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船橋東郵便局事件

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船橋東郵便局事件

〈千葉地裁•平成 14 年(行ウ)第 37 号〉意オも書:

松 尾 邦 之

ま え が き

原 告 代 理 人 の 依 頼 に よ り , 総 務 省 郵 政 事 業 庁 ( 現 日 本 郵 政 公 社 ) 船 橋 東 郵 便 局 に 勤 務 する非常勤職員(いわゆる「ゆうメイト」職員)の期限付任用再任用拒否(雇い止め)

事件の意見書をまとめる機会を得た。本稿はその意見書である。

筆 者 は , 既 に 同 様 の 事 件 に 関 し て , 判 例 検 討 , 意 見 書 を ベ ー ス に し た 論 説 お よ び 意 見 書 を 発 表 し て き た 。 重 ね て 類 似 の 論 稿 を 発 表 す る こ と に し た の は , 以 下 の 二 つ の 点 を 考 慮 し て 若 干 の 修 正 補 強 を す る 必 要 が あ る と 考 え た か ら で あ る 。 ま た , こ の 機 会 に 引 用 判 決の年月日・掲載誌巻号等の誤記を訂正した。

まず第ーは,いわば民主社会の労働常識とも言うべき ILO条 約 ・ 勧 告 やEU指 令 の 示 す 期 限 付 雇 用 の 反 復 更 新 規 制 を 法 解 釈 に お い て 参 考 と す べ き と 考 え た か ら で あ る 。 第 二

(1)  「「臨時・非常勤職員」の雇止めおよび均等待遇をめぐる最近の判例・裁判闘争における法 的諸問題の検討」労働法律旬報第1552号,「判例解説 任期満了によるパートタイム非常勤 国家公務員の任用更新拒否の法的性質ー一廿l形大学病院事件・山形地裁判決(昭61・2・17)」

労働法律旬報第 1155号

」 九

(2)  「期限付任用・短時間勤務国家公務員の任用反復更新後の再任用拒否に対する法的救済試論

—城陽郵便局再任用拒否違法確認等請求事件(京都地方裁判所平成 9 年〈行ウ〉第 22 号)

を契機として」香川法学第 19巻第2号

(3)  「青葉台郵便局国家賠償請求事件(横浜地裁平成11年〈ワ〉第4766号)意見書」香川法学 第21巻第3・4号

‑ 79  ‑ 23-3•4-264 (香法2004)

(2)

は任用方針の大きな変化を考慮すべきと考えたからである。近時国は,民営化・非公務 員化や外部委託そして定員外の非正規公務員によって一般職正規職員の定数大幅削減を 基本方針としている。とりわけ郵政関係においては,非常勤職員任用規程の2000年改 定で非常勤職員を「軽微な通常の事務」を処理する者という位置づけから「軽微な」を とり去って文言上も常勤職員との職務上の違いをなくし,実態的にも非常勤職員および 外部委託化により必要要員の過半数以上をまかなおうという人事方針を実施してきてい る。〈筆者は,立法による明確な制度変更に必要な国民的議論を避けなし崩し的に国家 公務員法の根幹(定員法を前提とし競争試験を原則とする能力実証主義・成績主義)を 改変しようとするものであり,法治行政の観点からまた労働権保障の観点からも許容さ れるべきではないと考える。〉

事 件 番 号 平 成 14年(行ウ)第37号 原 告 今 村 久 孝

被 告 日 本 郵 政 公 社

法 律 意 見 書

は じ め に

2003年12月13日 香川大学法学部助教授

松 尾 邦 之

日々雇用等期限付任用の一般職非常勤職員は国の機関全体で約 34万人,郵便事業だ けでも 10 万 8 千人にも上る。その任用(採用および再任用• 更新)の法的根拠とされ る国家公務員法,人事院規則そして非常勤職員任用規程などの法令の規定は正規職員や 臨時的任用のそれと比較して制度的に未整備かつ不明瞭である。加えて郵便事業の場合 で平均経験年数は 4年となっているように期限付任用が反復更新されて相当長期に継続 勤務している(させている)にもかかわらず,従来の判例において任用継続に関わる身 分保障が全く軽視され実質的に考慮されていない状況にある。法治行政の観点ならびに 国家公務員法第 1条の趣旨,とりわけ身分保障に照らして許容すべきでないものと考え る。

自由で民主的な社会の労働法常識(そのひとつの例がILO国際労働基準や先進国水 準を示す EU法令である)が示すように,人を使用する者はその契約や任用の形態に応 じて雇用者としての適正な雇用維持責任を負うべきという原則を十分に考慮すべきであ る。当該条約を批准しているから法的に拘束され,批准していないから無関係というの

23-3•4-263 (香法2004) ‑ 80  ‑

(3)

ではなく,民主主義国家の司法権をつかさどる裁判所は,自由で民主的な杜会の労働法 常識である以上この法原則を尊重し可能な限り合致するよう法令解釈を行うことが求め られている。このように解釈することは,また同時に,国家公務員法の本旨に包含され る身分保障において尊重されてしかるべき期限付任用職員の権利とも合致し,また本来 的に日本国憲法の勤労権保障の趣旨に合致することにもなるはずである。

これらの点を踏まえ判断するならば,本件船橋東郵便局における日々雇用非常勤職員 の再任用拒否は任命権者の完全な自由裁量に委ねられるべきものではなく,適切な制約 が課せられるべきという結論になるものと考える。

本件両当事者の主張の要点

原告の主張の要点 請求の趣旨

原告の日々雇用非常勤職員(いわゆる「ゆうメイト」職員)たる地位の確認および勤 務していたら支給されたはずの賃金の支払いならびに仮執行宣言を求めるものである。

請求の原因

原告は, 2000年 11月13日船橋東郵便局長から任用予定期間を示されないまま口頭 で日々雇用の非常勤職員(いわゆる「ゆうメイト」職員)として任用されたのち, 2001 年2月末日と 5月末日の 2回更新されていたところ,任用更新が拒絶され, 2001年9 月30日付で任用期限満了による当然退職扱いで雇い止め(解雇)された。しかし,本 件任用関係は違法行為の転換の法理にもとづき,任用当初あるいは少なくとも最初の 3

ヶ月の任用予定期間経過時点で期限の定めのない任用に転化したもので任用は継続して いる。それは,本件「ゆうメイト」任用は期限付任用の適法要件(恒常的業務に従事さ せないこと,代替的業務に従事させること,身分の十分な保障がなされていること,お よび将来的に解消が予定された時間的限定措置として行われていることの四要件)を欠 く違法無効な任用であったところ,違法な人事管理を意図的に進めてきた被告において 違法状態を雇い止め(解雇)により専ら原告の犠牲によって解決することは,クリーン ハンドの原則および信義則に照らし許されず,かかる違法状態は被告の適正な任用を行 うべき義務と権限の範囲内において専ら原告の不利益を生じない任用継続という方法と 措置で解消すべきだからである。また順次更新するとの双方の暗黙の了解のもとで期限 満了に伴い任用更新をしないことは一方的に原告に不利益を課すものであるから法の一 般原則である信義則に反し権利濫用にあたり許されないことを予備的主張としている。

被告国の主張の要点

九〇

‑ 81  ‑ 23‑3・4‑262 (香法2004)

(4)

本件期限付は,大阪大学図書館事件最高裁判決,郵政事業の非常勤職員についての札 幌西郵便局事件高裁判決および福井郵便局事件高裁判決の示した非常勤職員の期限付任 用についての適法要件法理(事務処理のため非常勤職員任用の必要性があること,従事 する業務を代替的事務に限定すべきこと)に照らして適法である。そしてこの適法な任 用制度に則り,本件任用を行っていたのであり,原告については日々雇用の任用予定期 間を約2週間から 3ヶ月とする期限付任用の非常勤(一般職)職員として採用されてい たところ「郵便配達上の事故を重ねるなどの原告の勤務状況等を総合的に考慮し」任用 更新を行わないこととしたので2001年9月30日予定雇用期間満了をもって当然退職と なったこと,再任用は任命権者の一方的行政処分としての新たな任用行為であるから原 告は任用という行政処分を要求する権利はないことから,原告の請求には理由がなく請 求は棄却されるべきというものである。

2 .   国家公務員法本則条文に定めのない「期限付任用」の適法要件

1 先行判例における適法要件解釈とその検討 (1)  先行諸判決の概要

東郷小学校事件最高裁第三小法廷判決(昭和 38年4月2日 民集 17巻3号)は地方 公務員事案であるが,公務員一般の「期限付任用」の法的適否判断の先例として引用さ れてきた。

同判決は,職員の任用を無期限のものとするのが法の建前であり,期限付任用が許さ れるかどうかについて法律(地方公務員法)には別段の規定はないが……①それを必要 とする特段の事情が存し,且つ,②それが職員の身分を保障し職務専念を保障するとい う趣旨に反しない場合においては,特に法律にこれを認める旨の明文がなくても,期限 付任用は許されるとしていた。

八 九

一般職非常勤国家公務員の期限付任用に関する最高裁レベルの判断として大阪大学図 書館事件平成6年7月14日最高裁第一小法廷判決(判例タイムズ871号)がある。

同最高裁判決は,人事院規則にのみ規定があり国家公務員法本則各条に明文規定のな い「非常勤職員(日々雇用職員)」という形態の期限付任用制度を設けること自体が適 法であるか否かについては明確に判断することなく,①事務量が正規任用の常勤職員の みでは処理できずまた正規職員定員の増加が実際上困難であること,②特別の習熟,知 識,技能または経験を必要としない代替的事務であって「非正規」職員によっても適正 に処理できる場合であること,③当該職員に任期付であることを明示していること, と

23‑3・4‑261 (香法2004) ‑ 82  ‑

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の各要件を満たしていれば,「期限付任用に係る非常勤の国家公務員である日々雇用職 員」については,上告人のように 4年 6ヶ月継続勤務したような場合であっても職員の 任用を原則として無期限とした国家公務員法の趣旨に反しない,と判示している。

ところでこの大阪大学図書館事件最高裁第一小法廷判決が明確には示さなかった,人 事院規則にのみ規定があり国家公務員法本則各条に明文規定のない「非常勤職員(日々 雇用職員)」という形態の「期限付任用」制度を設けること自体が適法であるか否かと いう論点について,福井郵便局臨時雇雇止め控訴事件の名古屋高等裁判所金沢支部判決

(昭和63年10月19日 労働判例529号)はより詳細な法令解釈を示している。〈ほぼ 同趣旨の高裁判決として札幌西郵便局事件札幌高等裁判所判決(平成 14年4月11日 労働判例 833号)がある〉

まず①「一般職に属する国家公務員につき,国公法60条に定める臨時的任用以外に,

期限付任用を行うことは,同法が,国民に対し,公務の民主的かつ能率的な運営を保障 することを目的とし,職員の身分保障規定等を定めていることからすれば,公務の能率 的運営を阻害し,身分保障の趣旨に反する場合には許されない」との原則を明らかにし たうえで,② 「同法が職貝の期限付任用を禁じていないこと,同法附則 13条が同法の 特例を設けることを許しており,人事院規則 8‑12(職員の任免)は,恒常的におく必 要がある官職に充てるべき常勤の職員を任期を定めて任用してはならないとするが,一 定の要件の下で常勤職員についても任期を定めた任用を許容し (15条の2)' 日々雇い 入れられる職員の任用の更新及び任期満了による当然退職 (74条1項3号, 2項)につ いて定め,人事院規則8‑14(非常勤職員等の任用に関する特例),同 15‑12(非常勤 職員の勤務時間及び休暇)等において期限付任用を前提とする規定が設けられているこ と等からすれば,右のような弊害がない場合には,期限付任用も一般的には禁止されて いないものと解される」として,③ 「郵政省において,任用規程により任用される臨時 雇は,適法な任用と認められる」と結論づけている。

(2)  先行判決と適法判断の三要件

これら三つの判決を考え合わせて整理するならば,次の三点(以下①,②,③)の充 足が「期限付任用」が容認されるための判例法上の要件とされていると評価できる。ま た当意見書においても,これらは単なる検討事項ないし要素ではなく適法判断の要件と 解すべきであると考えている。以下本件の判断に当たって,これら三点をさらに明確に

した上で,そのすべてが充足されているか否かを検討する。

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‑ 83  ‑ 23-3•4-260 (香法2004)

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国家公務員法本則条文には「臨時的任用」(国家公務員法60条)以外には,明文のあ るいは明示的には「期限付任用」を定める規定がない(なお, 1999年法改正で現行法 上,定年退職者の「再任用」制度(国家公務員法81条の4)が期限付任用として「明 文で」加わった。)。つまり「法治行政」の原則からすれば立法府はこの二つの期限付任 用以外のものを想定していないと考えるのが相当である。国家公務員法附則 13条は「職 務と責任の特殊性に甚いて……別に法律又は人事院規則を以て」同法の特例を設けるこ とを許容するものの,国民に対し公務の民主的かつ能率的な運営を保障することを目的 とし,職員の身分保障規定等を定める同法第1条の精神に反してはならない,として一 般的例外許容の枠紺みを示しているだけであるから,例外を置くのであればそれ相応の 理由を示し適切な運用手続きを設けなければならないのは当然の理である。

したがって,その妥当性を確保するには,第一に「それを必要とする特段の事情」が 存在しなければならないこと(第一要件)と,第二にこれに加えて「職員の身分を保障 し職務専念を保障するという趣旨」に反しない任用であることである。そして後者の要 件は,名古屋高裁が示唆するように二つの要件に区分することができる。すなわち,国 民の付託に応えて民主的かつ能率的運営が制度的に保障されること(第二要件),そし て職員の屈用および勤務条件の十分な保障=身分保障がなされること(第三要件),で ある。

2 適法判断の三要件の具体的適用と従来の判例動向の問題点

上記三要件は,それぞれが独立して適法判断要件となるとともにそれぞれが結びつい ている。第一要件および第二要件は主として「国民の付託に応えて民主的かつ能率的運 営が制度的に保障」されるものとなっているか否かの判断基準となるものであり,第三 要件が「身分保障,すなわち職員の雇用および勤務条件の十分な保障」するものとなっ ているか否かの判断基準である。本件判断との関わりでは「日々雇用」形態の

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期限付 任用」職員の再任用拒否の適法性の存否の検討が目的であるから第三要件の充足が中心 論点となる。まず,第一あるいは第二要件はいかなる意義を有し,また第三要件との関 連でどのように位置づけられるべきかを,ここでは検討する。

八 七

(1)  第一要件「それを必要とする特段の事情」の存在をめぐって

本件で問題になっている「日々雇用」形態の「期限付任用」は例外のさらに例外とし てかろうじて許容されているというべきものである。先の名古屋高裁を初めとする裁判 所は,国家公務員法が職員の期限付任用を禁じていないこと,同法附則 13条が同法の 特例を設けることを許しており,人事院規則8‑12(職員の任免)は 15条の2で一定

23-3•4-259 (香法2004) ‑ 84  ‑

(7)

の要件の下で常勤職員についても任期を定めた任用を許容し, さらに人事院規則8‑14

(非常勤職員等の任用に関する特例 この場合非常勤職員とは2ヶ月以内の期限付任用 職員を指している),同 15‑12(非常勤職員の勤務時間及び休暇 なお現在は人事院規 則 15‑15に改正され置き換えられている)等において期限付任用を暗示する規定が設 けられていることを「繋ぎ合わせて」根拠規定として示しているに過ぎないものである。

人事院規則 8‑12の中には「任期を定めて採用」や「日々雇い入れ」という文言は存在 するもののこれらを行うことのできる事由・条件や権限の所在について何らの定めもな い。したがって人事院規則8‑12が,そもそも本件のような日々雇用や2ヶ月以内のよ うな期限付任用の法的根拠となりうるものであるか明確ではない。仮に明示的に禁止し てないから許容できないではないとしても制度的な不備と不明瞭さは否めないであろ

う。

本来郵便等国営企業の事業を含む国の公務遂行は,定員法の適切な制定・改廃と運用 を前提に「常勤職員」(いわゆる正規職員と,その例外的特例であるところの国公法60 条臨時的任用そして人事院規則8‑12第15条の2第2項各号所定の一定期間で廃止・

終了する常勤官職に充てる任用)で遂行しなければならずまた可能であるとの建前のは ずである。したがって「期限付任用」においては,臨時的任用や一定期間で廃止・終了 する常勤官職任用では対応できない場合の,さらなる例外を必要とする「特段の事情」

が求められる。そして本件のような日々雇用の短時間勤務職員の場合においては,任期 1日限りの「日々雇用」形態でなければならないこと,そして「非常勤(短時間勤務)」

でなければならないこと,の特段の事情を明確にしなければならない。そうすると,法 体系全体から合理的に想定できるのは,期限付任用の「特段の事情」とは,一時的・臨 時的な業務量増大や一定期間で廃止・終了する非恒常的業務のうちで国公法60条の臨 時的任用および人事院規則 8‑12第15条の2第2項各号所定の任用形態では対処でき

なかったり適切でなかったりする場合で,任用期間が長くても数ヶ月から半年未満のも の,更新回数は数回を超えないものであろう。また「非常勤(短時間)」についてはさ らに,業務の間欠性や業務量の時間帯変動への対処として必要かつ適切な場合という条 件が付加されるべきである。

これまで裁判所は「それを必要とする特段の事情の存在」を本意見書のごとく実質的 な要件として位置づけ厳しく問うてはこなかった。実際には「枕詞」的な検討の一項目 としてしか扱ってこなかったと思われる。本来司法の立場から政府・国会や任命権者の 定員法運用や人員管理が適切か否かを厳しくチェックし,責任を問う姿勢が必要であっ たと思われるにもかかわらず,現状に追随してチェックは全く弱かったと言わざるをえ ない。例えば前示の大阪大学事件最高裁判決もそうである。大学での運用実態や「正常

八 六

‑ 85  ‑ 23‑3・4‑258 (香法2004)

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化」のための任命権者側の努力の有無や程度にすら言及せず,大阪高裁判決ではそのよ うに認定も判断も示されていないのに改めて事実調べをしていない最高裁が,「直ちに 常勤職員の定員を増加することは実際上困難であり」と認定している。きわめて安易な 姿勢ではないだろうか。確かに,政治状況や積年の公務貝管理の現状からは「実際上」

困難であるにしても,法の建前や理想どおりに制度運用が進められないことの主たる責 任は明らかに政府・国会そして個々の労使関係上は任命権者の側にあるということを看 過すべきではない。

ところが,国の施策自体によって状態はいっそう深刻化し,現行国家公務員制度の根 幹が大きく揺るがされている。被告国は常勤職員の処理範囲を超える事務処理のための 非常勤職員任用の必要性についての主張(準備書面1, 7頁以下)において,一時的臨 時的な対応の必要を超えて一般的桓常的に処理能力を超える状況にありかつ公務員定数 大幅削減が国の基本方針であるから,補助的代替的な業務は非常勤職員採用により能率 的かつ円滑な運営を図っている旨を示している。さらに2000年改訂の非常勤職員任用 規程は非常勤職員を「軽微な通常の事務」を処理する者から「軽微な」をとり去り,規 則上も常勤職員との職務上の違いをなくしてしまっている。日本郵政公社化をはじめ郵 便事業改革においては非常勤職員および委託化により必要要員の過半数以上をまかなお うとしていることを考え合わせるならば正に正規職員の置き換え以外のなにものでもな い。この点で本件における被告• 国の主張を容認することは,少なくとも郵便事業職員 は一般職国家公務員の身分を有するから,定員法の規制を前提として競争試験を原則と する能力実証主義・成績主義をとる国家公務員法の根幹に反し,法治行政原則に反する

ことにつながり許容すべきではない。

したがって,仮に本件のような期限付任用を違法とまで言えないと判断する場合にお いても,少なくともこのような人事管理から派生した不利益を任用(採用)される労働 者側に負わせるべきではなく,第三要件とのかかわりで任命権者の不利益回避責任と結 び付けるべきということになるはずである。

八 五

(2)  第二要件「民主的かつ能率的運営の制度的保障」をめぐって

「民主的かつ能率的運営の制度的保障」の観点から,相当数の裁判所が「非正規・期 限付任用」職員に行わせる事務を「特別の習熟,知識,技能または経験を必要としない 業務」に限定し,任命権者の行き過ぎがないようにと試みてきており,ひとつ有力な傾 向になっている。

その代表例は,室蘭工大事件札幌地裁判決(昭和53年7月21日 労働判例303号)

23‑3・4‑257 (香法2004) ‑ 86  ‑

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である。また大阪大学図書館事件最高裁第一小法廷判決も,特別の習熟,知識,技能ま たは経験を必要としない代替的事務であって「非正規」職員によっても適正に処理でき る場合でなければならないと限定を試みている。しかしこの点に関しても,必ずしも安 易な「非正規」職員の任用のチェックにつながっていないように思われる。実際に多く の公務職場でも,正規職員が担当している事務・業務内容の一部あるいは全部を「非正 規」職員が大過なく正規職員と混じりあって担当している。とりわけ長期に継続勤務し ている「非正規」職員は職制上の指導的地位はなくとも基幹的役割すら果たすにいたっ ている例も見られる。正規職員しか遂行しえない「特別の習熟,知識,技能または経験 を必要とする業務」はそう多くないであろう。結局このような区分は困難であり,相対 的かつ不明確な区分となりがちである。したがってその区分は任命権者の判断(裁量)

次第となりがちである。これでは任用と業務遂行に特別の資格を必要とするごく少数の 職務・業務を除いてほとんど適切な限定にはならない。裁判所の適切な限定を行おうと する意図にもかかわらず,このような評価・判定手法によっては「民主的かつ能率的運 営

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という意味を,公的な事務・業務が正規職員を中核として継続的に遂行可能か否か という点に矮小化する結果となりがちである。かかる判定基準では「非正規

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職員によ る人員確保を容認するだけであり,せいぜい期限付任用(あるいは,外部委託や派遣労 働者)による代替者を「安定的に」確保できる限度を超えるような正規職員の削減は許 されないというに過ぎないし,さらには現在の郵政事業「改革」のように職務構成を変 え業務を合理化し中核にいる正規職員人員を極小化する人事政策が実施される場合には 全くチェック機能を果たすことはできない。

単に運営コストを重視するのではなく,中長期的な公務遂行の質を担保することこそ がこの要件が設定された所以である。民主的かつ能率的運営という概念は,結局のとこ ろ時代の要請により内容が変動しやすい相対性の高い要件であり,単独では機能させる ことが困難をともなう。本来「民主的かつ能率的運営の制度的保障」は第三要件である 身分保障との関係では,第二要件実現が法目的ではあるがその前提(必要)条件として 第三要件がありという関係にある。「職員の雇用および勤務条件の十分な保障」が実現 されること,その主要部分が安定した雇用継続であり,これにより安心して職員が仕事 に励むこと,そしてこれにより民主的かつ能率的運営が達成されるという関連性が念頭 に置かれているからである。その意味ではその職員の任用形態に応じた最大限の雇用お よび勤務条件の保障がなされて初めて民主的かつ能率的運営が達成されるはずだからで ある。

八四

‑ 87  ‑ 23‑3・4‑256 (香法2004)

(10)

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(3)  第三要件 身分保障(雁用および勤務条件の十分な保障)について

本件とのかかわりで最大の問題であり争点であるのは雇用継続の保障である。いわゆ る「非常勤職員」(その大部分は日々雇用形態で2ヶ月以下程度の任用予定期間とする 非正規職員であり,勤務時間が正規職員と同じ場合と 1日あるいは 1週当たりの時間が 短い場合とがある)は一時的・臨時的な短期間雇用が制度の建前であるから, 2‑3回 を超える反復更新や少なくとも 1年を超えるような勤続は予定されない。第一要件が守 られていれば,制度的にはありえないはずの任用の反復更新がなされ,現実には 1年を 超える継続雇用が多数生じている。既に指摘したように郵便事業の場合の平均経験年数

は4年であり,若干の中断期間を置き,あるいは全く置かないで数年から時には十数年 間継続勤務している。人事院規則8‑12第74条により期間満了により当然退職とされ ているので,本件のような再任用拒否において矛盾が極大化することになる。

私的労働関係においては,周知のように最高裁判所は 2ヶ月の短期労働契約の反復し た当然更新の結果 1年を超えるような相当期間継続となっていた事例において,①あた かも期間の定めのない契約と異ならない状態で存在していたと認め,②雇い止めが実質 的に解雇の意思表示にあたるとしていわゆる「解雇法理」の類推適用を認め単なる契約 期間満了による雇い止めは許されないこと,③期間満了後においても従前の労働契約が 更新されたのと同様の法律関係となること,を認めている(東芝柳町工場事件最高裁第 ー小法廷判決昭和49年7月22日 民集28巻2号,同旨日立メデイコ事件最高裁第一 小法廷判決昭和61年 12月4日 労働判例486号)。さらに, 1年間の有期労働契約で,

所定労働時間の短い「パートタイム労働者」に対する経営悪化を理由とする雇い止めに つき十分な回避努力を求めた大阪地裁決定(三洋電機事件平成2年2月20日 労働法 律 旬 報1236号)等の存在が留意されるべきである。民間の場合も,「そもそも論」的に は民法上「いつにても解約できる」(原則として理由,時期を問わない)とされる「期 間の定めのない雇用」契約(正規従業員の労働契約)の解除につき,一般原則的な解雇 規制立法が存在しないにもかかわらず,最高裁判所は「使用者の解約権の行使も,それ が客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合に は,権利の濫用として無効になる」(日本食塩製造事件最高裁第二小法廷判決昭和50年 4月25日 労働法律旬報885号 ) と 判 示 し て こ れ が 定 着 し て い る 。 こ の よ う に 労 働 権 保障という憲法上の原理を重視して民法の明文を判例によって修正し労働関係解消の自 由(これも営業の自由という基本的人権でもある)を制限している点を十二分に留意し ておく必要がある。

23-3•4-255 (香法2004) ‑ 88 ‑

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自由で民主的な社会の労働法常識としてのIL0158号条約・同 166号 勧 告 お よ びEU 指令 (99/70/EC)。これらは短期雇用における使用者の屑用維持責任を定めたもので あるが,自由主義経済社会において短期雇用に普遍的に共通の問題点とその対処方向を 示したものであるから,本件期限付任用の適否判断において重要な示唆を与えているの で,その要点を示すこととした。

使用者の発意による雇用の終了に関する IL0158号条約2条3項は,公私を含むすべ ての経済部門の,すべての労働者に対して有期雇用が解雇制限を回避する目的で利用さ れることを防止する適当な措置を講ずべきことを定めており,同条項を受けて 166号勧 告3項(2)ではその具体例として 3点挙げている。①有期労働契約の採用は「作業の性質,

作業が行われる条件または労働者の利益」を考慮して合理的事由のある場合に限定する こと,②合理的事由のない場合は期間の定めのない契約とみなすこと,③合理性のない 有期契約を 1回または 2回更新した場合は期間の定めのない契約とみなすこと,である。

また,有期雇用に関する枠組み協約についてのEU指令は,期間の定めのない契約が 雇用の一般形態であることを確認したうえで有期契約更新の弊害除去および均等待遇原 則の適用を定めている。第5条は濫用防止措置としてつぎの3点のうちひとつ以上の措 置を加盟国に義務付けている。すなわち①契約更新を正当化する客観的・合理的理由を 定めること,②更新可能な最長期間の設定,③更新回数の限度設定,である。

いずれの文書も有期契約を採用するには,客観的合理的事由を有すること,更新回数 および/または最長期間を限定すること,を要件として定めており,違反する場合には,

期間の定めのない契約とみなすこと(転化)を義務づけている。

結論的には,任命権者と当該職員が明確な合意に基づき人事院規則・任用規定の建前 どおり 2ヶ月以内で任用更新なしを原則とし,数回にわたる反復更新がなされず,半年 以下の期間が設定され,いかなる場合でも 1年を超えない短期間の継続で確実に終了す るものであれば勤務条件保障・身分保障との矛盾は「少ない」あるいはほとんどないと 言えるから「適法」となる場合が多いと評価される。逆にいえば2回3回と反復更新後 あるいは6ヶ月程度を超えた時点での「当然退職」扱いは第三要件に反することになる 可能性があると解すべきである。いかなる場合でも 1年を超えることはできないことは 言うまでもない。

なお,本件のような「日々雇用」形態の「期限付任用」職員は,正規職員に比して勤 務条件において格段に低い水準しか保障されていない。現行制度上,期末勤勉手当など の諸手当や退職金,昇給さらには社会・労働保険の取り扱いなどに大きな格差がある。

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} ¥  

(12)

身分保障には処遇の均衡が含められるべきであるから,理念的には実績や能力評価に合 致した職務格付けを受け,労働時間に比例的な差異以外の不当な格差を生じしめない取 り扱いを受けるべきである。とりわけ短時間勤務の職員において期末手当や退職手当な ど著しい格差があり問題であるが,本件では原告が均等待遇の点を争っていないので問 題の指摘にとどめる。

(4)  三要件に適合する「日々雇用」形態の「期限付任用」の概要

以上の要点をまとめると,三要件に適合する「日々雇用」形態の「期限付任用」とは,

まず第一に一時的・臨時的な業務贔増大や短期間で廃止・終了する非恒常的業務であっ て,第二に任用の手続きや職員募集の観点から国公法60条臨時的任用および人事院規 則8‑12第15条の 2第2項各号所定の任用では手続きが煩雑であるなどで時間的に対 処できなかったり,任用事由が適切でなかったりする場合であって,第三に2‑3回以 上の反復更新がなされず,通算の任用期間が6ヶ月程度以内で,いかなる場合でも 1年 を超えないものであることが要件である。また「短時間」任用については,業務の間欠 性や業務量の時間帯変動への対処として必要かつ適切な場合という条件が付加されるべ

きであろう。

3  .  本件再任用拒否(雇い止め)の「違法」性

1 適法三要件に照らした本件原告らの労働関係の評価

従来の判例の大多数がそうであったように現行国家公務員法体系上形式的に矛盾なく 位置づけるとすれば,原告は正規の採用試験を経ていないという意味で非正規であり,

任用経過からは「期限付任用」で正規職員に比して短時間勤務という意味で「非常勤(短 時間勤務)」職員である。また国家公務員法2条6項で特別職以外はすべて一般職国家 公務員(職員)と位置づけられる。

しかしながら,既に検討してきたように最高裁判所および名古屋高等裁判所等の先行 判例の示した「期限付任用」が許容される三要件を本来的制度趣旨に照らし忠実に適用 した時,これまでの裁判所の三要件の具体的な解釈適用に極めて大きな欠陥があること が明らかになった。原告の従事していた業務は通常の日常的配達業務であり,明らかに

「一時的・臨時的な業務量増大や一定期間で廃止・終了する非恒常的業務」ではない。

また,任用の手続きや職員募集の観点から「国公法60条や人事院規則 8‑12第15条 の2第2項各号所定の任用では対処できなかったり適切でなかったりする場合」にも該

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(13)

当しない。少なくとも本件に係わる郵便事業においては,政府・郵政事業庁(現郵政公 社)自体が政策的・意図的に従来の国家公務員法の根幹,とりわけ身分保障を改変し,

正規職員の削減・非常勤職員による置き換えと合理化による業務改変により人件費およ び物件費コストを削減しようとするものである。本件原告の任用継続期間は約 10ヶ月 半と比較的短いのではあるが都合4回にわたって更新されていること,船橋東郵便局の 非常勤職員は全職員約500名中約250名と半数を占めまた 1年を超える継続勤務が実態 化していることが窺われること,郵政事業庁(現郵政公社)の基本方針が事実上の非常 勤職員による正規職員の置き換えの促進を含むという諸事情とを合わせ考慮すると,法 令規則が想定するのとは異なり恒常的かつ継続的な正規職員を中心とする要員不足を補 うために原告は採用され,期間の定めは形式的なものとなっており同様の任用を順次更 新することの暗黙の了解が当事者双方にあったと推認される。たまたま原告のミスを契 機に局長は更新拒絶の意思表示(退職予告通知書交付)を行ったのである。本件任用そ のものは,期限付任用を利用すべき特段の事情を欠くまま恒常的かつ継続的要員不足を 補うために用いられ,反復更新されたこともあって期間の定めは実態的には形式化して いたのであるから三要件に適合する「日々雇用」形態の「期限付任用」とは到底言えな い。したがって憲法二七条と国家公務員法 1条および附則 13条の趣旨に反し,その違 法性は免れない。

2 「違法」状態と責任の所在

任命権者が法令に基づき与えられた人員の範囲でかつ適法な人事労務管理システムを 遵守することで十全な業務遂行ができない場合の責任は,本来制度枠組みを与えた政 府・国会が負うべきもので,最終的には主権者およびサービス享受者としての国民もそ の結果としての不都合を甘受すべき性質の問題である。総務省郵政事業庁(現郵政公社)

は,本件のような期限付任用につき本来あるべき三要件に照らせば明らかに違法な「期 限付任用」の利用を前提として要員管理を行っていたし,今も行っている。郵政事業改 革においてはむしろ積極的に現行公務員法制度の根幹を「破壊」しようとしているよう

に見える。総休としての立法府・国会も事実上「黙認」あるいは「放置」している。そ のような構造のなかで,末端の任命権者である船橋東郵便局長が全く「違法」であると の認識もなく,むしろ政府の施策に則って人事管理を推し進めてきたのは,原告らにとっ てはもちろんのこと,局長にとっても不幸なことといわなければならない。しかしなが ら,客観的には同局長が自らの権限の範囲で本件の違法な任用を続けてきたことは明ら かであり,法的には責任がなかったということはできない。他方で,原告は,本件違法 な任用により不当な利益を得ていたわけではなく,当然の労働の対価を受けていたにす

八 〇

‑ 91  ‑ 23-3•4-252 (香法2004)

(14)

ぎない。安易な人事管理から派生した不利益を決して任用(採用)される労働者側に負 わせるべきではない。

七 九

3 責任のあり方(「違法」状態への具体的対応)について

解決にあたっては,まず第一に,被告がクリーンハンドの法原則に反して自らが意図 的につくりだした「違法状態」の不利益を,専ら他方当事者である原告の犠牲によって 解決すべきとの主張は許されるべきではない。したがって第二に,この違法状態は,任 命権者の適正な任用を行うべき義務と権限の範囲内においてもっぱら原告の不利益を生

じさせない方法と措置で解消すべき,ということになる。

したがって本件については,まず任用更新拒否(雇い止め)がなされなければ任用更 新されたであろう状態にあったことが認められるべきである。他方で船橋東郵便局長は 一種の権限(権利)濫用として本件任用更新拒否を行い得ないということになる。原告 らの身分保障(雇用継続の権利)の要請に照らし継続的勤務関係状態の下で「任命権者 が別段の措置(雇い止め)をすることができ」ず,「従前の任用が更新されたのと同様 の法律関係になった」という結論を下すべきである。

念のため付言すれば,本件のような違法状態の場合は任用関係の解消が一切できない というのではなく,いわゆる整理解雇の四要件が満たされるような場合あるいは非常勤 職 員 本 人 が 職 務 を 適 切 に 果 た せ な い あ る い は 非 違 行 為 の あ っ た 場 合 に は 国 家 公 務 員 法 78条4号 に 準 じ て 再 任 用 拒 否 ( 雇 い 止 め ) が 適 法 に な し う る も の と 考 え る 。 本 件 事 実 関係に照らせば,到底いわゆる整理解雇の四要件のすべてを満たした再任用拒否(雇い 止め)とは認められないと思われる。

なお,本意見書の見解では,任命権者の再任用の「処分(意思表示)」がなされない 場合であっても実質的に任用の継続を認める。この点につき補足をしておく。ほとんど の裁判所の依拠する「通説的」行政法理論とは異なり,下井康史「期限付任用公務員の 再任用拒否」(北大法学論集41巻3号)の見解に同調するからである。同氏は,行政行 為の期限には厳格に設定されている期限と更新を予定している期限があり,職員が再任 用につき一定程度の期待をもつことが無理からぬ状況が客観的に認められ,そのような 期待が保護に値すると認められるような場合,当該期限の更新を予定していると認める ことができるとする。また現行制度上も「全く」例外が許されていないわけではなく,

例えば人事院規則自体が,「日々雇用」の更新について,「職員が引き続き勤務をしてい ることを任命権者が知りながら別段の措置をしないときは,従前の任用は,同一の条件 をもつて更新されたものとする」(人事院規則8‑12第74条2項)と定めているのであ る。これは 1日という期限到来により当該任用行為は当然効力を失うにもかかわらず,

23-3•4-251 (香法2004) ‑ 92  ‑

(15)

更新を予定している。実態的には任用予定期間杓の日々の更新を省略する趣旨であると はいえ,任用は重要な法律行為であるからとして様式性や法令の拘束性を強調する人事 院自身が「その都度」「明確な」意思表示をしないことを認めている重要な事例である。

さらに言えば山本吉人「官公労働における臨時職員の法的地位」季刊労働法 117号97 頁が指摘するように,昭和20年代から 50年代までの歴史的変遷のなかでは『裁判例の いう任用の厳格性も過去において行政,政治の動向で簡単に左右されているjという事 実が見られるからでもある。

4 .   結 論

本意見書の見解では,任命権者である船橋東郵便局長側からは再任用の拒絶はできな いので,原告非常勤職員との間では,「従前の任用が継続されたのと同様の法律関係」

が維持されることになる。

なお,本意見書は違法行為の転換の法理は採用しなかったが,本意見書の立場から排 除されるべきものとは考えていない。いずれも広い意味で,当事者間の信義と不利益を こうむるものの利益を考慮する点で共通だからである。

最後に被告は原告の勤務状況を総合的に判断して任用更新を行わなかったと主張する が,本件のように一時的・臨時的ではないという意味で恒常的職務に継続して従事する 期限付任用職員の雇い止めの理由は,たとえ短時間勤務であっても,いわば準常勤的な 身分保障がふさわしいから,正規職員の免職に準じて相当な事由がある場合に限るべき であろう。

以 上

七八

‑ 93  ‑ 23-3•4-250 (香法2004)

参照

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