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「-らしい」の連体用法に関する考察

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(1)

岡山大学大学院社会文化科学研究科紀要察32(20ll.ll)

「‑らしい」の連体用法に関する考察 Ont heAd no m ina lUs a geo f" ‑r a s hi i "

岩 崎 真梨子

Ma r i koI WASAKI

1.はじめに

「‑らしい」は、「可愛 らしい」「子供 らしい」のような形容詞性接辞 としての用法 と、「昨夜、雨が 降ったらしい」のような推量を表すモダリティとしての用法 を有する。モダリティ用法の 「‑らしい」

が、形容詞性接辞の 「‑らしい」か ら派生 した ものであろうことは、既 に先行研究で も指摘 されてい る。

本稿では、「‑らしい」のモダリテ ィ用法の成立 において、次のような連体用法の例が見 られるこ とに着 目する。

(1)a テ レビでは、強張った表情の被害者の妻卓上と 女が映 し出されていた。洗いざらしたTシ ャツにジー ンズとい う質素な服装で宴 をひっつめ、ほとんど化粧 もしていないO

(桐野夏生 rOUTJ1997(平成9)) b (真野です。菅野 らしさ男 を発見。古着屋 の前 にい ます。黒のニ ッ ト帽、サ ングラス、服

は灰色)真野の声が聞こえた。 (東野圭吾 rさまよう刃

J

2004(平成16)) これ らの例では、「テ レビに映 し出された女は、被害者の妻 に見える」「古着屋の前にいる男 は菅野 に見える」 ことが表 されているのではないか と思われる。 また、何れの例で も 「ある話者か らYがX に見える」 ことが表 されてお り、XとYが 同定の関係 にあると考 えられる。 この類 は、 (1)bの よ うに、「‑らしき」の形 を取 るものが見 られるの も特徴の 1つである●I。

こういった 「‑らしき」の意味用法について、田野村 (1991)や三宅 (2006)では現代語の例が指 摘 されている。また、湯沢 (1954)において近世の例が挙げ られている点には特に注意 される。新 し いもの としては、山本 (2010)が近世以降の 「‑らしい」 について詳 しく述べ られている。

本稿の 目的は、(1)の ような推畳的判断を表す 「‑らしい」の意味 ・用法について検討 し、形容 詞接辞の用法 とモダリティ用法の関連が どの ように示 されるかを明 らかにすることにある。

2.先行研究

(1)のような例は、田野村 (1991ト 三宅 (2006)において、助動詞あるいはモダリティとしての

●1 以下、本稿で連体形 「‑らしい」とする場合は、「‑らしき」の形も含めることとする。

(2)

「‑らしい」の連体用法に関する考察 岩崎弗梨子

意味 ・用法 を有する とされる。 臼野村 (1991)では、以下 の通 り述べ られている。

第三 ●2に、助動詞の 「らしい」が連体修飾 に用い られる ときには、次の ように 「らしき」 とい う形 も使 われる。

(28)いまで も山主上旦 姿 はみえないが、 この上 り勾配 は明 らかにウラル峠 (?)だ。

(アジア ・ヨー ロッパ) (29)海岸 は泥の広場。巨大 な原木があちこちに積 み上 げてある。その奥 には 自動車修理工場 らしき建物があ り、 トラク ター類が何台 も無造作 に置かれていた。 (メラネシア) 他方、接尾語の 「らしい」 を 「らしき」 とい う形 に した例 は見 られなかった。

同様 のことは、三宅 (2006)で も述べ られているo三宅氏 は、「‑らしい」 を 「ラシイに前接 す る 名詞が持つ典型的な属性」 を表す 「典型的属性表示 」 と 「命題が真 であるための証拠が存在す る と認 識す る」 ことを表す 「実証的判 断」 に分類 し、次の通 り記述 されている。

「らし旦」の形 をとって連体修飾す る場合 は、 この 「典型的属性表示」 にはな り得ず、専 ら 「実 証的判断」 になる。

(36) 新たに新聞社 に、犯人旦̲』旦 人物か ら手紙が届 いた.

(37) 埼玉県秩父市で五十万年前の建物跡旦̲ヒ旦 穴が発見 された。

「典型的属性表示」 と 「実証的判断」 は、名詞 に直接、後接 した場合、 どち らの用法かが確 定 出 来ず、あい まいになることも多 い。次例 の ような ものを参照 されたい。

(38) 帰 り際、新人 らしい看護士が一所懸命掃除 を していま した。

'2 EEl野村 (1991)では、接辞の 「‑らしい」と助動詞の 「‑らしい」の区別を、以上に挙げた第三を含め、四 点に分けて論じられているC以下、第‑ .第二 .第四に関する記述を引用する。

第一に、動詞や形容詞などにも自由に付き得る助動詞の 「らしい」とは異なり、接尾語の 「らしい」はほとん ど専ら名詞に付 く。

第二に、接尾語の 「らしい」を含む 「あの男は実に男らしい」の音調は,通常

、「

〜オ 「トコラシ「イ」のよう になる。これに対 し、助動詞の 「らしい」を含む 「向こうからやって来るのはどうも男らしい」では

、「

〜オ

「トコ「ラ 「シ「イ」という発音が基本的だと思われる。

【略]

第四に、接尾語の 「らしい」では

、「

Ⅹらしい

」という言い方が可能である。

(30)何はともあれ、最初の洞窟らしい洞窟だ。 (メラネシア) (31)山系、次第に近づいて くるOアップ ・ダウン烈 しい丘陵地帯 に入る。殆 ど道 らしい道はない。

(西城 (上)) これに対 し、助動詞の 「らしい」がこのような形で用いられることはない。これは

、 「

Ⅹであると推量される

Ⅹ」

という表現内容の不合理さによるものとして理解することができる。

140

(3)

岡山大学大学院社会文化科学研 究科紀要第32号 (2011.ll)

(39) 最寄 りの地下鉄駅に降 りると芝居見物旦̲吐 人の彼が国立文楽劇場の方に続いている。

(40) 若い学生 と一緒 に、カウンタ‑で コーヒーを飲 む教授主上と老人を見たO これは、両者が全 く異質なものではない とい うことを示 している。

以上の通 り、両氏によって連体形の 「‑らしい」、 また特 に 「‑らしき」 とい う形 において推量の 意味 を表す例が見 られることが指摘 されている。

では、モダリティを表す連体用法の例 はいつ頃か ら見 られるのか。湯沢 (1954)において、推量 を 表す 「‑らしい」が近世 より見 られるとされるが、そのなかに連体形の例 も挙げ られている (囲み線 は岩崎による)●3。

「らしい」は体言に附いて、推量す る意味 を表わすに用い られる。

○ ソリヤほんとうにかへ、 どふ もうそ旦上 巳よ (集成二、五二二)

○是 もまづ破談ばな し主上と ノ (^笑人、三下、八オ)

○今のはどふ も米人 さんらしい ヨ (梅暦、六、一七 ウ)

○向ふのなが Lに、かの年増 らしいやつが、なにかあ らつてゐるか ら.‑.I(膝栗毛、五下)

○そんな物 らしかったが‑ ・(集成一、二七三) これがまた副詞に附 くことがある。

○ム 、、そふ 〔然〕 らしいよ (徳五、八二)

以上の語例は、「‑ である」 と断定 しないで、「‑ であるようだ」 と推量する意味に用い られているので、推量の助動詞 と見るべ きもの と思 う。

「かの年増互とヒや

」は、「なにかあ らっている」ある人物 に対 し、その特徴 などか ら 「年増 に見 える」 ことが示 されていると考 えられる。「誕 らしい所」は、ある話 に対 して

「(本当の ように も聞

こえるし)嘘のようにも聞こえる」 ことが示 されていると考えられる。いずれ も、「そ う見 える

「そ

う聞こえる」 といったことが示 されている点で、推量的判断を表 しているのではないか と思 われる。

こういった例 は挙げ られてはいるが、「どふ もうそ旦上土 よ」の ような終止用法でモダリティを表す 例 との関連 を適時的に検討 している ものは見受け られない。本稿ではこの関連について検討 し、「か の年増 らしいや

」のような連体用法 において先ず推量的判断が表 されるようにな り、その後、終止 用法でモダリティを表す ようになるとするのが 目的である。

●3 集成二、五二二‑イ 起承転合」(孝和二 十返舎一九) 集成一、二七三‑‑ 「不酔照明房情記」(車代著 者不詳) 徳五、八二 南開雑誌」(安永二 夢中山人)による。

(湯沢 (1954) pp.734‑735参照)

(4)

「‑らしい」の連体用汝に関する考察 岩崎共 梨子

山本 (2010)は、近世以降の 「‑らしい」 を調査 し、形態 ・統語 ・意味的観点か らモダリティ形式 の成立について検討 されている。そのなかで、近世において

( 「

〜 らし

さ 」「

〜 らしい者」で人 ・物 を 表すやや定型化 した表現)が見 られるとされてお り、次の例 を挙げ られている。

(8)a.又年比三十計なる [呉服屋の手代]互 と互が、 (噺本 一二休暇 :貞享5 (1688)年刊) b [知行 か ら此比取 られた] らしき中間が封 じ文 出 して、此上昏一つお 目か りましよと云

へば (浮世草子 一好色盛衰記 ・五 ノ四 :貞享5(1688)辛 .湯沢1936)

C

.「ハテ マア 誰ぞ [呑み込んだ] らしい者があるなら マア それに任せて どうぞそこ らへ」 ト 隠れい といふ仕方 ※ 「呑み こむ」事情が分かっている (人)

(歌舞伎 ‑菊水 由来染 :寛保3 (1743)年初演) 山本 (2010)はこれ らを 「‑らしい」の上接部分が形態的に変化 (句へ拡張) した もの と位置付け られてお り、モダリティ用法には含 め られていない。 しか し、「定型化 した表現」 において句‑の拡 張が起 こり、その後、終止用法のモダリティの例が見 られるという点に疑問が残 る。近世 において、

まづ させるの湯に成るほどたばこけふ らせ、賄 らしさ男 とらへて、芝居のぬれ狂言のうまき所 を哨 しかけ、 (八文字 自笑 「野白内証

」 3巻 1710(宝永7))

〇 十八九にて美 しい妾の よふな者立 出、ハ ア、梨子が落たハ と拾 ひあげた処へ、旦那 らしき人 も立出 しが、 (随本舎梅山 「僻が茶」1797(寛政9)) のような上接部が句 になっていない場合で も

、「

Ⅹに見える」 (賄 に見える男 ・旦那 に見える人)意味 は表 されると思われる。

また、 日本語記述文法学会 (2008)では、モダリティ表現が名詞修飾節に現れるとしてお り、「‑

らしい」について以下の ように述べ られている。

観察や推定を表す 「らしい」は、「ようだ

「みたいだ」に比べて現れやすい ようである。「らしい」

は、「らし

」 とい う形 をとることもある。

・ 指名手配中の犯人 tらしい/ らしきl男 を町で見かけた。

・ その学生は、友人か ら借 りた らしいノー トを試験 に持 ち込んだo (p.62)

「指名手配中の犯人 らしい/ らしき男」 といった例 を推量 とする指摘 もある。連体形で既 にモダリ ティ化 していると見るべ きではないか と思われる。

以上の先行研究 より、(1)の ような連体形の 「‑らしい」が見 られるようになったのは、近世以 降であると考えられる。 また、現代語では、特 に 「‑らしき」の形で推量の意 を表す とされている。

現代語ならびに近世において、推量的判断を表す連体用法は既 に指摘 されているが、適時的な検討に ついては考案の余地があるのではないか と思われる。本稿では、近世の 「‑らしい」の意味 ・用法、

特に連体用法 を中心に、「‑らしい」の形容詞用法 とモダリティ用法の関連について検討する。

142

(5)

岡山大学大学院社会文化科学研究科紀要第32(2011ll)

3.調査資料 ・用例数

以下の通 りである (先行研究か ら引用 した ものは省 く。 r新潮文庫の100冊

j

l明治の文豪

J r

大正の 文豪J については、任意で作 品 を選 出)O

闇 抄物資料 r日葡辞割 r史記抄Jr中華若木詩抄jr湯 山聯句抄j r玉塵抄J キ リシタン資料 rエ ソポのハプラスJ辞典 l日本国語大辞典 第二版

J

l時代別国語大辞典 室町時代編J

[ 重

窒]r噺本大系jr浮世草子集Jr仮名草子集成jr黄表紙 川柳 狂歌jr酒諮本 滑稽 本 人情本j r井原西鶴③jr近松 門左衛 門集①Jr近松 門左衛 門集③J r上方歌舞伎剰 l江戸歌舞伎剰 r廓 の大帳]上 r酒落本大成J1‑3r春色梅児香美jr春色辰 巳園Jr浮世風呂Jr浮世床 四十八癖J r東海道中膝栗毛

J r

花暦^笑人 滑稽和合人 妙竹林話七偏人

jr

近松全集jl巻

[ 買玉]

r新潮文庫の100冊J r明治の文豪J r大正の文豪J r太陽 コーパスj [玉

置二

川新潮文庫の100冊

J r

明治の文豪」 『大正の文豪

J r

太陽 コーパス」

[電歪 ]r新潮文庫の100冊Jr大正の文豪Jr昭和文学全集』13巻 『海野十三全集jl巻 r昭和文学全剰 赤川次郎 rヴァージ ン ・ロー ドj (1983)

[ 空

重]吉本ばなな rキ ッチ ンj (1991)r満月j(1991).桐野夏生 rOUTJ (1997).舞城王太郎 阿 修 羅 ガールj (2003),川上弘美 rセ ンセイの鞄l (2004)∴東野圭吾 rさまよう刃」 (2004).伊坂 幸太郎 rアヒル と鴨の コインロッカーj(2006),恩 田陸 rネバ ーラン ド

J

(2000)

r

夜 の ピクニ ッ ク](2006),有川浩 r図書館戦争」(2006)r図書館革命](2007).角 田光代 r八 日目の蝉J(2008), 桜庭‑樹 rGOSICK ⅦJ (2011)

「産経新聞」(1997).「毎 日新聞」(1997)

ただ し、中世 は、抄物 資料 r中華若木詩抄

J r

湯 山聯旬抄J、キ リシタン資料 rエ ソポのハ プラスJ には用例が見 られなか った。

近世は、上方 ・江戸で意味用法 に大 きな差 はない と思われるため、特 に区別は しない。 資料 のジャ ンルや作者 によって異 なるようである。

明治期 ・大正期 ・昭和期 は、各年代 の用例が得 られる よう調査 している。用例の大部分 を占める r新 潮文庫の100冊』 では、昭和初期か ら中期 (戦前 .戦時中)の作品が少な く、用例が得 られないため

r昭 和文学全集j などで補 う.

上述によって採取 した用例数は以下の通 り。

中世 近世 明治 大正 昭和 平成

(6)

「‑らしい」の連体用法に関する考察 岩崎共梨子

4.「‑ らしい」 の活用形

まず、「‑らしい」の活用形 を適時的に確 認す る'4.

【中世】

「‑らしい」が見 られるようになるのは中世以降である。 これについては、村上 (1981)に詳 しい。

初 出例 は (2)の r沙石集J の例であ り、連用形 を取 る.

[連用形]

( 2)

或ル乳母、姫君 ヲ蕃 ヒテ、余 リニホメン トテ、童 ワガ蕃姫ハ、御美 目ノウツクシク、御 日ハ 細

/

ヾ トシテ愛三と之 オワシマス 〔ゾ〕ヤ トイフヲ‑ ・ (巻‑ 86・6)[村上1981]

「愛 らしい」 は、上接名詞それ 自体の意味 と 「‑らしい」が後接 した形容詞の意味が異 な り

、「

Ⅹら

しい」で一語の形容詞 としての意味 を表 している と考 え られる。 この場合 、敢 えて 「‑らしい」の意 味 を記述す るな らば、「そ うい う感 じがす る/強い」 ことを表 している と思われる。

(3)a 又窓帝ハ、正 シク高祖 ノ嫡子テ、父 ノ位 ヲ縛 テ、天子 ノ位 二即 タ レ トモ、高后 ノアマ リツ へえ と旦 テ、妬忌 ノアマ リニ威夫人 ヲ、手足 ヲ、 ゝロシ、 目ヲ放 り、鼻 ヲ薫へテ、厨こ置 カ レタラ見テ、 アマ リノ、アサマ シサ二、其 カラ天下 ノ事 ヲモ、マメ二モ不思 シテ、何事 ヲモ、呂后 ニウチマカセテ、我ハ不知 シテ、イラレタソ。 (史記 三 85・2 ウ) b 処父力至テ忠 ア リテ、国滅君死 テ、臣節 ヲ不忘 ホ ト二、天 力石棺 ヲ賜 テ、氏族 ヲ光華 ニス

ル ト云ハ、事 力賓 ラシウモナイソ。 (史 四 25 4)[村上1981] (3)a 「つべ らしい」は 「むごた らしい、残酷である」意 を表す。「つべ たま し」や 「つべつべ し」

に同 じと考 え られる。

[連体形]

(4)a 上二先 ツツヨウ、 ウラメシサ ウニ、云 テ置テ、次二呂后 ノ性 カコワウテ、女 ノ様 ニモナイ ソ。 カウテ毒 ラシイ人ナル コ トヲ、云 タカ、文勢 ノ面 白庭 ソ。

(史 七 173・1)[村上1981] b カ 、ル時分 二人三と土 人カアラハ、秦二天下 ヲ取 ラレマイモノヲソ

(史 四 355・14)[村上1981] C 言行二尤悔 カスクナケ レハ、 自然 ト、禄 力其 中二アルテ コソア レ、始 カラ禄 ヲ干 メハ、 ナ

ニカ、ハ カラシイ事ハアラウソ (史 一一 124・6)[村上1981] d 連続 トハ筆勢 ノツヨイ ヲ云 タソ、 ツヨイ ト云 テ、鬼 々神 ノヤ ウニテアイ ソモナイソ、美人

ノウツクシウ、アイソ三と ±ヤ ウナ事 力中二マ シツテアルソ

(玉 三五 489・12)[村上1981]

●4 接辞 「さ

「み」が後接 して名詞化 したものや、語幹のみで用いられて 「‑らしげ」のように形容動詞化 し たものなどについては、今匝=ま考察対象から省 く。

144

(7)

岡 山大学 大学 院社 会文化科 学研 究科 紀 要筋32 (2011ll)

(4)

C

「はか らしい」 は、「期待 されるだけの効果があるさま」 を表す。「はか」は 「はか どる」 な どの 「はか」 と同様 で、「事 の進捗」 を表す と考 え られる。いずれ も

Ⅹ ら しい」 で一つの意味 を表 している。

[終止形]

(5) 鳥 ノ身アリテ人ノ言 ア リ・・‑‑全体ハ鳥テ、モ ノヲ云ハ、人ノ様 ナハ、アマ リハケ三上 4 ソ (史 四 248・16)[村上1981]

「ぼけ [化 け] らしい」は 「化 け物 じみてい る、奇妙である」意 を表す。

以上の通 り、中世 の 「‑らしい」 は、上接部が体言かそれに準ずる ものであるが、意味 としては接 辞 と切 り離せ るものではな く、一語の形容詞 として用い られている もの と考 え られる。

【近世前期】

続いて近世の例 を確認す る。

[連用形]

(6)a 京 にてある武士 と見 えた るが、人旦̲L i̲馬 にの りとをるに、坪 の内 よ り鞠 をけいだ した がつき

れハ、中間肝 をつぶ し、餓鬼 め、覚 えたるそ といふ ま ゝ、鎧 をなお しっかん としけ り。

(安楽庵策伝 「醒陸笑」 5巻 1623(元和9)) b ‑かど御褒美に預 らんと。乗物 を白洲 にすへ させ広言 らしく言上す。

(近松 門左衛 門 「佐 々木先陣」1686(貞享3))

C 座敷 に灯 かかやかせ、娘 を付 け置 き、「蕗路 の戸 の鳴 る時 しらせ」 と申 し置 きしに、 この 娘 Lをらしくか しこま り、灯心 を一筋 に して、

(井原西鶴 「日本永代蔵」 2巻 1688(貞享5)) (6)abか らも明 らかな通 り、「人」や 「広言」 な ど、上接部が意味 として切 り出せ る もの も含 ま れるようになる。 これは、近世 における 「‑らしい」が、中世 に比べて比較 的 自由に上接部 を取 るよ うになった こ とに開通す る もの と思 われ る。上鞍部 の意味が切 り出せ る場合 は

、「

Ⅹの感 じが強い」

の ような意味 を表 している

。( 6)

Cについては中世 の例 と同 じく

Ⅹらしい」で一つの意味 を表 して いると考 え られる。

[連体形]

(7)a仁物互 と旦 男 、劫 の前後 にたいを人 になひ、たいはたいハ とう りけるを、ある家 のぬ しよ びいれて、 (安楽庵策伝 「醒睡笑」 1巻 1623(元和9)) b さらハ其時のゑによ り、いふて しほ らしき旬 をを Lへ 申さん

(安楽庵策伝 「醒睡笑」 6巻 1623(元和9)) 連用形 に同様、 (7)aの ような上鞍部が意味 として切 り出せ る もの と、(7)bの ような切 り出せ ない もの とに分 かれる。ただ し、 (7)aについて も、上接名詞の表す意味 と、「‑らしい」の上接名

(8)

「‑らしい」の連体用法に的す る考察 岩崎共梨子

詞 としての意味は異なる。「じんぶつ」は、「‑らしい」がつ くとただの 「人 (人間

)

」ではな く、「

晴 らしい、立派な人」 とい う意味 を表す。

【近世中期以降】

[連体形]

1 6 0 0

年代の終わ り頃になると、上鞍部が意味 として切 り出せ、且つ これ までの

Xの感 じが強い」

というの とは異なる例が見 られるようになる。

(8) とつ とぬけたる男聞て、 目薬が書写 に沢山にござるかといふ。一山の内にハ どこにもござる といふ。 をれ もとりに行 ませ うといひしが、あ くる晩にきた りて、けふ よしミねへ行て尋た が、 目薬 らしい物ハなかったといふ。 どうしやったといへば、木のねにあ らうと思 ひ、は り か‑ して ミましたといふた。 (作者未詳 「当世手打笑

」1 6 8 1

(延宝

9) )

ここでは、上接名詞である 「目薬」その ものを含め、それ と取れるもの を指 している。 ここでの 「‑

らしい」は

、「

Ⅹと捉えられるもの

( Y)

」 を表 しているのではないか と考えられる。

(8)の ような例が見 られるようになった後、推量 を表す連体形の例が見 られるようになる。以下 の例 を見 られたい。

ピIiTJ

(9) 又年比三十計なる呉服屋の手代卓上主が、 さらしの衣唐木綿の香 の図の紋つぶ じたるが、か すかに見えす きておか し。 (編者未詳 「二休

職 」1 6 8 8

(貞享

5) )

この例では、作品に新 しく登場 した人物 について述べてお り、「呉服屋の手代 らしき」 によって、

その人物が 「呉服屋の手代 に見 える人物」であることを表 していると思われる。 この とき

、「

Ⅹらし いY」は

、「

YはXに見える」 というようにXとYを同定関係で示す ことが可能である。

Xに見 える」ことを表す例では、(話者の)主観が表 されていると思われる。 この (話者の)主観 を表す点で、連体用法の 「‑らしい」はモダ リティ化 していると考えられる。

[終止形]

終止形について も、これまでに見て きた活用形 と同様、一語の形容詞 と捉 えられるもの と、上接部 の意味が切 り出せるものが見 られる。

,‑:LL

(10)

aL

あ る

l

モシ、家肉ハたべ ません とサ。鴨や白魚 をたべ ます とさ [≡互 召 ヲヤ、こわ旦 上土 (振鷲亭主人 「振常亭噺 El記

」1 6 2 6

(寛永 3)) b 雄次郎 何 じゃいな、いや らしい。年端 も行かいで、あた しつこい。

(桜 田治助 「御摂勧進帳 第‑番 目三建 目」1773(安永

2) )

え え

(ll) え 、.栄耀旦̲吐 。か く牢人の憂 き身 といひ、殊更敵 を持ったる身が.せめて一年に一度 の便 りをもし給はず. (近松 門左衝 「出世景清

」1 6 8 5

(貞享

2) )

(10)は上接部が意味 として切 り出 しに くい、一語の形容詞 と考えられるものである。 (ll)は、上 接部の意味は切 り出せるが 「‑らしい」がつ くことによって

Xの感 じが強い」 ことが表 される。な お、文語の 「らし」の形 も見 られるが、意味 ・用法は (10)に同様 と思われる ([ ]内は岩崎 によ

L46

(9)

岡山大学大学院社会文化科学研究科紀要祭32(2011.ll)

る補足)。

(12)a心に くゝもかはひ旦上 。 うさがなかにも。思 ひ出は。せめてのかひよったへ きく。

(近松 門左衛門 「主馬判官盛久」1686(貞享3)) b 文七 (政右)ても [さても]古 ひ奴の。

に く

久 (′ト柴) ヲ 、、憎体旦上 。 (初代奈河亀助 「伊賀越乗掛合羽 七 ツ目」1776(安永5)) 以上の通 り,1600年代 か ら1700年代 にかけては、終止形 「‑らしい」 は形容詞 として用い られてい る。

これに対 し、1800年代では、次の ような終止形のモダリティ用法の例が見 られるようになる。

(13)a てい 「サアーぷ くあが らんせ。いったいお まいは、 どこを尋ね さんすの じゃいな。参宮 じ ゃあろが、おひとりか。但 しは、おつれで もおますかいな 弥次 「さや うさ。道連 ともに 三人の所、わつちはそのつれには ぐれて、 こんなこまったこたアございやせん てい 「イ ヤそのおふた りのおつれは、おひとりはお江戸 らしいが、今おひとりは、京のお人で、 日 のうへに,此 くらひな、疾癌のあるおかた じゃお ませんかいな

(十返舎一九 r東海道申膝栗毛1 5筋追加 1806(文化3)) b 目のふちへ紅 を付 るの も一体は役者か ら出た事 らしいネ

(式亭三馬 r浮世風 呂j 3編 1811(文化8))

いま う J)いつ し

C よね 「ヲヤ丹 さんまだ宅へおかへ りでないか。今 に梅次さんと 一所 にかへ るか ら、ちつ

にっこ りわ/.1まk. さやた か はかた ぎt>くうしろ と待 てお出 ヨ ト、いひなが ら完ホ笑 ひ、酒乱の客の ともして多寡橋 の、方‑過行後かげ、

I̲' 上ね

丹はびっ くりお長はかけ出 し 長 「ヲヤ米八 さ○ん じゃアあ りませ んか 丹 「ナニ/\米

tt̲l=

八ではねへ ト、口にはいへ ど心 にギツクリ。今米人が其近庭 か ら、かへ り来 らば大変 と、

おも rJに かへ

思へば何かそは/\ して 「サア もふ よかア脹 らふの 長 「ア 、か‑ るがネ。今のはどふ も米八 さ○ん旦上巳 ヨ。か くきず とい ゝじゃアあ りませんか ト

(為永春水 r春色梅児着実」初編3 1833(天保4)) これ らの例では、話者がある根拠に基づいて「[AはⅩである]らしい」のように推量 している。[A‑Ⅹ]

は話者にとって真偽不明であ り、「‑らしい」によってそうである可能性があることが示 されている。

ただ し、 (13)aは 「いかに もお江戸 らしい人だが」 と取 ることも可能であ り、やや判断の難 しい例 である。これに対 し、(13)bは 「

(

目のふち‑紅 を付 るのは)役者か ら出た事である」、(13)Cは

「 (

さっ き見えたのは)米八 さんである」 と話者が判断 しているため、推量の例 と考えてよい と思われる。特 に、(13)Cは推量用法の 「一らしい」が共起 し易い副詞 「どうも」 を伴 ってお り、推量用法の例 と みてよい と考えられる。判断の根拠 は話者が見聞 きしたことや、人の梯子 ・言動であ り、 (その場の) 知覚に基づ くものである。1800年代 に至 って、「‑らしい」は推量 (助動詞)用法 を獲得 した と考 え

られる。

ただ し、近世において、終止用法で推量 を表す例は少な く、今充調査 した資料では7例 (全858例中)

(10)

「一らしい」の連体用法に関す る考察 岩崎央梨子

である。一方、連体用法で推量的判断を表す例は21例見 られる。

なお、近世では、巳然形の例 も見 られる。

[巳然形]

(14)a只何 とな くあなた さまの心 ざLにほだされて、一 日あはねば千年へ だつる ものお もひ、せ めてまざる ゝかた もや と、硯 にむかへばゆか しとのみ、筆 にか ゝる辛気 さの、我が身なが らも野父 らしや。いや らしけれ ど動 もな りませぬ」 と、なみだ ぐまるれば、此の うへは異 見する人 もな し。 (夜食時分 「好色敗毒」 2巻 1702(元禄15)) b ある じ夫婦がはた らきがぬ るいなどと、むたいな事 を仰せ られて、おいぢ りなさる

旦那

が ござ りま して、あげやの物が年 をよらす事で ござ ります。か う申せ ばつや らしけれ ど、

御器量 ようてお気がすいで、客やの為 になる事 な ら、おな ぐきみがかけうがおい とひなさ れぬ、 (八文字 自笑 「野白内証鑑」 1巻 1710 (宝永7)) 己然形は、現代語では用例は見 られない。

5.推量 を表す連体形 「‑ らしい

以上の通 り、「‑らしい」の活用形 を適時的に確認すると、近世 において、連体用法で推量的判断 を表す例が見 られるようになる。 この連体用法では

、「

Ⅹらしい

Y

」で

、「

Yは

X

に見 える」 というよ うに、XとYを同定関係 で示す ことが可能である。その後、終止用法 において 「[AはXである] ら しい」のようなモダリティの例が見 られるようになる。 ここでは、近世の例 を中心に、推量的判断を 表す連体形の例が どのようにして見 られるか検討する。

5‑1.近世における 「‑ らしい」連体用法

近世 における連体形 「‑らしい」の意味 ・用法は、主に 「そ うい う感 じがする

」「 X

の感 じが強い

ことを表す形容詞性接辞の用法 と

、「

Xに見える/聞こえる/捉 えられる」 ことを表すモダリティ用 法 とに分かれる。1600年代の前半では形容詞性接辞の例のみが見 られる。

【形容詞性接辞】

「‑らしい」は主に名詞 を承接する。 この とき、意味上の観点か ら、上接名詞 を切 り出せ ない場合は、

形容詞性接辞の 「‑らしい」 と解 される。

(15)a さらハ共時のゑによ り、いふて Lは主上旦句 ををLへ 申さん

(安楽庵策伝 「醒陸笑」 6巻 1623(元和9)) b 又 ざは/\ と悪 口を云 て.嫌 らしい男 じゃ と恩へ共.廿 も逢ふて.先 には誠 の心で誓紙

を取. (作者未詳 「けいせい朝間森」上 1698(元禄11))

「しお」や 「いや」は、上接名詞それ 自体の意味 と 「‑らしい」が後接 した形容詞の意味が異な り

、 「 Ⅹ

らしい」で一語の形容詞 としての意味 を表す もの と考えられる。 また、形容詞語幹や形容動詞語幹 を

148

(11)

岡山大学大学 院社会文化科学研究科紀要帝32(2011ll)

轟ける場合 も、上鞍部の意味 を切 り出す ことはで きず、「‑らしい」は形容詞性接辞であると考 えら れる。

(16)a千年 も万年 も、藤様 との御伸 さめぬや うに遊ばせ.そのい とし卓上と お気 だてでは、 さめ まい/\。 (近松門左衛門 「淀鯉出世滝徳

」1 7 0 8

(宝永

5) )

b 匡 ヨ ヲ 、かはひ旦̲吐 盃 じゃな 匡 毒]アイせんど枯枝 さんにもろふたわいな

(斗樽堂主人 「新月花余情

」1 7 5 7

(宝暦

7) )

(17)a殊勝主上と坊様が、鉦 をはって、お念仏. (近松 門左衛 門 「薩摩歌

」1 7 0 4

(宝永

1) )

b 心中の間夫狂 ひの といふや うな、気ばね もおれず、弐十文で、弐十文が情 をか くれば、 ( ぜつ といふや うな、やぼ らしいさともな し、 (軽口耳稜 「口拍子

」1 7 7 3

(安永

2) )

形容詞語幹 ・形容動詞語幹 を承 ける場合 は、「‑らしい」がつ くことによって、本来の 「い としい」

「かわいい」などに対 し

、「

〜 といった感 じである」 とい う意味になると思われる。上接部はそれ 自体 で意味 を成す ものではないと思われる。

ただ し、近世の 「‑らしい」は名詞、形容詞語幹や形容動詞語幹のように幅広 く上接部 を承けるこ とが可能であ り、形容動詞語幹や名詞 を暴ける 「‑らしい」のなかには、上接部の意味は切 り出せる が

、「

Ⅹらしい」で一つの形容詞 として用いられているもの もある。以下、名詞接続の例 を挙 げる。

( 1 8 )

a宿に帰 りてこの事 を語れば、内儀 は後悔主上旦顔つ き、おやぢはこれを笑 うて、

(井原西鶴 「世間胸算用

」1

1 6 9 2

(元禄

5) )

b 護国寺の音羽町、権現の門前町はすこしわけ旦̲』旦 ゆ きかた、料理 もさのみふっ 、かなら

..tぴ

ず、絹の物など肌付 に着て、既 にあか ゞりもな くて、男の腰 をす りむ く事 もな く、 しばら くは酒 ものまる 、所也。

(八文字 自笑 「野白内証鑑

」5

1 7 1

0 (宝永

7) )

これ らの例における 「後悔」や 「わけ」は、「‑らしい」 を暴 ける前 と 「‑らしい」で一つの形容 詞 として用いられる際 とで、大 きく意味が異なるわけではな く、上接名詞の意味 をそのまま保 ってい る例であると考えられる。 しか し、「‑らしい」が後接 した場合の意味 として

Ⅹの感 じがする/強い」

ことを表 し、形容詞 と解 される。 また、この場合の上按名詞 Ⅹは、「後悔 しているらしい顔つ き

「わ けがあるらしいゆきかた」 とい うように、人の状態 を表 している。

次の例 も、上接名詞Ⅹの意味は切 り出せるが

、「

Ⅹらしい」でみると形容詞であると考え られる。

(19)a仁物旦上皇男、劫の前後 にたいを人 になひ、たいはたいハ とうりけるを、ある家のぬ しよ びいれて、 (安楽庵策伝 「醒陸笑

」1

1 6 2 3

(元和

9)

)【再掲】

b 「をの子 ごのござる桟敷 と、ひとつに して も大事 ないかや」 と、白梅 は しろとらしい顔 し て申せば、「それは我/\卒忽なる事 は仕 りませぬ」 と、

(八文字 自笑 「野白内証

鑑 」4

1 7 1 0

(宝永

7) )

C 工 、主人たちか ら内衆 まで人 らしい人はない.常磐御前の仕合せ とは武士の口か ら開 きに

(12)

「‑らしい」の連体用法に関する考察 岩崎共梨子

くい (近松 門左衛 門 「平家女讃 島

」1 7 1 9

(享保

4) )

Ⅹの感 じがする/強い」 ことが表 されていると思われる。

先にも述べた通 り

、( 1 9 )

acの上按部は、上按名詞の表す意味 と 「‑らしい」の上接名詞 としての 意味が異なる。「じんぶつ」や 「ひと」は、「‑らしい」がつ くとただの 「人 (人間

)

」ではな く、「素 晴 らしい、立派な人」 を表す

。( 1 8 )

の 「後悔」や 「わけ」が状態 を表 しているのに対 し、 これ らの 上接名詞は特性 を表 していると考 えられる

(19)bは 「素人 らしい顔」であ り、「顔 ‑素人」の ように同定することはで きない。連体用法があ る人物 ・物がなんであるか を推量するには、顔や声 といった部分 を修飾す るのではな く、人物 ・物そ のもの全体 を修飾する必要があると考えられる。

【形容詞性接辞 :意味の拡張】

1 6 0 0

年代の終わ り頃には、生 き物や ものを上接名詞 とし、 これまで とは異なった意味 を表す例が見 られるようになる。以下の例 を見 られたいD

(20)a とつ とぬけたる男間て、 目薬が書写に沢山にござるか といふ。一山の内にハ どこに もござ るといふ。 をれ もとりに行 ませ うといひ しが、あ くる晩にきた りて、けふ よしミねへ行て 尋たが、 目薬 らしい物ハなかったといふ。 どうしやったといへば、木のねにあ らうと思ひ、

ほ りかへ して ミましたといふた。 (作者未詳 「当世手打笑

」1 6 8 1

(延宝

9

))【再掲】

b 狼 と山犬ハ似たや うな物で、しれぬ。「こ れハ した り.お身ハそのめ き、をしらぬか。へィ 、 ヤ、 しらぬ へ しらずハ、おれがお し‑てや らう。 まづ狼 らしいやつが出た ら、棒 をもっ てぶっがゑい。山犬なればにげる。狼 なれば、 とびこんで くらゐつ く

(馬場雲量 「鹿子餅 後篇言質

褒 」1 7 7 7

(安永

9) )

(21) しんまいの旦那へ、和 尚、棚経 に参 られ Lが、取付世帯 と兄へて仏植互 と主物 もな Lo (必 ≧舎馬宥 「ロ出の会七席 目時勢話綱 目

」1 7 7 7

(安永

9) )

これ らの例では、上接部が具体的な生 き物 ・ものを表 してお り

、( 1 8 )

( 1 9 )

とは異 なる。意味 としては、「目薬 に見える もの

狼 に見えるもの

仏壇 に見えるもの」など、上接名詞その ものを 中心 として

、「

Ⅹに見えるもの」 を指 し示 しているのではないか と思われる

。「

YはⅩらしい」 とい う 同定は表 さないが

、1 6 0 0

年代の終わ り頃になると、形容詞性接辞の 「一らしい」 において上接名詞

X

がある属性 として切 り出されるものが見 られるようになる。

【モダリティ用法

1 6 8 0

年代の終わ り頃以降、以下のような

Yは

X

に見える」 ことを表すモダリティ用法の 「‑らし い」の例が見 られるようになる。同時期、既に上接名詞Ⅹがある属性 として切 り出さjtる例が存する ことは形容詞性接辞の例か らも明 らかであ り、「‑らしい」の意味の変化、ならびに比較的 自由に上

150

(13)

岡山大学大学院社会文化科学研 究科紀要第32(2011.ll)

接部 を取 ることによって見 られるようになった もの と思 われる。

( 2 2 )

a又年比三十計 なる呉服屋 の手代 らしきが、 さらしの衣唐 木綿 の香 の図の紋つぶ じたるが、ママ

かすかに見 えす きておか し。 (編者未詳 「二休

職 」1 6 8 8

(貞享

5

))【再掲】

b 中小性 らしき侍、本町 を通 りけるに、町のなかはにてせ きたのはなをふ ミきり、お りふ し、

かひ草履 ももたせ ざれは、僕 にお ゝせて、此あた りにそ うりあ きなふ ところやある と云つ けける。 (鹿野武左右衛 門等 「枝珊瑚珠

」2

1 6 9 0

(元禄

3) )

C 大名の買物傍 らしき侍の、扶持持一人め しつれ、 中奉書入 る よしにて、三百枚売 りわた し、

代銀請取 り、その人帰 られ さまに、 ひとつふ たつ狂言 しぼゐの物語仕 り申候 が、財布 を取 残 してゆかれ し。 (井原西鶴 「万の文反古

」3

1 6 9 6

(元禄

9) )

(23)a表の戸 を明 け、手代旦̲吐 男が二人づれでずつ とはひ り、二瀬 をまね き、「二 階の声 は、

浦島と替名のおやぢ様ではないか」 ととへば、

(八文字 自笑 「野 白内証鑑」5巻

1 7 1 0

(宝永 7)) b 此や うなあばれ芸子 を奴 トいふ異名つけて称美すれはの りが来て腕 ま くり上 ケ浜芝居 の物

まね客の羽織 とって着てお くりがて らのぞめ きたいこ持 ち らしひ ものに行合 ふて辻て新八 よあほよと大声 上ての ,しり皆輿 の さめたるおか しさ也

(外 山翁 「浪花色八卦」1757(宝暦 7)) これ らの 「‑らしい」 では

、「 (

新 しく登場 した人物 に対 し)Ⅹ らしい

Y

」 とい う形 で表 してお り、

まだ何者であるかはっ きりしない人物Yに対 し

、 「

YはⅩに見 える」ことを示 している と考 え られる

。 「 Ⅹ

らしい

Y

」は

、「

Ⅹらしい男 ・もの」 とい うような形で現 れ、上接名詞

X

は人物の属性 を示 し、被修 飾語Yは (ある)人物が示す とい う形の うえでの特徴 を指摘 で きる。 また、被修飾語Yは具体 的な意 味 を持たず、表 し得 るのは男 ・女 といった性別程度で、形式名詞の ような働 きを している と考 え られ る

。( 2 2 )

aの ように省略 されることもある。

また、以下の ような 「(話者が)YはXに見える (と捉 えている)」 ことが示 され る例 も見 られる̀5。 (24)a 向ふのなが Lに、かの年増主上と やつが、なにかあ らってゐるか ら、 コレ背中 を、 なが し

て下せへ といつた ら、ハ イとこいて、六十 ばか りのば ゞアめが、たは しをもって、 きヤア がって、おせ なか を、あ らひませ うか とぬか しヤアが る

(十返舎一九 r東海道中膝栗毛

』5

編上

1 8 0 6

(文化

3) )

b 卒 「ソコでその客が暫 く休 んで、茶代 を置いて出合が しら、でんは うらしいやつが二人、

門口で突普っ た トいふがいひがか りで喧嘩 よ。それか ら聞 きねへ、其色男 をノ聞 きねへ、

●5 岡部 (2004)では、(体言承接のラシイは、典型的な 「推定」を表すというよりは、話し手が把握した状況を、

話し手の印象に基づいて、「実情はわからないが〜のように見える」と述べること ((様態)を表すこと)を中心的 な機能とする。)と指摘されている。近世中期にも、こういった用法は既に存するのではないかと思われる。

(14)

「‑らしい」の連体用法に関す る考察 岩崎共 架子

むご くぶちのめす もんだか ら、 き≧ねへ」アバ 「ィ 、サ聞いてる ヨ」

(滝亭鯉丈 r八笑人J春の部萱之巻 1820(文政3)) (24)は、形や意味 ・用法 については (23)に同様 といえる。 しか し

、「

ⅩらしいY」が話者によっ て述べ られたものであることか ら、話者がYの持つ特徴 か らXと見たことが示 されてお り、(23)に 比べてより主観的な判断になっているのではないか と思われる。

また、推量 を表す連体用法の 「‑らしい」が見 られるようになった後に、上接名詞が 「事柄」や、「事 柄 に対する話者の態度」 を表す例 も見 られる。

(25) 金十郎 「明 日の朝 は茶漬けを食いの、ずい帰 りだぜへo今夜 はお ゝかた、菊園か菊の井 とい ふ名代 らしい晩だ」喜八 「悪推 ばか りおっせんす。行灯 に無駄督 き、もう帰 るも古いやつね」

(奈蒔野馬乎人 「唆多雁取帳」1783(天明3)) (26) 財布持 ち 「昔 は代物 を貸 した上 に、代 をば、やっぱ り貸 した方か ら取 りに回ったそ うだが、

ほんの事か知 りませぬ。 どうや ら嘘旦上 巳事だぞ」

(万象亭竹杖為軽 「従夫以来記」1784(天明4)) (25)は

、「

ⅩらしいY」で未実現の事柄が表 されている。即 ち、話者が発話時において

「 [

今夜 は、

菊園とか菊の井 とかいう名代が来る] らしい」 と捉 えていると考え られる。 (26)は、他者か ら聞い た話について、話者が「[昔は代物 を貸 した上に、代 もやは り貸 した方か ら取 りに回った という話は、嘘]

らしい」 と捉 えていることが示 されているのではないか と考えられる。 また、以上の例 はは、副詞 「お おかた」や 「どうや ら」 と共起 している点にも注意 される。 4節 にも述べた通 り、「‑らしい」はモ ダリティ用法において 「どうも/ どうや ら」などの副詞 と共起するとされるが、 これ らのように推量 的判断を表す連体用法で も共起が可能なのである。

(22)か ら (26)に挙げた例は

、 「

Xに見える」

や「

Xと捉 えられる」 とい うことが表 されてお り、(請 者の)主観 を表す用法になっていると思われる。 (話者の)主観 を表す点で、モダ リテ ィ化 している

と考えられる。

5‑2.推息 を表す連体形 「‑ らしい」 と 「‑ らしき

以上の通 り、遅 くとも1680年代 には、推量 を表す連体用法が見 られる。 ここでは、連体形 「‑らし い」のモダリティ用法について、文体差や修飾 ・被修飾語の関係性 といった観点か ら考察する。 また、

近世に続いて近現代の例 について も確認 してお きたい。

まず、 この用法では現代語 において も 「‑らしい

「‑らしき」の両形が見 られる。近世 ・近現代 の 「‑らしき」の使用には、言 うまで もな く、文語 と口語 とい う文体の差が関係する。次の例 を見 ら れたい。

(27)a[歪】手ぬ ぐいをあげふか [査】ウ 、貸 しなせへ。俺がのは汗手ぬ ぐひで、役 にた ゝねへ

圭皇号諸島遺 書特上等TTf三日要路 高会費で艶 (田舎老人多田爺 「遊子方言」1770(明和 7))

152

(15)

岡山大学大学院社 会文化科学研究科紀要軒32(2011.ll)

ゆふペ

b お きみ 「ヲヤ、お鯛 さんOお早 うございますネ。夕は瞭おやかましう

豊 翌 謂

おたい 「アイ、

I.1王Pひ 上

ゆふべはおねむかった らうネ。いつで もあの生酔 (なまゑひ)生酔 さんは夜がふけるねへ くせ tt,しJt'うご えい きみ 「アイサ、それで も癖がな くて能上戸 さO粕兵衛 さんのやうにでないか ら能 よ。

(式亭三馬 r浮世風呂』 2編上 1810 (文化7))

しづか

c

i ; ̲ 霊

言 諸賢

ぞ去

錆書 誌吉 雪 . i 岩 男 官 と 誓書 孟 子 モ チ F i 管 持

h

i:: よめ 「お あ ぶ な う ご ざい ます ヨ. あす

に遊 しま L Lうとめ 「アイ/\ トとめをけのわ きへすはる

(式亭三馬 r浮世風 呂

J

2編下 1810 (文化7)) (28) 向ふのなが Lに、かの年増旦上土 やつが、なにかあ らってゐるか ら、 コレ背中を、なが して

下せへ といつた ら、 (十返舎一九 r東海道中膝栗毛j 5編上 1806(文化3))【再掲】

(27) は地の文における例、(28)は会話文における例である。地の文では 「一らしき」、会話文で は 「‑らしい」が用い られる。勿論、これは推量 を表す連体用法に限った差異ではない。以下、形容 詞性接辞の例 も挙げてお く。

(29)

l 通 り

者に りや死人を焼 く旬だ。 じゃが、土手でかげば、死びとの旬 も、良い もの じゃないか。

今夜 は大ぶ土手が永や うだ

を y ‑ , 諾. : I , % L ,

払ぷ

裂 離

(田舎老人多田爺 「遊子方言」1770(明和 7))

す ぎL?

(30) 風呂敷包 を背負 し小僧、摺違 ひ しが立止 り、過行唄女の後影借 と見送 りLが、後 を慕ひて唄

A.るよひ

女 の帰 り宅 まで兄 と ゞけ、立 かへ る発 明 ら しさ小僧 の動静、何 ゆゑな るか知 らね ども、

ひとJ)うIJづ

独合 点は しりゆ く。 (為永春水 「春告鳥」 3鮪 1811 (天保8)) (31) りき 「アノウ御家の小僧 さんが参 りました 鳥 「ハテナ誰だか りき 「アノお前 さんが御ひ

ゐさになきった発明 らしい小僧 さんでございます ヨ。

(為永春水 「春告鳥」4漏 1811 (天保8)) (30) と (31)のように、同 じ筆者であって も、地の文では 「‑らしき」が用い られ、会話文では 「‑

らしい」が用い られるのである。

明治期以降 も、連体形 「一らしい

「‑らしき」 には、推量 を表す用法の例が見 られる。新 しい登 場人物や物 を示す際に現れやす く、 また、「‑らしさ」が主に文語文において見 られる●6とい う特徴

も近世に同様である。

おや ちやうすIrは、 な し ち し さく LT ぢ 上 も つ

(32)a親 は長助母 はお さめ と名ばか り知って土地は知 りませ んと間に下女 を供 に連れたる庇の

ちゃ うか かみ さひと お とはな しとも お や こ が あ わ し い ノL上 町家の女房主上主 人は驚 きて、委 しい話 も聞 き共 に親御 を探 して上げたい私 と一途にマア ござれ と、 (響庭墓相 「従軍人夫」1895(明治28)) b 又候角湾の北北東に昔 り高地に砲壷 らしきものあ りと (「海内菜報」1895(明治28))

'6

r

太陽コーパスjの口語 ・文語の分類による。(33)は何れも文語資料であるO(34) abcは口語資料、(34) dのみ文語資料であるが、 (34)dの用例箇所は会話文であり、口語的と考えられる。

(16)

「‑らしい」の連体用法 に関す る考案 岩崎共梨子

( 3 3 )

a馬 を前の柳の蔭に繋いで、百姓 らしい朴柄の男が床凡 に掛けて溢茶 を吸って居 た.

(川上眉山 「眼前の春光

」1 9

01(明治

3 4 ) )

ひと り はがつかT=つ Lや11にようJLわtlさ王かぶ り は/='L b 人の気勢が したので、只見 ると、三十恰好の、達者作 りの女房主上と のが、姉桂冠、枕に

毒就 業 きな菜 に崩篭 を箭崖 に したのを鎧へ去ん7享igQ)努へ晶て希った。

(

川上眉 山 「眼前の春光

」1 9

01(明治

3 4 ) )

で き ひ ごrJ ま いL上せい /‑・ rjかは/=ちちlC?うどLf IL ULと C 出て来たのは 日頃の生意気 な書生では無 くて、 仲 働 らしい中年増であったが、彼 も件 し

け い ぶ ろ み と とりつゃか れいそあん1.

く軽侮 の色は見せなが らも、兎 も角 も取次をして、膿て令息の部屋へ案内をした。

(′ト葉風菓 「一腹一生 (暴前)

」1 9

01(明治

3 4 ) ) ( 3 2 )( 3 3 )

のような連体形の例について検討すると

、「

Ⅹらしい

Y

」は

、「

Ⅹである

Y

」の ように同 格で置 き換 えられる例 と

、「

Ⅹの

Y

」の ように所属で置 き換 え られる例 に分かれるのではないか と思 われる

。( 3 2 )千 ( 3 3 ) b

の ような

、「

Ⅹらしい人 (男 ・女)・もの ・の」 とい った、名詞が準体詞の 働 きをす る場合は、同格 に置 き換 え易 い.一方

、( 3 3 )

acの ような、被修飾語に当たる人物 に既に情 報が付加 されている場合は、上接名詞はその人物 に対する一特徴 と捉 え られ、所属 と考えたほうがよ いように思われる。

また、以下のような例は同格 ・所属 といった解釈が当てはまらない もの と思われる。

( 3 4 )

長者 は貫僧 に魅 された り今や早 して雨旦̲壁 書 もな し石の獅子の眼か ら血が流 る 、よ り 此方等の膳の茶が沸溢る 、わ一番嚇 してやるべ し

(響庭笠村 「暗合か訴案か

」1 9

01(明治

3 4 ) )

上接名詞Ⅹは被修飾語Yに対 し、推量 し得 る事柄 になっている

。( 3 4 )

dを例 とすると、「雨が降る らしい雲」 と解釈 されるものである。

なお、明治期以降では、「‑らしい」が活用語の言い切 りを轟 けることが定着す る。そのなかで、

連体形 を取るもの も見 られる。

のむら

さ ナ

が Iiんも やうナ く: んf. さ

(35)a 野村は

繁に煩悶 して居 る旦̲吐 様子であるが 「あんな腐

た女 は去って も惜 しくない

J J

t一

と、キツパ リ言った。 (柳川春棄 「誇

」1 9 0 9

(明治

4 2 ) )

b 菊見に行 くらしい車が、大分続いて藍染橋 の方か ら来る。

(森鴎外 「青年

」1 9 1 0 ‑ 1 9

11(明治

4 3

44)) なか ま 土う ),{・とはい (=tl かほい7)

(36)a 中には待 ち設けた りと党 しき男の三十四五なるが既四五杯 は傾けたるらしさ顔色 して、

(幸田露伴 「緑の糸

」1 9 0 1

(明治

3 4 ) )

b さても一行の人々を見れば生れて以来遠慮 といふは夢にも見ぬ らしき怪男子、而 も房州の 有志者 より招待 を受けたる操触者 な りけ り。 (長谷川天渓 「房州の海岸

」1 9

01(明治

3 4 ) )

以上のような、活用語の言い切 りを承ける例 についても、被修飾語Yが どういったものであるかが 上接部

X

によって表 されてお り

、「 Y

はⅩと見える

」「 Y

はⅩと捉 えられる」ことが示 されているので はないか と考えられる。

154

(17)

岡 山大学大学 院社会 文化科 学研 究科 紀 要解32 (2011ll)

この ような、活用語の言い切 りを暴 ける連体形 「‑らしい

「‑らしき」 については、用例 の割合 に差がある。「‑らしさ」は活用語の言い切 りを暴 けに くく、「‑らしい」 にはそ ういったことはない。

今回採取 した用例では、連体形 「‑らしい」が活用語の言 い切 りを承 ける例 は、明治期23例、大正期 69例、昭和期153例、平成32例 であるのに対 し、「‑らしき」 は明治期7例、大正期3例、昭和期 0、

平成3例である。 これは、「‑らしき」が 同格 を表す ことに関連す るのではないか と思われる。

以上の通 り、推量 を表す連体用法の 「‑らしい」 と 「‑らしき」 は、ほぼ同 じ意味 ・用法 を有 して いるが、XとYの関係 は 「‑らしき」のみ同格 に偏 り、「‑らしい」ではそ ういった偏 りがない。 また、

「‑らしい」 は活用語の言い切 りを承 ける割合が高 く、「‑らしき」で低 い といった点で異 なる。

6.「一 らしい」のモダ リテ ィ用法

以上の通 り、「‑らしい」の連体用法 を中心 に、意味 ・用法 を見て きた。 これによると、「‑らしい」 のモダリティ用法は、 まず、以下の ような連体用法が きっかけとなって見 られるようになるのではな いか と考 え られる。

(37)a是 にか ぎらず扇屋 は、女房 に骨 をを らせ て亭主は らくしてま うける、要 は折手共が働 き。

かしぎLき

借座敷の台所 にあが りて、 まづ きせ るの湯 に成 るほ どたばこけふ らせ、賄旦上 皇男 とらへ て、芝居のぬれ狂言の うまき所 を哨 しかけ、其のあはひには椀 な どふいて、 まづ売 る扇子 の事 はすてお き、下々のふ くろび、 きゃはんのひものはなれたをぬ ひつけ、 さのみ しん ど

うになき、 目にたつはた らきを してお き、

(八文字 自笑 「野 白内証鑑」 3巻 1710(宝永7)) b 卒 「ソコでその客が暫 く休 んで、茶代 を置いて出合が しら、でんは うらしいやつが二人、

門口で突雷った トいふがい ひがか りで喧嘩 よ。

(滝亭鯉丈 『八笑人J春の部童之巻 1820(文政3))【再掲】

こういった例では、「Ⅹ らしいY」で 「YはXに見 える」 ことを表 し、特 に (37)bのような話者の 視点が入 ることによって、「Ⅹ‑Y」であるという推量的判断を表す と考 え られる。 このような連体用 法 におけるモ ダリテ ィの例が見 られるようになった後、終止用法で もモ ダリテ ィを表す ようになる。

たとえば、以下の ような例である。

かへ

(38) 「サア もふ よかア販 らふの 長 「ア 、かへ るがネ。今のはどふ も米八 さ○ん卓上と ヨOか くさ ず とい 、じゃアあ りませんか ト

(為永春水 『春色梅児香美』初 編3 1833(天保4))【再掲】

ここでは、話者が知覚 によって把捉 した状況か ら、「AはⅩである」 と判断 していることが表 され ているC「A‑Ⅹ」は真偽不明であ り、「‑らしい」 によって話者が真である と判断 していることが示 されている と考えられる。

(18)

「‑らしい」の連体用法 に関す る考斧 岩崎f:L梨子

7.あわ りに

以上の通 り、「‑らしい」の連体用法について見て きた。結論 は以下の通 りである。

「‑らしい」は、 中世 か ら近世 の半 ばにかけて、いずれの活用形 で も形容詞 の例 のみが見 られ る。

しか し

、1 6 8 0

年代 の終 わ り頃 になる と、連体 用法 において、上接 部

X

と被修 飾語

Y

「 Ⅹ‑Y

」 と同 定 し得 る関係の例が見 られるようになる。その際、「中小姓 らしき侍」の ように、「‑らしき」の形が 見 られることも特徴 の一つである。 こういった連体形 「‑らしい」 は、新 たに登場 した人物や物 (Y) に対 し、それが

X

Y

が同定関係 であることを断定せずに示 してい る。 これは

、「 Y

X

と見 える

」「 Y

はXと捉 えられる」 と解 される点で、推量的判断 (モダ リテ ィ) を表 していると考 えられる。その後、

1 8 0 0

年代 に 「

(

さっき見えたのは) どうも米人 さん らしい」の ような、終止形で推量 を表す例が見 ら れることとなる。 ここに至 って、「‑らしい」は助動詞化 したのではないか と考 え られる。

連体用法か ら意味 ・用法が変化 したのは、 もともと 「‑らしい」が何 かを修飾す る形容詞 として用 い られ、形容詞性接辞の段 階か ら連体用法の例が多 く見 られ るこ とに よるのではないか と思われ る。

そのなかで上接名詞 を切 り出す ものが見 られ

、「

Xの感 じがす る/ 強い Y (仁物 ら しい男

) 」「

Xの よ うに見 える もの (目薬 らしい もの)」の ように連体形の例か ら意味が変化 してい くのではないか と考 えられる。

この ような、元 は接辞であった ものが、モ ダリティとして用い られるようになる例 に 「‑ぼい」が 挙 げ られる (例 ‑形容詞性接辞 .子供 っぽい鞄 モ ダリティ .雨が降るっほい)

「‑ぽい」 に関 して も、連体形 においてモ ダリテ ィ用法の もの と考 え得 る例が見 られ、その後 、終止用法 におけるモダ リ ティの例が見 られるようになる。接辞がモ ダリティ用法 を獲得す る うえでの興味深い共通点なのでは ないか と思われる。

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2 0

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[付記]本稿 は、第

2 3 7

匝l ‑筑紫 日本語研 究会

( 2 0 1 1 . 8 . 8 ‑2 0 1 1 8 . 1 0 )

にて行 った口頭発表 に基づ くも のである。席上、貴重 な御意見 を賜 った。感謝 申 し上げる。

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