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マクロファージ遊走阻止因子の制御による      組織因子発現の抑制

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Academic year: 2021

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     博 士 ( 医 学 ) 古 川 学 位 論 文 題 名

マクロファージ遊走阻止因子の制御による      組織因子発現の抑制

学位論文内容の要旨

  血栓傾向は,動脈硬化に合併する心血管疾患や脳血管疾患,感染症や悪性腫瘍に伴う播種性血管内 凝固(DIC)などの病態で重要であるばかりでなく,全身性エリテマトーデスや抗リン脂質抗体症候群 などの自己免疫疾患の予後を規定する重要な因子である.血栓傾向の制御は自己免疫性疾患の治療に おいても重要な役割を果たすと考えられる.血栓形成疾患では,不適切な細胞活性化に伴う単球系細 胞や血管内皮細胞に発現す る組織因子と第VII因子の相互作用からはじまる外因系凝固の活性化が,

病態の中心のひとっである,

  マクロファージ遊走阻止 因子くMIF)は,1966年にin vitroでマクロファージの動員を抑制する活 性化T細胞由来のりンホカインとして報告された,当初MIFは遅延型アレルギー反応や細胞性免疫に 関わるりンホカインとされ たが,MIFの生体内外での詳 細な生理活性は不明であった,1989年にMIF のcDNAがクローニングされ ,1993年にMIFの立体構造が解析され,生理的な意義が明らかになってき た,すなわちMIFはエンド卜キシンショックを仲介したり,免疫細胞の活性化やサイ卜カイン産生を 促し,向炎症作用を有する,また,サイ卜カインネッ卜ワークにおいてTNFccやIFNyより上流に位置し,・

その産生を促す,また,MIFはグルココルチコイドの作用に拮抗して炎症を惹起すること,T細胞の活 性化に必須な因子であることなどから,感染症や組織障害などの種々のス卜レスによる細胞の増殖や 活性化にとってMIFは必須の分子であることが認識されるようになってきた,これらの事実は,MIFは 細菌感染症における免疫応答や炎症反応の主たるメディエーターであることを示唆し,炎症性疾患の 抗サイトカイン療法のターゲッ卜として注目されている.

  本研究は,MIFの制御が組織因子を産生する単球系細胞や血管内皮細胞の不適切な活性化を抑制し,

抗MIF抗 体 療 法 が 血 栓 傾 向 の 治 療 戦 略 の ひ と っ と な る 可 能 性 を 示 す こ と を 目 的 と し た ,   組織因子産生細胞としてLPS刺激により組織因子を発現する単球系細胞と血管内皮細胞を用いた,

単 球系 細胞 とし てU937お よび 正常末梢血単核球(PBMC)を,内皮細胞としてヒト臍帯 静脈内皮細胞 (HUVEC)を使用した,MIFの 生理活性を抑制するモノクローナル抗ヒトMIF抗体産生ハイブリドーマを プリスタン処理したBalb/cヌードマウスの腹腔内に接種し腹水を得た,腹水からプロテインGカラム を用いてモノクローナル抗MIF抗体(anti−MIFmAb)を精製し,ELISAにて活性を確認した,組織因子産 生細胞を0―lOOLig/mlのanti―MIFmAbにて1時間処理し,その後LPSを添加し6時間インキュベー卜し た,組織因子は他の酵素を必要せずに,細胞表面に発現した段階で向凝固活性をもつので,その発現 の評価を,活性化凝固因子VII,活性化凝固因子V,凝固因子X,プロトロンビン,カルシウムを加え,

    ―680−

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トロンビン産生を 検出する合成基質法により 測定した,

  anti―MIFmAbのU937に お け る 組 織 因 子 発 現 に 対 す る 効 果 を 検討 した .U937に お いて ,LPS刺 激に よ り強 い 組織 因子 の発 現 を認 めた が,antlーMIFmAbに て処 理さ れ た細 胞で は組 織 因子 の発 現は殆ど認めら れ な か っ た ,anti―MIFmAbに よ る 組織 因子 発現 抑制 効 果は 抗体 濃度20 yg/mlで 最大 限に 達 した ,同 様 の 検 討 をPBMCお よ びHUVECに お い て も 行 い ,anti−MIFmAbに よ り有 意に 細 胞か らの 組織 因 子発 現が 抑 制された.

  以 上 の 結 果よ り,anti―MIFmAbはLPS刺激 によ る単 球 系細 胞お よび 血管 内 皮細 胞の 組織 因 子発 現を 抑 制することが示さ れた,

  次 にanti―MIFmAbに よ るPBMCの 組 織 因 子 発 現 抑 制 効 果 に つ い て 転 写 レ ベ ル で の 検 討 を 行 っ た , anti―MIFmAbが 同 様 に 処 理 し たPBMCをLPSで 刺 激 し ,RNAを 抽 出 後 , 逆 転 写 酵 素 に よ りcDNAを 作成 し た , す べ て のcDNAサ ン プ ル に 対 し て サ イ ク ル 数 とcDNA濃 度 を 変 え てPCRを 行 い ,PCR産 物 がlinear phaseに あ る こ と を 確 認 し た , 組 織 因 子 のmRNA発 現 は 抗 体 非 添 加 細 胞 お よ び マ ウ ス 正 常IgG添 加細 胞 と 比 較 し ,anti−MIFmAb 50 Lig/mlを 添 加 し た 細 胞 で はLPS刺 激 後30分 後 ,2時 間 後 の 組 織因 子mRNA 発 現 が 低 下 し て い た .MIFのmRNA発 現 を 測 定 し ,LPS刺 激 後 直 後 ,30分 後 ,2時 間 後 のMIFのmRNA発 現 は , 抗 体 非 添 加 細 胞 , マ ウ ス 正 常IgG添加 細 胞,anti―MIFmAb 50 hcg/ml添加 細 胞の3群 問で 明ら か な差はなかった.

  上 記RT―PCR産物 を定 量化 する た めReal time PCRを行 い, 組 織因 子のcDNAの 発現 量を ーアクチンcDNA 量 で 補 正 し ,RT―PCRで 検 討 し た 時 と同 じサ イ クル でのreal time PCRの 螢 光度 を比 較す る と, 抗体 非 添加細胞: anti―MIFmAb:マウス正常IgG抗 体=0. 448土0.073:0.140土0.012:0.314土0.016(抗体非 添加細胞vs anti−MIFmAb:p二ニ0.037,マウス正常IgG抗体vs anti−MIFmAb:p二ニ0.0039)とantiーMIFmAb 添加細胞にて有意 に組織因子の螢光強度は有 意に低かった,

  こ れ らの 結果 によ り ,anti―MIFmAbに よ る組 織因 子発 現抑 制 効果 は, 組織 因 子の 転写 レベルで抑制さ れていることが示 された.

  以 上 の よ う にanti―MIFmAbは , 産生 され たMIFを 制御 しト ロ ンビ ン活 性能 を抑 制 した ,更 にRT−PCR に よ り 組 織 因 子 の 発 現 が 転 写 レ ベ ルで 抑制 され てい る こと も示 され た, こ れら の知 見に よ り, 組織 因 子 発 現 の 維 持 に はMIFの オ ー ト ク リ ン , パ ラ ク リ ン 作 用 に よ る 持続 的な 刺 激が 必要 であ る こと が新 た に 示 さ れ た , ま た , 抗MIF抗 体 に よ る 治 療 は , 組 織 因 子 を 発 現 する 単球 系 細胞 や血 管内 皮 細胞 の不 適 切 な 活 性 化 を 抑 制 す る た め , 単 純 に過 凝固 を非 特異 的 に抑 制す るぱ かり で はな く, 血栓 を 形成 する 病 態 の 中 心 で あ る 血 管 内 皮 細 胞 や 単 球系 細胞 の機 能分 子 をタ ーゲ ット にし て おり ,病 態の 根 本か ら疾 患 を 改 善 し て い る と い う 点 で , こ れ ま で 治 療 困 難 と さ れ た 難 治 性のDICや 劇 症抗 リン 脂質 抗 体症 候群 な どに対する新しい 治療法として期待される,

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学位論文 審査の要旨

学位論文題名

マクロフ ァージ 遊走阻止因子の制御による      組織 因子発 現の抑制

血 栓 傾 向 は , 動 脈 硬 化 に 合 併 す る 心 血 管 疾 患 や 脳 血 管 疾 患 , 感 染 症 や 悪 性 腫 瘍 に 伴 う 播 種 性 血管 内凝 固(DIC)な どの 、病 態で 重要 であ るば かりでなく,全身性エリテマトーデスや抗リン脂 質 抗 体 症 候 群 な ど の 自 己 免 疫 疾 患 の 予 後 を 規 定 す る 重 要 な 因 子 で あ る . 血 栓 傾 向 の 制 御 は自 己 免 疫 性 疾 患 の 治 療 に お い て も 重 要な 役割 を果 たす と考 えら れる .血 栓 形成 疾患 では ,不 適切 な 細 胞 活 性 化 に 伴 う 単 球 系 細 胞 や 血 管 内 皮 細 胞 に 発 現 す る 組 織 因 子 と 第VII因 子 の 相 互 作 用 からはじまる外因系 凝固の活性化が病態の中心のひとっである.

  マ ク ロ フ ァ ー ジ 遊 走 阻 止 因 子(MIF)は,in vitroで マク ロフ ァー ジの 動員 を抑 制す る活 性化T 細 胞 由 来の りン ホカ イン とし て報 告さ れた , 当初MIFは遅 延型 アレ ルギ ー 反応 や細 胞性 免疫 に関 わ るり ンホ カイ ンと され たが ,そ の後MIFのcDNAがクローニングされ,さらに立体構造が解析され て,生理的な意義が 明らかになってきた.すなわちMIFはエンドトキシンショックを仲介したり,免疫 細胞活性化やサイト カイン産生を促し,グルココルチコイドの作用に拮抗して炎症を惹起すること,T 細胞の活性化に必須 な因子であることなどから,感染症や組織障害などの種々のストレスによる細胞 の 増 殖 や 活 性 化 に と っ てMIFは 必 須 の 分 子 で あ る こ と が 認 識 さ れ る よ う に な っ て き た ,   本 研 究 は ,MIFの 制 御 が 組 織 因 子 を 産 生 す る 単 球 系 細 胞 や 血 管 内 皮 細 胞 の 不 適 切 な 活 性 化 を抑 制し ,抗M.IF抗体 療法 が血 栓傾 向の 治療 戦略のひとっとなる可能性を示すことを目的とし た.

  組 織 因 子 産 生 細 胞 と し てLPS刺 激 に よ り 組 織 因 子 を 発 現 す る 単 球 系 細 胞 と 血 管 内 皮 細 胞 を 用 い た .単 球系 細胞 とし てU937お よび 正常 末 梢血 単核 球(PBMC)を ,内 皮 細胞 とし てヒ ト臍 帯静 脈 内 皮 細 胞(HUVEC)を 使 用 し た . 組 織 因 子 産 生 細 胞 を0−100 pt,g/mlの 抗MIF抗 体 に て1時 間 処 理し ,そ の後LPSを 添加 して6時 間イ ン キュ ベートした,組織因子発現 を,活性化凝固因子VII, V,X, プロ トロ ンビ ン,カルシウムを加え, トロンビン産生能として合成基質法により測定した.

  U937に お い て ,LPS刺 激 に よ り 強 い 組 織 因 子 の 発 現 を 認 め た が , 抗MIF抗 体 に て 処 理 さ れた 細 胞 で は 組 織 因 子 の 発 現 は 殆 ど 認 め ら れ な か っ た . 抗MIF抗 体 に よ る 組 織 因 子 発 現 抑 制 効 果 は 抗 体 濃 度20 yg/mlで 最 大 限 に 達 し た . 同 様 の 検 討 をPBMCお よ びHUVECに お い て も 行 い , 抗MIF抗体により有意に細胞からの組織因子発現 が抑制された.

682

夫 博

隆 正

池 香

小 浅

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

次 に 抗

MIF

抗 体 に よ る

PBMC

の 組 織 因 子 発 現 抑 制効果 につ いて 転写 レベ ルで の検 討を 行つ た . 抗

MIF

抗 体 で 同 様 に 処 理 し た

PBMC

LPS

で 刺激 し,

RNA

を 抽出 後, 逆転 写酵 素に より

cDNA

を作 成し た. 組織 因子 の

mRNA

発 現は 抗体 非添 加細 胞お よびマ ウス 正常IgG添加細胞と 比 較し, 抗MIF抗 体゛

50 Fig/ml

を添 加し た細胞ではLPS刺激後30分後,2時間後の組織因子

mRNA

発現 が低 下し てい た. 一方 ,LPS刺激 後直 後,

30

分 後,

2

時間 後の

MIF

のmRNA発現は,

抗 体 非 添 加 細 胞, マウ ス正 常lgG添加 細胞 ,抗

MIF

抗 体

50 Fig/ml

添加 細胞 の3群 間で 明ら かな差はなかった.

  

上記RT−PCR産 物を 定量 化す るため

Real time PCR

を行い,組織因子のcDNAの発現量を・

アクチンcDNA量で補正し,定量比較すると,抗体非添加細胞およびマウス正常IgG添加細胞に 比 較 し , 抗

MIF

抗 体 添 加 細 胞 に て 有 意 に 組 織 因 子 の 蛍 光 強 度 は 有 意 に 低 か っ た .

  

これらの結果により,抗MIF抗体はLPS刺激による単球系細胞および血管内皮細胞の組織因 子発現が低下しトロンビン産生能を抑制することが示された.また,その効果は組織因子の転写レ ベルで抑制されていることが示された.

これらの知見により,組織因子発現の維持にはMIFのオートクリン,パラクリン作用による持続的 な刺激が必要であることが新たに示された.また,抗MIF抗体による治療は,組織因子を発現する 単球系細胞や血管内皮細胞の不適切な活性化を抑制し,血栓を形成する病態のより中心である 血管内皮細胞や単球系細胞の機能分子をターゲットにしており,病態の根本から疾患を改善して いるという点で,これまで治療困難とされた難治性のDICや劇症抗リン脂質抗体症候群などに対 する新しい治療法として期待される.

  

この発表に対し,今回使用した抗MIF抗体の性質や効果について質問があった。それに対し 申請者は概ね適切に解答した.審査委員からは,抗MIF抗体は抗血栓療法に対し期待されるが,

抗 体の質 の向 上や

in vivo

での 実験系 の確 立が 必要 であ るこ とな どの コメントがあった.

  

この論文は,北海道医学雑誌にて高く評価され,今後の難治性血栓性疾患の治療に対し期 待される.審査員一同は,これらの成果を高く評価し,大学院課程における研鑽や取得単位など も 併 せ 申 請 者 が博 士( 医学 )の 学位 を受 ける のに十 分な 資格 を有 する もの と判 定し た.

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参照

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