博士(環境科学)柏原夕希子 学位論文題名
EvaluationofthehortiCulturaltraitSOfAlStroemeriaCeae
● ● ●andthefertiliZationbarrierSlnlntergenerlCCrOSSeS
(アルストロメリア科の園芸学的評価と属間交雑における受精障壁に関する研究)
学位論文内容の要旨
花き園芸作物であるアルストロメリアは花持ちが良く、色が多様であることからその 需要が年々高まっている。冷涼な気候を好むことから北海道は生産適地のーっである。
このアルストロメリアも他の花き園芸作物と同様に流行の移り変わりが速く、新しい品 種の育成が望まれている。経済栽培されている現在のアルストロメリアの多くは種内及 ぴ種間交雑によって作出されている。しかしながら、種内及ぴ種間における交雑から作 出される雑種の多様陸には限界があり、これまで育種に用いられていない遠縁の種との 交雑が望まれている。アルストロメリア科は
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属[Alstroemeria(アルストロメリア),Bomarea
(ボマレア),Leontoclur(レオントキール)]からなる比較的小さな科で、アルストロメリアとの交雑候補はボマレアとレオントキールが対象となる。本研究では アルストロメリア属とボマレア属に焦点を絞り、交雑細み合わせを決定するために必要 な園芸学的形質の評価および定量的評価(第2章)、属間交雑時に生じる受精障壁の解 析および胚・胚乳発達過程の組織学的観.察(第3章)、属間雑種育成に向けた胚珠培養 条件の検討(第4章)について追究した。
アルスト ロメリア 属5種とボマレア属2種を用いて花のサイズ、色などについて調査 し た 結 果 、
Alstroemena psittacina Lehm.
の 花 の形 はBomama coccinea (Ruiz
&Pav.) Baker
と似ていることがわかった。またBsa血えぬ(L.)Mirb.の花の形状は、調査した種の中で漏斗状の形と開く形の中間の値を示した。調査した園芸学的形質を定 量的に解析したところ、自生地である南米のチりに自生するアルストロメリアとボマレ ア、ブラジルに自生するアルストロメリアとボマレアで色や花の形において類似の傾向 を示すことが分かった。これらの情報は今後アルストロメリアの属間雑種を作出する際、
交配親の選定や雑種個体の判別に役立っと考えられる。
次にアル ストロメ リアとボ マレアの交雑における受精障壁について調査した。本研 究ではまず受精前障壁の有無を確認するために花粉管伸長の観察を行った。花粉管伸長 の 観 察 で は
Aau
門 鰯x
丑 舶 ぬ2
餾 に っ い て 花 粉 の 種 類 、 花 柱 の 状 態 、 受 粉 後の 時―92ー
間による花粉管の到達位置などにっいて調査した。その結果、ボマレアの花粉をアルス トロ メリアの 柱頭に受 粉後
48
時間で、珠孔に到達している花粉管が観察された。また 花柱 を除去し て子房に 直接花粉 を受粉した場合、受粉後24
時間で珠孔に到達している 花粉管が観察された。しかし、ボマレアの花粉管はアルストロメリアの子房内に達し胚 珠の周辺で観察されているにも関わらず、花粉管の侵入している胚珠は少なかった。こ の こ と か らA aureax
丑coccmea
に お い て 、 柱 頭 上 で の 花 粉 発 芽 ・ 花 柱 内 の 花 粉 管伸長は行われるが、その後の胚珠への花粉管誘導に受精障壁があることが示唆された。低頻度ながら花粉管が胚珠に侵入する現象が見られたため、受精の可否と胚と胚乳の 発 達 を 検 証 す る た め に 組 織 切 片 を 用 い て 観 察 し た 。 観 察 に は
4
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趣 粥 曲axB
の脚 ユ餾の胚珠を用いた。その結果、受粉3
日後の胚珠において3〜4細胞期の胚を確認 する ことができた。また胚乳核も確認することができた。受粉5日後の胚珠において球 状の 胚と胚乳核の分裂が観察された。しかし受粉7日後の胚珠では胚の崩壊が観察され た。 さらに受 粉21日後で は胚珠の崩壊が観察された。受精後の早い段階で胚の成長が 止 ま って し ま うこ と から4
. 似 轟 雰壺 随XB
の 画2
餾 にお い て受 精 後障壁の 存在が考 えられた。胚の 発育が停 止してし まう場合、胚培養または胚珠培養により後代が得られる可能 性がある。本研究では最適な胚珠の摘出時期を調べるため受粉後の培養日数を調査した。
その 結果、交配3日後の胚珠が適していると考えられた。その場合、培地の糖濃度を変 えて培養したところ、8ucrose濃度が30911l,60呂l・1,8091.lにおいて、亠部の胚珠は 発芽したが、その個体は培養期間中に枯死してしまった。この事象は本研究で用いた組 み合わせによる遠縁交雑において、個体レベルでの雑種致死陸を示唆している可能陸が ある。
本研 究ではア ルストロ メリア科の園芸学的形質を評価し、各種の特徴を明らかにし た。また属間交雑時に生じる受精障壁の有無を花粉管伸長の観察及び胚・胚乳の組織学 的観察から解析し、受精後障壁の克服方法として胚珠培養の有効陸を示すことにより、
属間雑種育成に向けた知見を提示することができた。
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学位論文審査の要旨
主査 教授 荒木 肇 副査 教授 山田敏彦 副査 教授 大原 雅 副査 助教 星野洋一郎
副査 チーム長 篠田浩一(北海道農業研究セン タ ー 寒 地 地 域 特 産 研 究 チ ー ム )
学 位 論 文 題 名
Evaluation of the horticultural traits of Alstroemeriaceae and the fertilization barriers in intergeneric crosses
(アルストロメリア科の園芸学的評価と属間交雑における受精障壁に関する研究)
花 き園 芸 作 物 で ある ア ル ス ト 口メ リ ア は 花持ち が良く ,色が 多様 である ことか らその 需要 が 年 々 高ま っ て い る 。 冷涼 な 気 候 を 好む こ とか ら北海 道は生 産適地 のー つであ る。こ のアル ス ト 口 メリ ア も 他 の 花 き園 芸 作 物 と 同様 に 流行 の移り 変わり が速く ,新 しい品 種の育 成が望 ま れ て いる 。 経 済 栽 培 され て い る 現 在の ア ルス トロヌ リアの 多くは 種内 及ぴ睡 間交雑 によっ て 作 出 され て い る 。 し かし な が ら , これ ら の交 雑から 作出さ れる雑 種の 多様性 には限 界があ り , こ れま で 育 種 に 用 いら れ て い な い遠 縁 の種 との交 雑が望 まれて いる 。アル スト口 メリア 科 は3属[Alstroemeria( ア ルス ト 口 メ リ ア) ,Bomarea(ポ マレア ),Leontoc轟 む(レ オン ト キ ー ル) ] か ら な る 比較 的 小 さ な 科で , アル スト口 メリア との交 雑候 補はポ マレア とレオ ン ト キ ール が 対 象 と な る。 本 研 究 で はア ル スト 口メリ ア属と ポマレ ア属 に焦点 を絞り ,交雑 組 み 合 わせ を 決 定 す る ため に 必 要 な 園芸 学 的 形 質 の評 価 お よ び 定量 的評価 (第2章) ,属間 交 雑 時 に生 じ る 受 精 障 壁の 解 析 お よ び胚 ・ 胚 乳 発 達過 程 の 組 織 学的 観察( 第3章), 属間雑 種 育 成 に 向 け た 胚 珠 培 養 条 件 の 検 討 ( 第 4章 ) に つ い て 追 究 し た 。 ア ルス ト 口 ヌ リ ア属5種 と ボ マレ ア 属2種を 用いて 花の サイズ ,色な どにつ いて調 査し た結 果 , ん 竝 俛meめ 彫 ゴ ぬc面aLehm. の 花 の 形 は ろ わma職 勿 励2蝕miz&Pav. )Baker と 似 て いる こ と が わ かった 。また 丑鑓 ム也b皿. )Mirb. の花の 形状は ,調査 した種 の中 で漏 斗 状 の 形と 開 く 形 の 中 間の 値 を 示 し た。 調 査し た園芸 学的形 質を定 量的 に解析 したと ころ,
自 生 地 であ る 南 米 の チ りに 自 生 す る アル ス ト口 ヌリア とポマ レア, プラ ジルに 自生す るアル ス ト 口 ヌリ ア と ポ マ レ アで 色 や 花 の 形に お いて 類似の 傾向を 示すこ とが 分かっ た。こ れらの 情 報 は 今後 ア ル ス ト 口 メリ ア の 属 間 雑種 を 作出 する際 ,交配 親の選 定や 雑種個 体の判 別に役 立 っ と 考え ら れ る 。
次 にア ル ス ト 口 ヌリ ア と ポ マ レア の 交 雑 におけ る受精 障壁に つい て研究 した。 本研究 では ま ず 受 精 前 障 壁 の 有 無 を 確 認 す る た め に 花 粉 管 伸 長 の 観 察 を 行 っ た 。A日u職XB m飽 め 餾に つ い て , 花粉 の 種 類 , 花 柱の 状 態 , 受 粉後 の 時 間 に よる 花粉 管の到 達位置 などに つ い て 調査 し た と こ ろ ,ポ マ レ ア の 花粉 を アル スト口 メリア の柱頭 に受 粉後48時 間で, 珠孔
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に 至 嵯 し て いる 花 粉 管 が 観察 さ れ た 。 また 花柱 を除去 し子 房に直 接花粉 を受粉 した 場合, 受 粉 後24時間 で 珠 孔 に 到達 し て い る 花 粉管 が 観察 された 。しか し,ポ マレア の花 粉管は アルス ト 口 メ リ ア の胚 珠 の 周 辺 で観 察 さ れ て いる にも 関わら ず, 花粉管 の侵入 してい る胚 珠は少 な か っ た 。 こ の こ と か らA aureaX丑coccmeaに お い て , 柱 頭 上 で の 花 粉 発 芽 ・ 花 柱 内 の 花 粉管伸 長は行 われ るが, その後 の胚珠 への 花粉管 誘導に 受精障 壁があ るこ とが示 唆され た。
低 頻 度な が ら 花 粉 管が 胚 珠 に 侵 入 する 現 象が 見られ たため ,受精 の可否 と胚 と胚乳 の発達 を 検 証 す る た め に 組 織 切 片 を 用 い て 観 察 し た 。 観 察 に はA pelegrinaXBcoccb餾 の 胚 珠 を 用 い た 。そ の 結 果, 受粉3日後 の胚珠 におい て3〜4細胞期 の胚を 確認す るこ とがで きた。
ま た 胚 乳 核 も確 認 す る こ とが で き た 。 受粉5日 後 の 胚珠 に お い て 球状の 胚と胚 乳核 の分裂 が 観 察 さ れ た 。し か し 受 粉7日 後 の 胚 珠 では 胚 の 崩 壊 が観 察 さ れ た 。さら に受粉21日後 では胚 珠 の 崩 壊 が 観 察 さ れ た 。 受 精 後 の 早 い 段 階 で 胚 の 成 長 が 止 ま っ て し ま う こ と か らA p睦蓼 むX■の飽 面餾に おいて 受精後 障壁 の存在 が考え られた 。
胚 の 発育 が 停 止 し てし ま う 場 合 , 胚培 養 また は胚珠 培養に より後 代が得 られ る可能 性があ る 。 本 研 究 では 最 適 な 胚 珠の 摘 出 時 期 を調 べる ため受 粉後 の培養 日数を 調査し たと ころ, 交 配3日 後 の胚 珠 が 適 し て いる と 考 え ら れた 。 そ の 場 合, 培 地 の 糖 濃度を 変えて 培養 したと こ ろ ,sucrose濃 度 が30gl‥,60gい ,8091一1に お い て ,一 部 の 胚 珠 は発 芽 し た が , その 個 体 は 培 養 期 間中 に 枯 死 し てし ま っ た 。 この 事象 は本研 究で 用いた 組み合 わせに よる 遠縁交 雑 に お い て , 個 体 レ ベ ル で の 雑 種 致 死 性 を 示 唆 し て い る 可 能 性 が あ る 。 本 研 究で は ア ル ス トロ メ リ ア 科 の 園芸 学 的形 質を評 価し, 各種の 特徴を 明ら かにし た。ま た 属間戈 !雑時 に生 じる受 精障壁 の有無 を花 粉管伸長の観察及乙ぷ胚・胚乳の組織学的観察から 解 析 し , 受 精後 障 壁 の 克 服方 法 と し て 胚珠 培養 の有効 性を 示すこ とによ り,属 間雑 種育成 に 向 けた知 見を提 示す ること ができ た。
さ ら に, こ の 知 見 を用 い る こ と に より 遠 縁交 雑にお ける受 精障壁 のメカ ニズ ムをさ らに解 明 するこ とカミ でき ると期 待され る。
以 上 のと お り , 申 請者は アルス ト口 メリア 科の雑 種育成 につbゝて 属間雑 種育 成の可 能陸の 新 知 見 を 得 たも の で あ り ,今 後 の 遠 縁 交雑 に向 けた学 術的 基盤に 対して 貢献す ると ころ大 な る ものが ある。
よ っ て, 申 請 者 は 博士 ぽ 讃 荊 学 ) の学 位 を 受 け るの に 充 分 な 資格 を 有 す る もの と 判 定し た 。
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