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空間点分布を考慮した コンビニエンスストアの立地モデルの研究

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中央大学大学院理工学研究科情報工学専攻 修士論文

空間点分布を考慮した 

コンビニエンスストアの立地モデルの研究 

A Study of Locational Model for Convenience Stores Considering Spatial Point Patterns

小池  光太郎 Kohtaro KOIKE 学籍番号  05N8100008I 指導教員    田口 東 教授

2007 年 3 月

(2)

概要 

  コンビニエンスストア(以下,コンビニ)を経営するにあたり,コンビニの立地は利益の 最大化を実現するためには重要な問題である.立地に適している場所,すなわち多くの利用 客が訪れるような場所にコンビニを建てれば,商品や設備等の充実にもよるが,利用客が購 買する機会が多くなる.購買の機会が多ければ,利益もそれだけ多く得られる可能性が高い.

よって,コンビニ各社は上述した内容を実現するために,できるだけ立地に適している場所を 探し,店舗を建てていると考えられる. 

そこで,本研究では,コンビニの立地に適している要因を仮定して,コンビニ各店舗が立 地に適している場所を定めるための立地モデルを構築する.そして,立地モデルによる店舗の 立地と実際のコンビニの立地がどの程度類似しているか調べるために,各店舗の立地を点で 表し,立地モデルにより得られるコンビニの分布と実際のコンビニの分布がどの程度類似し ているか評価する.その後,立地モデルにより得られるコンビニの分布から立地特性を考察 する. 

  まず,実際に立地しているコンビニと施設や人口との近接性から,コンビニの立地に適す る場所を考察する. 

次に,コンビニ各店舗の立地を定めるために,立地に適する場所を,カーネル密度推定を 用いたポテンシャルモデルによって表現する.このポテンシャルモデルによって,コンビニ 各店舗を立地に適する場所へ移動させる. 

  そして,立地モデルにより得られた分布に対して,セルカウント法や最小費用完全マッチ ングを適用し,実際のコンビニの分布との類似性を評価する. 

最後に,各ポテンシャルが占める割合を各要因の影響力とみなし,影響力から立地特性を 考察する. 

キーワード:点分布,ポテンシャルモデル,カーネル密度推定,立地特性 

(3)

 

目次 

 

1章  序論···1

1.1  研究の背景···1

1.2  研究の目的···2

2章  コンビニエンスストアの立地傾向···4

2.1  コンビニエンスストアに適する立地···4

2.2  地図データから見た立地傾向···8

  2.2.1  使用データ···8

  2.2.2  対象地域···10

  2.2.3  コンビニエンスストアの立地傾向の分析···13

3章  立地モデル···18

3.1  カーネル密度推定···19

  3.1.1  点を対象とするカーネル密度推定···19

  3.1.2  正規化を行わないカーネル密度推定···21

3.2  線分を対象とするカーネル密度推定···23

  3.2.1  点と線分の距離···23

  3.2.2  線分を対象とするカーネル密度推定···24

3.3  ポテンシャルの形成···25

  3.3.1  引力ポテンシャルの形成···26

  3.3.2  反発力ポテンシャルの形成···29

  3.3.3  ポテンシャルの結合···30

3.4  ポテンシャル場における点の移動方法···30

  3.4.1  最急降下法···30

  3.4.2  立地モデルの終了条件···32

4章  地域への適用···33

4.1  計算機実験···33

  4.1.1  実験の設定···33

  4.1.2  パラメータの決定···34

  4.1.3  実験のフローチャート···35

(4)

  4.1.4  立地モデルの頑健性···36

4.2  評価方法···37

  4.2.1  セルカウント法···37

  4.2.2  最小費用完全マッチング···38

4.3  実験結果···41

  4.3.1  ポテンシャルの影響力···41

  4.3.2  立川・八王子における立地特性···43

  4.3.3  横浜における立地特性···47

  4.3.4  大宮における立地特性···51

  4.3.5  地域間における立地特性の比較···55

5章  結論···57

5.1  まとめ···57

5.2  今後の課題···57

謝辞···59

参考文献···60

(5)

1 章 

序論   

1.1   研究の背景 

  コンビニエンスストア(以下,コンビニ)を経営するにあたり,立地は利益の最大化を実 現するためには重要な問題である.立地に適している場所にコンビニを建てれば,一般的に 利用客が訪れる回数は増え,商品や設備等の充実にもよるが,購買する機会も多くなる.逆 に,立地に適していない場所にコンビニを建てると,利用客が訪れる回数は減り,購買する 機会も少なくなる.すなわち,商品や設備が充実していても,利用客が訪れなければ利益が 得られない.よって,立地の良し悪しによって店舗の売り上げが左右されると言っても過言 ではない.

日本にコンビニが誕生してから30年が経過している.その間に,コンビニは全国各地に広 がっている.マクロに見てみると,セブンイレブン・ジャパンやローソンなどは全国展開を しており,ファミリーマートは主要都市,サークルKサンクスは愛知県での出店が目立つ(図 1.1).一方,ミクロでは,地域によって異なる要因でコンビニが立地すると考えられる.例 えば,ビジネス街では多くの人が働いている場所,郊外では人や車などの通りが多い場所,

そして観光地は有名な寺や神社の付近などが挙げられる.

  また,立地に関する研究は,[15]や対象がコンビニではないが[5]などが挙げられる.これ らは,既に実際に立地している店舗の分布に対して,“どのように分布しているのか”という 事後の研究であり,その一方で,“何故そのような分布になったのか”という事前の問題は取 り扱っていない.このことから,分布を成している要因を仮定し,その要因に基づいて得ら れる分布が実際の分布を再現できているか調べることは興味深い.

(6)

0 400km セブンイレブン

(店)

1400 1200 1000  800  600  400  200

0 400km

ローソン

(店)

1400 1200 1000  800  600  400  200

0 400km

ファミリーマート

(店)

1400 1200 1000  800  600  400  200

0 400km

サークルK・サンクス

(店)

1400 1200 1000  800  600  400  200

平成18年9月末現在 総店舗数:11,454店 平成18年2月末現在 総店舗数:8,366店

平成18年9月末現在 総店舗数:6,839店 平成18年9月末現在 総店舗数:6,300店

0 400km

セブンイレブン

(店)

1400 1200 1000  800  600  400  200

0 400km

ローソン

(店)

1400 1200 1000  800  600  400  200

0 400km

ファミリーマート

(店)

1400 1200 1000  800  600  400  200

0 400km

サークルK・サンクス

(店)

1400 1200 1000  800  600  400  200

平成18年9月末現在 総店舗数:11,454店 平成18年2月末現在 総店舗数:8,366店

平成18年9月末現在 総店舗数:6,839店 平成18年9月末現在 総店舗数:6,300店

図1.1  全国におけるコンビニの店舗数

1.2   研究の目的

本研究では,実際に立地しているコンビニの分布に対して,“どのように分布している”で はなく,“このように分布しているのは何故”という視点で考える.すなわち,分布を成して いる要因を考え,その要因に基づいてコンビニ各店舗の立地を定めるモデルを構築し,その モデルによって実際のコンビニ各店舗の分布を再現することを目的とする.まず,モデルに 対する4つの仮定を述べる.1つ目は,立地候補は連続平面であると仮定する.2つ目は,立 地は人や道路など,周囲の影響によって定められると仮定する.3 つ目は,コンビニ各店舗 の立地を時系列に扱うのではなく,一斉に店舗が建てられるものとする.4 つ目は,セブン イレブン・ジャパンやローソンのようにチェーン別に考えるのではなく,全ての店舗を同列 に扱う.以上の 4つの仮定を考慮して構築する立地モデルによって,コンビニ各店舗を立地 に適している場所に惹き付けることにより立地を定める.そして,立地を定めることによっ て得られる分布と実際に立地しているコンビニの分布は,どの程度類似しているか評価する ことによって再現できているか検証する.さらに,仮定した要因に基づいて,地域ごとにコ ンビニの立地特性を考察する.また,地域間で立地特性を比較する.

(7)

  本論文の構成として,まず第 2 章で立地に適する場所を,コンビニと施設,そして人口と の近接性から考察する.続く第3章では,第2章での立地に適する場所の考察を基に,コン ビニの立地を定めるための立地モデルについて提案する.コンビニ各店舗が立地に適する場 所を定めるように,立地に適する場所をカーネル密度推定によるポテンシャルモデルで表現 する.立地に適する場所のポテンシャル値を大きくして,各店舗がポテンシャル値の大きい 場所を立地と定めるようにする.そして,第4章では,第3章で提案する立地モデルで得ら れる分布に対して,実際のコンビニの分布とどの程度類似しているか評価する.そのうえで,

地域における立地特性の考察,そして地域間における立地特性の比較を行う.

(8)

2

コンビニエンスストアの立地傾向   

コンビニ各社はコンビニを出店する際に,無計画に立地を定めるのではなく,戦略に従っ て立地を定めている.その戦略は会社ごとで異なるであろうし,1 つの会社内でも様々な戦 略が存在すると考えられる.例えば,駅前や住宅街,オフィス街などの人が多く集まる場所 や,配送センターから商品を配送するためのコストをできるだけ抑えるような場所等が挙げ られる.他にもフランチャイズチェーン方式による加盟店や競合者(同業者,スーパースト ア,デパート等)の存在も考えられる.また,全国展開を図るために広域に出店を行うか,

もしくは特定した地域のみへの集中出店を行い,限定的ではあるが,その地域での知名度を 高めるなどの戦略が挙げられる[7].

本章では,簡潔ではあるが,立地傾向をチェーン別で考えずに,全ての店舗を同列に扱う ことによって,コンビニの立地傾向を分析する.そして,立地に影響を及ぼすと思われる要 因を考察する.

2.1 コンビニエンスストアに適する立地 

本節は[6]に準じて述べる.コンビニは多くの小売店と同様に,出店に適する立地と適さな い立地が存在する.適地とされる立地には,いくつかのポイントが挙げられる.

①動線

  日本の場合,コンビニの利用客は来店手段として自動車,もしくは徒歩で訪れる.そして 利用客は平均して,自動車利用と徒歩の比率が3対 7と言われている.幹線道路に面したフ リースタンディングの店舗は別として,徒歩客が入店しやすい立地が適切とされる.その際,

自宅→店舗→目的地,あるいは目的地→店舗→目的地,というように,人が移動する動線に 沿った場所が最適である.

②商圏人口

  コンビニが健全経営を行うには,一店あたり2,000人から3,000人の商圏人口が必要であ る.一方,コンビニの利用客は,家あるいは勤務地から500m以内,都心部では300m以内 に立地する店舗を利用するのが一般的である.つまり,コンビニを健全に経営するには,店

(9)

舗を中心とする半径300mから500m以内に,2,000人から3,000人が住居あるいは勤務し ている必要がある(図2.1).

半径300mから 500m以内

2,000人から3,000人が住 居または勤務

コンビニ

半径300mから 500m以内

2,000人から3,000人が住 居または勤務

半径300mから 500m以内

2,000人から3,000人が住 居または勤務

コンビニ

図2.1  理想的な商圏(徒歩客中心の場合)

③道路状況

  人,自動車とも,移動速度が緩む場所が適地とされる.

坂      :車の場合,途中より頂上,下りより上り車線の方が有利とされる.

四つ角        :通行量の多い道沿いの方が,また,交差点手前より越えた所の方が有利と される.

駅への上り下り:徒歩客の場合,駅に向かう右側より,駅から遠ざかる際の右側の店舗が有 利とされる.

通行量        :自動車の場合,通行量が極端に多いと店舗に立ち寄るのが困難となり,か えって不利となる.

④施設との近接

  駅,教育機関,勤務地,宿泊施設,公共施設,集積施設,観光スポットなどの近接地は一 般的に適地とされる.ただし,前面道路が利用者の移動経路とずれている場合は,適地とは 言えない.

⑤購買層

  コンビニは,15 歳から 29 歳の単身者を中心に,小学生から高齢者まで幅広い顧客が利用 している.しかし,所得階層別に見ると,中所得者層が主体となっており,高・低所得者層 の利用が少ないと言われている.そのため,中所得者層が多い住宅街,ビジネス街が適地と なる.新興住宅地などで,住宅ローンを抱えている世帯は,コンビニの利用が減る傾向にあ る.

(10)

⑥ドミナント出店戦略との関係

  ドミナント出店とは,ある一定の地域に店舗を集中して出店することを言う.ドミナント

(Dominant)とは,“支配的な”,“優勢な”という意味を持つ.この場合は,ある地域に集

中的に出店することでシェアを固め,競合チェーンがその地域に進出できないように図るこ とを指す.

  ドミナント戦略では,出店密度の兼ね合いが重要課題となる.店舗の集中は業務の効率を 上げるが,顧客の奪い合いにつながるリスクも伴う.現在,多くの都市でコンビニの出店密 度が飽和に近づいたとされており,加盟店と本部の利益追求のバランスの取り方がコンビニ 本部の大きな課題となっている.

以上をまとめると,コンビニの立地は,徒歩客が目的地に移動する動線上にあり,店舗を 中心として半径300mから500m以内に2,000人から3,000人の中所得者層が住居または勤 務していて,近接する道路では車のスピードが緩み,公共施設の利用者の移動経路上に立地 することが適している.コンビニの立地に関して適地,不適地とされるポイントを表 2.1 と 表2.2に示す.

(11)

表2.1  立地に適する条件

動 線 

商 圏 人 口 

道 路 状 況 

施 設 と の 近 接 

購 買 層 

競 合 状 態

適地の条件 

○      ◎            商店街と街道が交差する角地

○      ○            電鉄駅前,バスターミナルなどの交通の要衝

        ○      ○  ○ 団地周辺でスーパーや寄り合い市場のない地域

○          ○        飲料店,風俗営業,ホテルなどの集会地入り口付近

○  ○          ○    大都市の下町で,高速道路,線路,掘り割りなどに隔離された土地

    ○          ○  ○ 大都市の下町で,臨海地域などの住宅再開発事業が進められている土地

    ○      ○  ○    終夜営業の工業団地,卸売市場,情報産業の周辺,およびそこへの通勤路

○  ○          ○    学生アパート,寮,下宿の多い場所

○          ○  ○    各種学校の通学路にあたる場所

            ○        神社・仏閣の門前町の入り口付近

            ○        球場,運動場,文化施設,遊園地などの入り口付近

            ○        海水浴場,スキー場の入り口付近

    ○          ○    都心部で,官公庁,企業,非食品大型店などが密集している場所

        ○            13万〜4万台の車通りのある国道筋で,10トン車が数台駐車可能な場所

○      ○            農村部で,各集落を結ぶ道路が交差集結する場所

○      ○            山村部で,各谷間の集落から町に出てくる道路が集結する場所

    ○          ○  ○ 既存のコンビニが独占していて,坪効率2万円以上あげている店の近く

固定購買力(商圏内住民の購買力)と流動購買力(ドライバーなどの行き

○  ○          ○   

ずり客の購買力)がバランス良く均衡している場所

(◎:非常に適している,○:適している)

(12)

表2.2  立地に適さない条件

動 線 

商 圏 人 口 

道 路 状 況 

施 設 と の 近 接 

購 買 層 

競 合 状 態 

不適地の条件 

×              ×      郊外の小団地周辺で,流動購買力がほとんど期待できない場所 

            △          一流商店街,一級駅前など 

                    ×  豪邸,高級マンション街で,ご用聞きやデパートの外商が出入りしている地域 

                ×      一見高級住宅街だが,住宅ローンや子供の学費に追われている地域 

                ×      エンゲル係数の高い低所得層住宅地 

                    ×  長時間営業のミニスーパー,寄合市場,強力な専業店と真っ向から競合する場所

                    ×  酒・タバコのある有力コンビニチェーンと真っ向から競合する場所 

    ×          ×      人口減少の市町村エリア 

    ×          ×      不況産業の企業城下町 

                ×      環境条件が悪化しつつあるか,悪化が予想される地域 

(△:あまり適していない,×:適していない)

2.2 地図データから見た立地傾向 

  本節では,実際のコンビニの立地傾向の分析を行う.そのためには,ある地域におけるコ ンビニの店舗数や空間情報を把握する必要がある.コンビニ以外の施設も同様である.また,

2.1節より,立地にはコンビニや施設だけではなく,人口も影響を及ぼしている.よって,あ る地域における人口分布も把握する必要がある.

2.2.1 項では,本研究で使用する地図データと人口データについて説明する.次に,2.2.2

項では本研究で用いる対象地域について説明し,2.2.3項で対象地域を用いてコンビニの立地 傾向の分析を行う.

2.2.1 使用データ 

MAPPLE10000デジタル地図データ(昭文社)

昭文社MAPPLE10000とは,1/2500から1/10000地形図をベースとし,独自調査に基 づいて作成された紙地図のことである.そして,昭文社MAPPLE10000デジタル地図データ

(以下,MAPPLE10000)は,全国約1,200市町村の主要部・主要観光都市の地図データベ

ースである.

(13)

MAPPLE10000は,大別して,線,ポリゴン,シンボル,注記,グループ線により構成さ れており,これらをオブジェクトタイプと称している.各オブジェクトタイプは,図式分類 コードにより細かく分類されている.以下では,オブジェクトタイプについての詳細を述べ る.

オブジェクトタイプ

①線

  線は連続した線分の集まりである.行政界や道路中心線など,境界や線上地物形状を表現 するとときに用いられる.

②ポリゴン

ポリゴンは閉じた線とその内部を指す.建物や公園,湖沼など,範囲や領域を表現すると きに用いられる.

③注記

注記は画面に表記される文字列(ラベル)とシンボルのグループ図形である.点(ポイン ト)要素としても利用可能である.

④シンボル

地図上の一点を表す点(ポイント)データである.トンネル記号・信号機など点状地物の 位置と角度を表す.

⑤グループ線

道路の路線情報を線の属性として保有している.

  本研究では,点(ポイント)データとして,注記データからコンビニ,鉄道駅,ホテル・

旅館,アパート・マンション,スーパーストア,バス停を用いる.線(ライン)データとし て,鉄道データと道路データを用いる.鉄道はJR線,私鉄,地下鉄,新交通・モノレール・

路面電車を指し,道路は国道,都道府県道を指す.以降,これらを“鉄道”と“道路”とす る.また,これらのデータは,施設ごとの規模の大小や,国道と都道府県道などの違いは考 慮せず,駅は駅,道路は道路とする.

平成12年国勢調査

  国勢調査は,日本国の人口,世帯,産業構造等の実態を把握して,国及び地方公共団体の 各種行政施策の基礎資料を得ることを目的として行われる国の最も基本的な統計調査である [12].調査は大正9年以来5年毎に実施されており,平成12年国勢調査はその17回目にあ

(14)

たる.

  対象者は,調査時に本邦内に常住している者について行われている.“常住している者”と は,一部例外を除き,当該住居に3 ヶ月以上にわたって住んでいるか,又は住むことになっ ている者を指す.

本研究では,統計GISプラザ(URL:http://gisplaza.stat.go.jp/GISPlaza/を参照)から平 成12年国勢調査のダウンロードが可能なデータのうち,総数及び世帯総数を使用する.この データは夜間人口に相当する.また,データは町丁目単位で集計されている.しかし,町丁 目ごとで面積と形状がそれぞれ異なるため,任意の範囲における人口を推計するときに面積 と形状に依存する場合がある.そこで,本研究では面積や形状に依存せずに人口を推計でき るように,人口が正方格子状に分布していると仮定する.そして,人口を正方格子状に分布 させるために,町丁目単位で集計されたデータを面積按分法により 300m の正方メッシュの データに変換する.すなわち,メッシュ代表点が正方格子状に分布して,メッシュ内に含ま れる人口はすべてメッシュ代表点上に存在する,とみなす(図2.2).

p12p8p4p3

p7

p11p10

p6p2

p5p1

p9

正方メッシュ単位 x人

町丁目単位 y人

w人 z人

v人

p12p8p4p3

p7

p11p10

p6p2

p5p1

p9

正方メッシュ単位 p12

p8p4p3

p7

p11p10

p6p2

p5p1

p9

正方メッシュ単位 x人

町丁目単位 y人

w人 z人

v人 x人

町丁目単位 y人

w人 z人

v人

図2.2  人口データの形式変換

2.2.2 対象地域 

本研究で扱う対象地域について述べる.対象地域は立川・八王子,横浜,大宮の 3地域と する.都心を選択しなかったのは,都心は他の地域に比べて人口や駅などが極めて多い,す なわち,コンビニの立地に適している場所がとても多いため,領域全体にコンビニが立地し て,分布の特徴を見出すのが難しいからである.よって,本研究では都心からおよそ 20km から30km離れた3地域を選択している.

領域はいずれも縦15,000m,横12,000mとする.各対象地域におけるコンビニの店舗数,

総人口数,道路リンク数,リンク総延長を表 2.3 に示す.各地域のコンビニの分布,鉄道,

道路を表示したものを図2.3a から図2.5a に示す.各図の点はコンビニ,緑色の線は鉄道,

青色の線は道路を示す.また,300m正方メッシュによる人口分布を図2.3bから図2.5bに示 す.図2.3は立川・八王子の分布,図2.4は横浜の分布,図2.5は大宮の分布を示す.

(15)

表2.3  対象地域のコンビニ店舗数,総人口数,道路リンク数   コンビニ店舗数  総人口数  道路リンク数  リンク総延長(m)  立川・八王子  359 927,233 7,327 391,951.6

横浜  498 1,273,261 6,119 352,355.0

大宮  335 1,071,973 7,227 357,861.6

  まず,立川・八王子について述べる.図2.3aを見ると,立川駅(中央右)と八王子駅(左 下)周辺にコンビニが集まっていることが確認できる.図2.3bを見ると,人口は,立川,八 王子を中心に,鉄道や道路沿いに多く集まっていることが分かる.

次に,横浜について述べる.図2.4aを見ると,横浜駅(中央上)と桜木町・関内周辺(中 央右)にコンビニが集まっていることが確認できる.特に,桜木町・関内周辺に多く集まっ ている.図 2.4b を見ると,人口は石川町や伊勢佐木長者町周辺にかなり多く集まっている.

これは,周辺には高層マンションが多く建てられ,そこに多くの人が住居しているためと思 われる.

最後に,大宮について述べる.図2.5aを見ると,大宮駅周辺(中央上)にコンビニの凝集 が見られる.図2.5bを見ると,人口は,鉄道沿いに大宮から南側にかけて,主に武蔵浦和周 辺(中央下)に多く集まっている.また,どの地域でも,国道や都道府県道の主要な道路沿 いにほとんどのコンビニが立地していることが見て分かる.

立川

八王子

立川

八王子

 

(a)コンビニの分布     (b)人口分布 図2.3  立川・八王子

(16)

桜木町 横浜

石川町 関内

伊勢左木長者町 桜木町 横浜

石川町 関内

伊勢左木長者町

 

(a)コンビニの分布     (b)人口分布 図2.4  横浜

大宮

武蔵浦和

大宮 大宮

武蔵浦和

 

(a)コンビニの分布     (b)人口分布 図2.5  大宮

(17)

2.2.3 コンビニエンスストアの立地傾向の分析 

  本項では,2.2.1項で説明した使用データを用いて,コンビニの立地傾向を2つの視点から 分析する.1 つ目は,各施設の周辺に立地するコンビニの密度について調べ,コンビニの立 地に影響を及ぼしていると思われる施設を考察する.2 つ目は,コンビニと各施設の周辺に 住居している人口密度について調べ,施設周辺で人口が多く集まっている場所を考察する.

各施設とは,MAPPLE10000 から入手した鉄道駅,ホテル・旅館,アパート・マンション,

スーパーストア,バス停の 5 つを指す.2 つの分析結果を基にして,コンビニの立地に影響 を及ぼす要因を考察する.ここでは,一例として立川・八王子のデータを扱う.表 2.4 にコ ンビニと各施設の総数を示す.

表2.4  コンビニと各施設の総数

施設  総数 

コンビニ  359

駅  53

ホテル・旅館  33

アパート・マンション 2,183 スーパーストア  134

バス停  920

各施設におけるコンビニの点密度 

  各施設を中心とし,その施設の周辺に立地するコンビニの点密度を調べる.点密度は,単 位面積あたりに存在するコンビニの店舗数を意味する.この点密度から,コンビニの立地に 影響を及ぼしていると思われる施設を考察する.

[1]より,人の分速を80mと仮定する.各施設を中心として,半径0mから半径400mの間 に 80mの区間を設ける.すなわち,半径0m以上から半径80m未満を徒歩1分圏内,半径 80m以上から半径160m未満を徒歩 2分圏内,・・・,半径320m以上から半径400m未満を 徒歩 5 分圏内として 5 つの区間に分ける(図2.6).ここでは,徒歩による移動のみを考え,

車による移動は考慮しない.そして,各区間内に立地しているコンビニの店舗数を求め,各 区間におけるコンビニの点密度を調べる.また,各区間に立地するコンビニの店舗数を求め るとき,コンビニの重複は許していない.例えば,駅 において徒歩1分圏内にコンビニC が立地しているとき,駅 でコンビニ が同じく徒歩1分圏内に立地していてもカウントし ない.また,駅 において徒歩1分圏内にコンビニCが立地している一方で,駅 において 徒歩2分圏内にコンビニ が立地している場合は,コンビニ は駅 の徒歩1分圏内に立地 している,とみなす.なお,各区間の面積は,施設からの等時間圏域が重なり合い,正確に 算出することが難しいので,領域内に正方格子点を発生させることにより推定する.具体的 には,領域内に正方格子点を10m刻みで発生させ,各区間内に含まれる格子点を数え上げる

Si

Sj C

Si Sj

C C Si

(18)

ことにより面積を推定する.図2.7に分析結果を示す.図2.8には各施設の分布を示す.(a) が駅,(b)がホテル・旅館,(c)がアパート・マンション,(d)がバス停の分布を示す.

徒歩1分圏内 徒歩2分圏内 徒歩3分圏内 徒歩4分圏内 徒歩5分圏内 徒歩1分圏内 徒歩2分圏内 徒歩3分圏内 徒歩4分圏内 徒歩5分圏内 徒歩1分圏内 徒歩2分圏内 徒歩3分圏内 徒歩4分圏内 徒歩5分圏内

図2.6  徒歩1分圏内から徒歩5分圏内に区分けした5つの区間

0.0E+00 5.0E-06 1.0E-05 1.5E-05 2.0E-05

0m〜80m 80m〜160m 160m〜240m 240m〜320m 320m〜400m 施設からの距離(m)

コンビニの点密度(点/  )

ホテル・旅館

アパート・マンション スーパーストア バス停

m2

0.0E+00 5.0E-06 1.0E-05 1.5E-05 2.0E-05

0m〜80m 80m〜160m 160m〜240m 240m〜320m 320m〜400m 施設からの距離(m)

コンビニの点密度(点/  )

ホテル・旅館

アパート・マンション スーパーストア バス停

m2

図2.7  立川・八王子での各施設におけるコンビニの点密度

(19)

 

(a)駅の分布       (b)ホテル・旅館の分布

 

(c)アパート・マンションの分布   (d)バス停の分布 図2.8  立川・八王子における属性の分布

  図 2.7 を見ると,全体的に各施設とも距離が遠くなるにつれて,コンビニの点密度が減少 していることが分かる.このことから,コンビニは施設に近い領域に多く立地していること が分かる.

  駅,ホテル・旅館におけるコンビニの点密度が他の施設と比べて高いのは,駅,ホテル・

旅館の数や立地が影響しているためと思われる.立地に関しては,駅は,多くの人々が通勤

(20)

や通学等の手段でほぼ毎日訪れる.ホテル・旅館は,図 2.8aと図 2.8bを見ると,立川・八 王子という地域には立川駅,八王子駅周辺に立地するホテルがほとんどを占めている.図2.3a より,立川駅,八王子駅周辺にはコンビニが多く集まっているので,点密度も高くなること が分かる.よって,ホテル・旅館がコンビニを惹き付けるというよりも,ホテル・旅館が立 川駅と八王子駅の影響を受けて立地しているため,結果的に点密度が高いと思われる.実際 は,コンビニの立地は駅による影響の方が強いと思われる.

  スーパーストアは唯一,徒歩2分圏内のコンビニの点密度が徒歩1分圏内の点密度に比べ て増加している.これは,スーパーストアはコンビニの競合者であるから,互いが隣り合っ て立地する,という状況をできるだけ避けようとしていると思われる.しかし,徒歩 3 分以 上の区間では,点密度が減少している.

アパート・マンションやバス停は,他の施設と比べて数が圧倒的に多く,図2.8cと図2.8d を見ると分布は領域全体に広がっている.よって,周辺にコンビニが立地していないような 場所にもアパート・マンションやバス停が立地しているので,点密度が相対的に小さいと推 測される.ただし,減少する割合は他の属性と比べて小さい.

以上より,駅やアパート・マンションのように多くの人が存在する,または訪れるような 場所がコンビニの立地に影響を及ぼしていると推測される.

コンビニと各施設における人口密度 

  コンビニと各施設を中心としたときの周辺の人口密度を調べる.人口密度とコンビニ,施 設の位置関係から,コンビニの立地に影響を及ぼすと思われる人口が多く集まっている場所 を調べる.

区間は,コンビニの点密度を調べたときと同様にして,図2.6のように80m刻みで5つの 区間に分ける.そして,各区間内に含まれる人口データのメッシュ代表点を調べ,そのメッ シュ代表点が含む人口の総数を求める.各区間内の人口の総数から人口密度を求める.また,

各区間におけるメッシュ代表点の重複は,コンビニの店舗数を調べるときと同様に,許して いない.各区間の面積は,コンビニの点密度を調べたときと同様にして,領域内に10m刻み で正方格子点を発生させることによって推定する.なお,80m刻みの区間に対して,人口デ ータが300m正方メッシュは大きいので,ここでは20m正方メッシュを用いる.分析結果を 図2.9に示す.

(21)

0.000 0.002 0.004 0.006 0.008 0.010

0m〜80m 80m〜160m 160m〜240m 240m〜320m 320m〜400m 施設からの距離(m)

単位面積あたりの人口密度(人/  )

ホテル・旅館

アパート・マンション スーパーストア

バス停 コンビニ

m2

0.000 0.002 0.004 0.006 0.008 0.010

0m〜80m 80m〜160m 160m〜240m 240m〜320m 320m〜400m 施設からの距離(m)

単位面積あたりの人口密度(人/  )

ホテル・旅館

アパート・マンション スーパーストア

バス停 コンビニ

m2

図2.9  立川・八王子でのコンビニと各属性における人口密度

  図 2.9 を見ると,ホテル・旅館を除いて,距離が遠くなるにつれて人口密度が減少する,

もしくは増加する傾向が見られる.

  コンビニは距離が遠くなるにつれて,人口密度が減少している.このことから,コンビニ は人口の多い場所に立地していることが分かる.

  ほとんどの施設では距離が遠くなるにつれて人口密度が減少しているが,駅だけは逆に距 離が遠くなるにつれて,人口密度が増加している.これは,一般的に,駅前は住宅地よりも 商業地が占める割合の方が大きい.よって,駅から少し離れた場所に住居していると考えら れる.

  アパート・マンションには,それ自体に人が住居しているため距離が遠くなれば人口密度 が減るのは自然なことである.

  スーパーストア,バス停は距離が駅や,アパート・マンションと同様に,距離が遠くなる につれて,人口密度が減少している.

  以上より,コンビニの立地は,駅やバス停などの人口が多く集まる,または多くの人が住 居している場所に影響を受けると推測される.また,2.2.2項における図2.2,図2.3,図2.4 の各地域の分布を見ると,道路の影響もコンビニの立地に深く関わっていると推測される.

(22)

3 章 

立地モデル 

本章では,2 章の立地傾向の分析結果を参考にして,現実のコンビニの分布(以下,実分 布)を実現するような点分布を構築するための立地モデルを提案する.

立地モデルの概要について説明する.本研究では,コンビニの立地を考えるとき,コンビ ニを点として考え,点を対象地域内に立地しているコンビニの数だけ発生させる.そして,

コンビニ各店舗は立地に関わる要因の影響を受けて,立地を定めるために現在位置している 場所からより適している場所へ移動する,と仮定する.移動により全てのコンビニが位置を 定めたとき,各々が最も適している場所に立地していると考えて,その点分布を立地モデル によって得られる点分布(以下,モデル分布)とする.

コンビニは立地を定めるとき,2 章で述べたように,できるだけ立地に適している場所を 選ぶ.このとき,コンビニは立地に適する場所から生じる引力によって惹き付けられる,と 考える.しかし,惹き付ける力のみでは,複数地点で多くのコンビニが集積し続ける現象が 起こりうる.この現象により,商圏内の限られた顧客の奪い合いが発生し,2 章で述べた健 全な経営を行うことが困難となることが考えられる.すなわち,店舗にとって立地に適して いる場所は魅力的であるが,多くの店舗が集積することによって,新たにその場所に立地し ようとする店舗にとっては,既に立地している店舗の影響で魅力的ではなくなる.よって,

コンビニを惹き付ける力とは別に,もう 1 つの力が存在すると考えられる.そこで,コンビ ニ各店舗が自身以外の店舗を遠ざける反発力が存在する,と仮定する.よって,コンビニの 立地モデルでは,コンビニを立地に適する場所へ惹き付ける引力と,他店舗を遠ざける反発 力の2つの力を考える.

上記の引力と反発力をポテンシャルモデルにより表現する.ポテンシャルモデルとは,ポ テンシャル値が高い場所から低い場所へ各点を移動させるようにシミュレートするモデルで あり,ポテンシャルモデルで表現されている領域をポテンシャル場という.本研究では,立 地に適していればいるほどポテンシャル値を小さく,立地に適していない場所と各店舗の周 りのポテンシャル値を高くして,ポテンシャル値が高い場所からより低い場所を目指して各 点が移動する.

3.1節では,ポテンシャル場を表現するために用いるカーネル密度推定について述べる.3.2 節では,線分を対象とするカーネル密度推定について述べる.3.3節では,カーネル密度推定 を基に各ポテンシャル場の形成を行い,1 つのポテンシャル場とするために各ポテンシャル 場を結合する.3.4節では,ポテンシャル場に従った各点の移動方法について述べる.

(23)

3.1   カーネル密度推定 

  本節では,カーネル密度推定について述べる.カーネル密度推定は,ポテンシャル場を表 現するために用いる.以降は[9,10]を参考にしている.カーネル密度推定は対象がどのよう に分布しているか,すなわち,対象の観測点と他の観測点との“データの近さ”を考慮した 密度関数を推定する手法である.本研究では,ポテンシャル値をカーネル密度推定によって 得られる推定量によって表現する.

  3.1.1 項では,点を対象とするカーネル密度推定について説明する.3.1.2 項では,カーネ

ルの形状が対象の度数に依存しない,正規化を行わないカーネル密度推定について説明する.

 

3.1.1  点を対象とするカーネル密度推定 

1変量のときのカーネル密度推定

密度推定の目標は,確率変数Xの確率密度関数 f(•)を推定することである.

{

X1,X2,L,Xn

}

を確率変数Xn個の独立な観測値とする.xにおける密度 の推定のためのカーネル密 度推定量 は,以下の式で定義される.ここで,

) ˆ(x f )

ˆ (x

fh K(•)はカーネル関数を表し,hはバン ド幅を表す.カーネル関数は観測値の密度をどのように表現するか決定し,またバンド幅は 観測値の密度をどの程度平滑化させるかを決定するパラメータである.

( ) ∑

=

⎟⎠

⎜ ⎞

= n ⎛ −

i

i h

h h

X K x

x n f

1

ˆ 1 3.1

  カーネル密度には様々なカーネルが用いられている.本研究では,ガウス関数を用いて,

カーネル関数K

( )

u を以下の式で表す.

( )

⎟⎟

⎜⎜ ⎞

⎛−

= exp 2

2

1 u2

u h

K π 3.2

このとき,カーネル密度推定量は以下の式で表される.

( )

( )

=

=

⎭⎬

⎩⎨

⎧− −

=

⎪⎭

⎪⎬

⎪⎩

⎪⎨

⎧ ⎟

⎜ ⎞

− ⎛ −

=

n

i

i i n

i h

X h x

hn

h X x n h

x f

1

2 2

2

1

2 exp 1 2

1

2 exp 1 2

1 1

π ˆ π

(3.3)

多変量のときのカーネル密度推定

  カーネル関数は単純な方法で多変量の場合に一般化することができる. 次元の観測値

(ただし =( )

d Xn

X1,K, Xi Xi1,K,Xid T )が得られているとする.このとき,密度関数

を推定することを考える場合,多変量カーネル密度関数は )

, , ( )

( f x1 xd

f X = K

(24)

⎟⎟⎠

⎜⎜ ⎞

⎛ − −

=

= d

id d i

n

i

h K h h

f n x X x X

x 1 , ,

) ˆ (

1 1 1 1

L 3.4

と定義される.このときのカーネル関数K

1 )

IR ( =

dK x dx     (3.5

を満たすものである.

  多変量の場合,カーネル関数K(x)=K(u1,K,ud)の定め方が問題となる.単純な方法とし ては,各コンポーネントで1変量カーネル関数Kを求め,その積をとる方法がある.つまり,

以下のように定義される.

=

= d

j

j j

d K u

K

1

) ( )

(u       (3.6)   本研究では,2次元平面上における点,線分を扱うので,2変量のカーネルを用いる.1変 量のときと同様にガウス関数を用いて,2変量のカーネル関数を以下の式で表す.

⎥⎥

⎢⎢

⎪⎭

⎪⎬

⎪⎩

⎪⎨

⎟⎟⎠

⎜⎜ ⎞

⎛ −

⎟⎟ +

⎜⎜ ⎞

− ⎛ −

=

⎟⎟⎠

⎜⎜ ⎞

⎛−

⎟⎟⋅

⎜⎜ ⎞

⎛−

=

2

2 2 2 2

1 1 1 2

2 2 2

1 2

1

2 exp 1 2

1

exp 2 2

1 exp 2

2 ) 1 , (

h X x h

X x h

u h

u h

u u K

π

π π

      (3.7)

ここで,h1 =h2 =hとすると,

⎭⎬

⎩⎨

⎧− −

= 2 2 2

2

1 2

exp 1 2

) 1 ,

( x X

h u h

u

K π 3.8

となる.よって,2変量のカーネル密度推定量 h(x)は以下の式となる.

= ⎭⎬⎫

⎩⎨

⎧− −

= n

i

i

h nh h

f

1

2 2

2 2

exp 1 2

) 1

(x x X

ˆ π       (3.9

上式によって,図3.1のように2次元平面上における点の密度推定が可能となる.

) ˆh(x f

Xi

) ˆh(x fˆh(x) f

Xi

図3.1  点を対象とするカーネル密度推定

(25)

3.1.2  正規化を行わないカーネル密度推定

3.1.1 項で述べたように,カーネル密度推定は確率密度関数を推定することが目的である.

確率密度関数は,式(3.9)に示されているように,対象の度数 で割る,すなわち,正規化 することによって得られる.しかし,正規化により,カーネル 1 つあたりの高さが度数 に よって異なるという問題が発生する.各施設は,2.2.1項より,全て同質とみなしているため,

地域間でカーネルの高さが異なると,各施設は同質ではなく,地域間の立地特性を比較する ことが困難となる.本研究では,確率密度関数を推定することが目的ではなく,コンビニを 立地に適する場所へ移動させるためにカーネル密度推定を用いている.そこで,正規化を行 わず,カーネルの高さが度数nに依存しないように式(3.9)を改良する.式(3.9)よりカー ネル密度推定によって得られる確率度関数 は

n

n

)

h(x

=

= n

i i

h K

f n

1

) 1 (

)

ˆ (x x (3.10)

であることから,対象の度数 に依存しないように, を 倍する.以下に,正規化を行 わないカーネル密度推定量 を示す.

n fˆh(x) n

) ˆh(x e

( )

=

=

⎭⎬

⎩⎨

⎧− −

=

=

n

i

i i

h

h h

K e

1

2 2

2 n

1 i

2 exp 1 2

1 ) ˆ (

X x x

x

π

    (3.11)

例として,ある点分布とその点分布に対してカーネル密度推定を行った結果を図 3.2 に示 す.バンド幅 は,2章より健全な経営が可能なコンビニの商圏は半径300mから半径500m であるから,今回は対象地域が首都圏なので300.0(m)とする.図3.2aの赤い点は領域の 四方の点,緑の点は,観測対象である点を表す.図3.2bの色は,赤い部分の密度が高く,青 い部分の密度が低いことを示している.図3.2bを見て分かるように,点が凝集している部分 の推定値は大きく,分散している部分は推定値が小さい.また,カーネル関数においても,

バンド幅を小さくすると,推定値の増減量が大きくなり,カーネルの形状は尖った山のよう になる.逆に,バンド幅を大きくすると,推定値の増減量は小さくなり,カーネルの形状は なだらかな山のようになる.図3.2aの点分布に対して様々なバンド幅を用いたカーネル密度 推定を図 3.3 に示す.よって,カーネル密度推定をおこなう際には,その用途によって,カ ーネル関数とバンド幅の選択を適切におこなう必要がある.

h

(26)

          (a)点分布(入力)     (b)密度推定の結果(出力)

図3.2  点分布を対象としたカーネル密度推定

   

(a)h=100.0(m)   (b)h=300.0(m) 

   

(c)h=500.0(m)   (d)h=1000.0(m) 図3.3  様々なバンド幅によるカーネル密度推定

(27)

3.2   線分を対象とするカーネル密度推定

 

カーネル密度推定は通常,3.1節のように点を対象として密度推定を行う.しかし,本研究 では,線分で表現されている道路もポテンシャル場で表現するために,点と同様に密度推定 を行う必要がある.そこで,本節では,線分でも扱えるように拡張したカーネル密度推定に ついて説明する.

 

3.2.1  点と線分の距離

  線分を対象とするカーネル密度推定を行う時,任意の地点pから線分 lの距離は,点pの 位置によって線分 l との距離の導出方法が異なる.以下では,その導出方法を[4]を参考にし て述べる.

  点a(x0,y0)と点b(x1,y1)の2点からなる線分l

) 1 0 ( )

1 (

1 1 0

0 ⎟⎟⎠ ≤ ≤

⎜⎜ ⎞

⎝ + ⎛

⎟⎟⎠

⎜⎜ ⎞

− ⎛

⎟⎟=

⎜⎜ ⎞

t

y t x y t x y

x (3.12)

とする.線分 と点l p( x , y )との距離を とするとd ) ( min

1 0

2 g t

d = t≤ 3.13)

となる.ただし,

2 0 0 1 2 0 0

1 ) ) (( ) )

((

)

(t x x t x x y y t y y

g = − + − + − + − (3.14)

と書ける.よって

{

( )( ) ( )( )

}

2 ) 0 (

' x1 x0 x0 x y1 y0 y0 y

g = − − + − − 3.15)

{

( )( ) ( )( )

}

2 ) 1 (

' x1 x0 x1 x y1 y0 y1 y

g = − − + − − 3.16)

であり,このとき はd

⎪⎩

⎪⎨

− +

− +

− +

=

) (

) ) (

) ((

) )(

( ) )(

(

) 0 ) 1 ( ' ( )

) ( ) ((

) 0 ) 0 ( ' ( )

) (

) ((

2 1 2 0 1 2 0 1 0 0

1 0 0

1

2 1 2 1 2

1

2 1 2 0 2

0

otherwise y

y x

x y y x x x x y y

g y

y x

x

g y

y x

x

d 3.17)

と表せる.上式の1行目は,点pと線分 の端点である点aとのユークリッド距離,2行目は,

pともう一方の端点である点bとのユークリッド距離,3行目は点pから線分 に垂線を下 ろしたときの線分 との交点Lとの距離を表す(図3.4).

l

l l

(28)

a L b

0 ) 1 (

' ≤

0 g ) 0 (

' ≥

g

d d d

l

otherwise

a L b

0 ) 1 (

' ≤

0 g ) 0 (

' ≥

g

l

otherwise

d d d

a L b

0 ) 1 (

' ≤

0 g ) 0 (

' ≥

g

l

otherwise

d d d

図3.4  点と線分の距離

3.2.2  線分を対象とするカーネル密度推定

  3.1.2項と3.2.1項を基にして,線分を対象としたカーネル密度推定について説明する.

線分を対象とするカーネル密度推定を行うために,点piを対象とした 1 つのカーネルを考 える.このカーネルに対し,点piを通るように 2 つに等分する.等分することによって,点 piが二つの点aiと点biに分割される.そして点aiと点biの間に線分を引き,線分の距離を とす る.このとき,線分を対象とするカーネルの形状は図3.5のようになる(ガウス分布は本来,

無限に広がっているが,ここでは図に表示するため有限としている).ここで,式(3.11) よりのカーネル密度推定量 を考える.そして,式(3.17)より,任意の地点 に対して

li

) ˆh(x

e x

( )

0 0

' ≥

g ならば,xXixai となる.また,g'

( )

1 ≤0ならば,xXixbi となる.

それら以外ならば,xXi は,xから線分への垂線を下ろしたときの交点Liとの距離 xLi となる.

p a b

l

i i

i

p a

i

b

l

p

p a b

l

a b

l

i i

i

i

図3.5  線分を対象とするカーネル密度推定の形状

以上より,線分を対象としたときのカーネル密度推定量 fˆl

( )

x は以下の式となる.

(29)

( ) ( )

⎟⎟

⎟⎟

⎟⎟

⎟⎟

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎜⎜

⎟⎟⎠

⎜⎜ ⎞

⎛− ⋅ −

=

⎟⎟ ≤

⎜⎜ ⎞

⎛− ⋅ −

=

⎟⎟ ≥

⎜⎜ ⎞

⎛− ⋅ −

=

=

=

) 2 (

exp 1 ) (

) 0 ) 1 ( ' 2 (

exp 1 ) (

) 0 ) 0 ( ' 2 (

exp 1 ) (

2 ˆ 1

2 2

2 2

2 2

1 2

otherwise Q h

h g Q

h g Q

h Q f

i i

i i

i i

n

i i l

L x x

b x x

a x x

x

x π

(3.18)

  図3.6に線分を対象とするカーネル密度推定の一例を示す.図3.6aがMAPPLE10000か ら抜き出した山手線周辺の国道のデータを表し,図3.6bには本研究で提案したカーネル密度 推定による推定結果を示す.図3.6bを見ると,線分が集まっている場所の密度が高いことが 分かる.

 

    (a)MAPPLE10000 (b)カーネル密度推定 図3.6  線分を対象とするカーネル密度推定

3.3   ポテンシャル場の形成 

  3.1節と3.2節で述べた点を対象とするカーネル密度推定,線分を対象とするカーネル密度 推定を説明した.本節では,3.1節と3.2節で述べたカーネル密度推定を用いて,コンビニが 立地に適する場所を定めるようなポテンシャル場を形成する.

2章より,コンビニは人口が多く存在する場所,そして道路沿いに立地していることから,

コンビニは,引力により(夜間)人口の多い場所と道路に惹き付けられると仮定する.また,

表 2.1   立地に適する条件 動 線  商圏人 口  道路状 況  施設との近 接  購買 層  競合状態 適地の条件  ○      ◎            商店街と街道が交差する角地 ○      ○            電鉄駅前,バスターミナルなどの交通の要衝          ○      ○  ○ 団地周辺でスーパーや寄り合い市場のない地域  ○          ○        飲料店,風俗営業,ホテルなどの集会地入り口付近  ○  ○          ○    大都市の下町で,高速
表 2.2   立地に適さない条件 動 線  商圏人 口  道路状 況  施設との近 接  購買 層  競合状 態  不適地の条件  ×              ×      郊外の小団地周辺で,流動購買力がほとんど期待できない場所              △          一流商店街,一級駅前など                      ×  豪邸,高級マンション街で,ご用聞きやデパートの外商が出入りしている地域                  ×      一見高級住宅街だが,住宅ローンや子
表 2.3   対象地域のコンビニ店舗数,総人口数,道路リンク数   コンビニ店舗数  総人口数  道路リンク数  リンク総延長( m )  立川・八王子  359 927,233 7,327 391,951.6  横浜  498 1,273,261 6,119 352,355.0  大宮  335 1,071,973 7,227 357,861.6    まず,立川・八王子について述べる.図 2.3a を見ると,立川駅(中央右)と八王子駅(左 下)周辺にコンビニが集まっていることが確認できる.図 2.3b
表 4.2   立川・八王子における各ポテンシャルの単位あたりの影響力   I p (人口) I r (道路) I c (店舗)  セルカウント法  4.0 12.7 7,749.0  最小費用完全マッチング 5.0 2.5  7,749.0      ( a )実分布 ( b )モデル分布(セルカウント法)    ( c )モデル分布(最小費用完全マッチング)
+6

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