMEPC 68 にお いて当該ガイドラインの一部改正が採択された. なお,欧州や日本で実施されている学術的な調査研 究の成果を基に,今後ガイドラインの全面的な見直し を行うことが予定されている. 4.2 適用 最低推進出力暫定ガイドラインは,改正MARPOL 附属書VI の第 21 規則によりフェーズ 0 及びフェー ズ1 の EEDI 規制値が適用される 20,000DWT 以上 のばら積貨物船,タンカー及び兼用船に対し,ガイド ラインで規定するレベル1 もしくはレベル 2 のいずれ かの評価手法による適合確認が要求される. 4.3 最低推進出力の評価手法 4.3.1 レベル 1 評価手法 レベル1 の評価手法として,最低推進出力ラインが 船種毎に表3 に示す数式(DWT の関数)により設定 されており,搭載主機出力の合計が最低推進出力ライ ンの値以上であることが要求される.

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3 最低推進出力ライン 船種 最低推進出力(kW) ばら積貨物船 (20,000 ≤ DWT) 0.0687 × DWT + 2924.4 タンカー及び兼用船 (20,000 ≤ DWT) 0.0689 × DWT + 3253.0 なお,当該ガイドラインの一部改正により,2015 年 11 月 16 日以降に建造契約が結ばれる船舶は,表 4 に示す最低推進出力ラインが適用される. 表4 最低推進出力ライン(改正) 船種 最低推進出力(kW) ばら積貨物船 (20,000 ≤ DWT < 145,000) 0.0763 × DWT + 3374.3 (145,000 ≤ DWT) 0.0490 × DWT + 7329.0 タンカー及び兼用船 (20,000 ≤ DWT) 0.0652 × DWT + 5960.2 4.3.2 レベル 2 評価手法 レベル 2 は,ガイドラインが定義する荒天海象 (adverse condition)において,正面からの向波・向風 の条件下で船舶が一定の前進速力で航海できる推進出 力を有しており,かつ,その状態が搭載主機のトルク リミット以下(作動範囲内)であれば,全方位からの 波や風の条件下でも船舶が針路を保つことができると の仮定に基づいた間接的な評価手法である. 実際の計算は,船舶の平水中抵抗,波浪中抵抗増加, プロペラ性能,搭載主機等の諸元を基に行われる. 5. EEDI 規制への対応状況 5.1 EEDI 改善手法とトレンド EEDI 計算式中の分子を小さく,分母を大きくする ことでEEDI 値を低減することができるため,その改 善手法としては,一般に,DWT の増加,主機の燃費 効率改善,抵抗推進性能の改善(船型改良),各種省エ ネ機器の採用,適切な計画速力の設定等が挙げられる. 特に,近年の建造船では電子制御式エンジンの採用 が主流となってきている.電子制御式エンジンでは, シリンダへの燃料噴射タイミング,排気弁開閉タイミ ングやシリンダ注油タイミングを適切に調整できるた め,全負荷域での燃費効率が改善される.また,同一 型式のエンジンにおいても回転数と出力(レーティン グ)の設定により燃費効率は異なるが,近年の建造船 では,低回転・低出力のポイント付近での出力設定と する,いわゆるディレーティング仕様の主機を採用す る傾向にあり,大型ロングストローク化,低回転大口 径プロペラの採用による船舶全体の効率向上に加え, 主機単体としても燃費効率が改善されている. 5.2 EEDI 規制への対応状況 EEDI 規制レビュープロセスにおいて IMO が公表 したEEDI 値の実績データ1)によると,EEDI 適用船 (フェーズ0 適用)では,船種やサイズカテゴリーで 差はあるものの,概ねフェーズ 2 のレベルに到達して いる状況にある.ただし,前述した革新的省エネ技術 のうち,カテゴリーB または C に該当する主機や補機 出力を直接的に低減する省エネ機器(排熱回収装置な ど)の採用実績はほとんど報告されていない. 6. おわりに 数年来の燃料油高により減速運航が常態化し,燃費 性能を重視したいわゆるエコシップが開発されている. EEDI 規制の導入もその流れに寄与しているものと考 えられる. EEDI 規制はゴールベースであり,プレーヤーがと るべき手段を細かく指定するのではなく,種々の策に より総合的に達成された結果に着目するものといえる. もっとも,将来的に 30%の効率改善が求められる EEDI 規制はまだ開始段階であり,機関,推進プラン ト及び船体に係る種々の技術開発により高いハードル を越えることが業界に求められている.NK としても 公正なEEDI 認証業務はもとより,速力試験解析ソフ ト(Peimeship-GREEN/ProSTA)や最低推進出力評価 ソフト(PrimeShip-GREEN/MinPower)の提供等,関 連の技術サービス,IMO/IACS における活動を通じて 業界に積極的に貢献していきたいと考える. 参考文献

1) IMO meeting document, MEPC 70/INF.14

著者紹介 荒木 康伸

 日本マリンエンジニアリング学会 正会員  1975 年生.

図 2  EEDI 計算式詳細  3.2.6 主機出力補正係数(f j ) EEDI 計算式中で用いられる補正係数の内,分子に ある出力補正係数 f j は, Ro-ro 貨物船,Ro-ro 旅客船, アイスクラス適用船舶や推進システムに冗長性を有す るシャトルタンカー等に適用されるもので,特殊な事 情により比較的大きな推進出力を有する船舶の EEDI が不利な値とならないよう, 1.0 未満の係数を乗じる ことにより EEDI計算上の推進出力値を下方に補正す るものである. 3.2.7 Capacity

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