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紙地図利用との対比による GPS 携帯電話利用に関する実証研究

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Academic year: 2021

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紙地図利用との対比による GPS 携帯電話利用に関する実証研究

今井修

*

,藤原弘道,岡部篤行

An experimental study on goal search behavior using a cell phone in comparison with that using a paper map

Osamu IMAI,Hiromichi FUJIWARA, Atsuyuki OKABE

Abstract: To evaluate the navigation system of GPS cell phones, this study carried out an experiment, in which the goal search behavior using a GPS cell phone and that using a paper map were compared.

The data obtained from the experiment show that the walking speed with a GPS cell phone was slower than that with a paper map; and the time spent in straying around a starting point with a GPS cell

phone was longer than that with a paper map.

Keywords

: GPS携帯電話(

GPS Cell Phone

),紙地図(Paper Map )

,

ナビゲ ーション(Navigation),行動軌跡(Tracks)

1.はじめに

ここ数年,携帯電話の高機能化により, GPS 機能を持つ携帯電話(以下 GPS 携帯電話)が出 現し,その利用分野も,画像に位置情報を添付 する道具や,ナビゲーションの道具から,子ど もの居場所を確認する道具へと拡がってきてい る.

その一方で,日常生活の中で,携帯電話の GPS 機能を利用しているユーザは少なく,提供 する携帯電話会社も増えていない.この原因と して, GPS そのものの性能に起因することや操 作性に関することなどが考えられている.

今後, GPS 携帯電話を利用したサービスが より身近で使いやすいものとなるためには,こ のような問題について解明する研究をする必要 がある.

これまでにも GPS 携帯電話に関する研究はさ 今井 修 〒 277-8568 柏市柏の葉 5-1-5 東京大学空間情報科学研究センター

Tel:04-7136-4297 [email protected]

まざま行われてきたが(林紀代美 ,2006 ),

GPS 携帯電話の利用者に質問紙調査を行う方法 が主に採用されてきた。しかし、これらの研究 は主観的な解答を分析していることから,その 欠点を補うために,行動軌跡のデータという客 観的なデータに基づく分析も必要となる.

そこで本研究では,最も日常的に想定できる 行動として,駅から指定された目的地に向かう 目的地探索行動を対象とし,その行動を計測す る実験的手法により 紙地図と対比させながら GPS 携帯電話利用における特徴と課題を明らか にすることを目的とした.

2.実験方法

GPS 携帯電話による行動の特徴を把握するた め,紙地図利用の行動と比較する実験を以下の ように行なった.

2 . 1 対象および実験時期

被験者は大学 1 ~ 2 年生15名,実験時期は平

成17年 9 月23日および10月 2 日とした.

(2)

2.2 実験場所および目標物の設定

実験地域は地下鉄丸の内線本郷三丁目駅付近 とし,スタート地点で予め設定した目標地点

(計4箇所)を示し,目的地探索行動を行なわ せた.その際,速やかに目的地に到達すること を要請した.目的地は,通常の歩く距離を想定 して駅から 300 ~ 500 mとし(図1),目標物 は地図上に表記されていないが,近くで発見し やすいものとして,自治会掲示板とした.

2.3 計測および行動記録の方法

比較計測のために,被験者ごと, GPS 携帯電 話利用検索行動を 2 箇所,紙地図利用検索行動 を 2 箇所させた.

被験者の行動軌跡は, GERMIN製 GEKO201 使用 し,連続して位置,時刻を記録した.蓄積され た位置・時刻データは,表示ソフト「地図太 郎」を用いて数値地図2500上に表わし,分析に 用いた ( 図2 ) .

図1 目的地,目標物の設定

図2 小型

GPS

で測定された行動軌跡 3.結果および考察

3.1 歩行距離による両群の比較

紙地図および GPS 携帯電話利用の目的地探索 行動それぞれについて,全体と目標地点別に歩 行距離の平均値を求め比較した ( 図3 ) 。 この結果,全体の平均値は差がなかった.し かし目的地別では, GPS 携帯電話による歩行距 離が小さい場所(掲示板18,19)と,逆に大き く出る場所(掲示板11,12,21)の両方がある ことがわかった.

0 500 1000 1500 2000 掲示板10

掲示板11 掲示板12 掲示板16 掲示板18 掲示板19 掲示板21 掲示板25 平均

距離(m)

紙地図 GPS携帯電話

図3 掲示板別歩行距離の比較

GPS 携帯電話のほうが歩行距離の小さかった 掲示板19の行動(図4)を検討してみると,

GPS 携帯電話では,スタート直後に余分な行動 をするものの,自分の位置が正確に把握できた 後は迷わず目的地に到達していた.

図4

GPS

携帯(左)と紙地図(右)比較1

それに対し紙地図では,スタート時と目的地 付近で大きく余分な行動をする様子が見られ た.このスタート直後の余分な行動とは,被験 者が太い道路に向かって歩いたことである.こ の理由として,人の流れに乗って動いた,或い は大きな道路を目標にしたため等が考えられ る.目的地付近については,紙地図では,自分

300m~500m

余 分 な 行 動

(3)

の位置がピンポイントで確認できないため,余 分な行動となったと考えられる.

一方, GPS 携帯電話のほうが歩行距離の大き かった掲示板21の例(図5)をみると, GPS 携 帯電話のほうのみスタート直後の余分な動き

(点線)がみられ,これが歩行距離の増大につ ながっていた.これは,前述のように掲示板19

(図4)においても同様に見られた現象であ る.

図5

GPS

携帯(左)と紙地図(右)比較2

3.2 歩行速度の分析

紙地図を利用する場合,被験者は絶えず周囲 を確認しながら「地図を読む」作業を強いられ る.一方 GPS 携帯電話を利用する場合は,案内 が正しければ,周囲を気にすることなく案内に 従って行動すればよい.そこで歩行速度に差が 生じる可能性があると考え,比較を行なった.

0 1 2 3 4 5 6

掲示板10 掲示板11 掲示板12 掲示板16 掲示板18 掲示板19 掲示板21 掲示板25

歩行速度(Km/h)

紙地図 GPS携帯電話

 

図6 掲示板別歩行速度の比較

図6に示すように,全体として紙地図を利用し た行動のほうが速く歩いており, GPS 携帯電話

を利用した行動は,周りを確認しながら慎重に 歩いた可能性が高かった.また,地点による両 者の差を歩行距離(図3)と比較すると,差は 小さかった.

また,被験者の特性の一つとして,15名の各 回の歩行速度に違いがあるか検討してみた.図 7に示すように, 2 回目以降に比較し 1 回目の 速度は遅かった.また,その変化は紙地図に比 較して GPS 携帯電話のほうが大きかった.

0 1 2 3 4 5

1回目 2回目 3回目 4回目 平均

速度(km/h)

紙地図 GPS携帯電話

図7 各回の歩行速度の平均

3.3 個人差の分析

各被験者の個人差を明らかにするため,それ ぞれの歩行距離を掲示板までの最短距離(予め 地図上で計測)で正規化し,分布を見た.

0 1 2 3 4 5 6 7 8

最短距離に対する比

人数(人)

0 .7 5

以下 1 1 .2 5 1.5 1.7 5 2 2 .25

図8 歩行距離に関する個人差の分布

図8に示すように,最短距離程度で歩いた被

験者もいたが,1.25~ 1.5 倍程度長く歩いた被

験者が多かった.また2.25倍以上歩いた被験者

余 分 な 行 動

(4)

もおり,迷いやすい(方向音痴)被験者の存在 が示唆された.

これに対し,図 6 から求めた全平均歩行速度 4.0 km/h を1として,各被験者の歩行速度を 正規化した分布 ( 図9 ) は, 0.8 ~ 1.2 の間に 80%の人が入った.歩行速度は,歩行距離と比 較して個人差が少ないことがわかった.

0 1 2 3 4 5 6 7 8

平均速度に対する比

人数(人)

0.8       1      1.2

図9 速度に関する個人差の分布

3.4 今後の課題

GPS 携帯電話の課題として, GPS そのものの 感度・精度の限界から,場所によって自己位置 が正しく表示されない,という問題がある.機 器による制約のもとで,日常的な利用のために は,現在の道具による感度・精度の低い場所で の利用法についての検討が必要である.

行動実験内容についても,被験者は行動中に 自己位置の確認のために立ち止まることがあっ た.これらを考慮した分析を行なうためには,

被験者にくっついて,絶えずその行動の内容や 意味を聞き出すといった,より詳細な行動調査 が必要と考える.

このような,個々の行動を詳細に把握しよう とすると,個人がどのように空間を認知し,行 動しているのかという研究を参考にする必要が ある.空間認知研究(井上毅・佐藤浩一編著 (2002))の成果から指摘されている方法論の問 題点,①学習経験の違い,②空間の規模,③課 題・測度,④継続的研究の必要性,について今 後検討する必要がある.①については,速度の

変化(図7)に示したとおり,繰り返しによる 学習効果が出ていることが予想され,分析も1 回目とそれ以降を分けて検討する必要がありそ うである.

そのほか,携帯電話の課題としてよく取り上 げられる画面サイズの問題については,よく検 証されるべき点である.画面に表示されている 範囲は 200 m程であるが,実際に現地で人の目 で確認できる範囲はそれ以下である.従って,

広い範囲が携帯の画面上に出ていればならない 理由がどこにあるのかを明らかにしなければな らないと考える.

4.まとめ

GPS 携帯電話利用における特徴と課題を明ら かにするため,紙地図利用と対比して,その行 動を分析した.

GPS携帯電話利用による歩行距離は,平均と しては紙地図利用と差がなかったが,目的地に より, GPS 携帯電話が有利な地点と逆に紙地図 が有利な地点があった.また, GPS 携帯電話利 用ではスタート地点付近で余分な行動が見られ た. GPS 携帯電話利用による歩行速度は,紙地 図利用よりも遅かった.また両者とも回数が増 加するほど歩行速度は速くなったが,この傾向 は GPS 携帯電話利用のほうが大きかった.

GPS 携帯電話の利用を考える際に,実際の都 市空間における平均的な行動分析から,詳細な 行動の把握,空間の認知に関する実証的な研究 が必要であると考える.

参考文献

1)林紀代美,ほか (2005)教育学部の教科教育 法授業における携帯電話 GIS の利用実験. GIS 学会講演論文集 ,Vol.14,pp399-404

2) 井上毅・佐藤浩一編著(2002)日常認知の心

理学,pp.236-241,北大路書房

参照

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