博 士 ( 工 学 ) 上 杉 勉
学 位 論 文 題 名
窒化物半導体の接合特性評価とトランジス夕応用 学位論文内容の要旨
現 在 、 世 界 的 規 模で 対策 が 迫ら れて いる 地 球温 暖化 問題 に対 し て、 その 原因 であ るC02排 出 の 抑 制 は 様 々 な 産 業 界に おい て 強く 求め られ て いる 。輸 送関 連分 野 では 、排 出さ れるC02量が 全 排 出 量の2割 程度 にの ば ると 言わ れて おり 、 さら に中 国、 イン ド を初めとする新興国におけ る自動車 の 爆 発 的 な 普 及 も 予想 され て いる こと から 、 今後 輸送 関連 分野 で のC02排 出量 が大 幅に 増加 す る 恐れがあ る。
この よう な 背景 から 、C02排 出量 の低 減 を目 的に ハイ ブリ ッ ド車(Hybrid Vehicle:HV)や電気自 動 車(Electric Vehicle:EV)の 開発 が 急ピ ッチ で展 開さ れ てい る。 これ らHV、EVで は、 搭載 し て い る直 流電 池 から 電気 エネ ルギ ー を供 給し てお り 、一 方動 カを 生み出す電気モータは3相 交流モー タ が使 用さ れ てい る。 この ため 、 直流 の電 池電 圧 を3相 交流 電 圧に変換する電力変換装置 であるイ ンバータ が必要となる。現状のインバ ータは、Si IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を主素子 と して 構成 さ れて いる が、Si固 有 の材 料性能限界のため、今 後の大幅な特性向上、損失低 減が困難 となって いる。
これ を打 開 する ため 、炭 化シ リ コン(SiC)、窒化ガリウム(Gal.D等のワイドバンドギャ ップ(Wide Band Gap:WBG)素 子 の 研 究 ・ 開 発 が 精 力 的 に 行 わ れ て い る 。WBG半 導 体 はSiの3倍 以 上 の 禁 制 帯 幅を 持っ た め、Siパ ワー デバ イ スの 最大 動作 温 度が150℃ 程 度に 制限 され る のに 対し て、SiC、 GaNパ ワ ー デ バ イ ス で は250℃ 以 上 の 高 温 領 域 で の 動 作 も 可 能 で あ る 。 さ ら にWBG半 導 体 は 、 絶 縁 破 壊 電 界 がSiに比 べ約1桁 程度 高 いこ とが 特徴 であ る 。こ の点 から 、 同じ 耐圧 を実 現す る 上 で 、損 失を2桁 以上 低 減す るこ とが 可能 と なり 、将 来の 電力 変 換装置用パワーデバイスと して本命 視されて いる。
Si、SiCで は そ れ ぞ れSi基 板 、SiC基 板 が開 発さ れ、 大 電力 用と して 必 須の 縦型 デバ イス の 開 発 が 可 能 で あ る の に 対 し 、GaNで はGaN基 板 そ の も の の 開 発 が 進 ま ず 、GaNパ ワー デバ イス は サ フ んイ ア基 板 やSi基板 など 異種 基 板上 ヘ作 製し た 小電 力用 横型 パワ ー デバ イス の開 発に 留まって い た。 今世 紀 に入 り、 よう やく 水 素化 物気 相成 長 法に よるGaN自立基板が開発され、基板 サイズ、
品 質 の 点 で パ ワ ー デバ イス 用 とし ては まだ 十 分で ない もの の、GaNでも 縦 型パ ワー デバ イス の 研 究 ・開 発を 行 う環 境が 整い つっ あ る。 さら に、GaN縦型 パワ ー デバイスを実現する上でカ ギとなる 技 術 が 「p型GaN技 術 」 で あ る 。 デ バ イ ス の高 耐圧 化、 車 載デ バイ スで 強 く要 求さ れて いる 高 耐 量 化を 実現 す るた めに 、デ バイ ス の一 部にp型 領域 を形 成し 、 高電界により発生する正孔 の蓄積を 防ぐ必要 がある。
また 高温 動 作が 要求 され 、か っ 安全 保障上ノーマリオフ動 作が強く求められる車載用パ ワーデバ イ スで は、GaN電子 デ バイ スで 一般 的な シ ョッ トキ ーゲ ート 構 造では、高温でのりーク電 流あるい −892−
は正のゲート電圧に対するバリア性の点から適用が困難である。これを解決する方法として、絶縁 膜を適 用した絶縁ゲート構造がある。SiではSi自身の酸化物であるSi02が優れた界面特性等の 理由から主に用いられている。しかし、GaNではSi02との界面に高密度の界面準位が形成され、
良質な界面特性が得られない、という課題を抱えている。
以上の背景を踏ま・えて、本研究では、p型GaNの特性を各種電気的評価から明らかにするとと もに、ゲート絶縁膜用としてSiデバイスで実績のあるSi02および高誘電体膜として注目されてい るA1203膜に 関して検討を行った。さらに、GaN自立基板上にGaN縦型 ハワーデバイスを試作 し、そ の特性に関して評価を行い、GaN縦型パワーデバイスの可能性に関して検討を行った。
本 論 文 は 第1章 か ら 第6章 で 構 成 さ れ て い る 。 以 下 、 各 章 の 要 旨 を ま と め る 。 第1章は序論として、GaNパワーデバイスを取り巻く状況を自動車用途を想定して述べ、本研 究の必要性等に関してまとめた。
第2章では、GaNを中心とした窒化物半導体の特徴を、GaN基板技術およびGaNパワーデバイ スの研究・開発状況を絡めて述べる。
第3章では、p型GaNのエピタキシ ヤル成長と成長層の電気的特性評価、およびGaN自立基板 上に形成したp‐nダイオードの解析を行い、縦型パワー素子としてのGaNp‐nダイオードの基本特 性を検討した。さらに、素子作製プロセスで用いられるプラズマプロセスの素子特性への影響を評 価するために、プラズマプロセスに曝された層を有するp・nダイオードを形成し、プラズマ照射に よる空孔型欠陥の発生が、pーn接合の漏れ電流を増大させ、かつ耐圧特性を劣化させる要因となる ことを明らかにした。
第4章でtま、高温・ノーマリオフデバイスを前提とした絶縁ゲート構造を想定し、Si02膜およ びA1203膜の検討を行った。GaN上Si02膜の課題のーつである界 面準位の低減に関して、新た な成膜手法を考案し、従来の界面準位を2桁低減可能な手法を提案した。また、さらなるデバイス 高性能化で期待される高誘電率A1203絶縁膜に関して、その堆積法の検討と界面特性の評価を行 い 、A1203膜 の 良 好 な 絶 縁 特 性 とA1203/GaN構 造 の 低 界 面 準 位 密 度 を 示 し た 。 第5章では、GaN自立基板上に形成した2種類のGaN縦型トラン ジスタの作製法とその基本特 性を記 述した。一っは、GaNエピタキシヤル層中に部分p型埋込層を有するアパーチャ構造縦型 GaNトランジスタであり、もうーっは現在Siパワーデバイスで主流となっているトレンチゲート 型GaNトランジスタである。両者とも良好な電気特性を示し、大電カスイッチング用トランジス タ と し て 主 流 と な る 縦 型 ト ラ ン ジ ス 夕 構 造 の 有 力 候 補 で あ る こ と を 明 ら か に し た 。 最後に第6章にて本研究のまとめを行った。
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学位論文審査の要旨 主査 教授 橋詰 保 副査 教授 佐野栄一 副査 准教授 葛西誠也
学 位 論 文 題 名
窒化物半導体の接合特性評価とトランジス夕応用
C02排出 の 抑 制 は世 界 規 模 で強 く求めら れてい る。増 加の一 途をた どる電 力消費 がC02排出 の 最大要因であるが、輸送関連分野の排出量も全排出量の2割程度に達しており、今後、新興国に お ける自 動車の爆 発的を 普及も 予想さ れてい ること から、輸送関連分野でのC02排出抑制は、低 炭素社会実現に向けて重要を課題とをっている。
このようを背景から、ハイプリッド車や電気自動車の開発が急ピッチで展開されている。これら の車種では、搭載している直流電池から電気工ネルギーを供給しており、一方動カを生み出す電気 モ ータは3相交流 モータが 使用されている。このため、直流電カを3相交流電カに変換する電力変 換装置(イン′ヾータ)が必要とをる。現状のインバータは、シリコン(Si)トランジスタを主素子と して構成されているが、Si固有の材料性能限界のため、今後の大幅を特性向上や電力損失低滅が困 難となっている。
Si材 料性能 限界を 超える 次世代 インバ ータとし て、炭 化シリ コン(SiC)と窒化ガリウム(GaN) を 利用し た素子の 研究・ 開発が 急ピッ チで行 われて いる。これらの半導体はSiの3倍以上の禁制 帯 幅を持 っため、Siパワ ーデバイスの最大動作温度が150℃程度に制限されるのに対して、SiCお よ びGaNパワ ーデバ イスは250℃以上 の高温 領域で の動作 も可能で ある。 さらに絶縁破壊電界が Siに 比ベ約1桁程度 高いこ とから 、同じ耐 圧を実 現する 上で、 損失を2桁以上低滅することが可 能となり、将来の電力変換装置用パワーデバイスとして大き顔注目を集めている。特に窒化物半導 体 系材料 は、InN、GaN、mNの混 晶を組 み合わ せた異 種接合 構造が 形成で き、優れた電気的特性 を持つ界面電子層を利用することにより、極めて損失の低いトランジスタが作製できる。しかし社 が ら、GaN基 板の開 発が進 まず、GaNパワー デバイ スはサ ファイア 基板やSi基板をど異種基板上 へ作製した小電力用横型デバイス開発に留まっていた。今世紀に入り、ようやく水素化物気相成長 法 によるGaN自立基 板が開 発され、GaNでも縦型パワーデ′ヾイスの研究・開発を行う環境が整い つっある。
GaN縦型パ ワーデ バイス を実現す る上で カギと をる技 術が「 高品質p型GaN層」 である 。デバ イスの高耐圧化、車載デバイスで強く要求されている高耐量化を実現するために、デバイスの一部 にp型領域を形成し、高電界により発生する正孔の蓄積を防ぐ必要がある。また高温動作が要求さ れ、かつ安全保障上ノーマリオフ動作が強く求められるパワーデバイスにおいて、高温でのりーク 電流あるいは正のゲート電圧に対するバリア性の点から、金属ゲート(ショットキーゲート)構造 の適用が困難である。これを解決する方法として、絶縁膜を適用した絶縁ゲート構造がある。Siで
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はSi自身の 酸化物であるSi02が優れた界 面特性等の理由から主に用 いられている。しかし、GaN ではSi02と の界面に高密度の界面準位が 形成され、良質誼界面特性が得られをい、という課題を 抱えている 。
以上の背 景により、本研究では、次世 代インバータの実現を目指して、GaN素子構造および作製 プ ロセ スの 要素 技術の検討を 系統的に行っている。具体的 には、p型GaNおよびpn接合 の特性を 各種電気的 評価から明らかにするととも に、ゲート絶縁膜用としてSiデバイスで実績のあるSi02 および高誘 電体膜として注目されているAl酸化膜膜に関して検討を 行った。さらに、GaN自立基 板上に縦型 トランジスタを試作し、その 基礎電気特性の評価を行い、GaN縦型パワートランジスタ のインバー タ応用に関して検討が行われ ている。
本 論 文 は 第1章 か ら 第6章 で 構 成 さ れ て い る 。 以 下 、 各 章 の 要 旨 を ま と め る 。 第1章は 序論 として、GaNパ ワーデバイスの特長を簡潔に まとめ、自動車用途を想定 した性能 予測と研究 開発の課題点を整理し、本研 究の目的を記述している。
第2章で は、GaNを中 心と した 窒 化物 半導体の物性的特 徴を概説し、さらにGaN基板 技術およ びGaNパワー デバイスの研究・開発状況 について詳しく述べている。
第3章で は、p型GaNの エ ピタ キシ ャル 成長 と 成長 層の 電気 的 特性評価、およびGaN自立基板 上に形成し たp‐n接合ダイオードの解析 を行い、縦型パワー素子の基本要素としてのGaNp−nダイ オードの特 性を評価している。さらに、素子作製プロセスで用いられるプラズマプロセスの素子特 性への影響 を評価するために、プラズマプロセスに曝された層を有するp‐nダイオードを形成し、
プラズマ照 射による空孔型欠陥の発生が、p‐n接合の漏れ電流を増大させ、かつ耐圧特性を劣化さ せる要因と をることを明らかにした。
第4章では 、高温・ノーマリオフデバ イスを前提とした絶縁ゲート構造開発を目的として、Si02 膜 およ びm酸化 膜膜 のGaN表 面へ の 堆積 とその界面特性の 評価を行っている。Si02/GaN構造に おける界面 準位の低減に効果的を新たを 堆積手法を考案し、従来の界面準位を2桁程度低滅可能で あることを 示した。また、Si02と比較し てはるかに高い誘電率を有する触酸化膜に関して、その 堆積法の検 討と界面特性の評価を行い、Al酸化膜膜の良好誼絶縁特 性と心酸化膜/GaN構造の低 界面準位密 度を明らかにしている。
第5章で は、GaN自立 基板 上に 形 成し た2種類の縦型トラ ンジスタの作製法とその基 本特性を 記 述し てい る。 一 っは 、GaNエ ピタ キシ ャル層中にp型埋 込層を有するアパーチャ構造 縦型GaN ト ラン ジス タで あり、もうー っは現在Siパワーデバイスで 主流となっているトレンチ ゲート型 GaNトランジ スタである。両者とも良好 を電気特性を示し、大電カス イッチング用トランジスタ と し て 主 流 と を る 縦 型 ト ラ ン ジ ス タ 構 造 の 有 力 候 補 で あ る こ と を 示 し て い る 。 第6章では 本研究で得られた主を成果 をまとめている。
これを要 するに、本論文は、GaNpn接 合および絶縁膜/GaN構造の特性を各種電気的評価から明 らかにする とともに、GaN自立基板上の 縦型トランジスタの優位性と課題点を検討しており、ここ で 得 ら れ た 基 礎 的 知 見 は 、 窒 化 物 半 導 体 デ バ イ ス 研 究 に 貢 献 す る と こ ろ 大 で あ る 。 よ っ て 著 者 は 、 ゴ ヒ 海 道 大 学 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る 者と 認め る 。
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