建築物の解体等に係る石綿 (アスベスト)
飛散防止対策マニュアル
平成 29 年 12 月
まえがき
石綿(アスベスト)は、その化学的物理的特性から建築材料のほか、様々な用途に用いら れてきました。中でも、吹付けアスベストは、昭和30年頃からビル等の耐火被覆用などの材 料として使われはじめ、昭和47年頃に最も大量に使われましたが、労働安全の面から、昭和 50年に石綿の吹き付けは原則禁止され、1%を超えて石綿を含有する吹付け材についても、
平成7年に原則禁止されました。さらに、平成18年9月1日には、石綿を0.1%以上含有する 製品の製造や使用が一部の例外を除き禁止され、平成24年3月1日には全面禁止になってい ます。
しかし、現在、石綿を含有する建築材料が既に使用された建築物等が建て替えの時期を迎 えており、これらの建築物等の解体や改修の際に石綿を飛散させないための防止対策の徹底 が課題となっています。
本マニュアルは、建築物の解体、改修工事の際の石綿飛散防止対策について、大気汚染防 止法及び都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(環境確保条例)による規制の内容 や留意事項等を中心に取りまとめたものです。規制実務に携わる区市の職員はもとより、建 築物等の解体、改修工事の発注者や施工者の方々においても、本マニュアルを活用し、工事 に伴う石綿の飛散防止対策を的確に実施していただきますようお願いいたします。
平成29年12月 東京都環境局環境改善部
目 次
第1章 石綿に関する基礎知識 ... 1
石綿(アスベスト)とは ... 1
1.1 石綿による健康影響 ... 2
1.2 石綿の輸入量と建築材料への利用 ... 3
1.3 石綿が使用されている建築物等の解体 ... 3
1.4 第2章 石綿を含有する建材の種類と用途 ... 7
吹付け材... 7
2.1 2.1.1 吹付けアスベスト ... 7
2.1.2 石綿含有吹付けロックウール ... 9
2.1.3 その他の吹付け材 ... 9
保温材等... 10
2.2 2.2.1 石綿含有保温材 ... 10
2.2.2 石綿含有耐火被覆材 ... 11
2.2.3 石綿含有断熱材 ... 11
成形板等... 12
2.3 第3章 解体等工事における石綿の飛散防止対策(大気汚染防止法・環境確保条例等) ... 14
大気汚染防止法及び環境確保条例の規制対象となる工事 ... 14
3.1 3.1.1 解体等工事 ... 14
3.1.2 石綿含有材料を使用する建築物等の解体又は改修の工事 ... 15
3.1.3 特定粉じん排出等作業を伴う建設工事(特定工事) ... 15
3.1.4 石綿含有建築物解体等工事 ... 15
大気汚染防止法及び環境確保条例に基づく規定の対象者 ... 16
3.2 3.2.1 発注者 ... 16
3.2.2 受注者 ... 16
3.2.3 自主施工者 ... 16
事前調査等 ... 17
3.3 3.3.1 調査対象の工事 ... 17
3.3.2 事前調査を行う者 ... 17
3.3.3 調査対象とする建材 ... 18
3.3.4 調査の具体的な手順 ... 18
3.3.5 発注者への説明等 ... 22
作業実施届等の提出 ... 23
3.4 3.4.1 大気汚染防止法及び環境確保条例に基づく届出 ... 23
3.4.2 その他の法令等に基づく届出 ... 27
石綿濃度の測定 ... 31
3.5 3.5.1 環境確保条例に基づく敷地境界における測定 ... 31
3.5.2 作業場の近傍での測定 ... 33
工事開始前の措置 ... 34
3.6 3.6.1 事前調査結果の掲示 ... 34
3.6.2 特定工事に係る掲示 ... 34
3.6.3 敷地境界における石綿濃度の測定 ... 34
作業中の措置 ... 35
3.7 3.7.1 工事現場全体の覆い・湿潤化 ... 35
3.7.2 吹付け材、保温材等を掻き落とし等により除去する作業 ... 35
3.7.3 吹付け材、保温材等を掻き落とし等により除去する場合で、作業場の隔離と同等以上の効果 を有する措置を講じて行う作業 ... 43
3.7.4 保温材等を掻き落とし、切断、破砕以外の方法により除去する作業 ... 46
3.7.5 吹付け材、保温材等の封じ込め又は囲い込みの作業 ... 47
3.7.6 成形板等を除去する作業 ... 48
3.7.7 排水の処理 ... 48
作業後の措置 ... 48
3.8 3.8.1 仕上げ清掃 ... 48
3.8.2 敷地境界における石綿濃度の測定 ... 48
作業内容の記録・保存 ... 49
3.9 3.9.1 大気汚染防止法に基づく記録・保存 ... 49
3.9.2 環境確保条例に基づく記録・保存 ... 49
アスベスト廃棄物の処理 ... 50
3.10 3.10.1 アスベスト廃棄物の処理の概要 ... 50
3.10.2 特別管理産業廃棄物(廃石綿等)の定義と範囲 ... 53
3.10.3 石綿含有産業廃棄物の定義 ... 53
3.10.4 特別管理産業廃棄物管理責任者の設置 ... 53
3.10.5 廃棄物が搬出されるまでの措置及び保管 ... 54
関係法令等の条文 ... 56
3.11 3.11.1 大気汚染防止法(抜粋) ... 56
3.11.2 都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(抜粋) ... 62
3.11.3 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(抜粋) ... 66
第4章 都と区市との役割分担 ... 76
大気汚染防止法の規定による事務移管 ... 76
4.1 事務処理特例条例による事務移管 ... 76
4.2 関係規程... 77
4.3 4.3.1 特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例(抜粋) ... 77
4.3.2 市町村における東京都の事務処理の特例に関する条例(抜粋) ... 78
4.3.3 地方自治法(抜粋) ... 79
第5章 お問い合わせ、届出の窓口 ... 81
総合的なお問い合わせ ... 81
5.1 東京都の届出窓口 ... 82
5.2 特別区の届出窓口 ... 83 5.3
市の届出窓口 ... 84 5.4
労働基準監督署の一覧 ... 85 5.5
第1章
石綿に関する基礎知識
第1章 石綿に関する基礎知識 石綿(アスベスト)とは 1.1
石綿(いしわた、せきめん、アスベスト)は、天然に産する鉱物群のうちで、高い抗張力と 柔軟性をもつ絹糸状光沢の特異な繊維状集合(asbestiform)をなすものを指し、蛇紋石族のク リソタイル(白石綿)、角閃石族のクロシドライト(青石綿)やアモサイト(茶石綿)などいく つかの種類がある。耐熱性、耐薬品性、絶縁性等の工業上の諸特性に優れているため、建材、
電気製品、自動車などに利用されてきた。
大気汚染防止法及び環境確保条例並びに石綿障害予防規則でいう石綿は、石綿の使用におけ る安全に関する条約や、米国アスベスト災害緊急対策法(AHERA)等における定義と同様に、表 1に示す6種類の鉱物であり、その物理的、化学的特性は表2のとおりである。
表1 石綿の分類
石綿名 化学組成式 CAS番号
蛇紋石族 クリソタイル(温石綿・白石綿) Mg3Si2O5(OH)4 12001-29-5
角閃石族
クロシドライト(青石綿) Na2Fe32+Fe23+Si8O22(OH)2 12001-28-4 アモサイト(茶石綿) (Mg,Fe)7Si8O22(OH)2 12172-73-5 アンソフィライト(直閃石綿) Mg7Si8O22(OH)2 77536-67-5 トレモライト(透角閃石綿) Ca2Mg5Si8O22(OH)2 77536-68-6 アクチノライト(陽起石綿) Ca2(Mg,Fe)5Si8O22(OH)2 77536-66-4
表2 石綿の主な物理的・化学的特性
クリソタイル クロシドライト アモサイト アンソフィライト トレモライト アクチノライト
硬 度 2.5~4.0 4 5.5~6.0 5.5~6.0 5.5 6
比 重 2.55 3.37 3.43 2.85~3.1 2.9~3.2 3.0~3.2
融点(℃) 1521 1193 1399 1468 1316 1393 比熱
(kcal/g/℃)
0.266 0.201 0.193 0.210 0.212 0.217
抗張力
(㎏/cm2)
31000 35000 25000 24000 5,000未満 5,000未満
比抵抗
(MΩcm)
0.003~0.15 0.2~0.5 500未満 2.5~7.5 ── ──
柔軟性 優 優 良 良~不良 良~不良 良~不良
表面電荷 + - - - - -
耐酸性 劣 優 良 優 優 良
耐アルカリ性 優 優 優 優 優 優
脱構造水温度*
(℃)
550~700 400~600 600~800 600~850 950~1,040 450~1,080
耐熱性 良。450℃位から もろくなる。
クリソタイルと 同様
クリソタイル
よりやや良 アモサイトと同様 クリソタイル
より良 不良
* 空気中において、脱水反応を起こし結晶構造が崩壊して、強度を失う温度
(Winson1)、Hodgson2)をもとに作成)
1) Winson, R.W.: "Asbestos,” 4th ed., ed. by Lefond, S.J., Industrial Minerals and Rocks (1975) pp.384-385
2) Hodgson, A.A.: “Chemistry and physics of asbestos”, in “Asbestos: properties, applications and hazards”, ed. by Michaels, L. and Chissick, S.S., vol.1, pp.67-114,
石綿による健康影響 1.2
石綿を吸入することによって、主に次のような健康影響(疾患)が生じるおそれがある。
中皮腫
①
肺を取り囲む胸膜、腹部臓器を囲む腹膜、
心臓及び大血管の起始部を覆う心膜等にでき る、予後が不良な悪性の腫瘍である。石綿の ばく露からおおむね20~50年後に発症する
(約40年に発症のピークがある)。
石綿以外の原因としては戦時中まで使用さ れていたトロトラスト(放射性造影剤)によ るものなどが報告されているが報告数は少な いことなどから、中皮腫は石綿を原因とする ものと考えて差し支えないとされている4)。 最初の症状は、胸膜中皮腫では息切れや胸 痛が多く、腹膜中皮腫では腹部膨満感や腹痛 などで気付くことが多い。
肺がん
②
石綿が原因で生じる肺がんとそれ以外の肺がんとでは、発生部位や組織型に違いはない。石 綿が原因で生じる肺がんの場合、石綿のばく露から肺がん発症には、通例15~40年の潜伏期間 がある。
肺がんは、さまざまな原因が指摘されている中で、石綿を原因とするものとみなせるのは、
肺がんの発症リスクを2倍以上に高める量のばく露(石綿のばく露濃度(本/mL)とばく露年数
(年)を掛けた値、蓄積石綿ばく露量が25本/mL ×年以上)があった場合とするのが妥当であ ると考えられている4)。
石綿肺
③
石綿肺は、肺が弾力性を失い硬くなる肺線維症(じん肺)という病気の一つであり、石綿を 大量に吸引することによって発生する職業病の疾患である。
石綿の高濃度ばく露であれば、10年未満のばく露期間であっても発症する。通常、石綿ばく 露後10年以上経過してレントゲンで初期病変が現れる。防じんマスクなどの着用が不適切であ れば、石綿肺を発症する危険性は十分にあり得る5)。
自覚症状としては、坂道や階段を上るときなどの息切れから始まることが多く、咳や痰が続 いたり、胸や背中に痛みを感じたりすることもある。
良性石綿胸水
④
石綿の高濃度ばく露の人に比較的多くみられる非腫瘍性の胸膜炎である。胸を包む胸膜に、
胸水とよばれる浸出液がたまる。石綿のばく露から10年以内に発症することもあるが、多くは 20~40年後に突然発症する。発熱、咳、胸痛、息切れなどの症状で発症するが、自覚症状がな い場合もある4),5)。
3) 社団法人日本石綿協会:「THE ASBESTOS せきめん読本」(1996)
4) 石綿による健康被害に係る医学的判断に関する検討会:「石綿による健康被害に係る医学的判断に関する考え方報告書」(2006)
5) 森永謙二編著:「アスベスト汚染と健康被害」、日本評論社(2005)
図1 石綿によって起こる病気とその部位3)
びまん性胸膜肥厚
⑤
石綿による胸膜炎が発症すると、それに引き続き、胸膜が癒着して広範囲に硬くなり、肺の ふくらみを障害して呼吸困難をきたす。胸部レントゲン写真上、臓側胸膜(肺や気管支を覆う 胸膜)の肥厚を認めるようになるが、この状態をびまん性胸膜肥厚という。胸水が消退しても、
程度の差はあるが、びまん性の(広範囲に拡散した)胸膜肥厚を残す4)。
石綿の輸入量と建築材料への利用 1.3
我が国では、石綿の消費量のほとんどを輸入に頼ってきた。年間の輸入量は、高度成長期の 1960年代に急激に増加し、1974年の35万トンを最高に、1970年代及び1980年代は25万トンから 35万トンの高水準で推移してきたが、1990年代に入り年々減少し、2005年は110トンとなった。
1930年(昭和5年)から2005年(平成17年)の76年間の総輸入量は、約988万トンとなっている。
主な輸入元は、2004年においては、カナダ65.7%、ブラジル19.5%、ジンバブエ10.6%である。
輸入されたアスベストは、その多くが、スレート、けい酸カルシウム板、ビニル床タイルな どの建築材料として建築物に使用されてきた。我が国における石綿の輸入量と全国における建 築物の総着工床面積の推移を比較すると、1988年(昭和63年)頃までは両者に明確な相関が認 められる(図2)。1995年度においては、石綿輸入量の93%が建材に使用された6)。
図2 石綿輸入量と全国の建築物着工床面積の推移7)
表3は、建材以外のものも含めた石綿含有製品の主な種類と用途、規制や業界の自主的な製造 中止の推移を示したものである。
石綿が使用されている建築物等の解体 1.4
現在、石綿を含有する製品は輸入や使用等が全面禁止となっているが、石綿含有建材が使用 されている建築物の解体工事は今後も続く。
国土交通省では、0.1%以上の石綿を含む建材が使用されている可能性のある民間建築物(昭 和31年~平成18年までに施工されたS造やRC造のもの)は全国で280万棟あり、その解体のピ ークが平成40年頃に訪れると推計している8)。
一方、図3は、都内の非木造建築物について年次ごとの着工棟数9をもとに解体時期の推計を 行ったものである。都内では、石綿が使用されている建築物の解体が既にピークを迎えている と考えられ、今後、2050年(平成62年)頃まで現在の水準が続くことが見込まれる。
6) 社団法人日本石綿協会:「既存建築物における石綿使用の事前診断監理指針」(2005)
7) 「貿易統計」(財務省)及び「建築着工統計調査報告」(国土交通省)を基に作成した。
8) 国土交通省:「建築物石綿含有建材調査マニュアル」(2014)
9 「東京都統計年鑑 地域別構造別着工建築物」http://www.toukei.metro.tokyo.jp/tnenkan/tn-index.htm
0 100000 200000 300000 400000
0 50 100 150 200 250 300
1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005
日 本 の ア ス ベ ス ト 輸 入 量
( 千 ト ン
) 全
国 の 着 工 建 築 物 の 床 面 積
( 百 万
㎡
)
着工床面積 アスベスト輸入量
表3 石綿含有製品の主な種類、用途及び規制等の状況
分類 石綿含有製品の主な種類 主な用途 規制等の状況
建
材
吹付け材
吹付け石綿 鉄骨の耐火被覆、
内壁・天井の吸音・断熱 昭和50年に原則禁止 石綿含有吹付けロックウー
ル
石綿含有吹付けバーミキュ ライト(ひる石吹付け)
石綿含有パーライト吹付け など
鉄骨の耐火被覆、
内壁・天井の吸音・断熱、
天井の結露防止
石綿含有率5%を超えるものは、昭和50年 に原則禁止
石綿含有率1%を超えるものも、概ね昭和 62年頃に製造中止
法的には、石綿含有率1%を超えるものは、
平成7年に原則禁止
平成17年の石綿則施行で全面禁止
保温材等
石綿含有保温材 配管やボイラー等の保温 概ね昭和55年頃に製造中止 石綿含有耐火被覆材 鉄骨等の耐火被覆 概ね昭和62年頃に製造中止 石綿含有断熱材 屋根裏の結露防止、
煙突の断熱 概ね平成3年までに製造中止
成形板等
石綿含有ロックウール吸音
天井板 天井の吸音 概ね昭和62年頃に製造中止 ビニル床タイル
ビニル床シート 床 石綿含有のものは、昭和63年までに製造中 止
パルプセメント板 内壁、天井、軒天 石綿含有のものは、平成16年までに製造中 止
スレート・木毛セメント積層
板 屋根の下地、壁 接着するフレキシブル板が平成16年に石 綿含有製品の製造等を禁止
石綿セメント円筒 煙突、ケーブル保護管、温泉 の送湯管、排水管等
石綿含有のものは、平成16年に法的に製 造・使用等が禁止
押出成形セメント板 非耐力外壁、間仕切り壁 住宅屋根用化粧スレート 屋根材として張られた板の
上に葺く化粧板
繊維強化セメント板※ 屋根、外壁、内壁、天井、軒 天、耐火間仕切り
窯業系サイディング 外壁
非 建 材
摩擦材
クラッチフェーシング
クラッチ
石綿含有のものは、平成16年に法的に製 造・使用等が禁止
クラッチライニング ブレーキパッド
ブレーキ ブレーキライニング
接着剤 断熱材用接着剤 高温下で使用の工業用断熱 材どうしの隙間の接着
石綿紡織品
石綿糸、石綿テープ グランドパッキン等の原料 平成18年9月1日、既設の施設の使用につい ての一部例外製品を除き、製造・使用等が 全面禁止
平成24年3月1日、平成18年9月1日前に製造 または現に使用され、同日以降使用されて いる、ジョイントシート、ガスケットおよ びその原料を除き全面禁止
石綿布 石綿手袋、衣服、前掛け、耐 火カーテン、石綿布団等 シール材 石綿含有ガスケット 配管用フランジ等静止部分
石綿含有パッキン ポンプの軸封等の運動部分 電気絶縁板 電気絶縁用石綿セメント板 配電盤等
※ JIS A 5430:2001の規格における「繊維強化セメント板」には、成形板等に分類されるものとして、スレート波板、ス レートボード(フレキシブル板・軟質フレキシブル板・平板・軟質板)、パーライト板、けい酸カルシウム板第一種、ス ラグせっこう板がある。
(出典:「石綿(アスベスト)対策-予防から救済まで-」10))
10) 東京労働局:「石綿(アスベスト)対策-予防から救済まで-」(2017)
図3 都内の非木造建築物の解体棟数の推計
※1)建築物の残存率は、次のパラメータのワイブル累積分布によるものと仮定した。
50%減失年数 95%減失年数 m η
1959~1975年着工 40年 55年 4.596 43.32
1976~1995年着工 50年 65年 5.579 53.40
1996~2006年着工 55年 70年 6.069 58.42
※2)1975年(昭和50年):石綿含有率5%超の使用が原則禁止
1995年(平成7年):石綿含有率1%超の使用が原則禁止
2006年(平成18年):石綿含有率0.1%超の使用が原則禁止
0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 16,000 18,000 20,000
1980 1990 2000 2010 2020 2030 2040 2050 2060 2070 2080 2090 2100 建
築 物 の 解 体 棟 数
年 1996年~2006年着工の建築物 1976年~1995年着工の建築物 1959年~1975年着工の建築物 2017年
(平成29年)
第2章
石綿を含有する建材の
種類と用途
第2章 石綿を含有する建材の種類と用途
石綿(アスベスト)を含有する建材は、工法及び材料の見掛け密度などから、吹付け材、保 温材等、その他の建材(成形板等)の3つに分類することができる。現在、大気汚染防止法や 労働安全衛生法、建築基準法等の法令においては、建築材料の製造若しくは現場施工における 建築材料の調製に際して石綿を意図的に含有させたもの又は石綿の質量が当該建築材料の質量 の0.1%を超えるものが「石綿を含有する」とされている。
図4は、建築物における石綿を含有する建材の使用部位の例を示したものである。
吹付け材 2.1
石綿を含有する吹付け材は、主に、建築物等における鉄骨などの耐火被覆用に、また、機械 室(ボイラー室・昇降機室等)、駐車場などの天井、壁などに吸音・断熱材として使用されてき た。このほか、浴室等の天井の結露防止用として石綿含有の吹付け材が施工された例もある。
吹付け材の使用は、昭和30年頃から始められ、昭和39年に防音用として航空基地付近の施設 に使われたのをきっかけに広く使用されるようになった。昭和47年頃が、石綿含有吹付け材の 最需要期であった。
建築物等の解体や改修を行う時に大気汚染防止法による規制対象となる「吹付け石綿」につ いては、狭義の吹付け石綿(区別のため、以下「吹付けアスベスト」と称する。)のほか、石綿 含有吹付けロックウール(乾式・湿式)、石綿含有ひる石吹付け材、石綿含有パーライト吹付け 材等がある11)。また、建築物の内外装仕上げに用いられる建築用仕上塗材については、過去に 石綿を含有するものも使用されたが、このうち、吹付け工法により施工されたものは、特定建 築材料である吹付け石綿として取扱うこととされている12)。
環境確保条例においても、「吹き付け工法に使用される石綿含有材料」を「吹き付け石綿」と 定義しており(条例施行規則第60条第1項)、大気汚染防止法における取扱いと同様に、石綿を 含有する吹付け材は全て含まれる。
吹付けアスベスト 2.1.1
石綿とセメント系の結合材を一定割合で水を加えて混合し、吹付け施工したものである。施 工された時期は、昭和30年頃から昭和50年までである。
耐火被覆用
①
建築基準法の耐火要求に応じて使用されたもので、3階建て以上の鉄骨造建築物などの鉄骨、
梁、柱等に吹き付けられた。このほかに、デッキプレート裏面への吹付けなどがある。
吸音・断熱用
②
ビルの機械室、地下駐車場等の天井、壁等のほか、学校、体育館、工場等の天井、壁等に吹 き付けられていた。コンクリート造りの建築物の中で人が日常的に在室する部屋(学校の教室、
実験室、体育館など)では、残響時間が長く、会話がしにくくなるため、吸音用の吹付けアス ベストが施工された。また、鉄骨造建築物においては、人が常時在室しない機械室などでも、
防音目的に吹付けアスベストが施工されていた。
11) 「大気汚染防止法施行令の一部を改正する政令の施行等について」(平成18年1月11日環水大大060111001号)
12) 「石綿含有仕上塗材の除去等作業における石綿飛散防止対策について(平成29年5月30日環水大大1705301号)」
<RC・S造>
<戸建て住宅>
図4 石綿含有建材の使用部位例
(出典:目で見るアスベスト建材(第2版)13)。※図中のページ番号は同書のものである。)
13) 国土交通省:「目で見るアスベスト建材(第2版)」(2008)
石綿含有吹付けロックウール 2.1.2
吹付けアスベストとよく似た吹付け材であり、高炉スラグなどを主原料に工場で製造された 人造鉱物繊維であるロックウールを使用している。吹付けロックウールは、昭和36年頃から使 われ始め、昭和50年に吹付けアスベストが原則禁止となった以降も、しばらくの間、石綿を混 ぜて使用されていた。用途には、耐火被覆用と吸音・断熱用がある。
吹付けロックウールの施工方法には、乾式、半乾式、湿式がある。
乾式吹付け工法
①
ロックウールとセメントを工場で合材したものを工事現場において吹付け施工箇所まで吹付 け機により圧送し、その施工箇所において、吹付け機のノズル先端で水と混ぜ合わせて吹き付 けるものである。概ね昭和55年頃に、石綿を含有するものが製造中止となった。
半乾式吹付け工法
②
半湿式ともよばれる工法で、あらかじめセメントに水を混ぜたセメントスラリーを用意し、
吹付け施工箇所までセメントスラリーとロックウールとを別々に圧送し、スラリーホースをロ ックウールホース内に挿入してノズルで吹き付けるものである。乾式と同様に、概ね昭和55年 頃に、石綿を含有するものが製造中止となった。
湿式吹付け工法
③
混和剤を用いてロックウールとセメントなどを工場で合材とし、工事現場において混練機を 用いて水と混練した後、ポンプにより吹付け施工箇所まで圧送し、圧縮空気でノズルより吹き 付ける工法である。昭和45年頃から製品化され始め、概ね昭和62年頃に、石綿を含有するもの が製造中止となった。
その他の吹付け材 2.1.3
その他の石綿含有吹付け材として、石綿含有吹付けバーミキュライト(石綿含有ひる石吹付 け材)、石綿含有吹付けパーライト、吹付け施工された石綿含有仕上塗材がある。これらの吹付 け材は、吹付けアスベストや吹付けロックウールに比べて、一般に材料が硬く、下地との結合 性も強いが、建築物の解体・改修工事において除去や補修を行う際には石綿が飛散する可能性 があり、適切な飛散防止対策を講ずる必要がある。
石綿含有吹付けバーミキュライト(石綿含有ひる石吹付け材)
①
バーミキュライトは、膨張性雲母を焼成膨張させて得られた黄金色で光沢のある多孔質の軽 い砂状のものである。ひる石ともよばれるが、焼くと膨張して蛭が血を吸ったように見えるこ とから名付けられた。コンクリート天井等の仕上げとして、バーミキュライトを主材とする吹 付け材が用いられたが、吹付け材に石綿が添加されていた場合がある。また、バーミキュライ トの不純物として非意図的に石綿が含有されている場合もある。
石綿含有吹付けパーライト(石綿含有パーライト吹付け)
②
パーライトは、真珠岩、黒曜岩又はこれに準ずる石質を有する岩石を粉砕し、焼成膨張させ て得られた多孔質の軽い砂状のものである。原料の岩石は、天然ガラスとよばれるもので、高 温のマグマが急冷されて固化したときに結晶粒をほとんど含まずにできたガラス状の岩石であ る。建築物の内外装の仕上げにパーライトを主材とする吹付け材が用いられたが、吹付けバー ミキュライトと同様に、石綿が添加されていた場合がある。
石綿含有建築用仕上塗材
③
建築用仕上塗材(しあげぬりざい、JIS A 6909)は、セメント、合成樹脂などの結合剤、顔 料、骨材などを主原料とし、主として建築物の内外壁又は天井を、吹付け、ローラー塗り、こ て塗りなどによって立体的な造形性をもつ模様に仕上げる建築材料であり、塗膜のひび割れや 施工時のダレを防止するために、石綿が添加剤として使用されていた時期がある。
当初は専用の吹付け機器で施工されていたため、吹付材と呼ばれていた時期もあるが、ロー ラー塗りやこて塗りで施工されている場合もある。
石綿を含有する建築用仕上塗材のうち、吹付け工法で施工されたものは、大気汚染防止法イ 及び環境確保条例における吹付け石綿として扱うこと。
保温材等 2.2
石綿を含有する保温材等は、見掛け密度(材料の質量をその見掛けの体積で割った値)が概 ね0.5g/㎤以下であり、建築物の解体・改修工事において除去や補修を行う際には、石綿の飛散 の程度が大きいことから、大気汚染防止法では、石綿を含有する保温材、耐火被覆材及び断熱 材を規制対象としている。環境確保条例においても、石綿を含有する保温材(石綿を含有する 耐火被覆材及び断熱材を含む。)を届出等の規制対象としている。
石綿含有保温材 2.2.1
石綿含有保温材は、石油精製や石油化学(エチレンプラント)などの施設に使われることが ほとんどであり、建築物では、ボイラーなど建築設備や空調設備のダクトや配管に使われてい る場合が多い。主に工業プラントや建築設備などにおいて、常温より高い温度の熱絶縁に使用 される。
石綿含有保温材の具体例としては、石綿保温材、けいそう土保温材、塩基性炭酸マグネシウ ム保温材、けい酸カルシウム保温材、はっ水性パーライト保温材、バーミキュライト保温材(ひ る石保温材)がある14)。
石綿保温材
①
石綿保温材には、アモサイトを主原料とし、これに結合剤を加えて成形した保温板及び保温 筒のほかに、石綿保温ひも及び石綿布団がある。
ⅰ)保温板: 板状に成形した保温材で、必要に応じてガラスクロス、張り合わせたアルミ ニウム箔などの外被材を張り付け、又は表面を被覆して使われている。
ⅱ)保温筒: 円筒縦割り状に成形した保温材である。保温板及び保温筒は、各種プラント の缶、塔、槽類の外壁又は配管の定形部に施工する目的で作られており、ほとんど がそのままの形で、スタッドボルトや針金等によって固定されている。
ⅲ)石綿保温ひも: 石綿糸でできた外被の中に石綿を詰めたもので、各種プラントの曲管 部や施工しにくい部分の熱絶縁のため、それらに巻き付けたり、他の保温材の継目 に生じる隙間に詰め込んだりして使われている。
ⅳ)石綿布団: アモサイト石綿などの中綿をカバーとなる石綿布ではさみ、黄銅線入り石 綿糸で適当な間隔でとじて、中綿が移動したり、石綿布がはがれたりしないように してある。各種プラントのポンプ、バルブ、フランジ等の保守点検を必要とする部 分、配管の異形部分、耐振性を要求される部分に被せ、その上から針金等を巻き付 けて使われる。
14) 「大気汚染防止法施行令の一部を改正する政令の施行等について」(平成18年1月11日環水大大060111001号)
けいそう土保温材
②
けいそう土保温材は、けいそう土乾燥粉末を主材として、これに石綿繊維を均一に配合した 水練り保温材であり、石綿含有率は1.5%以上とされていた。水練り保温材は、成形保温材の目 地部分あるいは複雑な施工面の保温、又は外装を兼ねた保温材に使用され、前もって主材と無 機バインダーを乾式混合し調製した粉状製品に、現場で水を加えて混練し、充填やこて塗りで 施工される。
塩基性炭酸マグネシウム保温材
③
塩基性炭酸マグネシウムと石綿繊維を均等に配合したものである。水練り保温材、保温板及 び保温筒がある。石綿含有率は、8%以上とされていた。
けい酸カルシウム保温材
④
けいそう土等のけい酸質粉末と石灰を主材として、石綿等の補強繊維を加え、オートクレー ブ処理(高温・高圧の水蒸気での処理)により製造した保温板及び保温筒である。
はっ水性パーライト保温材
⑤
材料はパーライト、バインダー、石綿等の補強繊維、はっ水剤などから成り、これらを均一 に混合した後、成形、乾燥して製造した保温材であり、保温板及び保温筒がある。
バーミキュライト保温材
⑥
バーミキュライト(ひる石)、石綿及び耐熱バインダーを配合し、水練り又はプレス成形によ って板状又は筒状にしたものである。
石綿含有耐火被覆材 2.2.2
石綿を含有する耐火被覆材の具体例としては、石綿含有耐火被覆板、石綿含有けい酸カルシ ウム板第二種及び石綿含有耐火被覆塗り材がある15)。石綿含有耐火被覆材は、吹付け材のかわ りに、鉄骨、梁、柱、昇降機周辺等に張り付けて使用されている。
石綿含有耐火被覆板
①
石綿含有耐火被覆板は、石綿とセメントなどを吹付けアスベストと同様の高い石綿含有率で 配合し、工場において型枠で成形したものである。
石綿含有けい酸カルシウム板第二種
②
けいそう土等のけい酸質原料と石灰質原料に水を加えてスラリーとし、オートクレーブ処理 を行い、生成したけい酸カルシウムに石綿等の補強繊維を混入してプレス成形して製造したも のである。石綿含有率は30%以下である。
石綿含有耐火被覆塗り材
③
耐火被覆を目的に、こて塗りで鉄骨等に塗られたものである。
石綿含有断熱材 2.2.3
石綿を含有する断熱材の具体例としては、屋根用折版裏断熱材及び煙突用断熱材がある15)。 屋根用折版(折板)裏断熱材
①
結露防止や耐火、断熱の目的で屋根の裏打ちとして張り付けられたフェルト状の断熱材であ り、石綿含有率が90%と高いものがある。
15) 「大気汚染防止法施行令の一部を改正する政令の施行等について」(平成18年1月11日環水大大060111001号)
煙突用断熱材
②
煙突内側に張られた断熱目的の材料であり、繊維積層体の断熱層(カポ部)とその内側表面 のライニング層(ライナー部)から成る。商品によっては石綿含有率が70~90%と高いものが ある。
成形板等 2.3
石綿を含有する建材のうち、2.1で述べた吹付け材及び2.2で述べた保温材等以外の建 材を、以下では「石綿含有成形板等」と呼ぶ。石綿含有成形板等は、耐火、耐久性、耐候性等 を目的に、内装材、外装材、屋根材などとして使用されていて、一部を除き、見掛け密度が概 ね0.5g/cm3以上の硬い材料がほとんどである。
板状に成形された建材以外の例としては、石綿含有建築用仕上塗材(2.1.3の③を参照)のう ち、吹付け以外の工法(ローラー塗り、こて塗りなど)で施工されたものがある。また、主に 鋼板製煙突の筒身を高温の酸性ガスより保護するための内部ライニング材として用いられる不 定形耐火材(キャスタブル)では、耐酸用としては石綿を1~1.5%、断熱用としては4~5%
含有したものが使用されていた。
石綿含有成形板等は、大気汚染防止法では規制の対象外であるが、環境確保条例に基づき、
都知事が定める作業上の遵守事項(平成26年東京都告示第830号、以下「「作業上の遵守事項」」 という。)に従って施工しなければならない(環境確保条例第123条第2項)。詳細については、
東京都環境局が別に作成した「石綿(アスベスト)含有成形板対策マニュアル」16)を参照され たい。
16) 東京都環境局:「アスベスト成形板対策マニュアル(平成29年12月版)」
第 3 章
解体等工事における 石綿の飛散防止対策
(大気汚染防止法・環境確保条例等)
第3章 解体等工事における石綿の飛散防止対策(大気汚染防止法・環境確保条例等)
本章では、石綿(アスベスト)含有建材を使用している建築物等の解体、改修時に講じなけ ればならない石綿飛散防止対策について、大気汚染防止法及び環境確保条例による規制の解説 を中心に、具体的な留意事項を示す。
表4 解体等工事において必要な措置と参照条文
措置 対象となる解体等工事 根拠法令 本マニュアル
での記載
事前調査等 全ての解体等工事
●法第18条の17第1項、第3項
(規則第16条の5~第16条の8)
●条例第123条第2項
(告示第1 7、第2 1)
3.3(p.17)
作業計画等の届出 大気汚染防止法による 届出が必要な工事
●法第18条の15
(規則第10条の4、第13条)
●条例第124条第1項(規則第60条)
3.4(p.23)
石綿大気濃度測定
(工事前、作業中、工事後)
環境確保条例による 届出が必要な工事
●条例第123条第2項
(規則第59条、別表第13) 3.5(p.31)
掲 示 板 の 設 置
事前調査の結果等 全ての解体等工事 ●法第18条の17第4項
(規則第16条の9、第16条の10) 3.6.1(p.34)
特定工事の内容等 大気汚染防止法による 届出が必要な工事
●法第18条の14
(規則第16条の4第1項) 3.6.2(p.34)
作業中の措置
(作業基準、遵守事項)
石綿含有吹付け材、保 温材等の除去等を伴う 工事
●法第18条の14
(規則第16条の14第3項、別表第7)
●条例第123条第2項
(告示第1 1~6) 3.7(p.35)
石綿含有成形板等の除 去等を伴う工事
●条例第123条第2項
(告示第2 2~4)
作業内容の記録と保存 大気汚染防止法による 届出が必要な工事
●法第18条の14
(規則第16条の14第2項、別表第7)
●条例第123条第2項
(告示第1 8)
3.9(p.49)
産業廃棄物の処理
石綿含有建材(成形板 等を含む)の除去等を 伴う工事
●廃棄物の処理及び清掃に関する法律
及び関係規程 3.10(p.50)
※「法」は大気汚染防止法、「条例」は環境確保条例、「告示」は平成26年東京都告示第830号を指す。
大気汚染防止法及び環境確保条例の規制対象となる工事 3.1
大気汚染防止法及び環境確保条例に基づく石綿の飛散防止対策の対象となる建設工事は次の とおりである。
解体等工事 ≪大気汚染防止法第18条の17、大気汚染防止法施行規則第16条の5≫
3.1.1
建築物その他の工作物(以下「建築物等」という。)を解体し、改造し、又は補修する作業を 伴う建築工事を行うときは、石綿を含有する建築材料が使用されているか否かにかかわらず、
全ての解体等工事について、大気汚染防止法に基づく事前調査等の規定が適用される。
ただし、0.1%を超えて石綿を含有する製品の使用が禁止された平成18年9月1日以後に建設 工事に着手した建築物等の解体等工事と、平成18年9月1日以後に改造、補修工事に着手した 部分のみの解体等工事は、「特定工事(3.1.3)」に該当しないことが明らかなため、大気汚染防 止法に規定する「解体等工事」からは除かれている。
【建築物とその他の工作物】
工作物とは、建築物をはじめ、土地に接着して人為的作為を加えることによって成立したも のが広く該当する。
このうち、大気汚染防止法及び環境確保条例でいう建築物は、建築基準法第2条第1号で規 定する「建築物」のことをいう。建築物は、原則として、屋根とそれを支える柱又は壁を有す るものを指すが、次のものも建築物の定義に含まれる。
● 建築物に附属する門や塀
● 観覧のための工作物で野球場や競馬場のスタンドなどは、屋根を有しないものでも建 築物として扱われる。
● 地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類 する施設(事務所等の部分が建築物として取り扱われる。)
● これらに類する構造のもの(屋根とはいえない孔開きの床を有するような自走式車庫
(自動車を運転して駐車位置まで移動する車庫)などの簡易構造物等)
● 建築物に設ける給水、排水、換気、暖房、冷房、排煙若しくは汚水処理の設備又は煙 突、昇降機等の建築設備
建築物以外の工作物としては、煙突、広告塔、高架水槽、よう壁、貯蔵施設、観覧車等の遊 戯施設などの施設で建築物に附属しないものや、道路、橋りょう、堤防等の土木工作物などが ある。
石綿含有材料を使用する建築物等の解体又は改修の工事 ≪環境確保条例第123条第2項≫
3.1.2
石綿を含有する建築材料が使用されている建築物等の解体や改修の工事を行うときは、石綿 含有成形板等のみが使用されている場合も含めて、環境確保条例に基づき、知事が定める作業 上の遵守事項に従って施工し、また、石綿の飛散状況の監視を行わなければならない。
特定粉じん排出等作業を伴う建設工事(特定工事) ≪大気汚染防止法第18条の15≫
3.1.3
大気汚染防止法では、石綿を含有する建築材料のうち、吹付け石綿(石綿含有ひる石吹付け 材や、吹付け施工された石綿含有仕上塗材等も含む。2.1を参照。)又は石綿含有保温材等(断 熱材、保温材及び耐火被膜材。2.2を参照。)が使用されている建築物等を解体、改造、又は 補修する作業を「特定粉じん排出等作業」、特定粉じん排出等作業を伴う建設工事を「特定工事」
と規定している。
特定工事を行う際は、大気汚染防止法に基づいて届出を行い、作業基準を遵守しなければな らない。
石綿含有建築物解体等工事 ≪環境確保条例第124条第1項≫
3.1.4
環境確保条例では、3.1.3の特定工事のうち、次のⅰ)又はⅱ)のいずれかに該当する工事を「石 綿含有建築物解体等工事」と規定し、これに該当する工事を行う際は石綿飛散防止方法等計画 を届け出ることを義務付けている。
ⅰ) 使用されている石綿含有吹付け材の面積が15㎡以上の場合
ⅱ) 工事を行う建築物等の延べ面積(建築物以外の工作物の場合には築造面積)が500㎡以 上の場合。なお、建築物の一部を解体、改修する場合であっても、当該建築物全ての階 の床面積の合計で算定すること。
【延べ面積と築造面積】
上記の規模要件にある「延べ面積」は、建築基準法施行令第2条第1項第4号に規定する延 べ面積、すなわち建築物の各階の床面積の合計により算定する。床面積は、建築基準法施行令 第2条第1項第4号及び建設省通知17)により算定する。
また、「築造面積」は、建築基準法施行令第2条第1項第5号に規定する築造面積すなわち、
当該施設の水平投影面積により算定する。
大気汚染防止法及び環境確保条例に基づく規定の対象者 3.2
大気汚染防止法及び環境確保条例に基づく解体等工事に伴う石綿の飛散防止対策に係る規定 の対象者と、その講じなければならない措置の概要は以下のとおりである。各措置の詳細につ いては、3.3以降を確認されたい。
発注者 3.2.1
建築物等を解体し、改造し、又は補修する作業を伴う建設工事(解体等工事)の最初の注文 者、いわゆる「施主」のことをいう。発注者は、受注者が行う事前調査に要する費用を適正に 負担するなど、当該調査に協力しなければならない。
解体等工事を行う建築物に特定建築材料(吹付け石綿及び石綿含有保温材等)が使用されて いる場合、その工事(特定工事)の発注者は、大気汚染防止法に基づき「特定粉じん排出等作 業実施届出書」を提出しなければならない。一定の規模要件(3.1.4を参照)を上回る場合には、
環境確保条例に基づく「石綿飛散防止方法等計画届出書」も併せて提出する必要がある。
また、特定工事の発注者は、施工者に対し、施工方法、工期、工事費等について、作業基準 の遵守を妨げるおそれのある条件を付さないように配慮しなければならない。
受注者 3.2.2
解体等工事を発注者から直接受注した者、いわゆる元請受注者業者のことをいう。受注者は、
解体等工事が特定工事に該当するか否か(特定建築材料が使用されていないか)について事前 調査を行い、当該工事の発注者に対して書面で結果を説明しなければならない。また、解体等 工事を施工するときには、石綿含有材料が使用されていない場合も含めて、事前調査結果等を 公衆の見やすい位置に掲示しなければならない。
石綿を含む建築材料が使用されている建築物等の解体等工事を行うときは、石綿含有成形板 等のみが使用されている場合も含めて、環境確保条例に基づき知事が定める作業上の遵守事項 に従って施工し、また、石綿の飛散状況の監視を行わなければならない。
自主施工者 3.2.3
請負契約によらずに、解体等工事を自ら施工する者のことをいう。自主施工者は、受注者と 同様に、解体等工事が特定工事に該当するか事前調査を行い、解体等工事を施工するときには、
事前調査結果等を公衆の見やすい位置に掲示しなければならない。
17 「床面積の算定方法について」(昭和61年4月30日建設省住指発第115号)
石綿を含む建築材料が使用されている建築物等の解体等工事を行う場合には、発注者と同様 に届出を行わなければならない。また、受注者と同様に大気汚染防止法に基づく作業基準及び 環境確保条例に基づく作業上の遵守事項に従って施工し、また、石綿の飛散状況の監視を行わ なければならない。
事前調査等 3.3
事前調査とは、建築物等の解体、改修工事に着手する前に石綿含有建材が使用されているか どうかを調査することをいう。解体や改修を行う全ての建築材料が事前調査の対象であり、石 綿を含有しないことを証明できない場合には、分析調査により石綿含有の有無を確認するか、
又は石綿を含有するとみなして対策を行わなければならない(石綿含有吹付け材の場合、みな しは不可)。
大気汚染防止法、環境確保条例及び石綿障害予防規則において、事前調査の実施義務は、解 体等工事の施工者(元請受注者又は自主施工者)が負っている。当該建築物等について発注者 が石綿含有調査を行っている場合であっても、施工者は、その調査内容について、結果(石綿 の有無)だけではなく調査方法や調査範囲等も含めて自らの責任で改めて確認し、調査漏れや 不明な点があれば必要な調査を行うこと。
また、発注者は、事前調査に要する費用を適正に負担するなど受注者が行う事前調査に協力 し、法令の遵守を妨げるおそれのある条件を付さないよう配慮しなければならない。(大気汚染 防止法第18条の17、石綿障害予防規則第9条)
調査対象の工事 3.3.1
石綿が使用されている施設は、建築物だけでなく、橋りょうや化学プラントなど広範囲に及 んでいる。したがって、建築物だけではなく全ての工作物(土地に接着して人工的作為を加え ることによって成立した施設等)について、解体や改修の工事を行う際には事前調査を実施し、
石綿の使用の有無を確認しなければならない(大気汚染防止法第18条の17第1項から第3項、
「作業上の遵守事項」第2 1)。
なお、大気汚染防止法では、平成18年9月1日以降に着工された建築物等は事前調査の対象 外としている(大気汚染防止法施行規則第16条の5)が、環境確保条例や石綿障害予防規則に は例外規定はなく、全ての建築物等について事前調査を行う必要がある。設計図書等で着工年 次を確認し、石綿含有建材の使用が禁止された年次以降に着工されたことを確認することも事 前調査の方法の一つである。
事前調査を行う者 3.3.2
石綿を含有する建材は、鉄骨の耐火被覆材や配管等の保温材のほか、スレート板や床タイル、
内外装の仕上塗材など幅広い建材に使用されている(第2章を参照)。また、建築物等の改修や改 造、修繕などにより、当初施工された部位以外の箇所で使用されている場合もある。
事前調査が不十分であると工事を行う際に石綿を飛散させるおそれがあるため、石綿に関して 一定の知見を有し、的確な判断ができる者が調査を行い、使用されている石綿含有建材等の使用 箇所や種類等を網羅的に把握する必要がある。具体的には、次の3つの資格者が挙げられている18)。
建築物石綿含有建材調査者
①
建築物石綿含有建材調査者講習登録規程(平成25年7月30日付 国土交通省告示第748号)に
18) 「「建築物等の解体等の作業での労働者の石綿ばく露防止に関する技術上の指針」の制定について」(平成24年5月9日付 基発0509第
10号、一部改正平成26年4月23日付 基発0423第7号)
基づき国土交通省に登録された機関が行う講習を修了した者。修了者の名簿は、講習実施機関
(本マニュアル発行時点では、(一財)日本環境衛生センター)のホームページ等で確認できる。
一般社団法人日本アスベスト調査診断協会に登録された者
②
登録された者は、同協会のホームページで確認できる。
石綿作業主任者技能講習修了者のうち石綿等の除去等の作業の経験を有する者
③
石綿作業主任者は、事前調査に特化した講習を受講したものではないことから、事前調査に 関する講習を受講するなど一定の知識を有することが望まれる。また、建築物や建材には様々 な種類があることから、解体等を行おうとする建築物に応じた経験を有する者が実施するべき である。
調査対象とする建材 3.3.3
第2章で記載したとおり、石綿を含有する建材は、吹付け材、保温材等、成形板等の3つに 分類される。
大気汚染防止法に基づく事前調査では、行おうとする解体等工事が特定粉じん排出等作業に 該当するか否かを調べることとされているため、石綿を含有する吹付け材や保温材等の有無や 使用箇所等を調査する必要がある。(大気汚染防止法第18条の17)
一方、環境確保条例では、成形板等についても、石綿を含有しているか否かを調査すること を義務付けている(環境確保条例第123条第2項、「作業上の遵守事項」第2)。
調査の具体的な手順 3.3.4
図5は、事前調査の基本的な流れを示したものである。
設計図書等による書面調査
①
事前調査では、まず、既存の情報から石綿含有建材の有無に関する情報を得るとともに、現 地調査の計画を立てるため、発注者から設計図書や過去の調査記録等を入手し、書面調査を行 う。
書面調査においては、設計図書等を参照しながら、建築物の種別や用途、使用されている建 築材料の種類、施工年次、施工部位等を確認し、石綿を含有するか否かを判定する。参照する 書類の例としては、確認申請書、建築意匠設計図、竣工図、仕上げ表、仕様書、施工記録、維 持保全記録、竣工後の改修工事記録などがある。また、新築施工年、増改築や改修の有無など を確認するため、必要に応じて関係者へのヒアリングを行う。
対象の建材が石綿を含有するかの判定に当たっては、設計図書等に記載されている材料の種 類名(「石綿○○」など)のほか、建材のメーカーや商品名が確認できた場合には、建築や改修 の施工年次と当該商品が石綿を含有していた時期とを照合して判断することができる。石綿含 有建材の商品名とその製造時期などの情報源には以下のようなものがある。なお、吹付け材の 施工では設計図書に記載のない資材を現場で混合、調製して使用した場合もあることに留意し、
施工記録や仕上表なども含め慎重に調査を行うこと。
● 石綿(アスベスト)含有建材データベース(国土交通省、経済産業省)
http://www.asbestos-database.jp/
● この家庭用品はアスベストが使用されているの?使用されている時には、処理はどうす れば良いの?(環境省ホームページ)
http://www.env.go.jp/air/asbestos/index8.html
図5 事前調査の流れ19)
● 関係業界団体のホームページに掲載された情報
ロックウール工業会、せんい強化セメント板協会、押出成形セメント板協会、
日本窯業外装材協会、インテリアフロア工業会、日本建築仕上材工業会など
● 各建材メーカーのホームページに掲載された情報 目視等による現地調査
②
建築物等に使用されている建材に石綿が含有されているか否かは、設計図書等に明記されて いない場合が多い。また、設計図書と異なる仕様で施工されたり、新築後に改修されたりした ことで、設計図書等と現物とが異なっている場合もある。したがって、書面調査のみで判断せ ず、必ず現地調査を行い、目視等により現物を確認することが必要である。
現地調査では、解体、改修を行おうとする範囲について、各室、各部位ごとに全ての建築材 料を目視し、現場で使用されている建材の種類や形状が、設計図書等の書面調査における情報 と相違がないかを確認すること。また、工事の進捗後でなければ調査が困難な箇所がある場合 には、そのことを事前調査結果に明記し、施工段階で確実に調査が行われるようにすること。
19) 厚生労働省:「「建築物等の解体等の作業及び労働者が石綿等にばく露するおそれがある建築物等における業務での労働者の石綿ばく露
防止に関する技術上の指針」に基づく石綿飛散漏洩防止対策徹底マニュアル[2.11版]」(2017)