建築物の解体等に係る
アスベスト飛散防止対策マニュアル
平成26年6月
東京都環境局
ま え が き
アスベストは、その化学的物理的特性から建築材料のほか、様々な用途に用いられてきました。中 でも、吹付けアスベストは、昭和 30 年頃からビル等の耐火被覆用などの材料として使われはじめ、
昭和47年頃に最も大量に使われました。
労働安全の面から、昭和50年にアスベストの吹き付けは原則禁止され、1%を超えてアスベストを 含有する吹付け材についても、平成7年に原則禁止されました。しかし、現在、これらアスベストを 含有する吹付け材が使用された建築物等が建て替えの時期を迎えており、建築物等の解体や改修に伴 うアスベストの環境への飛散防止対策の徹底が課題となっています。
東京都は、これまで、国に先駆け、要綱や条例により建築物等の工事に伴うアスベストの飛散防止 対策の徹底を図ってきたところです。平成 17 年に、アスベスト問題に関する社会的関心の高まりを 受けて、大気汚染防止法(以下「法」という)の政省令が改正され、特定建築材料に石綿を含有する 断熱材、保温材及び耐火被覆材が追加されるとともに、特定粉じん排出等作業を実施する建築物の規 模要件等が撤廃されました。これに伴い、都は、届出事務を合理化するため、平成 18 年に、都民の 健康と安全を確保する環境に関する条例(以下「条例」という。)の改正を行い、基本的な作業施工 計画の届出については、法に基づく届出でよいこととし、条例上の届出は、石綿の飛散防止方法の詳 細、石綿濃度の測定など、条例独自の内容についての届出だけに限定することとしました。また、ア スベスト成形板対策として、平成19年3月に「アスベスト成形板対策マニュアル」を作成しました。
そして、平成25年6月の法改正により、届出義務者が工事の施工者から発注者等に変更されるなど 発注者が一定の責任を負うこととなりました。これに伴い、条例も届出義務者を発注者等に変更する とともに、法と条例の規制の関係を整理する、作業に係る措置の記録とその3年間の保存を施工者に 義務付けるなどの改正をしました(平成26年6月1日施行)。
本マニュアルは、条例、同条例施行規則、及び同条例に基づき告示で示している「作業上の遵守事 項」におけるアスベスト規制の条項を解説するとともに、大気汚染防止法などの関係法令等との関係 についてとりまとめたものです。実際の実務を行う区市の関係者の方々はもとより、工事の発注者や 施工者の方々においても、本資料を活用し、建築物等の工事に伴うアスベストの飛散防止対策を的確 に実施していただきますようお願いいたします。
平成26年6月
東京都環境局環境改善部
目 次
第 1 章 アスベストに関する基礎知識 ... 3
1.
アスベストとは ... 32.
アスベストによる健康影響 ... 43.
アスベストの用途と輸入 ... 5第 2 章 アスベストを含有する建材の種類と用途 ... 7
1.
吹付け材 ... 72.
保温材等... 8
3.
成形板等 ... 10第 3 章 アスベストの飛散防止対策(大気汚染防止法・環境確保条例) ... 11
1.
アスベスト飛散防止対策の対象となる建設工事 ... 132.
大気汚染防止法・環境確保条例に基づく義務等の対象者 ... 143.
事前調査等 ... 154.
作業計画の策定と届出 ... 185.
工事開始前の措置 ... 256.
作業中の措置 ... 287.
作業後の措置... 38
8.
作業の記録・保存... 39
9.
アスベスト廃棄物の処理 ... 4110.
大気汚染防止法・環境確保条例関係規定 ... 49第 4 章 都と区市との役割分担 ... 63
1.
大気汚染防止法の規定による事務の委任 ... 632.
事務処理特例条例による事務の委任 ... 63【問い合わせ先・届出窓口】 ... 67
【研修用テスト】 ... 72
【参考資料】 ... 74
【コラム】 建築物内の水道管にはアスベストは使われていない 9
都内のアスベスト解体工事は増えるのか 10
特別区及び市が事務処理をする根拠 65
第
1
章 アスベストに関する基礎知識 1. アスベストとはアスベストは、天然に産する鉱物繊維のことで、蛇紋石族のクリソタイル(白石綿)と角閃石族の クロシドライト(青石綿)やアモサイト(茶石綿)などがある。耐熱性、耐薬品性、絶縁性等の工業 上の諸特性に優れているため、建材、電気製品、自動車などに利用されてきた。
角閃石族のアンソフィライト、トレモライト及びアクチノライトについては、石綿原料として国内 での使用はないとされてきたが、平成 19 年度末以降、建築物の吹付け材からトレモライト等が検出 されたという事例もある。
(1) 定義
鉱物学的には、天然に産する鉱物群のうちで、高い抗張力と柔軟性をもつ絹糸状で光沢があり、繊 維状の集合(asbestiform)をなすものの俗称である。
法及び条例並びに石綿障害予防規則(以下「石綿則」という。)では、国際労働機関(ILO)及び米 国環境保護庁(EPA)等におけるアスベストの定義と同様表1の6種類で、その特性は表2のとおり である。
表1 アスベストの分類
石綿名 化学組成式
蛇紋石族 クリソタイル(温石綿・白石綿) Mg3Si2O5(OH)4
角閃石族
クロシドライト(青石綿) Na2(Fe2+,Mg)3(Fe3+)2Si8O22(OH,F)2 アモサイト(茶石綿) (Mg,Fe)7Si8O22(OH)2
アンソフィライト(直閃石綿) (Mg,Fe)7Si8O22(OH)2 トレモライト(透角閃石綿) Ca2Mg5Si8O22(OH)2 アクチノライト(陽起石綿) Ca2(Mg,Fe)5Si8O22(OH)2
表2 アスベストの主な物理的・化学的特性1),2)をもとに作成
クリソタイル クロシドラ
イト アモサイト アンソフィ
ライト トレモライト アクチノライト
硬度 2.5~4.0 4 5.5~6.0 5.5~6.0 5.5 6
比重 2.55 3.37 3.43 2.85~3.1 2.9~3.2 3.0~3.2
融点(℃) 1,521 1,193 1,399 1,468 1,316 1,393 比熱(kcal/g/℃) 0.266 0.201 0.193 0.210 0.212 0.217 抗張力(㎏/cm2) 31,000 35,000 25,000 24,000 5,000未満 5,000未満 比抵抗(MΩcm) 0.003~0.15 0.2~0.5 500未満 2.5~7.5 ── ──
柔軟性 優 優 良 良~不良 良~不良 良~不良
表面電荷 + - - - - -
耐酸性 劣 優 良 優 優 良
耐アルカリ性 優 優 優 優 優 優
脱構造水温度*(℃) 550~700 400~600 600~800 600~850 950~1,040 450~1,080 耐熱性 良。450℃位か
らもろくなる。
クリソタイ ルと同様。
クリソタイル よりやや良。
アモサイト と同様。
ク リ ソ タ イ ル
より良。 不良
* 空気中において、脱水反応を起こし結晶構造が崩壊して、強度を失う温度をいう。
2. アスベストによる健康影響
(2) アスベストが原因の疾患 (1) 中皮腫
肺を取り囲む胸膜、腹部臓器を囲む腹膜、心臓及び大血管の起始部を覆う心膜等にできる、予後 が不良な悪性の腫瘍である。アスベストの曝露からおおむね20~50年後に発症する(約40年に発 症のピークがある)。
アスベスト以外の原因としては、戦時中まで使用されていたトロトラスト(放射性造影剤)によ るものなどが報告されているが、報告数は少ないこと
などから、中皮腫はアスベストを原因とするものと考 えて差し支えないとされている4)。
最初の症状は、胸膜中皮腫では息切れや胸痛が多く、
腹膜中皮腫では腹部膨満感や腹痛などで気付くことが 多い。
(2) 肺がん
アスベストが原因で生じる肺がんとそれ以外の肺 がんとでは、発生部位や組織型に違いはない。アスベ ストが原因で生じる肺がんの場合、アスベストの曝露 から肺がん発症には、通例15~40年の潜伏期間がある。
肺がんは、さまざまな原因が指摘されている中で、
アスベストを原因とするものとみなせるのは、肺がんの発症リスクを2倍以上に高める量の曝露(蓄 積石綿曝露量25本/(mL×年)以上)があった場合とするのが妥当であると考えられている4)。 (3) 石綿肺
石綿肺は、肺が弾力性を失い硬くなる肺線維症(じん肺)という病気の一つであり、アスベスト を大量に吸引することによって発生する職業病の疾患である。
アスベストの高濃度曝露であれば、10年未満の曝露期間であっても発症する。通常、アスベスト 曝露後 10 年以上経過してレントゲンで初期病変が現れる。防じんマスクなどの着用が不適切であ れば、石綿肺を発症する危険性は十分にあり得る5)。
自覚症状としては、坂道や階段を上るときなどの息切れから始まることが多く、咳や痰が続いた り、胸や背中に痛みを感じたりすることもある。
(4) 良性石綿胸水
アスベストの高濃度曝露の人に比較的多くみられる非腫瘍性の胸膜炎である。胸を包む胸膜に、
胸水とよばれる浸出液がたまる。アスベストの曝露から 10 年以内に発症することもあるが、多く
は 20~40 年後に突然発症する。発熱、咳、胸痛、息切れなどの症状で発症するが、自覚症状がな
い場合もある4),5)。 (5) びまん性胸膜肥厚
アスベストによる胸膜炎が発症すると、それに引き続き、胸膜が癒着して広範囲に硬くなり、肺 のふくらみを障害して呼吸困難をきたす。胸部レントゲン写真上、臓側胸膜(肺や気管支を覆う胸 膜)の肥厚を認めるようになるが、この状態をびまん性胸膜肥厚という。胸水が消退しても、程度 の差はあるが、びまん性の(広範囲に拡散した)胸膜肥厚を残す4)。
図1 アスベストによって起こる病気とその部位3)
3. アスベストの用途と輸入
アスベストは、強度を備えた微細な繊維構造を持つため、重量に対して非常に大きな表面積を持つ。
この特性を利用して、スレート、けい酸カルシウム板、ビニル床タイルなどの建材の繊維素材として 使用されてきた。我が国におけるアスベストの輸入量と全国における建築物の総着工床面積の推移を 比較すると、1988年(昭和63年)頃までは両者
に明確な相関が認められる。
我が国は、アスベストの消費量のほとんどを輸 入に頼ってきた。年間の輸入量は、高度成長期の 1960年代に急激に増加し、1974年の35万トンを 最高に、1970年代及び1980年代は25万トンから 35 万トンの高水準で推移してきたが、1990 年代 に入り年々減少し、2005年は110トンとなった。
1930年(昭和5年)から2005年(平成17年)の
76年間の総輸入量は、約988万トンとなっている。
主な輸入元は、2004年においては、カナダ65.7%、
ブラジル19.5%、ジンバブエ10.6%である。
1995年度においては、アスベスト輸入量の93%が建材に使用された(図3)。表3に、建材以外の 石綿含有製品を含め、それらの主な種類と用途及び規制や業界の自主的な製造中止の推移を示す。
石綿含有製品については、労働安全衛生法施行令が改正され、平成18年9月1日より、代替化が困難な一部 の製品(適用除外製品等)を除き、その製造等が全面的に禁止された。適用除外製品等についても、その後非石 綿製品への代替化が全て可能となったため、平成24年3月1日の改正労働安全衛生法施行令の施行により、例 外なく製造等が全面禁止となった。
0 50,000,000 100,000,000 150,000,000 200,000,000 250,000,000 300,000,000
1951 1953 1955 1957 1959 1961 1963 1965 1967 1969 1971 1973 1975 1977 1979 1981 1983 1985 1987 1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001 2003 2005
全国における着工建築物の床面積 (m2) 棒グラフ
0 50,000 100,000 150,000 200,000 250,000 300,000 350,000 400,000
アスベスト輸入量 (トン) 折線グラフ
アスベスト輸入量 着工建築物の床面積
年
図2 アスベスト輸入量と全国の建築物着工床面積の推移
資料:財務省貿易統計、国土交通省建築着工統計調査
図3 我が国における輸入したアス
ベストの利用状況(平成7年度)
(社)日本石綿協会6)
表3 石綿含有製品の主な種類、用途及び規制等の状況
(東京労働局パンフレット「アスベスト対策-予防から救済まで-」をもとに作成)
分類 石綿含有製品の
主な種類 主な用途 規制等の状況
建 材
吹付け材
吹付けアスベスト 鉄骨の耐火被覆、
内壁・天井の吸音・断熱 昭和50年に原則禁止。
石綿含有吹付けロックウー ル
石綿含有吹付けバーミキュ ライト(ひる石吹付け)
石綿含有パーライト吹付け など
鉄骨の耐火被覆、
内壁・天井の吸音・断熱、
天井の結露防止
石綿含有率5%を超えるものは、昭和50 年に原則禁止。
石綿含有率1%を超えるものも、概ね昭和 62年頃に製造中止。
法的には、石綿含有率 1%を超えるもの は、平成7年に原則禁止。平成17年の石 綿則施行で全面禁止。
保温材等
石綿含有保温材 配管やボイラー等の保温 概ね昭和55年頃に製造中止。
石綿含有耐火被覆材 鉄骨等の耐火被覆 概ね昭和62年頃に製造中止。
石綿含有断熱材 屋根裏の結露防止、
煙突の断熱 概ね平成3年までに製造中止。
成形板等
石綿含有ロックウール吸音
天井板 天井の吸音 概ね昭和62年頃に製造中止。
ビニル床タイル
ビニル床シート 床 石綿含有のものは、昭和63年までに製造 中止。
パルプセメント板 内壁、天井、軒天 石綿含有のものは、平成16年までに製造 中止。
スレート・木毛セメント積
層板 屋根の下地、壁 接着するフレキシブル板が平成16年に石 綿含有製品の製造等を禁止。
石綿セメント円筒 煙突、ケーブル保護管、温泉の 送湯管、排水管等
石綿含有のものは、平成16年に法的に製 造・使用等が禁止。
押出成形セメント板 非耐力外壁、間仕切り壁 住宅屋根用化粧スレート 屋根材として張られた板の上に
葺く化粧板
繊維強化セメント板※1 屋根、外壁、内壁、天井、軒天、
耐火間仕切り 窯業系サイディング 外壁
石綿含有外壁塗装材※2
(リシン吹付けなど) 外壁
非 建 材
摩擦材
クラッチフェーシング
クラッチ
石綿含有のものは、平成16年に法的に製 造・使用等が禁止。
クラッチライニング ブレーキパッド
ブレーキ ブレーキライニング
接着剤 断熱材用接着剤 高温下で使用の工業用断熱材ど うしの隙間の接着
石綿紡織 品
石綿糸、石綿テープ グランドパッキン等の原料
平成 18 年 9 月 1 日、一部例外製品を除き、
製造・使用等が全面禁止。
平成 24 年 3 月 1 日、例外なく全面禁止。
石綿布 石綿手袋、衣服、前掛け、耐火 カーテン、石綿布団等 シール材 石綿含有ガスケット 配管用フランジ等静止部分
石綿含有パッキン ポンプの軸封等の運動部分 電気絶縁
板 電気絶縁用石綿セメント板 配電盤等
※1 JIS A 5430:2001の規格における「繊維強化セメント板」には、成形板等に分類されるものとして、スレート波板、スレートボード(フ
レキシブル板・軟質フレキシブル板・平板・軟質板)、パーライト板、けい酸カルシウム板第一種、スラグせっこう板がある。
※2 東京都における法及び条例の区分
第
2
章 アスベストを含有する建材の種類と用途石綿含有建材は、工法及び材料の見掛け密度などから、石綿含有の吹付け材、保温材等、成形板等 の3つに分類することができる。石綿含有とは、建築材料の製造若しくは現場施工における建築材料 の調製に際して石綿を意図的に含有させたもの又は石綿の質量が当該建築材料の質量の 0.1%を超え るものをいう。
1. 吹付け材
石綿含有の吹付け材は、主に、建築物等における鉄骨などの耐火被覆用に、また、機械室(ボイラ ー室・昇降機室等)、駐車場などの天井、壁などに吸音・断熱材として使用されてきた。このほか、
浴室等の天井の結露防止用として石綿含有の吹付け材が施工された例もある。
吹付け材の使用は、昭和30年頃から始められ、昭和39年に防音用として航空基地付近の施設に使 われたのをきっかけに広く使用されるようになった。昭和 47 年頃が、吹付けアスベストを始めとす る石綿含有の吹付け材の最需要期であった。
法の施行通知において、建築物等の解体・改造・補修時の規制対象である特定建築材料の「吹付け 石綿」の区分には、吹付け石綿のほか、意図的に又は質量で0.1%を超えて石綿を含有する吹付けロ ックウール、ひる石吹付け材、パーライト吹付け材も特定建築材料に該当する建築材料の具体例とし て示されている8),9)。また、条例の上でも、届出対象の石綿含有材料の規定において、「吹き付け石綿」
を「吹き付け工法に使用される石綿含有材料をいう。」(条例施行規則第60条第1 項)としており、
石綿含有の吹付け材のすべてが届出対象の材料である。
このため、本マニュアルでは、法令・条例上の広義の「吹付け石綿」と区別するため、石綿含有率 が数十%の狭義のものについては、「吹付けアスベスト」と称する。
(1) 吹付けアスベスト
アスベストとセメント系の結合材とを一定割合で水を加えて混合し、吹付け施工したものである。
施工された時期は、昭和30年頃から昭和50年までである。
耐火被覆用は、建築基準法の耐火要求に応じて使用されたもので、3階建て以上の鉄骨造建築物 などの鉄骨、梁、柱等に吹き付けられた。このほかに、デッキプレート裏面への吹付けなどがある。
吸音・断熱用としては、ビルの機械室、地下駐車場等の天井、壁等のほか、学校、体育館、工場 等の天井、壁等に吹き付けられていた。コンクリート造りの建築物の中で人が日常的に在室する部 屋(学校の教室、実験室、体育館など)では、残響時間が長く、会話がしにくくなるため、吸音用 の吹付けアスベストが施工された。また、鉄骨造建築物においては、人が常時在室しない機械室な どでも、防音目的に吹付けアスベストが施工されていた。
(2) 石綿含有吹付けロックウール
吹付けアスベストとよく似た吹付け材である。これは、高炉スラグなどを主原料に工場で製造さ れた人造鉱物繊維であるロックウールを使用している。吹付けロックウールは、昭和 36 年頃から 使われ始め、昭和 50 年に吹付けアスベストが原則禁止となった以降も、しばらくの間、アスベス トを混ぜて使用されていた。用途には、耐火被覆用と吸音・断熱用がある。
吹付けロックウールには、吹付け工法に乾式・半乾式・湿式がある。
乾式吹付け工法は、ロックウールとセメントを工場で合材したものを工事現場において吹付け施
工箇所まで吹付け機により圧送し、その施工箇所において、吹付け機のノズル先端で水と混ぜ合わ せて吹き付けるものである。
半乾式吹付け工法は、半湿式ともよばれる工法で、あらかじめセメントに水を混ぜたセメントス ラリーを用意し、吹付け施工箇所までセメントスラリーとロックウールとを別々に圧送し、スラリ ーホースをロックウールホース内に挿入してノズルで吹き付けるものである。乾式及び半乾式につ いては、概ね昭和55年頃に、アスベストを含有するものが製造中止となった。
湿式吹付け工法は、混和剤を用いてロックウールとセメントなどを工場で合材したものについて、
工事現場において混練機を用いて水と混練した後、ポンプにより吹付け施工箇所まで圧送し、圧縮 空気でノズルより吹き付ける工法である。昭和45年頃から製品化され始め、概ね昭和62年頃に、
アスベストを含有するものが製造中止となった。
(3) その他の吹付け材
石綿含有の吹付け材には、バーミキュライト(ひる石)、パーライトなどを主材としてこれにア スベストを混ぜて吹付けられたものがある。一般的に、吹付けアスベストや吹付けロックウールに 比べて材料が硬く、下地との結合性も強い。しかし、掻き落とし等により除去などを行う場合、ア スベストの飛散のおそれが大きいことから、解体・改修時の届出対象の吹付け材としている。
バーミキュライトは、膨張性雲母を焼成膨張させて得られた黄金色で光沢のある多孔質の軽い砂 状のものである。ひる石ともよばれるが、焼くと膨張して蛭が血を吸ったように見えることから名 づけられた。
パーライトは、真珠岩、黒曜岩又はこれに準ずる石質を有する岩石を粉砕し、焼成膨張させて得 られた多孔質の軽い砂状のものである。原料の岩石は、天然ガラスとよばれるもので、高温のマグ マが急冷されて固化したときに結晶粒をほとんど含まずにできたガラス状の岩石である。
2. 保温材等
石綿含有の保温材等には、保温材、耐火被覆材及び断熱材がある。保温材等は、見掛け密度(材料 の質量をその見掛けの体積で割った値)が概ね0.5g/cm3以下である。解体・改修時における除去作 業などにおいては、アスベストの飛散の程度が大きいことから、規制対象となっている。
(1) 石綿含有保温材
石綿含有保温材は、石油精製や石油化学(エチレンプラント)などの施設に使われることがほ とんどであり、建築物では、ボイラーなど建築設備や空調設備のダクトや配管に使われている場 合が多い。主に工業プラントや建築設備などにおいて、常温より高い温度の熱絶縁に使用される。
石綿含有保温材には、石綿保温材(旧JIS A 9502)、けいそう土保温材(旧JIS A 9503)、塩基 性炭酸マグネシウム保温材(旧JIS A 9506)、けい酸カルシウム保温材(旧JIS A 9510)、はっ水 性パーライト保温材(旧JIS A 9512)及びバーミキュライト保温材(ひる石保温材)がある。
① 石綿保温材
石綿保温材には、アモサイトを主原料とし、これに結合剤を加えて成形した保温板及び保温筒の ほかに、石綿保温ひも及び石綿布団がある。
保温板は、板状に成形した保温材で、必要に応じてガラスクロス、張り合わせたアルミニウム箔 などの外被材を張り付け、又は表面を被覆して使われている。
保温筒は、円筒縦割り状に成形した保温材である。保温板及び保温筒は、各種プラントの缶、塔、
槽類の外壁又は配管の定形部に施工する目的で作られており、ほとんどがそのままの形で、スタッ
ドボルトや針金等によって固定されている。
石綿保温ひもは、石綿糸でできた外被の中に石綿を詰めたもので、各種プラントの曲管部や施工 しにくい部分の熱絶縁のため、それらに巻き付けたり、他の保温材の継目に生じる隙間に詰め込ん だりして使われている。
石綿布団は、アモサイト石綿などの中綿をカバーとなる石綿布ではさみ、黄銅線入り石綿糸で適 当な間隔でとじて、中綿が移動したり、石綿布がはがれたりしないようにしてある。各種プラント のポンプ、バルブ、フランジ等の保守点検を必要とする部分、配管の異形部分、耐振性を要求され る部分に被せ、その上から針金等を巻き付けて使われる。
② けいそう土保温材
けいそう土保温材は、けいそう土乾燥粉末を主材として、これにアスベスト繊維を均一に配合し た水練り保温材である。旧JIS規格では、石綿含有率は1.5%以上とされていた。
水練り保温材は、成形保温材の目地部分あるいは複雑な施工面の保温、又は外装を兼ねた保温材 に使用される。施工は、前もって主材と無機バインダーを乾式混合し調製した粉状製品に、現場で 水を加えて混練し、充填やこて塗りして使用する。
③ 塩基性炭酸マグネシウム保温材
塩基性炭酸マグネシウムとアスベスト繊維を均等に配合したものである。水練り保温材、保温板 及び保温筒がある。石綿含有率は、8%以上とされていた。
④ けい酸カルシウム保温材
けいそう土等のけい酸質粉末と石灰を主材として、アスベスト等の補強繊維を加え、オートクレ ーブ処理により製造した保温板及び保温筒である。
なお、オートクレーブ処理とは、高温・高圧の水蒸気で処理することである。
⑤ はっ水性パーライト保温材
材料はパーライト、バインダー、アスベスト等の補強繊維、はっ水剤などから成り、これらを均 一に混合した後、成形、乾燥して製造した保温材であり、保温板及び保温筒がある。
⑥ バーミキュライト保温材
バーミキュライト(ひる石)、アスベスト及び耐熱バインダーを配合し、水練り又はプレス成形 によって板状又は筒状にしたものである。
【コラム】 水道管の凍結防止用保温材にはアスベストは使われていない
石綿含有保温材は、150℃以上の高温部で使用される材料であり、水道管の凍結防止用保温材には、昭和 50年代以前から石綿含有のものは使われていない。水道管の保温材には、発泡ポリエチレンや硬質ウレタ ンフォームなどが使われているのが一般的である。
(2) 石綿含有耐火被覆材
法令及び条例に基づき届出対象となる石綿含有耐火被覆材には、石綿含有の耐火被覆板、けい 酸カルシウム板第二種及び耐火被覆塗り材がある。石綿含有耐火被覆材は、吹付け材のかわりに、
鉄骨、梁、柱、昇降機周辺等に張り付けて使用されている。
① 石綿含有耐火被覆板
石綿含有耐火被覆板は、アスベストとセメントなどとの配合比を石綿含有率の高い吹付けアスベ ストと同様な配合比にして、工場において型枠で成形したものである。
② 石綿含有けい酸カルシウム板第二種
けいそう土等のけい酸質原料と石灰質原料に水を加えてスラリーとし、オートクレーブ処理を行 い、生成したけい酸カルシウムにアスベスト等の補強繊維を混入してプレス成形して製造したもの
である。石綿含有率は30%以下である。
③ 石綿含有耐火被覆塗り材
耐火被覆を目的に、こて塗りで鉄骨等に塗られたものである8),10),11),12)。 (3) 石綿含有断熱材
法令及び条例に基づき届出対象となる石綿含有断熱材には、石綿を含有する屋根用折版裏断熱 材及び煙突用断熱材がある。
① 屋根用折版裏断熱材
結露防止・耐火断熱の目的で屋根の裏打ちとして張り付けられたフェルト状の断熱材である。石 綿含有率が90%と高いものがある。
② 煙突用断熱材
煙突内側に張られた断熱目的の材料である。繊維積層体の断熱層(カポ部)とその内側表面のラ イニング層(ライナー部)から成る。商品によっては、石綿含有率が70~90%と高いものがある。
3. 成形板等
ここで分類される成形板等とは、上記の吹付け材、保温材等以外の石綿含有建材で、耐火、耐久性、
耐候性等を目的に、内装材、外装材、屋根材に使用されている成形タイプのものである。一部を除き、
見掛け密度が概ね0.5g/cm3以上であり、硬い材料がほとんどである。また、建築物以外の工作物で 使用されているものとして、不定形耐火材(キャスタブル)がある。これは、主に鋼板製煙突の筒身 を高温の酸性ガスより保護するための内部ライニング材として用いられ、耐酸用として石綿を 1~
1.5%、断熱用として4~5%含有したものが使用されていた。
法では、成形板等は特定建築材料に該当せず、法施行規則で定める作業基準の遵守を含め、規制の 対象外である。一方、条例においては、石綿含有成形板等も含めた石綿含有材料を使用する建築物等 の解体又は改修の工事を施工する者に対して、「作業上の遵守事項」に従って工事を施工することが 義務付けられている(条例第123条第2 項)。ただし、石綿含有の成形板等のみを使用した建築物等 については、解体又は改修に係る飛散防止方法等計画の届出は必要ない(条例第124条第1項)。
労働安全衛生法施行令の改正により、平成16年10月から、石綿セメント円筒など石綿を含有する 5 種類の成形板等の製造・使用等が禁止された。これに伴い、これらの種類に適用されるJIS規格の うち、アスベストの使用が規定されていたものについては、廃止又は 2004 年版においてアスベスト 以外の繊維を使用するよう改正された。
なお、アスベスト成形板の詳細については、東京都環境局が別に作成した「アスベスト成形板対策 マニュアル」を参照されたい13),14)。
【コラム】 都内のアスベスト解体工事は増えるのか?
アスベストを含有する建材は、右図の1995年ま でに着工された建築物のうち約10%で使用されて いると考えられることから、現状の届出件数が 2040年過ぎまで続くことが見込まれる。
0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 18000 20000
80 85 90 95 00 05 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55
*1 1975年(昭和50年):石綿含有率5%超えが原則禁止 都内の解体棟数の予測(非木造)
(東京都統計年鑑の解体棟数より推計)
着工年次
1952-1975 年 *1 1976-1995 年 *2 1996 年以降
第3章 アスベストの飛散防止対策(大気汚染防止法・環境確保条例)
本章においては、石綿含有建材を使用した建築物等の解体・改修時におけるアスベストの飛散防止 対策について、事前調査等、作業計画の策定及び届出、工事開始前の措置、作業中の措置、作業後の 措置の順で、法及び条例に基づく規制内容の解説を中心に、アスベストによる大気汚染を防止するた めの具体的方策を示す。平成26年6月1日施行の法及び条例の改正内容は次のとおりである。また、
参照条文とマニュアル内の対応ページを表4に示す。
大気汚染防止法
工事後の措置 工事開始前の措置
作業中の措置
環境確保条例 事前調査
作業計画の策定及び届出
廃棄物の処理(廃掃法による)
敷地境界での濃度測定(作業中)
記録の保存
敷地境界での濃度測定(工事後) 法改正(追加)
事前調査の実施
法改正(変更)
届出義務者を施工者から発注 者または自主施工者に変更
施行規則改正(追加)
作業基準に追加
・作業場・前室が負圧に保た れているか確認
・集じん排気装置の排気口で の粉じん濃度の測定
作業基準・遵守事項の遵守
集じん・排気装置の稼働状況の 確認等
敷地境界での濃度測定(工事前) 事前調査結果・工事内容の掲示
施行規則改正(追加)
作業基準に追加
・負圧の確認結果と、集じ ん排気装置稼動確認・補 修措置を記録
・記録を特定工事終了時ま で保存
工事の流れ
発注者へ調査結果等を書面で説明 法改正(追加)
受注者から発注者への事前調 査結果の説明
条例改正(変更)
届出義務者を施工者から発注 者または自主施工者に変更 法改正(追加)
事前調査結果を公衆の見やす い位置に掲示
告示改正(追加)
受注者は発注者に対し条例届 出に必要な事項を説明
告示改正(追加)
作業実施状況等の記録と 3 年間の保存
施行規則改正(変更)
石綿の飛散の監視方法につ いて
・敷地境界で行なう石綿の測 定方法に、「アスベストモ ニタリングマニュアル(環 境省)」を追加
・監視結果の記録と3年間の 保存
図4 アスベスト解体(除去)等工事の流れと大気汚染防止法・環境確保条例の主な改正内容
表4 解体等作業において必要な措置内容と参照条文
措置内容 参照条文
大気汚染防止法及び東京都環境確保条例 ページ 事前調査 【法】第18条の17第1項、第3項
【法施行規則】第16条の5
【条例】第123条第2項、告示第830号
P15~
P17
発注者へ調査結果等を説明 【法】第18条の17第1項
【法施行規則】第16条の6、7、8
【条例】第123条第2項、告示第830号
P15~
P16
届出の提出 【法】第18条の15
【法施行規則】第10条の4、第13条
【条例】第124条第1項
【条例施行規則】第60条
P18~
P25
掲示板の設置 ①事前調査結果の掲示
【法】第18条の17第4項
【法施行規則】第16条の9、10
②特定工事に該当する場合の掲示
【法】第18条の14
【法施行規則】第16条の4第1項
P25~
P26
敷地境界での濃度測定
(工事前・作業中・工事後)
【条例】第123条第2項
【条例施行規則】第59条 別表13
P26~ P27、
P37、
P38
作業中における作業基準・作業上の 遵守事項の遵守
作業基準
【法】第18条の14
【法施行規則】第16条の14第2項 別表7 作業上の遵守事項
【条例】第123条第2項、告示第830号
P28~
P37
廃棄物の処理 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法)
等による
P35、
P41~
P48 記録の保存 【法】第18条の14
【法施行規則】第16条の14第2項 別表7
【条例】第123条第2項、告示第830号
P39~
P40
1. アスベスト飛散防止対策の対象となる建設工事
法及び条例において、アスベストの飛散防止対策が規定されている建設工事は次のとおりである。
① 解体等工事
建築物その他の工作物(以下「建築物等」という。)を解体し、改造し、又は補修する作業を伴 う建設工事をいう。ただし、特定工事に該当しないことが明らかなもの(平成18年9月1日以後 に建設された建築物等や、平成18年9月1日以後に改築・増設された部分のみの解体等工事。【法 施行規則第16条の5】)は除く【法第18条の17】。法に基づく事前調査等の対象となる。
② 石綿を含む建設材料(石綿含有成形板等も含む。)を使用する建築物等の建設、解体又は改修の 工事【条例第123条第2項】
条例に基づく作業上の遵守事項及び飛散状況の監視の対象となる。
③ 特定工事
吹付石綿又は石綿含有断熱材、保温材、耐火被膜材(特定建築材料)が使用されている建築物等 を解体、改造、又は改修する作業(特定粉じん排出等作業)を伴う建設工事をいう【法第 18 条の 15】。法に基づく届出及び作業基準の対象となる。
④ 石綿含有建築物解体等工事
石綿を含む建築材料のうち吹付石綿又は石綿含有保温材を使用する建築物等で、一定の規模要件 を上回るもの(P18 表5-2参照)の解体又は改修の工事をいう【条例124条第1項、条例規則 第60条】。条例に基づく届出の対象となる。
【参考】建築物と工作物
① 建築物
建築物は、屋根を有するものであることが前提となり、それを支えるものとしての柱又は壁(い ずれでもよい)が必要である 15)。ただし、屋根とはいえない孔開きの床を有するような自走式車庫
(自動車を運転して駐車位置まで移動する車庫)などの簡易構造物も「これらに類する構造のもの を含む。」として建築物の範疇に含まれる。また、建築物に附属する門若しくは塀、観覧のための工 作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する 施設も建築物の定義に含まれる。
「観覧のための工作物」は、野球場や競馬場のスタンドなどをいい、この場合、屋根を有しない ものでも建築物として取り扱われる。
「地下又は高架の工作物」内に設ける施設は、地下街の施設や電波塔の展望室など、当該工作物 の一部として事務所・店舗などの施設を有する場合には、その部分が建築物として取り扱われる。
他の法令等で規制されている鉄道・軌道の運転保安施設等は、屋根や柱を有するものでも、建築 基準法上、建築物には含まれない。
また、建築物には、建築物に設ける給水、排水、換気、暖房、冷房、排煙若しくは汚水処理の設 備又は煙突、昇降機等の建築設備が含まれる。
② 建築物以外の工作物
建築物に該当しない工作物には、建築基準法第88条第1項及び第2項の規定に基づき、同法の規
定が準用される指定工作物(準用工作物)と、建築物・指定工作物以外の工作物とがある。
指定工作物は、以下に示す煙突等の工作物、昇降機等の工作物及び製造施設等の工作物の 3種類 に分類される(建築基準法施行令第138条)。これらの分類に応じて、確認・検査等の手続及び構造・
設備関係などの規定が準用される。
i. 煙突等の工作物 … 煙突(高さ6m超)、鉄筋コンクリート柱・鉄柱・木柱等(高さ15m超。
ただし、旗ざお・架空電線路用・保安通信設備用のものを除く。)、広告塔・広告板・装飾塔・
記念塔等(高さ4m超)、高架水槽・サイロ・物見塔等(高さ8m超)、擁壁(高さ2m超)
ii. 昇降機等の工作物 … 乗用エレベーター・エスカレーターで観光のためのもの、ウォーター シュート・コースター等の高架の遊戯施設、メリーゴーラウンド・観覧車・オクトパス・飛行 塔等の回転運動をする遊戯施設
iii. 製造施設等の工作物 … 製造施設・貯蔵施設・遊戯施設等の工作物で、用途地域等の規定の
準用があり、特定行政庁による例外許可が前提となるもの。事例は極めて少ない15)。
2. 大気汚染防止法・環境確保条例に基づく義務等の対象者
法及び条例において、アスベストの飛散防止対策に関する義務等の対象者は以下のとおりである。
① 解体等工事の発注者
建築物等を解体し、改造し、又は補修する作業を伴う建設工事の注文者で他の者から請け負っ た工事の注文者以外の者、すなわち元請施工者と直接契約する注文者のことをいう。事前調査に 要する費用の適正負担等当該調査に協力しなければならない。
② 解体等工事の受注者等
解体等工事の受注者で他の者から請け負った工事の受注者以外の者、すなわち元請施工者と、
解体等工事を請負契約によらないで自ら施工する者(自主施工者)とを合わせていう。解体等工 事が特定工事に該当するか事前調査を行い、解体等工事を施工するときには、事前調査結果等を 公衆の見やすい位置に掲示しなければならない。また、受注者は事前調査の結果を当該工事の発 注者に書面で説明しなければならない。
③ 特定工事の発注者等
特定工事の注文者で他の者から請け負った工事の注文者以外の者、すなわち元請施工者と直接 契約する注文者と、特定工事を請負契約によらないで自ら施工する者とを合わせていう。法に基 づき「特定粉じん排出等作業実施届出書」を提出する義務がある。また、当該工事が条例の石綿 含有建築物解体等工事の規模要件を上回る場合、併せて条例に基づき「石綿飛散防止方法等計画 届出書」を提出する必要がある。
④ 特定工事の施工者
特定工事の元請施工者と、請負契約によらないで自ら施工する者とを合わせていう。当該工事 が石綿を含む建設材料(石綿含有成形板等も含む。)を使用する建築物等の建設、解体又は改修の 工事に該当する場合、条例の作業上の遵守事項の遵守と飛散状況の監視の義務を負う。また当該 工事が特定工事に該当する場合、法の作業基準の遵守義務を負う。
3. 事前調査等
解体・改修を行おうとする建築物等の石綿含有建材の使用状況については、条例及び石綿則で事前 調査を義務付けていたが、平成26年6月1日の改正大防法施行により、法においても、解体等工事 の受注者に事前調査の実施、調査結果の発注者への説明及び工事現場への調査結果の掲示が義務づけ られた。また、解体等工事を請負契約によらないで自ら施工する者には、事前調査の実施と調査結果 の掲示が義務付けられた。【法第18条の17】
事前調査は、不十分であると石綿を飛散させるおそれがあるため、国土交通省が創設した「建築物 石綿含有建材調査者講習登録規程(平成25年7月30日、国土交通省告示第748号)」により登録さ れた者又はこれと同等以上の知識・経験を有する者が実施することが望ましい。
(1) 対象の施設
アスベストの使用範囲は、建築物だけでなく、化学プラントなどの「建築物以外の工作物」に も広範囲に及んでいる。このため、法、条例の規制対象は、「建築物その他の工作物【法】」、「建 築物その他の施設【条例】」と規定されており、建築物(建築基準法第2条第1号に規定する建築 物)に加えて、土地に接着して人工的作為を加えることによって成立した施設等すべてが対象で ある。
ただし、特定工事に該当しないことが明らかな平成18年9月1日以降に建設された建築物等は、
事前調査等の対象から除くこととされている。【法第18条の17、施行規則第16条の5】
(2) 事前調査の対象建材
石綿含有建材は、石綿を含有する吹付け材、保温材等、成形板等の3 つに分類される(詳細は 第2 章を参照されたい。)。大気汚染防止法では、吹付け材と保温材等が事前調査の対象となって いる。【法第18条の17】
一方、条例及び石綿則では、成形板等も調査対象の建材である。(条例第123条第2項、作業上 の遵守事項第2)
(3) 発注者への説明
解体等工事の受注者は、当該解体等工事が特定工事に該当するか否かの調査結果について、発 注者に対し、必要な事項を記載した書面を交付して説明しなければならない。【法第18条の17】
●説明時期【法施行規則第16条の6】
特定工事に該当する場合は、特定粉じん排出等作業開始日の14日前または特定工事開始日のい ずれか早い日までに、事前調査結果と届出に必要な事項について説明を行う。
特定工事に該当しない場合は、工事の開始の日までに事前調査結果の説明を行う。
●説明事項【法施行規則第16条の7,8】
① 調査を終了した年月日
② 調査方法
③ 調査結果
④ 特定粉じん排出等作業の種類
⑤ 特定粉じん排出等作業の実施の期間
⑥ 特定粉じん排出等作業の対象となる建築物等の部分における特定建築材料の 種類並びにその使用箇所及び使用面積
⑦ 特定粉じん排出等作業の方法
⑧ 特定粉じん排出等作業の対象となる建築物等の概要、配置図及び付近の状況
⑨ 特定粉じん排出等作業の工程を明示した特定工事の工程の概要
⑩ 特定工事を施工する者の現場責任者の氏名及び連絡場所
⑪ 下請負人が特定粉じん排出等作業を実施する場合の当該下請負人の 現場責任者の氏名及び住所
また、条例に基づく届出が必要な場合には、発注者に対し、届出に必要な次の情報を提供しな ければならない【作業上の遵守事項第1第7号】。詳細は、4.(2)(P20~21)を参照されたい。
石綿飛散の防止方法
石綿濃度の測定方法
排水の処理の方法
粉じん飛散の防止方法
(4) 設計図書等及び現場目視による調査
石綿含有建材が使用されているかどうかの調査は、まず、建築や改修当時の材料、工法などが 記載されている設計図書や施工記録などから、石綿を含有する可能性のある建材を洗い出し、建 築年次と石綿含有建材の製造時期との照合を行って、石綿含有の有無を把握する。
材料や工法などが記載されている可能性のある設計図書等は、建築意匠設計図、竣工図、仕上 げ表、仕様書、施工記録、維持保全記録、竣工後の改修工事記録などである。設計図書等による 石綿含有建材の識別は、図書等に記載されている「石綿○○」などの材料の種類名又は商品名等 による。
石綿含有建材の商品名とその製造時期などの情報源には、以下のものがある。
石綿(アスベスト)含有建材データベース(国土交通省、経済産業省)
http://www.asbestos-database.jp/
東京都作成「民間建築物等のための建築物アスベスト点検の手引」の巻末に掲載している「石綿含有 材料の一覧」
http://www2.kankyo.metro.tokyo.jp/kaizen/keikaku/asbestos/tenkentebiki.pdf
(社)日本石綿協会作成「石綿含有建築材料の商品名と製造時期」
http://www.jaasc.or.jp/other/ganyu_06.pdf
経済産業省の「石綿(アスベスト)を含有する家庭用品の実態把握調査の結果について」等 http://www.env.go.jp/air/asbestos/index8.html
ロックウール工業会、せんい強化セメント板協会、押出成形セメント板協会、日本窯業外装材協会、
インテリアフロア工業会、日本建築仕上材工業会等、関係業界団体のホームページに掲載された情報
④~⑪は 特定工事に該当 する場合
これらの資料をもとに、建築年次や改修年次と石綿が含有していた商品の製造時期とを照合し て、石綿含有の有無を判断する。石綿含有建材の商品名は、意図的に石綿を含有させなくなった ものでも同一商品名が使用されている場合が多いので、必ず建築年次などを考慮して判断する。
現場目視による調査・把握とは、石綿含有建材の使用箇所がその種類からある程度特定される ことが多いことから、現場目視により石綿含有建材の使用の“可能性”を判断したり、成形板等 については、“a”マークを調べることによって石綿含有の識別を行ったりすることをいう。
商品名や“a”マークが明らかでないときは、現場目視だけでは、石綿含有の有無の確認は極 めて困難であることから、この場合は、次に示す材質分析を行う。
“a”マーク16)
アスベスト含有建材を製造する業界においては、平成元年7 月からの製造分では質
量で5%を超えるもの、平成7年1月26日からの製造分では1%を超えるものに対し
て、自主的に20mm×20mmの大きさの“a”の文字を押印などにより表示している。
従って、このマークがあれば、アスベストが含有されていることになる。
(5) 材質分析による調査
建築用や設備用の材料が質量で 0.1%を超えて石綿を含有しているか否かの判定方法として、
最も確実な方法は、材料の一部を採取して、JIS 規格に基づく材質分析(JIS A 1481‐1,2,3「建 材製品中のアスベスト含有率測定方法」)もしくは厚生労働省通達「天然鉱物中の石綿含有率の分 析方法について」(平成18年8月28日付基安化発第0828001号)による分析を行うことである。
この分析法は、高度の技術が必要とされるため、材質分析は専門的な測定機関で実施する必要が ある。
材料の一部を採取するに当たっては、JIS規格に規定されていることに加え、次の点などに留意 する必要がある。なお、この採取は届出対象ではない。
国家検定合格の防じんマスクを着用する。
仮に石綿が含有している場合には採取により石綿の飛散のおそれがあるため、採取箇所を湿らせてか ら採取する。
採取により石綿含有の可能性のある建材に損傷を与え、粉じんが飛散しやすい状態となるため、採取 後は、補修を行うなどの措置を講じる。
HEPAフィルタ付真空掃除機で、発生する粉じんを吸引しながら採取することが望ましい。
※ 材質分析による調査が必要ない場合
石綿則では、当該の建築物等で石綿等が吹き付けられていないことが明らかである場合(すなわち、保温 材等又は成形板等のみが使用されている場合)において、事業者が、石綿含有建材が使用されているとみな して労働安全衛生法及びこれに基づく命令に規定する措置を講ずるときは、分析による調査は必要ないとし ている(石綿則第3条第2項ただし書)。
環境確保条例の遵守事項においても分析による石綿含有の有無の確認の規定があるが、条例の合理的な運 用を行うため、石綿則と同様に、保温材等又は成形板等のみの使用の場合に限り、これらの建材を石綿含有 のものとみなして、大気汚染防止法及びこれに基づく政省令等を遵守するとともに、環境確保条例及びこれ に基づく施行規則並びにこの分析の規定以外の遵守事項に規定する措置を講ずる場合には、分析による確認 は必要ない。
【参考】過去の材質分析結果の取り扱い
石綿の種類には、クリソタイル、クロシドライト、アモサイト、アンソフィライト、トレモライト、アク チノライトがあることとされ、これを質量で 0.1%以上含有する物を、現在法及び条例の規制対象としてい る。この規制対象は法令の改正とともに変更されているため、過去に行った材質分析の結果については以 下の点に留意されたい。
○平成18年9月1日より規制対象が、石綿の質量が当該建築材料の質量の1%を超えるものから石綿の質 量が当該建築材料の質量の0.1%を超えるもの へと変更された。
→平成18年8月31日以前の分析結果は、「石綿なし」となっていても含有率0.1%超である場合があるため 注意が必要。
○平成20年2月6日に、厚生労働省通知により上記 6 種類の石綿の分析調査の徹底が指示された。
→平成20年2月5日以前は石綿6種類の分析調査が徹底されていないため注意が必要。
4. 作業計画の策定と届出
平成26年6月1日の改正法及び条例の施行で、届出義務者が特定工事の施工者から発注者又は特 定工事を自ら施工する者(以下「発注者等」という)へ変更された。(法第18条の15第1項及び第2 項、条例第124条第1項)
届出窓口は表5-1、届出の規模要件は表5-2のとおりである。なお、特別区及び市によっては、
独自の条例又は要綱に基づく届出が必要になる場合もあるので、留意する必要がある。
表5-1 大気汚染防止法及び環境確保条例の届出窓口
表5-2 大気汚染防止法及び環境確保条例に基づく届出対象
届出様式 大気汚染防止法 環境確保条例
工事の内容 様式第3の4 第35号様式
吹付け石綿の使用面積 15m2以上
○ ○
15m2未満 ―
吹付け石綿、保温材等が使用されている建築物 の延べ面積又は工作物の築造面積
500m2以上
○ ○
500m2未満 ―
工事の場所 工事の対象・規模 届 出 窓 口
23区 すべての工事 各区の環境主管課
八王子市 すべての工事 八王子市環境部環境保全課 市
※八王子市除く
延べ面積が2,000m2未満の建築物 各市の環境主管課 延べ面積が2,000m2以上の建築物
すべての工作物 東京都多摩環境事務所環境改善課 西多摩郡の町村 すべての工事 東京都多摩環境事務所環境改善課 島しょ すべての工事 東京都環境局環境改善部大気保全課
(1) 届出対象の石綿含有建材及び工事の種類
① 届出対象の石綿含有建材(特定建築材料)
法、条例のいずれも、石綿を含有する吹付け材又は保温材等が届出対象の施設に使用されている 場合に、届出が必要である。なお、石綿則についても同様である。
ここで、「石綿を含有する」とは、建材の製造又は現場施工における建材の調製に際して石綿を 意図的に含有させたか、又はそれが不明な場合にあっては、石綿の質量が当該建材の質量の0.1%
を超えることをいう9)。
② 届出対象の工事の種類
i. 解体工事 … 既存建築物等の全部又は一部を解体し、建材等を除去する工事をいう。
ii. 改修工事 … 既存建築物等の構造以外の全部又は一部を除却し、規模の著しく異ならない範 囲で修繕し、又は模様替を行うに際して、当該建築物等に使用されている石綿含有建材を処理 するために、当該建材の除去、封じ込め又は囲い込みその他の措置を行う工事をいう。
③ 特定建築材料の処理の方法
i. 除去 … 特定建築材料をすべて除去して、建築物等の全部又は一部を解体するか、改修して 他の石綿を含有しない建材等に代替するなどを行う方法をいう。
ii. 封じ込め … 大気への石綿粉じんの排出及び飛散が生じないようにしながら、特定建築材料 への表面又は内部に固化剤を浸透させるなどして、石綿粉じんの飛散防止及び特定建築材料の 損傷防止を図ることをいう。
iii. 囲い込み … 大気への石綿粉じんの排出及び飛散が生じないようにしながら、特定建築材料
が露出しないよう板状の材料で完全に覆うなどして、石綿粉じんの飛散防止及び特定建築材料 の損傷防止を図ることをいう。
④ 届出期日
届出は、特定建築材料(吹付け石綿及び石綿含有保温材等)が使用されている建築物等を解体、
改造、補修する作業(特定粉じん排出等作業)を開始する日の14日前までに行わなければならな
い【法第18条の15、条例第124条】。特定粉じん排出等作業の開始日とは、除去等に係る一連の
作業の開始日であり、例えば、作業区画の隔離等の作業を開始する日である。
【参考】特定粉じん排出等作業に該当しない場合の例
大気汚染防止法に規定する特定粉じん排出等作業は、その定義上、建築物その他の工作物を解体・改造・補修する作 業の場所から排出又は飛散する石綿の粉じんが大気汚染の原因となるおそれのあるものに限っている。そのため、配管 の曲線部のみが石綿を含有する保温材で覆われている場合に、保温材で覆われていない直線部分を切断して配管ごと保 温材を取り外す作業が行われることがあるが、このような事例において、当該作業の場所から石綿の粉じんが排出され ず、かつ、飛散しない場合には、当該作業は特定粉じん排出等作業に該当しないので、特定粉じん排出等作業の実施の 届出は必要ない8)。
環境確保条例に基づく飛散防止方法等計画の届出は、大気汚染防止法に基づく届出にあわせて行うことから、特定粉 じん排出等作業に該当しない建築物等の解体・改修工事については、環境確保条例に基づく届出も要しない。
ただし、上記の事例において、保温材の劣化などにより当該作業に伴い石綿が飛散するおそれがある場合や、当該作 業時の振動等により近傍の特定建築材料から石綿が飛散するおそれがある場合には、当該作業が特定粉じん排出等作業 になり得ることに留意する必要がある8)。
また、石綿則の運用においては、特定粉じん排出等作業に該当しない作業であっても、配管ごと保温材を取り外す作 業は、広い意味で当該保温材を「除去」する作業にあたるとしていることから、石綿則第5条第1項に基づく届出その 他必要な措置を講じなければならないことにも充分に留意する必要がある18)。