• 検索結果がありません。

先天性心疾患の心電図

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "先天性心疾患の心電図"

Copied!
13
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

(甕搬出誘第論。筆講

〔綜 説〕

先天性心疾患の心電図

QRS波の形からみて一

東京女子医科大学小児科教室(主任 磯田仙三郎教授)

    講師草川 三治

       クサ    カワ     サソ     ジ

(受付 昭和40年2月22日)

        緒  言

 先天性心疾患の心電図についての研究は,古く は剖検に基づく肢誘導のみのものに始まり,その 後心臓カテーテル法や血管心臓造影法等の診断法 の進歩と共に,欧米ではSokolowユ), Cabrera2),

Sodi−Pallares3)らを始めとして無数の報告が行な われ,本邦では昭和28年村尾,三枝らと共に著者が 循環器学会において発表4)して以来,これまた多 数の報告がみられるようになった.最初の頃は心 電図には先天性心疾患の各疾患に特有の変化が なく,したがって診断には決定的な要素ではな いように考えられていたが,その後弾の診断法の 進歩と共に次第にまた見なおされるようになり,

例えばチアノーゼ性心疾患における三尖弁閉鎖症 とファロー氏四徴症の鑑別,非チアノーゼ性心疾 患における心房一次中隔欠損症と二次中隔欠損症 の鑑別には心電図が非常に有力な手がかりになる こともわかり,また各疾患に全く特有の所見では なくても,それぞれの疾患における所見が十分検 討され,Taussig5),Nadas6)やその他の多くの先 天性心疾患の著書にもそれぞれ詳しく記載されて いる.しかし乍らこれらの無数の報告や著書の殆 どが,心電図所見を記載する時,右肥大あるいは左 肥大,更には両室肥大というように,肥大心電図 という観点からみている.一方,心電図における肥

大の判定は著明なものは問題ないが,正常と劃然 と区別できるものでなく,幼若乳児期の右肥大の 判定とか,幼小児における左肥大の判定は非常に 難しくて,先天性心疾患の心電図を記載する時適 当でないことも多い.そこで著者は近年QRS波 あるいは田波の形という面から先天性心疾患をみ て来たが,それぞれの疾患に幾つかの型はあって もその疾患なりの一・定の形があるように思われ,

また正常の小児心電図が新生児期から成人に至 るまでにその血行動態に応じて形が変って行くの に対して,先天性心疾患の場合はこれと同様の変 化を示すものから,殆ど変らないものまであり,

形と共に変化を観察することによって診断はもと より,その重症度も判断することができるように 思われる.紙数に限りもあり,とても総ての先天 性心疾患について述べることはできないが,比較 的例数の多いものについて述べてみたい.

   正常小児心電図の年令による変化

 先天性心疾患に入る前に,正常の心電図が出生 後から成人に至るまで,どのように変ってゆくか

をみると,Q:RS波,丁波については図1に示す とおりである.まず新生児期では肺呼吸が始ま り,卵円孔,動脈管が機能的に閉鎖するというよ うな短時間における圧,流量,流れの方向の変動 は,あるいは田波に,あるいはまたQRS波の高

Sanji KUSAKAWA (Departrnent of Pediatrics, Tokyo Women s Medical College): ECG of the congenital heart disease, from the view point of the figure of QRS wave.

一357一

(2)

   工、■皿aVR二二Vl  V2 V3 V4 Vs V6

纈面上↓ †鉢皆++iC

2カEe 4一 4一壷N+一MK−

10、酔鉢や干ム++ト面恥 3才側転セ串1堀乍掃ヰ鼻

7h 」一 」一ky一一L一一一L IA i一

報領脚州一+・一rtr!・与4−s一

  図1 小児正常心電図の年令による変化        2ヵ月  10ヵ月

さの僅かな変動に,更には嶺た:P波が短時間のう ちに動くという結果にみられるが,左右の心室の 筋肉の厚さ等QRSの波形に影響のあるものはそ れ程急激には変化しない。図1には新生児期の短 時間の変動は記載しなかった.電気軸は新生児期 では+90。以上で大きく右軸偏位を示したもの が,2カ月から3カ月になると次第に左に移り,

+90。から+60。位になり,それ以後はなお多少 左によるが殆ど変らない.年令と共に廻転その他 の関係から,時には右軸偏位のまま留まるものも あったり,更には正常でも左軸偏位をして0。以 下になるものも時にあるが,この揚重も胸部誘導 のQRS波の方は正常の動きを示す.単極肢誘導

ではaVRは新生児期にqR型を示すのが2カ月

から3ヵ月ではqが深く,Rが低くなり,10カ月 から1才ではその傾向が更に進み,3才になると もう殆どRが成人と同様に小さくなる.aVLは新 生児期はSが深いrS型を示して垂直位を示すも のが多く,年令と共にRが高くなりSが浅くなる ものが多いが,これはaVRの如く定まったもの でなく,波高の小さいものやら色々の形をとるよ うである。aVFは余り大きな変動がない.胸部 誘導ではまずQRS波をみると, Vlでは新生児

期はRが高くSが浅いのが,2−3カ月で既にS

がだいぶ現われ,1才前後でRとSが同じくらい になり,その後Rが幼児期,小児期と次第に低く なり,Sは反対に次第に深く,10才を過ぎて次第 に成人に近づきrS型となる. V5, V6では新生

児期はRが低くSが深いのが2−3カ月で既にR

がだいぶ高くなり,Sが浅くなってその後は1才 頃までにSが更に浅くなって殆ど成人と同様にな

る.V5, V6で幼児期にQ波の案外深いものが多 く,これは1つの小児心電図の特牛ではあるが,

全体の形と.しては大きな変化ではない.次に胸部 誘導の[1]波であるが,生後48時間な》・し72時闇で 琉の男は陽性から陰性になり,V5 V6の{1]は陰 性ないし平低のものが陽性になる.その後乳児期 はV3Rか、らV4ぐらいまで陰性であるが,年令 が進むにつれてV3まで, V2までと[1]の陰性は 少なくなり,10才を過ぎるとV。R〜Vユのみ陰性

となり,、ほぼ成人と同様になる.以上心電図の形 の年令と共に起こる変化を述べたが,これを血行 動態と併せて考える時,最初の3ヵ月頃までは肺 循環が始って子宮内から外界の生活をするための 適応による変化であり,以後は身体の発育につれ て,体循環と肺循環の仕事量の差に基づく変動で あるといえよう.この正常の変化を基として次の 先天性心疾患の心電図をみてゆくと,種々興味あ

る面が窺われる,

       心室中隔欠損症

 :先天性心疾患の心電図の中で,最も多彩であ り,最も興味深いものがこの心室中隔欠損症の心 電図で,一々名前をあげるまでもなく,無数の報 告がある.著者は高尾ら7)と共に昭和37年,38年 の2年間に心乱外来を訪れた心室中隔欠損症の 715名について,そのパターンの分類を試みたが,

その一部を訂正して頻度と共に図2に示した.1 型は全く正常で,その年令相当のパターンを示す

ものであり,1型は右側胸部誘導のV・R〜V1で,

右 側 L 左 側

頻度

正 常

正常

物41,7%

rsr・ 」しv一

号RJ一

殊18.5%

皿 ・S†〉 ,・・.L

珠彫

π R、,Pも製」L一

…十一

塩ゴ。.3%

R,」L

・S筈砕ト

触富%

π ・・十一 ,R,,RS淋ト

象8.8%r 図2 V.SD.の胸部誘導パターン

一 358 一

(3)

bl》駕

認醇

舜 嘱

ぜ跳

Ve

ゾ船

Wh帽

vぴ

 繕麟

》亀

》ヤ翻㌔

1

図3 VSD ll型 5ヵ月 S

・Q:RSに分裂のみられるいわゆる不完全プロヅク 型を示し,左側では普通のqRs型をとるものであ る.右のRの高さは正常の如く年令と共に低くな るものが多く,異常に高くて,肥大心電図で右肥 大といわれるようなものは大体左側の方も高く,

それは次のIV型に入れた.また左側では波高も全 く正常のものから,qが深く,またRが高く,[1]

も高い,いわゆる左肥大,あるいはCabreraの いう左室拡張期負荷の形を示すものまであるが,

・全体の形として一つの型と考えられるもので,右 側のRの高さや胸部誘導のT逆転など正常と同 様に年令の動きに伴う面もあるが,図3,4,5の如

く,5カ月から35才のものまで全体として殆ど同 様の形を示している.この形のものはX線でもわ

.かる如く,それ程重症のものではなく,軽症ない

t:

rsS

誌、

騒・

し中等症である.次の皿型は右側の胸部誘導で乳

児期から既にrS型を示し,左側ではqRs型で

qも深くRも高い形である,生後4日で既にこの 形をとっているものも経験しているが,ここは8 才の例のみを図6に示した。肥大型をいうならば 左室肥大の形であるが,V1のSの深さ, V5回忌 の高さだけをとりあげると肥大といえないものも ある.この形で時にVlの[[ が乳幼児で上向き のものもあるが,この現象の説明はまだできな い.この形のものもせいぜい中等症であり,軽症 のものもある.次がIV型である.この形は[型の 所で一寸触れたが,右側の胸部誘導ではRs, rsR

rR/s型でRが高くSは浅く,左側でqRS型を

示し,Rが高くSも深く,qも深いものが多い.

図4 VSD皿型 6才

   一359一

(4)

図5 VSD 皿型 35才

これは肥大型でいえば両室肥大である.乳児期で

はQRSに分裂のあるものは1型と間違い易い

が,この際V1のΦが参考になり, N型では乳児 期でも上向き,あるいは平蕪のことが多い。6ヵ月 の例を図7に,4才の例を図8に示した.成人の 例はここでは省略するが,これも乳児から成人ま

で同じ形である.この形は図の如く心拡大も強 く,重症例である.次のV型は右側でRs,ある いはrR/s型, Rが高くSが浅く,左側ではrS型 あるいはqRS型で新生児期にみるようなパター ンで,肥大型でいえば純粋の右肥大の形を示す.

図9に7才の例を示したが,乳児期にも,また成 人でもこの形があり,いわゆるアイゼンメンゲル

図6 VSD 皿型 8才

図7 VSD IV型

鉱        ・

   ・ ;:9乳㊥激ご:::v

婆、

獲噸ここ鯵

  硬き響ゴ譲瀞∵

雌繋瀬

鵡,鰍し課

  い芝月卿翫姻二  Vs瀬通儲,・・.

,砂礫1影、

癖蝋ん町・

  e    雪 /へ… 頻     v    s  ^芝

 6ヵ月

一 360 一

構簸1灘白熱撫・・・…

難讐魁磯=鱗≧

》悌i 、

》罐. 、嘱

ぜジ踊

]) p4:

llぞ

    髄

.   ・ 局 ㌔,〆

       g

(5)

瓢ny

坐鰻ri酬響

 戸 計二 滑N馳帰営 } v

・, 1・ 1 #, {.

       .     ,      「tt   ヅ         .lttt. t t   O 4 tt

〜ll#騨1需1

        啄      ●

詫一憲・、.ii・

,  琴    「    己    .   聖    ぢ       ら       ナ

曝}鉱山1

図8 VSD IV型 4才

熱爆轟

 轄欝藤美無

     三郷轍

驚     澱・

 乾細図     鍍聖 . ξ ,

  .叫鼻筆響倉燭〃・,

     .    詩」      創        赴  F  }

議瓢瀦噺儲こ

 キ       タ  ■詩    ・醍 ・自

         し

繋累鷲一。紬瀞・

         」

覇』・一・

     し

轟轟

 1_, , .__,、

》智識・』讃纏籔

    モ   ヒ  バ

㌦繊{ 瞬鑑

       −             卜           τ      φ 「   、        レ

     き_い一

図9 VSD V型 7才

腰 ls糞鰯蕊

彗罵奪、

逸噛

   ㌔      ttttt    tC

  」

唖.1画=

  ぬ 疏〜〜二 斡鵜編無蓋

   ナ       ニ    ザ   ヤニ  サき罵。〜酬酬  寧

Va螺糧i

   蔽照㌶畿:脇P

.緯彪耳語欄、,t.A.Pt、tt.X__凸、

  2ヵ月

覧酬晒、←唇

鴫贋亀ん・㌔ん・ん訊         じ

晦娠;幅{幽訊・

  垂  1  ≧  、  ㎝  …  晶  }      い       ,}

  ボ     く

悔,鮎、{「{一つ一

   ヒVo・卑r、へ、ハ胸バ鞠      ト    ぼ

ゾ管一 

         配i

 ド

,,      、  ,       ,,   ,  唱」

攣議

梅・

vs

鱗嚢験

》露

》摩

 旗i

1建婁  『『:

   ヌ  ドロミニ

};瀦1 聯嘱瀬;

  「,=:

図10

墾、

兎転 t)t tt     も     レ

漕,鴇 や,.ぴ

t/1)5t...,

1, ,ll slntlii

VSD VI型

 一 361 一

s

n・・tV、・虚あウ〉≧}ウ〔・吊…・吊・盆・占伽・・鼻〔》済..、.」一ム.軌、.,隔 aku.Y藷L誌4 1t

i

i

P

(6)

叢i編Ys

晦一鱒 謙1:こも麺鞍 ガ柳勘鴇

》鰍・

w縞・

Vzg

ゾ,

λ、

@亭

図11 VSD 班型 3才

図12 VSD VI型22才

型で,重症ではあるが幼小児期は案外元気のこと も多い.最後がW型である.これは心室中隔欠損 症に独特のもので,時に次の動脈管離職症でもみ

られるが,V・RあるいはVsRからV3, V4あた りまでRS型を示し,いわゆるKatz Watsche1 の現象と呼ばれるもので,肥大型でいうとよく両 室肥大に入れられているが,臨床上案外軽症ない し中等症のものが多い.V,RやV1の[1]が乳幼児 で陽性の場合,病的な右肥大の基準に入れられて いるが,このパターンでは殆どが陽性で,しかも カテーテル所見等で肺動脈圧もそれ程高くなく,

余り隣室の負担はなくて,どちらかといえば左室 の優勢のことが多く,したがってこの[1]の陽性は

右肥大の表現というより,Katzの現象に伴う陽 性と考えたい.しかしこの現象もまだ充分には説 明できない.この形も乳児から成人まであり,図:

10,11,12に2カ月,3才,22才の例を示した.

以上心室中隔欠損の色々のパターンを示し解説を一 加えた.

       心房中隔欠損症

 ここに述べる心房中隔欠損症は二次孔欠損のこ とをいい,一次孔欠損については後に述べる.

この心電図は心室中隔欠損と異り,非常に単純で

あり,電気軸は大半が右型で,QRS波はV1で

分裂があり,右側の胸部誘導でrSr , rsr , rR 一362一

(7)

qRのパターンを示すものが80%以上に見られ,

この四つの形も本質的には同じもので,いわゆる 右脚ブロック型であり,Cabreraのいう右室の拡 張期負荷の心電図である.心室中隔欠損症でも不 完全右脚ブロックの形をとるものがあることは既 に述べたとおりであるが,心室中隔欠損の場合は 左側胸部誘導でS波は割に浅いか,あっても特に いう程の変化もないが,この心房中隔欠損のとき は,Sの巾も広いものが多く,右側と併せて本当の 意味の右脚ブロックの型である.これ以外には非 常に軽いものが正常と同じであり,また時に右側 が正常の新生児のようにRs型を示し,肥大型で いえば純粋の右肥大を示すものが若干ある.肺 動脈高血圧が加わり,解剖的に右肥大が加わり,

あるいはまた肺動脈狭窄症が合併していることも 考えられるが,この聯合でもqR, rsR , rR の 如く分裂してRの高いパターンであり,比較的単 純でもあり,実例は省略する,なお静脈洞部欠損 の時,更にP波の電気軸の異常等が加わるが,余

り専門的になりここでは触れない.

       動脈管開存症

 心室中隔欠損についで色々の形を示すものがこ の動脈管開存である. しかし表2に示す如く,

右 側 左 側「 頻 皮

正 常 正 常 %032.0%

rsr ノ」一 号R訳、#仁 漏4.o%

・S†一 曾R,弗↓・↓へ %56.o%

y

RS,R・トム

商駄墾

%8・o劣

7

R.R、」]L

rS†凡

緬プ,o%

図13 P.D.A.の胸部誘導パターン

100例について分類を試みたが,1型と皿型で88%

を占め,他は極く僅かで,この点からも心室中隔 欠損程多彩ではない.1型は全く正常と同じもの で年令相当の動きを示す.1型も心室中隔欠損に も見られたものと同じで,右側胸部誘導でQRS 波に分裂のみられるもので,左側ではqR,ある いはqRs型で, Rは正常範囲のことも高いこと もある.皿型は動脈管開存症の中で最も多く見ら れるもので,肥大型でいえば純粋の左室肥大で図 13に示したとおりのパターンであり,右側でrS と記載したが,動脈管峰岡症の揚合は心室中隔欠 損症と異り,胎児期は管の大小が多少はあるにし ても正常と全く同じ血行動態を示すものが,出生 軒数平ないし数時間して初めて異常の血行動態と

謙:::

㌦麓

,蔽

雛遊i灘叢ご⊥1

       図14 PDA 皿型 2才8ヵ月

趨慧湿\l l長田謡

一 363一一

(8)

なるわけであり,心室中隔欠損のように新生児期 から右側胸部誘導がrS型のことはないように思 う.rS型といっても, Rの高さは年令相当より も低いというか,絶対値でなく,S波との関係に おいて低いといえるもので,心電図の示す年令の 方が実際の年令より高いものである.図14に2才 8カ月の症例を示した.左側でRが高く,またS 波が殆どなく,SO日が降下気味でしゃくれた形を とっているが,このSTの形は動脈管離離症の一 つの特徴である.

 次がN型で,これも心室中隔欠損の場合と同様 であり,肥大型でいえば両室肥大である.しかし ながら,血行動態からいっても右室には肺動脈高 血圧による圧の負担は加わっても,右室を流れる

概盤ll 懸騨・

轟:齢声

舞 鞍

懸ず

  「》ひ〜4i   i

.   vg   ゾ} ・

図15P.D.A。 IV型 7才

量の負担が全くないためか,左室の方が遙かに優 勢のものが多く,右側では明らかに罪悪肥大を示 すような高いRがあっても,左側ではSがなかっ たり,あっても比較的淺いものボ多い.皿型で述 べたSTの形がこの型でもみられる.図15に7才 の症例を示したが,右側で田波が上を向き,これ はいわゆる右室肥大の表現のようである.しかし この例もそうであるが,V・RからV4までRS型 であり,心室中隔欠損で述べたKatz Watschel の現象ととれないこともない.図13には入れなか ったが,このN型とした中にはこのような Katz の現象と思われるものも含まれている.果してこ れが心室中隔欠損に見られるものと同じかどうか は私には何ともいえない.

 最後にV型である.これは表でもわかる如く純 粋の心室肥大の形を示すもので,逆短絡の動脈管 開存症で,いわゆるアイゼンメンゲル化したもの である.図16に8才の症例を示した.稀に見られ るもので,手術は不可能であるが,心拡大もな く,心不全はもちろんなく,案外に元気な症例で あった.心雑音はもちろん短い収縮期雑音がある のみで,足にチアノーゼが見られた.以上が動脈 管開心症にみられた心電図の形である.

       ファロー氏四徴症

 この心電図も心房中隔欠損症と同様に非常に単 純で,正常の揚合の新生児期と殆どそっくりのパ

ターンが続くもので,肥大型では右室肥大といえ

tt/L, 1・li・1/,ll 1

      鱗葉潮齢1

唾一:一鰯へ構・轡ち

罷懸1㍉∫一

,siimwh−dida−L一一dethdi

図16P.DA. V型 8才

一 一一 364 一

(9)

フF 右 側 左 側

頻度

R.R、L躯 RS,RS卦←

%9α5%

1 rS酵⊥一

RS曾Rsff

脇9。5%

RS.

正 常 正 常

%3.吻

,Sピ,,RんL ・1,IRS←械 %46.9%

皿 皿 R,Rs L↓r

qS付 穣s坪翠 驍嶋イ払

㌔43・2%

6・2%

図17 TIFおよびP.S・の胸部誘導パターン

箏轡鰹灘謡講・

竣鐙

敏鋳…蝿夢 轟攣紫黒ぎ

:』

戟F嘱藁

f ,tti.・甥¥竺…

梅岬璽, 転融し

梅岬鞠1

賑1鞠」ル{申配

叢叢証1烹」

   図18Tet. of Fallot I型 8ヵ月

      ち  ち   りくザ ずヰ お ぢ  ギぜちくア    ツ

蹟…iil離蓼鷲嘘:

       陶』「… 食蓼 ビ嚇 き

   みロ      レ

dix 

A凶糧HH裾8詩

      ぶ

鵜轡撫門嚇三一

      ヰ  ま       む じ

畷蘇 轟一    隅一

  ま       へ  ぴ      

1』

・蟻

    り 

;lll驚ζこ薫   、

    図19Tet。 of Fallot十型 4趨

るものが大部分である,図17に示した如く,これ が1型で90.5%を占めている.図18に8カ月の症

例を示したが.この型では右側胸部誘導がRの み,あるいはRs型で,[1]は平坦なことが多い が,時に上向き,時に下向きであり,左側はrS 型でq波がない.しかし症例によってはV・Rあ

るいはV・Rで初めてこのような形を示し,V1 ではRS型あるいはrS型で, V1のみをみると ファローらしくないこともあり,やはり V・Rあ るいは少なくともV、RからV7まで全体として みることが必要なことが多い.また左側のq波が あるものももちろんある.ファロー擬勢徴症の残

りの10%は右側のQRSに分裂のある形で, Rが 高いことが多いが,時に心房中隔欠損症にみられ

るような余りRの高くないものもある.図19に4 才の症例を示した.この二つの形の頻度は各年令

でも殆ど同じで,新生児期から成苗まで殆ど変ら ない.ファロー氏四彫工の血行動態は出生後も胎 児の時と余り変らず,また左右の心室の圧の関係 も単純で,したがって心電図も単調であると共 に,新生児期からずっと殆ど変らないことも理解 できると思う.

       紅型肺動脈狭窄

 ファロー氏四徴症がチアノーゼの有無等に余り 関係なく非常に単調であるのに反して,肺動脈狡 窄のみで心室中隔欠損のない捻合は,その程度に 可成りの差があり,心電図も図17に示した通り四 つのパターンがある.1型は全く正常と変らない もので非常に軽症であり,次の皿型は右脚プロツ

[1:鰯購懇鍵

エコ コ

:・蝿論 :で極1

;葉諏ゴ

1繋聯繋 灘;嚢譲濠i蓬濡

    図20P.S.1型

潮ご1 麟編1

赦魂1婦1;

tv、ふ〆i

         奏

        粒卿 Xs.

…ふ榊発

5才11ヵ月

一 365 一

(10)

Ii..

1梅 三態

.Yr

熱1灘:

.粍編1、

縛戸・     ㌧一・. 酔 LL

図21P.S.皿型 2ヵ月

クの形で46.9%の約半数に見られる.心室中隔欠 損,ファロー氏四徴症にみられるものと殆ど同様 ではあるが,心室中隔欠損では左側でqが比較的 深く,ファロー氏四面症では左側のSが深いのが 多い.図20に5才11カ月の症例を示した.次が皿 型で,これは右室の負荷の強い形で図21に2カ月 の症例を示したが,ファロー馬出徴症とよく似て いるが,皿型でも述べた如く肺動脈狡窄症では左 側で比較的Sが浅く,またRが案外高いことがあ る.右側では心室の負荷が非常に強く現われてい るのに,左側では余りその影響がみられないとい うか,右室の影響が左室を打消してしまうことが なく,左室が立派にその存在を示しているといっ てよく,血行動態におけるファロー氏四徴症との 差異という点からも興味深いと思う.右側胸部誘 導のT波は右室内圧と関係があり,軽症で右室圧

がそれ程高くないものは健康児と同様の陰性波を 示し,右回圧が左室と同じくらいに高くなると,

CI]波は平坦あるいは軽度上向きとなり,更に右室 圧が左室圧を凌駕すると再び陰性となり,鋭角的 な[1]波となる.図22にこの型の症例を示した.こ のような[[,波がみられるのは純型肺動脈挾窄の一 つの特徴と思われ,圧との関係も非常に面白い.

最後のIV型は右側がRS型で]□が上向きであり,

心室中隔欠損のKatzの現象と似ているが,左側 をみると右室の負荷が強いと思われるものであ

る.

 以上が肺動脈挾窄症の心電図で,ファロー氏四 徴症との相異,圧との関係等,今後なおよく検討

すべき点があると思っている.

       心内護床欠損症

 最初に述べた如く,本症の心電図は非常に特徴 的であり,診断に役立つ.図23に14才の症例を示

したが,電気軸は左軸偏位で,PQは延長し,水

図23 E.C.D.14才

盛・

3膨

Vn

極1脚1騨

}銑1数継受

、ゼ㌧・ ??諱?E・論一!

鴇・藤1郷 ポ1㌃瞭ン,

      図22P.S.皿型 11才

        ・……ヨ

?   迂       ワ

「臨

@   丁

爵位で,しかもQRS波は右脚ブロック,あるい は右室負荷ないし両室負荷の形である.両室負荷 の形では,左側胸部誘導がqRs型でRも高くS

も深く,この形では心室中隔欠損と似てくる.奇 形の構造からいっても,血行動態とパターンとい

う点で興味深い.

       三尖弁閉鎖症

 これも心電図が特徴的である.チアノーゼ性心 疾患で左軸偏位を示していればまず本症を考えて

もよいが,更に右側胸部誘導ではrS型,左側で RあるいはRs型で,左側の近接効果が延長して 一366一

(11)

図24 T.A. 7才

いる.右室の影響が心電図にみられず,左室のみ が表現され,肥大型でいうと一応左室肥大という

ことになるが,これも三尖弁閉鎖の心電図の形と 考えるほうが余程わかり易い.図24に7才の症例

を示した.一つ一つ年令別に実例を示さないが,

この疾患もどの年令でも殆ど同じ形を示してい

る.

        大血管転位症

 大血管転位症といっても解剖的にも心室中隔欠

損のあるものとないもの,肺動脈狡窄のあるもの とないもの等色々異り,したがって心電図からこ のような一定した形とはいえない.電気軸からい

うと大体右軸偏位が多いが,時に一150。という ような総合もあり,また肥大型でいうと成書にも 右肥大,あるいは左肥大,両紙肥大を呈すること

もあると記載されている.しかし乍ら同じ右肥大 といっても電気軸が異ったり,また左側誘導で純 型肺動脈狭窄のようにRが結構みられたり,右房 あるいは両心房の拡大を示すようなP波がみられ たり,同じチアノーゼ性心疾患でもどことなくフ

ァロー氏四徴症とニュアンスが異っている.レ線 所見はこの診断に非常に有力であるが,心電図も 大いに参老になる.図25に生後1ヵ月の症例を示

した.

        その他の疾患

 以上で主な疾患、について,それぞれの心電図の 特徴を述べて来たが,この他にもまだ種々の疾患 があり,またそれぞれ心電図の特徴もある.しか し紙数の関係もあり,また理数もそれ程多くな く,私共の経験を中心に簡単に述べたい.

 まず新生児期に重要な純型肺動脈閉鎖がある.

これは右室形成不全を伴い,したがって心電図で

騨・四

 三

笈滋漏

疇ヤ   蟻

湿し!;弩

     薗

、1、  鷲

》  :野

、』.、 ,騨

   1強磨1・曝

蔽轟

・実、:、}憲1∴1

      ザ     ア   う キ        モしコ

  採ト   ゐ

鰻緊〆。.

1・ny  ・民確・ 

,・

蕪?D.

・噸騰

撚翻{礪灘

    転調鷲 ・ ・一

 毛評戦Σ   づやナ  ド

ゼぐ鷲灘

   轟轟

蟹一四 曽・=

鞍 華

1鍵.

麟購

1凝1難

      轟

灘懸

 唱和襟;疑購

灘翻

   c    .. e

図25 TranspOsition 1ヵ月

一 367 一

(12)

も強い右軸偏位を示し乍ら右側胸部誘導ではRが 高くなく,左側のRが結構あって,肥六型では一 寸表現できない形,すなわち左肥大でもなく,年 令に比し右が弱い形で,更に右房の拡大を思わせ るP波の増大があり,診断に,殊にファロー三四

.徴症との鑑別に役立つ.また総肺静脈還流異常症 では,強い右軸偏位と共に右側胸部誘導でqR型 を示すことが{多く,このような形としてはもう一 つ修正大!血管転位があるが,これも左側胸部誘導

でqがないとか,その他レ線所見等で充分鑑別が つく.このような形のでる理論はまだ今後の問題 であろう.

 次に左室形成不全症がある.これも肥大型でい えば強い右肥大ということになるが,新生児期に は判定はなかなか難しい.しかし左房更に右房の

拡大で,V1でPcardialeあるいはPsinistro−

cardialeが見られ,診断に役立つと考える.

 .この他大動脈絞窄症,二陣心,三腔心,エプス タイン氏病を始め,まだ種々の合併奇形等がある が,それ程多いものでもなく.エプスタインを除 いては他は心電図には余り特徴的なものもはない ようであるのでここでは省略する.

         考  按

 以上各種先天性心疾憲の心電図について,主と してそのQRS波の形の面から述べてみたが,心 電図という面から先天性心疾患をみた亘理,まず 老えられることは,これは当然の事であるが先天 性心疾患は心臓の発生の時から既に正常と異り,

したがってその心電図も新生児期にもう正常と異 ったものを示しているものが多いということであ

る.そして肺呼吸が始まると共に大きな血行動態 の変動があり,更には身体の発育に伴って心電図

もその.血行動態の適応による変化を示してゆくの が正常であるのに,出生して肺呼吸も始まってい るのに,何らそれに適応した変化を心電図面で示 さないものがあり,一般にこれらは中等症ないし 重症のものにみられる.次にみられることは,R

の高さ等はほぼ正常児の変化に従って変化してゆ くが,例えばQRS波の分裂のようなものは,本

:質的には幼児期から成人まで全く変らないように 思われることである.前に述べたパターンの分布

が年令によって余り差がなく,またどの年令でも 同じようなパターンがみられることからそのよう にいってよいと思う.このことからも先に述べた 如く,先天性心疾患は出発点から異っていて,し たがって心電図も正常のものが変っていくのでな くて,最:初から別個のものであるということを改 めて認識させられる.しかし一方において非常に 軽症というか,1血行動態が殆ど正常のものは出発 点が同じならもちろんのこと,多少異なってもそ れ以後はQRS波や[1]波の形も正常児の年令の動

きと同様の変化を示してくるものも多い.

 以上のような観点から,先天性心疾患の心電図 を主としてそのQRSの形の面からみると,それ ぞれ各項目において述べたような特異的なものが あり,肥大型で表現するより,このような形だか らこの疾患を考えるというように,形から診断に 近づくことがよいという確信を得たし,RやS波 の高さ深さとか,近接効果の時間とか,肥大型を 云nする数値は,診断というよりは重症度の判定 には多少役立つと思われ,更に経過をみること によって生理的な年令の動きとの差異をよく観察 することによっても,その血行動態の正常とのへ だたりを知ることができると思う.ただ単に診断 との関係だけでなく,今後は剖検所見,カテーテ ル法,その他による血行動態の検討とこの心電図 のパターンとの相関をよりょく追求する予定であ

る.

         結  語

先天性心疾患の心電図を,主としてそのQRS 波の形という面から眺め,各疾患に各々特徴的な 形があり,これらは肥大型を云々するより診断と しては遙かに価値があると思われ,更にこれらの 心電図はその重症度の判定に役立つものであると いうことを述べた.

 終りに臨み恩師磯田教授,榊原教授の御指導御鞭健を 感謝する.・

        文  献

1) Sokolow, M., A.L. Edgar: Amer Heart  Jour 40 232 (1950)

2) Cabrera, E., 」.P. Monroy: Amer Heart  Jour 43 669 (1952)

.3) Sodi−Pallares, D., R.M. Celder: New 一 368 一

(13)

  Bases of Electrocardiography The C.V.

  Mosby Company, St. Louis (1956)

4)村尾 豊・志場正光・小林太刀雄・草川三治・

  小林俊代・三枝正治.・岩.沢雄作;.日循誌17   122 (1953)

5) Taussig, H.B.: Congenital Malformation

 .of tbe . Heart . The.Commgn. Wealtl. Fund   by Harvard Unio. Press (1960)

6) Nadas, A.S: Pediatric Cardiology, W.B.・

  Saunders Co. (1963)

7)高尾篤良・豊田義男・.三森重和・草川三治:第   3回汎太平洋アジア心臓病学会報告(1964)

LL・@369 一

参照

関連したドキュメント

はある程度個人差はあっても、その対象l笑いの発生源にはそれ

 (4)以上の如き現状に鑑み,これらの関係 を明らかにする目的を以て,私は雌雄において

ともわからず,この世のものともあの世のものとも鼠り知れないwitchesの出

の知的財産権について、本書により、明示、黙示、禁反言、またはその他によるかを問わず、いかな るライセンスも付与されないものとします。Samsung は、当該製品に関する

されていない「裏マンガ」なるものがやり玉にあげられました。それ以来、同人誌などへ

弊社または関係会社は本製品および関連情報につき、明示または黙示を問わず、いかなる権利を許諾するものでもなく、またそれらの市場適応性

しかしながら、世の中には相当情報がはんらんしておりまして、中には怪しいような情 報もあります。先ほど芳住先生からお話があったのは

生物多様性の損失も著しい。世界の脊椎動物の個体数は、 1970 年から 2014 年まで の間に 60% 減少した。世界の天然林は、 2010 年から 2015 年までに年平均